(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5705385
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】顔面筋鍛錬具
(51)【国際特許分類】
A63B 23/03 20060101AFI20150402BHJP
【FI】
A63B23/03
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-544278(P2014-544278)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2014065992
【審査請求日】2014年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-94319(P2014-94319)
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【審査官】
佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】
意匠登録第1223289(JP,S)
【文献】
実開平03−064662(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3143166(JP,U)
【文献】
国際公開第2014/069454(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/069514(WO,A1)
【文献】
仏国特許発明第01111489(FR,B1)
【文献】
米国特許第03805771(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0073542(US,A1)
【文献】
特開2010−264132(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3075856(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00−26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形部と、
その弾性変形部の長さ方向の中間位置に設けられ、口唇によって銜えられる銜持部とを備えた顔面筋鍛錬具において、
前記弾性変形部は、弾性を有する芯材と、その芯材の全周面を被覆した合成樹脂よりなる被覆材とを備えた顔面筋鍛錬具。
【請求項2】
前記弾性変形部の両端近傍にウェイトを設けた請求項1に記載の顔面筋鍛錬具。
【請求項3】
前記ウェイトを着脱可能に取り付けた請求項2に記載の顔面筋鍛錬具。
【請求項4】
前記弾性変形部に孔を設け、その孔に前記ウェイトを着脱可能に取り付けた請求項2に記載の顔面筋鍛錬具。
【請求項5】
前記芯材の両端部に、荷重機能を有する荷重機能部を形成した請求項2に記載の顔面筋鍛錬具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銜持部を口唇で銜えて揺動させることにより顔面筋に負荷を与えるようにした顔面筋鍛錬具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、弾性板よりなるアームの中央部に口唇で銜えるための銜持部を設けるとともに、前記アームの両端にウェイトを設けた顔面筋鍛錬具が開示されている。この顔面筋鍛錬具を使用する場合には、銜持部を口唇で銜えた状態で、首部を上方及び下方に振って、顔面筋鍛錬具を上方及び下方に揺動させる。このようにすれば、弾性材の弾力性とウェイトの荷重とにより、顔面筋に負荷が作用して、その顔面筋が鍛錬される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1223289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の顔面筋鍛錬具は、その長さ方向の中央部に合成樹脂よりなる銜持部が、両端に合成樹脂よりなるウェイトが設けられ、銜持部と両端のウェイトとがいわば分断されて、それらの間において金属製の弾性板が剥き出しになっている。このため、デザイン性が低いだけでなく、使用に際しては、弾性板は湾曲運動に加えて捩れが生じやすく、この捩れの復元力がそのまま口唇に伝わるため、使い心地が悪い。さらに、弾性板の剥き出し部分の端縁がテーブルの角等に当たると、その角に傷痕が付いたりするおそれがある。
【0005】
本発明は、優れた外観を有するとともに、使いやすい顔面筋鍛錬具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弾性変形部と、その弾性変形部の長さ方向の中間位置に設けられ、口唇によって銜えられる銜持部とを備えた顔面筋鍛錬具において、前記弾性変形部は、弾性を有する芯材と、その芯材の全周面を被覆した
合成樹脂よりなる被覆材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
以上のように構成すれば、弾性板全体が被覆されるため、外観に優れるばかりでなく、使用に際しては、被覆材の存在により弾性板の捩れが吸収または減衰されるため、銜持部を銜えやすくなる。また、弾性板の端縁が剥き出しになることはなく、テーブルの角等に当たっても、その角等が傷付くことを抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた外観を有するとともに、使いやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】コアとマウスピースとの関係を示す分解断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、この実施形態の顔面筋鍛錬具21は、使用者の口唇で銜えられて、使用者が顔面筋鍛錬具21を上下に揺動させることにより、使用者の口輪筋及びその口輪筋と繋がる頬筋,笑筋、大頬骨筋、小頬骨筋等の顔面筋が鍛錬されるようにしたものである。
【0011】
図2及び
図4に示すように、顔面筋鍛錬具21は、鋼板製の板バネよりなる直線帯板状の弾性板22を備えている。
図4及び
図5に示すように、弾性板22の長さ方向に中央部にはポリプロピレン等の硬質樹脂よりなるコア27が弾性板22をインサートとした成形によって固定されている。コア27には弾性板22の一方の端縁から突出する突出部272が形成されている。コア27の突出部272には中空状をなすマウスピース28が着脱可能に取付けられ、この取付け状態のマウスピース28により口唇によって銜えられる銜持部24が形成されている。
【0012】
図2及び
図4に示すように、弾性板22の全体とコア27の突出部272を除く部分とはポリウレタン等の合成樹脂よりなる被覆材23によってモールドされている。弾性板22と被覆材23とにより弾性変形部が構成されている。この被覆材23はコア27より軟質のゴム性状のものによって構成されていることが好ましい。弾性板22の両端部にはそれぞれ一対の貫通孔222(合計4つ)が形成されている。内側の貫通孔222は被覆材23の成形時に合成樹脂の進入を許容して、弾性板22と被覆材23との結合を強化するために機能する。外側の貫通孔222にはブッシュ26が無理嵌めされ、弾性板22の表裏両面から突出されている。ただし、ブッシュ26は被覆材23の表面に露出しない高さに形成されている。弾性板22の両端にはそれぞれ小孔224が透設されている。この小孔224も合成樹脂の進入を許容して、弾性板22と被覆材23との結合を強化するために機能する。
【0013】
そして、コア27の左右両側における弾性板22及び被覆材23により左右一対のアーム31が形成されている。アーム31において被覆材23の先端部には、それぞれウェイト部25が設けられている。
【0014】
そして、
図1及び
図3に示すように、銜持部24を口唇によって銜えて顔面筋鍛錬具21全体が上下に揺動されることにより、ウェイト部25の荷重や弾性板22の弾力性等に基づき、両アーム31が揺動に共振して上下に振動される。ここで、共振とは、銜持部24に所定範囲内の振動数の振動が加えられた際に、アーム31が大きく上下方向に撓んで振動することをいう。特に、アーム31の端部が銜持部24の高さより高い位置まで撓むことが好ましい。これによって、銜持部24を銜えている使用者の顔面筋に負荷が作用して、顔面筋が鍛錬される。
【0015】
図5に示すように、前記コア27の外周面には、前記マウスピース28を掛止して保持するための凹凸部271が形成されている。マウスピース28は、コア27よりも軟質で滑りにくいポリウレタン等の軟質合成樹脂により形成されている。前記マウスピース28の内周面には、コア27の凹凸部271に係合可能な凹凸部281が形成されている。マウスピース28の外周面の中央部の上面及び下面には、口唇によって銜えられる窪み部282が形成されている。マウスピース28の先端部の外周面には、凹部283が形成されている。マウスピース28の先端面には、球面状の凸部284が形成されている。
【0016】
図2及び
図4に示すように、前記被覆材23の両端位置には保持孔29がそれぞれ形成されている。前記各ウェイト部25は、各保持孔29に着脱可能に取り付けられたウェイト30により構成されている。そして、重量の異なる複数種のウェイト30が用意され、使用者が要求する鍛錬度合い等に応じて任意の重さのウェイト30が選択されて各保持孔29に着脱可能に取り付けられる。
【0017】
次に、前記のように構成された顔面筋鍛錬具21の使用方法を説明する。
顔面筋鍛錬具21で顔面筋を鍛錬する場合には、顔面筋鍛錬具21の使用者の要求する鍛錬度合い等に応じて、あらかじめコア27に所要の外形寸法のマウスピース28が取り付けられるとともに、各ウェイト部25の保持孔29に必要な重さのウェイト30が取り付けられる。この状態で、銜持部24の窪み部282を口唇に銜えて顔を上方及び下方に揺動させる。このようにすると、口唇に対して顔面筋鍛錬具21の重量が作用した状態で、板バネよりなる弾性板22を介して両ウェイト部25が上方及び下方に共振されて撓み、その撓み振動が銜持部24に伝達される。これによって、口唇を介して顔面筋に負荷が与えられ、その顔面筋が鍛えられる。
【0018】
銜持部24はアーム31の側縁から突出して、その側縁から外側へ変位した位置に配置されている。このため、顔面筋鍛錬具21が片持ち状態で口唇に銜えられることになって、口唇に対する荷重負担が大きくなる。従って、共振による負荷が顔面筋に対する負荷として効率よく作用して、顔面筋が効果的に鍛えられる。このとき、前記窪み部282が横長の断面楕円形に形成されているため、口が丸く開いた状態でマウスピース28を保持することができる。口を丸く開いた状態でマウスピース28を保持することにより、口輪筋全体に共振によって生じる負荷を伝えることができる。また、口輪筋には笑筋等の表情筋がつながっているため、口輪筋を介して笑筋等も鍛錬することができて、効率的な鍛錬が可能になる。
【0019】
この実施形態の顔面筋鍛錬具21は弾性板22が合成樹脂の被覆材23によってモールドされているため、アーム31が撓んで共振する際、鍛錬のために得ようとしているアーム31の上方及び下方への撓みによる振動以外の動き、例えば弾性板22の捩れを抑えることができる。従って、使用者の口唇に対して邪魔な動きが伝えられることを少なくできて、顔面筋鍛錬具21を快適に使用できる。なお、弾性板22の全体をモールドすることに代えて、弾性板22の表裏両面あるいは表裏の一方の面に合成樹脂の板やシートを接着等によって固着してもよい。
【0020】
さらに、顔面筋の強さや鍛錬度合いに応じて、ウェイト部25の保持孔29内のウェイト30を重さの異なった別のウェイト30に交換することができる。
以下に、本実施形態の顔面筋鍛錬具21の製造方法を説明する。
【0021】
まず、弾性板22をインサートとして、弾性板22の中央部外面に、
図4に示すコア27が射出成形される。
次いで、弾性板22の各端部における外側の貫通孔222にブッシュ26が無理嵌めされる。これによって、弾性板22の表裏両面に2つのブッシュ26が突設される。
【0022】
その後、弾性板22が成形型内にセットされて、その型内に被覆材23となる合成樹脂が射出される。このとき、合成樹脂の射出初期はその射出圧力が弾性板22に対して均等に作用せず、同圧力が一時的に弾性板22に対して不均一に作用する。このため、弾性板22が湾曲して、その端縁のエッジ等によって成形型101のキャビティ102の成形面に擦過傷等がつくおそれがある。しかし、本実施形態においては、弾性板22が湾曲した場合、ブッシュ26がキャビティの成形面に当接して、弾性板22が当接することは回避される。
【0023】
従って、キャビティの成形面に傷がつくおそれを防止できる。キャビティ内に合成樹脂が充填し終わった状態においては、射出圧力が弾性板22全体に対して均等に作用するため、弾性板22の湾曲がもとに戻って同弾性板22はキャビティの中央部において直線状に延びる。従って、成形終了後、弾性板22は成形された被覆材23内の定位置にモールドされる。
【0024】
この実施形態では以下の効果がある。
(1)弾性板22の全周面が被覆材23によって覆われているため、顔面筋鍛錬具21を外観の優れたものにすることができる。なお、弾性板22の全体をモールドすることに代えて、表裏両面あるいは表裏の一方の面に合成樹脂の板やシートを接着等によって固着してもよい。
【0025】
(2)同じく弾性板22の全周面が被覆材23によって覆われているため、弾性板22が湾曲する際、弾性板22の捩れが被覆材23によって吸収あるいは減衰される。また、被覆材23によって弾性板22が拘束されることにより、弾性板22の微細振動が抑えられる。このため、口唇に上方及び下方への撓み以外の動きが伝えられることを抑制できて、銜えにくくなることを抑えることができる。従って、この実施形態の顔面筋鍛錬具21を使用しやすいものとすることができる。
【0026】
(3)同じく弾性板22の全周面が被覆材23によって覆われているため、弾性板22の端縁がテーブルの角等に当たることを防止でき、このため、テーブルの角等に傷が付くことを防止できる。
【0027】
(4)ウェイト30を着脱可能に取り付けるための保持孔29が弾性板22の外側において被覆材23に形成されているため、被覆材23の柔軟性を利用できて、ウェイト30の着脱が容易になるとともに、弾性板22にウェイト30の装着のための孔を設ける必要がなく、弾性板22の加工が容易である。
【0028】
(5)顔面筋の強さや鍛錬度合いに応じて、ウェイト部25の保持孔29内のウェイト30を重さの異なった別のウェイト30に交換することができる。
(6)前記マウスピース28は滑りにくく、適度な硬度のゴム性状を有している。このため、銜えやすく、しかもアーム31の振動による負荷を口唇に伝えることができる。マウスピース28が硬すぎると、マウスピース28が口唇に馴染まず、銜えにくい。逆に柔らかすぎると、銜えたとしても顔面筋鍛錬具21を安定状態に維持し難く、しかもアーム31の振動が吸収されすぎて、鍛錬のための負荷が減少される。
【0029】
(7)弾性変形部が弾性板22と弾性板22より小さな比重の被覆材23とによって構成されているため、弾性変形部が弾性板22のみによって構成されるものに比較して顔面筋鍛錬具21を軽量化できる。すなわち、弾性変形部の弾性率は弾性板22及び被覆材23の両弾性率の相乗的な作用によって得られる。これに対し、弾性板22のみによって同じような弾性率を得ようとすると、比重の小さな被覆材が存在しない分だけ顔面筋鍛錬具21が重くなるが、本実施形態においては、このような重量増加を避けることができる。
【0030】
(他の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態を前記の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図6に示す実施形態は、前記実施形態におけるウェイト30を省略したものである。そして、弾性板22の両端部に大面積の荷重機能部122が一体形成されて、この荷重機能部122によりウェイト30に代えた荷重機能が持たせられている。この構成の場合、図示はしないが弾性板22の貫通孔222やブッシュ26が設けられ、ブッシュ26は荷重機能部122の先端部に設けることが好ましい。
【0031】
図6の実施形態においては、部品点数が少なくなって、構成が簡易化される。
(変更例)
なお、前記両実施形態は以下のように変更して具体化することも可能である。
【0032】
・
図7に示すように、
図6の前記構成において、弾性板22上の被覆材23の一部に孔223を設けて弾性板22の一部、すなわち、孔223の内周縁を外部に露出させること。この場合、特許文献1とは異なり、弾性板22上の合成樹脂が中央部において2つに分断されている構成ではなく、弾性板22の端縁が露出もしていない。従って、
図7の構成においては、特許文献1のような問題点は生じない。むしろ、孔223が存在するために、デザイン上のアクセントとなったり、重量バランスを調整できたりする。従って、孔223は必要に応じて、大きさ、位置、数等を調整すればよい。本発明において、芯材としての弾性板22の全周面を被覆するとは、被覆材23が弾性板22の長さ方向において分断されていなければ、その被覆材23は弾性板22の全周面を被覆するものとする。
【0033】
・アーム31の両端部に弾性板22や被覆材23よりも大きい比重の物質を設けて、その部分にアーム31の上方及び下方への撓みのための荷重機能を有する荷重機能部とすること。
【0034】
・アーム31の両端部の厚さを厚くしたり、アーム31全体を長くしたりして、アーム31の両端部を荷重機能部とすること。
・
図6及び
図7の構成において、荷重機能部122を弾性板22と別体にすること。あるいは、荷重機能部122を弾性板22なしで構成すること。このためには、当該部位の被覆材23を厚くしたり、大きくしたりすること。
【0035】
・マウスピース28をコア27に一体成形や接着、あるいは溶着によって固定したり、コア27を設けることなく、弾性板22に直接固定したりすること。
・コア27を設けることなく、マウスピース28を弾性板22に着脱可能に取り付けること。
【0036】
・ウェイト30をアーム31に対して一体成形や接着,あるいは溶着によって固定すること。
・弾性板22を合成樹脂板やFRP(ガラス繊維強化樹脂)等、鋼板以外の材質によって構成すること。
【符号の説明】
【0037】
21…顔面筋鍛錬具、22…弾性板、23…被覆材、24…銜持部、25…ウェイト部、27…コア、28…マウスピース、29…保持孔、30…ウェイト、122…荷重機能部。
【要約】
顔面筋鍛錬具(21)は、弾性板(22)と、その弾性板(22)の長さ方向の中間位置に設けられ、口唇によって銜えられる銜持部(24)とを備えている。弾性変形部は、弾性板(22)と、その弾性板(22)の全周面を被覆した被覆材(23)とを備える。弾性板(22)の全体が被覆されるため、外観に優れるばかりでなく、使用に際しては、被覆材(23)の存在により余分な振動の多くが吸収または減衰されるため、銜持部(24)を銜えやすくなる。