【実施例】
【0055】
実施例1
PNC触媒を用いたエチルシリケートポリマーの製造
中央撹拌機、温度計、クライゼンテイクオフアダプタ、および添加漏斗を備えた2リットルの四つ口の丸底フラスコに、28重量%のSiO
2を含む780グラムの濃縮されたTEOSモノマーと、2滴の37%HClと、125グラムの200プルーフのエタノールとを仕込む。当該混合物を72℃に加熱する。この熱い撹拌混合物に、2滴の37%HClで酸性化された94.5グラムの水を1時間に亘って加える。酸性化された水の添加の完了後、0.1グラムの99%塩化窒化リン三量体(PNC触媒)を導入した。この混合物は、2時間、還流下で撹拌され、次いですべてのエタノールを加熱により除去した。混合物の温度は約3時間かけて80℃から140℃に増加した。次いで、530グラムの揮発性物質を蒸留によって集め、443グラムのクリアなシリケートエステル混合物が残留した。当該クリアなエチルポリシリケート混合物は、55℃で20日間加熱した後でも安定しており、100cpsから200cpsの動粘度の緩やかな増加を示しただけであった。これは、室温で6〜12ヶ月を超える安定性を示している。
【0056】
図2に示されるグラフは、上記の複数の実験の結果を示す。
比較例1
エチルシリケートポリマーの製造(PNC触媒なし)
中央撹拌機、温度計、クライゼンテイクオフアダプタ、および添加漏斗を備えた2リットルの四つ口の丸底フラスコに、28重量%のSiO
2を含む780グラムの濃縮されたTEOSモノマーと、0.1グラムのメタンスルホン酸と、125グラムの200プルーフのエチルアルコールとを仕込む。当該混合物を76℃に加熱する。この熱い撹拌混合物に、94.5グラムの水を約0.25時間に亘って加える。この混合物は、約2時間、還流下で撹拌され、次いですべてのエタノールを加熱により除去した。混合物の温度は約3時間かけて80℃から140℃に増加した。558グラムの揮発性物質を蒸留によって集め、413グラムのクリアなシリケートエステル混合物が残留した。このシリケートエステル混合物を放置したところ、3日後ゲル化した。
【0057】
分子分布の比較
ゲル浸透クロマトグラフィにより、大きさに従って分子成分を分離する。適切な孔径を有するクロマトグラフィの充填剤を選択することにより、シリケートオリゴマーが簡便に分離される。この技術は、40%加水分解されたエチルシリケートポリマーの製造について品質管理目的で用いられる。個々の成分は、各成分の分子の大きさに依存して、機器上により長い期間保持される。当該一連の成分において、TEOS、二量体、三量体、四量体、およびそれより高い同族体は、分子の大きさが増加すると、保持時間が減少する。40%加水分解されたエチルシリケートポリマーについての典型的な図を
図3に示す。はっきりと分離されたより高い同族体の各々を有するTEOSモノマーで開始する直鎖状オリゴマーの進展が
図3に示される。この分布は、複数の成分が分子の大きさが増加している成分の連続体を形成するが個々に分離されない状態で継続する。
【0058】
図4の図は、50%加水分解されたエチルシリケートポリマーの分布を示す。40%加水分解されたエチルシリケートポリマーと対照的に、直鎖状オリゴマーの量は、各々は明らかにまだ存在しているものの、低減されている。分子のサイズの大きい成分は、40%加水分解されたエチルシリケートポリマーの分布と比較して、量が増加している。
【0059】
図5に示される、触媒にメタンスルホン酸を用いて70%加水分解されたポリマーについての分布は、より短い直鎖状の成分の量が減少し、非常に高い分子量分布を示している。少ない直鎖状の成分の検出可能なレベルは明確なままである。この分布は、3日後には、不安定なゲル化となった。
【0060】
図6に示される分布は、2ステップの付加的な触媒を用いることにより発生する分子分布を示す。当該触媒の1つは塩化窒化リン触媒である。この分布では、低分子量オリゴマーは除去されている。さらに、測定されたシリカ含有量が54重量%のSiO
2であっても、分子のサイズが大きい物質の量も低減されている。この物質は、55℃で20日保存された後でも、分布変化をほとんど示さなかった。これにより、エチルシリケートポリマーの多くの用途のためにより好適な分子分布が得られる。
【0061】
実施例2
PNC触媒を用いたエチルシリケートポリマーの製造
中央撹拌機、温度計、クライゼンテイクオフアダプタ、および添加漏斗を備えた5リットルの四つ口の丸底フラスコに、28重量%のSiO
2を含む3120グラムの濃縮されたTEOSモノマーと、4グラムのPNCl
2と、塩化ベンゾイル溶液として調製されたPNC触媒と、500グラムのSDA29変性エチルアルコールとを仕込む。当該混合物を80℃に加熱した。この熱い撹拌混合物に378グラムの水を加えた。この水が加えられる際に、塩化ベンゾイルの加水分解を介して、混合物にHClを導入する。この混合物は、2時間、還流下で撹拌され、次いですべてのエタノールを加熱により除去した。混合物の温度は約3時間かけて80℃から140℃に増加した。次いで、2300グラムの揮発性物質を蒸留によって回収し、1690グラムのクリアなシリケートエステル混合物が残留した。
【0062】
実施例3
PNC触媒を用いたエチルシリケートポリマーの製造
中央撹拌機、温度計、クライゼンテイクオフアダプタ、および添加漏斗を備えた5リットルの四つ口の丸底フラスコに、28重量%のSiO
2を含む3120グラムの濃縮されたTEOSモノマーと、0.4グラムのメタンスルホン酸(150ppm)と、500グラムのSDA29変性アルコールとを仕込む。当該混合物を80℃に加熱する。この熱い撹拌混合物に378グラムの水を加える。水の添加の完了後、0.4グラムの塩化窒化リン三量体(PNC触媒)を導入した。この混合物は、2時間、還流下で撹拌され、次いですべてのエタノールを加熱により除去した。混合物の温度は約3時間かけて80℃から140℃に増加した。次いで、2253グラムの揮発性物質を蒸留によって回収し、1704グラムのクリアなシリケートエステル混合物が残留した。5つの繰り返された実験により、
図7に示されるデータが得られた。
【0063】
比較例3
エチルシリケートポリマーの製造(PNC2触媒なし)
中央撹拌機、温度計、クライゼンテイクオフアダプタ、および添加漏斗を備えた四つ口の丸底フラスコに、28重量%のSiO
2を含む3120グラムの濃縮されたTEOSモノマーと、0.5グラムのメタンスルホン酸と、500グラムのSDA29変性アルコールとを仕込む。当該混合物を80℃に加熱する。この熱い撹拌混合物に378グラムの水を加える。この混合物は、2時間、還流下で撹拌され、次いですべてのエタノールを加熱により除去した。混合物の温度は約3時間かけて80℃から140℃に増加した。次いで、2178グラムの揮発性物質を蒸留によって回収し、1722グラムのクリアなシリケートエステル混合物が残留した。このシリケートエステル混合物は、動粘度が1188cpsであり、混合物は放置されるとゲル化した。
【0064】
エチルシリケートポリマーから製造された亜鉛コーティング
低分子量物質の量が低減されたポリマー分布が望まれる1つの用途は、亜鉛高含有コーティングに関する。エチルシリケートポリマーは、耐腐食コーティングのための亜鉛末のための好ましいバインダである。これは、従来技術においてよく立証されている。亜鉛高含有コーティングを形成するのに用いられるエチルシリケートポリマーを製造する方法は、珪素に結合されるエトキシ基を水で置換するステップを含む。これは、すべてのエトキシ基を置換する水の理論量のパーセンテージとして表現される。水の化学量論量は、1モルのTEOSに対して水が2モルである。これは、100%加水分解と称される。亜鉛高含有コーティングは、90%までの加水分解、たとえば50%〜90%加水分解を含む方法によって製造され得る。代替的には、亜鉛高含有コーティングは、75%〜85%加水分解を含む方法によって製造される。
【0065】
実施例3に従って製造されたエチルシリケートポリマーは、当該コーティングを製造するのに用いられ得る。この用途について生じている制限の1つは、エチルシリケートポリマーの加水分解の間に遊離される低沸点アルコール副生成物の量である。これは、コーティング調合物に存在する揮発性有機成分の量を上昇させる。より高度に加水分解されたエチルシリケートポリマーの使用により、船舶用コーティング産業の要件を満たしながらも環境にやさしい組成物が提供される。40%加水分解されたエチルシリケートポリマーの場合、質量の74%は、潜在的にエタノールを遊離する。70%加水分解されたポリマーの場合、質量の53%のみがエタノールである。これは、副生成物エタノールの28%の削減を示している。
【0066】
エチルシリケートポリマーから製造されるシリコーン樹脂
TEOSまたはエチルシリケートポリマーは、シリコーン樹脂技術における成分として頻繁に用いられる。当業者は、さまざまな種類の樹脂およびそれらの組合せに精通している。いくつかの例としては、TQ樹脂、MQ樹脂、DQ樹脂、MQV樹脂、MQD樹脂、およびDTQ樹脂がある。樹脂製造において非常に複雑であるのは、TEOSを四官能珪素(Q単位)の源として用いる場合に加水分解および共重合の間に遊離するエタノールの量である。さらに、テトラキストリメチルシリケート(ネオペンタマー)のような低分子量副生成物を最小化または除去する分子分布を達成することが特に望ましい。
【0067】
MQ樹脂は、感圧性接着剤用途における剥離コーティングおよび液体シリコーンゴムのための添加剤として有用である。これらの調合物におけるMQ樹脂の役割は、最終的に硬化されるシリコーンゴムの物性の修正である。シリコーンゴムはこの成分によって、より高いモジュラスになるように固くされる。感圧性剥離用途の場合、これは、当該接着剤の剥離力を増加させるので、MQ樹脂は、MQ樹脂の量の増加に伴って剥離力を増加させる「剥離添加剤の対照」として知られている。液体シリコーンゴムにおいて、MQ樹脂の存在によって、当該ゴムのショア硬さが増加し、ゴムの変形性が減少する。両方の用途において、低分子量MQ樹脂の存在は、これらの用途に対して害を与えるものである。特に、テトラキストリメチルシロキシシリケート(ネオペンタマー)は、抽出可能な低分子成分を硬化シリコーンゴム内に導入することによって、シリコーンゴム調合物について重大な問題を引き起こす。
【0068】
好ましくは、MQ樹脂は、上述したように、本発明の安定したエチルシリケートポリマーを用いて形成される。たとえば、液体のMQ樹脂は、低分子量オリゴマーのない
図6に示される分子量分布を有するエチルシリケートポリマーを用いて製造され得る。エチルシリケートポリマーの総重量に基づき、1重量%未満の低分子量オリゴマーと、50重量%〜60重量%のシリカ含有量とを有するエチルシリケートポリマーがMQ樹脂の合成のためには好ましい。MQ樹脂は、液体状または固体状であり得る。この出願において論じられるMQ樹脂の組成および特性は、特に別途記載しない限り、液体のMQ樹脂および固体のMQ樹脂の両方に該当する。
【0069】
MQ樹脂の最終生成物は、シリコーン材料であり、具体的には官能基(CH
3)
3SiO(M基)およびSiO
4(Q基)を含むトリメチルシロキシポリシリケートである。MQ樹脂は以下の構造を有する。
【0070】
【化2】
【0071】
好ましくは、MQ樹脂の最終生成物は、M基対Q基の比率が0.1〜0.6である。代替的には、MQ樹脂は、M基対Q基の比率が0.4〜0.5である。
【0072】
たとえば、MQ樹脂は、M基対Q基の比率が0.2であり得、MQ樹脂の総重量に基づき、16.67重量%の量のM基と、83.33重量%の量のQ基とを含む。
【0073】
代替的には、MQ樹脂は、M基対Q基の比率が0.4であり得、MQ樹脂の総重量に基づき、25.57重量%の量のM基と、71.43重量%の量のQ基とを含む。
【0074】
代替的には、MQ樹脂は、M基対Q基の比率が0.6であり得、MQ樹脂の総重量に基づき、62.55重量%の量のM基と、37.45重量%の量のQ基とを含む。
【0075】
好ましくは、MQ樹脂の最終生成物は、50重量%〜60重量%の量のSiO
2を含む。代替的には、MQ樹脂は、53重量%〜55重量%の量のSiO
2を含む。液体のMQ樹脂におけるSiO
2の量は、濃硫酸によりMQ樹脂をゲル化状態へと加水分解および脱水することにより決定される。当該ゲル化された試料は、70%硝酸で処理され、残留する有機成分を酸化する。るつぼの内容物がゆっくりと焼やされ、シリカゲルがマッフル炉においてSiO
2になるよう焼成される。焼成されたSiO
2は、次いで計量され、これにより液体のMQ樹脂におけるSiO
2の重量%が求められる。
【0076】
好ましくは、MQ樹脂の最終生成物は、50重量%〜60重量%のSiO
2を含むエチルシリケートポリマーと、エチルアルコール(ETOH)と、水と、メタンスルホン酸(CH
3SO
3H)と、トルエン(C
7H
8すなわちC
6H
5CH
3)と、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)(C
6H
18OSi
2)といった成分を含む。MQ樹脂の各成分の重量%は、核磁気共鳴(NMR)によって決定され得る。さらに、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)は、多孔充填剤を通る液体のMQ樹脂の流れに基づき、分子の大きさに従って、液体のMQ樹脂の成分を分離するのに用いられ得る。
【0077】
好ましくは、MQ樹脂の最終生成物は、上述したように、50重量%〜60重量%のSiO
2含有量、または55重量%のSiO
2を含むエチルシリケートポリマーを含む。好ましくは、MQ樹脂は、MQ樹脂の総重量に基づき、少なくとも30重量%の量のエチルシリケートポリマーを含む。代替的には、MQ樹脂は、30重量%〜50重量%または36重量%〜44重量%の量のエチルシリケートポリマーを含む。
【0078】
MQ樹脂の最終生成物は典型的には、8重量%〜15重量%または10重量%〜14重量%の量のETOHのようなアルコールを含む。
【0079】
MQ樹脂の最終生成物は典型的には、5重量%〜10重量%または6重量%〜9重量%の量の水を含む。
【0080】
MQ樹脂の最終生成物は典型的に、0.001重量%〜0.1重量%または0.01重量%〜0.07重量%の量のメタンスルホン酸(CH
3SO
3H)を含む。
【0081】
最終生成物のMQ樹脂は典型的には、18重量%〜35重量%または22重量%〜26重量%の量のトルエンを含む。
【0082】
MQ樹脂の最終生成物は典型的には、18重量%〜35重量%または22重量%〜26重量%の量のHMDSOを含む。
【0083】
MQ樹脂の最終生成物は典型的には、5重量%以下、1重量%以下、または0.01重量%〜5重量%の量のテトラキストリメチルシロキシシリケート(ネオペンタマー)を含む。
【0084】
液体および固体のMQ樹脂のピークの分子量(Mp)、平均モル質量(Mz)、および多分散性は、屈折率検出を伴う従来のGPCによって決定され得る。
【0085】
上述したように、シリコーンゴム用途での使用のためのMQ樹脂は好ましくは高い分子量を有する。MQ樹脂の最終生成物は液状であり得、ピークの分子量(Mp)は少なくとも33,000g/mol、33,000g/mol〜36,000g/mol、または34,000g/mol〜35,000g/molであり得る。たとえば、液体のMQ樹脂は、ピークの平均分子量(Mp)が35,000であり得る。ピークの分子量(Mp)は、平均分子量と称され得る。
【0086】
液体のMQ樹脂は典型的に、少なくとも400,000g/mol、400,000g/mol〜600,000g/mol、または500,000g/mol〜600,000g/molの平均モル質量(Mz)を有する。たとえば、液体のMQ樹脂は、平均モル質量(Mz)が535,000g/molであり得る。
【0087】
液体のMQ樹脂は典型的に、多分散性が6〜10、または7.2〜9.4であり得る。たとえば、液体のMQ樹脂は、多分散性が8.3であり得る。
【0088】
MQ樹脂はさらに固体状態であり得、ピークの分子量(Mp)が少なくとも34,000g/mol、または34,000g/mol〜36,000g/molである。たとえば、液体のMQ樹脂は、ピークの平均分子量(Mp)が34,600であり得る。
【0089】
固体のMQ樹脂は典型的に、少なくとも90,000g/mol、または90,000g/mol〜110,000g/molの平均モル質量(Mz)を有する。たとえば、固体のMQ樹脂は、平均モル質量(Mz)が107,000g/molであり得る。平均モル質量(Mz)は、MQ樹脂の重量平均分子量をMQ樹脂の数平均分子量で除算することにより決定される。
【0090】
固体のMQ樹脂は典型的に、多分散性が2〜4、または2.3〜3.2であり得る。たとえば、固体のMQ樹脂は、多分散性が2.8であり得る。
【0091】
上で示唆されたように、MQ樹脂を製造するために用いられるエチルシリケートポリマーには、TEOSモノマーのようなモノマーが存在しないか、本質的に存在しないか、または実質的に存在しない。したがって、MQ樹脂の最終生成物は、モノマーが存在しないか、本質的に存在しないか、または実質的に存在しない。好ましくは、MQ樹脂は、1重量%以下の量、より好ましくは0.5重量%以下の量、さらに好ましくは0.1重量%以下の量、もっとも好ましくは0重量%の量のモノマーを含む。
【0092】
上で示唆されたように、MQ樹脂の最終生成物は好ましくは、エチルシリケートポリマーの加水分解の間に遊離される低沸点アルコール副生成物のような低沸点物を含まない。低沸点アルコール副生成物(低沸点物)の含有により、MQ樹脂に存在する揮発性有機成分(VOC)のような揮発性物質の量が上昇する。好ましくは、MQ樹脂は、MQ樹脂および低沸点物の総重量に基づき、2.5重量%未満の量の低沸点物を含む。MQ樹脂は、0.1重量%〜2.5重量%の量の低沸点物を含み得る。低沸点物の量は、気液クロマトグラフィを用いて測定される。
【0093】
MQ樹脂を製造するために用いられるエチルシリケートポリマーを製造する方法中に、蒸留によって回収され得る、生成された揮発性物質(VOC)の量を制限することが望ましい。MQ樹脂を製造する方法は好ましくは、MQ樹脂および揮発性物質の総重量に基づき、15重量%、好ましくは12重量%以下の揮発性物質を生成するステップを含む。たとえば、当該方法は、MQ樹脂および揮発性物質の総重量に基づき、1重量〜12重量%の揮発性物質を生成するステップを含み得る。MQ樹脂の揮発性物質の量は、ASTM D 2369−07規格に従って測定される。
【0094】
MQ樹脂の最終生成物は好ましくはHCl酸を含まない。MQ樹脂は、MQ樹脂の総重量に基づき、0.1重量%以下の量のHCl酸を含み得、好ましくはMQ樹脂の総重量に基づき0.006重量%以下の量のHCl酸を含み得る。HClの量は、MQ樹脂の試料をニュートラルレッド―メチレンブルーの終点まで滴定し、次いで、酸性またはアルカリ性の重量パーセントを計算することにより測定され得る。
【0095】
液体のMQ樹脂は典型的に、25℃での動粘度が50cps〜750cps、または25℃で50cps〜55cpsである。動粘度は、標準体積の液体のMQ樹脂が較正キャピラリを通って流れるのに必要な時間(秒単位)を測定することによって決定される。この時間は、粘度計定数と、液体のMQ樹脂の比重とによって乗算され、これにより、液体のMQ樹脂の動粘度がcpsで求められる。
【0096】
上で示唆されるように、液体のMQ樹脂は粘度安定性が向上している。好ましくは、液体のMQ樹脂は、少なくとも2ヶ月間、より好ましくは少なくとも3ヶ月間、25℃で50cps〜750cpsの動粘度を維持する。
【0097】
好ましくは、液体のMQ樹脂は、少なくとも100°F、より好ましくは少なくとも110°Fの引火点を有する。液体のMQ樹脂の引火点は、ASTM D 56−05規格に従って測定される。
【0098】
MQ樹脂は典型的に、1.14g/cm
3〜1.25g/cm
3の比重を有する。代替的には、MQ樹脂は、1.16g/cm
3〜1.24g/cm
3または1.19g/cm
3〜1.22g/cm
3の比重を有する。この比重は、ASTM D 891−09に従って測定される。
【0099】
上で示唆されたように、MQ樹脂を製造する方法において、加水分解の間に遊離するエタノールの量と、したがって低沸点物の量とを制限するのが望ましい。当該方法の間に生成されるエタノールの量は、以下の式で決定される。
【0100】
生成されるエタノール重量%=2×エタノールのモル質量×加えられたH
2O(重量%)/H
2Oのモル質量 (3)
上述したように、当該方法は、加水分解の間に生成されるエタノールを遊離させるステップを含む。好ましくは、MQ樹脂を製造する方法は、70重量%以下の量、より好ましくは60重量%の量、もっとも好ましくは35重量%以下の量のエタノールを遊離させるステップを含む。
【0101】
上述したように、MQ樹脂を形成するために用いられるエチルシリケートポリマーを製造する方法は、TEOSモノマーの珪素に結合したエトキシ基を水で置換するステップを含む。これは、すべてのエトキシ基を置換する水の理論量のパーセンテージとして表現される。水の化学量論量は、1モルのTEOSに対して水が2モルである。これは、100%加水分解と称される。MQ樹脂は典型的に、TEOSモノマーの50%〜90%加水分解またはTEOSモノマーの75%〜85%加水分解を含む方法によって製造される。
【0102】
図5および
図6に示されるGPCトレースは、40%加水分解されたエチルシリケートポリマー由来のMQ樹脂と、本発明の例示的な安定したエチルシリケートポリマーから調製されたMQ樹脂とを比較するものであり、PNCによって触媒されたエチルシリケートポリマーは55重量%のSiO
2を含む。これらの図において分かるように、16分の保持時間を下回る小さいサイズの物質の量は無視できる。40%加水分解されたポリマーにおける小さいサイズの物質の量は実質的により多い。これは、ポリマー分布に存在する遊走性物質は、本発明の生成物を出発物質として用いることにより有利に低減されるであろうということを示す。
【0103】
MQ樹脂は、安定したエチルシリケートポリマーを上述したようにアルコールおよびメタンスルホン酸のような加水分解触媒と混合するステップを含む方法によって製造される。次いで、当該方法は当該混合物を80℃の温度に加熱し、水を混合物に加えるステップを含む。この混合物は還流下で撹拌され、次いでトルエンおよびヘキサメチルジシロキサンが加えられる。揮発性物質が除去され、これによりMQ樹脂が提供される。
【0104】
Q単位を含む樹脂の調製
以下の実施例は、これらの新規な分子分布の有用性を示す。上で論じたように、MQ樹脂は、シリコーンエラストマーおよび感圧性接着剤において有用性を有するシリケート樹脂である。これらの樹脂の質の重要な測定値は、テトラキストリメチルシリルシリケートの平均分子量および含有量である。以下に、この発明に記載されるエチルシリケートポリマーを用いてこれらの樹脂を製造する利点の例を示す。
【0105】
実施例4
エチルシリケートポリマーからのMQ樹脂の製造
中央撹拌機、温度計、クライゼンテイクオフアダプタ、および添加漏斗を備えた四つ口の丸底フラスコに、55重量%のSiO
2を含む835グラムのエチルシリケートポリマーと、0.5グラムのメタンスルホン酸と、250グラムのSDA29変性アルコールとを仕込む。エチルシリケートポリマーは、上記の特性を有し、
図1に示される方法に従って製造される。混合物は80℃に加熱される。この熱い撹拌混合物に155グラムの水を加える。この混合物は2時間、還流下で撹拌され、次いで500グラムのトルエンと、324グラムのヘキサメチルジシロキサンとが加えられる。800グラムの揮発性物質が取り除かれ、固形分50%のMQ樹脂の溶液が製造された。MQ樹脂の試料は、粉末状で提供され、ゲル浸透クロマトグラフィによって分析される。ゲル浸透クロマトグラフィによるMQ樹脂の分析は、以下の分子分布を算出した。
【0106】
【表1】
【0107】
得られたMQ樹脂の分子分布は、トリメチルシリル化された成分を示さず、文献において報告されたMQ樹脂よりも実質的に高い分子量を示した。J. Appl Polym Sci 70:1753−1757,1998における論文では、4200〜4956の分子量と、長い保持時間で大きなピークを示した分子分布が報告されており、テトラキストリメチルシリルシリケートのような低分子量のトリメチルシリル化された成分の存在を示している。
【0108】
実施例5
エチルシリケートポリマーからのMQ樹脂の組成
液体のMQ樹脂が、50重量%のSiO
2を含む加水分解されたエチルシリケートポリマーから形成される。この液体のMQ樹脂は、M基対Q基のモル比率が0.4である。このMQ樹脂は、40.45重量%のエチルシリケートポリマーと、12.1重量%のETOHと、7.5重量%の水と、0.04重量%のメタンスルホン酸と、24.22重量%のトルエンと、15.69重量%のHMDSOとを含む。
【0109】
本発明をその好ましい実施形態に関連して説明したが、添付の特許請求の範囲から逸脱することがなければ、変更および修正がなされてもよいということが認識されるべきである。