(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る異種金属接合体で構成されたバスバー(端子接続部材)により複数の電池(単セル)が連結されてなる組電池の概略構造を示す斜視図である。
図1に示すように、組電池10は、複数の電池30と、これらの電池30を接続するバスバー100とを有する。本実施形態では、計5個の電池30が直列に接続されて組電池10が形成されている。なお、電池30の数は特に限定されない。また、5つの電池30全てが直列に接続されているが、一部が並列に接続されていてもよい。
【0015】
5個の電池30は、それぞれ扁平な直方体状の筐体を有し、主表面が対向して略平行となるように所定の間隔で並設されている。電池30の筐体上面には、長手方向の一端寄りに負極端子50が設けられ、他端寄りに正極端子60が設けられている。以下では適宜、負極端子50および正極端子60を併せて外部端子と称する。隣接する電池30の負極端子50および正極端子60は、互いに反対側になるように配列されている。
【0016】
隣接する2つの電池30の一方の正極端子60と他方の負極端子50とがバスバー100により電気的に接続されて、5個の電池30が直列接続されている。具体的には、一方の電池30の負極端子50にバスバー100の後述する第1金属体110が接続され、他方の電池30の正極端子60にバスバー100の後述する第2金属体130が接続されて、両者が電気的に接続されている。
【0017】
電池30は、ハウジング(図示せず)内に収容される。電池30の直列接続の一方の終端となる正極端子60’および他方の終端となる負極端子50’は、ハウジングの外部に引き回される配線を介して外部負荷(ともに図示せず)と接続可能である。
【0018】
図2は、電池の概略構造を示す断面図である。
図2に示すように、電池30は、外装缶(筐体)31内に、正負極が渦巻状に巻回されてなる電極体32が外装缶31の缶軸方向に対し横向きに収納されている。外装缶31の開口は、筐体の一部を構成する封口板33により封口されている。封口板33には、負極端子50および正極端子60が設けられている。また、封口板33には、ガス排出弁(図示せず)が形成されている。
【0019】
負極端子50は、側面に鍔部を有する略円柱状部材であり、ガスケット34が当接した状態で封口板33の負極用開口33aに嵌め込まれている。また、負極端子50は、封口板33の電池内側において負極タブ部材53と接続している。負極端子50の電池内側に位置する先端には、負極用開口33aに沿って側壁が形成されるような凹部51が設けられている。凹部51の縁部分が広がるようにかしめることで、負極端子50が負極タブ部材53に対して固定されている。負極端子50は全体が銅で形成されている。
【0020】
負極タブ部材53と封口板33の電池内側面との間には、絶縁板35が設けられている。負極用開口33aにおいて、絶縁板35とガスケット34とが当接している。これにより、負極タブ部材53および負極端子50が封口板33から絶縁されている。負極タブ部材53は、電極体32の一方の端面から突出した負極集電板群32aに接続されている。なお、負極集電板群32aは、電極体32の一方の端面から突出した複数の負極集電板を束ねたものである。
【0021】
正極端子60は、側面に鍔部を有する略円柱状部材であり、側面にガスケット34が当接した状態で封口板33の正極用開口33bに嵌め込まれている。また、正極端子60は、封口板33の電池内側において正極タブ部材62と接続している。正極端子60の電池内側に位置する先端には、正極用開口33bに沿って側壁が形成されるような凹部61が設けられている。凹部61の縁部分が広がるようにかしめることで、正極端子60が正極タブ部材62に対して固定されている。正極端子60は全体がアルミニウムで形成されている。
【0022】
正極タブ部材62と封口板33の電池内側面との間には、絶縁板35が設けられている。正極用開口33bにおいて、絶縁板35とガスケット34とが当接している。これにより、正極タブ部材62および正極端子60が封口板33から絶縁されている。正極タブ部材62は、電極体32の他方の端面から突出した正極集電板群32bに接続されている。なお、正極集電板群32bは、電極体32の他方の端面から突出した複数の正極集電板を束ねたものである。
【0023】
正極端子60には、バスバー100の第2金属体130部分が、溶接により固定される。具体的には、バスバー100の第2金属体130に設けられた開口100aに正極用開口33bから突出した正極端子60が嵌め込まれて溶接固定される。また、負極端子50には、バスバー100の第1金属体110部分が、溶接により固定される。具体的には、バスバー100の第1金属体110に設けられた開口100aに負極用開口33aから突出した負極端子50が嵌め込まれて溶接固定される。なお、バスバー100と外部端子の溶接構造は特に限定されず、バスバー100と外部端子とが溶接補助部材を介して溶接されてもよい。
【0024】
図2では負極端子50および正極端子60の本体部分(鍔部を除いた部分)を略円柱状としているが、負極端子50および正極端子60の本体部分は、略円柱の軸芯に沿って中央部がくり抜かれてなる中空の円管状であってもよい。負極端子50および正極端子60が円管状である場合、中空部分には樹脂部材が埋め込まれていてもよい。
【0025】
続いて、本実施形態に係る異種金属接合体と、この異種金属接合体で構成されたバスバー100について詳細に説明する。
図3(A)は、実施形態1に係るバスバーの概略構造を示す平面図である。
図3(B)は、
図3(A)のA−A線に沿った断面の模式図である。
図3(C)は、実施形態1に係るバスバーの概略構造を示す側面図である。
【0026】
本実施形態に係るバスバー100は、第1金属体110、第2金属体130および保護用金属膜140を備える異種金属接合体で構成されている。第1金属体110は、銅を主成分とする金属で形成され、第2金属体130は、アルミニウムを主成分とする金属で形成されている。ここで、「銅を主成分とする」および「アルミニウムを主成分とする」という表現中、「主成分とする」は、銅またはアルミニウムの含有量が50%よりも大きいことを意味する。
【0027】
第1金属体110および第2金属体130は略平板形状であり、互いに接合されている。具体的には、第1金属体110の主表面114aと交わる方向に延在する一側面114b
1と、第2金属体130の主表面134aと交わる方向に延在する一側面134b
1とが接合されている。さらに本実施形態では、第1金属体110および第2金属体130は帯状であり、一方の短辺側の側面114b
1および側面134b
1が接合されている。
【0028】
保護用金属膜140は、第2金属体130との接合面104に接する領域に露出部116が形成されるように第1金属体110の表面を被覆している。すなわち、第1金属体110は、接合面104と接する領域に、保護用金属膜140が非被覆の露出部116を有する。本実施形態では、接合面104の全周にわたって露出部116が設けられている。すなわち、第1金属体110の2つの主表面114a上と、接合面104に接する、言い換えれば接合面104と交わる方向に延在する、2つの側面114b
2上とに露出部116が設けられている。したがって、保護用金属膜140は、第2金属体130および接合面104と非接触である。保護用金属膜140としては、ニッケルめっき膜等を挙げることができる。
【0029】
ここで、銅とアルミニウムが接合されてなる異種金属接合体に荷重が負荷された場合に発生するせん断歪みについて、
図4(A)〜
図4(C)を参照しながら説明する。
図4(A)は、異種金属接合体の荷重負荷シミュレーションを説明するための模式図である。
図4(B)および
図4(C)は、シミュレーション結果を示す図である。
図4(B)は、異種金属接合体を斜めから見た図であり、
図4(C)は、異種金属接合体の側面における接合面近傍の図である。ここでは、異種金属接合体への荷重負荷により発生する最大せん断歪み(スカラー量)を有限要素法解析ソフトANSYSを用いたシミュレーションにより評価した。
【0030】
図4(A)に示すように、本シミュレーションでは、異種金属接合体の両端部を下方から支持して、接合面104に上方から荷重Gを負荷した。この場合、
図4(B)および
図4(C)に示すように、異種金属接合体の接合面104の近傍に歪みが集中する。また、異種金属接合体の側面における接合面104近傍では、主表面に近づくほど歪みが大きくなっている。すなわち、異種金属接合体の側面では、接合面104と主表面とがなす角部に最も大きな歪みが発生している。
【0031】
このように、異種金属接合体には、銅部分とアルミニウム部分との接合面に歪みが集中する。本実施形態のバスバー100についても同様である。本実施形態のバスバー100において接合面104近傍に歪みが集中すると、第1金属体110が露出部116を有しない場合、すなわち保護用金属膜140が接合面104まで延在している場合には、歪みが保護用金属膜140や保護用金属膜140と第1金属体110との境界面に生じ、保護用金属膜140の剥離や破壊を引き起こすおそれがある。これに対し、本実施形態では、第1金属体110が露出部116を有し、保護用金属膜140が接合面104から退避した位置にあるため、接合面104で発生した歪みによる保護用金属膜140の剥離等を回避することができる。
【0032】
露出部116の、第2金属体130と保護用金属膜140とが並ぶ方向、言い換えれば異種金属接合体の主表面と平行な方向、あるいは異種金属接合体の長辺方向の長さ(距離)R、すなわち接合面104側の端部から接合面104と反対側の端部までの長さRは、接合面104に集中する歪みからの保護用金属膜140の保護と、第1金属体110の腐食防止とのバランスを考慮して適宜設定することができる。例えば、
図4(C)に示すように、異種金属接合体の銅部分の側面において歪みが最も大きい領域(大きさが0.0010812〜0.0012609の領域:以下、適宜この領域を銅側最大歪み領域Yと称する)に合わせて露出部116の範囲を設定することができる。これにより、接合面104に集中する歪みにより保護用金属膜140が剥離等してしまうことを防ぐとともに、第1金属体110の露出面積を最小限に抑えて第1金属体110の腐食を抑制することができる。なお、銅側最大歪み領域Yのうち、銅部分の主表面と平行な方向(
図4(C)の左右方向)の長さが長い方の寸法は、主表面と平行な方向の長さが0.99mmであり、主表面と垂直な方向(
図4(C)における上下方向)の長さ(深さ)が0.130mmである。
【0033】
本実施形態における第1金属体110および第2金属体130の厚さ、長辺側の長さ、短辺側の長さは、例えばそれぞれ2mm、50mm、20mmである。また、保護用金属膜140の厚さは、例えば2μm〜10μmである。また、露出部116の長さRは、例えば1mmである。
【0034】
上述の構成を備えた異種金属接合体からなるバスバー100は、例えば次のようにして製造することができる。
図5(A)〜
図5(F)は、実施形態1に係るバスバーの製造工程を説明するための工程模式図である。
【0035】
まず、
図5(A)に示すように、第1金属体110のブロックと第2金属体130のブロックとを圧延ローラ150を用いて圧延してクラッド材を形成する。圧延ローラ150の圧力は、アルミニウムおよび銅の耐力以上あるいは降伏応力以上に設定する。
【0036】
次に、
図5(B)に示すように、クラッド材を第1金属体110と第2金属体130の接合面104に垂直な方向にスライスして所定厚さの板状クラッド材101を形成する。
【0037】
次に、
図5(C)に示すように、たとえばプレス加工により、板状クラッド材101の第1金属体110部分および第2金属体130部分のそれぞれに、開口100aを形成する。
【0038】
次に、
図5(D)に示すように、第2金属体130と、接合面104から連続する第1金属体110の所定領域とを、マスキングテープ160でマスクする。なお、図示は省略するが、第1金属体110部分に形成された開口100aにも、その内壁にめっき膜が形成されないようマスクを施してもよい。
【0039】
次に、
図5(E)に示すように、マスキングテープ160でマスクされていない第1金属体110の表面に、めっき前処理としての表面処理を施し、第1金属体110の表層を除去する。続いて、電解めっき法などにより、露出した第1金属体110の表面にニッケルめっき膜等の保護用金属膜140を形成する。
【0040】
次に、
図5(F)に示すように、マスキングテープ160を除去する。以上の工程により、バスバー100を形成することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、第1金属体110の表面処理量を、保護用金属膜140の膜厚と同程度とすることで、第1金属体110および保護用金属膜140の総厚と第2金属体130の厚さとをほぼ均等にしている。しかしながら、特にこれに限定されず、第1金属体110の表面処理量よりも保護用金属膜140の膜厚が大きくても小さくてもよい。
【0042】
また、圧延ローラ150による圧延後に弾性変形分だけ第1金属体110および第2金属体130の厚みが戻るが、弾性変形分のひずみ量の差によって第1金属体110と第2金属体130の厚さが異なり得る。しかしながら、その差は第1金属体110および第2金属体130の厚さに比べて数百分の1から千分の1程度と極めて小さいため、図示を省略している。また、本実施形態に係る異種金属接合体あるいはバスバー100は、第1金属体110が第2金属体130よりも厚い(太い)形状、第2金属体130が第1金属体110よりも厚い形状、および両者の厚さが等しい形状のいずれも取り得るが、いずれの場合であっても同様の効果を奏することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る異種金属接合体は、第1金属体110と、第1金属体110に接合された第2金属体130と、接合面104に接する領域に露出部116が形成されるように第1金属体110の表面を被覆する保護用金属膜140とを備える。これにより、異種金属接合体に荷重がかかり、接合面104にせん断歪みが発生した場合であっても、保護用金属膜140に生じるせん断歪みを低減することができる。そのため、保護用金属膜140の剥離や破壊を抑制することができ、ひいては異種金属接合体の破壊を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るバスバー100は、上述した構造の異種金属接合体を備え、隣接する2つの電池30の一方の負極端子50に第1金属体110が接続され、他方の正極端子60に第2金属体130が接続されて、両者を電気的に接続する。本実施形態に係る異種金属接合体によれば、接合面104に集中する歪みにより保護用金属膜140が破壊に至ることを抑制できるため、このような異種金属接合体をバスバー100に用いた場合には、バスバー100の接続信頼性を向上させることができる。
【0045】
(実施形態2)
実施形態2に係る異種金属接合体は、露出部116の形状を除き、実施形態1に係る異種金属接合体の構成と共通する。以下、実施形態2に係る異種金属接合体について実施形態1と異なる構成を中心に説明する。
【0046】
図6(A)は、実施形態2に係るバスバーの概略構造を示す平面図である。
図6(B)は、実施形態2に係るバスバーの概略構造を示す側面図である。
図6(C)は、実施形態2に係るバスバーの概略構造を示す底面図である。
図7は、実施形態2に係るバスバーと同一の接合面形状を有する異種金属接合体について実施した荷重負荷シミュレーションの結果を示す図である。なお、
図7は、異種金属接合体の側面における接合面近傍の図である。シミュレーション方法は実施形態1と同様である(
図4(A)参照)。
【0047】
本実施形態のバスバー100(異種金属接合体)は、接合面104に接する側面114b
2に、側面114b
2と交わる方向から見て、第2金属体130と保護用金属膜140とが並ぶ方向の長さRが、一主表面114a
1側から他主表面114a
2側に向かって単調に減少する形状の露出部116を有する。すなわち、露出部116は、接合面104から保護用金属膜140までの距離Rが、一主表面114a
1側から他主表面114a
2側に近づくほど短くなるような形状を有する。
【0048】
図7に示すように、銅部分の側面において歪みが最も大きい領域のうち、
図4(C)の接合面104と同一位置に設定した破線S
1から、アルミニウムと反対側に延在する部分を、本実施形態の接合面形状における銅側最大歪み領域Yとする。そして、接合面104が異種金属接合体の厚さ方向に対して傾斜した形状(
図7の形状)と、接合面104が同厚さ方向に対して平行な形状(
図4(C)に示す形状)とで銅側最大歪み領域Yの大きさを比較すると、
図7の形状の方が銅側最大歪み領域Yが小さくなっている。具体的には、破線S
1から延在する銅側最大歪み領域Yの寸法は、接合面104と破線S
1とが交わる側の領域(
図7における上側)で長さ0.61mm、深さ0.062mmであり、反対側の領域(
図7における下側)で長さ0.86mm、深さ0.080mmであった。そのため、実施形態2に係るバスバー100によれば、保護用金属膜140を実施形態1と同じ領域に形成した場合、保護用金属膜140の剥離や破壊を引き起こすおそれをより確実に回避することができる。
【0049】
上述の構成を備えた異種金属接合体からなるバスバー100は、例えば次のようにして製造することができる。
図8(A)〜
図8(C)および
図9(A)〜
図9(C)は、実施形態2に係るバスバーの製造工程を説明するための工程模式図である。なお、
図9(A)〜
図9(C)における(i)は平面図であり、(ii)は側面図である。
【0050】
まず、
図8(A)に示すように、第1金属体110のブロックおよび第2金属体130のブロックのそれぞれに、形成すべき露出部116の形状に合わせた切削加工を施す。具体的には、第1金属体110の端部を切り欠いて、露出部116の形状に合わせた傾斜面110aを形成する。また、第2金属体130の端部を切り欠いて、第1金属体110の傾斜面110aと対向する傾斜面130aを形成する。
【0051】
次に、
図8(B)に示すように、切削加工した第1金属体110および第2金属体130を、切削加工により形成した傾斜面同士を合わせた状態で圧延ローラ150に通す。これにより、
図8(C)に示すように、板状クラッド材101が形成される。
【0052】
次に、
図9(A)に示すように、プレス加工により、板状クラッド材101の第1金属体110部分および第2金属体130部分のそれぞれに、開口100aを形成する。
【0053】
次に、
図9(B)に示すように、第2金属体130と、接合面104から連続する第1金属体110の所定領域とを、マスキングテープ160でマスクする。そして、マスキングテープ160でマスクされていない第1金属体110部分に表面処理を施した後、電解めっき法などにより、露出した第1金属体110の表面にニッケルめっき膜等の保護用金属膜140を形成する。
【0054】
次に、
図9(C)に示すように、マスキングテープ160を除去する。以上の工程により、バスバー100を形成することができる。
【0055】
以上説明した本実施形態に係る異種金属接合体およびバスバー100によれば、保護用金属膜140に生じる歪みをより低減することができる。
【0056】
(実施形態3)
実施形態3に係る異種金属接合体は、露出部116の形状を除き、実施形態1に係る異種金属接合体の構成と共通する。以下、実施形態3に係る異種金属接合体について実施形態1と異なる構成を中心に説明する。
【0057】
図10(A)は、実施形態3に係るバスバーの概略構造を示す平面図である。
図10(B)は、実施形態3に係るバスバーの概略構造を示す側面図である。
図11は、実施形態3に係るバスバーと同一の接合面形状を有する異種金属接合体について実施した荷重負荷シミュレーションの結果を示す図である。なお、
図11は、異種金属接合体の側面における接合面近傍の図である。シミュレーション方法は実施形態1と同様である(
図4(A)参照)。
【0058】
本実施形態のバスバー100は、接合面104に接する側面114b
2に、側面114b
2と交わる方向から見て、第2金属体130と保護用金属膜140とが並ぶ方向の長さRが、主表面114a側から中心側に近づくほど長くなる形状の露出部116を有する。したがって、第2金属体130に接合された第1金属体110の側面は、凸状に屈曲した形状を有し、第1金属体110に接合された第2金属体130の側面は、凹状に屈曲した形状を有する。
【0059】
図11に示すように、接合面104を異種金属接合体の厚さ方向の中心で屈折させた場合、実施形態2と同様に定義した銅側最大歪み領域Yの大きさを、
図4(C)に示す形状に比べて小さくすることができる。具体的には、破線S
1から延在する銅側最大歪み領域Yの寸法は、長さが長い方の領域で長さ0.90mm、深さ0.058mmであった。そのため、実施形態3に係るバスバー100によれば、保護用金属膜140を実施形態1と同じ領域に形成した場合、保護用金属膜140の剥離や破壊を引き起こすおそれをより確実に回避することができる。
【0060】
また、露出部116を主表面114a側から中心側に近づくほど長くなる形状とすることで、実施形態2に係るバスバー100のように露出部116を一方の主表面側から他方の主表面側に向かって単調に減少する形状とした場合に比べて、主表面側における銅の露出面積を小さくすることができる。したがって、バスバー100全体で露出部116の面積を小さくすることができる。また、本実施形態に係るバスバー100よれば、銅側最大歪み領域Yの長さが短くなる分だけ保護用金属膜140の形成領域を第2金属体130側に拡げることで、実施形態1に係るバスバー100と比べて露出部116の面積の縮小化を図り得る。
【0061】
上述の構成を備えた異種金属接合体からなるバスバー100は、例えば次のようにして製造することができる。
図12は、実施形態3に係るバスバーの製造工程を説明するための工程模式図である。本実施形態に係るバスバー100の製造工程では、まず、
図12に示すように、第1金属体110のブロックおよび第2金属体130のブロックのそれぞれに、形成すべき露出部116の形状に合わせた切削加工を施す。具体的には、第1金属体110の端部を切り欠いて、露出部116に合わせた凸部110bを形成する。また、第2金属体130の端部を切り欠いて、第1金属体110の凸部110bに対応する凹部130bを形成する。続く工程は、
図8(B)〜
図9(C)と同様であるため、図示および説明は省略する。
【0062】
以上説明した本実施形態に係る異種金属接合体およびバスバー100によれば、保護用金属膜140に生じる歪みをより低減するとともに、外部露出により酸化される銅部分の面積の増大を抑制することができる。
【0063】
(実施形態4)
実施形態4に係る異種金属接合体は、露出部116の形状を除き、実施形態1に係る異種金属接合体の構成と共通する。以下、実施形態4に係る異種金属接合体について実施形態1と異なる構成を中心に説明する。
【0064】
図13(A)は、実施形態4に係る異種金属接合体で構成されたバスバーの概略構造を示す平面図である。
図13(B)は、実施形態4に係る異種金属接合体で構成されたバスバーの概略構造を示す側面図である。
図14は、実施形態4に係るバスバーと同等の接合面形状を有する異種金属接合体について実施した荷重負荷シミュレーションの結果を示す図である。なお、
図14は、異種金属接合体の側面における接合面近傍の図である。
図14の接合面では、シミュレーション方法は実施形態1と同様である(
図4(A)参照)。
【0065】
本実施形態に係るバスバー100は、接合面104に接する側面114b
2に、側面114b
2と交わる方向から見て、第2金属体130側に突出する複数の突出部116aが、突出方向と交わる方向、言い換えれば異種金属接合体の厚さ方向、あるいは異種金属接合体の主表面と交わる方向に配列された形状の露出部116を有する。本実施形態の露出部116は、第2金属体130側に歯が延びる鋸歯形状を有する。なお、櫛歯の数は特に限定されない。したがって、第2金属体130に接合された第1金属体110の側面と第1金属体110に接合された第2金属体130の側面とは、互いに噛み合うように凹凸が形成された形状を有する。
【0066】
図14に示すように、接合面104を複数の突出部が配列された形状とした場合、実施形態2と同様に定義した銅側最大歪み領域Yの大きさを、
図4(C)に示す形状に比べて小さくすることができる。具体的には、破線S
1から延在する銅側最大歪み領域Yの寸法は、長さが長い方の領域で長さ0.76mm、深さ0.093mmであった。そのため、実施形態4に係るバスバー100によれば、保護用金属膜140を実施形態1と同じ領域に形成した場合、保護用金属膜140の剥離や破壊を引き起こすおそれをより確実に回避することができる。
【0067】
また、露出部116を複数の突出部が配列された形状とすることで、実施形態2に係るバスバー100のように露出部116を一方の主表面側から他方の主表面側に向かって単調に減少する形状とした場合に比べて、主表面側における銅の露出面積を小さくすることができる。したがって、バスバー100全体で露出部116の面積を小さくすることができる。また、本実施形態に係るバスバー100よれば、銅側最大歪み領域Yの長さが短くなる分だけ保護用金属膜140の形成領域を第2金属体130側に拡げることで、実施形態1に係るバスバー100と比べて露出部116の面積の縮小化を図り得る。なお、
図13(B)と
図14とで接合面の折り返しの数が異なるが、接合面形状を蛇腹状とすることで銅側最大歪み領域Yが小さくなるという傾向は同様である。
【0068】
上述の構成を備えた異種金属接合体からなるバスバー100は、例えば次のようにして製造することができる。
図15は、実施形態4に係るバスバーの製造工程を説明するための工程模式図である。本実施形態に係るバスバー100の製造工程では、まず、
図15に示すように、第1金属体110のブロックおよび第2金属体130のブロックのそれぞれに、形成すべき接合面104および露出部116の形状に合わせた切削加工を施す。具体的には、第1金属体110の端部を切り欠いて、接合面104に合わせた鋸歯部110cを形成する。また、第2金属体130の端部を切り欠いて、第1金属体110の鋸歯部110cの各歯に対応する複数の凹部130cを形成する。続く工程は、
図8(B)〜
図9(C)と同様であるため、図示および説明は省略する。
【0069】
以上説明した本実施形態に係る異種金属接合体およびバスバー100によれば、保護用金属膜140に生じる歪みをより低減するとともに、外部露出により酸化される銅部分の面積の増大を抑制することができる。
【0070】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうるものである。