【実施例1】
【0018】
本発明による実施例に係る仕上げ排煙脱硫装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係る仕上げ排煙脱硫装置の概略図である。
図1に示すように、実施例1に係る仕上げ排煙脱硫装置10Aは、燃焼排ガスから予め既存の脱硫装置(図示せず)により硫黄酸化物を除去した後に、残存する硫黄酸化物を極低濃度までさらに除去する仕上げ排煙脱硫装置であって、微量の硫黄酸化物を含む燃焼排ガス(排ガス)11を導入するガス導入部12を有し、導入した燃焼排ガス11中の硫黄酸化物に吸収液13を接触させて脱硫する仕上げ脱硫部14を備えた仕上げ脱硫装置本体(以下「装置本体」という)15と、前記仕上げ脱硫装置本体15内の仕上げ脱硫部14の後流側に設けられ、仕上げ脱硫後の燃焼排ガス中の煤塵を除去する湿式電気集塵部16と、前記湿式電気集塵部16の前後のいずれか一方に設けられ、燃焼排ガスを冷却する冷却部17と、除塵及び冷却後の浄化燃焼排ガス(浄化ガス)18を外部へ排出するガス排出部19とを、具備するものである。
本実施例では、仕上げ脱硫部14は、石灰石膏法の硫黄酸化物を除去する吸収液13として石灰(CaCO
3)吸収液がポンプP
1により循環ラインL
1を通して供給されている。
また、湿式電気集塵部16は、電極部の洗浄水31がポンプP
2により循環ラインL
2を通して供給されている。また、冷却部17は、冷却水32がポンプP
3により循環ラインL
3を通して供給されている。
符号、21は碍子支持部、22は碍子、23はミストエリミネータ、33は陣笠式チムニートレイ、34は分散式チムニートレイ、35〜37はノズルを各々図示する。
【0019】
本実施例1に係る仕上げ排煙脱硫装置10Aを用いることで、予め硫黄酸化物が除去された排ガス11を更に仕上げ脱硫部14で脱硫することができ、残留している硫黄酸化物を殆ど除去することができる。その後、仕上げ脱硫部14の上部側に設けられた湿式電気集塵部16により煤塵の除去を行うことができる。
【0020】
ここで、仕上げ脱硫部14で用いる吸収液13としては、CaCO
3以外にはNaOH、Na
2CO
3、NaHCO
3、Ca(OH)2、Mg(OH)
2等を例示することができる。
また、湿式電気集塵部16で用いる洗浄水31としては、NaOH以外にはNa
2CO
3、NaHCO
3等を例示することができる。
なお、本実施例においては、図面上、吸収液13及び洗浄水31を各々供給するタンクを省略している。
【0021】
また、仕上げ脱硫部14と湿式電気集塵部16とは、類似断面積(略同一の断面構造又は類似断面構造)とするのが好ましい。
これは、大幅な拡幅や拡小構造とすると、ガス流速が偏る部分が出来、排ガスと湿式除塵装置の電極の接触効率が低下して除塵性能が低下する場合があるからである。
【0022】
また仕上げ脱硫装置の好適ガス流速は2.0〜3.8m/s、湿式集じん装置の好適ガス流速は2.0〜3.0m/sと両者は類似しているが、類似断面構造とする為には両者を通過するガス流速を2.0〜3.0m/sの範囲で合わせるのが好ましい。また、必要に応じて塔内の偏流が生じることが事前に想定される箇所に整流板を設けてガス偏流を抑制したり、比較的ガス流速域の速い仕上げ脱硫塔内に隔壁状のジャマ板を設けたりして、好適ガス流速帯を最適に制御するようにしてもよい。
例えば、比較的ガス流速域の速い(例えば3.0m/s程度)流速で排ガス11を仕上げ脱硫部14内に供給する際、仕上げ脱硫塔内に隔壁状のジャマ板を設けることで、後段側の湿式電気集塵部16の好適ガス流速帯(例えば2.5m/s)を最適に制御することができ、この結果良好な脱硫処理と除塵処理とを行うようにしてもよい。
【0023】
その結果、ガス排出部19では、硫黄酸化物濃度で10ppm以下(SO
2<1〜3ppm、SO
3<1〜3ppm)、煤塵濃度で10mg/m
3N以下の極めて清浄化された浄化ガス18を得ることができる。
【0024】
よって、仕上げ排煙脱硫装置10Aの後段側に設置されるCO
2回収装置106に浄化ガス18を供給した場合でも、硫黄酸化物の濃度が極めて少なくなるので、CO
2吸収液(例えばアミン吸収液)中における蓄積が少なくなる。
この結果、CO
2吸収液が劣化に起因するCO
2吸収性能の低下を抑制できる。
【0025】
本実施例では、湿式電気集塵部16の後段側に、排ガスを冷却する冷却部17を設けているが、本発明はこれに限定されることはなく、湿式電気集塵部16の前段側(仕上げ脱硫部14と湿式電気集塵部16との間)に設けるようにしてもよい。
なお、冷却部17の下部に設けた冷却水32を回収するチムニートレイは、所望の冷却効果が得られることができれば、陣笠式チムニートレイや分散式チムニートレイのいずれを用いてもよい。但し湿式電気集塵部16の下部の洗浄水31を回収するチムニートレイは、排ガスの偏流を抑制させるために、分散式チムニートレイとするのがよい。
【0026】
本実施例によれば、仕上げ脱硫部14の上部側に湿式電気集塵部16を設け、脱硫と共に煤塵の除去を一度に処理することができる。
また、仕上げ脱硫部14においては、公知の散水式、噴流式、充填式、液柱式の脱硫装置を用いることができる。この仕上げ脱硫部14を通過することで、排ガス11が整流化され、湿式電気集塵部16に整流されたガスが供給され、電極表面との接触効率が良好となり、整流化による集塵能力が向上する。
【0027】
また、仕上げ脱硫部と湿式電気集塵部との一体型により、敷地面積の低減を図ることができる。
なお、従来の湿式除塵装置は、他設備とは分離して設置されるため、取合いダクトが必要となるが、このとき取合いダクトを介して排ガスを流入する際、曲がりダクト等により連結する必要があり、この結果偏流が生じ、湿式集塵装置での除塵性能が低下するが、一体型とすることで、これを解消することができる。
【0028】
ここで、本実施例において、仕上げ脱硫部14において、液柱式の脱硫装置とする場合には、例えば200A〜350Aのスプレーパイプが0.5m程度のピッチで配置するようにしている。
このようなスプレーパイプが0.5m程度のピッチで配置されている液柱式の脱硫装置とすることで、これがガス整流抵抗構造体として働き、更に該パイプへの降液も抵抗圧損として寄与することとなる。
このため本一体構造設備では、仕上げ脱硫部14でのガス整流抵抗効果によって、上部に一体化された湿式電気集塵部16に導入するガスの偏流が抑制されることとなる。この結果、集塵部16での集塵性能を向上させる事ができることとなる。
【0029】
脱炭設備は、CO
2削減要求の高まりにより新設火力の他に既設火力への適用も多く期待されている事から、特に既設の場合は敷地面積制約により設置成否が左右される場合があるが、この時、従来別置きしていた湿式電気集塵部16と仕上げ脱硫部14とを同一断面で組み合わせる事で脱炭・除塵設備の設置が可能になり、適用が容易となる。
【0030】
以上の実施例では、湿式電気集塵部を装置本体15の内部に1段設けたものを説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2段連続して設けるようにしてもよい。
【実施例2】
【0031】
本発明による実施例に係る仕上げ排煙脱硫装置について、図面を参照して説明する。
図2は、実施例2に係る仕上げ排煙脱硫装置の概略図である。
図2に示すように、実施例2に係る仕上げ排煙脱硫装置10Bは、実施例1に係る仕上げ排煙脱硫装置10Aにおいて、湿式電気集塵部16で用いる洗浄水31をラインL
4により抜き出し、必要に応じて装置本体15下部側に貯留する吸収液(CaCO
3)13中に洗浄水31を供給するようにしている。洗浄水31としては、例えばNaOH等の強アルカリ剤を用いることで、脱硫性能の向上をさらに図ることができる。
なお、洗浄液31の供給は、pH計41で監視しつつ行うようにすればよい。
特に、ガス導入部12において硫黄酸化物の濃度が許容値よりも高いような燃焼排ガス(排ガス)11を導入する場合には、特に有効となり、ガス排出部19での浄化燃焼排ガス(浄化ガス)18中での硫黄酸化物の濃度を極低濃度とすることができる。
【0032】
これは、一般に、石灰石膏法脱硫法とNaOH等の強アルカリ脱硫法の性能を相当モル量で比較した場合、後者は液側境膜抵抗がない為に脱硫性能が高くなるので、仕上げ脱硫部14に強アルカリ(例えばNaOH)を加えた場合も性能の向上に寄与することとなる。
【実施例3】
【0033】
本発明による実施例に係る仕上げ排煙脱硫装置について、図面を参照して説明する。
図3は、実施例3に係る仕上げ排煙脱硫装置の概略図である。
図3に示すように、実施例3に係る仕上げ排煙脱硫装置10Cは、実施例1に係る仕上げ排煙脱硫装置10Aにおいて、湿式電気集塵部16で用いる洗浄液の強アルカリ液を、仕上げ脱硫部14の吸収液として用いて、吸収・洗浄液42として共用するものである。
図3に示すように、実施例1の仕上げ排煙脱硫装置10Aにおいて、湿式電気集塵部16の下段に設けた洗浄水31を回収する分散式チムニートレイ34を取り除き、洗浄液はそのまま落下して、吸収液として機能するようにしている。
なお、強アルカリ液の吸収・洗浄液42の供給量を所望の流量とするために、ラインL
11、L
12には第1及び第2のオリフィス43A、43Bが各々介装されている。
【0034】
これにより、湿式電気集塵部16で電極の洗浄に寄与した洗浄水をそのまま、仕上げ脱硫部14の吸収液として用いることができる。
また、前記仕上げ脱硫部14の吸収液と、湿式電気集塵部16の洗浄液とが共に同じ種類の強アルカリで且つ同じ濃度の液を用いるので、両者の洗浄水と吸収液を共用でき、貯留タンクやポンプ等の付帯設備の共有化を図ることができる。
【0035】
また、本実施例では、仕上げ脱硫装置14の吸収液として、NaOH等の強アルカリ液のみを用いているので、石灰石膏法に較べて、液側境膜抵抗がないために、脱硫性能が高くなり、ガス導入部12における硫黄酸化物の濃度が高いような場合であっても、良好な脱硫性能を発揮することとなり、ガス排出部19での浄化ガス13中の硫黄酸化物濃度が1ppm以下の精密脱硫に大きく寄与することとなる。
【0036】
また、
図4に示すように、実施例3の他の仕上げ排煙脱硫装置10Dにおいては、更に、精密脱硫、精密除塵後の浄化ガス18を冷却する浄化ガス冷却装置45と、CO
2回収装置106とを設ける際、CO
2回収装置106に導入する一部のガスを、ラインL
20を介して、湿式電気集塵部16の碍子22のシールガス47としてファン46により供給している。すなわち、碍子22が収納される碍子室にシールガス47を供給して、常に湿式電気集塵部16の内部に通気することで、排ガスの浸入を防止するようにしている。
これによって、別途設けるシールエアファン設備費・電気費が不要となる。さらに、排ガスの一部を循環させることとなるので、自己ガスシールとなり、CO
2回収装置でのトータルの排ガス処理量を従来の空気で賄っていた際と比較して、ガス処理量を例えば約5%程度低減することができる。
【実施例4】
【0037】
本発明による実施例に係る排ガス処理システムの概略構成図を
図5に示す。
図5に示すように、実施例4に係る排ガス処理システム50は、例えばボイラ101からの排ガスG中の窒素酸化物を除去する脱硝装置102と、窒素酸化物除去後のガス中の熱を回収するエアヒータ103と、熱回収後のガス中の煤塵を除去する電気集塵機104と、除塵後のガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置105と、この脱硫後の排ガス11中に残存する硫黄酸化物を極低濃度までさらに除去する実施例1に係る仕上げ脱硫装置10Aと、浄化ガス18中の二酸化炭素を回収するCO
2回収装置106と、CO
2回収後のガスを外部に排出する煙突111とを具備するものである。
【0038】
よって、仕上げ排煙脱硫装置10Aの後段側に設置されるCO
2回収装置106に供給される浄化ガス112は、硫黄酸化物の濃度が極めて少なくなるので、CO
2回収装置106で循環して利用されるCO
2吸収液(例えばアミン吸収液)中における硫黄酸化物や煤塵の蓄積が少なくなり、劣化を抑制することができる。
この結果、CO
2吸収液が劣化に起因するCO
2吸収性能の低下が少なくなり、安定してCO
2の回収を行うことができる。
【0039】
また、CO
2吸収性能の低下を補うために、CO
2吸収性能の追加供給の回数と供給量が少なくなると共に、CO
2吸収性能の回復のためのリクレーミング頻度の増大がなくなり、排ガス処理システムにおけるランニングコストの削減を図ることができる。