【0009】
前記筆記具に収容されるインキとしては、従来汎用の加熱により消色或いは変色可能なインキが適用できる。特に、インキ中に配合される着色剤としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた顔料が有効である。
前記可逆熱変色性組成物のうち、加熱により消色する組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する組成物を例示できる。
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報、特開2005−1369号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜70℃)を示し、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での発色状態、又は、高温域での消色状態が、特定温度域で記憶保持できる可逆熱変色性組成物を用いることもできる。
尚、前記可逆熱変色性インキは、低温側変色点を−30℃〜+10℃の範囲、且つ、高温側変色点を25℃〜95℃(好ましくは36℃〜90℃)の範囲に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができると共に、付属の摩擦体による擦過で変色可能となるため、実用性が高いものとなる。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1(
図1参照)
可逆熱変色性インキの調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル〕−1(3H)イソベンゾフラノン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、(ロ)成分として2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T
1:−18℃、T
2:−9℃、T
3:42℃、T
4:63℃、平均粒子径:2.5μm、ΔH=66℃、緑から無色に色変化する)を用いて、キサンタンガム(剪断減粘性付与剤)、尿素、グリセリン、ノニオン系浸透性付与剤、変性シリコーン系消泡剤、防黴剤、水と共に混合攪拌することで可逆熱変色性インキを調製した。
【0019】
ボールペンレフィルの作製
前記インキ(予め−18℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を緑色に発色させた後、室温下で放置したもの)をポリプロピレン製パイプに吸引充填し、樹脂製ホルダーを介してボールペンチップ6と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後部より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させて遠心処理により脱気処理を行うことでボールペンレフィルを得た。
尚、前記ボールペンチップ5は、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径0.5mmの超硬合金製ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0020】
出没式筆記具の作製
得られたボールペンレフィルを、後端押圧部31を有するとともに出没機構を内蔵する軸筒3と、グリップを備えた前軸4の内部に収容し、螺合により組み立てることで出没式形態の筆記具2を形成した。尚、前記軸筒3の後端外周には、孔部33を備えた金属製クリップ32が取り付けられており、軸筒3及び前軸4はポリカーボネート樹脂を射出成形することで形成している。
前記ボールペン形態の筆記具2は、後端押圧部31を押圧することでチップ5を突出させて筆記状態とし、更にもう一度後端押圧部31を押圧することでチップ5を没入させて収納状態とするノック式のペン先出没式形態である。
【0021】
摩擦体の作製
孔部81を有する転がり防止用突起を側壁に備え、上下両端を開口する円筒状支持基材8(摩擦部7を係止する係止用突起を内設する)をABS樹脂を射出成形することで成形した。
更に、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体を用いて、曲率半径の異なる二種類の凸曲面形状の摩擦部7(下端に係止部を設けてなる)を形成し、前記円筒状支持基材8の上下両側の開口端にそれぞれを挿入係止することで摩擦体6を得た。
前記摩擦体6は、硬質の支持基材8により摩擦時に把持し易く、孔部81の強度も高いものであった。また、円筒状支持基材8の両端に異なる曲率半径の摩擦部7を有するため、摩擦箇所が細かい部分と大面積部分とで容易に使い分けることが可能なものとなった。
【0022】
熱変色性筆記具の作製
得られた摩擦体6と筆記具2の各孔部33,81に、金属製ボールチェーンからなる接続部材9を通して着脱可能に接続することで熱変色性筆記具1を得た。
得られた熱変色性筆記具1を用いて、ボールペン(筆記具2)の後端押圧部31を押圧することでチップ5を突出させて筆記状態とし、ノートに「ABCDE」と筆記した熱変色性筆跡は、室温(25℃)で緑色の発色状態であり、低温側変色点(−18℃)以上、高温側変色点(63℃)以下の温度でこの状態を保持していた。
前記筆跡を、各摩擦部7で数回擦過したところ、擦過した部分が摩擦熱により直ちに消色して無色となった。更に、該消去部分に再筆記することも可能であり、前記擦過消去及び消去箇所への筆跡形成は繰り返し行うことができた。また、前記形態から、アクセサリー効果の高い筆記具となった。
尚、摩擦体6は、基材8の外観形状や色調(意匠)を所望の形態(キャラクター形態等)とすることで、装飾性やファッション性をより向上させることができる。更に、前記形態に応じた色調に摩擦体を着色することで、デザイン性が統一されたものとなる。
また、前記基材8には所望の文字や図形を印刷、転写等により形成することも可能であり、この手段によっても装飾性やファッション性を向上させることができる。
【0023】
実施例2(
図2参照)
可逆熱変色性インキの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、(ハ)成分としてパルミチン酸4−メチルベンジルからなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー、助溶剤を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミンを加え更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。更に、前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
尚、前記マイクロカプセル顔料(t
1:−5℃、t
2:2℃、t
3:37℃、t
4:43℃、平均粒子径:0.6μm)のヒステリシス幅(ΔH)は44℃であり、温度変化により橙色から無色に変色するものである。
更に、前記マイクロカプセル顔料、ヒドロキシエチルセルロース、グリセリン、消泡剤、防腐剤、水、10%希釈リン酸溶液を加えて均一に攪拌を行い、インキのpHを5.5に調整することで可逆熱変色性水性インキを得た。
【0024】
キャップ式筆記具の作製
前記インキ(予め−5℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を橙色に発色させた後、室温下で放置したもの)を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体に含浸させて、グリップを有する軸筒3内に収容し、先端部にチゼル型繊維ペン先を取り付けてなる首部を組み付けることでキャップ式形態の筆記具2を得た。尚、前記マーキングペン形態の筆記具2には、着脱自在のキャップ34を備えてなり、該キャップの側面部にはクリップ32が形成され、上端部には孔部33を有する突起が設けられている。また、軸筒3やクリップ32を備えたキャップ34はポリプロピレン樹脂を射出成形したものである。
【0025】
摩擦体の作製
ポリエステル系エラストマー樹脂を用いて、孔部81を有するL字型厚肉板状成形体を形成することで摩擦体6を得た。尚、前記摩擦体6の両端部の形状は、曲率半径の異なる凸曲面形状を有する摩擦部7として形成されている。更に、摩擦体6全体が摩擦部として機能するため、摩擦箇所の大きさに応じてユーザーが好みの部分を使い分けることが可能なものである。
【0026】
熱変色性筆記具の作製
得られた摩擦体6と、筆記具2の各孔部33,81間を金属製リングチェーンからなる接続部材9を用いて接続することで熱変色性筆記具1を得た。
得られた熱変色性筆記具1を用いて、マーキングペン(筆記具2)のキャップを外した状態で紙面に1本の直線を筆記することで橙色の筆跡を形成した。前記筆跡は2℃以上、43℃以下で橙色を保持していた。
前記直線を摩擦体6の摩擦部7で等間隔に複数個所を部分的に数回ずつ擦過したところ、擦過した部分が直ちに消色して無色となり、破線となった。また、前記消去部分に再筆記することも可能であった。前記擦過消去及び消去箇所への筆跡形成は繰り返し行うことができた。また、前記形態から、アクセサリー効果の高い筆記具となった。
尚、摩擦体6は、外観形状や色調(意匠)を所望の形態(キャラクター形態等)とすることで、装飾性やファッション性をより向上させることができる。更に、前記摩擦体6には所望の文字や図形を印刷、転写等により形成することによっても装飾性やファッション性を向上させることができる。