(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記黒色粗化面は、3μm×3μmの領域において、400個〜2500個の銅粒子が付着している請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線板の自動外観検査機として、AOI(Automatic Optical Inspecter)が自動検査に広く使用されてきた。AOIは、プリント配線板の背面から光を投光して、当該プリント配線板を透過する光を捉え、回路パターンを読み取ることにより、仕様を逸脱した、パターン欠け、パターン細り、ピンホール、傷、ショート、パターン太り、銅残り、突起、汚れ等の回路欠陥を発見する装置である。
【0003】
また、近年は、液晶ディスプレイモジュールとフレキシブルプリント配線板とを異方性導電膜(ACF)で接続する際に、液晶ディスプレイモジュールの接続端子とフレキシブルプリント配線板の接続端子とを、フレキシブルプリント配線板の回路背面からCCDカメラを用いて位置合わせすることが行われている。そのため、回路背面と樹脂フィルムとの間に、色調として明瞭なコントラストが存在することが望ましい。従って、一般的には、回路形成に用いる銅箔の樹脂フィルムとの接着面が、良好な黒色であることが求められる。一方、フレキシブルプリント配線板の銅箔をエッチング除去して露出した樹脂フィルムには、良好な視認性が求められる。この視認性(以下、単に「CCD視認性」と称する。)は、フレキシブルプリント配線板の銅箔をエッチング除去して露出した樹脂フィルムの曇り度(Haze)に依存する。
【0004】
従って、上述の用途において、フレキシブルプリント配線板のCCD視認性及びAOIの検査精度を向上させるためには、「フレキシブルプリント配線板の銅箔をエッチング除去して露出した樹脂フィルムが光透過性に優れること。」、「回路背面の色調と樹脂フィルムとの色調の差が明瞭であること。」等の特性が要求される。即ち、前者は、銅張積層板の銅箔をエッチング除去して露出した樹脂フィルムの曇り度(Haze)の値が低いという特性を要求するものであり、銅箔の接着面が樹脂フィルム表面に残す凹凸形状に左右される特性である。そして、後者は、銅箔の樹脂フィルムとの接着面が備える色調に左右される特性である。これらの要求特性を満足する銅箔として、以下の特許文献1、特許文献2に開示の表面処理銅箔が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、フレキシブル銅張積層板の銅層形成に用いる銅箔であって、ファインピッチ回路形成が可能で、加熱後の接着強度が良好な表面処理銅箔の提供を目的としたものであり、「ポリイミド樹脂層の表面に銅層を形成するための銅箔において、当該銅箔はポリイミド樹脂層との接着面に、コバルト層又はコバルト層とニッケル−亜鉛合金層とが積層した状態のいずれかの表面処理層を備えることを特徴とするフレキシブル銅張積層板製造用の表面処理銅箔を採用する。」ことが開示され、無粗化の表面処理銅箔を対象としている。この特許文献1の明細書の段落0034には「更に、当該表面処理銅箔のポリイミド樹脂基材との接着面は、光沢度[Gs(60°)]が70以上である事が好ましい。良好なファインピッチ回路形成能及び光学式自動検査(AOI検査)のときに求められる良好な光透過性を確保するためである。例えば、・・・(途中省略)・・・。本件発明では、光沢度[Gs(60°)]が70以上としているが、光沢度が70未満の場合には、良好なファインピッチ回路形成能が得られず、光学式自動検査装置(AOI装置)による検査時に求められる良好な光透過性の確保も困難となる。」との記載がある。
【0006】
また、特許文献2に開示されているプラズマディスプレイパネルのブラックマスク形成に用いる銅箔を使用することも考えられる。このような用途の銅箔は、銅箔の接着面の色調が出来る限り黒色に近いものを使用するからである。この特許文献2には、プラズマディスプレイパネルの電磁波遮蔽に用いる導電性メッシュの製造に用いる銅箔が開示されており、特許文献2に開示の黒色化表面処理銅箔の表面は、ブラックマスク形成の要求に応えるニッケル系黒色化処理面又はコバルト系黒色化処理面である。この特許文献2に開示の銅箔を用いてフレキシブルプリント配線板を製造すると、フレキシブルプリント配線板の銅箔を除去して露出した樹脂フィルムの曇り度(Haze)が低く、光透過性に優れ、フレキシブルプリント配線板のAOIにおいて要求される色調の差も十分に満足できると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示のフレキシブル銅張積層板製造用の表面処理銅箔は、無粗化の表面処理銅箔であるため、フレキシブルプリント配線板の樹脂フィルムの表面を粗さない平坦性を備えるが、この表面処理銅箔の接着面が過剰に平坦であると、表面処理銅箔と樹脂フィルムとの接着の際に、その接着界面にシワや気泡が生じやすくなる。従って、フレキシブル銅張積層板に使用する表面処理銅箔には、当該シワや気泡が生じにくい適度な粗さを備え、且つ、平坦な接着面を備えることが求められている。
【0009】
また、特許文献2に開示の黒色化表面処理銅箔の黒色化表面を、フレキシブル銅張積層板の製造に用いても、上述と同様に、表面処理銅箔と樹脂フィルムとの接着の際に、接着界面にシワや気泡が生じやすくなる。更に、特許文献2に開示の黒色化表面処理銅箔の黒色化表面は、ニッケル系黒色化処理面又はコバルト系黒色化処理面であり、銅エッチング液によるエッチングが困難となる傾向がある。従って、回路形成の際には、銅エッチング液によるオーバーエッチングの時間が長くなるため、銅部分のエッチングが過剰となり、エッチングファクターに優れたファインピッチ回路の形成が困難となる。また、十分なオーバーエッチングの時間を設けたつもりでも、回路間にニッケル又はコバルトが残留し、マイグレーションの発生確率が高くなり、製品の信頼性が低下するため好ましくない。
【0010】
これらのことから、本件出願は、特許文献2に開示されている銅箔と同等のCCD視認性及びAOIの検出精度を向上させることの可能な黒色化表面を備え、フレキシブルプリント配線板製造に適した適度な粗さを備え、且つ、良好なエッチング特性を備えるプリント配線板用銅箔の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本件発明者等は、以下の黒色化表面処理銅箔をフレキシブルプリント配線板製造に用いることで、上述の課題を解決することに想到した。
【0012】
黒色化表面処理銅箔: 本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔は、
樹脂フィルムに積層するための黒色粗化面(以下、単に「黒色粗化面」と称する。)を備える表面処理銅箔であり、当該黒色粗化面は、うねりの最大高低差(Wmax)が1.2μm以下であり、且つ、L
*a
*b
*表色系の明度L
* が30以下の色調を備えることを特徴とする。
【0013】
本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の前記黒色粗化面は、粒径10nm〜250nmの銅粒子を付着させて粗化したものであることが好ましい。
【0014】
本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の前記黒色粗化面は、3μm×3μmの領域において、400個〜2500個の銅粒子が付着していることが好ましい。
【0015】
本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の前記黒色粗化面は、平均粗さRaが0.5μm以下であることが好ましい。
【0016】
本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の前記黒色粗化面は、動摩擦係数が0.50以上であることが好ましい。
【0017】
黒色化表面処理銅箔の製造方法: 本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の製造方法は、上述のフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の製造であって、銅箔のうねりの最大高低差(Wmax)が1.2μm以下の表面に、銅濃度が10g/L〜20g/L、フリー硫酸濃度が15g/L〜100g/L、9−フェニルアクリジン濃度が100mg/L〜200mg/L、塩素濃度が20mg/L〜100mg/Lの黒色粗化用銅電解溶液を用いて微細銅粒子を付着させて黒色粗化を行うことを特徴とする。
【0018】
フレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の製造方法において、溶液温度20℃〜40℃の黒色粗化用銅電解溶液中で、銅箔を陰極に分極し、電流密度30A/dm
2〜100A/dm
2で電解することにより、銅箔表面への微細銅粒子の付着形成を行うことが好ましい。
【0019】
銅張積層板: 本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の銅張積層板は、上述のフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔を用いて得られることを特徴とする。
【0020】
フレキシブルプリント配線板: 本件出願に係るフレキシブルプリント配線板は、上述のフレキシブルプリント配線板製造用の銅張積層板を用いて得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔は、CCD視認性及びAOIの検査精度に優れる黒色化表面を備える。また、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔は、微細な粗化粒子が銅で形成されているため、良好なエッチング特性を備えている。従って、回路形成時のエッチングにおけるオーバーエッチングの時間を短縮化することが可能であり、極めて良好なエッチングファクターを備えるファインピッチ回路の形成を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本件出願に係る「黒色化表面処理銅箔」、「黒色化表面処理銅箔の製造方法」、「銅張積層板」、「フレキシブルプリント配線板」の各形態に関して説明する。
【0024】
黒色化表面処理銅箔: 本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔は、うねりの最大高低差(Wmax)が1.2μm以下であり、且つ、L
*a
*b
*表色系の明度L
* が30以下の色調の黒色粗化面を備えることを特徴とする。
【0025】
本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の黒色粗化面は、うねりの最大高低差(Wmax)が1.2μm以下であることが1つの特徴である。この「うねりの最大高低差(Wmax)」とは、三次元表面構造解析顕微鏡を用いて得られる試料表面の凹凸に関する情報から、うねりに係る波形データをフィルタリングして抽出した波形データにおける高低差の最大値(波形の最大ピーク高さと最大バレー深さの和)をいう。このうねりの最大高低差(Wmax)が1.2μmを超える黒色粗化面を備える表面処理銅箔を用いてフレキシブルプリント配線板を製造した場合、フレキシブルプリント配線板の銅箔をエッチング除去して露出した樹脂フィルムの曇り度(Haze)が高くなり、CCD視認性及びAOIの検査精度が低下する。そして、この曇り度(Haze)を安定して低い値にするためには、うねりの最大高低差(Wmax)が1.0μm以下とすることがより好ましい。
【0026】
そして、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔は、当該黒色粗化面が、JIS Z8729に定めるL
*a
*b
*表色系の明度L
* が30以下の色調を備えることも特徴である。L
*a
*b
*表色系の明度L
* が30を超えると、粗化粒子の粒径が大きくなり、フレキシブルプリント配線板の銅箔をエッチング除去して露出した樹脂フィルムの曇り度(Haze)が高くなる。また、L
*a
*b
*表色系の明度L
* が30を超えると、この黒色化表面処理銅箔を用いて形成した回路背面の色調と、樹脂フィルムとの色調のコントラストが低下するため、CCD視認性が低下し、AOIの検査精度も低下する傾向となる。そして、L
*a
*b
*表色系の明度L
* が20以下であると、当該樹脂フィルムの曇り度(Haze)が安定して低下する。また、L
*a
*b
*表色系の明度L
* が15以下であると、当該樹脂フィルムの曇り度(Haze)と共に、回路背面の色調と樹脂フィルムとの色調のコントラストも明瞭化してCCD視認性がさらに向上する。
【0027】
本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の黒色粗化面は、粒径10nm〜250nmの銅粒子を付着させたものであることが好ましい。ここで、当該銅粒子の粒径の下限値を10nmとしている。しかし、10nm未満の粒径の粗化粒子を積極的に排除する意味ではないが、粗化粒子が微細になりすぎると、樹脂フィルムに対するアンカー効果が低下する可能性がある。一方、当該粗化粒子の粒径が250nmを超えると、表面処理銅箔を用いて製造した銅張積層板の銅箔をエッチング除去して露出した樹脂フィルム部の曇り度(Haze)が高くなり、CCD視認性及びAOIの検査精度も低下するため好ましくない。なお、銅粒子の形状には、特段の限定はないが、銅粒子が略球状であることが好ましい。銅粒子が略球状であれば粉落ちを防止できるからである。
【0028】
また、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の黒色粗化面は、3μm×3μmの領域において、400個〜2500個の銅粒子が付着していることが好ましい。この所定の領域内における銅粒子の付着個数が400個未満の場合には、上述のL
*a
*b
*表色系の明度L
* を30以下とすることが困難となり好ましくない。一方、所定の領域内における銅粒子の付着個数が2500個を超える場合には、付着した銅粒子の脱落が起こり易くなり、且つ、上述の曇り度(Haze)の値が高くなる傾向があり、CCD視認性及びAOIの検査精度が低下するため好ましくない。
【0029】
以上に述べてきた本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の黒色粗化面を構成する銅粒子は、銅と不可避不純物とからなり、エッチングを阻害する合金成分等を含まないことが好ましい。銅粒子が銅箔を構成する銅成分と同等の組成であれば、銅エッチング液でのエッチング速度が銅箔と銅粒子とで同等であるため、エッチングによる回路形成条件の工程設計が容易となる。
【0030】
そして、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の黒色粗化面は、触針式表面粗さ計を用いて測定したときの平均粗さRaが0.5μm以下であることが好ましい。本件出願に係る黒色化表面処理銅箔は、平均粗さに関しても、極めて低い値を備えている。この平均粗さRaが0.5μmを超えると、回路形成するエッチング工程において、配線間の樹脂フィルム内に進入した粗化粒子がエッチング残として残留しないよう設けるオーバーエッチングの時間が長くなるため、配線のサイドウォールを必要以上に溶解することになり、良好なエッチングファクターを備えるファインピッチ回路の形成が困難となるため好ましくない。また、当該平均粗さRaが0.3μm以下であることがより好ましい。良好なエッチングファクターを備えるファインピッチ回路の形成と、同時に表面処理銅箔の黒色粗化面と樹脂フィルムとの積層界面に対する溶液の浸食を防止して耐薬品性能を向上させることができるからである。
【0031】
更に、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の黒色粗化面は、動摩擦係数が0.50以上であることが好ましい。この動摩擦係数が0.50未満の場合には、ロールラミネート法で樹脂フィルムと黒色化表面処理銅箔とを積層する際に、黒色化表面処理銅箔の黒色粗化面が平滑過ぎて、黒色化表面処理銅箔と樹脂フィルムとの接着界面で滑りが生じ、シワが発生しやすくなるため良好な積層がしにくくなる。また、この動摩擦係数が0.50未満の場合には、黒色化表面処理銅箔と樹脂フィルムとの接着界面に気泡が生じやすくなる傾向もある。
【0032】
なお、以上に述べてきた黒色化表面処理銅箔は、厚さに関しては、特段の限定は無い。また、通常の銅箔の表面に黒色粗化を行ったものに限らず、キャリア箔付銅箔の銅箔表面の黒色粗化を行ったものも含む概念であることを明記しておく。
【0033】
黒色化表面処理銅箔の製造方法: 本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の製造方法は、上述のフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の製造であって、銅箔のうねりの最大高低差(Wmax)が1.2μm以下の表面に、微細銅粒子を付着させて黒色粗化を行う。この樹脂フィルムに対する接着面のうねりの最大高低差(Wmax)が1.2μmを超えると、黒色粗化後において、うねりの最大高低差(Wmax)が1.2μm以下となりにくい。そして、この黒色化表面処理銅箔の製造方法における工程のバラツキ等を考慮し、黒色粗化後のうねりの最大高低差(Wmax)を安定して1.2μm以下とするためには、うねりの最大高低差(Wmax)が0.8μm以下にすることがより好ましい。
【0034】
以上に述べた黒色化表面処理銅箔の製造方法で使用する黒色粗化前の銅箔として、電解銅箔及び圧延銅箔の双方の使用が可能である。また、うねりの最大高低差(Wmax)が1.2μmを超える銅箔であっても、このような銅箔表面に対して、エッチング処理や、銅めっき処理等を行うことにより、うねりの最大高低差(Wmax)を1.2μm以下としてもよい。そして、ここでいう銅箔は、樹脂フィルムに対する接着面のうねりの最大高低差(Wmax)が1.2μm以下という条件を満足する限り、無粗化の銅箔であっても、予備的粗化を施したものであってもよい。また、銅箔の厚さに関しても、特段の限定は無い。
【0035】
当該銅箔のうねりの最大高低差(Wmax)が1.2μm以下の表面に、微細銅粒子を付着させて黒色粗化を行うにあたり、以下の黒色粗化用銅電解溶液を用いることが好ましい。即ち、銅濃度が10g/L〜20g/L、フリー硫酸濃度が15g/L〜100g/L、9−フェニルアクリジン濃度が100mg/L〜200mg/L、塩素濃度が20mg/L〜100mg/Lの黒色粗化用銅電解溶液を用いる。この黒色粗化用銅電解溶液は、銅濃度が10g/L〜20g/L、フリー硫酸濃度が15g/L〜100g/Lの硫酸酸性銅電解液を基本溶液として用いる。ここで、当該銅濃度が10g/L未満の場合には、銅粒子の電着速度が遅くなり、工業的に要求される生産性を満足しないため好ましくない。一方、当該銅濃度が20g/Lを超えると、後述する電流密度との関係で、平滑めっき条件に近づき、黒色粗化が困難となるため好ましくない。そして、フリー硫酸濃度は、この銅濃度との関係で、この濃度範囲を逸脱すると、電解時の通電特性が変化して、良好な黒色粗化が困難となるため好ましくない。
【0036】
そして、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の製造方法で用いる黒色粗化用銅電解溶液の場合、9−フェニルアクリジン濃度を100mg/L〜200mg/Lの範囲で含有することが好ましい。この9−フェニルアクリジンは、銅箔の表面に付着形成する銅粒子の粒径を微細化し、粒子形状の球状化を促進する添加剤として機能する。黒色粗化用銅電解溶液中の9−フェニルアクリジン濃度が100mg/L未満の場合には、銅粒子の粒径の微細化効果が得られにくく、粒子形状の球状化の促進効果も低くなるため好ましくない。一方、黒色粗化用銅電解溶液中の9−フェニルアクリジン濃度が200mg/Lを超えるものとしても、銅粒子の粒径の微細化効果、及び、粒子形状の球状化の促進効果も同時に飽和して添加量に比例した効果が得られず、単なる資源の無駄使いとなるため好ましくない。
【0037】
更に、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の製造方法で用いる黒色粗化用銅電解溶液の塩素濃度は、20mg/L〜100mg/Lの範囲で含有することが好ましい。当該黒色粗化用銅電解溶液の塩素濃度が20mg/L未満の場合には、銅粒子を形成するためのヤケめっき状態とすることが困難となり、良好な形状の粗化粒子が得られなくなるため好ましくない。一方、当該黒色粗化用銅電解溶液の塩素濃度が100mg/Lを超える場合には、黒色化表面処理銅箔の黒色粗化面の色調にバラツキが生じやすくなると同時に、粒子形状の球状化が良好に行われなくなるため好ましくない。
【0038】
以上に述べてきた黒色粗化用銅電解溶液用いて、銅箔表面に黒色粗化を行う場合、溶液温度20℃〜40℃の銅電解液中で、銅箔を陰極に分極し、電流密度30A/dm
2〜100A/dm
2で電解することが好ましい。ここで、溶液温度は、20℃〜40℃の範囲であることが好ましい。この溶液温度が20℃未満になると、形成する粗化粒子の形状にバラツキが生じやすくなるため好ましくない。一方、この溶液温度が40℃を超えると、黒色粗化用銅電解溶液の溶液性状の変化が起こりやすく、安定したヤケめっきが出来なくなる傾向があるため好ましくない。
【0039】
そして、銅電解液中で、銅箔を陰極に分極して黒色粗化を行うときの電流密度は、30A/dm
2〜100A/dm
2の範囲であることが好ましい。この電流密度が、30A/dm
2未満の場合には、十分な黒色粗化が出来ず、黒色粗化面の明度L
* を30以下とすることが困難となるため好ましくない。一方、電流密度が100A/dm
2を超えると、微細な銅粒子の析出速度が過剰となり、形成される銅粒子形状が、良好な球状体とならなくなるため好ましくない。
【0040】
銅張積層板: 本件出願に係る銅張積層板は、上述のフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔と樹脂フィルムとを積層して得られることを特徴とするフレキシブル銅張積層板である。このときの樹脂フィルムとして、ポリイミド樹脂フィルム、PETフィルム、アラミド樹脂フィルム等の使用が可能であるが、フレキシブルプリント配線板の樹脂フィルムとして使用できる限り、特段の限定は無い。また、フレキシブル銅張積層板の製造は、通常の積層方式、連続ラミネート方式、キャスティング方式等を採用し、黒色化表面処理銅箔の表面に樹脂層を形成することができる。ここでいうキャスティング方式とは、本件発明に係る黒色化表面処理銅箔の表面に、ポリアミド酸等の加熱によりポリイミド樹脂化する樹脂組成膜を形成し、加熱して縮合反応を起こさせて、黒色化表面処理銅箔の表面にポリイミド樹脂フィルム層を直接形成する方法である。
【0041】
フレキシブルプリント配線板: このフレキシブルプリント配線板は、上述の銅張積層板の状態から、本件出願に係る黒色化表面処理銅箔をエッチング加工すると、当該黒色化表面処理銅箔の溶解した部分に露出する樹脂フィルムの曇り度(Haze)を大幅に低下させることができる。この曇り度(Haze)の値は、樹脂フィルムの種類によっても異なる。しかし、銅張積層板に使用する樹脂フィルムが同一である限り、本件出願に係る黒色化表面処理銅箔を用いることで、従来の表面処理銅箔を用いた場合に比べ、極めて低い曇り度(Haze)を得ることが可能となり、CCD視認性及びAOIに対する適合性が飛躍的に高まる。
【実施例1】
【0042】
実施例1では、厚さ12μmの電解銅箔を製造し、黒色粗化と、防錆処理と、シランカップリング剤処理とを行って黒色化表面処理銅箔を作製し、後述する比較例との対比を行った。
【0043】
電解銅箔の製造: 銅電解液に、以下に示す組成の硫酸酸性硫酸銅溶液を用い、陰極に表面粗さがRa=0.20μmのチタン製の回転電極を用い、陽極にはDSAを用いて、溶液温度45℃、電流密度55A/dm
2で電解し、厚さ12μmの電解銅箔を得た。この電解銅箔の析出面のうねりの最大高低差(Wmax)が0.8μmであった。
【0044】
銅濃度: 80g/L
フリー硫酸濃度: 140g/L
ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド濃度: 30mg/L
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体濃度: 50mg/L
塩素濃度: 40mg/L
【0045】
黒色粗化: 上述の電解銅箔が備える電極面及び析出面の内、析出面側に対して、以下に示す組成の黒色粗化用銅電解溶液を用い、溶液温度30℃、電流密度50A/dm
2の条件で電解して、黒色粗化を行った。
【0046】
銅濃度: 13g/L
フリー硫酸濃度: 55g/L
9−フェニルアクリジン濃度: 140mg/L
塩素濃度: 35mg/L
【0047】
防錆処理: 上述の黒色粗化が終了すると、当該黒色粗化後の電解銅箔の両面に防錆処理を行った。ここでは以下に述べる条件の無機防錆を採用した。ピロリン酸浴を用い、ピロリン酸カリウム濃度80g/L、亜鉛濃度0.2g/L、ニッケル濃度2g/L、液温40℃、電流密度0.5A/dm
2で亜鉛−ニッケル合金防錆処理を行った。
【0048】
そして、防錆処理として、亜鉛−ニッケル合金防錆処理の上に、更にクロメート層を形成した。このときのクロメート処理条件は、クロム酸濃度が1g/L、pH11、溶液温度25℃、電流密度1A/dm
2で行った。
【0049】
シランカップリング剤処理: 以上の防錆処理が完了すると水洗後、直ちにシランカップリング剤処理を行い、黒色粗化面の防錆処理層の上にシランカップリング剤の吸着を行った。このときの溶液は、純水を溶媒として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン濃度を3g/Lとしたものを用いた。そして、この溶液をシャワーリングにて、黒色粗化面に吹き付けて吸着処理した。シランカップリング剤の吸着が終了すると、最終的に電熱器により水分を気散させ、12μm厚さの黒色化表面処理銅箔を得た。
【0050】
以上のようにして得られた本件出願に係る黒色化表面処理銅箔の走査型電子顕微鏡観察像を
図1に示す。また、評価した諸特性に関しては、比較例との対比が容易となるよう表1に示す。
【実施例2】
【0051】
実施例2では、厚さ12μmの電解銅箔を製造し、実施例1と同様の黒色粗化と、防錆処理と、シランカップリング剤処理とを行って黒色化表面処理銅箔を作製した。
【0052】
電解銅箔の製造: 銅電解液として、実施例1のビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド濃度を20mg/Lとした硫酸酸性硫酸銅溶液を用い、実施例1と同様の条件で、厚さ12μmの電解銅箔を得た。この電解銅箔の析出面のうねりの最大高低差(Wmax)が1.2μmであった。
【0053】
上述の電解銅箔を用い、実施例1と同様の黒色粗化、防錆処理、シランカップリング剤処理を行って、実施例2の黒色化表面処理銅箔を得た。評価した諸特性に関しては、比較例との対比が容易となるよう表1に示す。
【実施例3】
【0054】
実施例3では、実施例1と同じ電解銅箔を用い、黒色粗化と、防錆処理と、シランカップリング剤処理とを行って黒色化表面処理銅箔を作製した。以下においては、実施例1と異なる黒色粗化に関してのみ述べる。
【0055】
黒色粗化: 上述の電解銅箔が備える電極面及び析出面の内、析出面側に対して、予備的粗化処理を施した。このときの予備的粗化処理は、以下の2段階のプロセスで行った。
【0056】
予備的粗化処理の1段目は、銅濃度が18g/l、フリー硫酸濃度が70g/lの粗化処理用銅電解溶液を用いて、溶液温度25℃、電流密度4A/dm
2で、4秒間電解し、水洗した。そして、2段目は、銅濃度が65g/l、フリー硫酸濃度が60g/lの銅電解溶液を用いて、溶液温度45℃、電流密度5A/dm
2で、5秒間電解し、水洗して、予備的粗化処理を行った。この段階の電解銅箔の析出面は、うねりの最大高低差(Wmax)が0.9μmであった。従って、予備的粗化処理前の当該析出面は、うねりの最大高低差(Wmax)が0.8μmであり、当該うねりが大きく変動せず、適正な範囲のうねりであることが理解できる。
【0057】
そして、予備的粗化処理を施した当該析出面に、実施例1と同様にして、黒色粗化、防錆処理、シランカップリング剤処理を行って、実施例3の黒色化表面処理銅箔を得た。評価した諸特性に関しては、比較例との対比が容易となるよう表1に示す。
【0058】
[比較例1]
比較例1は、実施例1で用いた電解銅箔の析出面に、実施例1と異なる方法で粗化処理を行った。よって、実施例1と粗化処理のみが異なるため、以下において粗化処理に関してのみ詳細に述べる。
【0059】
粗化処理: 比較例1は、前記電解銅箔の析出面に対して、以下の2段階のプロセスで粗化処理を行った。粗化処理の1段目は、銅濃度が8g/l、フリー硫酸濃度が50g/l、9−フェニルアクリジン濃度が150mg/l、塩素濃度が50mg/lの粗化処理用銅電解溶液を用いて、溶液温度30℃、電流密度19A/dm
2で電解し、水洗した。そして、2段目は、銅濃度が65g/l、フリー硫酸濃度が90g/lの銅電解溶液を用いて、溶液温度48℃、電流密度15A/dm
2で電解し、水洗し、粗化処理を行った。
【0060】
上述の粗化処理が終了すると、実施例1と同様の防錆処理、シランカップリング剤処理を行って、比較例1の表面処理銅箔を得た。この比較例1の表面処理銅箔の走査型電子顕微鏡観察像を
図2に示す。また、評価した諸特性に関しては、実施例との対比が容易となるよう表1に示す。
【0061】
[比較例2]
比較例2は、実施例1と同じ電解銅箔を用い、実施例1と同様の析出面に、実施例1と異なる方法で粗化処理を行った。よって、実施例1と粗化処理のみが異なるため、以下において粗化処理に関してのみ詳細に述べる。
【0062】
粗化処理: 比較例2は、前記電解銅箔の析出面に対して、以下の方法で粗化処理を行った。粗化処理の1段目は、銅濃度が18g/l、フリー硫酸濃度が70g/lの粗化処理用銅電解溶液を用いて、溶液温度25℃、電流密度10A/dm
2、通電時間10秒で電解し、水洗した。そして、2段目は、銅濃度が65g/l、フリー硫酸濃度が60g/l、の銅電解溶液を用いて、液温45℃、電流密度15A/dm
2で、20秒間電解して粗化処理を行った。
【0063】
上述の粗化処理が終了すると、実施例と同様の防錆処理、シランカップリング剤処理を行って、比較例2の表面処理銅箔を得た。この比較例2の表面処理銅箔の走査型電子顕微鏡観察像を
図3に示す。また、評価した諸特性に関しては、実施例との対比が容易となるよう表1に示す。
【0064】
[比較例3]
比較例3は、実施例1と同じ電解銅箔を用い、実施例1で用いた析出面の反対面である電極面に、実施例1と同様の粗化処理、防錆処理、シランカップリング剤処理を行った。よって、実施例1と粗化処理した面が異なるのみであるため、重複した詳細な説明は省略する。この比較例3に係る表面処理銅箔の走査型電子顕微鏡観察像を
図4に示す。また、評価した諸特性に関しては、実施例との対比が容易となるよう表1に示す。
【0066】
[評価方法]
うねりの最大高低差(Wmax): 測定機器としてzygo New View 5032(Zygo社製)を用い、解析ソフトにMetro Pro Ver.8.0.2を用いて、低周波フィルタを11μmの条件を採用して、うねりの最大高低差(Wmax)を測定した。このとき、表面処理銅箔の被測定面を試料台に密着させて固定し、試料片の1cm角の範囲内の中で108μm×144μmの視野を6点選択して測定し、6箇所の測定点から得られたうねりの最大高低差(Wmax)の平均値を代表値として採用した。
【0067】
明度L
*: 日本電色工業株式会社製の型式SE2000を用いて、JIS Z8729に準拠して測定した。
【0068】
平均粗さ(Ra): 小坂研究所製の触針式表面粗さ計 SE3500(触針曲率半径:2μm)を用い、JIS B0601に準拠して測定した。
【0069】
銅粒子の付着個数: 実施例に係る黒色化表面処理銅箔の黒色粗化面及び比較例に係る表面処理銅箔の粗化面に対して、斜め45°方向から観察した電界放射タイプの走査型電子顕微鏡観察像(倍率:20000倍)における3μm×3μmの領域において観察できる銅粒子の付着個数を目視でカウントした。
【0070】
動摩擦係数: 新東科学株式会社製のトライポギア表面性測定機 TYPE14を用いて測定した。測定用ステージに厚さ50μmのポリイミド樹脂フィルム(宇部興産株式会社製 ユーピレックス)を固定し、このポリイミド樹脂フィルムと表面処理銅箔の粗化面とが対向するように、表面処理銅箔を摩擦子に固定する。そして、垂直荷重100g、移動速度100mm/min、移動距離10mmの条件で、測定時間と摩擦抵抗力を出力し、測定値が安定化する2秒〜6秒の間に測定した摩擦力の平均値から動摩擦係数を算出した。
【0071】
曇り度(Haze): 表面処理銅箔とPETフィルムとを熱圧着して銅張積層板を作製した。その後、当該表面処理銅箔をエッチング除去し、残ったPETフィルムを、ヘイズメーターNDH5000(日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS−K7136(2000)に準じて、23℃でのフィルムの曇り度(Haze:単位%)を3箇所測定し、その平均値を求めた。
【0072】
[実施例と比較例との対比]
最初に、図面を参照しつつ、実施例と比較例との「うねりの最大高低差(Wmax)」に関して対比する。比較例のうねりの最大高低差(Wmax)の値は、実施例のうねりの最大高低差(Wmax)に比べて高く、これら比較例の曇り度(Haze)の値も実施例に比べて高く、透明度に欠けることが理解できる。
【0073】
しかし、比較例2のうねりの最大高低差(Wmax)は、実施例2のうねりの最大高低差(Wmax)と比べて、大きな差異はないように思われる。しかしながら、曇り度(Haze)の値をみると、実施例2は12であるのに対し、比較例2は84であり、実施例2の場合の樹脂フィルムの透明度が飛躍的に高いことが分かる。そこで、実施例1に係る黒色粗化の状態を示す
図1と、比較例2に係る粗化処理の状態を示す
図3とを対比すると、全く異なる表面形状をしていることが理解できる。このことから、うねりの最大高低差(Wmax)の値のみが低くとも、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の意図する粗化処理表面が得られていないことが理解できる。
【0074】
そこで、粗化処理面のL
*a
*b
*表色系の明度L
* 関して、実施例と比較例とを対比してみる。表1の実施例の明度L
*の値は、実施例1、実施例2、実施例3共に、「明度L
* が30以下」の色調を備えている。これに対し、比較例1及び比較例2の粗化面は、明度L
*が30を超えている。そのため、比較例1及び比較例2の曇り度(Haze)の値が大きくなっていると理解できる。一方、比較例3の粗化面は、実施例3の黒色粗化面よりも暗い色調であり、従来の銅箔の中にも、比較例3のように「明度L
* が30以下」の色調を備えるものがあることが分かる。しかしながら、このとき実施例3の曇り度(Haze)の値が8であるのに対し、比較例3の曇り度(Haze)の値は50と非常に高く、透明度に欠けるものになっている。従って、L
*a
*b
*表色系の明度L
* の値のみが良好な黒色を示しても、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔に好ましい黒色粗化面が得られていない場合のあることが理解できる。
【0075】
そして、
図1と
図2〜
図4との対比から、銅粒子の付着状態をみるに、比較例に比べ、実施例の銅粒子は微細であり、且つ、均一に多くの銅粒子が付着していることが理解できる。表1から理解できるように、実施例と、比較例1及び比較例2とでは銅粒子の付着個数が明らかに異なっている。このことから、比較例1及び比較例2に比べ、実施例における黒色粗化面は、微細な銅粒子が多く付着することで、良好な黒色の色調を備え、且つ、うねり及び凹凸の無い平坦な表面となっていることが理解できる。一方、比較例3の銅粒子の付着個数は471個であり、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の好ましい400個〜2500個の銅粒子が付着しているという条件を満たしている。しかし、上述と同様に、比較例3の曇り度(Haze)の値は50と非常に高く、透明度に欠けるものになっている。従って、単に付着した銅粒子の個数が適正であっても、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔と同等の黒色粗化面が得られていないことが理解できる。
【0076】
以上のことから理解できるように、本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の備える黒色粗化面は、少なくとも、「うねりの最大高低差(Wmax)が1.2μm以下」という条件と、「L
*a
*b
*表色系の明度L
* が30以下の色調を備える」という条件とを兼ね備える必要があり、この条件を満たしていればフレキシブルプリント配線板のCCD視認性及びAOIの検査精度が顕著に向上することが理解できる。そして、更に、この本件出願に係るフレキシブルプリント配線板製造用の黒色化表面処理銅箔の備える黒色粗化面は、400個〜2500個の銅粒子が付着しているという条件を兼ね備えることが、本件出願に言う「曇り度(Haze)」の値を改善することに有用であると言える。
【0077】
更に、実施例と比較例との動摩擦係数の値に着目すると、実施例と比較例とに大きな差異はなく、動摩擦係数が0.50以上であることが理解できる。このことから、本件出願に係る黒色化表面処理銅箔の黒色粗化面が、従来の表面処理銅箔と比べて、微細な凹凸を備えていても、ロールラミネート法で樹脂フィルムと黒色化表面処理銅箔とを積層する際に、黒色化表面処理銅箔と樹脂フィルムとの接着界面で滑りが生じない。また、当該接着界面にシワも気泡も生じることもなく、良好な積層ができるものと判断できる。
【0078】
上述の実施例及び比較例の製造条件を対比することから明らかなように、本件出願に係る黒色化表面処理銅箔は、うねりの最大高低差(Wmax)が1.2μm以下の銅箔を用いて、その表面に、9−フェニルアクリジンを含有する黒色粗化用銅電解溶液を用いた黒色粗化を行うことで効率よく生産可能であることが理解できる。