(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705774
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】植物栽培装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20060101AFI20150402BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20150402BHJP
A01G 9/02 20060101ALI20150402BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20150402BHJP
A01G 27/02 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
A01G7/00 601Z
A01G9/02 E
A01G27/00 503C
A01G27/00 502L
A01G27/00 502V
A01G27/00 504C
A01G27/02 B
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-59017(P2012-59017)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-192454(P2013-192454A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2012年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】江木 和泉
(72)【発明者】
【氏名】小畠 正至
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
実開平3−22646(JP,U)
【文献】
特開平1−132317(JP,A)
【文献】
特開2004−329060(JP,A)
【文献】
実開昭60−168363(JP,U)
【文献】
特開2006−174813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00 − 31/02
A01G 9/00 − 9/02
A01G 7/00
A01G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地層を形成し、培地層から水分を滴下させる開口が形成された内槽と、
前記内槽の前記開口から滴下した培養液を貯留する外槽と、
前記外槽から培養液をポンプの動力で汲み上げて前記培地層の上方まで延びる散水管から前記培地層に散水する散水部と、
前記培地層を貫通すると共に、先端が前記外槽内に開口するように設けられ、透水性材料で形成された送風管と、
前記送風管に送風する送風機と、
を備え、
前記送風管の前記先端の開口部から前記外槽内に風が吹き出す植物栽培装置。
【請求項2】
太陽光により発電し、発生した電力が常時、前記散水部の前記ポンプに供給されるように設けられた太陽光発電装置を備える請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記散水部の前記散水管から分岐し、前記ポンプの動力で前記培養液層から汲み上げられた培養液を前記外槽内の培養液に滴下する分岐管を備える請求項1又は請求項2に記載の植物栽培容器。
【請求項4】
前記分岐管に設けられた開閉弁と、
前記開閉弁の開閉を制御する弁制御部と、
を備える請求項3に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記太陽光発電装置で発生した電力を蓄電する蓄電部と、
前記蓄電部から前記送風機への電力供給を制御する電源制御部と、
を備える請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記内槽の底部は、水平面に対して傾斜しており、前記底部の低位側に排水口が設けられている請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
水分が滴下するように培地層を形成し、前記培地層から滴下した培養液が貯留されるように外槽内に培養液層を形成し、前記培養液層から培養液を汲み上げて前記培地層に散水する植物栽培方法であって、
透水性材料で形成された送風管を、前記培地層を貫通すると共に、先端が前記外槽内に開口するように設け、前記送風管に送風し、前記送風管の先端の開口部から吹き出す風により前記培養液層の培養液を冷却する植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上方開口の栽培容器内を、透水性の培地層と、その下方の空気層と、その下方の培液層との3層構造とし、潅水ポンプによって汲み上げた培養液を潅水パイプから放散して、培地層に培養液を再循環潅水する植物栽培装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の植物栽培装置では、潅水ポンプをタイマーによって間欠作動させることによって、培地層を植物の栽培に適する湿度・乾度に調節して培地層に植えた植物を育成栽培する。
【0003】
また、栽培容器内の培地層に噴霧する培養液を冷却器で冷却する植物栽培装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。さらには、ビニールハウス用の植物栽培装置として、培土中に埋設された空気供給管に空気供給装置から冷風を送って培土を冷却するものが知られている(例えば、特許文献3参照)。これらの植物栽培装置では、植物を生育に適した温度に維持するために、培養液や培土を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−346459号公報
【特許文献2】特開平8−70719号公報
【特許文献3】特開平6−197645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の植物栽培容器において、高温環境下で植物を生育に適した温度に維持するためには、培土や培養液を冷却する冷却器や空気供給装置に高い冷却能力が要求され、設備が大掛かりになったり、消費電力が増大したりする。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、植物栽培容器内を効率よく冷却できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る植物栽培装置は、培地層を形成し、培地層から水分を滴下させる開口が形成された内槽と、前記内槽の前記開口から滴下した培養液を貯留する外槽と、前記外槽から培養液をポンプの動力で汲み上げて前記培地層の上方まで延びる散水管から前記培地層に散水する散水部と、前記培地層を貫通する
と共に、先端が前記外槽内に開口するように設けられ、透水性材料で形成された送風管と、前記送風管に送風する送風機とを備え、前記送風管から前記外槽内に風が吹き出す。
【0008】
前記植物栽培装置は、太陽光により発電し、発生した電力が常時、前記散水部の前記ポンプに供給されるように設けられた太陽光発電装置を備えてもよい。
【0009】
前記植物栽培装置は、前記散水部の前記散水管から分岐し、前記ポンプの動力で前記外槽から汲み上げられた培養液を前記外槽内の培養液に滴下する分岐管を備えてもよい。
【0010】
前記植物栽培装置は、前記分岐管に設けられた開閉弁と、前記開閉弁の開閉を制御する弁制御部と、を備えてもよい。
【0011】
前記植物栽培装置は、前記太陽光発電装置で発生した電力を蓄電する蓄電部と、前記蓄電部から前記送風機への電力供給を制御する電源制御部と、を備えてもよい。
【0012】
前記植物栽培装置において、前記内槽の底部は、水平面に対して傾斜してもよく、前記底部の低位側に排水口が設けられてもよい。
【0013】
また、本発明に係る植物栽培方法は、水分が滴下するように培地層を形成し、前記培地層から滴下した培養液が貯留されるように
外槽内に培養液層を形成し、前記培養液層から培養液を汲み上げて前記培地層に散水する植物栽培方法であって、透水性材料で形成された送風管を、前記培地層を貫通する
と共に、先端が前記外槽内に開口するように設け、前記送風管に送風し、前記送風管
の先端の開口部から吹き出す風により前記培養液層の培養液を冷却する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、植物栽培容器内を効率よく冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る植物栽培装置を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る植物栽培装置を示す立断面図である。
【
図3】一実施形態に係る植物栽培装置の制御系のブロック図である。
【
図4】他の実施形態に係る植物栽培装置を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、一実施形態に係る植物栽培装置10を示す斜視図であり、
図2は、該植物栽培装置10を示す立断面図である。これらの図に示すように、植物栽培装置10は、ヘデラ類(常緑のツタ)等の壁面緑化に用いられる植物1を水耕栽培するための装置である。
【0017】
植物栽培装置10は、植物1を水耕栽培するプランター20と、プランター20を収容し培養液を貯留する栽培槽30と、培養液をプランター20に散水すると共に循環させる散水機構40と、培養液及び培土を冷却する冷却機構50と、電源部60とを備えている。
【0018】
プランター20は、上方が開口した直方体形状の箱体であり、培土2を収容して透水性を有する培地層11を形成する。このプランター20の底面には開口22が設けられており、この開口22から培養液が滴下する。また、プランター20の長手方向一端側及び他端側の側面には、後述の送風パイプ52を通すための開口24、26が設けられている。また、プランター20の幅方向両側上部には、プランター20を栽培槽30の上部に掛けるためのフック部28が設けられている。さらに、プランター20の長手方向他端側の側面の下部には排水口29が設けられている。
【0019】
ここで、プランター20は、長手方向一端側から他端側にかけて下側に傾斜しており、開口22が塞がれた場合でも、長手方向他端側の側面の下部に設けられた排水口29から培地の水分が抜かれるようになっている。
【0020】
栽培槽30は、上方が開口した直方体形状の箱体であり、プランター20のフック部28が上部に掛けられた状態でプランター20を収容する。この栽培槽30の底部には、プランター20の開口22から滴下した培養液3を貯留する培養液層12が形成される。また、栽培槽30の長手方向一端側の側面には、送風パイプ52を通すための開口32が設けられている。また、栽培槽30の長手方向一端側の上面には、開閉可能な蓋34が設けられている。さらに、栽培槽30の長手方向他端側の側面における下部には、排水栓36が着脱可能に設けられている。
【0021】
散水機構40は、栽培槽層30の底部に設けられたポンプ42と、ポンプ42に接続された散水パイプ44とを備えている。散水パイプ44は、L字状に形成されており、ポンプ42から鉛直上方に延びる鉛直部44Aと、鉛直部44Aの上端からプランター20の長手方向に培地層11の上側で水平に延びる水平部44Bとを備えている。この水平部44Bにノズル44Cが設けられており、ポンプ42が作動されると、栽培槽30の底部に貯留された培養液が汲み上げられてノズル44Cから培地層11に散水される。
【0022】
冷却機構50は、培地層11に挿通された送風パイプ52と、送風パイプ52に空気を供給する送風機54とを備えている。送風パイプ52の一端は栽培槽30の開口32に取り付けられ、送風パイプ52の他端及び中間部はプランター20の開口24、26に取り付けられている。この送風パイプ52は、透水性を有することにより培地層11の水分は透過させるが、培土2や植物1の根は入り込まない材料で形成されている。
【0023】
図2及び
図3に示すように、電源部60は、栽培槽30の蓋34の上面に設けられた太陽電池パネル62と、太陽電池パネル62で発生した電力を蓄電する蓄電池64と、電力供給を制御する電源制御部66とを備えている。太陽電池パネル62は、蓄電池64とポンプ42とに接続されており、太陽電池パネル62で発生した電力は、常時、ポンプ42に供給される。即ち、太陽光が太陽電池パネル62に入射している間は、常時、ポンプ42が駆動される。また、太陽電池パネル62で発生したポンプ42の駆動電力を超える電力については、電源制御部66が蓄電池64に蓄電させたり、送風機54に供給させたりする。ここで、電源制御部66は、外気温が所定温度以上になった場合や、所定時間おき等の所定条件で送風機54を作動させる。
【0024】
図2に示すように、栽培槽30の外側に設置された送風機54から送られた風が、栽培槽30の培地層11内に設けた送風パイプ52を通過する際、培地層11から送風パイプ52内にしみ出した水及び培養液との間で熱交換が行われて気化熱が発生することにより培地層11の温度が低下する。また、送風機54から送られて送風パイプ52から吹き出した風が、栽培槽30内で対流するため、栽培槽30の底部に貯留した培養液の温度が低下する。
【0025】
即ち、本実施形態に係る植物栽培装置10では、送風機54で培地層11と栽培槽30の底部に貯留している培養液との双方を冷却する。これにより、植物栽培装置10内を効率よく冷却できるため、設備コストや消費電力を抑えたうえで、高温環境下においても植物を生育に適した温度に維持することができる。
【0026】
また、日中の太陽電池パネル62が発電している時間帯は、植物1が水分や栄養分を必要とする時間帯であるところ、太陽電池パネル62で発生した電力が常時ポンプ42に供給されるように構成されていることにより、植物1が水分や栄養分を必要とする時間帯では、ポンプ42が自動的に作動される。これにより、ポンプ42のON/OFF制御を要することなく、必要な時間に培養液3を培地層11に供給することができる。
【0027】
図4は、他の実施形態に係る植物栽培装置100を示す立断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る植物栽培装置100では、散水パイプ44から分岐する分岐管46と、分岐管46に配された開閉弁48とが設けられている。分岐管46は、栽培槽30の培養液3の上方に配されており、開閉弁48が開いた状態でポンプ42が作動されると、分岐管46から栽培槽30内の培養液3に培養液が滴下してバブリング作用が発生する。これにより、培養液3の温度に関わらず、培養液3中に空気を溶け込ませることができる。なお、太陽電池パネル62で発生した電力がポンプ42の駆動電力を超え、さらに、外気温が所定温度以上になる等の所定条件が成立した場合に、電源制御部66(
図3参照)が開閉弁48を開き、バブリング作用を発生させる。
【0028】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0029】
例えば、上記実施形態では、太陽電池パネル62をポンプ42や送風機54の電源としたが、商用電源等の他の電源に代えてもよい。また、太陽電池パネル62で発生した電力をポンプ42に常時供給することは必須ではなく、蓄電池64に蓄電してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 植物、2 培土、3 培養液、10 植物栽培装置、11 培地層、20 プランター(内槽)、22、24、26 開口、28 フック部、29 排水口、30 栽培槽(外槽)、32 開口、34 蓋、36 排水栓、40 散水機構(散水部)、42 ポンプ、44 散水パイプ(散水管)、44A 鉛直部、44B 水平部、44C ノズル、46 分岐管、48 開閉弁、50 冷却機構、52 送風パイプ(送風管)、54 送風機、60 電源部、62 太陽電池パネル(太陽光発電装置)、64 蓄電池(蓄電部)、66 電源制御部(弁制御部)、100 植物栽培装置