(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る繊維集合体の製造方法及び製造装置について、繊維集合体の製造装置により繊維集合体が製造されている態様を示す、模式的側面図である、
図1を用いて説明する。
【0015】
本発明に係る
図1の繊維集合体の製造装置(100)は、主として、アース(7a)されたパワーサプライ(6)により電圧が印加された紡糸開始部(1)、捕集体(2)、アース(7b)した対向電極(3)を備えて構成されており、捕集体(2)は紡糸開始部(1)と対向電極(3)の間に介在している。
また、後述するように対向電極(3)は、紡糸原液が主に飛翔する方向(矢印線A)が変化するように運動できる態様を成している。
【0016】
本発明に係る繊維集合体の製造方法では、まず、パワーサプライ(6)により紡糸開始部(1)へ電圧を印加することで、紡糸原液(4)に電圧を印加すると共に、紡糸開始部(1)と対向電極(3)の間にのみ電界を形成する。
【0017】
次に、電圧が印加された紡糸原液(4)は、紡糸開始部(1)と対向電極(3)との間にのみ形成した電界の作用、あるいは、前記電界の作用に加えて紡糸原液(4)に作用する気体流の作用、圧力、重力、遠心力、及び/又は紡糸原液(4)の表面張力などの力によって、紡糸開始部(1)から対向電極(3)に向かい飛翔しながら、繊維化する。
【0018】
本発明に係る繊維集合体の製造方法及び製造装置(100)では、飛翔している紡糸原液(4)同士は同じ極性に帯電して互いに反発し合うと共に、紡糸開始部(1)と対向電極(3)の間にのみ電界が形成されていることで、紡糸開始部(1)から飛翔する紡糸原液(4)同士が飛翔中に絡み合うことなく、捕集体(2)に捕集することができる。
【0019】
更に、本発明に係る繊維集合体の製造方法及び製造装置(100)では、紡糸原液(4)の飛翔中に対向電極(3)が運動することで紡糸原液(4)が主に飛翔する方向(矢印線A)が変化して、捕集体(2)における繊維化した紡糸原液(4)の捕集位置を制御できるため、目付の均一な繊維集合体を製造することができる。
【0020】
対向電極(3)が運動する態様について、
図1の繊維集合体の製造装置(100)を、紡糸開始部側から捕集体に向かって見下ろした、模式的俯瞰図である、
図2(a)を用いて説明する。
【0021】
図2(a)では紡糸開始部(1)、捕集体(2)、対向電極(3)、対向電極(3)の運動方向を示す矢印線のみを図示しており、それ以外の部材を省略して図示している。なお、対向電極(3)の運動する態様が分かり易いように、捕集体(2)を破線で図示している。
【0022】
図2(a)において対向電極(3)は、捕集体(2)の幅方向(紙面上の左右方向)に直線的な移動を反復して行っている。また、対向電極(3)の運動方向を示す矢印線上に紡糸開始部(1)が重なるように紡糸開始部(1)を配置した態様を図示している。
【0023】
繊維集合体の製造方法及び製造装置(100)では、紡糸開始部(1)から飛翔する紡糸原液(4)が主に飛翔する方向(矢印線A)は、対向電極(3)の移動に伴い、対向電極(3)の運動方向を示す矢印線に沿って変化する。
【0024】
本発明に係る繊維集合体の製造方法及び製造装置(100)では、紡糸原液(4)が飛翔している間、対向電極(3)が運動することで捕集体(2)に集積される繊維化した紡糸原液(4)の集積位置を制御でき、捕集体(2)に集積される繊維化した紡糸原液(4)の分布を制御して、目付の均一な繊維集合体(5)を製造できる。
【0025】
更に、本発明に係る繊維集合体の製造方法及び製造装置(100)では、目付の均一な繊維集合体(5)を製造する為に紡糸開始部(1)を運動させる必要がない。
【0026】
そのため、紡糸開始部(1)を運動させることで生じる振動や遠心力などの予期せぬ作用により、紡糸原液(4)が紡糸開始部(1)から繊維集合体(5)へと垂れ落ちにくいため、目付の均一な繊維集合体(5)を製造することができる。
【0027】
また、紡糸開始部(1)は紡糸原液(4)の送液管やパワーサプライ(6)との結線部材などを備えているため、紡糸開始部(1)を運動させて繊維集合体(5)を製造しようとする場合には、送液管や結線部材なども運動可能な態様にする必要があり、送液管や結線部材などにジョイントを設ける必要があった。また、液漏れを防ぐために、パッキング処理を施す必要があった。その結果、紡糸開始部(1)を運動させて繊維集合体(5)を製造しようとすると、繊維集合体の製造装置(100)が大型化してしまうという問題があった。これに対して、本発明に係る繊維集合体の製造装置(100)では、紡糸開始部(1)を運動させる機構を備える必要がない。つまり、送液管や結線部材などにジョイントを設けたり、パッキング処理を施す必要がないため、繊維集合体の製造装置(100)を小型化できる、という副次的な効果を奏する。
【0028】
次いで、本発明に係る繊維集合体の製造装置(100)の詳細を説明する。
【0029】
紡糸原液(4)として、例えば、以下のポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液、あるいは以下のポリマーを溶融させた溶融ポリマーを使用することができる。
【0030】
ポリマーの種類は、本発明において紡糸することができる限り、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機ポリマー、あるいは、金属アルコキシド(ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素、スズ、亜鉛などのメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなど)が重合したゾルあるいはゲル化合物からなることができる。
【0031】
なお、これらのポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、またポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、またポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも良く、特に限定されるものではない。
【0032】
更には、複数種類のポリマーを混ぜ合わせたものでも良く、特に限定されるものではない。
【0033】
上述のポリマーを溶媒に溶解させる場合、溶媒は使用する樹脂や紡糸条件によっても変化するため、特に限定されるものではないが、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。
【0034】
なお、これら例示以外の溶媒も使用可能であり、例示以外の溶媒も含め、2種以上の溶媒を混合した混合溶媒を使用することもできる。
【0035】
紡糸原液(4)がポリマー溶液である場合、その粘度は使用するポリマーの組成、ポリマーの分子量、溶媒の組成、溶媒に対するポリマー濃度等によって変化するため特に限定されるものではないが、本発明に係る装置への適用性の点から、粘度が10-6000mPa・sの範囲となるような濃度であるのが好ましく、20-5000mPa・sの範囲となるような濃度であるのがより好ましい。粘度が10mPa・s未満であると、紡糸原液(4)の粘度が低すぎて曳糸性が悪く、繊維化しにくい傾向があり、粘度が6000mPa・sを超えると、紡糸原液(4)が延伸されにくくなり、繊維化しにくい傾向がある。
【0036】
なお、この「粘度」は粘度測定装置を用い、温度25℃で測定したシェアレート100s
−1時の値をいう。
【0037】
また、紡糸原液(4)が溶融ポリマーである場合、その粘度は使用するポリマーの組成、ポリマーの分子量等によって変化するため特に限定されるものではないが、本発明に係る装置への適用性の点から、例えばポリプロピレンを用いて溶融ポリマーを製造した場合、メルト・インデックスが10(g/10min)以上となるポリマーを使用するのが好ましい。
【0038】
メルト・インデックスが10(g/10min)未満であると、紡糸原液(4)が延伸されにくくなり、繊維化しにくい傾向がある。紡糸原液(4)のメルト・インデックスが100(g/10min)以上であるのがより好ましく、1000(g/10min)以上であるのがより好ましい。
【0039】
なお、このメルト・インデックスは、溶融したポリマーをキャピラリーレオメータに導き、JISK7199に基づいて測定した際の、押出量(g/10min)の値を指す。
【0040】
溶融時の粘度を調整するために、ポリマーに粘度調整剤、また紡糸原液(4)あるいは製造された繊維集合体(5)が酸化あるいは光により変性しないように、酸化防止剤、光安定剤などを添加しても良い。
【0041】
紡糸開始部(1)の素材や形状などは、紡糸原液(4)を吐出できるのであれば、限定されるものではなく、適宜調整することができる。
【0042】
紡糸開始部(1)として例えば、ノズル、スリット、表面に溝を有する突起、線状部材、メルトブロー法やスパンボンド法などで使用する紡糸装置に係る吐出口金、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報)などで使用されるノズルなどを挙げることができる。
【0043】
素材や構造は特に限定されるものではないが、紡糸開始部(1)が体積固有抵抗値10
9Ω・cm以下の材料、特に体積固有抵抗値10
‐4Ω・cm以下の導電性材料(例えば、金属や導電性ポリマーなど)から構成されていると、紡糸開始部(1)へ後述するパワーサプライ(6)を接続するだけで、紡糸原液(4)を簡便に帯電できるため好ましい。
【0044】
また、紡糸開始部(1)が非導電性材料から構成されている場合には、紡糸開始部(1)内の紡糸原液(4)自体に電圧を印加するのが好ましい。
【0045】
なお、
図1では紡糸開始部(1)はパワーサプライ(6)によって、電圧を印加されている態様を図示しているが、後述する対向電極(3)がパワーサプライによって電圧を印加されている場合には、紡糸開始部(1)をアースしても良い。
【0046】
また本発明に係る、繊維集合体の製造装置(100)が備える紡糸開始部(1)の数は限定されるものではなく、2以上の紡糸開始部(1)を備えることもできる。2以上の紡糸開始部(1)を備えている場合、紡糸開始部(1)同士の間隔は、適宜調整する。
【0047】
本発明に係る繊維集合体の製造装置(100)において、紡糸開始部(1)と対向電極(3)とが離間する距離、捕集体(2)と紡糸開始部(1)とが離間する距離などは、紡糸開始部(1)あるいは紡糸原液(4)に印加する電圧、紡糸開始部(1)から吐出される紡糸原液(4)の単位時間あたりの質量によって変化するため、適宜調整されるべきものである。
【0048】
紡糸開始部(1)の配置位置は限定されるものではなく適宜調整することができ、
図2(b)の態様のように、紡糸開始部(1)側から捕集体(5)に向かい繊維集合体の製造装置(100)を見下ろした場合、対向電極(3)の運動方向を示す矢印線と紡糸開始部(1)が重ならないように紡糸開始部(1)を配置してもよい。
【0049】
パワーサプライ(6)はアース(7a)されていると共に、紡糸開始部(1)から紡糸原液(4)が吐出されるように、紡糸原液(4)に直接電圧を印加できる、あるいは紡糸開始部(1)に電圧を印加することで紡糸原液(4)に電圧を印加できるものであれば、パワーサプライ(6)の種類は限定されるものではなく、直流高電圧発生装置やヴァン・デ・グラフ起電機などを使用することができる。
【0050】
パワーサプライ(6)により紡糸原液(4)へ印加される電圧は、紡糸開始部(1)からの紡糸原液(4)の吐出速度、吐出質量、後述する運動可能な捕集体(2)による繊維集合体(5)の搬送速度などによって変化するため、適宜調整されるべきものである。
【0051】
なお、パワーサプライ(6)が紡糸原液(4)及び/又は対向電極(3)に印加する電圧の極性は、目付の均一な繊維集合体(5)が製造できるように、正極あるいは負極のいずれかを選択するのが好ましい。
【0052】
また、帯電した紡糸原液(4)と対向電極(3)との間に電位差が生じれば、両者間に電界が形成され紡糸が可能となる。そのため、紡糸原液(4)と対向電極(3)の間で電位差が生じるよう双方に電圧を印加してもよい。
【0053】
繊維化した紡糸原液(4)を捕集することで、繊維集合体(5)を製造できるのであれば、捕集体(2)の素材や形状などは限定されるものではなく、適宜調整することができる。
【0054】
捕集体(2)として例えば、通気性を有するメッシュなど多孔板や布帛(不織布、織物、編み物など)、或いは、通気性を有していない板状の材料などを使用することができる。また、捕集体(2)として例えば、ベルトコンベアなど運動可能なものを使用することができる。
【0055】
更に、捕集体(2)上に繊維ウェブ、不織布、織物、編物などの布帛、メッシュなど多孔板やフィルムや平板などの基材を載置して、基材上に繊維集合体(5)を形成することで、基材と繊維集合体(5)との積層体を形成してもよい。
【0056】
なお、
図1では、繊維集合体(5)を搬送できる捕集体(2)としてベルトコンベアを備えている繊維集合体の製造装置(100)を図示しており、前記捕集体(2)を移動させながら繊維集合体(5)を製造することで、長尺状の繊維集合体(5)を製造することができる。特に、捕集体(2)が繊維集合体(5)を搬送する方向における端部に巻取り装置(図示せず)を備えていると、長尺状の繊維集合体(5)を連続生産できる。
【0057】
捕集体(2)は、電気的に絶縁された状態で紡糸開始部(1)と対向電極(3)の間に介在しているのが好ましい。電気的に絶縁された捕集体(2)を用いて、紡糸開始部(1)と対向電極(3)の間にのみ電界を形成すると、紡糸開始部(1)から飛翔する紡糸原液(4)の飛翔方向(A)が、対向電極(3)の運動に追従し易くなり、捕集体(2)における繊維化した紡糸原液(4)の捕集位置を制御して、目付の均一な繊維集合体(5)を製造することができる。
【0058】
本発明に係る対向電極(3)について、
図2(a)(b)-
図10を用いて説明する。
なお、
図2(a)(b)-
図6、
図8-
図10では紡糸開始部(1)、捕集体(2)、対向電極(3)、対向電極(3)の運動方向を示す矢印線(
図6では図示せず)のみを図示しており、それ以外の部材を省略して図示している。なお、対向電極(3)の運動する態様が分かり易いように、
図2(a)(b)-
図4、
図6、
図8-
図10では捕集体(2)を破線で図示しており、
図5では紡糸原液(4)が主に飛翔する方向(矢印線A)を図示している。
【0059】
対向電極(3)として例えば、多角形板、メッシュなどの多孔板、円盤や円環、主面上に突起を備える円盤や円環、螺旋形状をなす線状あるいは帯状の部材や、外周上に螺旋状に配置された突起を備えるシリンダー状部材などを挙げることができ、対向電極(3)の大きさは適宜調整する。
【0060】
また本発明に係る、繊維集合体の製造装置(100)が備える対向電極(3)の数は限定されるものではなく、2以上の対向電極(3)を備えることもできる。
【0061】
対向電極(3)を構成する素材は特に限定されるものではないが、対向電極(3)が体積固有抵抗値10
‐4Ω・cm以下の導電性材料(例えば、金属や導電性ポリマーなど)から構成されていると、紡糸開始部(1)と対向電極(3)との間に電界を形成し易くなるため、好ましい。
【0062】
本発明に係る繊維集合体の製造装置(100)において、捕集体(2)と対向電極(3)とが離間する距離、対向電極(3)の運動速度や運動方向および運動範囲は、適宜調整する。
【0063】
対向電極(3)が運動する態様としては、上述した
図2(a)(b)のように直線移動する以外にも、曲線的な移動を行ってもよい。
【0064】
対向電極(3)が運動する他の態様として、
図3に図示する対向電極(3)の運動方向を示す矢印線のように、捕集体(2)の幅方向(
図3における、紙面上の左右方向)に対して楕円軌道を成すように、対向電極(3)はエンドレス回転可能に移動してもよい。また、エンドレス回転の態様として楕円軌道以外にも、例えば、捕集体(2)の幅方向(
図3における、紙面上の左右方向)に対して長円軌道あるいは真円軌道を採用することもできる。
【0065】
対向電極(3)が運動する態様として、対向電極(3)が移動する以外にも、後述する
図4-
図6のように対向電極(3)が回転してもよい。
【0066】
図4に図示する繊維集合体の製造装置(100)において、対向電極(3)は、紡糸開始部(1)側の主面上に突起(12)を有する円盤形状をしている。なお、円盤の形状は、
図4で図示しているような円形の平板状、円環状などから適宜選択して使用することができる。また、対向電極(3)に設けられている突起(12)の形状、数や位置は適宜、調整するのが好ましいが、突起(12)の数が2以上存在する場合、
図4の態様のように、各突起(12)と紡糸開始部(1)との距離が同じとなるように対向電極(3)の外周上に突起(12)を設けると、繊維化した紡糸原液(4)を複数地点で捕集できると共に、各捕集部分における繊維化した紡糸原液(4)の捕集体(2)による捕集条件が同じになり、より目付の均一な繊維集合体(5)を製造することができ、好ましい。
【0067】
そして、主面上に突起(12)を有する円盤形状の対向電極(3)は、対向電極(3)の主面における中心を回転中心にして回転することで、紡糸開始部(1)から飛翔する紡糸原液(4)が主に飛翔する方向を、突起(12)の移動に追従するように変化させることができる。
【0068】
紡糸開始部(1)から飛翔する紡糸原液(4)が主に飛翔する方向が、突起(12)の移動に追従して変化し易くなるように、紡糸開始部(1)と突起(12)の距離が、常に紡糸開始部(1)と突起(12)以外の対向電極(3)との距離よりも短くなるように、突起(12)の高さや突起(12)の配置を調整するのが好ましい。
なお、対向電極(3)の回転速度や回転方向などは、適宜、調整するのが好ましい。
【0069】
図5は、繊維集合体の製造装置を、繊維集合体の搬送方向側からみた、模式的断面図である。
【0070】
図5に図示する繊維集合体の製造装置(100)において、対向電極(3)は、表面に突起(12)を有する移送装置であり、繊維集合体(5)の搬送方向と直交する捕集体(2)の幅方向(紙面上の左右方向)にエンドレス回転できる。
【0071】
そして、表面に突起(12)を有する移送装置は捕集体(2)の幅方向(紙面上の左右方向)に対して長円軌道を成すようにエンドレス回転することで、紡糸開始部(1)から飛翔する紡糸原液(4)が主に飛翔する方向(矢印線A)を、突起(12)の移動に追従するように変化させることができ、目付の均一な繊維集合体(5)を製造し易くなる。なお、移送装置の種類は適宜選択して使用することができ、例えば、ベルトコンベア、電動スライダ、電動アクチュエータなどを使用することができる。
【0072】
紡糸開始部(1)から飛翔する紡糸原液(4)が主に飛翔する方向(矢印線A)が、突起(12)の移動に追従して左右方向(紙面上の左右方向)へ変化し易くなるように、紡糸開始部(1)と突起(12)の距離が、常に紡糸開始部(1)と突起(12)以外の対向電極(3)との距離よりも短くなるように、突起(12)の高さや突起(12)の配置を調整するのが好ましい。
なお、突起(12)の数や突起(12)同士の間隔は、適宜調整するのが好ましい。
そして、対向電極(3)のエンドレス回転における移動速度などは、適宜、調整するのが好ましい。
【0073】
図6に図示する繊維集合体の製造装置(100)は、後述するように複数の紡糸開始部(1)を備えていると共に、対向電極(3)として
図7に図示するような線状部材から構成された螺旋形状を備えており、中心軸(11)同士の間に螺旋状に周回した部分を備えたものを使用している。
【0074】
なお、螺旋形状を備える対向電極(3)を構成する部材として、帯状などの部材を用いてもよく、螺旋形状を備える対向電極(3)における、螺旋の数、螺旋同士の間隔や螺旋の形成されている角度などは、適宜、調整するのが好ましい。
【0075】
そして、螺旋形状を備える対向電極(3)は中心軸(11)を回転軸にして回転することで、各紡糸開始部(1)から飛翔する紡糸原液(4)が主に飛翔する方向を各々、螺旋の中心軸(11)に対する左右方向(紙面上の左右方向)へ、螺旋同士がなす間ほどの短い距離を反復して揺れ動くように変化させることができる。複数の紡糸開始部(1)から飛翔する紡糸原液(4)が、螺旋の中心軸(11)に対する左右方向(紙面上の左右方向)に対して、各々短い距離を反復して揺れ動くように変化させることで、目付の均一な繊維集合体(5)を製造することができ、好ましい。
なお、螺旋形状を備える対向電極(3)の回転速度や回転方向などは、適宜、調整するのが好ましい。
【0076】
図8は、1つの紡糸開始部(1)と2つの対向電極(3a、3b)を備える繊維集合体の製造装置(100)を図示しており、各対向電極(3a、3b)の運動方向を示す矢印線同士が平行をなすと共に、各対向電極(3a、3b)の運動方向を示す矢印線同士が点対称となる位置に紡糸開始部(1)を配置している。
【0077】
図8の繊維集合体の製造装置(100)に係る対向電極(3a、3b)の運動態様(移動速度や移動方向や運動範囲など)は互いに同一でも異なっていても構わないが、紡糸開始部(1)と各対向電極(3a、3b)との距離が互いに等しく保たれた状態となるように各対向電極(3a、3b)を移動させながら繊維集合体(5)を製造すると、繊維化した紡糸原液(4)を複数地点で捕集できると共に、捕集体(2)の各捕集部分における、繊維化した紡糸原液(4)の捕集条件を同じにできるため、より目付の均一な繊維集合体(5)を製造することができ、好ましい。
【0078】
図9は、複数の紡糸開始部(1)と1つの対向電極(3)を備える繊維集合体の製造装置(100)を図示しており、各紡糸開始部(1)を捕集体(2)の幅方向(紙面上の左右方向)と平行をなすように列を成して配置している。
【0079】
本発明に係る、繊維集合体の製造装置(100)が複数の紡糸開始部(1)を備えている場合、各紡糸開始部(1)が吐出する紡糸原液(4)の種類や濃度、紡糸量や紡糸環境などの条件は、互いに同一でも異なっていても構わないが、各紡糸開始部(1)から飛翔する紡糸原液(4)の種類や濃度、紡糸原液(4)の吐出条件などを同一条件にして繊維集合体(5)を製造すると、直径が均一な繊維化した紡糸原液(4)からなる繊維集合体(5)を製造できることで、より目付の均一な繊維集合体(5)を製造することができ、好ましい。
【0080】
また、各紡糸開始部(1)が吐出する紡糸原液(4)の種類や濃度、紡糸原液(4)の吐出条件などを異なる条件にして繊維集合体(5)を製造すると、繊維径など立体構造、及び/又は、樹脂成分など組成が互いに異なる複数種類の繊維から構成された繊維集合体を製造することができる。
【0081】
また、
図9では、対向電極(3)の運動方向と複数の紡糸開始部(1)の成す列のいずれもが捕集体(2)の幅方向(紙面上の左右方向)と平行を成す態様を図示しているが、対向電極(3)の運動方向及び/又は複数の紡糸開始部(1)の成す列が平行とならず、角度を有する態様となるように調整することもできる。
【0082】
図10は、紡糸開始部(1a、1b)と対向電極(3a、3b)を組み合わせてなる、2組の紡糸単位(1aと3a、1bと3b)を備える、繊維集合体の製造装置(100)を図示している。
【0083】
本発明に係る、繊維集合体の製造装置(100)が複数の紡糸単位を備えている場合、各紡糸単位が調製できる繊維化した紡糸原液(4)の繊維径など立体構造、及び/又は、樹脂成分など組成などは互いに同一でも異なっていても構わない。
【0084】
また、各紡糸単位が調製できる繊維化した紡糸原液(4)の立体構造や組成などが互いに異なるように調整して繊維集合体(5)を製造すると、繊維径など立体構造、及び/又は、樹脂成分など組成が互いに異なる複数種類の繊維から構成された繊維集合体を製造することができる。特に、各紡糸単位同士の距離を離すと共に捕集体(2)を搬送しながら繊維集合体(5)を製造することで、繊維径など立体構造、及び/又は、樹脂成分など組成が互いに異なる繊維層が複数積層してなる繊維集合体(5)を製造することもできる。
【0085】
本発明に係る繊維集合体の製造装置(100)において、対向電極(3)を運動させる手段は、周知のものを使用できる。例えば、モーターの回転運動をギアやコンベアを介して対向電極(3)に伝えることで、対向電極(3)を運動できる手段や、クランクなどリンク機構を備えた部材により生じる運動を対向電極(3)に伝えることで、対向電極(3)を運動できる手段などを利用することができる。
【0086】
本発明に係る繊維集合体の製造装置(100)では、従来技術に係る繊維集合体の製造装置と同様に、サクション装置や、例えば加熱装置や帯電装置などの二次加工装置を備えることができる。
【0087】
本発明に係る繊維集合体の製造装置(100)に、例えばサクション装置が捕集体(2)と対向電極(3)との間、あるいは、対向電極(3)の下方向(
図1における紙面上の下方向)に設けられていると、捕集体(2)上に繊維化された紡糸原液(4)を効率よく捕集できる、及び/又は、形成された繊維集合体(5)を捕集体(2)上に固定でき、好ましい。
【0088】
また、本発明に係る繊維集合体の製造装置(100)に、例えば乾熱乾燥機などの二次加工装置が設けられていると、形成された繊維集合体(5)を加熱処理できるという効果を奏することができ、帯電装置などの二次加工装置が設けられていると、形成された繊維集合体(5)を帯電でき好ましい。二次加工装置は、例えば捕集体(2)における繊維化した紡糸原液(4)の捕集位置に対し、繊維集合体(5)の搬送方向側に設けることができる。
【0089】
対向電極(3)の移動範囲よりも、上述の効果を奏する範囲の広い、サクション装置や二次加工装置を用いるのが好ましい。そして、本発明に係る繊維集合体の製造装置(100)におけるサクション装置や二次加工装置の設置数や設置位置は、適宜調整する。