(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0001】
背景
低誘電率(low−k)を有する絶縁膜は、半導体製造にとても必要とされる(たとえば、International Technology Roadmap for Semiconductors, Interconnect chapter, 2007 editionを参照のこと)。low−k膜は、通常、空気または1に近い誘電率を有する他のガスを収容する空孔を2.0−3.0の範囲内にある誘電率を有するマトリックス材料に導入することで作り出される。得られる多孔質膜の実効誘電率は典型的に2.2未満である。
【0002】
low−kマトリックス材料は、典型的に、水素付加された炭素ドープシリコン酸化物(SiCOH)であり、ここでは自由表面がシリコンに結合したメチル基(CH
3)で終端している。処理工程、たとえばエッチングまたは化学的機械研磨は、メチル終端を効率的に除去して、ダングリングボンドまたは水酸基(Si−OH)の何れかを残す。結果として、この膜はより親水性となり、容易に水分を吸収できる。これはひいては誘電率の増加をもたらし、この程度はダメージを与えるプロセスの激しさに依存する。
【0003】
炭素貧化のもう1つの影響は、臨界サイズに対するその影響である。たとえば、low−k膜にトレンチを形成するのに使用するエッチングプロセスは、炭素が貧化したトレンチ壁を残す傾向があるだろう。続いてのウェットストリッピングまたは洗浄プロセスでは、このトレンチがかなり広がることがあり、フューチャーサイズが縮小するので、問題がさらに重大になる。
【0004】
この問題に対する1つの解決策は、シリル化剤で炭素原子を回復させることによってこの膜を修復することにある。low−k修復のためのシリル化剤として、いくつかの群の化合物、特にアルコキシシラン、クロロシラン、およびアミノシランが使用されてきた。これらの中で、アルコキシシランは、反応性が最も低いが、それらの化学的性質がSiCOH膜に完全に適合するという利点を有する。
【0005】
クロロシランは、大気中の水分とのそれらの高い反応性と、さらにはシリル化反応副生物として塩酸(HCl)を形成するそれらの傾向とのせいで、取り扱いが難しい。HClは、循環路内の他の場所に存在する金属膜にとって問題がありうる。
【0006】
low−k修復のためのアミノシランの使用は、いくつかの典拠で示されてきた。米国特許第6,395,651号において、Smithらは、表面改質剤、たとえばヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理されるナノ多孔質シリカ誘電体膜および前記表面改質剤でのそれの処理方法を特許請求の範囲に記載している。この筆者は、例示的な膜をHMDSに曝す種々の方法が疎水性膜表面をもたらしたが、水滴接触角実験に基づくと、未処理の膜は親水性のままであったことを示している。さらなる例では、米国特許第7,029,826号においてHackerらは、ダメージを受けたシリカ誘電体膜を表面改質剤、たとえばメチルトリアセトキシシラン(MTAS)に接触させることにより、このダメージを受けた膜に疎水性を与える方法を特許請求の範囲に記載している。米国特許第7,345,000号は、誘電体膜を処理化合物およびアルキルシランに曝すことによってこの膜を処理する方法を特許請求の範囲に記載しており、ここでは、処理化合物としては、好ましくは、HMDS、クロロトリメチルシラン(TMCS)、トリクロロメチルシラン(TCMS)、およびこれらの組み合わせが挙げられている。
【0007】
IBM(International Business Machines Corporation)に譲渡された米国特許第7,179,758号では、2つの官能基を有する化合物がそれらの一官能性類似物よりも好ましいと考えられている。なぜなら、理論的には、二官能性分子は隣り合う2つのSi−OH基と反応でき、一官能性化合物は1つのSi−OH基としか反応できないからである。しかしながら、シリル化後のアニール工程を使用して、残留するSi−OH基を「縮合させ」、新たなSi−O−Si結合を形成させることも示唆されている。IBMの例示的な処理プロセスは、二官能性分子であるビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン(BDMADMS)が、一官能性分子であるHMDSに比べて優れた疎水性を提供することを示唆している。
【0008】
上記参考文献を別々にまたは組み合わせて検討すると、少なくとも1つのSi−N結合を活性部位に有する反応化合物がきっとシリカ系の膜の表面改質に最も有効であることが分かる。この概念は、いくつかのトリメチルシリル−(TMS)ドナーをそれらの反応性についてシリカゲル粒子の表面のシラノール基と比較した、the Journal of Liquid Chromotography, 11(16), 3375-3384 (1988年)におけるK. McMurtreyの研究で結論付けられた。この研究の結果は、窒素を含有する環状官能基を有するトリメチルシリル−イミダゾール(TMSI)が、上述の化合物の全て、さらには当技術において知られている他のもの、たとえばトリメチルシリルジメチルアミン(TMSDMA)と比較して、この表面反応にとってより有効であったことを示唆している。上で参照した許可になった特許は、実際に、表面改質または誘電体修復の何れかのための処理化合物としてTMSIを特許請求の範囲に記載しているが、今までのところ、窒素を含有する環状分子の分野は当技術において未開拓のままである。
【0009】
概要
式R
3SiLのシリル化化合物を開示する。ここで、各Rは、H、メチル、およびエチルからなる群より独立して選択され;Lは、1,2,3−トリアゾール、ピペリジン、1−メチルピペラジン、ピロリジン、およびピラゾールからなる群より選択される窒素含有環であり;窒素含有環中の1つの窒素はSi原子に直接結合している。このシリル化化合物は、金属汚染物の全濃度が10ppmw未満である。開示する化合物は以下の側面のうちの1つ以上を含んでもよい:
・この化合物は、トリメチルシリルピロリジン、トリメチルシリルピラゾール、トリメチルシリル−1,2,3−トリアゾール、トリメチルシリルピペリジン、およびトリメチルシリル−4−メチルピペラジンからなる群より選択されうる;
・1ppmw未満の金属汚染物の全濃度;
・約200℃未満の沸点;および/または
・約100℃ないし約200℃の沸点。
【0010】
シリル化薬品配送デバイスも開示する。このデバイスは、入口コンジットおよび出口コンジットを有し、式R
3SiLを有するシリル化剤を収容するキャニスタを具備し、ここで、各Rは、H、メチル、およびエチルからなる群より独立して選択され;Lは、1,2,3−トリアゾール、ピペリジン、1−メチルピペラジン、ピロリジン、およびピラゾールからなる群より選択される窒素含有環であり;窒素含有環中の1つの窒素はSi原子に直接結合している。開示するデバイスは以下の側面のうちの1つ以上を含んでもよい:
・シリル化剤は金属汚染物の全濃度が10ppmw未満である。
・シリル化剤は、トリメチルシリルピロリジン、トリメチルシリルピラゾール、トリメチルシリル−1,2,3−トリアゾール、トリメチルシリルピペリジン、およびトリメチルシリル−4−メチルピペラジンからなる群より選択される;
・入口コンジット端の端部はシリル化剤の表面の上方に位置し、出口コンジットの端部はシリル化剤の表面の下方に位置している;および
・入口コンジット端の端部はシリル化剤の表面の下方に位置し、出口コンジットの端部はシリル化剤の表面の上方に位置している。
【0011】
誘電体膜を修復する方法も開示し、ここでは誘電体膜をチャンバに導入する。式R
3SiLを有する修復剤をチャンバに導入し、ここで、各Rは、H、メチル、およびエチルからなる群より独立して選択され;Lは、1,2,3−トリアゾール、ピペリジン、1−メチルピペラジン、ピロリジン、およびピラゾールからなる群より選択される窒素含有環であり;窒素含有環中の1つの窒素はSi原子に直接結合している。この修復剤を誘電体膜に接触させる。開示する方法は以下の側面のうちの1つ以上を含んでもよい:
・チャンバへの導入後であって修復剤の導入前に、誘電体膜を加熱する;
・接触工程に続いて好適な期間にわたって修復剤と誘電体膜とを反応させる;
・修復剤反応工程に続いて、誘電体膜をアニールする;
・修復剤は、トリメチルシリルピロリジン、トリメチルシリルピラゾール、トリメチルシリル−1,2,3−トリアゾール、トリメチルシリルピペリジン、およびトリメチルシリル−4−メチルピペラジンからなる群より選択される;および
・修復剤は金属汚染物の全濃度が10ppmw未満である。
【0012】
表記法および命名法
以下の説明および特許請求の範囲を通じて、いくつかの略語、記号および用語を使用しており、これらとしては以下のものが挙げられる:略語「HMDS」はヘキサメチルジシラザンを指し;略語「MTAS」はメチルトリアセトキシシランを指し;略語「TMCS」はクロロトリメチルシランを指し;略語「TCMS」はトリクロロメチルを指し;略語「BDMADMS」はビス(ジメチルアミノ)ジメチルシランを指し;略語「TMS」はトリメチルシリル((CH
3)
3−Si−)を指し;略語「TMSI」はトリメチルシリルイミダゾールを指し;略語「TMSDMA」はトリメチルシリルジメチルアミンを指し;略語「ppmw」は重量百万分率を指し;略語「ppb」は重量十億分率を指し;略語「MIM」は金属−絶縁体−金属(キャパシタで使用される構造)を指し;略語「DRAM」はダイナミックランダムアクセスメモリを指し;略語「FeRAM」は強誘電体ランダムアクセスメモリを指し;略語「CMOS」は相補型金属酸化膜半導体を指し;略語「UV」は紫外を指し;略語「RF」は高周波を指し;略語「BOE」は緩衝酸化物エッチングを指し;略語「ER」はエッチング速度を指し;用語「一官能性シリル化化合物」、「修復剤」、「修復薬品」、「シリル化剤」、「シリル化化合物」、および「シリル化化合物」は、式R
3SiLを有する化合物を指すのに互換性を持って使用され、ここで、各Rは、H、メチル、およびエチルからなる群より独立して選択され;Lは、1,2,3−トリアゾール、ピペリジン、1−メチルピペラジン、ピロリジン、およびピラゾールからなる群より選択される窒素含有環であり;窒素含有環中の1つの窒素はSi原子に直接結合している。
【0013】
本発明の性質および対象をさらに理解するには、添付の図面と組み合わせて示した以下の詳細な説明を参照すべきである。添付の図面においては、同様の要素には、同様または類似した参照番号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、ここに開示するシリル化薬品配送デバイスの1つの実施形態の側面図である。
【
図2】
図2は、ここに開示するシリル化薬品配送デバイスの第2の実施形態の側面図である。
【0015】
好ましい実施形態の説明
半導体、光電池、LCD−TFT、またはフラットパネルタイプのデバイスの製造において使用できる方法、装置および化合物の非限定的な実施形態をここに開示する。
【0016】
シリル化プロセスでは、二官能性化合物の使用は有利でないことがあり、実際、膜に反応性末端を残すことがあり、これは、誘電率を向上させるか、または著しい吸湿のための経路を残すであろう。
【0017】
我々の予備調査は、一官能性のシリル化化合物が、誘電率の回復にとって、それらの多官能性類似物と同様であるまたはそれよりも優れていることを示唆する。1つ、2つ、および3つの反応性基をそれぞれ有する以下の化合物を使用して、最初の試験を行った。
トリメチルエトキシシラン
ジメチルジエトキシシラン
メチルトリエトキシシラン
真空管状炉システム内で、蒸気相にあるこれら3種類の化合物の各々にダメージを受けた膜を曝すことによって、それらを修復した。少なくともこれら3種類については、結果により、1つの反応性基を有するそれは2つまたは3つの反応性種に類似した誘電率の回復を提供することが示唆される。
【0018】
我々の結果は、多官能性シリル化剤が一官能性剤よりも優れた結果を提供することを示す米国特許第7,179,758号(Chakrapani)および第7,029,826号(Hacker)のそれと対照的である。理論によって縛られることを望まないが、出願人は、以前の研究で検討した基板は表面上で互いに近接した大量のシラノールによって非常に激しくダメージを受けていたが、より現実的な表面は比較的孤立したシラノールではあまりダメージを受けないかもしれないし、それゆえに、一官能性の修復剤によってより効率的に修復されるかもしれないと推測している。
【0019】
高められたシリル化能力を示しうる他の一官能性シリル化化合物は式R
3SiLを有し、ここで、各Rは、H、メチル、およびエチルからなる群より独立して選択され;Lは、1,2,3−トリアゾール、ピペリジン、1−メチルピペラジン、ピロリジン、およびピラゾールからなる群より選択される窒素含有環であり;窒素含有環中の1つの窒素はSi原子に直接結合している。好ましくは、Rのうちの少なくとも2つはメチルである。
【0020】
理論に縛られないが、出願人はこれらの一官能性シリル化化合物の環状構造が立体障害を下げると信じている。この環は、窒素原子に結合した炭化水素基が回転して、それらが窒素が表面上のシラノール基と相互反応するのを遮蔽しうる位置に来るのを抑制し、それによりこれらの分子をシリル化化合物として非常に有効なものにする。好ましくは、窒素含有環は飽和している。
【0021】
しかしながら、上の理論にかかわらず、全ての窒素含有環構造がL成分として有効であると判明したわけではない。以下の表2に示すように、ピロールも1,2,4−トリアゾールも、ダメージを受けた膜の好適な修復を提供しない。出願人は、これら分子の効果の欠如を説明する好適な理論を未だに見つけていない。
【0022】
例示的な好ましい分子としては以下が挙げられる:
【化1】
【0023】
好ましくは、一官能性シリル化化合物は、蒸気相処理のための蒸気相での処理チャンバへのその配送を促進するために、高い揮発性を有する。液相処理が使用される場合には、揮発性は、液体として容易に配送できるのに十分低くあるべきだが、処理後の蒸発乾燥によるあらゆる未反応のシリル化剤の除去を促進できるのに十分高くあるべきである。蒸気相配送の場合、好ましくは、シリル化剤の沸点は約200℃未満である。液相配送の場合、沸点は好ましくは約100℃ないし約200℃である。たとえば、トリメチルシリルピペリジンの沸点は約166℃であり、トリメチルシリルピロリジンのそれは約144℃であり、トリメチルシリル1,2,3−トリアゾールのそれは約163℃であり(全て大気圧での沸点である)、これらの全ては前記好ましい範囲内にある。
【0024】
合成方法
開示する分子は、以下のスキームのような、通常の方法によって合成できる:
【化2】
【0025】
上記反応は、不活性雰囲気下で、たとえば乾燥窒素を流しながら行われうる。出発物質
1RNHおよび
2R
3Si−N
1Rは市販されている。
【0026】
好ましい純度
修復される誘電体膜の汚染を避けるために、前記一官能性のシリル化化合物が、汚染物、特に誘電体膜において特に望ましくないと知られている金属汚染物を含まないことが重要である。金属汚染物としては、周期表のIA−IIIAまたはI−VIIIB族の元素が挙げられる。好ましくは、化合物中の金属汚染物の全濃度は、10ppmw(重量百万分率)未満であるべきであり、より好ましくは、1ppmw未満である。たとえば、対象の金属含有量の規格値を、表1において、130ppbw(重量十億分率)で示す。
【表1】
【0027】
一般に、既知の方法を使用する蒸留によって、対象の金属含有量に達しうる。蒸留システムの構造における金属部材は最小にすべきであるし、慎重にして漏れを全く許してはならない。新たな蒸留システムは、一般に、蒸留した生成物の収集を始める前に、100%の還流での動作による調整を必要とするであろう。
【0028】
シリル化薬品配送デバイス
一官能性シリル化化合物は、開示するシリル化薬品配送デバイスによって、半導体処理ツールに配送できる。
図1および
図2は、開示するシリル化薬品デバイス1の2つの実施形態を示している。
【0029】
図1は、シリル化薬品配送デバイス1の1つの実施形態の側面図である。
図1では、開示する一官能性シリル化化合物10が、2つのコンジット、入口コンジット30および出口コンジット40を有するコンテナ20内に収容されている。前駆体に関する当業者は、コンテナ20、入口コンジット30、および出口コンジット40が、高温および高圧であっても気体状の一官能性シリル化化合物10の漏れを防ぐように製造されていることを認めるであろう。
【0030】
コンテナは、バルブ35および45を介して、半導体処理ツールの他の部材に流体接続されている。好ましくは、コンテナ20、入口コンジット30、バルブ35、出口コンジット40、およびバルブ45は、316L EPまたは304ステンレス鋼から作られている。しかしながら、当業者は、他の非反応性材料もここでの教示において使用できることと、腐食性の一官能性シリル化化合物10はより耐食性の高い材料、たとえばHastelloyまたはInconelの使用を必要とすることがあることとを認めるであろう。
【0031】
図1では、入口コンジット30の端部31は一官能性シリル化化合物10の表面11の上方に位置している一方、出口コンジット40の端部41は一官能性シリル化化合物10の表面11の下方に位置している。この実施形態では、一官能性シリル化化合物10は好ましくは液体の形態にある。不活性ガス、たとえば、限定はされないが、窒素、アルゴン、ヘリウム、およびこれらの混合物を入口コンジットに導入してもよい。不活性ガスは、液体の一官能性シリル化化合物10を出口コンジット40におよび半導体処理ツールの部材(図示していない)に押し込むように、コンテナ20を加圧する。半導体処理ツールとしては気化器を挙げることができ、これは、修復されるウェハが設置され処理が蒸気相で行われるチャンバへ蒸気を配送するためにヘリウム、アルゴン、窒素またはこれらの混合物などのキャリアガスを使用するまたはキャリアガスを使用せずに、液体の一官能性シリル化化合物10を蒸気に変える。あるいは、液体の一官能性シリル化化合物10は、ジェットまたはエアロゾルとして、ウェハ表面に直接配送してもよい。
【0032】
図2は、シリル化薬品配送デバイス1の第2の実施形態の側面図である。
図2では、入口コンジット30の端部31は一官能性シリル化化合物10の表面11の下方に位置している一方、出口コンジット40の端部41は一官能性シリル化化合物10の表面11の上方に位置している。
図2は、一官能性シリル化化合物10の温度を高めることができる任意の加熱要素25をさらに含んでいる。この実施形態では、一官能性シリル化化合物10は固体の形態でもよいしまたは液体の形態でもよい。不活性ガス、たとえば、限定されないが、窒素、アルゴン、ヘリウム、およびこれらの混合物を入口コンジットに導入する。不活性ガスは泡となって一官能性シリル化化合物10を通り、不活性ガスと気化した一官能性シリル化化合物10との混合物を出口コンジットおよび半導体処理ツールの部材に運ぶ。
【0033】
図1および
図2は両方ともバルブ35および45を含む。当業者は、バルブ35および45を開放位置または閉鎖位置にして、コンジット30および40のそれぞれを通る流れを可能にしてもよいことを認めるであろう。
【0034】
一官能性シリル化化合物10が蒸気の形態にあるならば、または十分な蒸気圧が固体/液体相の上方に存在しているならば、
図1または2の何れの装置1も、または存在する任意の固体もしくは液体の表面の上方で終端する1つのコンジットを有するより単純な装置も使用できる。この場合、一官能性シリル化化合物10は、それぞれ
図1におけるバルブ35または
図2におけるバルブ45を単に開くことによって、コンジット30または40を通して蒸気の形態で配送される。装置1は、たとえば任意の加熱要素25の使用によって、一官能性シリル化化合物10を蒸気の形態で配送するのに十分な蒸気圧を提供するのに好適な温度に維持されうる。
【0035】
図1および
図2はシリル化薬品配送デバイス1の2つの実施形態を開示しているが、当業者は、ここでの開示から逸れることなしに、入口コンジット30および出口コンジット40の両方を一官能性シリル化化合物10の表面11の上方または下方に配置できることを認めるであろう。さらに、入口コンジット30は充填口であってもよい。最後に、当業者は、ここでの教示から逸れることなしに、開示する一官能性シリル化化合物を、他の配送デバイス、たとえば、JurcikらへのWO 2006/059187に開示されたアンプルを使用して、半導体処理ツールに配送してもよいことを認めるであろう。
【0036】
修復方法
開示する修復方法では、開示する分子を誘電体膜に接触させて、この膜に炭素原子を回復させる。当業者は、本文章で説明するシリカ系膜の処理方法が、条件または詳細に規定されたハードウェアの具体的な群によって限定されないことを認めるであろう。開示する処理方法の精神から逸れることなしに、試料曝露条件、たとえば、温度、時間、圧力、および流量の大きな相違は、開示する分子に適用されるであろう。同様に、開示する分子に試料を曝すのに使用する装置も、開示する方法から逸れることなしに多様でありうる。
【0037】
開示する誘電体膜の修復方法は、ダメージを受けた誘電体膜と式R
3SiLを有する修復剤とをチャンバに導入することを含み、ここで、各Rは、H、メチル、およびエチルからなる群より独立して選択され;Lは、1,2,3−トリアゾール、ピペリジン、1−メチルピペラジン、ピロリジン、およびピラゾールからなる群より選択される窒素含有環であり;窒素含有環中の1つの窒素はSi原子に直接結合している。この修復剤は、ダメージを受けた誘電体膜に接触させられる。
【0038】
チャンバは、試料の曝露環境を制御するのに使用する。基板および誘電体膜は、任意に、外部のエネルギー源、たとえば伝導性または放射性の供給源によって、ある温度に加熱されてもよい。修復剤は、液相または蒸気相の何れかでチャンバに導入されうる。修復剤は、膜の性質を完全にまたは部分的に回復させるのに好適な期間にわたって誘電体膜と反応させられる。任意に、修復剤反応工程に続き、基板および誘電体膜を外部のエネルギー源、たとえば伝導性または放射性の供給源によってアニールしてもよい。
【0039】
誘電体膜は基板上に配置されている。誘電体膜は、少なくともSi、C、O、およびHから構成されているであろうし、混入した他の元素成分を有する場合がある。基板は、誘電体膜に加えて他の層を含んでいてもよい。米国特許第6,312,793号、第6,479,110号、第6,756,323号、第6,953,984号、第7,030,468号、第7,049,427号、第7,282,458号、第7,288,292号、および第7,312,524号ならびに米国特許出願第2007/0057235号に開示された堆積プロセスへの例示的な、しかしながら非限定的な参照が、参照によりここに組み込まれる。たとえば、米国特許出願公開第2007/0057235号は、炭素ドープシリコン酸化物の層を基板上に形成する方法を開示している。同様に、米国特許第6,312,793号、第6,479,110号、第6,756,323号、第7,030,468号、第7,049,427号、第7,282,458号、第7,288,292号、および第7,312,524号は、前駆体(炭化水素分子または有機分子とも呼ばれる)の組み合わせのプラズマ強化化学気相堆積を開示している。これらのプロセスの共通の最重要点をさらにここで説明する。
【0040】
基板は堆積ツールの反応チャンバ内に設置されるであろう。誘電体膜を形成するのに使用する前駆体は、ガスとして直接リアクタに配送してもよいし、液体として配送してリアクタ内で直接気化させてもよいし、または不活性キャリアガス、たとえば、限定されないが、ヘリウムまたはアルゴンによって運んでもよい。たとえば、前駆体を、反応チャンバへの導入前に、キャリアガスの存在下で、約70℃ないし約110℃の温度で気化させてもよい。あるいは、前駆体を、たとえばスピンオンプロセスにより、液体の形態で基板上に堆積させてもよい。
【0041】
誘電体を堆積させる基板の種類は、意図する最終用途に依存して多様であろう。いくつかの実施形態において、基板は、MIM、DRAM、ReRam技術における誘電体またはCMOS技術におけるゲート絶縁膜として使用される酸化物(たとえば、SiO
2、SiON、またはHfO
2系材料、TiO
2系材料、ZrO
2系材料、希土類酸化物系材料、三元酸化物系材料など)、およびこのような用途での導電材料として使用される金属、たとえばタングステン、チタン、タンタル、ルテニウム、または銅などに加えて、シリコン酸化物の層で任意にコーティングされているドープまたは非ドープシリコンを含んでいてもよい。他の実施形態では、基板は、銅相互接続および絶縁領域、たとえば、SiO
2またはSiNなどのシーリング層で任意にコーティングされた、もう1種のlow−k材料を含んでもよい。絶縁膜でコーティングされてもよい基板の他の例としては、限定されないが、固体基板、たとえば金属基板(たとえば、Ru、Al、Ni、Ti、Co、Pt、ならびに金属ケイ化物、たとえばTiSi
2、CoSi
2、およびNiSi
2);金属窒化物含有基板(たとえば、TaN、TiN、WN、TaCN、TiCN、TaSiN、およびTiSiN);半導体材料(たとえば、Si、SiGe、GaAs、InP、ダイアモンド、GaN、およびSiC);絶縁体(たとえばSiO
2、Si
3N
4、HfO
2、Ta
2O
5、ZrO
2、TiO
2、Al
2O
3、およびチタン酸バリウムストロンチウム);またはこれらの材料の任意の数の組み合わせを含む他の基板が挙げられる。利用する実際の基板は、利用する誘電体膜にも依存するであろう。
【0042】
膜を形成するのに使用する前駆体を膜堆積チャンバに導入し、基板と接触させて、この基板の少なくとも1つの表面上に絶縁膜を形成する。膜堆積チャンバは、堆積方法が行われるデバイスの任意のエンクロージャまたはチャンバでもよく、たとえば、限定しないが、平行板式リアクタ、コールドウォール式リアクタ、ホットウォール式リアクタ、枚葉式リアクタ、マルチウェハ式リアクタ、または他のタイプの堆積システムでありうる。
【0043】
組み込まれる従来技術において詳細に論じられているように、絶縁膜の誘電率を下げるために、続いて、追加のプロセスによって膜を多孔質にしてもよい。このようなプロセスとしては、限定されないが、アニール、UV光、または電子ビームが挙げられる。
【0044】
ここでのおよび参照により組み込まれる参考文献での開示に基づけば、当業者は、膜の堆積中に制御されるプロセス変数、たとえばRFパワー、前駆体の混合物および流量、リアクタ内の圧力、ならびに基板温度などについて適切な値を容易に選択できるであろう。
【0045】
開示する方法の残りの工程の実施中、基板および膜の構造体を上で説明した堆積チャンバの中に入れておいてもよい。あるいは、基板および膜の構造体を、試料の曝露環境を制御するのに使用するもう1つの装置、たとえば以下に説明する蒸発乾燥システムに導入してもよい。
【0046】
基板および膜を、任意に、外部のエネルギー源、たとえば伝導性または放射性の供給源によって、ある高温まで加熱してもよい。利用する一官能性シリル化化合物に依存するが、熱がシリル化反応を助けることがある。たとえば、約100℃ないし約400℃、好ましくは約200℃ないし約300℃の範囲内にある温度は、ある特定の状況では有益であことがわかりうる。しかしながら、他の状況下では、一官能性シリル化化合物は高温で分解することがあり、それゆえに、室温作業、たとえば約20℃ないし約30℃での作業が追加の加熱を必要とすることなしに最適であることがある。
【0047】
シリル化化合物を、チャンバに導入し、液相または蒸気相の何れかで基板および膜の構造体まで運んでもよく、それにより、シリル化化合物がこの膜に接触して、膜の性質を完全にまたは部分的に回復させるのに好適な期間にわたってこの化合物をこの膜に接触させる。シリル化化合物は、ガスとして直接装置に配送してもよいし、液体として配送し装置内で直接気化させてもよいし、不活性キャリアガスたとえば、限定されないが、窒素、ヘリウム、アルゴン、またはこれらの組み合わせによって運んでもよい。好ましくは、シリル化化合物を、装置への導入前に、キャリアガスの存在下で、約20℃ないし約150℃、より好ましくは約70℃ないし約110℃の温度で気化させる。
【0048】
あるいは、シリル化化合物を液相で膜に接触させてもよい。これは、膜の性質を完全にまたは部分的に回復させるのに好適な期間にわたって液浴に基板および膜を入れることによって達成されうる。もう1つの選択肢は、液体シリル化化合物を処理チャンバに導入し、それを、ジェット、流れ、またはスプレーによって、任意にスピンオンプロセスで膜まで配送することであってもよい。
【0049】
シリル化化合物は、約5秒間ないし約3時間、より好ましくは約1分間ないし約1時間、さらにより好ましくは約1分間ないし約5分間の好適な期間にわたって膜と反応する。以下にさらに詳細に説明する深さおよびエッチング速度のパラメータの向上によって示されるように、シリル化化合物が膜と反応した後、膜の性質は完全にまたは部分的に修復している。
【0050】
シリル化化合物反応工程に続いて、外部のエネルギー源、たとえば伝導性または放射性の供給源によって、基板および膜の構造体を任意にアニールしてもよい。アニールは、残留する未反応のシラノールを除去するのを助けることがある。しかしながら、利用する化合物が未反応のシラノールの大部分を除去できるのであれば、アニール工程は必要ないことがある。アニールプロセスは同じ装置で行ってもよい。
【0051】
評価システムの説明
開示するシリル化化合物の有効性を評価するのに使用する装置は、ステンレス鋼の真空管状炉を具備し、この内部にはヒートサセプタが取り付けられており、この中に処理される基板が配置される。管状炉の上流は薬品配送システムであり、封止されておりかつ修復薬品を収容しているバブラーと精製窒素ガス配送システムとを具備している。
【0052】
修復薬品の配送前に、真空システムをベース圧力までポンプし、これに窒素の5分間連続パージ流が続く。システムが安定温度に達したら、制御された流量および圧力条件下での窒素キャリアガスの流れ、または窒素希釈なしに真空管に純粋な薬品蒸気を定常圧力まで充填することの何れかによって、修復薬品を気相で基板まで配送する。
【0053】
基板を修復薬品に曝すことに続けて、システムを、窒素の定常流で5分間にわたってパージし、基板を取り外すために窒素を大気圧まで充填する。
【0054】
修復の評価
所定のシリル化化合物での処理に続けて、いくつかの修復パラメータを測定した。これは、ダメージを受けた膜と比べた場合に修復プロセスの結果として著しく変化することが予想される。特に、600:1の緩衝酸化物エッチング(BOE)溶液によるウェットエッチングに対する膜耐性に関する2つのパラメータをここで規定する。この試験では、ウェットエッチングプロセスは、膜が修復された後に行われ、本明細書で説明するダメージを引き起こすプロセスではない。「深さ」パラメータはダメージを受けた膜のうち所定の化合物によって修復された割合を示す。定義上は、ダメージを受けていない膜は深さ=100%である一方、ダメージを受けた膜は深さ=0%である。たとえば、ダメージを受けた膜がエッチング溶液への1時間の曝露後に50nmの深さまでウェットエッチングされ、修復された膜が同じ曝露後に25nmの深さまでウェットエッチングされるならば、修繕された膜については深さ=50%である。
【0055】
ウェットエッチング速度パラメータ、すなわちERは、600:1のBOE溶液中での12ないし24分間のウェットエッチングで測定され、Å/秒の単位で報告される。膜のこの部分は、定常状態のバルクな膜エッチング速度を表していると信じられている。これら両方のパラメータ、ERおよび深さは、シリル化プロセスの有効性に関し、本来の膜の性質に向けての回復プロセスを示すものと考えられる。
【0056】
表1は、パターン化してないブランケット膜についての上で説明したパラメータの概要を示している。処理は、各シリル化化合物について、10Torrの定常圧力で300℃で、1時間の期間にわたって適用する。開示する分子1−3について、修復の深さは約40%以上である一方、最良の比較分子(1)は26%のみ修復する。同様に、開示する分子は、ダメージを受けた膜に比べて、バルクER値を40%以上下げる。最良の比較分子は、ダメージに対して膜に比べて、バルクER値を約25%下げる。比較の分子4および5を使用する試料処理は、処理後の有効な修復を示さない。
【表2】
【0057】
本発明の性質を説明するためにここに説明および図示してきた詳細、材料、工程、および部品の配置に関する多くの追加の工程が、当業者により、添付の特許請求の範囲に示す本発明の原理および範囲の中で行われてもよいことは理解されるであろう。したがって、本発明は、上に示した例および添付の図面における特定の実施形態に限定されることを意図していない。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]式R3SiLのシリル化化合物であって、各Rが、H、メチル、およびエチルからなる群より独立して選択され;Lが、1,2,3−トリアゾール、ピペリジン、1−メチルピペラジン、ピロリジン、およびピラゾールからなる群より選択される窒素含有環であり;前記窒素含有環中の1つの窒素がSi原子に直接結合しており;前記化合物中の金属汚染物の全濃度が10ppmw未満であるシリル化化合物。
[2]前記化合物は、トリメチルシリルピロリジン、トリメチルシリルピラゾール、トリメチルシリル−1,2,3−トリアゾール、トリメチルシリルピペリジン、およびトリメチルシリル−4−メチルピペラジンからなる群より選択される[1]に記載のシリル化化合物。
[3]前記金属汚染物の全濃度は1ppmw未満である[2]に記載のシリル化化合物。
[4]約200℃未満の沸点をさらに含む[1]に記載のシリル化化合物。
[5]前記沸点は約100℃ないし約200℃である[4]に記載のシリル化化合物。
[6]シリル化薬品配送デバイスであって:入口コンジットおよび出口コンジットを有し、式R3SiLを有するシリル化剤を収容するキャニスタを具備し、ここで、各Rが、H、メチル、およびエチルからなる群より独立して選択され;Lが、1,2,3−トリアゾール、ピペリジン、1−メチルピペラジン、ピロリジン、およびピラゾールからなる群より選択される窒素含有環であり;前記窒素含有環中の1つの窒素がSi原子に直接結合しているシリル化薬品配送デバイス。
[7]前記シリル化剤は金属汚染物の全濃度が10ppmw未満である[6]に記載のシリル化薬品配送デバイス。
[8]前記シリル化剤は、トリメチルシリルピロリジン、トリメチルシリルピラゾール、トリメチルシリル−1,2,3−トリアゾール、トリメチルシリルピペリジン、およびトリメチルシリル−4−メチルピペラジンからなる群より選択される[7]に記載のシリル化薬品配送デバイス。
[9]前記入口コンジット端の端部は前記シリル化剤の表面の上方に位置し、前記出口コンジットの端部は前記シリル化剤の前記表面の下方に位置している[6]に記載のシリル化薬品配送デバイス。
[10]前記入口コンジット端の端部は前記シリル化剤の表面の下方に位置し、前記出口コンジットの端部は前記シリル化剤の前記表面の上方に位置している[6]に記載のシリル化薬品配送デバイス。
[11]誘電体膜を修復する方法であって:前記誘電体膜をチャンバに導入する工程と;式R3SiLを有する修復剤をチャンバに導入する工程であって、ここで、各Rが、H、メチル、およびエチルからなる群より独立して選択され;Lは、1,2,3−トリアゾール、ピペリジン、1−メチルピペラジン、ピロリジン、およびピラゾールからなる群より選択される窒素含有環であり;前記窒素含有環中の1つの窒素がSi原子に直接結合している工程と;前記修復剤と前記誘電体膜とを接触させる工程とを含む方法。
[12]前記チャンバへの導入後であって前記修復剤の導入前に、前記誘電体膜を加熱することをさらに含む[11]に記載の方法。
[13]接触工程に続いて好適な期間にわたって前記修復剤と前記絶縁膜とを反応させることをさらに含む[11]に記載の方法。
[14]前記修復剤反応工程に続いて、前記誘電体膜をアニールすることをさらに含む[13]に記載の方法。
[15]前記修復剤は、トリメチルシリルピロリジン、トリメチルシリルピラゾール、トリメチルシリル−1,2,3−トリアゾール、トリメチルシリルピペリジン、およびトリメチルシリル−4−メチルピペラジンからなる群より選択される請求項11に記載の方法。
[16]前記修復剤は金属汚染物の全濃度が10ppmw未満である[15]に記載の方法。