特許第5705809号(P5705809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧 ▶ タカタ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705809
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】係止構造、装着部材及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/215 20110101AFI20150402BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   B60R21/215
   B60R21/203
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-218159(P2012-218159)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-69731(P2014-69731A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2013年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306009581
【氏名又は名称】タカタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川邊 卓充
(72)【発明者】
【氏名】藤原 周平
(72)【発明者】
【氏名】小野原 啓介
(72)【発明者】
【氏名】長島 講平
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−011764(JP,A)
【文献】 特開平10−035389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの中央部に配置されるカバー部と、
前記カバー部の表側に装着される装着部材の隅部の裏側から突出する鉤部とを備え、
前記鉤部は、前記カバー部に形成された穴に係止される、係止構造であって、
前記鉤部は、前記装着部材の輪郭と該輪郭に沿う開口部とに挟まれた幅狭部に設けられ、
前記鉤部は、前記装着部材の第1の隅部に設けられた第1の鉤部と、前記装着部材の第2の隅部に設けられた第2の鉤部とを有し、
前記開口部は、前記装着部材に形成され、前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する貫通穴であり、
前記第1の隅部は、前記開口部の延在方向の一端側における前記幅狭部に位置し、前記第2の隅部は、前記開口部の延在方向の他端側における前記幅狭部に位置し、
前記第1の鉤部と前記第2の鉤部の各々の先端部は、前記開口部が前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する方向に直交するように曲がった引っ掛け形状を有する、係止構造。
【請求項2】
前記鉤部及び前記開口部は、前記装着部材の裏側からみると、前記装着部材の縦方向の中心線に対して両側に形成される、
請求項1に記載の係止構造。
【請求項3】
前記中心線に対して両側に形成された前記鉤部は、前記中心線に対して線対称に配置された、請求項2に記載の係止構造。
【請求項4】
前記引っ掛け形状は、前記中心線に対して直交する方向に平行になるように曲がった、請求項2又は3に記載の係止構造。
【請求項5】
前記装着部材の裏側から突出する係止部に形成された締結穴に挿入される締結部材を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の係止構造。
【請求項6】
前記引っ掛け形状は、前記締結部材の挿入方向に平行になるように曲がった、請求項5に記載の係止構造。
【請求項7】
前記カバー部は、エアバッグを覆う、請求項1から6のいずれか一項に記載の係止構造。
【請求項8】
ステアリングホイールの中央部に配置されるカバー部の表側に装着される装着部材であって、
前記カバー部に形成された穴に係止可能な鉤部が裏側から突出する隅部を有し、
前記鉤部は、前記装着部材の輪郭と該輪郭に沿う開口部とに挟まれた幅狭部に設けられ、
前記鉤部は、前記装着部材の第1の隅部に設けられた第1の鉤部と、前記装着部材の第2の隅部に設けられた第2の鉤部とを有し、
前記開口部は、前記装着部材に形成され、前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する貫通穴であり、
前記第1の隅部は、前記開口部の延在方向の一端側における前記幅狭部に位置し、前記第2の隅部は、前記開口部の延在方向の他端側における前記幅狭部に位置し、
前記第1の鉤部と前記第2の鉤部の各々の先端部は、前記開口部が前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する方向に直交するように曲がった引っ掛け形状を有する、装着部材。
【請求項9】
締結部材が挿入可能な締結穴が形成されるように前記装着部材の裏側から突出する係止部を有する、請求項8に記載の装着部材。
【請求項10】
エアバッグと、
前記エアバッグを覆うカバー部と、
前記カバー部の表側に装着される装着部材とを備え、
前記装着部材の隅部の裏側から突出する鉤部が、前記カバー部に形成された穴に係止される、エアバッグ装置であって、
前記鉤部は、前記装着部材の輪郭と該輪郭に沿う開口部とに挟まれた幅狭部に設けられ、
前記鉤部は、前記装着部材の第1の隅部に設けられた第1の鉤部と、前記装着部材の第2の隅部に設けられた第2の鉤部とを有し、
前記開口部は、前記装着部材に形成され、前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する貫通穴であり、
前記第1の隅部は、前記開口部の延在方向の一端側における前記幅狭部に位置し、前記第2の隅部は、前記開口部の延在方向の他端側における前記幅狭部に位置し、
前記第1の鉤部と前記第2の鉤部の各々の先端部は、前記開口部が前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する方向に直交するように曲がった引っ掛け形状を有する、エアバッグ装置。
【請求項11】
前記装着部材の裏側から突出する係止部に形成された締結穴に挿入される締結部材を備える、請求項10に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部の表側に装着される装着部材を係止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のステアリング操作を行うためのステアリングホイールには、運転席用のエアバッグ装置が取り付けられ、エアバッグ装置のカバー部の表側には、自動車会社のエンブレム等の装着部材が装着されることがある。エンブレムをカバー部に係止することに関する先行技術として、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−11833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンブレム等の装着部材を、エアバッグを覆うカバー部に係止する手段によっては、装着部材の隅部とカバー部との間に生ずる隙間が大きくなりやすい。このような隙間は、見栄えや埃のたまりなどの理由により、できるだけ小さいほうが好ましい。
【0005】
本発明は、カバー部と、カバー部の表側に装着される装着部材の隅部との間に生ずる隙間が大きくなることを抑えることができる、係止構造、装着部材及びエアバッグ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、
ステアリングホイールの中央部に配置されるカバー部と、
前記カバー部の表側に装着される装着部材の隅部の裏側から突出する鉤部とを備え、
前記鉤部は、前記カバー部に形成された穴に係止される、係止構造であって、
前記鉤部は、前記装着部材の輪郭と該輪郭に沿う開口部とに挟まれた幅狭部に設けられ、
前記鉤部は、前記装着部材の第1の隅部に設けられた第1の鉤部と、前記装着部材の第2の隅部に設けられた第2の鉤部とを有し、
前記開口部は、前記装着部材に形成され、前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する貫通穴であり、
前記第1の隅部は、前記開口部の延在方向の一端側における前記幅狭部に位置し、前記第2の隅部は、前記開口部の延在方向の他端側における前記幅狭部に位置し、
前記第1の鉤部と前記第2の鉤部の各々の先端部は、前記開口部が前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する方向に直交するように曲がった引っ掛け形状を有する、係止構造を提供するものである。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明は、
ステアリングホイールの中央部に配置されるカバー部の表側に装着される装着部材であって、
前記カバー部に形成された穴に係止可能な鉤部が裏側から突出する隅部を有し、
前記鉤部は、前記装着部材の輪郭と該輪郭に沿う開口部とに挟まれた幅狭部に設けられ、
前記鉤部は、前記装着部材の第1の隅部に設けられた第1の鉤部と、前記装着部材の第2の隅部に設けられた第2の鉤部とを有し、
前記開口部は、前記装着部材に形成され、前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する貫通穴であり、
前記第1の隅部は、前記開口部の延在方向の一端側における前記幅狭部に位置し、前記第2の隅部は、前記開口部の延在方向の他端側における前記幅狭部に位置し、
前記第1の鉤部と前記第2の鉤部の各々の先端部は、前記開口部が前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する方向に直交するように曲がった引っ掛け形状を有する、装着部材を提供するものである。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明は、
エアバッグと、
前記エアバッグを覆うカバー部と、
前記カバー部の表側に装着される装着部材とを備え、
前記装着部材の隅部の裏側から突出する鉤部が、前記カバー部に形成された穴に係止される、エアバッグ装置であって、
前記鉤部は、前記装着部材の輪郭と該輪郭に沿う開口部とに挟まれた幅狭部に設けられ、
前記鉤部は、前記装着部材の第1の隅部に設けられた第1の鉤部と、前記装着部材の第2の隅部に設けられた第2の鉤部とを有し、
前記開口部は、前記装着部材に形成され、前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する貫通穴であり、
前記第1の隅部は、前記開口部の延在方向の一端側における前記幅狭部に位置し、前記第2の隅部は、前記開口部の延在方向の他端側における前記幅狭部に位置し、
前記第1の鉤部と前記第2の鉤部の各々の先端部は、前記開口部が前記第1の隅部から前記第2の隅部にかけて延在する方向に直交するように曲がった引っ掛け形状を有する、エアバッグ装置を提供するものである。
【0009】
また、前記鉤部は、前記装着部材の輪郭と該輪郭に沿う開口部とに挟まれた幅狭部に設けられると好適である。
【0010】
また、前記鉤部は、前記装着部材を対向して見たときに、前記装着部材に対して外向きに曲がる先端部を有すると好適である。
【発明の効果】
【0011】
ステアリングホイールの中央部に配置されるカバー部と、
前記カバー部の表側に装着される装着部材の隅部の裏側から突出する鉤部とを備え、
前記鉤部は、前記カバー部に形成された穴に係止される、係止構造によれば、
前記カバー部と前記隅部との間に生ずる隙間が大きくなることを抑えることができる。また、例えば、前記カバー部がたとえ熱等によって変形しても、前記隅部が前記カバー部に対して浮き上がることを抑えることができる。また、例えば、そのような隙間が大きくなることを抑えることができるので、隙間が生ずることによる見栄えの悪化を防止できる。また、例えば、隙間に埃がたまることを抑えることができる。
【0012】
ステアリングホイールの中央部に配置されるカバー部の表側に装着される装着部材であって、
前記カバー部に形成された穴に係止可能な鉤部が裏側から突出する隅部を有する、装着部材によっても、上記と同様の効果が得られる。
【0013】
エアバッグと、
前記エアバッグを覆うカバー部と、
前記カバー部の表側に装着される装着部材とを備え、
前記装着部材の隅部の裏側から突出する鉤部が、前記カバー部に形成された穴に係止される、エアバッグ装置によっても、上記と同様の効果が得られる。
【0014】
また、前記鉤部は、前記装着部材の輪郭と該輪郭に沿う開口部とに挟まれた幅狭部に設けられると好適である。例えば、前記幅狭部は他の幅広部よりも変形しやすい部位のため、前記カバー部と前記幅狭部との間の隙間は大きくなりやすい。しかしながら、前記鉤部は前記幅狭部に設けられるため、例えば、前記カバー部と前記隅部との間に生ずる隙間が前記幅狭部の変形により大きくなることを抑えることができる。
【0015】
また、前記鉤部は、前記装着部材を対向して見たときに、前記装着部材に対して外向きに曲がる先端部を有すると好適である。これにより、例えば、前記鉤部が前記装着部材に対して内向きに曲がる場合よりも、前記装着部材の外周縁部を前記カバー部に強固に密着させることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】エアバッグ装置を示した図である。
図1B】エアバッグ装置のカバー部に形成された、装着部材の取付部を拡大して示した図である。
図2A】装着部材を裏側からみた斜視図である。
図2B】装着部材を裏側からみた底面図である。
図2C図2Bに示す装着部材を右側方からみた側面図である。
図3A】係止構造の一例を示した図である。
図3B図3Aの一部拡大図である。
図3C図3Aの各断面図である。
図4】締結部材を斜め上方からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
〔エアバッグ装置1の構成〕
図1Aは、本発明の一実施形態であるエアバッグ装置1を示した図である。エアバッグ装置1は、エアバッグ100と、カバー部20と、装着部材30と、締結部材とを備えている(締結部材については、後述の図を用いて説明する)。エアバッグ100は、エアバッグ装置1に構成される不図示のインフレータから供給されるガスによって膨張し、カバー部20を開裂させて、乗員との間で膨張展開する。カバー部20は、折り畳まれて収容されたエアバッグ100を覆った状態で、エアバッグ装置1に構成される不図示の支持部材に固定され、熱可塑性エラストマー等の樹脂材により成形されている。装着部材30は、乗員が視認できるようにカバー部20の表面21側に装着される部品である。装着部材30の具体例として、自動車会社のエンブレム等の装飾部品が挙げられる。装着部材30の図示の形状、大きさ及び模様は、あくまで一例であり、図示の場合に限られない。カバー部20の表面21側の中央部分には、装着部材30が装着される取付部40が形成されている。
【0019】
図1Bは、装着部材30が取り付けられる取付部40を拡大して示した図である。カバー部20の取付部40には、装着部材30に設けられた後述のU字形状係止部32−1〜32−4が挿入される長方形状の取付用穴42−1〜42−4が、カバー部20の表側から裏側に貫通して形成されている。取付用穴42−1〜42−4の周囲には、円形および四角形状の取付用穴44−1〜44−8が、カバー部20の表側から裏側に貫通して形成されている。
【0020】
〔装着部材30の構成〕
図2Aは、装着部材30を裏側からみた斜視図である。図2Bは、装着部材30を裏側からみた底面図である。図2Cは、図2Bに示す装着部材30を右側方からみた側面図である。
【0021】
装着部材30は、ヘアライン加工が施されたアルミニウム合金等の金属材により成形されたものでもよいし、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene Copolymer)等の樹脂材により成形されたものでもよいし、他の材質により成形されたものでもよい。
【0022】
装着部材30のベース30aの裏側から、4つのU字状に形成されたU字形状係止部32−1〜32−4が突出している。ベース30aの裏面の周縁部には、位置決め用ボス34−1,34−2と、カバー部20に係止される係止用鉤部36−1〜36−6とが起立している(図2Cでは図示省略)。装着部材30は、位置決め用ボス34−1,34−2がカバー部20の取付部40の取付用穴44−1,44−2(図1A,1B参照)に挿入されることで、カバー部20の取付部40に対して位置決めされる。また、装着部材30は、6箇所の係止用鉤部36−1〜36−6が取付部40の取付用穴44−3〜44−8(図1A,1B参照)に係止されることで、装着部材30の裏側が取付部40に密着した状態で、保持される。
【0023】
U字形状係止部32−1〜32−4は、装着部材30の裏側に対して門形に突出するように形成され、装着部材30の裏側との間に後述の締結部材が挿入される締結用穴32−1a〜32−4aを形成している。
【0024】
また、図2Bに示されるように、U字形状係止部32−1〜32−4は、装着部材30の裏側からみると、装着部材30の縦方向の中心線Oに対して所定角度α傾斜させた斜め方向に延在形成されている。図2Bの場合、U字形状係止部32−1,32−2は、中心線Oに対して線対称に装着部材30の裏側に配置され、U字形状係止部32−3,32−4は、中心線Oに対して線対称に装着部材30の裏側に配置されている。
【0025】
4つの係止用鉤部36−3〜36−6は、外形が方形状に形成された装着部材30の4つの隅部31a〜31dの裏側から、方形平板状のベース30aの裏面に対して突出するように設けられている。図示の隅部31a〜31dの外側輪郭は、丸みを帯びているが、角張っていてもよい。係止用鉤部36−3,36−4は、左右の係止強度を均等にするため、中心線Oに対して線対称にベース30aに配置されることが好ましい。この点、係止用鉤部36−5,36−6も同様である。
【0026】
係止用鉤部36−3,36−6は、装着部材30を裏側から見たときに、装着部材30の中央部を通る中心線Oに対して一方の片側に形成されたU字形状係止部32−1,32−3の延在方向に対して、中心線Oとは反対側の隅部31a,31dに形成されている。一方、係止用鉤部36−4,36−5は、装着部材30を裏側から見たときに、装着部材30の中央部を通る中心線Oに対してもう一方の片側に形成されたU字形状係止部32−2,32−4の延在方向に対して、中心線Oとは反対側の隅部31b,31cに形成されている。
【0027】
また、図示のように、装着部材30に開口部35a,35bが形成されている場合がある。この場合、係止用鉤部36−3〜36−6は、例えば、装着部材30の輪郭33と、輪郭33に沿うように形成された開口部35a,35bとの間に挟まれた幅狭部37a,37bに位置するように、隅部31a〜31dに設けられている。
【0028】
開口部35a,35bは、デザインやコスト等の理由により、装着部材30に形成される肉抜き部であるが、装着部材30の表裏を貫通する穴でもよいし、貫通しない窪みでもよい。開口部35a,35bは、例えば、装着部材30を裏側から見ると、U字形状係止部32−1〜32−4の両側に位置するようにベース30aに形成されている。開口部35aは、中心線Oに対して一方の側に共に位置する隅部31aから隅部31dにかけて、延在形成され、開口部35bは、中心線Oに対してもう一方の側に共に位置する隅部31bから隅部31cにかけて、延在形成されている。
【0029】
幅狭部37aは、装着部材30を裏側から見たときに、装着部材30の中央部を通る中心線Oに対して一方の側の輪郭33と、その一方の側の輪郭33に沿って延在する開口部35aとの間に形成された側周縁輪郭部である。幅狭部37bは、装着部材30を裏側から見たときに、装着部材30の中央部をとおる中心線Oに対してもう一方の側の輪郭33と、そのもう一方の側の輪郭33に沿って延在する開口部35bとの間に形成された側周縁輪郭部である。
【0030】
また、図2Aに示されるように、4つの係止用鉤部のうちの一つである係止用鉤部36−3は、隅部31aの裏面に対して突出する柱部36aと、その柱部36aの頂部で曲がる先端部36bとを有している。係止用鉤部36−3の先端部36bは、装着部材30を裏側又は表側から対向して見たときに、装着部材30に対して外向きに曲がっていて、係止用鉤部36−3が設けられた隅部31aの位置に対して、その隅部31aの輪郭33側の向きに曲がっている。他の係止用鉤部36−4,36−5,36−6についても同様である。
【0031】
係止用鉤部36−3〜36−6の先端部36bは、図2A図2Bの場合、中心線Oに対して直交する方向(後述の締結部材の挿入方向)に平行になるように、装着部材30の輪郭33に対して外向きの片方向に曲がった引っ掛け形状を有する爪部である。しかしながら、係止用鉤部36−3〜36−6の先端部36bは、中心線Oに平行になるように、装着部材30の輪郭33に対して外向きの片方向に曲がった引っ掛け形状を有する爪部でもよい。また、係止用鉤部36−3〜36−6の先端部36bは、中心線Oに対して直交する方向と中心線Oとの間に挟まれた方向に平行になるように、装着部材30の輪郭33に対して外向きの片方向に曲がった引っ掛け形状を有する爪部でもよい。
【0032】
また、先端部36bは、装着部材30を表側又は裏側から見たときに、隅部31a〜31dにおける輪郭33よりも外側に突き出ていてもよい。
【0033】
〔装着部材30の締結構造〕
図3Aは、本発明に係る係止構造の一実施形態である締結構造11を示した図である。図3Bは、締結構造11の一部拡大図である。図3Cは、締結構造11の各部の断面図である。
【0034】
締結構造11は、カバー部20と、カバー部20の裏面22側に突出する装着部材30のU字形状係止部32−1〜32−4と、装着部材30のU字形状係止部32−1〜32−4をカバー部20に裏面22側で締結する締結部材50とを含んで構成されている。尚、本実施例では、自動車会社のエンブレムである装着部材30をカバー部20の表側に装着する場合を一例として挙げるが、エンブレム以外の装着部材を締結する場合にも本発明が適用できるのは勿論である。
【0035】
また、カバー部20の表側に装着された装着部材30を締結する際は、締結部材50の第1,第2の締結部60,70を装着部材30のU字形状係止部32−1〜32−4の締結用穴32−1a〜32−4aに挿通させる所謂かんぬき構造により、U字形状係止部32−1〜32−4がカバー部20の裏面22側に締結される。
【0036】
〔締結部材50の構成〕
図4は、締結部材50を斜め上方からみた斜視図である。
【0037】
締結部材50は、例えば熱可塑性樹脂などにより成型されており、例えば図4に示されるように、X方向(Xa又はXb方向)に平行に延在する第1,第2の締結部60,70と、第1,第2の締結部60,70の基端部64,74間を結合する結合部80と、第1,第2の締結部60,70が上述のU字形状係止部32−1〜32−4から抜け出ることを防止する抜け防止部90とを有する。
【0038】
締結部材50は、X方向に直線的に延在する2本の締結部60,70の基端部64,74間を結合部80により結合する構成であるので、コ字形状(U字形状)に形成されているが、結合部80の形状を変えることで、コ字状以外の形状としても良い。また、第1,第2の締結部60,70の先端部62,72は、U字形状係止部32−1〜32−4の締結用穴32−1a〜32−4aへの挿入が容易に行えるように頂点部側ほど薄くなるテーパ形状に形成されている。
【0039】
抜け防止部90は、第1,第2の締結部60,70の先端部62,72付近に設けられ、U字形状係止部32−2,32−4の先端部62,72側の側面部32−2b,32−4b(図3Aの左側)に当接する第1の当接部91,93と、第1,第2の締結部60,70の基端部64,74付近に設けられ、U字形状係止部32−1,32−3の基端部64,74側の側面部32−1b,32−3b(図3Aの右側)に当接する第2の当接部92,94とを有する。
【0040】
〔装着部材30とカバー部20との締結方法〕
ここで、上記のように構成された締結構造11の締結部材50を用いて装着部材30をカバー部20に締結させる際の操作手順について説明する。
【0041】
(手順1)図1A,1B,2A〜2Cに示されるように、カバー部20の表側に形成された取付部40に装着部材30を取り付ける。その際、装着部材30のU字形状係止部32−1〜32−4を取付部40の取付用穴42−1〜42−4に表側から挿入して裏側に突出させる。また、装着部材30の位置決め用ボス34−1,34−2及び係止用鉤部36−1〜36−8が取付部40の取付用穴44−1〜44−8に挿入されてカバー部20に係止される(第1の締結操作)。
【0042】
位置決め用ボス34−1,34−2が取付用穴44−1,44−2に挿入されることによって、装着部材30は、カバー部20の表側への装着方向に直角な面(取付部40の取付面に平行な面)内において、カバー部20に対する上下左右の面内方向の位置を固定できる。係止用鉤部36−1〜36−8が取付用穴44−3〜44−8に挿入されることによって、装着部材30は、カバー部20の表側への装着方向(取付部40の取付面の法線方向)において、カバー部20に対する位置を固定できる。
【0043】
係止用鉤部36−3−36−6の柱部36aは、図3A〜3Cに示されるように、取付用穴44−5〜44−8をカバー部20の表面21側から裏面22側に貫通し、先端部36bは裏面22に引っ掛けられて固定される。
【0044】
(手順2)図3Aに示されるように、カバー部20を裏面からみた状態において、締結部材50を第1の当接部91,93が上面を向くようにすると共に、結合部80が右側に位置する向きとする。この状態の締結部材50をXa方向にスライド操作することで、第1,第2の締結部60,70の先端部62,72を右側方からカバー部20の裏側に突出するU字形状係止部32−1,32−3の締結用穴32−1a,32−3aに挿入させる。
【0045】
(手順3)さらに、締結部材50をXa方向にスライドさせて第1,第2の締結部60,70の先端部62,72を左側のU字形状係止部32−2,32−4の締結用穴32−2a,32−4aに右側方から挿入する。この挿入過程で締結部材50の第1の当接部91,93は、U字形状係止部32−2,32−4の締結用穴32−2a,32−4aの内周面に摺接しながら水平方向に近づくように撓む。そして、第1の当接部91,93は、端部がU字形状係止部32−2,32−4の締結用穴32−2a,32−4aを通過すると、端部が元の傾斜状態の高さに復帰してU字形状係止部32−2,32−4の左側の側面部32−2b,32−4bに当接する。このとき、締結部材50の第2の当接部92,94の端面が、図3Aの右側のU字形状係止部32−1,32−3の右側の側面部32−1b,32−3bに当接する(第2の締結操作)。
【0046】
これにより、締結部材50は、装着部材30のU字形状係止部32−1〜32−4がカバー部20から脱落しないように4箇所のかんぬき構造によって強固に締結することができると共に、装着部材30の裏面をカバー部20の取付部40に対して密着させた安定状態に保持することができる。
【0047】
さらに、締結部材50は、U字形状係止部32−2,32−4に対して第1の当接部91,93のXb方向の移動が規制され、同時にU字形状係止部32−1,32−3に対して第2の当接部92,94のXa方向の移動が規制される。よって、締結部材50は、装着部材30のU字形状係止部32−1〜32−4をカバー部20に対して強固に締結することができると共に、例え振動や衝撃が加えられてもU字形状係止部32−1〜32−4から引き抜かれることを阻止できる。また、締結部材50の締結操作としては、Xa方向にスライドさせるだけなので、組み立て工程における作業性が改善されて生産性を高めることも可能になる。
【0048】
また、締結部材50を外す際は、第1の当接部91,93がU字形状係止部32−1〜32−4をXb方向に通過できるように第1の当接部91,93を押し下げると共に、結合部80をXb方向に引き抜けば良い。従って、装着部材30をカバー部20から分離させる際も特殊な工具などを使わずに比較的容易に締結部材50を外してカバー部20に対する装着部材30の締結を解除することが可能である。
【0049】
また、係止用鉤部36−3〜36−6がそれぞれ対応する取付用穴44−5〜44−8に挿入されて係止される。これにより、カバー部20の表面21と、装着部材30の隅部31a〜31dとの間に生ずる隙間が大きくなることを抑えることができる。また、カバー部20がたとえ熱等によって変形しても、装着部材30の四隅(隅部31a〜31d)がカバー部20の乗員側の表面21に対して浮き上がることを抑えることができる(図1A図3A〜3C参照)。
【0050】
また、開口部35a,36bが装着部材30の輪郭33に沿って形成されることによって生じた幅狭部37a,37bは、肉厚が薄いことにより変形しやすい。その結果、カバー部20の表面21と幅狭部37a,37bとの間の隙間は大きくなりやすい。しかしながら、本実施形態では、係止用鉤部36−1が幅狭部37aにおける隅部31aと31dとの間の部分に設けられているため、当該部分における上記隙間が大きくなることを抑えることができる。係止用鉤部36−2についても同様である。また、本実施形態では、係止用鉤部36−3が幅狭部37aにおける隅部31aに設けられているため、隅部31aにおける上記隙間が大きくなることを抑えることができる。係止用鉤部36−4〜36−6についても同様である。
【0051】
また、係止用鉤部36−3〜36−6の先端部36bが装着部材30に対して外向きに曲がっていることによって、先端部36bの向きが、図3Cのように中央部が外周縁部に対して突出するように湾曲する装着部材30の湾曲形状に沿う方向にほぼ一致する。これにより、カバー部20の表面21と隅部31a〜31dとの間の隙間が大きくなることをより効果的に抑えることができる。
【0052】
以上、係止構造、装着部材及びエアバッグ装置を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。他の実施例の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0053】
例えば、上記実施例では、カバー部20にエンブレムを締結する場合を例に挙げて説明したが、エンブレム以外のものを締結することも可能であるのは勿論である。
【0054】
また、上述のエアバッグ装置1及びカバー部20は、ステアリングホイール200(図1参照)の中央部に配置されているが、エアバッグ装置及びカバー部の形状及び取付位置は、上述の実施形態に限られない。例えば、インストルメントパネルに内蔵される助手席用のエアバッグ装置、前席のシートバックに内蔵される後席用のエアバッグ装置、側面衝突に備えるため車体の側面に内蔵されるエアバッグ装置において、それらのエアバッグ装置のカバー部に装着部材が装着される場合にも、本発明は適用できる。
【0055】
また、上述のカバー部20は、エアバッグ100を覆うものであるが、本発明に係るカバー部は、エアバッグを覆うものに限られず、ホーンスイッチやステアリングシャフト等の他の部材を覆うものでもよい。例えば運転席用のエアバッグが無い車両仕様の場合、図1に例示したカバー部20は、ステアリングホイール200の環状のリム部201の径方向の内側中央部に配置されるものであればよく、ホーンスイッチ等の部材を覆うものであればよい。
【0056】
リム部201は、運転者に把持される部位であり、図1には、環状のリム部201の下側部分のみが示され、それ以外の部分の図示は省略されている。カバー部20は、例えば、リム部201からリム部201の径方向の内側中央部に向けて延伸するスポーク部に取り付けられてもよいし、ステアリングホイール200のハブ部(ステアリングホイール200とステアリングシャフトとの連結部分)に取り付けられてもよい。
【0057】
また、上述の締結部材50は、車体に対して横方向に挿通するものであるが、締結部材は車体に対して縦方向や斜め方向などの任意の方向に挿通するものでもよい。
【0058】
また、装着部材30は、方形以外の形状でもよく、隅部を有する他の多角形形状でもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 エアバッグ装置
11 締結構造
20 カバー部
21 表面
22 裏面
30 装着部材
30a ベース
31a,31b,31c,31d 隅部
32−1〜32−4 U字形状係止部
32−1a〜32−4a 締結用穴
32−1b〜32−4b 側面部
33 輪郭
34−1,34−2 位置決め用ボス
35a,35b 開口部
36−1〜36−6 係止用鉤部
36a 柱部
36b 先端部
37a,37b 幅狭部
40 取付部
42−1〜42−4 取付用穴
44−1〜44−8 取付用穴
50 締結部材
60 第1の締結部
62,72 先端部
64,74 基端部
66,68,76,78 側面
70 第2の締結部
80 結合部
90 抜け防止部
91,93 第1の当接部
92,94 第2の当接部
100 エアバッグ
200 ステアリングホイール
201 リム部
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4