特許第5705308号(P5705308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5705308抗再狭窄成分および輸送促進分子分散剤でコーティングされたカテーテルバルーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705308
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】抗再狭窄成分および輸送促進分子分散剤でコーティングされたカテーテルバルーン
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/00 20060101AFI20150402BHJP
【FI】
   A61L29/00 W
【請求項の数】14
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-511536(P2013-511536)
(86)(22)【出願日】2011年5月27日
(65)【公表番号】特表2013-539371(P2013-539371A)
(43)【公表日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】DE2011001150
(87)【国際公開番号】WO2011147407
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2013年3月26日
(31)【優先権主張番号】102010022588.6
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504150209
【氏名又は名称】ヘモテック アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Hemoteq AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン エリカ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ホレス ローランド
【審査官】 渡邊 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0055294(US,A1)
【文献】 特表2010−516307(JP,A)
【文献】 特表2010−509991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧着ステントを有するまたは有さないカテーテルバルーンであって、
前記カテーテルバルーンの表面は、少なくとも1つの抗再狭窄成分と少なくとも1つの輸送促進分子分散剤で少なくとも部分的にコーティングされ、
前記少なくとも1つの輸送促進分子分散剤は、少なくとも1つの一般式(I)
【化1】
(式中、
1は、以下の残基の1つを表し、
−L1−R18、−C(R3)(R4)−L1−R18、−L1−C(R3)(R4)−R18、−C(R3)(R4)−L1−C(R5)(R6)−R18、−L1−Y−R18、−Y−L1−R18、−Y−C(R3)(R4)−L1−R18、−C(R3)(R4)−Y−L1−R18、−C(R3)(R4)−L1−Y−R18、−Y−L1−C(R3)(R4)−R18、−L1−Y−C(R3)(R4)−R18、−L1−C(R3)(R4)−Y−R18、−Y−C(R3)(R4)−L1−C(R5)(R6)−R18、−C(R3)(R4)−Y−L1−C(R5)(R6)−R18、−C(R3)(R4)−L1−Y−C(R5)(R6)−R18、−C(R3)(R4)−L1−C(R5)(R6)−Y−R18
2は、以下の残基の1つを表し、
−R7、(−CH2−)p−R7、(−O−CH2−)p−R7
3は、以下の残基の1つを表し、
−M1−R26、−M1−M2−R26、−M1−(M2r−M3−R26、−M1−(M2r−M3−(M4s−R26
4は、以下の残基の1つを表し、
−L2−R19、−C(R10)(R11)−L2−R19、−L2−C(R10)(R11)−R19、−C(R10)(R11)−C(R12)(R13)−L2−R19、−C(R10)(R11)−L2−C(R12)(R13)−R19、−L2−C(R10)(R11)−C(R12)(R13)−R19
1は、以下の基の1つを表し、
【化2】
2は、以下の基の1つを表し、
−O−CO−、−NH−CO−、−CO−、−O−、−NH−、−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、−O−CO−O−、
1は、以下の基の1つを表し、
【化3】
2は、以下の基の1つを表し、
−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2、−O−、−O−CH2−、−O−CH2−CH2−、−O−CH2−CH2−CH2、−O−CO−、−O−CO−CH2−、−O−CO−CH2−CH2−、−O−CO−CH2−CH2−CH2、−CO−、−CO−CH2−、−CO−CH2−CH2−、−CO−CH2−CH2−CH2−、
3は、以下の基の1つを表し、
結合基、−NH−、−NH−CO−、
4は、以下の基の1つを表し、
−O−CH2−CH2−)t、(−CH2−CH2−O−)t
Yは、(−CH2−)m、(−CH2−O−)m、(−O−CH2−)mまたは(−CH2−CH2−O−)m表し、
1〜R13は、相互に独立して以下の残基を表し、
−R14〜−R30、−OH、−OCH3、−OC25、−OC37、−O−cyclo−C35、−OCH(CH32、−OC(CH33、−OC49、−OPh、−OCH2−Ph、−OCPh3、−COCH3、−COC25、−COC37、−CO−cyclo−C35、−COCH(CH32、−COC(CH33、−COOH、−COCN、−COOCH3、−COOC25、−COOC37、−COO−cyclo−C35、−COOCH(CH32、−COOC(CH33、−O−CO−R14、−CONH2、−CONHCH3、−CONHC25、−CONHC37、−CONH−cyclo−C35、−CONH[CH(CH32]、−CONH[C(CH33]、−CON(CH32、−CON(C252、−CON(C372、−CON(cyclo−C352、−CON[CH(CH322、−CON[C(CH332、−NHCOCH3、−NHCOC25、−NHCOC37、−NHCO−cyclo−C35、−NHCO−CH(CH32、−NHCO−C(CH33、−NH2、−NHCH3、−NHC25、−NHC37、−NH−cyclo−C35、−NHCH(CH32、−NHC(CH33、−N(CH32、−N(C252、−N(C372、−N(cyclo−C352、−N[CH(CH322、−N[C(CH332、−O−CO−OCH3、−O−CO−OC25、−O−CO−OC37、−O−CO−O−cyclo−C35、−O−CO−OCH(CH32、−O−CO−OC(CH33
14〜R30は、相互に独立して以下の残基を表し、
−CH2F、−CHF2、−CF3、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2I、−CH2−CH2F、−CH2−CHF2、−CH2−CF3、−CH2−CH2Cl、−CH2−CH2Br、−CH2−CH2I、cyclo−C35、cyclo−C47、cyclo−C59、cyclo−C611、cyclo−C713、cyclo−C815、−Ph、−CH2−Ph、−CPh3、−H、−CH3、−C25、−C37、−CH(CH32、−C49、−CH2−CH(CH32、−CH(CH3)−C25、−C(CH33、−C511、−CH(CH3)−C37、−CH2−CH(CH3)−C25、−CH(CH3)−CH(CH32、−C(CH32−C25、−CH2−C(CH33、−CH(C252、−C24−CH(CH32、−C613、−C715、−C817、−C36−CH(CH32、−C24−CH(CH3)−C25、−CH(CH3)−C49、−CH2−CH(CH3)−C37、−C≡CH、−C≡C−CH3、−CH2−C≡CH、−C24−C≡CH、−CH2−C≡C−CH3、−C≡C−C25、−C36−C≡CH、−C24−C≡C−CH3、−CH2−C≡C−C25、−C≡C−C37、−CH(CH3)−C≡CH、−CH2−CH(CH3)−C≡CH、−CH(CH3)−CH2−C≡CH、−CH(CH3)−C≡C−CH3、−C48−C≡CH、−C36−C≡C−CH3、−C24−C≡C−C25、−CH2−C≡C−C37、−C≡C−C49
ここで、mは、1〜10の整数であり、
nは、0〜5の整数であり、
pは、0〜3の整数であり、
qは、0〜4の整数であり、
rは、0または1を表し、
sは、0または1を表し、
tは、1〜10の整数である)
の化合物であることを特徴とする、カテーテルバルーン。
【請求項2】
前記少なくとも1つの抗再狭窄成分は、前記少なくとも1つの輸送促進分子分散剤中に埋め込まれるかまたは貯蔵されていることを特徴とする、請求項1に記載のカテーテルバルーン。
【請求項3】
前記抗再狭窄成分と前記少なくとも1つの輸送促進分子分散剤の量の比率が、抗再狭窄成分:輸送促進分子分散剤=90重量%:10重量%〜抗再狭窄成分:輸送促進分子分散剤=10重量%:90重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のカテーテルバルーン。
【請求項4】
前記少なくとも1つの抗再狭窄成分は、パクリタキセル、ドセタキセル、シロリムス、バイオリムスA9、ゾタロリムス、エベロリムス、ミオリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、タクロリムス、リダホロリムス、およびテムシロリムスを含むかまたはこれらからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項5】
前記少なくとも1つの抗再狭窄成分はパクリタキセルであることを特徴とする、請求項4に記載のカテーテルバルーン。
【請求項6】
前記少なくとも1つの抗再狭窄成分はシロリムスであることを特徴とする、請求項4に記載のカテーテルバルーン。
【請求項7】
前記一般式(I)の化合物の沸点は、(大気圧において)少なくとも500℃であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項8】
前記一般式(I)の化合物は、7〜9個の酸素原子を含有していることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項9】
前記一般式(I)の化合物のモル質量(分子量)は、少なくとも500g/molであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項10】
前記一般式(I)の化合物の融点は、−60℃超であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項11】
前記一般式(I)の化合物の密度は、0.95g/cm3〜1.05g/cm3であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項12】
前記一般式(I)の化合物の引火点は、100℃超であることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項13】
前記一般式(I)の化合物の屈折率n20/Dは、1.440〜1.460であることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項14】
a)バルーンカテーテルのバルーンを提供する工程と、
b)溶剤又は溶剤混合物中に前記少なくとも1つの抗再狭窄成分と前記少なくとも1つの輸送促進分子分散剤とを含むコーティング溶液を供給する工程と、
c)前記コーティング溶液を用いて、ディッピング法、スプレッド法、スプレー法、ブラシ法、またはピペット法で前記バルーンをコーティングする工程と、
d)前記塗布されたコーティングを乾燥させる工程と、
を含む、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のカテーテルバルーンの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[説明]
本発明は、生体に短期間接触する医療機器、例えばその表面が少なくとも1つの抗再狭窄有効成分と輸送促進分子分散剤でコーティングされ、圧着ステントを有するまたは有さないバルーンカテーテルと、これらの医療機器の作成方法、および懸念される体内管腔内再狭窄の予防または低減におけるこれらの医療機器の使用に関する。
[現況技術]
短期間ならびに長期間用の移植片(ステントまたはバルーンカテーテル)を血管内に導入した後、再狭窄として知られる血管の再閉塞が合併症として頻繁に生じる。関連する技術文献によれば、再狭窄は、血管径が50%未満に減少することと定義することができる。これは経験的に決定されている。
【0002】
狭窄の治療および再狭窄の予防または低減のために移植されるステント、または血管の拡張のために使用されるバルーンカテーテルにより、炎症反応が生じる。この炎症反応は、最初の7日間で治癒過程にとって重要な役割を果たす。続発する過程は、とりわけ、平滑筋細胞の増殖が加速し始める原因となる成長因子の分布と相互関係がある。このため、制御されない成長により短期的に早くも血管の再狭窄や新たな再閉塞を引き起こす。
【0003】
薬物溶出性バルーンカテーテルは、薬剤でコーティングされた従来のステントの代替物である(「カルディオニューズ・レター(CardioNews Letter)」、2006年4月21日)。しかし、薬剤および場合によっては高分子マトリックスでコーティングされた従来のバルーンカテーテルの問題点は、血流内への時期尚早な流出を防ぐため、および再狭窄を効果的に予防または低減するために2〜3分または僅か1分以内の拡張中に薬剤がバルーン表面から血管壁に適切に送達されることを確保するため、バルーンカテーテル挿入中の薬剤のバルーン表面への接着が十分に強固である点である(WO2004028582A1)。
【0004】
しかし、従来技術の実施形態における主要な問題点は、せいぜい1分間の拡張時間中および場合により拡張の数回の繰り返し中に患部の血管部分に十分な抗再狭窄成分が送達されないため、圧着ステントを有さないカテーテルバルーンの拡張時でも再狭窄が効果的に回避されないことである。特に冠状動脈内で拡張を延長して使用した場合に心臓発作のリスクが高まることから、1つのまたは複数の薬剤が血管壁に移動する時間は合計でほんの少ししか残されていない。従来技術のその他の問題点としては、血管壁内に送達される1つのまたは複数の薬剤の量が少ないこと、用量が制御されないこと、バルーン材料の問題等が挙げられる。別の問題としては、標的部位への薬剤の送達が挙げられる。これは、バルーンカテーテルを血流中に挿入し標的部位まで誘導する間にコーティングが部分的に剥がれるため、患部に到達できる薬剤の量が不明なためである。従って、抗再狭窄治療用のこのようなコーティングされたカテーテルバルーンの効果は個別的であり制御されない。
【0005】
カテーテルバルーンの表面からの薬剤の時期尚早な放出を効果的に低減し、かつ最も効果的な形態で1分未満の短い期間に薬剤をバルーン表面から血管壁上に送達することを確保する、コーティング・システムを提供することが、本発明の目的である。
【0006】
本目的は、本発明の独立クレームの技術的教示により解決される。本発明のさらに有利な実施形態は、従属クレーム、説明、および実施例により定義される。
[本発明の説明]
驚くべきことに、抗再狭窄有効成分と、ポリマーではない輸送促進分子分散剤との組み合わせが、本目的を解決する可能性が最も高いことが見出された。
【0007】
従って、本発明は、その表面が少なくとも1つの抗再狭窄成分と少なくとも1つの輸送促進分子分散剤で少なくとも部分的にコーティングされた、圧着ステントを有するまたは有さないカテーテルバルーンに関する。
【0008】
従って、本発明は、抗再狭窄成分と輸送促進分子分散剤のコーティングを有し、圧着ステントを有するまたは有さないカテーテルバルーンに関する。この場合、このコーティングの組み合わせは、活性薬剤の十分な接着力と分解安定性を確保し、高い放出動態を示す。
【0009】
本発明は、血流中での損失薬剤が皆無または皆無に近く、これにより標的部位における薬剤の量を正確に決定することができるため、有利である。さらに、バルーンカテーテルの血管壁接触時間が短くても、バルーンカテーテルの表面から血管壁への制御可能で最適な薬剤送達が確保される。加えて、輸送促進分子分散剤中の薬剤は、粒子または結晶および特に大きい粒子または結晶の形成を回避する形態をとる。これは、粒子および結晶、特に粒子および結晶は、もはや抗再狭窄効果を示さず、測定可能な治療効果を達成することなく、塗布される薬剤の量を増加させるだけであるためである。従って、拡張時に活性薬剤分子のみが血管壁に送達され、さらに約1分という非常に短い拡張時間中に輸送促進分子分散剤が薬剤を血管壁上に良好に移動させるため、輸送促進分子分散剤中に分散された微粒子薬剤または分子薬剤が好ましい。
【0010】
従って、本発明は、薬剤溶出性コーティングを有するカテーテルバルーンに関する。本出願で使用される、カテーテルバルーンまたは従来のカテーテルバルーンという用語は、カテーテルバルーン、分岐バルーン、折り畳みバルーン、血管形成術用バルーン、PTCAバルーン、ならびにスロット付きバルーンや針付きバルーン等の特殊バルーンを意味する。
【0011】
ここで、「従来のカテーテルバルーン」という用語は、拡張により脈管、特に血管を拡張させるために用いられ、所望によりステントを同時に配置する、拡張可能なカテーテルバルーンを意味する。また、自己拡張ステント用に適しており、ステントの時期尚早な膨張を回避するためにステントを覆う脱着可能な保護シースを有する、ステント交換用の拡張不能なカテーテルバルーンも、この用語に含まれる。
【0012】
しかし、自己拡張ステント用の拡張不能カテーテルバルーン用などの保護シースを有する膨張可能かつ再圧縮可能なカテーテルバルーンは一般的に、カテーテルバルーン上に配置されたコーティングが時期尚早に剥がれることのないようにするため、ステントを用いずに適用される。
【0013】
分岐バルーンは、脈管、特に血管の、分岐を治療するためのカテーテルバルーンを意味する。このようなバルーンは、2つのアームを有するか、または2つの接続されたバルーンもしくは2つの個別のバルーンで構成することができる。2つのバルーンは、脈管分岐の治療のため、または脈管分岐内にもしくは脈管分岐に近接した場所に1つもしくは2つのステントを配置するため、同時にもしくは連続して適用される。
【0014】
例えばEP1189553B1、EP0519063B1、WO03/059430A1、およびWO94/23787A1に記載されているような、バルーンが圧縮された状態では「折り畳み部」を有し、バルーンの膨張中は少なくとも部分的に開くバルーンは、「折り畳みバルーン」と称される。
【0015】
細孔を有するバルーン、特に膨張時または加圧時に液体および溶液を通過させる微細孔を有するバルーンは、特殊バルーンと称される。このような微細開口部を有するバルーンは、EP0383429Aに開示されている。さらに、「特殊バルーン」という用語は、微細針を有する、WO02/043796A2に記載されたバルーンカテーテルのような、特別に設計された表面を有するバルーン、または薬剤を担体と共にまたはそれ無しで貯蔵するために微小もしくは超微小の粗さの表面を有する、WO03/026718A1に記載されたバルーンカテ−テルを意味する。
【0016】
「バルーン」または「カテーテルバルーン」という用語は、原則として、通常カテーテルと共に用いられる、膨張可能かつ再圧縮可能、ならびに一時的な移植が可能な任意の医療装置を意味する。
【0017】
本発明のコーティングされたバルーンは、ステントを用いずに使用してもよいし、圧着ステントを用いて使用してもよい。本明細書において、これらのバルーンの使用は、狭窄した脈管の初期治療に限定されず、特に続発する再狭窄(例えば、ステント内再狭窄)を食い止めるため、および収縮の繰り返しを回避するために、本発明の範囲内で拡張される。
【0018】
カテーテルバルーンは、一般的な材料、特に以下にさらに説明されるようなポリマーからなり、特にPA12、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエーテル等のポリアミドで形成することができる。
【0019】
ステントも、外科用ステンレス鋼、チタン、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、金、ニチノール、マグネシウム、鉄、前記金属の合金、ならびに高分子材料、好ましくはキトサン、ヘパラン、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリグリセリド、ポリラクチド、および前記物質のコポリマー等の吸収性高分子材料等の一般的材料で形成することができる。
【0020】
好ましくは、本発明のコーティングされたカテーテルバルーンは、圧着ステントを用いずに使用されるが、圧着ステントを用いて使用することも可能であり好ましい。コーティングされたバルーンに加えて圧着ステントを用いる場合は、ステントはコーティングしなくても(むき出しのステント)、またはコーティングしてもよい。この場合、ステントは、カテーテルバルーンのコーティングとは異なるコーティングを有してもよく、また異なる薬剤を有してもよい。
【0021】
「コーティング」という用語は、カテーテルバルーンの表面のコーティングだけでなく、折り畳み部、空洞、細孔、微細針、またはバルーン材料の上、間、もしくは内部のその他の充填可能な領域の充填もしくはコーティングも含んでもよい。
【0022】
薬剤とは、薬理活性を有する物質を意味する。抗再狭窄成分は、伸張された脈管の再閉塞の原因となり得る平滑筋細胞の増殖を阻害する物質を含む。本発明の好ましい抗再狭窄成分としては、パクリタキセル、ドセタキセル、ラパマイシン(シロリムス)、バイオリムスA9、ゾタロリムス、エベロリムス、ミオリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、タクロリムス、リダホロリムスおよびテムシロリムスが挙げられる。パクリタキセルの使用は、特に好ましい。さらに好ましいのは、シロリムス、またはシロリムスとパクリタキセルの組み合わせの使用である。
【0023】
原則として、任意の薬剤および薬剤の組み合わせを使用することができる。しかし、パクリタキセルまたはシロリムスとその他の薬剤との組み合わせが好ましい。
溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、アセトン、ヘプタン、n−ヘキサン、DMF、DMSO、メタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレン、メチルアセテート、エチルアセテート、エーテル、石油エーテル、アセトニトリル、酢酸エチルおよびメチルエステル、シクロヘキサン、および対応する混合物等の揮発性有機化合物が使用される。コーティング材料(例えば、ヒドロゲルか水溶性薬剤か)によっては、水の存在が望ましい場合もある。特に好ましいのは、アセトン、エタノール、およびエチルアセテートである。薬剤および輸送促進分子分散剤によっては、グリセロール、エチレングリコール、または水等の極性溶媒も使用することができる。
【0024】
分子分散剤は、本発明の意図において、相互に化学反応を起こすことなく少なくとも1つの抗再狭窄成分と混合物を形成する物質である。さらに、抗再狭窄成分は、分子状および粒径<1nmで、輸送促進分子分散剤中に微細に分散された状態で存在してもよい。1つのまたは複数の薬剤は、微細に、好ましくは輸送促進分子分散剤と均質に分散され、カテーテルバルーンから血流中に時期尚早に放出されないため、本発明のコーティングは有利である。従って、本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、少なくとも1つの輸送促進分子分散剤中に埋め込まれるか、または好ましくは分子形態、もしくは1nm未満の平均粒径を有する粒子形態で貯蔵される。
【0025】
本発明によれば、バルーンカテーテルの表面から脈管壁の細胞および/または組織への、またはその中への、少なくとも1つの薬剤の移動を、輸送促進因子を用いない同一の薬剤の移動と比較して増加させる物質を、輸送促進剤と呼ぶ。従って、輸送促進剤は、薬剤の脈管内への吸収または薬剤の脈管壁上への移動を加速および促進する物質であり、これにより、既存の薬剤または薬剤の組み合わせを短時間の接触中に制御することができ、所定の用量を脈管壁に移動させることができる。
【0026】
従来の技術と比較して、少なくとも1つの薬剤は、2〜3分の時間枠内で、好ましくは1分、より好ましくは50秒、さらにより好ましくは40秒、特に好ましくは30秒で、バルーン表面から細胞壁まで移動される。また、このため、バルーンカテーテルの脈管壁との接触が短く、特に冠状動脈において脈管の閉鎖がほんの短い期間で済み、従って心臓発作のリスクが減少するため、少なくとも1つの薬剤の最大部分を脈管壁に短い時間内で移動させるという特徴は有利である。また、拡張時間が短いため、脈管の微小亀裂のリスクが低減する。
【0027】
本発明によれば、輸送促進分子分散剤は、バルーンカテーテルの導入中にはその表面に少なくとも1つの薬剤を保持し、バルーンカテーテルの拡大中には標的部位に少なくとも1つの薬剤を最適に移動させることを確保する役割を果たす。
【0028】
本発明によれば、少なくとも1つの抗再狭窄成分と少なくとも1つの輸送促進分子分散剤の量の比率が、抗再狭窄成分:輸送促進分子分散剤=95重量%:5重量%〜抗再狭窄成分:輸送促進分子分散剤=5重量%:95重量%であることが特に好ましい。好ましい実施形態では、少なくとも1つの抗再狭窄成分と少なくとも1つの輸送促進分子分散剤の量の比率が、抗再狭窄成分:輸送促進分子分散剤=90重量%:10重量%〜抗再狭窄成分:輸送促進分子分散剤=10重量%:90重量%である。より好ましくは、少なくとも1つの抗再狭窄成分と少なくとも1つの輸送促進分子分散剤の量の比率は、抗再狭窄成分:輸送促進分子分散剤=95重量%:5重量%〜抗再狭窄成分:輸送促進分子分散剤=70重量%:30重量%である。
【0029】
本発明によれば、以下の一般式(I)の化合物が輸送促進分子分散剤として使用される。
【0030】
【化1】
式中、
1は、以下の残基の1つを表す。
−L1−R18、−C(R3)(R4)−L1−R18、−L1−C(R3)(R4)−R18、−C(R3)(R4)−L1−C(R5)(R6)−R18、−L1−Y−R18、−Y−L1−R18、−Y−C(R3)(R4)−L1−R18、−C(R3)(R4)−Y−L1−R18、−C(R3)(R4)−L1−Y−R18、−Y−L1−C(R3)(R4)−R18、−L1−Y−C(R3)(R4)−R18、−L1−C(R3)(R4)−Y−R18、−Y−C(R3)(R4)−L1−C(R5)(R6)−R18、−C(R3)(R4)−Y−L1−C(R5)(R6)−R18、−C(R3)(R4)−L1−Y−C(R5)(R6)−R18、−C(R3)(R4)−L1−C(R5)(R6)−Y−R18
【0031】
2は、以下の残基の1つを表す。
−R7、(−CH2−)p−R7、(−O−CH2−)p−R7
3は、以下の残基の1つを表す。
−M1−R26、−M1−M2−R26、−M1−(M2r−M3−R26、−M1−(M2r−M3−(M4s−R26
【0032】
4は、以下の残基の1つを表す。
−L2−R19、−C(R10)(R11)−L2−R19、−L2−C(R10)(R11)−R19、−C(R10)(R11)−C(R12)(R13)−L2−R19、−C(R10)(R11)−L2−C(R12)(R13)−R19、−L2−C(R10)(R11)−C(R12)(R13)−R19
【0033】
1は、以下の基の1つを表す。
【0034】
【化2】
2は、以下の基の1つを表す。
−O−CO−、−NH−CO−、−CO−、−O−、−NH−、−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、−O−CO−O−、−NH−CO−NH−。
【0035】
1は、以下の基の1つを表す。
【0036】
【化3】
2は、以下の基の1つを表す。
−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−O−、−O−CH2−、−O−CH2−CH2−、−O−CH2−CH2−CH2−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−、−O−CO−、−O−CO−CH2−、−O−CO−CH2−CH2−、−O−CO−CH2−CH2−CH2−、−O−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CO−、−CO−CH2−、−CO−CH2−CH2−、−CO−CH2−CH2−CH2−、−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−。
【0037】
3は、以下の基の1つを表す。
結合基、−NH−、−NH−CO−、−NH−CO−NH−、−NH−CS−、−NH−CS−NH−、−NH−C(NH)−NH−。
【0038】
4は、以下の基の1つを表す。
(−CH2−O−CH2−)t、(−O−CH2−CH2−)t、(−CH2−CH2−O−)t
【0039】
Yは、(−CH2−)m、(−CH2−O−)m、(−O−CH2−)m、(−CH2−CH2−O−)mまたは(−CH2−CH2−CH2−O−)mを表す。
1〜R13は、相互に独立して以下の残基を表す。
−R14〜−R30、−OH、−OCH3、−OC25、−OC37、−O−cyclo−C35、−OCH(CH32、−OC(CH33、−OC49、−OPh、−OCH2−Ph、−OCPh3、−SH、−SCH3、−SC25、−SC37、−S−cyclo−C35、−SCH(CH32、−SC(CH33、−NO2、−F、−Cl、−Br、−I、−P(O)(OH)2、−P(O)(OCH32、−P(O)(OC252、−P(O)(OCH(CH322、−C(OH)[P(O)(OH)22、−Si(CH32(C(CH33)、−Si(C253、−Si(CH33、−N3、−CN、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−CHO、−COCH3、−COC25、−COC37、−CO−cyclo−C35、−COCH(CH32、−COC(CH33、−COOH、−COCN、−COOCH3、−COOC25、−COOC37、−COO−cyclo−C35、−COOCH(CH32、−COOC(CH33、−O−CO−R14、−CONH2、−CONHCH3、−CONHC25、−CONHC37、−CONH−cyclo−C35、−CONH[CH(CH32]、−CONH[C(CH33]、−CON(CH32、−CON(C252、−CON(C372、−CON(cyclo−C352、−CON[CH(CH322、−CON[C(CH332、−NHCOCH3、−NHCOC25
−NHCOC37、−NHCO−cyclo−C35、−NHCO−CH(CH32、−NHCO−C(CH33、−NHCO−OCH3、−NHCO−OC25、−NHCO−OC37、−NHCO−O−cyclo−C35、−NHCO−OCH(CH32、−NHCO−OC(CH33、−NH2、−NHCH3、−NHC25、−NHC37、−NH−cyclo−C35、−NHCH(CH32、−NHC(CH33、−N(CH32、−N(C252、−N(C372、−N(cyclo−C352、−N[CH(CH322、−N[C(CH332、−SOCH3、−SOC25、−SOC37
−SO−cyclo−C35、−SOCH(CH32、−SOC(CH33、−SO2CH3、−SO225、−SO237、−SO2−cyclo−C35、−SO2CH(CH32、−SO2C(CH33、−SO3H、−SO3CH3、−SO325、−SO337、−SO3−cyclo−C35、−SO3CH(CH32、−SO3C(CH33、−SO2NH2、−OCF3、−OC25、−O−COOCH3、−O−COOC25、−O−COOC37、−O−COO−cyclo−C35、−O−COOCH(CH32、−O−COOC(CH33、−NH−CO−NH2、−NH−CO−NHCH3、−NH−CO−NHC25、−NH−CO−NHC37、−NH−CO−NH−cyclo−C35、−NH−CO−NH[CH(CH32]、−NH−CO−NH[C(CH33]、−NH−CO−N(CH32、−NH−CO−N(C252、−NH−CO−N(C372、−NH−CO−N(cyclo−C352、−NH−CO−N[CH(CH322、−NH−CO−N[C(CH332、−NH−CS−NH2、−NH−CS−NHCH3、−NH−CS−NHC25、−NH−CS−NHC37、−NH−CS−NH−cyclo−C35
−NH−CS−NH[CH(CH32]、−NH−CS−NH[C(CH33]、−NH−CS−N(CH32、−NH−CS−N(C252、−NH−CS−N(C372、−NH−CS−N(cyclo−C352、−NH−CS−N[CH(CH322、−NH−CS−N[C(CH332、−NH−C(=NH)−NH2、−NH−C(=NH)−NHCH3、−NH−C(=NH)−NHC25、−NH−C(=NH)−NHC37、−NH−C(=NH)−NH−cyclo−C35、−NH−C(=NH)−NH[CH(CH32]、−NH−C(=NH)−NH[C(CH33]、−NH−C(=NH)−N(CH32、−NH−C(=NH)−N(C252、−NH−C(=NH)−N(C372、−NH−C(=NH)−N(cyclo−C352、−NH−C(=NH)−N[CH(CH322、−NH−C(=NH)−N[C(CH332、−O−CO−NH2、−O−CO−NHCH3、−O−CO−NHC25
−O−CO−NHC37、−O−CO−NH−cyclo−C35、−O−CO−NH[CH(CH32]、−O−CO−NH[C(CH33]、−O−CO−N(CH32、−O−CO−N(C252、−O−CO−N(C372、−O−CO−N(cyclo−C352、−O−CO−N[CH(CH322、−O−CO−N[C(CH332、−O−CO−OCH3、−O−CO−OC25、−O−CO−OC37、−O−CO−O−cyclo−C35、−O−CO−OCH(CH32、−O−CO−OC(CH33
【0040】
14〜R30は、相互に独立して以下の残基を表す。
−CH2F、−CHF2、−CF3、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2I、−CH2−CH2F、−CH2−CHF2、−CH2−CF3、−CH2−CH2Cl、−CH2−CH2Br、−CH2−CH2I、cyclo−C35、cyclo−C47、cyclo−C59、cyclo−C611、cyclo−C713、cyclo−C815、−Ph、−CH2−Ph、−CPh3、−H、−CH3、−C25、−C37、−CH(CH32、−C49、−CH2−CH(CH32、−CH(CH3)−C25、−C(CH33、−C511、−CH(CH3)−C37、−CH2−CH(CH3)−C25、−CH(CH3)−CH(CH32、−C(CH32−C25、−CH2−C(CH33、−CH(C252、−C24−CH(CH32、−C613、−C715、−C817、−C36−CH(CH32、−C24−CH(CH3)−C25、−CH(CH3)−C49、−CH2−CH(CH3)−C37、−CH(CH3)−CH2−CH(CH32、−CH(CH3)−CH(CH3)−C25、−CH2−CH(CH3)−CH(CH32、−CH2−C(CH32−C25、−C(CH32−C37、−C(CH32−CH(CH32、−C24−C(CH33、−CH(CH3)−C(CH33、−CH=CH2、−CH2−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH=CH−CH3、−C24−CH=CH2、−CH2−CH=CH−CH3、−CH=CH−C25、−CH2−C(CH3)=CH2、−CH(CH3)−CH=CH、−CH=C(CH32、−C(CH3)=CH−CH3、−CH=CH−CH=CH2、−C36−CH=CH2、−C24−CH=CH−CH3
−CH2−CH=CH−C25、−CH=CH−C37、−CH2−CH=CH−CH=CH2、−CH=CH−CH=CH−CH3、−CH=CH−CH2−CH=CH2、−C(CH3)=CH−CH=CH2、−CH=C(CH3)−CH=CH2、−CH=CH−C(CH3)=CH2、−C24−C(CH3)=CH2、−CH2−CH(CH3)−CH=CH2、−CH(CH3)−CH2−CH=CH2、−CH2−CH=C(CH32、−CH2−C(CH3)=CH−CH3、−CH(CH3)−CH=CH−CH3、−CH=CH−CH(CH32、−CH=C(CH3)−C25、−C(CH3)=CH−C25、−C(CH3)=C(CH32、−C(CH32−CH=CH2、−CH(CH3)−C(CH3)=CH2、−C(CH3)=CH−CH=CH2、−CH=C(CH3)−CH=CH2、−CH=CH−C(CH3)=CH2、−C48−CH=CH2、−C36−CH=CH−CH3、−C24−CH=CH−C25、−CH2−CH=CH−C37、−CH=CH−C49、−C36−C(CH3)=CH2、−C24−CH(CH3)−CH=CH2、−CH2−CH(CH3)−CH2−CH=CH2、−CH(CH3)−C24−CH=CH2、−C24−CH=C(CH32、−C24−C(CH3)=CH−CH3、−CH2−CH(CH3)−CH=CH−CH3、−CH(CH3)−CH2−CH=CH−CH3
−CH2−CH=CH−CH(CH32、−CH2−CH=C(CH3)−C25、−CH2−C(CH3)=CH−C25、−CH(CH3)−CH=CH−C25、−CH=CH−CH2−CH(CH32、−CH=CH−CH(CH3)−C25、−CH=C(CH3)−C37、−C(CH3)=CH−C37、−CH2−CH(CH3)−C(CH3)=CH2、−CH(CH3)−CH2−C(CH3)=CH2、−CH(CH3)−CH(CH3)−CH=CH2、−CH2−C(CH32−CH=CH2、−C(CH32−CH2−CH=CH2、−CH2−C(CH3)=C(CH32、−CH(CH3)−CH=C(CH32、−C(CH32−CH=CH−CH3、−CH(CH3)−C(CH3)=CH−CH3、−CH=C(CH3)−CH(CH32、−C(CH3)=CH−CH(CH32、−C(CH3)=C(CH3)−C25、−CH=CH−C(CH33、−C(CH32−C(CH3)=CH2、−CH(C25)−C(CH3)=CH2、−C(CH3)(C25)−CH=CH2、−CH(CH3)−C(C25)=CH2、−CH2−C(C37)=CH2、−CH2−C(C25)=CH−CH3、−CH(C25)−CH=CH−CH3、−C(C49)=CH2、−C(C37)=CH−CH3、−C(C25)=CH−C25
−C(C25)=C(CH32、−C[C(CH33]=CH2、−C[CH(CH3)(C25)]=CH2、−C[CH2−CH(CH32]=CH2、−C24−CH=CH−CH=CH2、−CH2−CH=CH−CH2−CH=CH2、−CH=CH−C24−CH=CH2、−CH2−CH=CH−CH=CH−CH3、−CH=CH−CH2−CH=CH−CH3、−CH=CH−CH=CH−C25、−CH2−CH=CH−C(CH3)=CH2、−CH2−CH=C(CH3)−CH=CH2、−CH2−C(CH3)=CH−CH=CH2、−CH(CH3)−CH=CH−CH=CH2、−CH=CH−CH2−C(CH3)=CH2、−CH=CH−CH(CH3)−CH=CH2、−CH=C(CH3)−CH2−CH=CH2、−C(CH3)=CH−CH2−CH=CH2、−CH=CH−CH=C(CH32、−CH=CH−C(CH3)=CH−CH3、−CH=C(CH3)−CH=CH−CH3、−C(CH3)=CH−CH=CH−CH3、−CH=C(CH3)−C(CH3)=CH2、−C(CH3)=CH−C(CH3)=CH2、−C(CH3)=C(CH3)−CH=CH2、−CH=CH−CH=CH−CH=CH2、−C≡CH、−C≡C−CH3、−CH2−C≡CH、−C24−C≡CH、−CH2−C≡C−CH3、−C≡C−C25
−C36−C≡CH、−C24−C≡C−CH3、−CH2−C≡C−C25、−C≡C−C37、−CH(CH3)−C≡CH、−CH2−CH(CH3)−C≡CH、−CH(CH3)−CH2−C≡CH、−CH(CH3)−C≡C−CH3、−C48−C≡CH、−C36−C≡C−CH3、−C24−C≡C−C25、−CH2−C≡C−C37、−C≡C−C49、−C24−CH(CH3)−C≡CH、−CH2−CH(CH3)−CH2−C≡CH、−CH(CH3)−C24−C≡CH、−CH2−CH(CH3)−C≡C−CH3、−CH(CH3)−CH2−C≡C−CH3、−CH(CH3)−C≡C−C25、−CH2−C≡C−CH(CH32、−C≡C−CH(CH3)−C25、−C≡C−CH2−CH(CH32、−C≡C−C(CH33、−CH(C25)−C≡C−CH3、−C(CH32−C≡C−CH3、−CH(C25)−CH2−C≡CH、−CH2−CH(C25)−C≡CH、−C(CH32−CH2−C≡CH、
−CH2−C(CH32−C≡CH、−CH(CH3)−CH(CH3)−C≡CH、−CH(C37)−C≡CH、−C(CH3)(C25)−C≡CH、−C≡C−C≡CH、−CH2−C≡C−C≡CH、−C≡C−C≡C−CH3、−CH(C≡CH)2、−C24−C≡C−C≡CH、−CH2−C≡C−CH2−C≡CH、−C≡C−C24−C≡CH、−CH2−C≡C−C≡C−CH3、−C≡C−CH2−C≡C−CH3、−C≡C−C≡C−C25、−C≡C−CH(CH3)−C≡CH、−CH(CH3)−C≡C−C≡CH、−CH(C≡CH)−CH2−C≡CH、−C(C≡CH)2−CH3、−CH2−CH(C≡CH)2、−CH(C≡CH)−C≡C−CH3
【0041】
上記の各式において、
mは、1〜10の整数であり、
nは、0〜5の整数であり、
pは、0〜3の整数であり、
qは、0〜4の整数であり、
rは、0または1を表し、
sは、0または1を表し、
tは、1〜10の整数である。
【0042】
少なくとも1つの抗再狭窄成分を埋め込むための輸送促進分子分散剤は、具体的な物性により定義される。
輸送促進分子分散剤は、炭素、水素、および酸素、ならびに所望により窒素を含有する、有機化合物である。輸送促進分子分散剤が窒素を含有する場合、窒素は好ましくはアミド結合中にまたはアミン基の形態で存在する。このような化合物は、好ましくは1〜5個のアミド結合、より好ましくは2〜3個のアミド結合を含有し、および/または1〜5個のアミン基を有する。この場合、窒素原子の合計数は、1〜10、好ましくは2〜7、より好ましくは3〜5である。
【0043】
窒素を含有する輸送促進分子分散剤の融点は、−20℃超、好ましくは0℃超、より好ましくは20℃超、および特に好ましくは40℃超であり、沸点は、少なくとも470℃、好ましくは少なくとも490℃、より好ましくは少なくとも510℃、より好ましくは少なくとも530℃、より好ましくは少なくとも550℃、より好ましくは少なくとも570℃、より好ましくは少なくとも590℃、より好ましくは少なくとも610℃、および特に好ましい沸点は少なくとも630℃である。加えて、沸点は650℃を超えてはならない。これらの沸点は、海面標準気圧、即ち760mmHgで有効である。
【0044】
好ましいサブグループは、炭素、水素、および酸素からなり、塩として存在せず、荷電せず、酸性プロトンを有さない、窒素を含まない輸送促進分子分散剤である。このような一般式(I)の輸送促進分子分散剤の沸点は、好ましくは少なくとも400℃、より好ましくは少なくとも420℃、さらにより好ましくは少なくとも440℃、さらにより好ましくは少なくとも460℃、さらにより好ましくは少なくとも470℃、さらにより好ましくは少なくとも480℃、さらにより好ましくは少なくとも490℃、およびさらに好ましい沸点は少なくとも500℃である。加えて、沸点は550℃を超えてはならない。これらの沸点は、海面標準気圧(1.013hPa)、即ち760mmHgで有効である。
【0045】
輸送促進分子分散剤に含まれる酸素原子の数は、1〜15、より好ましくは2〜14、さらにより好ましくは3〜13、さらにより好ましくは4〜12、さらにより好ましくは5〜11、さらにより好ましくは6〜10、特に好ましくは7〜9である。酸素原子は、好ましくはエステル結合またはエーテル結合中に存在する。さらに、エーテル結合が存在する場合のエーテル結合の数は、好ましくは4〜12、より好ましくは5〜11、さらにより好ましくは6〜10であり、エステル結合が存在する場合のエステル結合の数は、2〜6、好ましくは3〜5である。
【0046】
一般式(I)の窒素を含まない輸送促進分子分散剤のモル質量(分子量)は、少なくとも400g/mol、より好ましくは少なくとも420g/mol、さらにより好ましくは少なくとも440g/mol、さらにより好ましくは少なくとも460g/mol、さらにより好ましくは少なくとも470g/mol、さらにより好ましくは少なくとも480g/mol、さらにより好ましくは少なくとも490g/molであり、特に好ましくは少なくとも500g/molでなければならない。
【0047】
一般式(I)の窒素を含有する輸送促進分子分散剤のモル質量(分子量)は、少なくとも450g/mol、より好ましくは少なくとも460g/mol、さらにより好ましくは少なくとも470g/mol、さらにより好ましくは少なくとも480g/mol、さらにより好ましくは少なくとも490g/mol、さらにより好ましくは少なくとも500g/mol、さらにより好ましくは少なくとも510g/molであり、特に好ましくは少なくとも520g/molでなければならない。
【0048】
加えて、少なくとも1つのアミノ基またはアミド基を有する輸送促進分子分散剤は、25〜50の炭素原子、好ましくは27〜48の炭素原子、より好ましくは29〜46の炭素原子、さらに好ましくは31〜44の炭素原子、および特に好ましくは33〜42の炭素原子を有する。この場合、窒素を含まない輸送促進分子分散剤は、20〜40の炭素原子、好ましくは22〜38の炭素原子、より好ましくは24〜36の炭素原子、より好ましくは26〜34の炭素原子、および特に好ましくは28〜32の炭素原子を有する。
【0049】
窒素を含まない輸送促進分子分散剤の好ましい群の融点は、−80℃超、より好ましくは−75℃超、より好ましくは−70℃超、より好ましくは−65℃超、および特に好ましくは−60℃超である。これらの融点は、特に直鎖アルキル残基により得られる。さらに、一般式(I)の輸送促進分子分散剤の密度は、0.80g/cm〜1.20g/cm3、より好ましくは0.85g/cm3〜1.15g/cm3、より好ましくは0.90g/cm3〜1.10g/cm3、より好ましくは0.93g/cm3〜1.12g/cm3、および特に好ましくは0.95g/cm3〜1.05g/cm3であってもよいことがわかった。
【0050】
さらに、好ましい一般式(I)の輸送促進分子分散剤の引火点は、50℃超、より好ましくは60℃超、さらにより好ましくは70℃超、さらにより好ましくは80℃超、さらにより好ましくは85℃超、さらにより好ましくは90℃超、さらにより好ましくは95℃超、および特に好ましくは100℃超であることがわかった。
【0051】
好ましい一般式(I)の輸送促進分子分散剤の測定屈折率は、1.40超1.50未満であった。従って、1.400〜1.500の屈折率n20/Dが好ましく、1.410〜1.490の屈折率n20/Dがより好ましく、さらに好ましくは1.420〜1.480、さらにより好ましくは1.430〜1.470、さらにより好ましくは1.435〜1.465、特に好ましくは1.440〜1.460である。このような輸送促進分子分散剤は、より好ましいほど、上述の化学的および物理的パラメータはより好ましい範囲に入ることに留意されたい。従って、最も好適なのは、上述のパラメータ全てが最も好ましい範囲に入る輸送促進分子分散剤である。
【0052】
従って、屈折率n20/Dが1.49、沸点が480℃、および密度が1.18g/cm3である窒素を含有する輸送促進分子分散剤と、屈折率n20/Dが1.44、沸点が510℃、および密度が1.00g/cm3である窒素を含まない輸送促進分子分散剤は、両方の化合物のその他のパラメータが全て好ましい範囲から外れている場合、前者は後者より好ましくない。
【0053】
加えて、屈折率、沸点、融点、引火点、および密度の決定は、当業者に周知の標準的な方法によって行われることに言及しておく。
表1に記載されている19の輸送促進分子分散剤について、抗再狭窄成分とともに、カテーテルバルーンのコーティング材料として試験を行った。これらの19の化合物は、市販のものか、またはエステル化もしくはアミド結合の調製等の簡単な合成や標準的な反応により入手可能であるかのいずれかである。
【0054】
【表1a】
【0055】
【表1b】
【0056】
【表1c】
【0057】
【表1d】
【0058】
【表1e】
圧着ステントを有するまたは有さないバルーンカテーテルを完全にまたは部分的にコーティングするため、少なくとも1つの抗再狭窄成分と、少なくとも1つの輸送促進分子分散剤と、潜在的添加剤を含む溶媒または溶媒混合物とからなる溶液を、スプレー法、ディッピング法、ブラシ法、注入法、ドラッグ(drag)法(引張り法)、ロール法、もしくはピペット法、またはエレクトロスピニング法により、バルーンカテーテル表面上に塗布する。バルーンカテーテルは、部分的に又は完全に、膨張した状態もしくは折り畳んだ状態のいずれかで、または圧着ステントとともに、コーティングすることができる。これらのコーティング方法は、現況技術であり、国際公開第WO2008086794号に詳細に開示されている。ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、またはその他のホスファチジル化合物は、任意の添加剤として、コーティングの全構成成分の50重量%の量まで使用することができる。
【0059】
「コーティング」という用語は、カテーテルバルーンの表面のコーティングだけでなく、折り畳み部、空洞、細孔、微細針、またはバルーン材料の上、間、もしくは内部のその他の充填可能な空間の充填またはコーティングも含むことが意図される。
【0060】
本発明のバルーン表面上のコーティングの乾燥は、例えば、空気乾燥(leaving toair)(溶媒の蒸発)や、国際公開第WO2008086794号に詳細に記載されている、加熱および/または減圧(真空)または回転乾燥により、行うことができる。これにより溶媒が除去され、コーティングは、少なくとも1つの薬剤と少なくとも1つの輸送促進分子分散剤とからなる。
【0061】
従って、コーティング溶液は、少なくとも1つの薬剤と、少なくとも1つの輸送促進分子分散剤と、少なくとも1つの溶媒を含有する。
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、本発明を特定の実施形態に制限するものではない。
【0062】
[実施例]
実施例1:パクリタキセルと化合物1を用いたカテーテルバルーンのコーティング
未膨張のカテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付ける。エタノール中90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物1の溶液を、スプレー装置により、カテーテルバルーン表面上に塗布する。その後、室温にて一晩、低速回転(20rpm)でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0063】
実施例2:パクリタキセルと化合物2を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、メタノール中85重量%のパクリタキセルと15重量%の化合物2の溶液を用いて、ピペット法でコーティングする。その後、室温にて数時間、低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0064】
実施例3:パクリタキセルと化合物3を用いたカテーテルバルーンのコーティング
アセトン中80重量%のパクリタキセルと20重量%の化合物3の溶液中にカテーテルバルーンを浸漬し、その後、室温にてその長手方向軸周りの低速回転で乾燥させる。浸漬手順をさらに2回繰り返す。
【0065】
実施例4:パクリタキセルと化合物4を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、エタノール中90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物4の溶液を用いて、ピペット法でコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0066】
実施例5:パクリタキセルと化合物5を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、エタノール中83重量%のパクリタキセルと17重量%の化合物5の溶液を用いて、ピペット法でコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0067】
実施例6:パクリタキセルと化合物6を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中95重量%のパクリタキセルと5重量%の化合物6の溶液を用いて、スプレー法でコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0068】
実施例7:パクリタキセルと化合物7を用いたカテーテルバルーンのコーティング
圧縮された状態の折り畳みバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、エタノール中90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物7の溶液を用いて、バルーンの折り畳み部をピペット法でコーティングする。その後、真空下、室温にて、低速回転でバルーンを乾燥させる。
【0069】
実施例8:パクリタキセルと化合物8を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中90重量%のパクリタキセルと10重量%の輸送促進分子分散剤化合物8の溶液を用いて、スプレー法でコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0070】
実施例9:パクリタキセルと化合物9を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中86重量%のパクリタキセルと14重量%の化合物9の溶液を用いて、スプレー法で完全にコーティングする。その後、真空下、室温にて、低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0071】
実施例10:パクリタキセルと化合物10を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中60重量%のパクリタキセルと40重量%の化合物10の溶液を用いて、ドラッグ(drag)法で完全にコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0072】
実施例11:パクリタキセルと化合物11を用いたカテーテルバルーンのコーティング
DMSO中40重量%のパクリタキセルと60重量%の化合物11の溶液中にカテーテルバルーンを浸漬させる。その後、真空下、室温にて、低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0073】
実施例12:パクリタキセルと化合物12を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中80重量%のパクリタキセルと20重量%の化合物12の溶液を用いて、ドラッグ(drag)法で完全にコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0074】
実施例13:パクリタキセルと化合物13を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物13の溶液を用いて、スプレー法で完全にコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0075】
実施例14:パクリタキセルと化合物14を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中91重量%のパクリタキセルと9重量%の化合物14の溶液を用いて、ピペット法で完全にコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0076】
実施例15:パクリタキセルと化合物15を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中89重量%のパクリタキセルと11重量%の化合物15の溶液を用いて、スプレッド法で完全にコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0077】
実施例16:パクリタキセルと化合物16を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物16の溶液を用いて、スプレー法で完全にコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0078】
実施例17:パクリタキセルと化合物17を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物17の溶液を用いて、スプレッド法で完全にコーティングする。コーティング手順をさらに2回繰り返す。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0079】
実施例18:パクリタキセルと化合物18を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物18の溶液を用いて、スプレー法で完全にコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0080】
実施例19:パクリタキセルと化合物19を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、アセトン中90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物19の溶液を用いて、ブラシ法で完全にコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0081】
実施例20:ラパマイシンと化合物1を用いたカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、エチルアセテート中90重量%のラパマイシンと10重量%の化合物1の溶液を用いて、スプレー法で完全にコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0082】
実施例21:ラパマイシンと化合物2および3の混合物を用いたカテーテルバルーンのコーティング
エチルアセテート中90重量%のラパマイシンと、5重量%の化合物2の輸送促進分子分散剤と、5重量%の化合物3の溶液中で、カテーテルバルーンを完全にコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0083】
実施例22:パクリタキセルとラパマイシンと化合物4の混合物を用いたカテーテルバルーンのコーティング
エチルアセテート中、45重量%のパクリタキセルと、45重量%のラパマイシン、及び10重量%の化合物4の溶液を用いて、カテーテルバルーンを完全にコーティングする。その後、真空下、室温にて、低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0084】
実施例23:パクリタキセルと化合物5を用いた、圧着ステントを有するカテーテルバルーンのコーティング
カテーテルバルーンを水平棒上に回転可能に取り付け、エタノール中90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物5の溶液を用いて、スプレー法でコーティングする。その後、室温にて低速回転でカテーテルバルーンを乾燥させる。次に、このコーティングされたカテーテルバルーン上にポリラクチド製ステントを圧着し、エタノール中90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物5の溶液を用いて同様にコーティングする。
【0085】
実施例24:ブタの狭窄血管内でのカテーテルバルーンの使用
90重量%のパクリタキセルと10重量%の化合物1〜19のコーティングを有するカテーテルバルーンの有効性を、冠状動脈が過度に伸ばされたブタを使用した動物実験で試験した。
【0086】
ブタ1匹当たり最大3つの冠状動脈(左回旋動脈、左下行前動脈、右冠状動脈)を拡張した。一研究グループ当たり10の冠状動脈を処置し、全脈管の結果を平均した。これらの結果を表2にまとめている。「後期管腔損失」という用語は、拡張後の血管部分の直径と、28日後に記録された追跡血管造影図の直径の差を意味する。加えて、組織病理学試験での適用の成果を分析した。
【0087】
【表2】
化合物1〜19でコーティングしたカテーテルバルーンを用いた実験の再狭窄データは、28日後に、本発明のコーティングを有さないカテーテルバルーンのデータより、かなり低い数値を示した。本発明のコーティングは、脈管壁のパクリタキセル吸収量を明らかに高め、対照と比較して再狭窄率を顕著に低減した。
【0088】
実施例25:薬剤と輸送促進分子分散剤の原液の調製
薬剤と輸送促進分子分散剤を、アセトン中で90重量%:10重量%の割合で溶解させ、この溶液を撹拌しながら混合する。