【実施例】
【0038】
図1は、X線撮影装置7とX線画像表示装置2とがLANケーブルなどの通信線Lで通信可能に接続されて構成されるX線撮影表示システム1の概略構成を示す外観図である。X線撮影装置7は、CT(ComputerTomography)と呼ばれる3次元コンピュータX線断層撮影を実施するものである。このX線撮影装置7は、他にもパノラマ撮影、リニア断層撮影、リニアスキャン撮影、およびスキャノグラム撮影など、従来から歯科分野で広く知られている種々の撮影を行うことができる。
【0039】
X線画像表示装置2は、CPU等が格納される装置本体3と、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の記憶媒体からデータを読み取る読取部4と、画像表示を行う表示部5と、キーボードやマウスにより操作入力を受け付ける操作部6とが設けられている。
【0040】
X線撮影装置7は、支持台14に立設された垂直柱13と、該垂直柱13に昇降可能に設けられた昇降フレーム8と、該昇降フレーム8に平行な軸を中心として旋回可能な状態で該昇降フレーム8に設けられた旋回アーム9とで主に構成されている。
【0041】
昇降フレーム8は、前後方向に長いフレーム上部8aと、該フレーム上部8aの後端から垂直柱13に沿って下方へ続く上下方向に長いフレーム中部8bと、該フレーム中部8bの下端から前方へ続く前後方向に長いフレーム下部8cとで構成されている。
【0042】
フレーム上部8aの下面前方には、旋回アーム9の上端略中央部が、昇降フレーム8に対して水平方向への移動を可能とする不図示のXYテーブルを介して、垂直柱13に平行な軸を中心として旋回可能な状態で取り付けられている。
この旋回アーム9は、略水平方向に長いアーム上部9aの両端部に、下方へ続く上下方向に長いアーム側部9b,9cの上端部が続けて設けられて構成されている。
【0043】
旋回アーム9の一方のアーム側部9cの下端付近には、X線照射部10aが設けられ、他方のアーム側部9bの下端付近には、X線検出部10bが設けられている。
【0044】
昇降フレーム8のフレーム下部8cには、前方上部に位置固定部品11が設けられている。この位置固定部品11は、患者の側頭部を支えて横方向の位置を定める側頭部固定アーム11aと、患者の顎部を支えて前後方向および上下方向の位置を定める顎部固定台11bとで構成されている。
【0045】
フレーム下部8cの底面には、患者が手で掴むための2本のハンドル12が下方へ突出して設けられている。
【0046】
このように構成されたX線撮影装置7は、昇降フレーム8の高さを調節し、位置固定部品11に患者の頭部を固定し、旋回アーム9の水平方向における位置をXYテーブルで調整し、X線照射部10aから照射して患者を透過したX線をX線検出部10bで検出しつつ旋回アーム9を所定角度だけ回転させることで、X線による投影データを取得する。そして、取得された投影データを基に画像再構成演算を行うことで、3次元ボリュームデータを取得する。この3次元ボリュームデータは、ボクセル(voxel:3次元上のピクセル)の集合であり、1回の撮影で得られたすべての画素を、CT値(X線吸収の程度)の3次元行列としたデータで構成されている。そして、この3次元ボリュームデータを通信線LによりX線画像表示装置2へ送信し、X線画像表示装置2が3次元ボリュームデータをフーリエ変換等する演算処理を実行してCT画像(X線断層面画像、ボリュームレンダリング画像)を生成し、表示する。
【0047】
なお、以上の説明はX線撮影装置の構成の一例であって、本発明に係るX線撮影装置は、上記の構成に限られるものではない。例えば、旋回アーム9の旋回軸は昇降フレーム8に対して固定させ、患者が座る椅子にXYテーブルを設けることで、撮影のための位置づけを行う構造であってもよい。また、X線撮影装置の内部では画像再構成演算を行わず、X線検出部10bで取得した投影データを外部の画像処理装置へ順次送信し、外部の画像処理装置で3次元ボリュームデータの生成から画像表示までの処理を行う構成としてもよい。
【0048】
図2は、X線画像表示装置2の構成を示すブロック図である。
X線画像表示装置2は、装置本体3に、CPU15、RAM16、ROM17、および固定ディスク18が互いにバスラインで接続して設けられている。
【0049】
CPU15は、ROM17や固定ディスク18に記憶されているプログラムに従い、RAM16を一次記憶領域として、各種制御処理、および演算処理を実行する。
固定ディスク18は、各種のプログラム18aおよびデータ18bを記憶している。
【0050】
装置本体3に接続されている読取部4は、媒体19からプログラムやデータの読取を実行する。ここで読み取るプログラムやデータには、X線画像を表示するためのX線画像表示プログラム、あるいはX線撮影装置7によって得られた3次元ボリュームデータなどが含まれる。
表示部5、操作部6、X線撮影装置7、及び通信線Lについては、
図1とともに説明したとおりである。
【0051】
図3は、X線画像表示装置2の機能を説明する機能ブロック図である。
X線画像表示装置2の装置本体3は、プログラム18aによる情報処理をCPU15が実行してX線撮影装置7、読取部4、表示部5、および操作部6といったハードウェアを動作制御することで、各機能手段21〜37として機能する。以下、各機能手段21〜37について説明する。
【0052】
撮影制御部21は、操作部6からの操作入力を受け付けて撮影開始等の制御信号をX線撮影装置7へ送信する。これによりX線撮影装置7によるX線撮影の開始等を実行する。なお、この撮影制御部21の機能は、必ずしもX線画像表示装置2に設けられるものではなく、上述のX線撮影装置7に設けられることもある。
【0053】
画像データ取得部22は、X線撮影装置7や読取部4から画像データを取得する。この画像データは、X線撮影装置7により取得した患者の3次元ボリュームデータあるいは画像再構成前の投影データとすることができる。画像データ取得部22は、取得した3次元ボリュームデータあるいは投影データを記憶部23に記憶する。
【0054】
記憶部23は、固定ディスク18に対してデータの記憶および読み出しを行う機能手段である。この記憶部23は、画像データ取得部22、画像データ選択部24、画像生成部25、および表示制御部26からアクセスされ、データの読み書きが行われる。また、記憶部23には表示用のCT画像も記憶されており、必要に応じてこのCT画像を表示部5へ送信して表示させる。
【0055】
画像データ選択部24は、操作部6の操作入力に従って、記憶部23に記憶されている3次元ボリュームデータのうち操作入力で指示されたデータを選択する処理を実行する。
【0056】
画像生成部25は、投影データに基づく画像再構成演算を実行して3次元ボリュームデータを生成したり、3次元ボリュームデータをフーリエ変換等により演算し、任意の断層面における断層面画像やボリュームレンダリング画像を生成したりする。また、全体表示から部分拡大表示に表示変更された場合に、演算する領域となるボクセルサイズを変更し、そのボクセルサイズに応じた解像度で再度演算して断層面画像やボリュームレンダリング画像といったCT画像を再生成する処理も実行する。生成したCT画像は、表示部5に表示し、必要に応じて記憶部23に記憶する。
【0057】
表示制御部26は、操作部6の操作入力に従って各種表示制御を実行する。この表示制御部26には、主にCT画像表示制御部27と、インプラント画像表示制御部35とが設けられている。
【0058】
CT画像表示制御部27は、患者をX線撮影して得た3次元ボリュームデータを演算して表示する制御を行う部位であり、回転角度制御部28、断層位置制御部31、および拡大縮小制御部32が設けられている。
【0059】
回転角度制御部28は、表示するCT画像の回転軸の角度を変更する動作を実行する。すなわち、初期の表示状態では、3次元ボリュームデータの中心を通る鉛直方向、及び、当該鉛直方向に対して直交し且つ互いに直交する2軸の、計3軸が回転軸となって表示され、回転操作がなされるとこれらの回転軸のいずれかを軸にして回転表示する状態となっている。このとき、中心が関心点となり、該関心点が交点となる互いに直交するX断層面、Y断層面、Z断層面が設定されている。回転角度制御部28は、これらの回転軸の角度を変更する制御を行うものである。例えば関心点を変えずに回転軸の角度を変えれば、これに伴って座標系が変わるため、X断層面、Y断層面、Z断層面の角度も変化する。この回転軸の角度を変更する際、座標系を変換する演算を行って再スライスを実行する等し、以降の断層面表示を円滑に実行できるようにすることが好ましい。なお、関心点を移動させることで回転軸の位置を変更する制御も行ってもよい。
【0060】
また、この回転角度制御部28には、インプラント基準角度制御部29も設けられている。このインプラント基準角度制御部29は、シミュレーション用のインプラント画像がCT画像内に配置され、角度を変更する操作入力を受け付けた場合に、そのインプラント画像の挿入方向を示す軸が鉛直になり、且つCT画像内の中心に位置するように、回転軸及び回転角度を変更する制御を実行する。
【0061】
なお、インプラントとは、体内に埋め込まれる器具の総称であり、失われた歯に代えて顎骨に埋め込むデンタルインプラント(人工歯根)、骨折・リウマチ等の治療で骨を固定するためのボルトなど様々なものがあるが、この実施例ではデンタルインプラントのことをインプラントと呼ぶ。
【0062】
断層位置制御部31は、断層位置の変更操作に応じて断層面画像の表示を変更する制御を行う。ここで、断層面画像は、X断層面画像、Y断層面画像、Z断層面画像という、互いに直交する3つの断層面画像で構成されている。
【0063】
拡大縮小制御部32は、拡大表示すべき領域の指定を行う拡大領域指定部33と、表示領域を切り替える表示領域切替部34とを備えている。これにより、拡大縮小表示を行うことができ、また拡大表示している表示領域を変更することができる。
【0064】
インプラント画像表示制御部35は、インプラント画像を追加するインプラント追加部36と、CT画像内におけるインプラント画像の配置を制御するインプラント配置制御部37とを備えている。これにより、表示しているCT画像に対してシミュレーション用のインプラントの画像を重畳表示し、位置・角度調整や埋設適否の確認などを行うことができる。
【0065】
なお、表示部5は、図示するように装置本体3に着脱可能に設けられかつ通信ケーブルや無線伝送手段で画像信号を受けるよう構成されていてもよく、また装置本体3に一体に設けられていてもよい。
【0066】
図4は、記憶部23(固定ディスク18)に記憶するデータの構成を示すデータ構成図である。
記憶部23には、患者毎に患者別フォルダ41が設けられ、この患者別フォルダ41には、日付けによって分ける日付別フォルダ42が設けられ、この日付別フォルダ42内には、その患者のその日のデータが記憶されている。
【0067】
日付別フォルダ42内には、3次元ボリュームデータ43、全体表示設定データ44、拡大表示設定データ45、およびインプラント設定データ47等が記憶されている。
【0068】
3次元ボリュームデータ43は、X線撮影装置7により撮影した投影データに基づく画像再構成後のデータであり、場合によっては他のX線撮影装置等により撮影したデータを媒体19から取得して記憶してもよい。
【0069】
全体表示設定データ44は、CT画像表示時に特に領域指定のされていない3次元ボリュームデータ全体のCT画像を表示する際の設定データである。この設定データには、スライスX位置(後述のカーソルCxの位置)、スライスY位置(後述のカーソルCyの位置)、スライスZ位置(後述のカーソルCzの位置)、および回転角度等が記憶されている。これにより、記憶されている設定でX断層面画像、Y断層面画像、Z断層面画像、およびボリュームレンダリング画像のいずれかまたは全てが表示部5に表示される。
【0070】
拡大表示設定データ45は、CT画像表示時に特に領域指定のされた指定領域のCT画像を拡大表示する際の設定データである。この設定データには、指定領域の位置及び範囲、スライスX位置、スライスY位置、スライスZ位置、および回転角度等が記憶されている。これにより、記憶されている設定で拡大したX断層面画像、Y断層面画像、Z断層面画像、およびボリュームレンダリング画像のいずれかまたは全てが表示部5に表示される。
【0071】
インプラント設定データ47は、CT画像に重畳表示するインプラントに関するデータであり、種類(形状及び大きさ)、位置、および角度により構成されている。これにより、種類、位置、及び角度を設定してインプラントを適切に重畳表示することができる。
【0072】
図5は、CT画像を表示するCT画像表示画面50の説明図である。
図5(A)は、X線撮影装置7で撮影した患者のCT画像を示す画面構成図であり、
図5(B)は、さらにインプラント画像を重畳表示した状態のCT画像を示す画面構成図である。
【0073】
図5(A)に示すように、CT画像表示画面50は、右側にメニューボタン表示部55が設けられ、その左側が2×2に4分割されている。メニューボタン表示部55には、画面上にインプラント画像60(
図5(B)参照)を作成して表示するためのインプラント作成ボタン55b、およびインプラント画像60の軸に合わせて表示する角度を変更するインプラント基準角度調整ボタン55a等が設けられている。
【0074】
4分割された表示部分のうち、右上は、ボリュームレンダリング画像Gbを表示する立体表示部51であり、左上は、Z断層面画像Gzを表示するZ断層面表示部52であり、左下は、Y断層面画像Gyを表示するY断層面表示部53であり、右下は、X断層面画像Gxを表示するX断層面表示部54である。
【0075】
Z断層面表示部52とY断層面表示部53には、上下方向(鉛直方向)に一直線のカーソルCxがZ断層面表示部52からY断層面表示部53にかけて表示されている。このカーソルCxは、X断層面表示部54に表示するX断層面画像Gxの断層面の位置を表示するものである。
【0076】
また、Z断層面表示部52には、左右方向(水平方向)に一直線のカーソルCyが表示されている。このカーソルCyは、Y断層面表示部53に表示するY断層面画像Gyの断層面の位置を表示するものである。
【0077】
Y断層面表示部53とX断層面表示部54には、左右方向(水平方向)に一直線のカーソルCzがY断層面表示部53からX断層面表示部54にかけて表示されている。このカーソルCzは、Z断層面表示部52に表示するZ断層面画像Gzの断層面の位置を表示するものである。
【0078】
また、X断層面表示部54には、上下方向(鉛直方向)に一直線のカーソルCyが表示されている。このカーソルCyは、Y断層面表示部53に表示するY断層面画像Gyの断層面の位置を表示するものである。
【0079】
これらのカーソルCx,Cy,Czと各断層面表示部52〜54に表示する各断層面画像Gx〜Gzは、カーソルCx,Cy,Czの1つが移動されるとそれに連動して変化する構成になっている。
【0080】
例えば、Z断層面表示部52とY断層面表示部53の一方でカーソルCxを左右いずれかへ移動させると、他方のカーソルCxも同時に連動して同じ方向へ同じ距離だけ移動し、これに伴ってX断層面表示部54に表示しているX断層面画像GxがそのカーソルCxの位置でスライスされたX断層面画像に更新される。
【0081】
また、Y断層面表示部53とX断層面表示部54の一方でカーソルCzを上下いずれかへ移動させると、他方のカーソルCzも同時に連動して同じ方向へ同じ距離だけ移動し、これに伴ってZ断層面表示部52に表示しているZ断層面画像GzがそのカーソルCzの位置でスライスされたZ断層面画像に更新される。
【0082】
また、Z断層面表示部52とX断層面表示部54の一方でカーソルCyをY断層面表示部53と離れる方向または近づく方向へ移動させると、他方のカーソルCyも同時に連動して同じ方向(Y断層面表示部53と離れる方向または近づく方向)へ同じ距離だけ移動し、これに伴ってY断層面表示部53に表示しているY断層面画像GyがそのカーソルCyの位置でスライスされたY断層面画像に更新される。
【0083】
以上のカーソルCx〜Czを、直線または面で立体表示部51のボリュームレンダリング画像Gbに重畳させて表示してもよい。また、これらの各立体表示部51、Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、およびX断層面表示部54には、それぞれの左下に方向表示マスコット画像59が表示されるようにしてもよい。この方向表示マスコット画像59は、各表示部51〜54に表示されている画像Gb,Gy〜Gzを見ている方向から見た人形の頭部を立体表示している。
【0084】
図5(B)は、上述したCT画像表示画面50にインプラント画像60を重畳表示したものである。このインプラント画像60は、メニューボタン表示部55のインプラント作成ボタン55bが選択されると画面上に表示され、マウス操作等によって任意の場所へ移動することができる。このインプラント画像60は、各表示部51〜54に表示する患者のCT画像と同倍率でほぼ正確な大きさに表示される。このため、実際にインプラントを埋入したときに問題がないかシミュレーションして確認することができる。具体的には、例えば、埋入する部位の骨の厚みが足りずに施術時に骨が割れる可能性がないか、インプラントが下顎管に傷をつけないか、埋入予定部位の周辺に病巣が存在しないかといった点を確認できる。
【0085】
また、
図5(B)には、インプラント画像60の周囲を拡大表示するための指定領域表示枠63が表示されている。この指定領域表示枠63は、例えばインプラント画像60が作成されて配置が決定されると、このインプラント画像60を中心に正6面体の枠で表示し、大きさや向きの変更操作を許容して決定することができる。この指定領域表示枠63は、矩形(正6面体)としているが、これに限らず直方体形状や円筒形状や球形状など、適宜の形状にしてもよい。また、この指定領域表示枠63をボリュームレンダリング画像Gbに重畳させて表示してもよい。さらに、この指定領域表示枠63は、後述する指定領域CT画像表示画面50Aから、CT画像表示画面50へ、表示画面を戻したときにも、各表示部に51〜54に表示される。これにより、撮影領域全体に対する指定領域の位置と範囲が、明確に分かる。
【0086】
図6(A)は、上述した
図5(B)に示した指定領域表示枠63の範囲を拡大して指定領域CT画像を表示する指定領域CT画像表示画面50Aの画面構成図である。
【0087】
この指定領域CT画像表示画面50Aでは、Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、およびX断層面表示部54に、指定領域表示枠63で囲まれた範囲のZ断層面画像Gz、Y断層面画像Gy、X断層面画像Gxを、指定領域CT画像として拡大表示する。これにより、インプラント画像60の周辺を拡大した状態で確認できるようにしている。これら指定領域CT画像が、領域指定前のCT画像よりも高精細に再構成演算されたものであれば、より高解像度で細部にわたってインプラント画像60の周辺を確認できる。
【0088】
図6(B)は、インプラント画像60のインプラント軸61が鉛直方向と一致するように角度変更した状態の指定領域CT画像表示画面50Aの画面構成図である。
このように、表示する軸をインプラント画像60のインプラント軸61に一致させることで、インプラント軸61を中心に画像を回転させることができ、インプラント画像60の周辺をよりわかりやすく詳細に観察できるようにしている。
【0089】
図7(A)は、インプラント画像60を複数重畳表示した場合のCT画像表示画面50を示し、
図7(B)は、そのうちの1つのインプラント画像60周辺に設けられた指定領域表示枠63の範囲を拡大表示する指定領域CT画像表示画面50Aの画面構成図である。
このように、
図7(A)(B)では、複数のインプラント画像60を重畳表示し、それぞれのインプラント画像60の周辺を個別かつ詳細に観察してシミュレーションできるようにしている。後述するように、複数のインプラント画像60のそれぞれを中心とした複数の指定領域を設定し、且つ、各指定領域に対して表示条件を個別に設定し記憶させるので、指定領域CT画像の中心となるインプラント画像60を選択するごとに、それぞれに適した表示条件をあらためて設定入力する必要がない。さらに、各指定領域表示枠63が、CT画像表示画面50における各表示部に51〜54に表示されるため、撮影領域全体に対する指定領域の位置と範囲はもちろん、指定領域同士の相対位置や角度までもが明確に分かる。
【0090】
図8は、X線画像表示装置2のCPU15がX線画像表示プログラムに従って実行する動作を示すフローチャートである。
CPU15は、画像データ取得部22によりX線撮影装置7または読取部4から3次元ボリュームデータを読み込むか記憶部23に記憶されている3次元ボリュームデータ43を読み込み(ステップS1)、画像生成部25によりCT画像を表示するための計算を実行する(ステップS2)。この計算により、CT画像としてボリュームレンダリング画像Gb、X断層面画像Gx、Y断層面画像Gy、およびZ断層面画像GzをCT画像表示画面50に表示できるようにする。
【0091】
CPU15は、記憶部23に該当患者の全体表示設定データ44があれば(ステップS3:Yes)、その全体表示設定データ44の設定を反映させる(ステップS4)。この設定の反映により、CT画像表示画面50の各Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、X断層面表示部54に表示するZ断層面画像Gz、Y断層面画像Gy、X断層面画像Gxを、登録されているスライス位置および回転角度で表示することができる。
【0092】
該当患者の全体表示設定データ44がなかった場合(ステップS3:No)、画像表示装置の製造時や設置時に予め設定されているデフォルト設定を使用する(ステップS5)。
CPU15は、初期画面(あるいは基本画面若しくは加工前画面)として全体表示を行うCT画像表示画面50をステップS4,S5で定まった表示設定で表示部5に表示し(ステップS6)、全領域処理を実行する(ステップS7)。この全領域処理は、CT画像として全体表示している状態でスライス位置の変更や角度の変更、インプラント画像60の追加や位置移動、指定領域表示枠63の作成と調整といった処理を行うものであり、詳細は後述する。
【0093】
CPU15は、拡大表示する画面への切り替えが行われず(ステップS8:No)、終了もされない間(ステップS9:No)、全領域処理(ステップS7)を継続し、終了されると(ステップS9:Yes)、現在CT画像表示画面50にCT画像を表示している状態を、次回以降に使用する表示設定として全体表示設定データ44等に記憶することで保存し(ステップS10)、処理を終了する。
【0094】
全領域処理(ステップS7)において指定領域表示枠63の作成と調整を実行し、指定領域表示枠63内を拡大表示するように画面切り替えが行われた場合(ステップS8:Yes)、この段階で、CT画像表示画面50に表示している状態を、次回以降に使用する表示設定として全体表示設定データ44等に記憶することで保存し(ステップS11)、次いで、指定領域表示枠63内を拡大表示するための再計算を実行する(ステップS12)。この再計算では、画面切り替え後に拡大表示する領域を高解像度で表示できるよう、領域指定前のCT画像よりも画像再構成演算を高精細にする。
【0095】
なお、この高精細な再計算の必要性は、X線画像表示装置2の性能に依存するものである。X線画像表示装置2の演算速度が高速でRAM16のメモリ容量も十分であれば、ステップS2の段階で全体について高解像度での演算をしておき、このステップS12の再計算を省略する構成としてもよい。また、指定領域CT画像も領域指定前のCT画像と同じ解像度で、単に拡大して表示するだけであれば、その場合も、ステップS12の再計算を省略することができる。
【0096】
CPU15は、指定された指定領域表示枠63についての拡大表示設定データ45が記憶部23に記憶されていれば(ステップS13:Yes)、その拡大表示設定データ45の設定を反映させる(ステップS14)。この設定の反映により、指定領域CT画像表示画面50Aの各Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、X断層面表示部54に表示するZ断層面画像Gz、Y断層面画像Gy、X断層面画像Gxを、登録されているスライス位置および回転角度で表示することができる。
【0097】
指定された指定領域表示枠63についての拡大表示設定データ45がなかった場合(ステップS13:No)、デフォルト設定を使用する(ステップS15)。ここで、全体表示設定データ44に保存されている表示設定を、デフォルト設定として使用してもよい。
そして、CPU15は、加工後画面(あるいは個別画面若しくは部分拡大画面)として指定領域の部分拡大表示を行う指定領域CT画像表示画面50Aを、ステップS14,S15で定めた表示設定で表示部5に表示する(ステップS16)。このようにステップS8で画面切り替えが行われてからステップS16で指定領域CT画像表示画面50Aを表示するまでの処理は、
図3で説明した表示領域切替部34によって行われる。
【0098】
その後、CPU15は、指定領域処理を実行する(ステップS17)。この指定領域処理は、指定領域CT画像として指定領域を拡大表示している状態でスライス位置の変更や角度の変更、インプラント画像60の追加や位置移動、インプラント画像60の軸に角度を合わせる角度調整といった処理を行うものであり、詳細は後述する。
【0099】
CPU15は、全体表示する画面への切り替えが行われず(ステップS18:No)、終了もされない間(ステップS19:No)、指定領域処理(ステップS17)を継続し、終了されると(ステップS19:Yes)、指定領域CT画像表示画面50Aに現段階で表示している状態を、次回以降に使用する表示設定として拡大表示設定データ45等に記憶することで保存し(ステップS10)、処理を終了する。
【0100】
指定領域CT画像表示画面50Aから切り替えて、全体表示であるCT画像表示画面50を表示するように画面切り替えが行われた場合(ステップS18:Yes)、この段階で、指定領域CT画像表示画面50Aに表示している状態を、次回以降に使用する表示設定として拡大表示設定データ45等に記憶することで保存し(ステップS20)、ステップS3に処理を戻す。
【0101】
図9は、
図8におけるステップS7の全領域処理を実行する、CPU15の動作を示すフローチャートである。この動作は、CT画像表示画面50上での操作入力を受け付けて実行するものである。
【0102】
CPU15は、断層位置制御部31により、カーソルCx、カーソルCy、およびカーソルCzの1つがマウスドラッグ等によって移動される断面移動操作を受け付け、この断面移動操作を受け付けると(ステップS21:Yes)、移動されたスライス位置の断層面画像を表示する(ステップS22)。すなわち、Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、X断層面表示部54にそれぞれ表示するZ断層面画像Gz、Y断層面画像Gy、X断層面画像Gxのうち上記移動によって更新が必要となる断層面画像を更新する。
【0103】
角度変更操作がなされると(ステップS23:Yes)、CPU15は、回転角度制御部28により角度変更を実行する(ステップS24)。すなわち、カーソルCx,Cy,Czで示されるスライス位置の角度を変更して必要に応じて再計算し、Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、X断層面表示部54にそれぞれ表示するZ断層面画像Gz、Y断層面画像Gy、X断層面画像Gxを角度変更後のものに更新する。
【0104】
インプラント作成ボタン55bの選択によるインプラント作成操作がなされると(ステップS25:Yes)、CPU15は、インプラント追加部36により立体表示部51、Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、およびX断層面表示部54にインプラント画像60を表示する(ステップS26)。このとき、インプラント画像60として表示するインプラントの種類をマウス操作やキーボード入力等によって選択させ、この選択された種類のインプラント画像60を表示する。
【0105】
CPU15は、インプラント配置制御部37により、マウスドラッグ等によるインプラント移動操作を受け付けると(ステップS27:Yes)、立体表示部51、Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、およびX断層面表示部54に表示しているインプラント画像60の位置を移動する(ステップS28)。
【0106】
CPU15は、拡大領域指定部33により領域作成が行われると(ステップS29:Yes)、Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、およびX断層面表示部54に指定領域表示枠63を表示し、デフォルト設定された大きさに従って指定領域を作成する(ステップS30)。このとき、インプラント画像60が重畳されていて該インプラント画像60に対する指定領域がなければ、インプラント画像60を中心にして指定領域表示枠63を作成する。インプラント画像60がなければ、カーソルCx,Cy,Czの交点を中心にして指定領域表示枠63を作成する。
【0107】
CPU15は、拡大領域指定部33により、マウスドラッグ等による領域調整を受け付けると(ステップS31:Yes)、指定領域の大きさや位置などを調整する動作を実行する(ステップS32)。この動作は、表示した矩形の指定領域表示枠63がマウスドラッグされると指定領域表示枠63を拡大縮小し、指定領域表示枠63の中央またはカーソルCx,Cy,Czがマウスドラッグされて移動するとこの移動に伴って同じ方向へ同じ距離だけ指定領域表示枠63を移動する。
【0108】
上記各操作が行われなければ(ステップS21,23,25,27,29,31:No)、各ステップに対応した処理(ステップS22,24,26,28,30,32)を実行せずに次のステップへ順次移行し、処理が完了するまで(ステップS33:No)、この一連のステップS21〜S32の処理を繰り返して実行し、処理が完了すると(ステップS33:Yes)、全領域処理を終了し、画面切替の受付(ステップS8)に移行する。
【0109】
図10は、
図8におけるステップS17の指定領域処理を実行する、CPU15の動作を示すフローチャートである。この動作は、指定領域CT画像表示画面50A上での操作入力を受け付けて実行するものである。
【0110】
この指定領域処理で実行する断面移動、角度変更、インプラント表示、およびインプラント移動といったステップS41〜S48の処理は、上述した全領域処理のステップS21〜S28と同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0111】
インプラント軸に合わせて角度変更するためのインプラント基準角度調整ボタン55aが選択されると(ステップS49:Yes)、CPU15は、インプラント基準角度制御部29により、インプラント画像60のインプラント軸61が鉛直となる角度で、インプラント画像60が各表示部の中心に位置するように、Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、X断層面表示部54の表示を変更する(ステップS50)。これにより、インプラントを直立させてインプラント軸61を中心に回転させてインプラント画像60の周囲を観察できるため、インプラント画像60の表面と隣接歯牙等との位置関係などを見やすい状態で詳細に観察できるようになる。
【0112】
CPU15は、処理が完了するまでステップS41〜S50を繰り返し(ステップS51:No)、処理が完了すれば(ステップS51:Yes)、指定領域処理を終了する。
【0113】
以上の構成および動作により、CT撮影で得た投影データを基にCT画像をCT画像表示画面50や指定領域CT画像表示画面50Aに表示するに際して、過去にカーソルCx,Cy,Czで指定された断層面で即座に表示することができる。これにより、歯牙や下顎管等の状態をすばやく詳細に観察することができる。
【0114】
また、CT画像をCT画像表示画面50と複数の指定領域CT画像表示画面50Aとの間で画面切替を行う際に、前回表示していた表示設定で表示することができるため、同一部位を毎回同じ操作で拡大したり回転させたりスライスしたりするといった手間を削減することができる。従って、非常に利便性の高いインターフェースを提供することができる。
【0115】
また、指定領域表示枠63を複数設定でき、各指定領域表示枠63に関連づけてそれぞれに拡大表示設定データ45を記憶しておくことができるため、各指定領域表示枠63の指定領域CT画像表示画面50Aを表示する毎に以前登録した表示設定で表示することができる。従って、指定領域CT画像表示画面50Aが最も見やすい状態となる表示設定を記憶しておき、この表示設定で次からも表示することができる。
【0116】
また、Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、およびX断層面表示部54にZ断層面画像Gz、Y断層面画像Gy、およびX断層面画像Gxをそれぞれ表示することで、関心点を様々な方向から同時に観察することができる。また、この設定を記憶しておくため、同じ断層面画像を次回にも表示することができる。
【0117】
また、立体表示部51にボリュームレンダリング画像Gbを表示することができ、観察者が全体のイメージを直感的に把握することができる。
【0118】
また、ボリュームレンダリング画像Gb、X断層面画像Gx、Y断層面画像Gy、およびZ断層面画像Gzにインプラント画像60を重畳表示してインプラントの埋入をシミュレーションすることができる。
【0119】
また、インプラント画像60のインプラント軸61を中心にして角度変更できるため、インプラントの埋入に不都合がないか見やすい角度で確認することができる。また、インプラント軸61を中心に各断層面画像(Gx,Gy,Gz)を回転させて表示する、あるいはインプラント画像60の周囲の断層面画像(Gx,Gy,Gz)を表示して確認するといったことを容易に実行できる。従って、インプラントの埋入のシミュレーションを効率よく行うことができる。
【0120】
また、X線撮影装置7で得た投影データあるいは3次元ボリュームデータをX線画像表示装置2に送信して該X線画像表示装置2で表示し確認することができる。
【0121】
また、X線撮影装置7は、撮影範囲が患者の歯牙周辺に限られており、局所的にX線を照射するために、頭部全体にX線を照射するよりも患者の被量を格段に少なくすることができる。
【0122】
また、X線画像表示装置2は、3次元のデータを用いるため、様々な位置でスライスして断層面画像を表示することや、ボリュームレンダリング画像を表示することで、詳細に観察することができる。これにより、根管治療、口腔ガンの治療、治療器具が折れたり抜けなかったりしているといった場合の状態確認、親不知の診断など、様々な診断を詳細に行うことができる。特に、インプラントの埋入前の診断においては、骨がもろくなっていないか、骨の厚みは充分か、埋入したインプラントが下顎管などの神経に当たらないかをシミュレーション確認することができる。これにより、術後に患者の顎が閉まらないとか出血が止まらないといった施術ミスが生じることを防止することができる。
【0123】
なお、上述した実施例のX線撮影装置7は、歯科用のX線撮影装置であるが、本発明の適用は歯科用X線撮影装置に限るものでなく、頭部領域の詳細な画像情報が要求される耳鼻科など、局部診断を行うための他の医用X線撮影装置にも等しく適用できる。
【0124】
また、図示したX線撮影装置7は、縦型のX線撮影装置で、患者が立った状態(あるいは椅子や車椅子などに座った状態)で使用されるものであるが、装置の設置角度や被写体の載置角度は任意に設定してかまわないため、患者を仰臥した状態で使用する所謂横型のX線撮影装置にも適用可能である。この場合、X線照射部10aとX線検出部10bとを支持する部材は、旋回アーム9に限らず、患者を内包する円形のガントリとすることもできる。
【0125】
また、全体表示設定データ44および拡大表示設定データ45に記憶する設定データは、スライス位置(X,Y,Z)と回転角度と指定領域としたが、これに限らず、CT画像の回転角度、表示断層位置、拡大縮小率、濃度および輝度のうち少なくとも1つとすることができる。これにより、種々の設定を記憶し、次回表示の際に反映させることができる。
【0126】
また、CT画像表示画面50と指定領域CT画像表示画面50Aは、画面を切り替え表示する構成としたが、これに限らず、
図11(A)に示すように並列表示する、あるいは
図11(B)に示すように複数表示する構成にしてもよい。これらの場合、アクティブにする画面を並列表示あるいは複数表示するうちの1つとして、画面切替の処理によってこのアクティブにする画面を切り替えるとよい。
【0127】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の医科歯科用CT撮影装置は、実施形態のX線撮影表示システム1に対応し、
以下同様に、
医科歯科用画像表示装置およびコンピュータは、X線画像表示装置2に対応し、
X線CT撮影は、X線撮影装置7によるCT撮影に対応し、
X線発生器は、X線照射部10aに対応し、
X線検出器は、X線検出部10bに対応し、
記憶手段は、固定ディスク18に対応し、
表示角度変更手段は、回転角度制御部28に対応し、
表示条件操作手段は、回転角度制御部28、インプラント基準角度制御部29、および断層位置制御部31に対応し、
表示領域指定操作手段は、拡大領域指定部33に対応し、
表示領域切替手段は、表示領域切替部34に対応し、
インプラント表示操作手段は、インプラント画像表示制御部35に対応し、
表示条件は、全体表示設定データ44および拡大表示設定データ45のスライス位置、回転角度、および指定領域に対応し、
領域指定前表示は、CT画像表示画面50に対応し、
指定領域表示は、指定領域CT画像表示画面50Aに対応し、
指定領域CT画像は、指定領域CT画像表示画面50Aの立体表示部51、Z断層面表示部52、Y断層面表示部53、X断層面表示部54に対応し、
重畳画像は、インプラント画像60を重畳したボリュームレンダリング画像Gb、X断層面画像Gx、Y断層面画像Gy、およびZ断層面画像Gzに対応し、
インプラントの回転軸は、インプラント軸61に対応し、
一部の領域は、指定領域表示枠63に対応し、
断層面画像は、X断層面画像Gx、Y断層面画像Gy、およびZ断層面画像Gzに対応し、
画像処理手段は、ステップS2に対応し、
画像表示手段は、ステップS6に対応し、
指定領域表示条件記憶ステップは、ステップS10,S20に対応し、
表示条件操作ステップは、ステップS21〜S24,S41〜S44に対応し、
インプラント表示操作ステップは、ステップS25〜S26,S45〜S46に対応し、
インプラント配置条件操作ステップは、ステップS27〜S28,S47〜S48に対応し、
表示領域指定操作ステップは、ステップS29〜S32に対応し、
医科歯科用プログラムは、X線画像表示プログラムに対応し、
断層面に関する条件は、スライス位置および回転角度に対応し、
配置条件は、位置および角度に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。