特許第5705463号(P5705463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705463
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/02 20060101AFI20150402BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   B43K29/02 Z
   B43K8/02 F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-132566(P2010-132566)
(22)【出願日】2010年6月10日
(65)【公開番号】特開2011-255600(P2011-255600A)
(43)【公開日】2011年12月22日
【審査請求日】2013年5月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】千賀 邦行
(72)【発明者】
【氏名】高木 学
(72)【発明者】
【氏名】中村 尚嗣
(72)【発明者】
【氏名】大川 彰一
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−336215(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3131307(JP,U)
【文献】 実公平06−024233(JP,Y2)
【文献】 特開2002−370493(JP,A)
【文献】 実開平06−000788(JP,U)
【文献】 特開2007−062016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K29/00−29/20
B43K8/00−8/03
B43L19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により消色或いは変色可能なインキを収容してなり、前記インキによる筆跡を摩擦する摩擦体が、摩擦部と該摩擦部よりも硬い把持できる程度の硬度を有する硬質支持基材を備え、前記基材が摩擦体を装着していない筆記具の筆記具外装に鎖状体又は紐状体である接続部材を介して取り付けられる熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記摩擦体が、鎖状体又は紐状体である接続部材を介して筆記具外装に取り付けられるアクセサリーである請求項1記載の熱変色性筆記具。
【請求項3】
前記摩擦体が着脱可能である請求項1又は2に記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱変色性筆記具に関する。詳細には、熱変色性インキによる筆跡を摩擦熱で変色させる摩擦体を備えた熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャップ式や出没式等の筆記具において、キャラクター等のアクセサリーが紐状接続部材を介して筆記具外装(キャップ、クリップ、軸筒等)に取り付けられたものが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
前記アクセサリーは筆記具自体の装飾性やユーザーがポケットに挿した際のファッション性を向上させることを目的として取り付けられており、筆記具に関連する機能を備えるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−71685号公報
【特許文献2】実用新案第3058134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記形態の筆記具において、筆記具自身と連動した機能を発現するアクセサリーを備えるものであり、熱変色性インキを収容した筆記具に、前記インキによる筆跡を摩擦するための摩擦体を接続部材を介して取り付けてなる、装飾性を有するとともに利便性の高い熱変色性筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、加熱により消色或いは変色可能なインキを収容してなり、前記インキによる筆跡を摩擦する摩擦体が筆記具外装に接続部材を介して取り付けられてなる熱変色性筆記具を要件とする。
更に、前記接続部材が鎖状体又は紐状体であること、前記摩擦体が着脱可能であること、前記摩擦体が硬質支持基材を備え、前記基材が接続部材を介して筆記具外装に取り付けられることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、筆記具内に収容する熱変色性インキによる筆跡を、筆記具外装に接続される摩擦体で摩擦変色できるという、アクセサリー部分が筆記具本体と連動した機能を発現する、装飾性と利便性を兼ね備えた熱変色性筆記具となる。
また、既存の筆記具外装に熱変色性インキを適用した場合であっても摩擦体が容易に取り付けられ、摩擦体がアクセサリーとしてのファッション性を備えるとともに紛失することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の熱変色性筆記具の一例を示す説明図である。
図2】本発明の熱変色性筆記具の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の熱変色性筆記具は、加熱により消色或いは変色可能なインキを収容し、該インキによる筆跡を摩擦熱で変色(色消去及び色変化を意味する)させるための摩擦体を筆記具外装に接続部材を介して取り付けたものである。
【0009】
前記筆記具に収容されるインキとしては、従来汎用の加熱により消色或いは変色可能なインキが適用できる。特に、インキ中に配合される着色剤としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた顔料が有効である。
前記可逆熱変色性組成物のうち、加熱により消色する組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する組成物を例示できる。
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報、特開2005−1369号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜70℃)を示し、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での発色状態、又は、高温域での消色状態が、特定温度域で記憶保持できる可逆熱変色性組成物を用いることもできる。
尚、前記可逆熱変色性インキは、低温側変色点を−30℃〜+10℃の範囲、且つ、高温側変色点を25℃〜95℃(好ましくは36℃〜90℃)の範囲に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができると共に、付属の摩擦体による擦過で変色可能となるため、実用性が高いものとなる。
【0010】
前記熱変色性インキを収容する筆記具の形態としては、万年筆、マーキングペン、ボールペン、修正ペン、繰り出し式固形筆記具等が挙げられ、ペン先(チップ)を覆うキャップを備えたキャップ式形態の他、ノック式、回転式、スライド式等の出没機構を有し、軸筒内にペン先を収容可能な出没式形態であってもよい。出没式形態とする場合、レフィルを一本収容するタイプだけでなく、二本以上収容して所望のレフィルを選択的に出没できる複式タイプとすることもできる。また、相異なる形態のペン先を装着させたり、相異なる色調のインキを導出させるペン先を装着させた両頭式形態であってもよい。
【0011】
前記マーキングペンとしては、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングペン用ペン先を筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、弁機構により筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペン等が挙げられる。
【0012】
ボールペンとしては、例えば、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、更にインキの端面にはインキ逆流防止体が密接する構造、チップを軸筒先端に接続し、該軸筒内にインキ組成物を直に充填すると共に、インキの端面にインキ逆流防止体が密接する構造、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、チップにインキを供給する構造、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させてチップに所定量のインキを供給する構造のボールペン等が例示できる。また、チップを軸筒先端に接続してインキを直に充填する構造のボールペンは、インキを充填した外装に転写層を形成した後に透明外軸内に収容した構造であってもよい。
【0013】
前記形態の筆記具を構成する筆記具外装として、具体的には、キャップ、クリップ、頭冠、口金、軸筒、尾栓、グリップ、ノック部材(出没機構用押圧部材)等が挙げられ、いずれも外側表面に孔や環状突起等を形成して、接続部材を取り付け可能とすることが好ましい。
前記筆記具外装は、把持できる程度の硬度を有する部材であれば汎用の材料を用いることができ、例えば、金属、木材、紙材、ガラス、陶器やセラミック、エラストマーの他、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、アクリル、ナイロン、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等の比較的硬質な合成樹脂が例示できる。
特に、所望形状への成形性が高いことから、合成樹脂が好適である。
【0014】
前記摩擦体は、熱変色性インキによる筆跡と接触可能な状態で種々形状に形成されるものである。
前記摩擦体の材質としては、樹脂、ゴム、エラストマー材料等が好適に用いられ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、アクリル、ナイロン、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等の比較的硬質な合成樹脂や、スチレン系、オレフィン系、ポリスチレンとポリオレフィンのブロック共重合体、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1、2−ポリブタジエン系、塩化ビニル系、フッ素系等の熱可塑性エラストマーや、ポリプロピレンとエチレンプロピレン系ゴムとのブレンド、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体とのブレンド、塩素化ポリエチレンとナイロンとのブレンド等のブレンドされたエラストマーや、シリコーンゴム等のゴムエラストマー、天然ゴム、合成ゴム、シリカ粉、金属粉、各種樹脂による発泡体、繊維の熱融着や樹脂加工体等が挙げられる。
特に、前記材質のうち、摩擦時に消しカスを生じ難く軟質性(柔軟性)を有する合成樹脂やエラストマーからなる材料(軟質樹脂と称する)が好適であり、例えばショア硬度Aが40以上(JIS K6253A)のものが例示できる。軟質樹脂は擦過時に支持体と接触させた際の弾性を有し、適度な抵抗を発現するため、摩擦熱の発生効率が高いものとなる。具体的には、シリコーン樹脂、ポリエステル系エラストマー樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体等が好適である。
【0015】
更に、硬質材料からなる支持基材を支持体とし、少なくともこの一部に前述の摩擦体(摩擦部)を嵌合、融着、接着、印刷や塗布、二色成形等の手段を用いて摩擦体を一体化したものを適用することができる。この場合、摩擦時に摩擦体をより確実に把持できるとともに、接続部材の取付箇所を強固なものとすることができる。
前記硬質支持基材としては、把持できる程度の硬度を有する部材であれば汎用の材料を用いることができ、例えば、金属、石材、木材、紙材、ガラス、陶器やセラミック、エラストマーの他、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、アクリル、ナイロン、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等の比較的硬質な合成樹脂が例示できる。
【0016】
前記摩擦体は、単独又は硬質支持基材と組み合わせて形象物等のキャラクター形態(形状)を構成することもできる。それにより、摩擦体としての機能を備えたまま、装飾性やファッション性をより向上させることができる。この場合、摩擦体の一部(摩擦部)は筆跡と接触可能な位置、形状に形成される。また、種々の像を印刷や二色成形により設けて加飾性を向上させることもできる。
【0017】
前記摩擦体を筆記具外装に取り付けるために適用される接続部材としては、筆記具部材と摩擦体(支持基材)を連設する一体樹脂成形体や、筆記具部材と摩擦体(支持基材)それぞれが備える連結用係合片であってもよいが、樹脂、ゴム、糸、金属等から構成される鎖状体や紐状体が好適に用いられる。
前記接続部材の長さや太さは適宜調整され、筆記具と摩擦体とが着脱自在となるように構成することも可能である。尚、鎖状体や紐状体を用いる場合、筆記具外装や摩擦体(支持基材)に環状や孔状等の取付部を設けることが好ましい。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1(図1参照)
可逆熱変色性インキの調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル〕−1(3H)イソベンゾフラノン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、(ロ)成分として2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−18℃、T:−9℃、T:42℃、T:63℃、平均粒子径:2.5μm、ΔH=66℃、緑から無色に色変化する)を用いて、キサンタンガム(剪断減粘性付与剤)、尿素、グリセリン、ノニオン系浸透性付与剤、変性シリコーン系消泡剤、防黴剤、水と共に混合攪拌することで可逆熱変色性インキを調製した。
【0019】
ボールペンレフィルの作製
前記インキ(予め−18℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を緑色に発色させた後、室温下で放置したもの)をポリプロピレン製パイプに吸引充填し、樹脂製ホルダーを介してボールペンチップ6と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後部より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させて遠心処理により脱気処理を行うことでボールペンレフィルを得た。
尚、前記ボールペンチップ5は、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径0.5mmの超硬合金製ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0020】
出没式筆記具の作製
得られたボールペンレフィルを、後端押圧部31を有するとともに出没機構を内蔵する軸筒3と、グリップを備えた前軸4の内部に収容し、螺合により組み立てることで出没式形態の筆記具2を形成した。尚、前記軸筒3の後端外周には、孔部33を備えた金属製クリップ32が取り付けられており、軸筒3及び前軸4はポリカーボネート樹脂を射出成形することで形成している。
前記ボールペン形態の筆記具2は、後端押圧部31を押圧することでチップ5を突出させて筆記状態とし、更にもう一度後端押圧部31を押圧することでチップ5を没入させて収納状態とするノック式のペン先出没式形態である。
【0021】
摩擦体の作製
孔部81を有する転がり防止用突起を側壁に備え、上下両端を開口する円筒状支持基材8(摩擦部7を係止する係止用突起を内設する)をABS樹脂を射出成形することで成形した。
更に、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体を用いて、曲率半径の異なる二種類の凸曲面形状の摩擦部7(下端に係止部を設けてなる)を形成し、前記円筒状支持基材8の上下両側の開口端にそれぞれを挿入係止することで摩擦体6を得た。
前記摩擦体6は、硬質の支持基材8により摩擦時に把持し易く、孔部81の強度も高いものであった。また、円筒状支持基材8の両端に異なる曲率半径の摩擦部7を有するため、摩擦箇所が細かい部分と大面積部分とで容易に使い分けることが可能なものとなった。
【0022】
熱変色性筆記具の作製
得られた摩擦体6と筆記具2の各孔部33,81に、金属製ボールチェーンからなる接続部材9を通して着脱可能に接続することで熱変色性筆記具1を得た。
得られた熱変色性筆記具1を用いて、ボールペン(筆記具2)の後端押圧部31を押圧することでチップ5を突出させて筆記状態とし、ノートに「ABCDE」と筆記した熱変色性筆跡は、室温(25℃)で緑色の発色状態であり、低温側変色点(−18℃)以上、高温側変色点(63℃)以下の温度でこの状態を保持していた。
前記筆跡を、各摩擦部7で数回擦過したところ、擦過した部分が摩擦熱により直ちに消色して無色となった。更に、該消去部分に再筆記することも可能であり、前記擦過消去及び消去箇所への筆跡形成は繰り返し行うことができた。また、前記形態から、アクセサリー効果の高い筆記具となった。
尚、摩擦体6は、基材8の外観形状や色調(意匠)を所望の形態(キャラクター形態等)とすることで、装飾性やファッション性をより向上させることができる。更に、前記形態に応じた色調に摩擦体を着色することで、デザイン性が統一されたものとなる。
また、前記基材8には所望の文字や図形を印刷、転写等により形成することも可能であり、この手段によっても装飾性やファッション性を向上させることができる。
【0023】
実施例2(図2参照)
可逆熱変色性インキの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、(ハ)成分としてパルミチン酸4−メチルベンジルからなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー、助溶剤を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミンを加え更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。更に、前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
尚、前記マイクロカプセル顔料(t:−5℃、t:2℃、t:37℃、t:43℃、平均粒子径:0.6μm)のヒステリシス幅(ΔH)は44℃であり、温度変化により橙色から無色に変色するものである。
更に、前記マイクロカプセル顔料、ヒドロキシエチルセルロース、グリセリン、消泡剤、防腐剤、水、10%希釈リン酸溶液を加えて均一に攪拌を行い、インキのpHを5.5に調整することで可逆熱変色性水性インキを得た。
【0024】
キャップ式筆記具の作製
前記インキ(予め−5℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を橙色に発色させた後、室温下で放置したもの)を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体に含浸させて、グリップを有する軸筒3内に収容し、先端部にチゼル型繊維ペン先を取り付けてなる首部を組み付けることでキャップ式形態の筆記具2を得た。尚、前記マーキングペン形態の筆記具2には、着脱自在のキャップ34を備えてなり、該キャップの側面部にはクリップ32が形成され、上端部には孔部33を有する突起が設けられている。また、軸筒3やクリップ32を備えたキャップ34はポリプロピレン樹脂を射出成形したものである。
【0025】
摩擦体の作製
ポリエステル系エラストマー樹脂を用いて、孔部81を有するL字型厚肉板状成形体を形成することで摩擦体6を得た。尚、前記摩擦体6の両端部の形状は、曲率半径の異なる凸曲面形状を有する摩擦部7として形成されている。更に、摩擦体6全体が摩擦部として機能するため、摩擦箇所の大きさに応じてユーザーが好みの部分を使い分けることが可能なものである。
【0026】
熱変色性筆記具の作製
得られた摩擦体6と、筆記具2の各孔部33,81間を金属製リングチェーンからなる接続部材9を用いて接続することで熱変色性筆記具1を得た。
得られた熱変色性筆記具1を用いて、マーキングペン(筆記具2)のキャップを外した状態で紙面に1本の直線を筆記することで橙色の筆跡を形成した。前記筆跡は2℃以上、43℃以下で橙色を保持していた。
前記直線を摩擦体6の摩擦部7で等間隔に複数個所を部分的に数回ずつ擦過したところ、擦過した部分が直ちに消色して無色となり、破線となった。また、前記消去部分に再筆記することも可能であった。前記擦過消去及び消去箇所への筆跡形成は繰り返し行うことができた。また、前記形態から、アクセサリー効果の高い筆記具となった。
尚、摩擦体6は、外観形状や色調(意匠)を所望の形態(キャラクター形態等)とすることで、装飾性やファッション性をより向上させることができる。更に、前記摩擦体6には所望の文字や図形を印刷、転写等により形成することによっても装飾性やファッション性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 熱変色性筆記具
2 筆記具
3 軸筒
31 後端押圧部
32 クリップ
33 孔部
34 キャップ
4 前軸
5 ボールペンチップ
6 摩擦体
7 摩擦部
8 支持基材
81 孔部
9 接続部材
図1
図2