(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705277
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】サーバーラック室内システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/068 20060101AFI20150402BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20150402BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20150402BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20150402BHJP
F24F 13/08 20060101ALI20150402BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20150402BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20150402BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
F24F13/068 A
F24F13/06 A
F24F5/00 K
F24F7/06 B
F24F13/08 B
F24F13/15 A
H05K7/20 U
H05K7/20 H
G06F1/00 360B
G06F1/00 360C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-166079(P2013-166079)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34674(P2015-34674A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2013年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】中谷 博
【審査官】
佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−235550(JP,A)
【文献】
実開平07−042180(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/068
F24F 5/00
F24F 7/06
F24F 13/06
F24F 13/08
F24F 13/15
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のサーバーラックから構成されるサーバーラック列が床下空間を備えた二重床の上に配設され、複数のサーバーラック列の間の空間にコールドアイル空間とホットアイル空間が交互に形成され、床下空間に空調機が流体連通しており、空調機から床下空間に提供された冷気がコールドアイル空間に提供されるようになっているサーバーラック室内システムにおいて、
前記床の全部もしくは一部には床グリルが配設されており、
前記床グリルは、
矩形の枠材と、
前記枠材に嵌め込まれる開口を備えた開口板と、
前記枠材を構成する矩形の4つの端辺のうち、対向する2つの端辺の一方の端辺を回動軸として回動自在に取り付けられた板材と、他方の端辺を回動軸として回動自在に取り付けられたファンユニットと、から構成されており、
床グリルを構成する前記ファンユニットと前記板材が床下空間に垂下して角度調整自在となっているサーバーラック室内システム。
【請求項2】
前記開口板は、開口率の異なる複数の開口板のうちから選定されたものである請求項1に記載のサーバーラック室内システム。
【請求項3】
コールドアイル空間の床において、該床の幅方向に前記床グリルが2つ配設され、この際に、双方の板材が床の幅の中央位置にくるように双方の床グリルが配設されている請求項1または2に記載のサーバーラック室内システム。
【請求項4】
熱負荷の相対的に高いサーバーを具備するサーバーラックの手前の床に前記床グリルが配設されている請求項1〜3のいずれかに記載のサーバーラック室内システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明
は、床グリルがコールドアイル空間の床に配設されてなるサーバーラック室内システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットやLANなどのネットワーク上で複数のパソコンに多様な機能やサービスを提供したり、データを一元化するサーバーがラックに集積されてサーバーラックを構成し、複数のサーバーラックが隣接するように配設されてサーバーラック列を構成し、複数のサーバーラック列が通路を挟んで配設されてサーバーラック室内システムが構成される。各サーバーラック列間の通路は、サーバーラックの背面から排気が排出されるホットアイル空間と、冷気が提供されるコールドアイル空間のいずれか一方を形成しており、サーバーラック室内システムにおいては、このホットアイル空間とコールドアイル空間が交互に形成されているのが一般的である。なお、このサーバーラック室内システムはデータセンターなどと称されることもある。
【0003】
上記通路はたとえば二重床構造となっており、かつ、この二重床を構成する上床には冷気が流通する多数の吹き出し口が開設されており、空調機から提供された冷気は二重床の間に形成されている床下空間を流通するようになっている。
【0004】
そして、吹き出し口を介してコールドアイル空間に提供された冷気は、それぞれのサーバーラック列の該コールドアイル空間に臨む前面を介してサーバーラック列を構成する各サーバーラックに提供され、サーバーラックに収納されたサーバーを通過する過程で冷気は熱を奪って昇温して暖気となってサーバーラックの背面からホットアイル空間に排出される。サーバーラックの背面から排出された排気は空調機や空気制御装置等に戻され、ここで再び冷気に戻されるようになっており、このような冷気の循環がサーバーラック室内で繰り返されることにより、各サーバーが所定温度状態に制御されるのが一般的である。
【0005】
このように、空調機からの冷気を二重床の床下空間に流し、床からコールドアイル空間に冷気を吹き出して各サーバーラックに提供する空調方式は、床吹き出し空調と称されることもあり、空調機から横方向に冷気を流して各サーバーラックに冷気を提供する空調方式と区別される。
【0006】
この床吹き出し空調においては、各コールドアイル空間の前方位置に空調機が配設され、空調機から吹き出された冷気は床下空間を流通しながら吹き出し口を介して上方のサーバーラックに提供される。
【0007】
この冷気の吹き出しは、床下空間と床上空間の差圧によって齎される。より具体的には、サーバーラックの背面には排気用のファンが装備されているのが一般的であるが、床上空間にはこのようなファンを装備した複数のサーバーラックがあるために、床下空間に比して床上空間が負圧雰囲気となり、床下から床上への冷気の流れが齎されるというものである。
【0008】
ところで、空調機から吹き出された冷気は、コールドアイル空間の最下流まで提供される必要があることから、空調機から吹き出された直後の冷気は勢いが強く、床上下の差圧のみで床上に提供するのは難しい。そのため、コールドアイル空間の長手方向において床上に提供される冷気の風量に分布が生じ、均一な風量の冷気がコールドアイル空間の全域に提供され難いのが一般的である。このことより、床吹き出し空調において、均一な風量の冷気をコールドアイル空間の全域に提供することのできるサーバーラック室内システムの開発が望まれている。
【0009】
一方、サーバーラック室内には、発熱量の異なるサーバーがサーバーラック内に収容されており、したがって、サーバーラック室内の冷却を図るに当たり、最も高い発熱量のサーバーの冷却をターゲットとして、最も高い発熱量のサーバーの冷却を可能とする風量の冷気をサーバーラック室の全域に提供する制御が一般におこなわれている。そのため、提供された風量の冷気を必要としない領域にも必要以上の冷気が提供されることとなり、必要以上に電力コストが嵩んでいるといった問題もある。このことより、標準的な発熱量のサーバーに対応した風量の冷気をサーバーラック室内に提供しながらも、相対的に高い発熱量のサーバーのあるサーバーラックやその周辺には他の領域に比して多くの風量の冷気を提供することができ、もって電力コストの削減を図ることのできるサーバーラック室内システムの開発もまた望まれている。
【0010】
ここで、特許文献1,2には、床下空間の冷気を吹き出すファンを内蔵した床グリルをコールドアイル空間の床に設置して構成されたデータセンターが開示されている。
【0011】
このようにファンを内蔵している床グリルを適用した場合においては、ファンを稼働させた状態でないと床上への冷気の提供ができない。ファンが停止した状態では、ファンそのものが冷気提供の障害となってしまうからである。
【0012】
また、ある部位の床グリルのみファンを稼働させた場合に、床下を流れる冷気が稼働しているファンに取り込まれてしまい、床グリルがない床上空間やファンが稼働していない床グリル上の床上空間に冷気が提供されないといった問題も生じ得る。
【0013】
このように、ファンが内蔵された床グリルが床に設置されたサーバーラック室では、サーバーラック室の全域に均一な風量の冷気を提供する際にファンそのものが阻害要因となる場合が往々にしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011−226737号公報
【特許文献2】特開2009−174726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、床吹き出し空調において、均一な風量の冷気をコールドアイル空間の全域に提供することができ、さらには、相対的に高い発熱量のサーバーのあるサーバーラックやその周辺にのみ他の領域に比して多くの風量の冷気を提供することができ、もって電力コストの削減を図ることのできるサーバーラック室内システ
ムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成すべく、本発明による床グリルは、サーバーラック室の床に設置される床グリルであって、前記床グリルは、矩形の枠材と、前記枠材に嵌め込まれる開口を備えた開口板と、前記枠材を構成する矩形の4つの端辺のうち、対向する2つの端辺の一方の端辺を回動軸として回動自在に取り付けられた板材と、他方の端辺を回動軸として回動自在に取り付けられたファンユニットと、から構成されているものである。
【0017】
本発明の床グリルは、作業員が持ち運んでサーバーラック室の床に設置できる寸法および重量を有しているのが好ましく、床吹き出し空調のサーバーラック室内システムにおいて適用されるに当たっては、コールドアイル空間の床に設置されるものである。
【0018】
床グリルは矩形の枠材を基本構成とし、この枠材に開口を備えた開口板が取り付け自在となっている。
【0019】
この開口板としては開口率の異なる複数種が用意されており、コールドアイル空間の部位に応じて好適な開口率の開口板が選定され、設置されるようになっている。
【0020】
たとえば、コールドアイル空間の長手方向に間隔を置いて複数の床グリルを設置するに当たり、コールドアイル空間の前方にある空調機に近い側に開口率の最も高い開口板を備えた床グリルを設置し、順次空調機から遠ざかるにつれて開口率の低くなった開口板を備えた床グリルを設置する。このようにすることで、空調機に近い位置にある床グリルでは、流れの勢いが強くて上方へ上昇し難い冷気に対し、床グリルが高い開口率の開口板を有しているために冷気の床上への提供を促進することができる。一方、空調機から離れた位置にある床グリルでは、流れの勢いが弱くて上方へ上昇し易い冷気に対し、床グリルが低い開口率の開口板を有しているために冷気の床上への提供を抑制することができる。その結果、コールドアイル空間の長手方向に亘って床上へ提供される冷気の風量の均一化を図ることが可能になる。
【0021】
また、本発明の床グリルを構成する枠材には、上記する開口板が取り付け自在であることに加えて、板材とファンユニットが枠材を構成する矩形の4つの端辺のうちの対向する2つの端辺のそれぞれに回動自在に取り付けられている。
【0022】
より具体的には、矩形枠材のうち、床上側には既述する開口板が取り付けられ、床下側の対向する2つの端辺には回動軸が設けてあり、これら2つの回動軸に板材とファンユニットが取り付けられている。
【0023】
板材、ファンユニットはともに、たとえば矩形の枠材の半分の面積を有しており、これらが回動して枠材に対して閉じられた際に枠材を閉塞するようになっており、板材、ファンユニットが閉塞した姿勢で床グリルを持ち運ぶのがよい。
【0024】
ファンユニットは、1台もしくは複数台のファンを内蔵した板もしくはフレームから構成されている。ファンユニットを構成するファンを稼働させて取り込んだ冷気を対向する板材に衝突させ、板材から戻ってきた冷気を床上へ提供したり、板材から戻ってきた冷気を空調機から吹き出されて流れ込んできた冷気に衝突させ、冷気の流れ方向を上方へ向けるようにして、床上への冷気の提供を促進することができる。
【0025】
板材とファンユニットはともに、これらの作用を奏するに最適な角度位置で固定され、使用される。枠材に対する板材やファンユニットの回動は、作業員が手動にて調整する形態のほか、回動軸がモータにて駆動自在となっていて自動調整される形態であってもよい。この板材やファンユニットの角度調整法の一例として、これらの角度を多様に設定した上でそれぞれの角度ごとに気流シミュレーションを実施し、シミュレーション結果に基づいてたとえばコールドアイル空間に対して均一な風量の冷気を提供するのに好適な角度を特定する方法を挙げることができる。
【0026】
コールドアイル空間の床に床グリルが設置され、この床グリルの枠材に取り付けられた板材とファンユニットは、ともに所望角度で回動して床下空間に垂下された状態となる。
【0027】
ファンユニットの稼働により、コールドアイル空間を形成するサーバーラック列の直下の床下に滞留している冷気が床グリルの下方に取り込まれる。すなわち、本発明の床グリルにより、床上へ提供されなかったサーバーラック列直下の冷気が有効に利用されることになる。
【0028】
また、ファンユニットにて取り込まれて板材に衝突し、戻ってきた冷気によって空調機から流れ込んでくる冷気の流れ方向が変化することで、冷気の上方への流れを促進することができる。
【0029】
したがって、従来のサーバーラック室のコールドアイル空間の床において、発熱量の多い(熱負荷の高い)サーバーに対応する領域の床や、床下から冷気が提供され難い領域の床に本発明の床グリルを設置することで、冷気を提供したい領域の床上空間に対して所望の風量の冷気を提供することが可能になる。そのため、従来は発熱量の高いサーバーを対象として空調機からの冷気の風量を設定していたのに対して、標準的な発熱量のサーバーを対象として冷気の風量を設定しながら、発熱量の多いサーバーに対応する床には本発明の床グリルを設置することで、他の領域に比して風量の多い冷気を提供することが可能となり、サーバーラック室の電力消費量を大幅に削減することができる。
【0030】
また、本発明は上記する床グリルを適用したサーバーラック室内システムにも及ぶものであり、このサーバーラック室内システムは、2以上のサーバーラックから構成されるサーバーラック列が床下空間を備えた二重床の上に配設され、複数のサーバーラック列の間の空間にコールドアイル空間とホットアイル空間が交互に形成され、床下空間に空調機が流体連通しており、空調機から床下空間に提供された冷気がコールドアイル空間に提供されるようになっているサーバーラック室内システムにおいて、前記床の全部もしくは一部には前記床グリルが配設されており、床グリルを構成する前記ファンユニットと前記板材が床下空間に垂下して角度調整自在となっているものである。
【0031】
本発明の床グリルが適所に設置されたサーバーラック室内システムによれば、可及的に少ない電力にてコールドアイル空間の全域に均一な風量の冷気を床下から提供することができ、必要に応じて発熱量の多いサーバーに対応する領域には相対的に多めの風量の冷気を提供することができる。
【0032】
床グリルの設置態様の変形例として、コールドアイル空間の床において、該床の幅方向に前記床グリルが2つ配設され、この際に、双方の板材が床の幅の中央位置にくるように双方の床グリルが配設されている形態を挙げることができる。
【0033】
コールドアイル空間の両サイドには2列のサーバーラック列が存在する。コールドアイル空間の任意の位置の床に床グリルを設置するに当たり、1台の床グリルを設置した場合には、ファンユニットの稼働によってファンユニット側にある一方のサーバーラック列直下の冷気しか取り込むことができない。これに対し、床の幅方向(床の短手方向)に2台の床グリルを併設し、双方の板材が床の中央側に位置し、双方のファンユニットがサーバーラック列側に位置するように配設した場合には、2列のサーバーラック列直下の冷気をともにコールドアイル空間の床下に取り込むことができ、これを床上に提供することができる。
【0034】
また、熱負荷の相対的に高いサーバーを具備するサーバーラックの手前の床に前記床グリルが配設されたサーバーラック室内システムとすることで、標準的な発熱量のサーバーを対象として冷気の風量を設定しながら、熱負荷の相対的に高いサーバーには他の領域に比して風量の多い冷気を提供することが可能となり、サーバーラック室の電力消費量を大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上の説明から理解できるように、本発明
のサーバーラック室内システムによれば、床グリルをコールドアイル空間の床の適所に設置することによって、サーバーラック列直下の床下に滞留している冷気をファンユニットで取り込んで板材に衝突させ、戻ってきた冷気をコールドアイル空間に提供したり、あるいはこの戻ってきた冷気によって空調機から流れ込んできた冷気の流れ方向を上方に向けることが可能となる。そのため、コールドアイル空間の全域に均一な風量の冷気を提供することができ、さらには、標準的な発熱量のサーバーを対象として冷気の風量を設定しながら、熱負荷の相対的に高いサーバーには他の領域に比して風量の多い冷気を提供することが可能となり、サーバーラック室の電力消費量を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の床グリルの実施の形態を示す模式図である。
【
図2】本発明のサーバーラック室内システムの実施の形態1の平面図である。
【
図5】本発明のサーバーラック室内システムの実施の形態2の平面図である。
【
図7】本発明のサーバーラック室内システムの実施の形態3の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の床グリルと床グリルを備えたサーバーラック室内システムの実施の形態を説明する。なお、図示するサーバーラック室内システムでは、2列のコールドアイル空間とホットアイル空間が交互に形成されているが、コールドアイル空間やホットアイル空間の列数が図示例に限定されるものでないことは勿論のことである。また、コールドアイル空間の床に設置される床グリルの位置や台数も図示例に限定されるものでないことは勿論のことであり、実際には、事前の気流シミュレーション等に基づいて好適な位置に好適な台数の床グリルが設置されるものである。
【0038】
(床グリルの実施の形態とサーバーラック室内システムの実施の形態1)
図1は本発明の床グリルの実施の形態を示す模式図であり、
図2は本発明のサーバーラック室内システムの実施の形態1の平面図であり、
図3,4はそれぞれ、
図2のIII−III矢視図、IV−IV矢視図である。
【0039】
図1で示す床グリル10は、
図2で示すサーバーラック室内システム100を構成するコールドアイル空間CAの床Fに設置される(もしくは嵌め込まれる)ものであり、平面視形状が矩形の枠材1と、この枠材1に嵌め込まれる開口2aを備えた開口板2と、枠材1を構成する矩形の4つの端辺のうち、対向する2つの端辺の一方の端辺を回動軸1aとして回動自在に取り付けられた板材3と、他方の端辺を回動軸1bとして回動自在に取り付けられたファンユニット4と、から大略構成されている。
【0040】
床グリル10は、作業員が持ち運んで設置できる大きさと重量を有している。
【0041】
金属製もしくは樹脂製の枠材1に設置される開口板2としては、開口率の異なる複数種が用意され、設置されるコールドアイル空間CAの位置に応じて好適な開口率の開口板2が選定され、枠材1の床上側となる端部に取り付けられる。
【0042】
一方、枠材1の床下側の端部のうち、対向する2つの端辺に回動自在(X方向)に取り付けられる板材3とファンユニット4はともに、枠材1の平面積の半分の面積を有し、したがって、それらが閉じた際には矩形の枠材1の下側開口を板材3とファンユニット4で完全に塞ぐようになる。作業員が床グリル10を持ち運ぶ際には、板材3とファンユニット4を閉じて床グリル10をコンパクトにした状態とするのがよい。
【0043】
ファンユニット4は、板材3と同素材の板に複数の円形の開口が設けられ、この開口にファン4aが回転自在に取り付けられて構成されている。
【0044】
一方、
図2〜4で示すサーバーラック室内システム100は、床吹き出し空調形式のシステムである。床下空間UFを形成する床Fの上方において、複数のサーバーラック21が側方に並べられてサーバーラック列20を構成し、複数のサーバーラック列20が通路を介して並べられてその全体が構成されている。対向するサーバーラック列20の間の各通路は、サーバーラックの前面であって冷気をサーバーラック21内に取り込む側となるコールドアイル空間CAと、サーバーラック21内を冷気が通過する過程で吸熱して生成された高温の排気が排出されるホットアイル空間HAとなっており、このコールドアイル空間CAとホットアイル空間HAが交互に形成されている。
【0045】
平面視矩形のサーバーラック室において、各コールドアイル空間CAの前方位置にはそれぞれに固有の空調機30(図示例では2台)が配設されている。なお、空調機の配設態様はコールドアイル空間の前方位置のみに限定されるものではなく、必要に応じて他の部位(たとえば
図2においてサーバーラック室の左右の端辺の各所)にさらに空調機が配設される形態であってもよい。
【0046】
図2で示すように、サーバーラック室内システム10では、2列のコールドアイル空間CAの長手方向の中央位置の床と、空調機30から最も離れた最下流位置の床にそれぞれ、床グリル10A、10Bが設置されている。
【0047】
床グリル10A,10Bの基本構成は
図1で示す床グリル10と同様であり、それらの具備する開口板2の開口率は相違しており、空調機30に近い位置に設置される床グリル10Aの開口率が相対的に低くなっている。
【0048】
図4で示すように、空調機30から床下空間UFに吹き出された(Z1方向)冷気は、上流側では勢いよく流通し、流通過程で床Fに開設されている吹き出し口Faを介して床上のコールドアイル空間CAに提供される(Z2方向)。
【0049】
この冷気の上昇は、床下空間UFに比して床上空間が負圧雰囲気になっているために齎される。
【0050】
図示するサーバーラック室内システム100では、事前の気流シミュレーションの結果、冷気が上昇し難いと判断された中央位置と最下流位置に床グリル10A,10Bが設置されている。したがって、たとえば気流シミュレーションの結果、冷気が上昇し難いと判断される部位が相違する場合には、シミュレーション結果に応じた適宜の位置(たとえば空調機30に最も近いサーバーラック21に対応する位置)の床に床グリル10が設置されることになる。
【0051】
床上下の差圧のみでは冷気を十分に上昇させ難い場合には、床下空間UFを流通する冷気の流れを上向きとするための圧力を冷気に付与したり、あるいは冷気の勢いを低下させて上昇し易くする必要がある。この冷気の流れ方向を上方に転換する際に床グリル10が機能する。
【0052】
図3で示すように、床グリル10Aを床Fに設置し、板材3とファンユニット4を回動して所定の角度位置で固定する。
【0053】
この状態でファンユニット4のファン4aを稼働すると、サーバーラック列20の床直下に滞留している冷気Aがファン4aにて取り込まれ、ファンユニット4と板材3の間の空間に取り込まれる(Y1方向)。
【0054】
ファンユニット4と板材3の間の空間に取り込まれた冷気は板材3に衝突し、冷気がファンユニット4と板材3の間の空間の中央側に戻される(Y2方向)。
【0055】
空調機30から流れ込んできた冷気(
図4のZ1方向)にこの戻された冷気が衝突したり、あるいは混ざり込むことにより、冷気の流れ方向を上方に転換することができ、あるいは冷気の勢いを弱めて冷気の上方への流れを生成することができ、いずれの場合であってもコールドアイル空間CAへ冷気を提供することが可能になる(
図3のY3方向、
図4のZ3方向)。
【0056】
また、サーバーラック列20の床直下に滞留している冷気Aを取り込んでコールドアイル空間CAに提供することから、これまで利用されてこなかったサーバーラック列20の床直下の冷気を有効利用でき、電力消費量の節減に繋がる。
【0057】
このように、床グリル10Aのファンユニット4の角度は、サーバーラック列20の床直下の冷気Aを取り込み易い角度に調整される。また、板材3の角度は、取り込まれた冷気が衝突し、戻された冷気が空調機30から流れ込んできた冷気を上向きに方向転換させ易い角度に調整される。
【0058】
図示するサーバーラック室内システム100によれば、コールドアイル空間CAの床の適所に床グリル10A,10Bが設置されたことにより、コールドアイル空間CAの全域に亘って可及的に均一な風量の冷気を提供することが可能となる。また、冷気が提供され難い部位に床グリル10を介して集中的に冷気を提供することが可能になる。
【0059】
(サーバーラック室内システムの実施の形態2)
図5は本発明のサーバーラック室内システムの実施の形態2の平面図であり、
図6は
図5のVI−VI矢視図である。
【0060】
図示するサーバーラック室内システム100Aは、コールドアイル空間CAの中央位置と最下流位置にそれぞれ、2台の床グリル10A,10Bを併設したものである。
【0061】
コールドアイル空間CAの両サイドには2列のサーバーラック列20が存在し、それぞれのコールドアイル空間CAの床直下には冷気Aが滞留している。そこで、図示するように床Fの幅方向(床の短手方向)に2台の床グリル10A,10Bを併設し、双方の板材3が床の中央側に位置し、双方のファンユニット4がサーバーラック列20側に位置するように配設することで、2列のサーバーラック列20直下の冷気Aをともにコールドアイル空間CAの床下に取り込むことができ、これを床上に提供することができる。また、取り込まれた多量の冷気によって空調機30から流れ込んできた冷気の上方への押し上げ効果が高くなる。
【0062】
(サーバーラック室内システムの実施の形態3)
図7は本発明のサーバーラック室内システムの実施の形態3の平面図である。
【0063】
図示するサーバーラック室内システム100Bは、サーバーラック列20の中でも発熱量が他のサーバーラックに比して高いサーバーラック21A、21Bに対応する位置の床に床グリル10C,10Dが配設されたものである。
【0064】
このように、発熱量の多い(熱負荷の高い)サーバーに対応する領域の床に床グリル10C,10Dを設置することで、冷気を提供したい領域の床上空間に対して所望の風量の冷気を提供することが可能になる。より詳細には、サーバーラック21Aのサーバーの発熱量が20kWであり、他のサーバーラック21のサーバーの発熱量が5kWの場合に、標準的な発熱量(5kW)のサーバーを対象として冷気の風量を設定しながら、20kWの発熱量のサーバーには床グリル10C,10Dを介して他の領域よりも風量の多い冷気を提供することが可能となり、サーバーラック室の電力消費量を大幅に削減することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
1…枠材、1a、1b…回動軸、2…開口板、2a…開口、3…板材、4…ファンユニット、4a…ファン、10,10A,10B,10C,10D…床グリル、20…サーバーラック列、21…サーバーラック、30…空調機、100,100A,100B…サーバーラック室内システム、CA…コールドアイル空間、HA…ホットアイル空間、F…床、UF…床下空間