【実施例5】
【0138】
対照
特許文献36に教示されるような亜鉛−硫黄硬化を使用した、有機溶媒中のアクリロニトリルおよびブタジエンの水素化コポリマーの同明細書に従い硬化されたコーティングを使用した対照実施例を、過酸化物硬化天然ゴム基材に適用した。
【0139】
【表6】
【0140】
HNBR以外の成分をミル混合し、次いでMIBK溶媒に10%溶液となるまで溶解させた。固体ゴムを2本ロールミルで混合した後、HNBRを溶媒に溶解させることにより、コーティング組成物を調製した。幅1インチ(2.54cm)の硫黄硬化天然ゴムシート試料を、コーティング組成物の塗布前にイソプロピルアルコールで洗浄した。コーティング組成物は、天然ゴム基材試料の表面に塗布した。コーティング厚は乾燥時約1ミル(0.0025cm)であった。2本のコーティングされた未硬化ストリップを、コーティングされた側が互いに面するようにして合わせた。コーティングを室温で24時間乾燥させた。試料のいくつかは、オーブン内で307°F(152.8℃)で十五(15)分間ベーキングしてコーティングを硬化させた。これにより、生成物として、その上に約2ミル(0.0051cm)厚のコーティングを有し互いに接着されたコーティングされた天然ゴムの伸長性シートが得られた。接着された試料を引き剥がし、それらを引き離すために要した力を記録した。
未硬化コーティング(乾燥しているがベーキングされていない) 0.6ポンド(272.2g)剥離強度
硬化コーティング(307°F(152.8℃)で15分間のベーキング後) 1.9ポンド(861.8g)剥離強度
【0141】
これらの接着性レベルは許容されないほど低く、屈曲に曝されるエラストマー基材上のコーティングには適していない。
【0142】
したがって、一実施形態において、第1のコーティングは、ゴム状の高伸長性および耐候性コーティング組成物としての周囲温度硬化性コーティングおよびそれによりコーティングされた物品であり、様々な目的の柔軟なエラストマー性基材に塗布することができる。組成物中に使用される好ましいフィルム形成ポリマーは、オゾン、油および溶媒に対する耐性を提供し、その他の実施形態は、基材ゴムの表面的な外観を改善する目的で塗布することができる。第1のコーティング組成物は、長期曲げ疲労に対する耐性を有し、柔軟なエラストマー性基材への優れた接着性を提供し、硬化した状態で非支持フィルムとして少なくとも100%の伸長を示す。
【0143】
さらに、使用した硬化後のフィルム形成ポリマーは、少なくとも90%の光透過率または透明度を有し、硬化状態で約90%以下の不飽和を含有し、また熱伝導性金属粒子フィラーからの輻射熱反射性(放射性)および熱伝達特性により大量の熱を偏向および放散することができるマトリックスを提供する一方で、コーティングは恒久的に接着し、応力または環境による亀裂もしくは脆化を被ることがない。
【0144】
別の第1のコーティング組成物を以下で説明する。
【0145】
官能化フィルム形成物質および官能化方法
【0146】
疎水性とは、フィルム形成ポリマーの少なくとも80%が水に不溶のモノマーから得られることを意味する。フィルム形成物質には、ポリオキシアルキレンコポリマーは含まれない。
【0147】
本明細書において使用される官能化エラストマーフィルム形成物質は、1つまたは複数の反応経路で硬化成分により硬化する。それぞれ同じまたは異なる種類の官能基をポリマー上に有する2種の異なる官能化フィルム形成物質のブレンドが好適である。例えば、カルボキシル化水素化ニトリルブタジエンとエチレンアクリルポリマーのブレンドが有効である。フィルム形成ポリマーと硬化成分との間で塩形成反応および縮合反応が生じ得る。硬化成分とフィルム形成ポリマー上の官能基との間の相互作用には、求電子試薬−求核試薬相互作用が含まれる。フィルム形成物質上の官能基は、ポリマーと硬化成分のそれ自体への硬化およびコーティングされた基材への硬化に加えて、硬化成分とフィルム形成ポリマーとの間の硬化経路を提供する。フィルム形成ポリマー上の官能基は、例えば反応基を保有するコモノマーの共重合により、また重合後のポリマー上への官能基の組込みによりフィルム形成ポリマーを修飾する様々な方法において提供することができる。
【0148】
「官能化」という用語は、(1)求電子試薬、求核試薬、特に活性水素保有部分が、共重合されるエチレン性不飽和コモノマーの一部であること、または(2)求電子試薬、求核試薬、および特に活性水素保有化合物が、グラフト結合化合物、または重合の後もしくは重合後にフィルム形成物質ベースポリマーにグラフト結合されるエチレン性不飽和コモノマーの一部であること、(3)活性水素基と反応性の基が、コモノマーもしくはグラフト結合化合物の一部であり、重合後にフィルム形成ベースポリマーにグラフト結合されることを意味する。コモノマーまたはグラフトされた化合物は、フィルム形成ポリマー構造にイオン結合および/または共有結合し、周囲温度でそれと相互反応性の硬化成分と反応することができるペンダント基を提供する。
【0149】
官能基保有化合物の好適な官能基前駆体への変換または好適な前駆体ラジカルの直接導入等による、活性水素保有官能基またはそれと相互反応性の基を重合非官能性エラストマー中に導入する従来の手法は、エラストマーが溶液または溶融状態である時に、アリル基水素が求エン体に移動し、続いて2つの不飽和末端の間のカップリングが生じる「エン」反応により、または炭素間二重結合にわたるフリーラジカル付加反応により、達成することができる。しかしながら、ポリマーが溶融状態である場合、所望の反応を達成して変換される官能基を組み込む、または好適な前駆体ラジカルを直接組み込むために、押出機等の高い機械的せん断を与えることができる手段が使用される。好適な前駆体に変換される官能基または直接組み込まれた前駆体ラジカルが、メタレーションおよびそれに続く好適な求電子試薬との反応等の技術により組み込まれる場合、一方で、組込みは、好ましくは溶液状態のポリマーで達成される。
【0150】
官能基または官能基前駆体の組込みに利用可能ないくつかの方法のうち、エン反応等のエラストマーポリマーの最小限のカップリングで各組込み部位に単一の官能基または官能基前駆体単位を組み込む傾向がある方法、ならびにメタレーションおよびそれに続く求電子試薬との反応を含む方法が好ましい。好適な前駆体に変換される官能基がエラストマーに組み込まれる場合、一般に、官能基の前駆体ラジカルへの変換もまた、溶液状態のポリマーで達成される。一般に、そのような溶液状態のエラストマーポリマーの調製に有用であることが知られている溶媒のいずれも、これらの反応または変換を達成するのに使用することができる。
【0151】
本発明における使用のための求核性または求電子性架橋硬化部位を有する非官能性付加ポリマーの修飾を提供する様々な重合後官能化技術が知られている。ヒドロキシル基は、本明細書において使用される硬化成分との架橋反応を達成するのに有用な官能基である。特許文献37は、ポリイソブチレンまたはエチレン−プロピレンゴム等の高分子量飽和炭化水素ポリマーをオゾン化し、続いて、例えば水素化ジイソブチルアルミニウム等の還元剤を用いてオゾン化材料を還元してヒドロキシル含有ポリマーを形成することによる、ヒドロキシル含有硬化性液体炭化水素プレポリマーを開示している。
【0152】
求電子性基置換硬化成分または加水分解性基と相互反応性の、フィルム形成ポリマー上に組み込むことができる求核性および/または活性水素官能基の一部を列挙すると、ヒドロキシ基、メルカプト基、イソシアナト基、アミノ基、フェノール基、およびカルボキシル基が挙げられる。フィルム形成物質上に組み込まれ、求核性基置換硬化成分と相互反応性の例示的な求電子性基は、アルキルハライド基、ベンジルハライド基、アリルハライド基、エステル基、エーテル基、無水物基等である。フィルム形成ポリマーがペンダント求核性基を含有する場合、シラン硬化成分のシリコン原子の少なくとも1つの原子価に、またはそれを介して結合した基に提供された対応する基はまた、アルコキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、イソシアナト基、アミノ基、フェノール基、グリシド基、カルボキシル基、オキシラン基、ベンジルハライド基、アリルハライド基、アルキルハライド基、エステル基、エーテル基、および/または無水物基を含み得る。
【0153】
(A)官能化コモノマー
本明細書において使用される硬化性フィルム形成ポリマーは、エラストマー形成モノマーの官能化コモノマーとの共重合により、またはポリマーの官能基含有モノマーまたは反応性化合物との反応により形成するとができる。組み込まれた反応性基は、後に、本明細書に記載のような硬化成分の反応によりポリマーを硬化させる。硬化方法は、架橋成分と、コポリマー上の、またはコポリマー上に懸垂した対応する反応性官能基と架橋する活性水素保有官能基または活性水素反応基との反応を利用する。従来的に行われているように、フィルム形成物質ポリマーの重合中に官能基保有コモノマーを導入することが便利である。フリーラジカル付加共重合、アニオン付加重合、フリーラジカルグラフト結合、メタセシスグラフト、および加水分解グラフトの様々な手法が当技術分野において知られている。官能基含有ポリマーまたはコポリマーには、α−オレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、水素化ジエンエラストマー、フルオロエラストマー、架橋性α−オレフィンコポリマーエラストマー、アクリルゴム、アクリレートまたはメタクリレートアクリレートコポリマー、およびエチレン−カルボキシレート等のその主構成要素により特徴付けられるポリマーが含まれる。
【0154】
ゴム状コポリマーエラストマーの好ましい例には、アニオン重合オレフィンエラストマーが含まれるがこれに限定されない。アニオン重合オレフィンゴムの例には、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、ポリイソブチレンもしくは「ブチルゴム」、または、任意選択で30wt.%までを含有する、共役ジエン(例えばイソプレン)、もしくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルおよび/もしくはスチレンコモノマー(例えばスチレンおよび/もしくはアルキル置換スチレン)と任意選択で共重合した、他の任意のイソオレフィンのポリマー等が含まれる。特に好ましいエラストマーには、イソブチレン−イソプレンコポリマー、イソブチレン−パラメチルスチレンコポリマー等が含まれる。
【0155】
好適なペンダント活性水素官能基は、特許文献38に記載のプロセスによる、アミン官能化エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)を形成するための方法により提供される。同様に、特許文献39に記載のプロセスを使用して、ヒドロキシル基で官能化されたより高分子量のイソブチレンコポリマーを生成することができる。さらに、典型的には0.5から2.0モル%の低レベルのハロゲンを含有する任意の市販のハロゲン化イソブチレン系ポリマーを、アルキルアミンまたはアミノアルコールと組み合わせ、それぞれアミンまたはヒドロキシル官能基を生成することができる。
【0156】
1000から200,000の重量平均分子量を有し、ヒドロキシルおよび/またはアミン官能基を含有する官能化エラストマーが知られている。ヒドロキシ末端ポリイソブチレンは、従来的に、塩素末端ポリイソブチレンの脱塩化水素、ヒドロホウ素化および酸化によりカチオン重合イソブチレンの末端位置にヒドロキシ基を導入することにより調製される。イソブチレンモノマーのカチオン重合により得られる塩素末端ポリイソブチレンが知られている。イソブチレンのリビングカルボカチオン重合ならびにメタノールおよびアミン等の他の試薬でのリビング製法のクエンチを開示している、非特許文献4を参照されたい。
【0157】
リビング重合法は、そのいくつかが特許文献40、特許文献41、および特許文献42に記載されているが、フィルム形成ポリマーを形成するための好ましい技術である。例えばイソブチレンを使用してリビング重合を達成し得る一般条件には、(1)3級アルキルハライド、3級アルキルエーテル、3級アルキルエステル等の開始剤、(2)典型的にはチタン、ホウ素またはアルミニウムのハロゲン化物を含むルイス酸共開始剤、(3)プロトンスカベンジャーおよび/または電子供与体、(4)既知のカチオン重合系およびモノマーに適合したルイス酸およびモノマーの選択を考慮してその誘電率が選択される溶媒、が含まれる。
【0158】
末端官能性フィルム形成ポリマー
求電子性基、求核性基、活性水素基を保有することで特徴付けられる基、または活性水素基と反応性の基は、本明細書において有用なフィルム形成物質ポリマーの末端に組み込むことができる。硬化成分上の活性水素基と相互反応性の末端基が有用である。これらのフィルム形成ポリマーは、既知の方法により調製される。
【0159】
特許文献43は、「イニファー」(開始剤−移動剤)により開始するルイス酸によるイソブチレンのカルボカチオン重合によりポリマーを形成し、続いてアセチルサルフェートでの末端クエンチ、および水蒸気蒸留によるかまたはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールもしくはアセトンを用いた沈殿を行うことにより調製される、スルホン化テレケリックポリイソブチレンを開示している。重合は、好ましくは、塩化メチレン、塩化メチルまたは5から10個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは脂環式化合物等の塩素化溶媒中、最も好ましくは溶媒の混合物中で生じる。ルイス酸は、例えば、三塩化ホウ素または四塩化チタンまたは他の金属ハロゲン化物(四塩化スズ、塩化アルミニウムまたはアルキルアルミニウムを含む)であってもよい。末端クエンチは、好ましくは、−90℃から0℃の温度で、最も好ましくは錯体の重合温度または分解温度で生じる。アセチルサルフェートに対するポリイソブチレンのモル比は、好ましくは1:1以上である。
【0160】
硬化成分と反応性の末端活性水素基を有するポリイソブチレン等の、フィルム形成物質ポリマーを提供する別の例は、ヒドロキシもしくはアルコキシ基またはその他の加水分解性基を保有する末端シラン基である。これらは、末端3級炭素−塩素基の脱ハロゲン化水素化、続くエチレン性不飽和シランとの付加反応による既知の経路により得ることができる。末端3級炭素−塩素結合を有するポリマーのアリルトリメチルシランとの反応は、末端に不飽和基を有するポリイソブチレンを生成し、白金触媒を用いることによりその後ヒドロシラン化合物と反応する。
【0161】
ヒドロシラン化合物として、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、フェニルジクロロシラン等のハロゲン化シラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシラン等のアシルオキシシラン;およびビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシラン等のケトキシメートシランを挙げることができる。これらのうち、ハロゲン化シランおよびアルコキシシランが好ましい。
【0162】
そのような生成プロセスは、例えば特許文献44、特許文献45、特許文献46、特許文献47、および特許文献48に記載されている。
【0163】
(i)ジエンエラストマー
フィルム形成ポリマーとしての本明細書における使用に好適な官能化水素化ジエンコポリマーは、分子量が約50,000以上、より典型的には200,000から500,000の固相高重合体であり、10重量%以下の共役ジエンセグメントを含有する。これらのポリマーは、本明細書における唯一のフィルム形成物質ポリマーとしては好適ではないがより高分子量(50,000以上)のフィルム形成ポリマーとブレンド可能な反応性末端基官能性液体ポリマー、例えばATBNおよびCTBN等の、液体官能化オリゴマーとは区別される。水素化コーティングポリマーを調製するための不飽和官能化ポリマーは、概して、50から85重量パーセントの共役ジエンモノマー単位、5重量パーセントから50重量パーセントの1種または複数種の非共役エチレン性不飽和モノマー単位、および1から20重量パーセントの官能化コモノマーまたは反応性架橋部位を保有するグラフト結合化合物を含む。好ましい共役ジエンモノマー単位は、1,3−ブタジエンモノマーから得られ、非共役エチレン性不飽和モノマー単位は、不飽和アクリルエステル、メタクリルエステル、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等のニトリル、ならびにスチレンおよびアルキルスチレン等のモノビニル芳香族炭化水素、ならびにビニリデンコモノマーから選択される、1種または複数種のエチレン性不飽和モノマーから得られる。ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族炭化水素、ジイソプロペニルベンゼン等のジアルケニル芳香族化合物は好ましくは存在しない。他のコモノマーには、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートまたはメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、および酢酸ビニル等のビニルエステルが含まれる。好ましい官能性コモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、およびマレイン酸等の不飽和カルボン酸およびそのエステルから選択される。官能化ジエンエラストマーフィルム形成物質の好ましいガラス転移温度は、コーティングにおける曲げ亀裂/曲げ疲労耐性を提供するために、0℃を超えてはならず、好ましくは−25℃未満である。
【0164】
カルボキシル末端基は、ゴムオゾニドが形成され、アルデヒド末端基が過酸化物または過酸を使用してカルボキシル基に酸化される鎖切断法により、−−C−−CH=CH−−C−−型不飽和を含有するジエンエラストマー高重合体上に形成することができる。あるいは、触媒水素化による、または金属水素化物もしくはホウ化水素等の還元剤による還元技術によって、ゴムオゾニド上のヒドロキシル末端基を形成することができる。例えば特許文献49を参照されたい。同様に、特許文献37は、ポリイソブチレンまたはエチレン−プロピレンゴム等の高分子量飽和炭化水素ポリマーをオゾン化し、続いて、例えば還元剤、好ましくは水素化ジイソブチルアルミニウムを用いてオゾン化材料を還元して、実質的に親ポリマーより低分子量の上述のヒドロキシル含有液体プレポリマーを形成することによる、液体ヒドロキシル含有硬化性炭化水素プレポリマーを開示している。
【0165】
官能化グラフト化合物としてのメルカプトアルコール、またはメルカプトカルボキシレートの組込みは、本発明における使用に容易に適合可能である。ヒドロキシメルカプタンおよび/またはヒドロキシルを含有するメルカプトカルボン酸エステルが好適である。HS−−R−−OH化合物は、Rが、任意選択で6個までのさらなるヒドロキシル基で置換されていてもよい、または窒素、酸素もしくは硫黄原子で中断されていてもよい直鎖、分岐鎖または環状C
1〜C
36アルキル基である化合物を含む。メルカプトカルボキシレートは、HS−−(CHR
2)
n−−(C(O)OR
3OH)
mを含み、式中R
2は水素またはC
1〜C
6アルキル基であり、R
3は、任意選択で6個までのさらなるヒドロキシル基で置換されていてもよい、または窒素、酸素もしくは硫黄原子で中断されていてもよい直鎖、分岐鎖または環状C
2〜C
36アルキル基であり、nは1から5までの整数であり、mは1から2までの整数である。ヒドロキシル基は、好ましくは1級である。
【0166】
好ましいヒドロキシメルカプタンは、メルカプトエタノール、1−メルカプト−3−プロパノール、1−メルカプト−4−ブタノール、α−メルカプト−ω−ヒドロキシオリゴエチレンオキシド、例えばα−メルカプト−ω−ヒドロキシオクタエチレングリコール、または対応するエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリエーテルである。メルカプト−エタノールおよびα−メルカプト−ω−ヒドロキシオリゴエチレンオキシドが好ましい。ヒドロキシル基を含有する好ましいメルカプトカルボン酸エステルは、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸およびメルカプト酪酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールおよびN−メチルジエタノールアミンとのエステルである。メルカプト酢酸および3−メルカプトプロピオン酸の対応するエステルが特に好ましい。メルカプト化合物と反応させる好適な種類のエラストマーフィルム形成物質ベースポリマーには、イソブチレン、クロロプレン、ポリブタジエン、イソブチレン/イソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル、ブタジエン−アクリレートコポリマー、S−−Bコポリマー、ブタジエン−ビニリデンクロリド−アクリレート型コポリマーのポリマーが含まれる。メルカプト化合物の組込み方法は、参照により本明細書に組み込まれる特許文献9に記載されており、本明細書における官能性フィルム形成物質ポリマーとしての使用に好適である。ゴムは、0.1から5wt.%の範囲の結合ヒドロキシル基を含有する。特許文献9の方法に従い導入されたヒドロキシル基を含有する溶液重合ジエンゴムの分子量は、5から15%固体の希釈溶液を得ることができ、また噴霧、はけ塗りまたは浸漬することができる範囲、例えば10,000から200,000Mnまで(ゲル透過クロマトグラフィー)にあるべきである。
【0167】
ホルムアルデヒドによる付加反応、一酸化炭素との反応およびそれに続く水素化、ならびにヒドロホウ素化およびそれに続く加水分解、ならびにエチレン性不飽和基を含有するシランを用いた共重合等、本明細書において使用される好適なフィルム形成ポリマーにOH基を組み込むための他の既知の手法がある。代表的なシランコモノマーには、反応性ケイ素基を有するビニルシランまたはアリルシランが含まれ、そのうち、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランを挙げることができる。
【0168】
官能化ジエンエラストマーは、本発明の有機溶媒系コーティング実施形態の最も好ましい実施形態に関して官能化ブタジエンアクリロニトリルコポリマーとして以下で説明されるが、本発明における教示に照らしてその他多くの好適な官能化ジエンコポリマーの調製にも同等に適用される。ニトリルエラストマーは、低温柔軟性、油、燃料および溶媒耐性、ならびに良好な耐摩耗性および耐水性品質等の有益な特性を提供し、本発明による広範なコーティング用途における使用に好適なものとなっている。
【0169】
本発明は、最も好ましくは、官能化水素化ニトリルゴムを用いて実現される。反応性官能基によるHNBRの官能化は、コーティング組成物を架橋させるため、およびエラストマー基材に対する不可欠な接着性レベルを得るための重要な有効的方法を提供する。エラストマー基材に対する十分な接着性がないと、コーティングは、早期の曲げ亀裂および/または剥離を示す。HNBRに対する官能基は、一般に、活性水素基、エチレン性不飽和基または加水分解性基を含有するものとして分類することができる。架橋は、ジエンコポリマーに組み込まれる反応性官能基に依存して、本明細書において挙げられる架橋成分の添加、湿気、熱(赤外線、加熱)への曝露、紫外線照射、または電子線照射により達成することができる。本明細書において以下に挙げられるいくつかの官能化HNBRの実施形態は、架橋物質の添加なしで自己硬化し、すべては官能化HNBRに添加される好適な架橋成分、例えば、これらに限定されないが、ジニトロソベンゼン、ZnO、γ−POM、レゾール、多官能性アミン、イソシアネート、アクリレート、ジシアンジアミド、ジカルボキシイミド、およびホルムアルデヒド(またはUF、MF)樹脂等により硬化され得る。
【0170】
別の例として、官能化HNBRは、当技術分野で知られた様々な手法で調製することができる。官能基は、官能基含有コモノマーの使用により、またはグラフト結合性官能基保有化合物の使用により、ならびに、メタセシスを用いたNBRの官能化およびそれに続く修飾NBRの水素化による官能化HBNRの生成、またはNBRのメチロール化フェノールとの反応およびそれに続く修飾NBRの水素化による官能化HBNRの生成により導入することができる。
【0171】
活性水素保有官能基を含有する官能化HNBRは、硬化性放射性コーティング組成物における好ましい架橋性フィルム形成物質である。NBRにおける不飽和基(すなわちビニルおよび二置換オレフィン、ニトリル)の存在は、反応性官能基が結合してさらなる架橋、重合後官能化およびグラフト反応に使用され得る反応性部位を提供する。これらの反応部位は、触媒化学または非触媒化学により修飾することができる。そのような修飾は、オレフィン部位のエポキシ化によるエポキシド等、任意の数の活性水素官能基を導入することができる。エポキシドは、開環反応により他の官能基に容易に変換される。例えば、グリコールは塩基を用いた開環反応、グリコールエーテルはアルコキシドまたはフェノキシドを用いた開環反応、アルコールはカルボアニオンまたは水素化物を用いた開環反応により生成される。さらに、エポキシドは、当業者に利用可能な化学反応を使用した架橋部位として機能する。他の多くの官能基が、骨格オレフィンの反応、つまりヒドロホルミル化(アルデヒド、アルコール、カルボン酸)、ヒドロカルボキシル化(カルボン酸)、ヒドロエステル化(エステル)、ヒドロシリル化(シラン)、ヒドロアミノ化(アミン)、ハロゲン化(ハロゲン)、クロロスルホニル化(塩素、スルホン酸)、ヒドロホウ素化(ボラン、アルコール、アミン)により導入され得る。そのような転換の例は、非特許文献5により概説されている。NBRエラストマーのニトリル基はまた、酸触媒プロセスにおけるアルコールとの反応によりアミドに、また加水分解によりカルボン酸に変換され得る。
【0172】
【化3】
【0173】
架橋は、架橋成分の付加、湿気、熱、紫外線照射、または電子線照射により達成することができる。HNBRに結合した反応性官能基およびその意図される用途に依存して、ジニトロソベンゼン、ZnO、γ−POM、レゾール、多官能性アミン、イソシアネート、アクリレート、およびジシアンジアミド等の好適な架橋成分を官能化HNBRに付加することができる。特に好ましい架橋成分は、エラストマー性物品への良好な結合を得ることが当技術分野で知られている成分である。これらの成分にはDNB、ZnO、およびQDOが含まれ、多種多様なエラストマー性材料に対する官能化HNBRの接着性を高めるために付加され得る。
【0174】
ジエンエラストマー上に組み込まれる反応性官能基には、限定されない例として、上述の官能基の中でも、フェノールOH、脂肪族OH、アミン、イソシアネート、エポキシ、アクリレート、シリルエーテル、シリルクロリド、無水物、マレイミド、およびディールス−アルダージエノフィルが含まれる。
【0175】
硬化のための適切な硬化成分および硬化反応の補助剤は、接着剤およびコーティングの分野における先行技術文献および先行特許において周知である。例えば、ポリマー上の官能基がフェノールである場合、イソシアネート、ジカルボキシイミド、ホルムアルデヒド源、およびレゾールが、フェノール官能化HNBRの架橋に有用な好適な硬化成分である。同様に、アミン官能化HNBRは、例えば、イソシアネートまたはジカルボキシイミド、ホルムアルデヒド源、およびレゾールを使用して架橋させることができる。エポキシ官能化HNBRは、エポキシ接着剤およびコーティングの分野において知られているように、適切なアミンおよびジシアンジアミド成分で架橋および硬化させることができる。イソシアネート官能化HNBRは、湿気により、またはアミンもしくはポリオール等の他の硬化作用剤の添加により架橋または硬化させることができるため、特に興味深い。HNBRの一部としてのイソシアネートの組込みは、遊離モノマー性すなわち揮発性イソシアネートのその量ならびにその報告されている健康上および安全性の問題を低減するため、特に望ましい。潜在性のイソシアネート官能化HNBRは、ウレタン官能化HNBR(またはNBR)を生成するアミン官能化HNBR(またはNBR)のジアリールカーボネートとの反応により調製することができる。ウレタンの熱分解により、イソシアネート官能化HNBR(またはNBR)が形成される(例えば、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8を参照)。フィルム形成ポリマー上の無水物官能基は、アミン官能性硬化成分に連結することができる。他の実施形態において、シリルエーテルおよびクロロシランを使用してフィルム形成ポリマーを架橋することができる。
【0176】
フィルム形成エラストマー上に官能基を組み込むための上述のグラフト法の例示的な詳細は、多官能性アクリレート、マレイン化ポリブタジエン、および二官能性アクリレートの金属塩等の多官能性グラフト結合性材料による、融解フィルム形成エラストマーの溶融加工である。例えば、EPDM等のオレフィンエラストマーを、2本ロールミルで、酸化亜鉛等の酸スカベンジャー5部、ステアリン酸1部、酸化防止剤および過酸化物とともに練り合わせ、続いてトリメチロールプロパントリアクリレート、マレイン化液体ポリブタジエン、またはジアクリル酸亜鉛等の多エチレン性不飽和化合物5から10部をフラックスロールに添加することができる。
【0177】
官能化HNBRは、上述のメタセシスおよびそれに続く修飾NBRの水素化による官能化HNBRの生成、ならびに(2)NBRのメチロール化フェノールとの反応およびそれに続く修飾NBRの水素化による官能化HNBRの生成により調製することができる。
【0178】
NBRエラストマー上にカルボキシ、無水物、ヒドロキシ官能基等の反応性ペンダント官能基を組み込むための新規な方法を以下に記載する。
【0179】
本明細書において使用可能な任意の好適な不飽和フィルム形成物質ポリマー、特にNBRの直接官能化は、オレフィンメタセシス化学を使用することにより達成される。ここで、オレフィンC=C二重結合は、触媒およびモノマーと反応する。オレフィンメタセシス触媒は、ニトリル官能基の存在下でメタセシス反応を触媒することができなければならない。モノマーは、オレフィンメタセシス反応(例えば開環メタセシス重合[ROMP]、クロスメタセシス、開環クロスメタセシス、および非環状ジエンメタセシス重合[ADMET])を生じることができる任意のシクロオレフィン、オレフィンまたはα,ω−ジエンであってもよい。これらのモノマーは、硬化フィルムの二次架橋反応のための硬化部位を提供するか、または新たな特性をポリマーに与える官能性を保有する基(例えば、カルボン酸、アミド、エステル、無水物、エポキシ、イソシアネート、シリル、ハロゲン、ディールス−アルダージエンおよびジエノフィル等)で誘導体化される。速度論的には、メタセシス触媒は、まずビニルC=C結合を攻撃する可能性があるが、HNBRコポリマーではそれらが低いレベルであることにより、骨格のC=C二重結合での攻撃が競争的となり得る。骨格不飽和へのそのような攻撃は、NBRの分子量の低下を引き起こし得るが、そのようなプロセスの程度は、高いNBR対触媒レベルを用いることにより最小限化することができる。例えば上述の触媒水素化法を用いた修飾NBRの還元後、反応性修飾HNBRポリマーが得られる。ポリマーは、湿気、選択された硬化剤、または外部エネルギー源(紫外線もしくは電子線)を用いて架橋することができる。メタセシス触媒の1つの特に好ましい利点は、それが水中または溶媒中の穏やかな条件下でNBRに反応性官能基を導入する独特の手段を提供することである。したがって、メタセシス触媒によりラテックスを不安定化させることなく、NBRラテックスを反応性官能基で修飾することもできる。この特徴により、溶液または水性分散液としての様々な市販の周知のNBRポリマーおよびラテックス(水系の重合物)の官能化、およびそれに続く水素化による官能化HNBRの生成が可能となる。
【0180】
水素化プロトン性基末端ジエンポリマー
単体または高分子量(10,000Mn以上)フィルム形成ポリマーとのブレンドとしての水素化ヒドロキシまたはカルボキシ末端ジエンポリマーもまた、本発明の放射性コーティング中に使用される硬化性フィルム形成物質として好適である。実質的に飽和したポリヒドロキシル化ポリジエンポリマーが知られており、市販されている。これらは、リチウム開始剤によりアニオン重合し、OH基で終端されたブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエン炭化水素を表す。プロセスステップは、特許文献50、特許文献51、および特許文献52に記載のように既知であり、これらはすべて、ポリヒドロキシル化ポリジエンポリマーの調製の開示について、参照により本明細書に組み入れられる。そのようなポリマーは、sec−ブチルリチウム2モルのジイソプロピルベンゼン1モルとの反応により形成される化合物等のジリチウム開始剤により作製された。そのようなブタジエンの重合は、シクロヘキサン90重量%およびジエチルエーテル10重量%で構成される溶媒中で行われた。モノマーに対するジ−開始剤のモル比は、ポリマーの分子量を決定付ける。ポリマーはエチレンオキシド2モルでキャッピングされ、メタノール2モルで終端されてジヒドロキシポリブタジエンを生成する。ヒドロキシル化ポリジエンポリマーは水素化され、炭素間二重結合の実質的にすべてが飽和する。水素化は、特許文献53に記載のようなラネーニッケル、白金等の貴金属、可溶性遷移金属触媒およびチタン触媒等の触媒の存在下での水素化を含む確立されたプロセスによって、当業者により行われた。好適なポリヒドロキシル化ポリジエンは、米国のShell Chemical CompanyからKRATON LIQUID(登録商標)POLYMERSの商品名でHPVM2200シリーズ製品として入手可能なもの、またATOCHEMIE社からPolyBD(登録商標)の商標で入手可能なものである。水素化ヒドロキシルブタジエンポリマーとのブレンドにおいて好適な高分子量ポリマーは限定されず、例えば、本明細書において挙げられた他のものおよび既知のもののうち、上述のカルボキシ修飾塩素化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンのポリマー、エチレン−アクリルコポリマー、SBR、SBS、ニトリルゴム(NBR)、SIBS、EPDM、EPM、ポリアクリレート、ハロゲン化ポリイソブチレン、およびポリプロピレンオキシドが含まれる。高分子量フィルム形成物質に対する液体水素化ポリブタジエンポリオールの重量割合は、組合せにおける不飽和の百分率が全体で20%未満、好ましくは10%未満となるように制限される。したがって、水素化ポリジエンポリオールの混合物がSBR、NBR等の不飽和高重合体(M
n>50,000)で作製される場合、不飽和ポリマーの割合は、全体の飽和度が少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%に維持されるように制限される。修飾塩化ポリオレフィンは、酸または無水物基で修飾されたものを含み得る。修飾塩素化ポリオレフィンのいくつかの例は、参照により本明細書に組み入れられる特許文献54(第1欄26行目から第4欄63行目まで)、特許文献55(第1欄53行目から第2欄68行目まで)、および特許文献56(第1欄53行目から第2欄68行目まで)に記載されている。塩素化ポリオレフィンは、出発ポリオレフィンの重量を基準として、好ましくは約10から40重量パーセント、より好ましくは約10から30重量パーセントの塩素含量を有する。修飾塩素化ポリオレフィンの1つの好適な例は、アミンで中和されていない、ポリオレフィンの重量を基準として約10から約30重量パーセントの塩素含量を有し、また約50から約100の範囲内の酸価を有する修飾塩素化ポリオレフィンである。
【0181】
水素化ブロックコポリマー
本明細書に従い適合可能な好適なフィルム形成物質は、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーであり、これらは本明細書において上で開示された方法に従い修飾され、塩素化ポリエチレンに適合され、別途硬化剤との相互作用のためにブロックコポリマー上に硬化官能基を提供する。カルボキシル基を含有するいくつかのエラストマー性ブロックコポリマーが市販されている。20%を超える不飽和を含有するそれらのブロックコポリマーが、本明細書において言及された方法を含む既知の水素化法に従い水素化され得る。
【0182】
フェノール官能性エラストマー
フェノール官能基によるHNBRの官能化は、メチロール化フェノールとNBRを組み合わせ、続いてフェノール修飾NBR中間体を水素化することにより行うことができる。メチロール化フェノールは、文献[非特許文献9]に報告されているように、様々な化学反応によりNBRおよびNBRコポリマーと共有結合を形成することができる。
【0183】
様々な既知のイソシアネート反応性官能基を、官能化エラストマーフィルム形成ポリマーに組み込むことができる。上述のカルボキシ官能性、ヒドロキシ官能性およびアミン官能性エラストマーが、最も容易に適応可能である。カルボキシ官能性コモノマー等の官能性コモノマーは、カルボキシル化水素化ニトリルゴムのコポリマーを形成するように容易に適合可能である。本発明の目的において、官能化水素化ニトリルゴムは、少なくとも1種のジエンモノマー、ニトリルモノマー、および官能基を含有するコモノマーもしくはグラフト結合化合物等の官能基保有化合物またはこれらの組合せを含むポリマーとして定義することができる。本明細書において、HNBRという略語が使用されている場合、具体的に述べられていない限り、この用語は1,3ブタジエン以外のジエンモノマーおよびアクリロニトリル以外のコモノマーを含み得るゴムを指すことを理解されたい。また、追加的なモノマーをジエンモノマーとともに重合させるかまたはジエンモノマーにグラフトして、官能化HNBRを形成することができることに留意するのが重要である。追加的なモノマーは、例えば、少なくとも1つの官能基を提供して架橋を促進することができる。
【0184】
フェノール官能基によるHNBRの官能化は、加熱下および任意選択で好適なルイス酸による触媒下でのメチロールフェノールまたはエーテル誘導体の付加により、不飽和非水素化ポリマーまたは部分水素化XHNBRポリマー(80〜97%水素化レベル)を用いて行うことができる。好ましくは、エーテルブロック基がメチロールフェノール化合物上に提供され、反応後の水素化の容易性を促進する。付加は、ニトリルまたはカルボキシル基を介したエステル形成によるもの、または上述のアリル部位での付加を用いたものであってもよい。好ましくは、フェノール基を保有するエチレン性不飽和化合物のメタセシス反応は、溶媒または水中で行うことができる。あるいは、オレフィン保有メチロール化フェニルエーテルまたはフェノールをNBRとメタセシス反応させた後、水素化することができる。フェノール官能化NBRがその後水素化される。フェノール官能性NBRまたはHNBRをホルムアルデヒドとともに使用してメチロール化反応を行い、NBRまたはHNBRにメチロール化フェノール官能基を形成することができる。以下の構造式は、代表的なフェノール保有化合物による官能化を示す。
【0185】
【化4】
【0186】
任意のメチロール化フェノールをNBRと組み合わせることが可能であるが、モノメチロール化フェノールが特に好ましい。モノメチロール化フェノールのNBRポリマーとの組合せにより、安定なフェノール官能化NBR生成物が得られる。当技術分野において知られた手順(例えば触媒水素化)に従うフェノール修飾NBRの水素化後、安定なフェノール修飾HNBRコポリマーが得られる。フェノール官能化HNBRコポリマーは、ジカルボキシイミド、イソシアネート、およびホルムアルデヒド源(パラホルムアルデヒド、γ−POM、ヘキサメチレンアミン、フェノール性レゾールまたはエーテル化フェノール)といった化学化合物のクラスから選択されるものを含む、フェノール樹脂用の様々な周知の架橋物質で架橋することができる。
【0187】
フェノール官能性HNBRは、当技術分野において既知の手順により、メチロール化フェノール官能化NBR/HBNRを使用してフェノールモノマーを介して調製することができる。フェノール官能化NBR/HNBRは、モノメチロール化フェノールにより、または不飽和モノマーおよび不飽和NBRが関与するメタセシスにより調製することができる。メタセシスにより調製されたメチロール化フェノール官能化NBR/HBNRは、NBRとともにメチロール化フェノールモノマーを使用する。これらの材料は、本発明によるコーティングとしてだけではなく、その独特の硬化性、フィルム形成性、金属接着性および適合性を利用して、エラストマー−金属接着剤の成分、自己堆積性材料、RFLディップおよび反応性強化物質(例えばエポキシ接着剤)としても有用である。メチロール化フェノール官能化NBR/HNBRは、自己硬化することができる(すなわち外部硬化剤は必要ない)。メチロール化フェノール官能化NBR/HNBR誘導体は、フェノールノボラック、活性水素反応性または活性水素含有架橋物質およびゴム/エラストマー強化剤等の他のコーティング組成物で硬化することができる。メチロール化フェノール官能性HNBRは、既知のゴム用加硫剤とともに使用することができる。加硫反応は、キノンメチド、またはメチロール化フェノールの熱活性化もしくは触媒活性化により生成されるベンジルカルベニウムの形成に基づく。キノンメチド中間体は、アリル基水素の引き抜きにより反応する。あるいは、酸性触媒条件下のメチロール化フェノールは、基材中の不飽和ポリマーと反応する反応性ベンジルカルベニウムイオンを生成することができる。
【0188】
イソシアネート官能化HNBRは、湿気により、およびカルボキシ、アミンまたはポリオール官能性シランとの接触により架橋または硬化させることができる。HNBRの一部としてのイソシアネートの組込みは、遊離モノマー性イソシアネート基すなわち揮発性イソシアネートのその量ならびにその報告されている健康上および安全性の問題を低減するため、特に望ましい。マレイミド官能化HNBRは、マイケル付加反応またはシラン硬化剤上の好適な硬化求核基により架橋させることができる。エチレン性不飽和アクリレート官能化HNBRは、フリーラジカル、紫外線、および電子線硬化のいずれも可能である。無水物官能化HNBRは、アミンおよびエポキシ官能性シラン等の当技術分野において説明されている成分を使用して硬化させることができる。シリルエーテルおよびシリルクロリドは、湿気硬化性である。
【0189】
高い飽和度を有するエチレン性不飽和ニトリル−共役ジエンゴムを提供するために、従来の手段によりニトリルゴムが水素化される。一般に、溶液水素化および酸化/還元水素化を含むがこれらに限定されない、水素化のための数々の既知のプロセスのいずれも使用することができる。水素化は、ゴムの不飽和結合の少なくとも80%を飽和するよう作用する。飽和度が80%未満の場合、ゴムの耐熱性は低い。ゴムのより好ましい飽和度は、95〜99.99%である。
【0190】
さらに水素化されるカルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーの調製に有用な好ましい共役ジエンモノマーは、約4から約10個の炭素原子を有するジエン、例えば、これらに限定されないが、1,3−ブタジエン;2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン;1,3−ペンタジエン;1,3−ヘキサジエン;2,4−ヘキサジエン;1,3−ヘプタジエン;ピペリレン;およびイソプレン等を含む周知の共役ジエンのいずれであってもよく、1,3−ブタジエンが現在好ましい。
【0191】
共重合されてカルボキシル化アクリロニトリル−ジエンコポリマーを形成する不飽和ニトリルモノマーは、典型的には以下の式に対応する。
【0192】
【化5】
【0193】
式中、各Aは、水素または1から約10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。A基の例には、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、オクチル、デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のアルキルおよびシクロアルキル、ならびにフェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、t−ブチルフェニル等のアリールが含まれる。アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが、現在好ましい不飽和ニトリルである。
【0194】
本発明のHNBRはまた、HNBRの骨格中に重合される官能基含有モノマー、またはHNBRにグラフトされた官能基含有化合物、またはこれらの組合せを含む。
【0195】
カルボキシル基含有モノマーは、本発明のゴムに任意選択で使用される。カルボキシル基は、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸等の3から約5個のC原子を有するα,β−不飽和モノカルボン酸モノマー、ならびに/または、これらに限定されないが、4から約5個または約6個のC原子を有するα,β−不飽和ジカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸およびイタコン酸等の他の既知のカルボキシル基含有モノマーから得られる。結合した不飽和カルボン酸は、コポリマーの約1から約10重量パーセントの量で存在し得るが、この量は、共役ジオレフィンの対応する量と置き換わる。好ましくは、モノマーは、不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸誘導体(例えばエステル、アミド等)である。カルボキシル基含有モノマーの機能には、架橋部位としての役割および接着性の向上が含まれる。
【0196】
追加的な官能化コモノマーがHNBRコポリマーの骨格中に重合され得る。ニトリルモノマーおよび共役ジエンモノマーと共重合可能な官能性エチレン性不飽和モノマーの例は、ヒドラジジル基含有エチレン性不飽和モノマー、アミノ基保有エチレン性不飽和モノマー、チオール基保有不飽和エチレン性不飽和モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸等の不飽和カルボン酸ならびにその塩、各種アクリレート、例えばメチルアクリレートおよびブチルアクリレート等の不飽和カルボン酸のアルキルエステル、メトキシアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリルアミド、およびメタクリルアミド等の不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル、クロロジメチルビニルシラン、トリメチルシリルアセチレン、5−トリメチルシリル−1,3−シクロペンタジエン、3−トリメチルシリルアリルアルコール、トリメチルシリルメタクリレート、1−トリメチルシリルオキシ−1,3−ブタジエン、1−トリメチルシリルオキシシクロペンテン、2−トリメチルシリルオキシエチルメタクリレート、2−トリメチルシリルオキシフラン、2−トリメチルシリルオキシプロペン、アリルオキシ−t−ブチルジメチルシランおよびアリルオキシトリメチルシランである。
【0197】
また、様々なクラスのモノマー、例えばN,N−二置換アミノアルキルアクリレート;N,N−二置換アミノアルキルメタクリレート;N,N−二置換アミノアルキルアクリルアミド;N,N−二置換アミノアルキルメタクリルアミド;ヒドロキシ置換アルキルアクリレートおよびヒドロキシ置換アルキルメタクリレート、N−アルキロール置換アクリルアミド、例えばN−メチロールアクリルアミド、N,N’−ジメチロールアクリルアミドおよびN−エトキシメチロールアクリルアミド;N−置換メタクリルアミド、例えばN−メチロールメタクリルアミド、N,N’−ジメチロールメタクリルアミドおよびN−エトキシメチルメタクリルアミド、特にフリーラジカル開始共重合が12から16個の炭素原子および3個の3級炭素原子を有するアルキルチオール化合物の存在下で生じるものも、
官能性コモノマーとして好適である。
【0198】
これらの極性基含有ビニルモノマーのうち、N,N−二置換アミノアルキルアクリレート、N,N−二置換アミノアルキルメタクリレート、N,N−二置換アミノアルキルアクリルアミドおよびN,N−二置換アミノアルキルメタクリルアミドが好ましい。
【0199】
N,N−二置換−アミノアルキルアクリレートの具体例として、N,N−ジメチルアミノメチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノブチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジエチルアミノブチルアクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチルアクリレート、N,N−ジブチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジブチルアミノブチルアクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチルアクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチルアクリレートおよびアクリロイルモルホリン等のアクリル酸エステルを挙げることができる。これらのうち、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチルアクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチルアクリレートおよびN−メチル−N−エチルアミノエチルアクリレートが好ましい。
【0200】
N,N−二置換アミノアルキルメタクリレートの具体例として、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリレート N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノブチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノブチルメタクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジブチルアミノブチルメタクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチルメタクリレートおよびN,N−ジオクチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルを挙げることができる。これらのうち、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチルメタクリレートおよびN−メチル−N−エチルアミノエチルメタクリレートが好ましい。
【0201】
N,N−二置換アミノアルキルアクリルアミドの具体例として、N,N−ジメチルアミノメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアミノブチルアクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノエチルアクリルアミド N,N−ジヘキシルアミノプロピルアクリルアミドおよびN,N−ジオクチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド化合物を挙げることができる。これらのうち、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミドおよびN,N−ジオクチルアミノプロピルアクリルアミドが好ましい。
【0202】
N,N−二置換アミノアルキルメタクリルアミドの具体例として、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチルメタクリルアミド、N−メチル−N−エチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジブチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジブチルアミノブチルメタクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノプロピルメタクリルアミドおよびN,N−ジオクチルアミノプロピルメタオリルアミド等のメタクリルアミド化合物を挙げることができる。これらのうち、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルメタオリルアミドおよびN,N−ジオクチルアミノプロピルメタクリルアミドが好ましい。
【0203】
ヒドロキシ置換アルキルアクリレートおよびヒドロキシ置換アルキルメタクリレートの具体例として、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを挙げることができる。これらのうち、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0204】
NBRコポリマーは、当業者に周知の方法による、フリーラジカル開始剤の存在下での上述のいずれかの例示的共役ジエン、不飽和ニトリル、および不飽和官能基含有コモノマーの反応により重合される。好適なフリーラジカル開始剤は本開示の範囲を超えるが、典型的には有機酸化物、過酸化物、ヒドロペルオキシド、およびアゾ化合物等、例えば過酸化水素、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化ジ−tert−ブチル、アスカリドール、過酸化アセチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、トリメチルアミンオキシド、ジメチルアニリンオキシド、イソプロピルペルオキシジカーボネート、ジイソブチレンオゾニド、過酢酸、ニトレート、クロレート、ペルクロレート、アゾビスイソブチロニトリル等である。
【0205】
ニトリルゴムの水素化は、当技術分野において、また文献において知られている。例えば、好ましい市販のX−HNBR(カルボキシル化HNBR)は、2段階で水素化されるカルボキシル化ニトリル−ジエンコポリマーから作製される。NBRにおける1,2−ビニル構成ブタジエン単位の炭素間二重結合は非常に急速に水素化され、次に1,4−シス構成の単位が水素化されることが知られている。1,4−トランス構成ブタジエン単位は、比較的ゆくりと水素化される。水素化に使用されるNBR生成物は、1,4−トランス構成二重結合が圧倒的割合を占めることで区別される。
【0206】
2段階水素化において、炭素−炭素二重結合がまず還元された後、炭素−窒素結合が還元される。当技術分野において知られているように、この手順は、還元が1段階で行われた場合に生じ得る水素化ポリマーのゲル化を回避する。第1の段階において、異なる触媒、例えばパラジウムまたはルテニウム触媒を使用することができる。しかしながら、望ましい場合は、触媒の適切な選択により、ニトリル基のみを還元して、直線状ポリマー鎖における不飽和炭素−炭素結合を残すことができる。また、貴金属およびニッケルまたはコバルトの組合せを使用し、最初は比較的低温で、次いでより高温で作用させることもできる。アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーを水素化するためのその他の技術は、例えば、特許文献1;特許文献2;および特許文献3に開示されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0207】
部分的または完全に水素化されたニトリルゴム(HNBR)もまた、いくつかの明細書(例えば特許文献4;特許文献5;特許文献6および特許文献7;ならびに特許文献8)に記載されている。これらの明細書はすべて、(例えば、硫黄加硫系または過酸化物加硫系を用いて)加硫することができる部分的または完全に水素化されたNBRの調製のためのプロセスを記載している。
【0208】
既知の従来の技術により、X−HNBRラテックスの水素化を行うことができる。従来的にアニオン性界面活性剤を使用して作製されたカルボキシル化NBRポリマーラテックスを、(1)酸素、空気およびヒドロペルオキシドからなる群から選択される酸化剤、(2)ヒドラジンおよびその水和物から選択される還元剤、ならびに(3)金属イオン活性剤と組み合わせ、(b)混合物を0℃から反応混合物の還流温度までの温度に加熱する。この技術は、参照により本明細書に組み込まれる、Goodyear Tire and Rubber Co.に譲渡された特許文献10に教示されている。
【0209】
さらに、有機溶液中で行われる水素化プロセスが、これも参照により組み込まれる特許文献11から知られており、このプロセスでは、アニオン重合により製造されたNBRポリマーを、鉄、コバルトまたはニッケルの可溶性化合物、アルミニウム有機化合物および水を含む触媒混合物の存在下で溶液中に溶解させる。
【0210】
最も好ましいアクリロニトリル−ブタジエンコポリマーは、典型的には、最終生成物が約1から20モルパーセント、望ましくは約1から約10または15モルパーセント、好ましくは約1から約5モルパーセントの不飽和レベルを有するような程度まで水素化される。
【0211】
好適なカルボキシル化水素化ニトリルゴムX−HNBRは、Bayer社により、「Therban(登録商標)」、例えばTherban KA8889等の商品名で製造されている。X−HNBRは、好ましくは約50%以下、より好ましくは約1から40%、最も好ましくは約1から20%のヨウ素価を有し得る。熱および強い溶媒に対する耐性は、50%以下のヨウ素価(高い水素化率)を有するX−HNBRを使用すると増加させることができ、低温でのゴム弾性は、低い水素化率を有するX−HNBRゴムの使用により維持することができる。HNBRのニトリル含量の代表値は、好ましくは約15から60%、より好ましくは約25から50%、最も好ましくは約30から40%である。溶媒に対する耐性は、約15%以上、特に約30%以上のニトリル含量を有するHNBRの使用により増加させることができ、低温柔軟性は、約60%以下、特に約50%以下のニトリル含量を有するゴムの使用により維持することができる。さらに、ML
1+4(100℃)の代表値としてのムーニー粘度(以降「ムーニー粘度」と呼ぶ)は好ましくは約40から100であり、コーティングには、40〜60というより低いムーニー粘度が好ましい。この範囲内にあるムーニー粘度を有するX−HNBRが使用されると、コーティング組成物は、有機液体に対する高い耐性および良好な柔軟性および耐低温性を示す。
【0212】
本発明のHNBRはまた、水素化の前または後に上述の方法によりそれにグラフト結合した架橋物質反応性官能基を有し得る。官能基を有する不飽和化合物の例として、官能基を有するビニル化合物および官能基を有するシクロオレフィンを挙げることができる。グラフト改質法による官能基の導入は、有機過酸化物の存在下でHNBRを官能基含有不飽和化合物と反応させることにより行うことができる。官能基含有不飽和化合物には、特定の制限は課されない。しかしながら、低修飾率での架橋密度および基材への接着性の改善の理由から、エポキシ基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、シリル基含有不飽和化合物、不飽和有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0213】
エポキシ基含有不飽和化合物またはエポキシ基含有シクロオレフィンの例には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルp−スチリル−カルボキシレート等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;エンド−シス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸およびエンド−シス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−メチル−2,3−ジカルボン酸等の不飽和ポリカルボン酸のモノグリシジルまたはポリグリシジルエステル;アリルグリシジルエーテル、2−メチル−アリルグリシジルエーテル、o−アリルフェノールのグリシジルエーテル、m−アリルフェノールのグリシジルエーテルおよびp−アリルフェノールのグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル;ならびに2−(o−ビニルフェニル)エチレンオキシド、2−(p−ビニルフェニル)エチレンオキシド、2−(o−アリルフェニル)−エチレンオキシド、2−(p−アリルフェニル)エチレンオキシド、2−(o−ビニルフェニル)プロピレンオキシド、2−(p−ビニルフェニル)プロピレンオキシド、2−(o−アリルフェニル)プロピレンオキシド、2−(p−アリルフェニル)プロピレンオキシド、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドおよびアリル−2,3−エポキシシクロペンチルエーテルが含まれる。これらのエポキシ基含有不飽和化合物は、単一で、またはそれらの任意の組合せとして使用することができる。
【0214】
カルボキシル基含有不飽和化合物には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびα−エチルアクリル酸等の不飽和カルボン酸;ならびにマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、エンド−シス−ビシクロ−[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸およびメチル−エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸が含まれる。さらに、不飽和カルボン酸誘導体の例として、不飽和カルボン酸の無水物、エステル、ハロゲン化物、アミドおよびイミドを挙げることができ、その具体例には、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸および無水シトラコン酸等の酸無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチルおよびマレイン酸グリシジル等のエステル;ならびにマレニルクロリドおよびマレイミドが含まれる。これらのうち、グラフト反応による容易な官能基の導入等の理由から、不飽和ジカルボン酸およびその無水物が好ましく、無水マレイン酸および無水イタコン酸等の酸無水物が特に好ましい。
【0215】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物の例には、アリルアルコール、2−アリル−6−メトキシフェノール、4−アリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、2−アリルジフェノール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オールおよび5−ヘキセン−1−オールが含まれる。
【0216】
不飽和有機ケイ素化合物の例には、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリス(メトキシエトキシ)ビニルシラン等のトリスアルコキシビニルシランが含まれる。そのような不飽和有機ケイ素化合物中のアルコキシ基は、加水分解されてシラノール基となることができる。
【0217】
本発明によるグラフト修飾HNBRは、ラジカル生成下で、官能基を有する上述のエチレン性不飽和化合物のうちの1つをHNBRとグラフト反応させることにより得ることができる。ラジカルを生成するための方法として、(i)有機過酸化物を使用する方法(ii)光誘起ラジカル生成物質を使用する方法、(iii)エネルギー線の照射による方法、および(iv)加熱による方法を挙げることができる。
【0218】
有機過酸化物を使用する方法:有機過酸化物として、例えば、有機過酸化物、有機ペルエステル等を好ましくは使用することができる。そのような有機過酸化物の具体例として、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジ−tert−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン−3,1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化ラウロイル、過酢酸tert−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過イソ酪酸tert−ブチル、過−sec−オクチル酸tert−ブチル、過ピバル酸tert−ブチル、過ピバル酸クミルおよび過ジエチル酢酸tert−ブチルを挙げることができる。本発明において、有機過酸化物としてアゾ化合物もまた使用することができる。アゾ化合物の具体例として、アゾビスイソブチロニトリルおよびジメチルアゾイソブチレートを挙げることができる。これらのうち、過酸化ベンゾイル、ならびに過酸化ジクミル、過酸化ジtert−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシド)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンおよび1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等の過酸化ジアルキルが好ましくは使用される。
【0219】
これらの有機ペルオキシドは、単一で、またはそれらの任意の組合せとして使用することができる。使用される有機過酸化物の割合は、一般に、非修飾HNBR100重量部当たり0.001から約10重量部、好ましくは約0.01から約5重量部、より好ましくは約0.1から約2.5重量部の範囲内である。使用される有機過酸化物の割合がこの範囲内にある場合、官能基含有不飽和化合物の反応速度、および得られる官能基含有ポリマーの様々な特性が互いに高いレベルで均衡する。したがって、そのような範囲内で有機過酸化物を使用することが好ましい。
【0220】
グラフト修飾反応には特定の制限は課されず、反応は、本質的に当技術分野において知られた方法のいずれかに従い行うことができる。グラフト反応は、一般に、0から400℃、好ましくは60から350℃の温度で行うことができる。反応時間は、一般に、1分から24時間、好ましくは30分から10時間の範囲内である。反応完了後、反応系にメタノール等の溶媒を大量に添加して形成されるポリマーを堆積させ、濾過によりポリマーを回収し、洗浄し、次いで減圧下で乾燥させることができる。
【0221】
光誘起ラジカル生成物質の割合は、反応時に投入される割合という点で、典型的には、非修飾HNBR100重量部当たり0.001から約10重量部、好ましくは約0.01から約5重量部、より好ましくは約0.1から約2.5重量部の範囲内でグラフトに使用することができる。使用される光誘起ラジカル生成物質の割合がこの範囲内にある場合、官能基含有不飽和化合物の反応速度、および得られる官能基含有ポリマーの様々な特性が互いに高いレベルで均衡する。したがって、そのような範囲内で光誘起ラジカル生成物質を使用することが好ましい。
【0222】
エネルギー線の照射による方法:エネルギー線の照射による方法は、α線、β線およびγ線等の活性エネルギー線を照射してラジカルを生成する公知の方法である。特に、効率、実行可能性および収益性の観点から、紫外光を使用することが望ましい。
【0223】
加熱による方法:加熱によるラジカル生成法は、100から390℃の温度範囲内で加熱することにより行われる。公知の溶液法、ならびに融解および混錬法の両方を使用することができる。これらのうち、反応効率の観点から、加熱時にせん断応力が加えられる押出機等を使用した融解および混錬法が好ましい。
【0224】
また、NBRまたはHNBR内の炭素間不飽和結合の直接修飾を使用してそれに官能基を付加することもできる。炭素間不飽和結合は、前駆体NBR内に、また残留不飽和としHNBR内に存在し、したがって、炭素間不飽和結合を修飾して付加ポリマーに官能基を付加することにより、本発明による修飾HNBRを得ることができる。
【0225】
フィルム形成ポリマー上に官能基を導入するための方法には特定の制限は課されず、その例にはまた、(a)不飽和結合の酸化による方法、(b)その分子内に少なくとも1つの官能基を含有する化合物の不飽和結合への付加反応による上述の方法、ならびに(c)エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基を導入する本明細書に記載の方法、または、NBRもしくはHNBRポリマーのオレフィン結合の、不飽和、好ましくは単不飽和カルボン酸反応物質との上述の反応、およびリビングカチオン開始ポリマーへの末端基付加による方法が含まれる。あるいは、ポリマーは、塩素または臭素含有化合物を使用してハロゲン化することができる。次いでハロゲン化ポリマーを単不飽和カルボン酸と反応させることができる。また、ポリマーおよび単不飽和カルボン酸反応物質を高温で接触させ、上述の熱的「エン」反応を生じさせることもできる。あるいは、フリーラジカル誘起グラフトにより単不飽和カルボン酸をポリマーと反応させることができる。本発明において使用される官能化フィルム形成物質は、触媒的に有効な量の少なくとも1種の酸性アルキル化触媒の存在下で、ヒドロキシ芳香族化合物との接触により官能化することができる。次いでアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物をさらに反応させて、アルデヒドおよびアミン試薬とのマンニッヒ塩基縮合により誘導体を形成し、マンニッヒ塩基縮合物を得ることができる。ポリマーを官能化するためのさらに別の手段において、コッホ反応条件において酸触媒の存在下でポリマーを一酸化炭素と接触させ、カルボン酸基で置換されたポリマーを得ることができる。上記官能化方法に加え、本発明のポリマーは、空気酸化、オゾン分解、ヒドロホルミル化、エポキシ化およびクロロアミノ化等の方法、またはその他の任意の方法(例えば、特許文献13)により官能化することができる。
【0226】
(ii)フルオロエラストマー
フルオロカーボンエラストマー(フルオロエラストマー)は、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンを含む炭化水素から得られ、複数の供給元から市販されている。様々な種類のフルオロエラストマーの詳細な説明は、非特許文献10に含まれている。フルオロエラストマーは、主に、フルオロエラストマーに100%の伸長まで応力を加えた時に塑性変形が生じるかどうかにより、熱可塑性フルオロポリマーから区別される。フルオロプラスチックは引き伸ばすと変形し、本発明によるエラストマー性基材には不適当なコーティング材料である。
【0227】
本明細書において使用される代表的なフルオロエラストマーには、1種または複数種のフッ素化モノマーから得られるポリマーが含まれる。フッ素化モノマーまたは2種以上のフッ素化モノマーの組合せから得られるポリマーの例には、1,1−ジヒドロパーフルオロブチルアクリレート;フッ化ビニリデンおよびクロロトリフルオロエチレンのコポリマー;フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー;フッ化ビニリデンおよびヒドロペンタフルオロプロピレンのコポリマー;テトラフルオロエチレンおよびプロピレンのコポリマー;ならびにフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのターポリマー;フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロビニルエーテルのターポリマー;フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびプロピレンのターポリマー;フッ化ビニリデンおよびヒドロペンタフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのターポリマーが含まれる。上に開示されたような官能基の組込みの条件は、フルオロエラストマーに適用可能である。本発明に従い修飾された最も好ましいフルオロエラストマーは、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、またはフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのターポリマー等、DuPont社からViton(登録商標)の商品名で市販されている。他の好適なフルオロエラストマーは、Dyneon社からFLUOREL(登録商標)の商標で、およびAusimont社からTECHNIFLON(登録商標)の商標で入手可能である。
【0228】
本明細書において使用されるグラフト官能化フルオロエラストマーの実施形態のフィルム形成物質は、フルオロエラストマーポリマーと、フルオロエラストマーに共有結合するグラフト結合基、および、硬化成分の反応基の1つへの結合を形成するヒドロキシル、チオールまたはカルボキシル基を含むがこれらに限定されない少なくとも1つの活性水素含有基を含有するグラフト剤との反応生成物である。グラフト修飾フルオロエラストマーは、柔軟性基材をコーティングする時間の前に、混合物のポットライフの時間内(ゲル化前)に混合物中の硬化成分と組み合わされる。
【0229】
フルオロエラストマーに好ましいグラフト成分は、1つのグラフト結合基および1つの活性水素保有基を含有する。好ましいグラフト剤は、1級アミン基および1つの活性水素含有基を含有する。例には、ヒドロキシアミン、アミノイソシアネート、例えば(R
2)
2NCH
2CH
2NCO(式中、R
2は、例えば水素またはヒドロカルビル基である)、ヒドロキシアルキルアミン、アミノカルボキシレート、アミノシラン、アミノシラノール、アミノチオール等が含まれる。グラフト結合基として1級アミンを含有しない他の好適なグラフト剤は、メルカプトアルコールおよびメルカプトシラノール等のメルカプトヒドロキシ、ならびにメルカプトチオールである。好ましいグラフト剤は、比較的穏やかな温度(<60℃)でフルオロエラストマーにグラフトし、モノマー性、オリゴマー性またはポリマー性であってもよく、少なくとも1つの活性水素含有基およびただ1つの1級アミン基を含有するが、任意選択で2級もしくは3級アミン基、または、フルオロエラストマーをグラフト結合および架橋できないその他の基を含有してもよい。任意選択の2級アミンは、フルオロエラストマーへの1級アミングラフト結合基のグラフト反応の速度を増加させると考えられる。グラフト剤の具体例には、各種ヒドロキシアルキルアミン、例えば3−アミノ−1−プロパノール、アミノアルキルシラノール、例えばアミノアルキルシラントリオール、またはアルコキシシラン基の加水分解を触媒して反応性シラントリオールを生成することができる少なくとも1つの塩基性窒素を各分子内に含む前駆体アミノアルキル−アルコキシシラン;アミン−N−オキシド、アミノ(ヒドロキシ)カルボン酸、アミド(ヒドロキシ)アミン、ポリオキシアルキレンポリエーテルモノ(1級)アミン、およびアミン末端ポリオールが含まれる。そのようなアミン終端ポリオールは、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ドデシルオキシドまたはスチレンオキシド等のアルキレンオキシドの、アミノ出発化合物上への重付加のための既知のアミノ化法により作製することができる。一般に、ポリエーテルポリオール等のポリオールは、ニッケル含有触媒、例えばNi/Cu/Cr触媒等の触媒の存在下でアンモニアでアミノ化される。既知の方法は、すべて参照により本明細書に組み込まれる、特許文献57;特許文献58;特許文献59;特許文献60;特許文献61;および特許文献62に教示されている。使用される出発化合物は、アンモニア、またはアミン基を含有する化合物であり、反応生成物中にただ1つの1級アミノ基を提供し、例えば、エチレンジアミン、エチレンジアミンオリゴマー(例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンまたはペンタエチレンヘキサミン)、エタノールアミン、1,3−プロピレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,3−または1,4−ブチレンジアミン、1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン等である。ポリエーテルモノアミンに好適なポリエーテルブロックには、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマー、ポリ(1,2−ブチレングリコール)、およびポリ(テトラメチレングリコール)が含まれる。
【0230】
好ましいアミノ−ヒドロキシグラフト剤化合物は、約1000未満、好ましくは500、より好ましくは250未満の分子量を有する化合物である。より好ましいアミノ−ヒドロキシルグラフト剤は、2から16個の炭素原子を含有する。約1000を超える分子量を有するグラフト剤により、コーティングの柔軟性および耐溶媒性の程度が低減される。より好ましいグラフト剤の例には、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールおよびアミノアルキルシラノール、例えばアミノプロピルシラントリオールが含まれる。フルオロエラストマーの重量に対する使用されるグラフト剤の有効量は、1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3から7重量%である。
【0231】
ヒドロキシル官能化フルオロエラストマーを提供するその他の例示的グラフト剤には、より好ましくはないが、グラフト付加反応によりヒドロキシル官能性エチレン性不飽和化合物をグラフトするものが含まれる。上述のメルカプトヒドロキシ化合物およびメルカプトカルボキシ化合物が好適である。ヒドロキシまたはカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーが好適であり、これには、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、メタクリル酸、および無水マレイン酸が含まれるがこれらに制限されず、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂において広く実践されているポリマーの反応加工の分野において知られた技術により、フリーラジカル開始剤の存在下でフルオロエラストマーにグラフトさせることができる。
【0232】
別の実施形態において、フルオロカーボンエラストマーは、任意選択で(1つまたは複数の)ヒドロキシ基を含有する、ヒドロキシ(アルキル)メルカプタン、アミノチオール、またはメルカプトカルボン酸との付加反応によりグラフト官能化される。フルオロエラストマーへの付加のための結合ヒドロキシル基を生じる好適なメルカプタンには、メルカプトエタノール等のヒドロキシメルカプタン、ヒドロキシアルキルメルカプタン、例えば1−メルカプト−3−プロパノール、メルカプトエタノールアミン、1−メルカプト−4−ブタノール、α−メルカプト−ω−ヒドロキシオリゴエチレンオキシド、例えばα−メルカプト、ω−ヒドロキシオクタエチレングリコール、または対応するエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリエーテルが含まれる。加水分解時にヒドロキシ基を生じるメルカプトアルコキシ化合物には、いくつか例を挙げると、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、およびγ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランが含まれる。好適なメルカプトカルボン酸および対応するエステルは、上述のメルカプト酢酸およびメルカプト酢酸のエステル、メルカプトプロピオン酸およびエステル、メルカプト酪酸およびエステルである。ヒドロキシ基を含有するエステル化化合物には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールおよびN−メチルジエタノールアミンが含まれる。
【0233】
メルカプト化合物、特にメルカプト酸およびメルカプトアルコールは、硬化剤との後続の反応に有効な量で、本明細書において好適な任意の炭化水素エラストマーにグラフト結合させることができる。官能化フルオロエラストマー、ジエンエラストマー、α−オレフィンコポリマーの調製において、穏やかな温度または周囲温度でメルカプト化合物を組み込むことができることは特に有用である。フルオロエラストマーにグラフトするためのメルカプト化合物の添加は、任意選択で溶液中のフリーラジカル開始剤を開始剤の分解温度を超える温度で用いて、例えばアゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスシクロヘキサンニトリル等のアゾ開始剤、過酸化ジラウロイル、ベンズピナコールシリルエーテル等の過酸化物、または紫外線もしくは可視光の存在下での光開始剤を用いて行うことができる。過酸化ジアシル、特に過酸化ジラウロイル、過酸化ジデカノイル、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジスクシノイルペルオキシドおよび過酸化ジベンゾイルが好適である。フリーラジカル開始剤の有効量は、メルカプト化合物の重量を基準として0.5から10wt.%である。好ましいメルカプト化合物は、メルカプトエタノール等のメルカプトアルコールである。出発メルカプト化合物の有効量は、フルオロエラストマーの重量を基準として3%から10%であり、1重量%から5重量%の結合ヒドロキシル基のレベルでフルオロエラストマーに結合するのに十分である。
【0234】
より好ましいフルオロエラストマーグラフト剤は、室温でフルオロエラストマーにグラフトするものであり、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(NH
2−−CH
2−−CH
2−−NH−−CH
2−−CH
2−−OH)(CAS#111−41−1)およびアミノプロピルシラントリオール、例えば22〜25%水溶液としてGelest,Inc.社からSIA0608.0(CAS#29159−37−3)として供給されているもの等の化合物を使用して得ることができる。
【0235】
架橋性α−オレフィンコポリマーエラストマー
ポリ(オレフィン/アクリルエステル/カルボキシレート)コポリマーフィルム形成エラストマーは、少なくとも1種のα−オレフィンを少なくとも1種のC
1〜C
18アルキル(メタ)アクリレート、ならびにポリイソシアネート、カルボジイミド等の材料と架橋を形成するために利用可能な少量の不飽和官能基保有コモノマーおよびその他の薬剤と重合させることにより生成されるコポリマーである。官能基保有コモノマーは、エチレン性不飽和基および酸、ヒドロキシ、エポキシ、イソシアネート、アミン、オキサゾリン、ジエン、またはその他の反応基を保有する基を含み得る。そのような官能化モノマーが存在しない場合、架橋部位は、例えばペンダントエステル基の部分加水分解により、α−オレフィンエステルコポリマーに生成され得る。そのようなオレフィンコポリマーフィルム形成エラストマーの重合に好適なα−オレフィンには、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、オクテン等が含まれ、またこれらの組合せも含まれる。C
1〜C
4α−オレフィンが好ましく、またエチレンが最も好ましい。
【0236】
官能化コモノマーは、求核性基または求電子性基、例えば活性水素基、ハロゲン基、またはアミノ基転移もしくは加水分解等により変換され得る基を保有する共重合α−オレフィンポリマーを提供し、あるいは逆に、官能化コモノマーは、対応する相互反応性基、例えば活性水素基を保有する架橋剤と反応性の基を含有する。アルキルまたはアルコキシ(メタ)アクリレート酸およびエステルは、例示的な官能化コモノマーである。アルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基およびデシル基;シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基およびトリル基等のアリール基;ならびにベンジル基およびネオフィル基等のアラルキル基である。
【0237】
アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基およびオクトキシ基が含まれる。
【0238】
任意選択でα−オレフィンに組み込まれる好適なアルキルまたはアルコキシ(メタ)アクリレートには、メチルアクリレート、エチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレート、メトキシアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリルアミド、およびメタクリルアミド等、またはこれらの混合物が含まれる。α−オレフィンモノマーと共重合可能な官能性エチレン性不飽和モノマーの具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸等の不飽和カルボン酸およびその塩、メチルアクリレートおよびブチルアクリレート等の不飽和カルボン酸のアルキルエステルである。
【0239】
好ましいα−オレフィンアクリルエステルコポリマーゴムは、不飽和カルボン酸モノマー単位、例えば(メタ)アクリル酸もしくはマレイン酸から得られる酸単位、または例えば無水マレイン酸から得られる無水物単位、または例えばマレイン酸モノエチルから得られる部分エステル単位を含む。好ましい実施形態において、ポリマーは、エチレン、C
1〜C
4アルキルアクリレートおよびカルボン酸モノマー単位のターポリマーであり、より好ましくは、そのようなターポリマーは、少なくとも約30モルパーセントのエチレン、約10から約69.5モルパーセントのマレイン酸モノエチルを含む。すべての場合において、α−オレフィンアクリレートゴムは本質的に非結晶性であり、室温より低い、すなわち約20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。
【0240】
官能性の酸、ヒドロキシ、エポキシ、イソシアネート、アミン、オキサゾリン、ジエンまたは他の反応性官能基を含有する他のコモノマーには、ジエンモノマー、例えばアルキリデンノルボルネン、アルケニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンおよびそのダイマー等の非共役ジエン、ならびにブタジエンおよびイソプレン等の共役ジエンが含まれる。ジヒドロジシクロペンタジエニル基含有(メタ)アクリレートの例には、ジヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレートおよびジヒドロジシクロペンタジエニルオキシエチル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0241】
官能性コモノマーのさらなる例には、4から10個の炭素原子を有するα,β−オレフィン性不飽和カルボン酸のN−アルキロールおよびN−アルコキシアミド、例えばN−メチロールアクリルアミド、N−エタノールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エタノールメタクリルアミド、n−ブトキシアクリルアミドおよびイソブトキシアクリルアミド、N−メチロールマレイミド、N−メチロールマレアミド、N−メチロールマレアミド酸、N−メチロールマレアミド酸エステル、ビニル芳香族酸のN−アルキロールアミド、例えばN−メチロール−p−ビニルベンズアミド等およびその他の物質が含まれる。N−アルキロールアミド型の好ましいモノマーは、N−メチロールアクリルアミド、N,N’−ジメチロールアクリルアミドおよびN−エトキシメチロールアクリルアミド;ならびにN−置換メタクリルアミド、例えばN−メチロールメタクリルアミド、N,N’−ジメチロールメタクリルアミドおよびN−エトキシメチルメタクリルアミドである。その入手の容易性および比較的低いコストのため、α,β−モノオレフィン性不飽和モノカルボン酸の好ましいN−アルキロールアミドは、N−メチロールアクリルアミドならびにN−メチロールおよびn−ブトキシメタクリルアミドである。
【0242】
活性水素と反応性の基またはそれ自体が活性水素基を含有する基を保有する官能性コモノマーの他の例は、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルアクリレートを含むエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物である。活性水素含有エチレン性不飽和化合物の具体例には、ビニルベンジルクロリド、ビニルベンジルブロミド、2−クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル、クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリル、クロロプロピオン酸アリル、2−クロロエチルアクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、クロロメチルビニルケトンおよび2−クロロアセトキシメチル−5−ノルボルネンが含まれる。一般的なカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物の具体例には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ペンテノイック酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が含まれる。
【0243】
他のエチレン性不飽和(メタ)アクリル酸エステルコモノマーの例には、オクチルメタクリレート;2−シアノエチルアクリレート、3−シアノプロピルアクリレート、および4−シアノブチルアクリレート等のシアノ置換アルキル(メタ)アクリレート;ジエチルアミノエチルアクリレート等のアミノ置換アルキル(メタ)アクリレート;1,1,1−トリフルオロエチルアクリレート等のフッ素含有アクリレート;ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシル基置換アルキル(メタ)アクリレート;メチルビニルケトン等のアルキルビニルケトン;ビニルエチルエーテルおよびアリルメチルエーテル等のビニルまたはアリルエーテル;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレンおよびビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミド等のビニルアミド;ならびにエチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、酢酸ビニル、フマル酸アルキル等が含まれる。
【0244】
アクリル酸およびアクリレートがエラストマーフィルム形成コポリマー骨格の一部である場合、アミノ基転移反応は、アミノアルコール、例えば2−アミノ−1−エタノールを使用することによりペンダントヒドロキシル官能基を生成することが知られている溶融加工技術において行うことができる。ペンダントヒドロキシルによるさらなる反応、すなわち別のアクリレート連結とのエステル交換が生じて架橋が形成され得、生成物の粘度の増加が好ましくは回避される。
【0245】
アクリル酸エラストマー
官能化アクリレートエラストマーは、ガラス転移温度が−10℃未満である場合に好適であり、主要量(全ポリマー重量を基準として50wt.%を超える)の以下の一般構造
【0246】
【化6】
【0247】
(式中、R
1は水素またはメチルであり、R
2はC
1〜C
20アルキル、C
2〜C
7アルキル、C
2〜C
7アルコキシアルキル、C
2〜C
7アルキルチオアルキル、C
2〜C
7シアノアルキルを表す)を有する1種または複数種の共重合性α,β−エチレン性不飽和エステルモノマー、および少量の活性水素基保有コモノマーまたは活性保有基グラフト結合官能性部位から得られる付加ポリマーとして定義される。アクリレートは、様々な商業的供給元から、固体梱包物で、およびエマルジョンまたはラテックスとして入手可能である。全アクリレートゴム重量を基準として約35%までの少量の固化またはT
g増加コモノマー、例えばいくつか例を挙げると、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニリデンおよび/またはスチレン等を含めることができる。望ましくは、活性水素、または活性水素含有硬化剤と反応性の基を有する官能基保有コモノマーは、不飽和モノカルボン酸(例えばアクリル酸もしくはメタクリル酸)またはポリカルボン酸(例えばイタコン酸、シトラコン酸等)またはポリカルボン酸の無水物である。
【0248】
単独および組合せとしての好適なアクリル酸またはメタクリル酸モノマーの具体例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート等が含まれる。好ましいコポリマーは、それぞれ構造(I)(R
1は水素であり、R
2はC
4〜C
8アルキルまたはC
2〜C
8アルコキシアルキルであり、そのどちらかが1級、2級または3級C原子を含有し得る)を有する1種または2種の異なる共重合性モノマーを含む。より好ましいC
4〜C
8アルキルアクリレートの例は、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートであり、好ましいC
4〜C
8アルコキシアルキルアクリレートの例は、メトキシアクリレートおよびエトキシエチルアクリレートであり、好ましいアルキルチオアルキルアクリレートの例は、メチルチオエチルアクリレートであり、好ましいC
2〜C
7シアノアルキルアクリレートの例は、シアノエチルアクリレートおよびシアノプロピルアクリレートであり、また上記の2種以上の混合物が使用されてもよい。
【0249】
アクリル酸エラストマーに好ましい活性水素保有コモノマーには、活性水素を保有する上述の官能性コモノマーの多くが含まれ、そのうちのいくつかをここで繰り返すと、カルボン酸無水物、カルボンアミド、N−置換カルボンアミド、アルデヒド、アルキルおよびアリールケト、ヒドロキシラジカル、アリル塩素ラジカル、メチロール、マレイミド、ビス−マレイミド、アルキルN−メチロール、フェノールメチロール、チオールラジカル、アミノラジカル、イソシアネートラジカル、アルコキシアルキルラジカル、オキシランラジカル等を含有するコモノマーが含まれる。α,β−不飽和ヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の無水物が好ましい。ポリマーがアクリレートエステルとカルボン酸または無水物コモノマーのコポリマーのみである場合、それらは、望ましくは約90から約98モルパーセントのアクリレートエステル由来反復単位、より望ましくは約92から約97または98モルパーセントのエステル、および2から10%のカルボン酸または無水物、より好ましくは3から8%のカルボン酸または無水物を有する。
【0250】
コポリマーの付加重合中に無作為に組み込まれる例示的な官能性コモノマーには、グリシジルメタクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸、無水マレイン酸、N−アルキルマレイミド、アクリルアミド、N−アルコキシアルキルアクリルアミド、例えばN−イソブトキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド等、メチルビニルケトン、アクロレイン、ビニルイソシアネート、ヒドロキシアルキルアクリレート、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が含まれる。そのような官能性モノマーの2種以上の混合物もまた含まれる。
【0251】
いわゆるコアシェルポリマーは、アクリル酸エラストマーに含まれる。ソフトシェルコポリマーに有用なゴム状コポリマーには、そのホモポリマーのT
gが−10℃未満である少なくとも1種のアクリルモノマーと、第2の共重合性官能性モノマーとのコポリマー組成物が含まれる。これらのモノマーは、得られるアクリルコポリマーのT
gが約−10℃より高く上昇しないように選択された(1種または複数種の)低T
gアクリルコモノマーに対して、少ない割合の上述のモノビニルまたはビニリデンモノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等の存在下で重合することができる。
【0252】
コアシェルアクリル付加コポリマーは、少なくとも1つの反応性官能ラジカルを含有するモノエチレン性不飽和モノマーとして定義される、第2の共重合性官能性モノマーをさらに含み得る。第2の官能性モノマーは、2種以上のそのような官能性モノマーを含有する混合物を含むコアコポリマーの調製に有用な、上記で定義されたもののいずれであってもよいが、ただし前記第2の官能性モノマーの反応性官能ラジカルは、コアコポリマーに含有される第1の官能性モノマーの反応性官能ラジカルと反応できなければならない。その意味では、コアコポリマーに含有される反応性官能性モノマーおよびシェルコポリマーに含有される反応性官能性モノマーは、相補的または相互作用的である。シェルコポリマーは、当技術分野において広く実践されているように、さらなるグラフト部位を提供するために、約2wt.%以下の共重合性ジビニルまたはトリビニルモノマー、例えばグリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、トリアルキルシアヌレート等を含有し得る。
【0253】
シェルコポリマーは付加ポリマーであり、広範な組成範囲にわたり変化し得るが、ほとんどの目的において、コポリマーは、約99.9から約95wt%の少なくとも1種のゴム状モノマーおよび約0.1から約5wt.%の第2の共重合性官能性モノマーを含む。好ましいシェルコポリマーは、アルキルアクリレートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートのコポリマーである。
【0254】
順次重合した官能化付加ポリマーをベースとした本発明のエラストマー性コーティングは、2つのガラス転移温度を示すことができ、そのうちの1つは0℃未満であり、1つは0℃を超える。ゴム状シェルコポリマー成分の量、および剛性成分とゴム状成分の割合は変動し得るが、ほとんどの目的において、ゴム状シェルコポリマーに対する硬質コポリマー成分の比率は1未満であり、つまりゴム状成分の量は50%を超える主要な割合を占める。
【0255】
二官能性(ハロ、カルボキシ)アクリル付加ポリマーもまた、本発明の有機溶媒性の実施形態用のフィルム形成物質として有用であり、アクリルエステルモノマーまたはモノマー混合物由来の反復単位を含み、エラストマーにおいて−20℃未満のガラス転移温度を示す。官能基は、約0.1重量%から約30重量%、好ましくは0.2重量%から約15重量%の活性水素含有コモノマーと、約0.1重量%から約20重量%のカルボキシル基含有コモノマーとの組合せから提供される。ハロゲン含有コモノマーの好ましいレベルにおいて、ハロゲン含量は、官能化アクリルゴムの約0.1重量%から約5重量%である。ハロゲン含有コモノマーのハロゲン基は、塩素、臭素、またはヨウ素であってもよい。経済性、入手可能性および安全性の点で、塩素含有コモノマーが好ましい。ハロゲン含有コモノマーの例は、クロロ酢酸ビニル、ブロモ酢酸ビニル、クロロ酢酸アリル、クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酪酸ビニル、ブロモ酪酸ビニル、2−クロロエチルアクリレート、3−クロロプロピルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、2−ヨードエチルアクリレート、2−クロロエチルビニルエーテル、クロロメチルビニルケトン、4−クロロ−2−ブテニルアクリレート、ビニルベンジルクロリド、5−クロロメチル−2−ノルボルネン、5−α−クロロアセトキシメチル)−2−ノルボルネン、5−(α,β−ジクロロプロピオニルメチル)−2−ノルボルネン等である。好ましいモノマーは、クロロ酢酸ビニル、クロロ酢酸アリル、2−クロロエチルアクリレート、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルベンジルクロリド、5−クロロメチル−2−ノルボルネン、および5−クロロアセトキシメチル−2−ノルボルネンである。
【0256】
アクリルゴムに好ましい活性水素保有コモノマーは、少なくとも1種のカルボキシル基含有コモノマーの約0.1重量%から約20重量%、好ましくは約0.2重量%から約10重量%、より好ましくは2重量%から約6重量%で存在する。カルボキシルコモノマーは、好ましくは、モノカルボン酸であるが、ポリカルボン酸であってもよい。好ましいカルボキシルコモノマーは、3から約8個の炭素原子を含有する。そのような好ましいコモノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、β,β−ジメチルアクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、2−ヘキサン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸等である。最も好ましいカルボキシルコモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のモノカルボン酸モノマーである。
【0257】
官能基含有コモノマーは、上で紹介したように、最も便利には、アクリレートエラストマーの付加重合中に組み込まれる。従来の懸濁液、エマルジョン、溶液およびバルク法による重合が好適である。これらの重合は、フリーラジカル開始剤を用いて開始される。エマルジョン重合法が好ましい。当技術分野および文献において知られた様々な従来の石鹸、乳化剤および界面活性剤を、エマルジョン重合官能性アクリレートゴム合成に使用することができる。二官能性アクリレートエラストマーの重量平均分子量は、一般に100,000を超える。商用グレードは、Zeon Chemicals社からHYTEMP(登録商標)の商標で入手可能である。
【0258】
活性水素官能基を含有する様々なC
2〜C
8アルキルエステルコポリマーラテックスが知られており、様々な商業的供給元から入手可能である。ラテックス形態の好ましいアクリルゴムは、Noveon(登録商標)からHYSTRETCHの商標で入手可能である。20℃未満のT
gを示す、n−ブチルアクリレート、アクリロニトリル、N−メチロールアクリルアミドおよびイタコン酸のエマルジョン重合コポリマーは、水性コーティング実施形態における使用に好ましいフィルム形成物質である。
【0259】
本明細書に記載されるフィルム形成物質の要件に適合するウレタン修飾アクリル材料もまた企図される。ウレタン修飾アクリレートポリマーは、湿気により、硬化剤を用いて硬化される。そのようなウレタン修飾アクリレートのガラス転移温度は0℃以下でなければならず、主要量(50重量%またはmole%を超える)のC
2〜C
8アクリルエステルまたはメタクリルエステルを含む。本発明において使用可能な好ましいウレタン修飾アクリル樹脂の例は、60から70モルのメチル、エチルもしくはブチルアクリレートまたはこれらの混合物を、5から50モルのメタクリル酸および30から80モルの2−ヒドロキシメチルメタクリレートと共重合させることにより生成されるアクリルコポリマーである。ヒドロキシルおよびカルボキシル基の一部またはすべては、α,β−エチレン性不飽和イソシアネート、例えばメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2−イソシアネートエチルメタクリレート)等との反応においてキャッピングされる。この材料は湿気硬化性であり、従来の光開始剤の組込みにより、紫外線で硬化可能である。湿気硬化性アクリロウレタン実施形態において、2−ヒドロキシエチルメタクリレート単位からのヒドロキシル基の少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも50モル%がメタクリロイルオキシエチルイソシアネートと反応していることが好ましい。α,β−エチレン性不飽和イソシアネートは、好ましくは、イソシアネートとヒドロキシル含有モノマー、例えばN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、および4−ヒドロキシブチルメタクリレート等との反応生成物をベースとし、任意選択で、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランまたは3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の1級2級アミン、N−メチル−またはN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の2級アミン、ビス(3−アミノプロピル)テトラメトキシまたはテトラエトキシジシロキサンNH
2(CH
2)
3−−Si(OCH
3)
2−−O−−(CH
3O)
2Si−−(CH
2)
3NH
2等の縮合アミノアルキルシラン、「Dynasylan121」の商標で販売されているもの等のポリグリコールエーテル修飾アミノシラン、およびHuls AG社から入手可能な「Dynasylan TRIAMO」等のトリアミノ官能性プロピルトリメトキシシランとともに使用されてもよい。2個または3個ケイ素原子を有する類似のシランもまた使用することができる。
【0260】
マレイン化エラストマー性材料
ポリエチレンをベースとしたマレイン化付加ポリマーの、様々なポリマーブレンド、アロイおよび動的加硫複合材、例えばマレイン化ポリプロピレン、マレイン化スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロックコポリマー、マレイン化スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、マレイン化エチレン−プロピレンゴム、およびこれらのブレンドを、本発明による官能化フィルム形成エラストマーとして使用することができる。マレイン化エラストマーは、適切な有機溶媒系に溶解される。
【0261】
エチレンビニルエステルコポリマー
フィルム形成溶媒可溶性OH官能性エチレンコポリマーは、カルボキシルまたはヒドロキシル官能基を含有する様々なグレードで入手可能であり、また本明細書において使用されるフィルム形成物質として好適である。従来から、これらのポリマーのいくつかは架橋性ホットメルト接着剤として使用されているが、これらのポリマーは、高温粘着性は比較的低いものの、本明細書における周囲温度硬化放射性コーティングフィルムに容易に適合可能である。ヒドロキシル官能基を含有するエチレンビニルエステルポリマーは、放射性コーティング組成物における使用に適合させることができ、ブロック化されていないイソシアネートで硬化することができ、硬化したコーティングが流動する温度を超えないある特定の環境温度で十分な特性を提供する。OH基を含有するエチレン酢酸ビニルコポリマーは、エチレンおよびビニルアルコール、ならびに任意選択で酢酸ビニルのモノマー単位を有するポリマーをベースとし、溶融粘度は、好ましくは180℃で4から40Pa.sである。エチレンビニルアルコールコポリマーは、好ましくは少なくとも5wt%のビニルアルコール単位を有する。一例は、ビニルアルコール10%、エチレン88.75%および酢酸ビニル1.2wt%を有するターポリマー(粘度は180℃で20Pa.s、MFRは125℃、325gmの負荷で6.4gm/10分)である。融点は101.5℃である(DSCによる)。別のターポリマーは、ビニルアルコール13.7wt%、エチレン82.3%および酢酸ビニル4.0wt%を含有する(粘度は180℃で5.8Pa.s、MFRは125℃、325gmで30.4gm/10分、DSC融点は91℃)。好ましい相互貫入型ネットワークにおいて、官能基を有するかまたは有さない、ランダムまたはブロックコポリマー、例えばSBS、EBS、EPMおよびEPDM、水素化ポリジエンコポリマー、アクリルゴム、および上述のフィルム形成物質のその他としてのオレフィンゴムポリマーは、部分加水分解エチレン酢酸ビニルポリマーと、それぞれ10−90wt.%から90−10wt.%の割合でブレンドされ、本明細書に開示された好適な硬化剤のいずれか、およびその等価物により硬化される。
【0262】
官能化EPMおよびEPDMエラストマー
官能化EPMおよびEPDMエラストマーは、放射性コーティング中のフィルム形成物質として使用される好適なフィルム形成エラストマーである。これらは、ポリエン、通常は非共役ジエンコモノマーと共重合した2種以上のα−モノオレフィンを含む。有用なポリエンには、5−エチリデン−2−ノルボルネン;1,4−ヘキサジエン;5−メチレン−2−ノルボルネン;1,6−オクタジエン;5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;ジシクロペンタジエン;5−ビニル−2−ノルボルネン等;またはこれらの組合せが含まれる。EPMおよびEPDM官能化エラストマーに好ましいポリエンは、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンおよび1,4−ヘキサジエンである。官能基は、上述の従来の経路、および本明細書に開示されたメタセシス経路により組み込むことができる。
【0263】
本発明における開示された方法の一態様において、カルボキシル官能基、脂肪族または芳香族ヒドロキシル官能基等の有機酸官能基、およびスルホン酸官能基、リン酸官能基等の無機酸官能基を含有するポリマーの生成のための特に有用なスキームが提供される。
【0264】
ペンダントカルボキシル、ヒドロキシルまたは非立体障害性ペンダントオレフィン官能基を組み込むための、EPMおよびEPDMゴムに対する1つのそのようなスキームを以下に示す。
【0265】
【化7】
【0266】
式中、nは、反復エチレン単位の従来の数を表し、mは、プロピレン反復単位の従来の数を表し、oは、従来のジエンモノマー反復単位の数を表し、pは、マレイン化ジシクロペンタジエンの反復単位の1から100の範囲の数を表す。ビニル不飽和を含有するブタジエン−アクリロニトリルコポリマー等、共役ジエンポリマーに官能基を組み込むために、EPDMを修飾するための上記の同じ手法を使用することができる。
【0267】
0℃未満のT
gを有する好ましい官能化フィルム形成ポリマーの例には、カルボキシル化水素化ニトリルゴムおよびエチレン−カルボキシルコポリマー(DuPont社からVamac(登録商標))の商品名で販売されている)が含まれる。
【0268】
硬化成分
硬化成分は、フィルム形成ポリマー上の官能基と相互反応性の少なくとも1つのシリコン結合基を含有する四価シラン化合物である。1つのそのような基は、加水分解性基、または縮合によりフィルム形成物質ポリマー上の官能基と相互作用する基である。シリコーン結合基は、フィルム形成物質ポリマー上の相互反応基と相互反応性の活性水素保有基であるか、または、シリコーン結合基は、フィルム形成物質ポリマー上の活性水素保有基と相互反応性である。シラン結合基に提供される反応基には、アルコキシ、ヒドロキシ、メルカプト、イソシアナト、ハロ、アミノ、フェノール、グリシド等が含まれる。これらのシラン化合物はすべて既知であり、複数の商業的供給源から入手可能である。代表的なヒドロキシアルキル基含有シランは、一般構造:
【0269】
【化8】
【0270】
(式中、Rは、本明細書におけるすべての場合において、1から20個の炭素原子を有する二価の脂肪族、脂環式または芳香族飽和または不飽和ラジカルであり、好ましくは、1から9個、最も好ましくは2から4個の炭素原子を有するアルキレンラジカルであり;R
1は、1から20個の炭素原子を有する一価の脂肪族、脂環式または芳香族ラジカルであり、好ましくは、
【0271】
【化9】
【0272】
1から4個の炭素原子を有するアルキルラジカル、4から7個の環炭素原子を有するシクロアルキルラジカル、および6、10または14個の核炭素原子を有するアリールラジカルからなる群から選択され、1から4個の炭素原子を有する1つまたは複数の置換アルキル基を含有するそのようなアリールラジカルを含み;R
2は、1から8個の炭素原子を含有する一価脂肪族、脂環式または芳香族有機ラジカルであり、好ましくは、1から4個の炭素原子を有するアルキルラジカル、R
3−−O−−R
4からなる群から選択され、R
3は、1から4個の炭素原子を有するアルキレン基(メチル、エチル、プロピル、ブチル)であり、R
4は1から4個の炭素原子を有するアルキル基であり;aはゼロまたは1、好ましくはゼロである)を有する;
アミノ官能性シランには、構造(B)
【0273】
【化10】
【0274】
(式中、R、R
1、R
2およびaは、(A)に関して上で定義された通りであり;R
5は、水素、1から8個の炭素原子を有する一価脂肪族ラジカル、4から7個の環炭素原子を有する一価脂環式ラジカル、6個の核炭素原子を有し、1から4個の炭素原子を有する1つまたは複数の置換アルキル基を含有するフェニル、アルカリル基、および−−R
6−−NH−−R
7からなる群から選択され、R
6は、1から20個の炭素を有する二価脂肪族、脂環式および芳香族ラジカルからなる群から選択され、好ましくは少なくとも2個の炭素原子が窒素原子の任意の対を分離し、R
6は、好ましくは2から9個の炭素原子のアルキレン基であり、R
7はR
5と同じであり、好ましくは水素である)を有するものが含まれる。
メルカプト官能性シランには、構造(C)
【0275】
【化11】
【0276】
(式中、R、R
1、R
2およびaは、(A)に関して上で定義された通りである)を有するものが含まれる。
【0277】
他の有機シラン化合物は、1から20個の炭素原子を有する単一の有機鎖、および好ましくは少なくとも3個の相互接続された炭素原子の鎖によりケイ素原子から離れた官能基に結合した、少なくとも1個の引き抜き可能な水素原子を有する。
【0278】
活性水素基を含有する代表的な有機シランは、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノイソブチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルフェニルジエトキシシラン、δ−アミノブチルトリエトキシシラン、γ−アミノブチルメチルジエトキシシラン、δ−アミノブチルエチルジエトキシシラン、γ−アミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N−メチル−g−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N−エチル−δ−アミノブチルトリエトキシシラン、N−γ−アミノプロピル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノイソブチルトリエトキシシラン、N−γ−アミノプロピル−δ−アミノブチルトリエトキシシラン、N−アミノヘキシル−γ−アミノイソブチルメチルジエトキシシラン、メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシジエトキシシラン等である。
【0279】
硬化剤として、または他の官能基含有硬化剤との組合せとして、いかなる中和度にも無関係に、(Si−−OH結合)を有するヒドロキシシラン、例えばシランジオールまたはシラントリオールもまた好適である。シラノールは、好ましくは、第1の接続基を介してケイ素に接続された少なくとも1つの求核試薬を含有する。本明細書において使用される場合、「中和された」という用語は、シラノール基の少なくともいくつかが、一塩基、二塩基または三塩基アルカリ金属塩の形態であることを意味する。中和の程度は、シラノールの縮合性基の縮合の50%以下を阻害するのに十分な量である。硬化剤は、以下のように表される部分的に中和されたシラノールであってもよい。
【0280】
【化12】
【0281】
式中、nは1、2、または3であり;mは0、1、または2であり;pは0または1、好ましくは0であるが、ただしm+n+p=3であり;Rは第1の結合基であり;M
+はアルカリ塩形成金属であり;Yは求核性基を含有し;R’は、直鎖、分岐鎖、または環状のC
1〜C
8アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはメチルである。
【0282】
接続基Rは、好ましくは、直鎖、分岐鎖、または環状アルキレン基、またはアリーレン基、またはこれらの組合せであり、それ自体求核性であってもよい1個または複数のヘテロ原子を含有し得る。より好ましくは、XはC
2〜C
6アルキレン基または−−R’−−NH−−R’−−であり、式中、各R’は、独立してC
2〜C
4アルキレン基である。
【0283】
好適な求核基の例には、アミン、フェノール、メルカプタン、およびカルボキシレートが含まれ、1級および2級アミンならびにメルカプタンが好ましく、1級および2級アミンがより好ましく、1級アミンが最も好ましい。部分的に中和されたアミノシラントリオールの具体例は、典型的には、3−アミノプロピル−シラントリオールおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−シラントリオールのカリウムまたはナトリウム塩である。
【0284】
好ましい硬化成分は、置換または非置換アルキルアミノ基を含有する少なくとも1つのシリコーン結合基、およびシランと縮合可能なシリコーンに結合した加水分解性基を有する。アミン基は、遊離したブロックされていない形態で、またはブロックされたアミノ基として存在し得る。アミン基のブロックは、メチルイソブチルケトンまたはメチルアミルケトンとの反応により提供され得る。シラン化合物と反応性の好ましい基は、好ましくはC
1〜C
4アルコキシ基である。アミノシランのクラスに含まれる硬化成分の例は、アミノプロピルトリエトキシまたはメトキシシランおよびアミノエチルアミノプロピルトリエトキシまたはメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランまたは3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の1級2級アミンを含有するシラン、N−メチル−またはN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の2級アミン、ビス(3−アミノプロピル)テトラメトキシまたはテトラエトキシジシロキサン、NH
2(CH
2)
3−−Si(OCH
3)
2−−O−−(CH
3O)
2Si−−(CH
2)
3NH
2等の縮合アミノアルキルシラン、「Dynasylan121」の商標で販売されているもの等のポリグリコールエーテル修飾アミノシラン、ならびにHuls AG社から入手可能な「Dynasylan TRIAMO」等のトリアミノ官能性プロピルトリメトキシシランであるが、これらに限定されない。2個または3個のケイ素原子を有する類似のシランを使用することができる。
【0285】
「加水分解性基」という用語は、室温で水により加水分解されるケイ素に結合した任意の基を意味する。加水分解性基Xには、水素、ハロゲン原子、例えばF、Cl、BrもしくはI;式−−OYの基(Yは、任意の炭化水素もしくはハロゲン化炭化水素基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、オクタデシル、アリル、ヘキセニル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、β−フェニルエチル、任意の炭化水素エーテルラジカル、例えば2−メトキシエチル、2−エトキシイソプロピル、2−ブトキシイソブチル、p−メトキシフェニルもしくは−−(CH
2CH
2O)
2CH
3;または任意のN,N−アミノラジカル、例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジフェニルアミノ、もしくはジシクロヘキシルアミノである)が含まれる。Xはまた、任意のアミノラジカル、例えばNH
2、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルフェニルアミノもしくはジシクロヘキシルアミノ;式−−ON=CM
2もしくは−−ON=CM’(式中、Mは、任意の一価炭化水素もしくはハロゲン化炭化水素ラジカルであり、M’は、その両方の原子価が炭素に結合した任意の二価炭化水素ラジカル、例えばヘキシレン、ペンチレンもしくはオクチレンである)の任意のケトオキシムラジカル;式−−N(M)CONM’’
2(式中、Mは、炭化水素もしくはハロ炭化水素ラジカルであり、M’’は、HもしくはMラジカルのいずれかである)のウレイド基;式−−OOCMM’’(式中、MおよびM’’は、上で定義されたもの、もしくはハロゲン化炭化水素ラジカルである)のカルボキシル基、または式−−NMC=O(M’’)(式中、MおよびM’’は、上で定義されたものである)のカルボン酸アミドラジカルであってもよい。Xはまた、硫酸基または式−−OSO
2(OM)(式中、Mは上で定義された炭化水素またはハロゲン化炭化水素ラジカルである)の硫酸エステル基;シアノ基;イソシアネート基;およびリン酸基または式−−OPO(OM)
2(式中、Mは上に定義されたものである)のリン酸エステル基であってもよい。
【0286】
使用される硬化成分の量は、官能性フィルム形成ポリマーの化学量を上回らなければならない。過剰の硬化剤は、成分AとBの混合物が作製された後に官能性ポリマーに硬化しない少なくとも50%の遊離シランを提供する量である。硬化成分の当量は200未満であり、フィルム形成ポリマー上の相互反応基の当量は、約1000以上である。重量基準で、フィルム形成物質100重量部当たり25から150部の硬化成分が存在し、フィルム形成物質は、硬化成分で硬化する官能基を10wt.%以下含有する。これは、はけ塗り、噴霧または浸漬を可能とする粘度および十分なポットライフを提供する上で不可欠である。任意選択で、低級脂肪族アルコールを添加することができる。好ましい溶媒は、MIBKおよび/またはアセトンである。
【0287】
放射特性を提供するこれらの実施形態において、効果的な輻射熱放射特性のために、金属伝導性顔料の有効量がコーティングに含有されて完全な表面被覆が提供される。「粒子」という用語は、不規則形状、顆粒形状、箔形状または複雑な複合形状を含む。熱反射顔料は、微粒子固体もしくは箔として、乾燥粉末形態もしくは分散液の形態で、または溶媒もしくは可塑化剤、例えばミネラルスピリット中のペーストとして、多くの形態で入手可能である。微粉化蒸着フィルムから得られるフレークが好適である。熱伝導性金属粒子には、真鍮、チタン、銀、またはアルミニウムの微粉化不規則粒子、または箔状粒子が含まれる。好ましくはリーフィングまたはノンリーフィングアルミニウムフレークとして導入された金属コーティング粒子/金属コーティングフィルムが含まれる。リーフィングアルミニウム粒子またはフレーク等のリーフィングフレークは、ステアリン酸等でコーティングされたものが市販されており、表面に塗布されると、粒子は最終放射性コーティングの表面に平行な交互配置構造で配向する。フィルム形成エラストマー100重量部当たり10から100重量部のレベルで使用された平均粒径が5から25μmの金属粒子は、5ミル(0.013cm)の薄膜としてキャストされた場合、効果的な輻射エネルギー放射性を提供しながら、応力亀裂を生じないようにコーティングに十分な曲げ疲労耐性を提供する。応力亀裂は、放射性能の損失を引き起こす。25から100ミクロンの平均粒径を有する金属粒子は、応力亀裂なしに十分な輻射熱放射性を提供するために、フィルム形成物質100重量部当たり少なくとも20重量部から150重量部までのレベルで使用されなければならない。アルミニウムフレークは、典型的には、直径約300ミクロン未満の平均粒径で入手可能である。高いアスペクト比を有する金属粒子の最大直径は、2つの大寸法(幅および長さ)、ならびに2つの大寸法より数分の1または数桁小さい1つの小寸法(厚さ)により、幾分不確定である。平均粒径を説明した供給元の仕様に信頼が置かれる。好ましくは、アルミニウムフレークは、約1から約100ミクロン、より好ましくは5から60ミクロン、さらにより好ましくは10から45ミクロンの数平均粒径を有する。好ましいアルミニウム粒子は、99.9%が325メッシュの篩を通過する、すなわち直径約45ミクロン未満、最も好ましくは8から35、特に10から20ミクロンの平均粒径であるような大きさのフレークである。
【0288】
リーフィング金属フレークは、特許文献63に記載のように、アルミニウムのペーストではなく乾燥フレークとして、および少なくとも約40wt−%のアルミニウムフレーク、より好ましくは約60から70wt−%のアルミニウムフレークを有する溶媒として導入され得る。金属粒子は、放射性能を示すためにフィルム形成ポリマーに対し上述の量で使用される。金属粒子の好ましい量は、フィルム形成物質100重量部当たり15から30重量部の範囲内である。この割合は、表面添加物、例えば表面活性剤、または接着促進剤、例えばシランの考慮を含んでいる。好ましい実施形態において、抗真菌金属粒子がエラストマー性コーティング組成物に組み込まれる。好ましい実施形態において、金属粒子は、前記エラストマー性コーティング上での真菌の成長が阻害されるように組み込まれ、好ましくは、抗真菌金属粒子は、少なくとも、飛行機運動制御デバイスの外部の外側表面近傍の外側(第2の)コーティング内に存在する。好ましい実施形態において、抗真菌金属粒子は、チタン、クロム、銀、亜鉛、銅、カドミウム、ニッケル、アルミニウムおよびコバルト、ならびにこれらの組合せを含む抗真菌金属粒子群から選択される。好ましい実施形態において、少なくとも1種の殺菌剤がエラストマー性コーティング組成物中に組み込まれる。一実施形態において、少なくとも1種の殺菌剤は金属粒子である。一実施形態において、殺菌剤はカルバメート、好ましくはヨウ素含有カルバメートである。一実施形態において、殺菌剤はヨウ素含有化合物である。一実施形態において、殺菌剤はヨード−プロピニルブチルカルバメート、例えばニュージャージー州ニューアークのTroy Chemical社からPOLYPHASE(登録商標)641として入手可能な3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメートである。
【0289】
第1のコーティング組成物の接着性は、コーティングの硬化後の物理特性と同様に不可欠である。硬化時のコーティングは、好ましくは100%伸長可能であり、歪みを示さない。すなわち、コーティングは、100%伸長まで引き伸ばされた場合、亀裂または柔軟なポリマー基材からの剥離を示さずに完全に回復する。
【0290】
コーティングフィルム強度
強化フィラーなしで硬化されると、Vamac(登録商標)等の非晶質エチレン−アクリルポリマーは、典型的には約400psiの引張強度を有する。ジイソシアネートで硬化された非強化X−HNBRの溶媒溶液は、約600から1000psiの引張強度を有する。特定レベルのモノマー性シラン硬化成分を使用して硬化されたこれらのポリマーのいずれも、驚くべき引張強度を有する。特定レベルを下回るシランレベルでは、コーティングは硬化するが、より高いレベルで得られる強度を有さない。以下の実施例は、硬化成分の割合の影響を示している。
【0291】
[実施例1]
重量部成分 1A 1B 1C 1D 1E MIBK 190.0 190.0 190.0 190.0 190.0 Therban.RTM.KA−8889(X−HNBR) 10.0 10.0 10.0 10.0 10.0 アミノプロピルトリエトキシシラン 7.5 10.0 12.5 −− −−アミノエチルアミノプロピル−− −−2.5 7.5 トリメトキシシラン引張強度(psi) 3150(21.72MPa) 3765(25.96MPa) 3205(22.10MPa) 605(4.17MPa) 1975(13.62MPa) 伸び(%)365 390 355 280 400
【0292】
上記結果からわかるように、フィルム形成ポリマー100部当たり硬化成分最小25有効部が、適当な強度を有するコーティング剤を与えるために必要とされるが、伸びは、適当な屈曲能力のための伸び特性を与えるために十分なままである。
【0293】
成分重量部 MIBK 145.0 145.0 145.0 145.0 145.0 Vamac.RTM.G(エチレンアクリル樹脂)15.0 15.0 15.0 15.0 15.0 アミノプロピルトリエトキシシラン 5.0 7.5 10.0 12.5 15.0 引張強度(psi) 1800(12.41MPa) 1915(13.20MPa) 3770(26.00MPa) 2745(18.93MPa) 2865(19.76MPa) 伸び(%) 565 560 660 580 545
【0294】
コーテッド基材実施例
メチルイソブチルケトン(MIBK、CAS No.108−10−1)中にTherban.RTM.KA−8889カルボキシル化水素化ニトリル−ブタジエンゴムまたはVamac.RTM.Gエチレンアクリルエラストマーを固形分濃度10.0重量%から25重量%に溶解させることによって、エラストマーコーティング剤を作製した。
【0295】
この溶液に、アミノプロピルトリエトキシシランまたはアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランを、溶液中エラストマーの固形分重量に基づいて25重量%から125重量%の濃度で添加した。これらのコーティング剤を、天然ゴム(Vamac.RTM.)、およびフルオロカーボンエラストマー(Viton.RTM.)をベースとしたゴム基材にコーティングするために用いた。接着性は、クロスハッチカットテープ接着性試験(General Motors仕様GM9770P、方法Bに準拠して)を用いて評価した。Viton.RTM.ゴム基材およびVamac.RTM.ゴム基材との接着は、基材に対する表面処理なしで優れていた。天然ゴムとの接着は、Chemlok.RTM.7701(塩素化代替品)での処理後に優れていた。これらのコーティングは、General Motors仕様GM9770P、方法A ナフサによるキューチップラブ試験(method A Q−tip rub test with naptha))に準拠してコーティング硬化試験、およびFord仕様BN 107−01に準拠してナフサによるクロッキング試験(Crocking Test with naptha)にも合格した。
【0296】
第2のコーティング
第2のエラストマー性コーティング組成物は、(A)フルオロエラストマーおよび(B)硬化剤を含む。さらに別の実施形態において、エラストマー性コーティング組成物は、(A)官能化フィルム形成プライマーを含む第1のプライマーコーティング剤、(B)シラン化合物、オリゴマーまたは、水分の存在でプライマーポリマー上の官能基と共反応性であるシリコーン結合基を有するポリマー、を含む。
【0297】
第2のコーティングのために本明細書で用いられるフルオロエラストマーは、疎水性である。「疎水性」によって、フルオロエラストマーの少なくとも80%が水不溶性モノマー由来であることが意味される。
【0298】
本明細書で開示される溶剤可溶性フルオロエラストマーのクラスは、周囲温度でエラストマー基材に対して硬化し、硬化後に少なくとも200%の伸びを与えることが見いだされた。このような伸びにより、従来のフルオロエラストマーコーティングで示される屈曲−亀裂における制限が克服される。第2のコーティング組成物のフルオロエラストマーの硬化は、フルオロエラストマー上の異なる硬化部位の間の鎖中に結合した少なくとも8個の介在原子を有する屈曲性架橋を与える。このような屈曲性架橋は、長期の屈曲性能、引張特性および伸び特性を与える。
【0299】
酸性硬化部位を有するフルオロエラストマーを代表するものには、カルボキシル化フルオロエラストマーが含まれる。これらの材料は、無水条件でカルボキシル基とアミノシラン上のモノ第一級アミノ基との間の結合の形成により硬化成分によって硬化すると考えられる。塩形成反応は、2つの塩橋硬化成分間および/または酸性ポリマー硬化部位への縮合反応で補完されると考えられる。向上した引張強度特性および伸び特性は、少なくとも8個の鎖間原子を有する屈曲性架橋結合の形成によって生じると考えられる。
【0300】
硬化成分とカルボキシル化フルオロエラストマーポリマー上の官能基との間の相互作用には、求電子試薬−求核試薬の相互作用が含まれる。フルオロエラストマーの酸性硬化部位、例えば、カルボキシル硬化部位は、カルボン酸基を保有するコモノマーの共重合によって、または重合後のポリマー上への酸性官能基の取込みによりフルオロエラストマーを変性するための種々の知られている方法によって与えることができる。
【0301】
フィルム形成ポリマー、特にフルオロエラストマーに一般に適用される「官能化」という用語は、(1)求電子試薬、求核試薬、特に活性水素保有部分が、共重合されるエチレン性不飽和コモノマーの一部であるか、または(2)求電子試薬、求核試薬、特に酸性水素保有化合物が、基材フルオロエラストマー、もしくは重合後(after− or post−polymerization)のフィルム形成物質にグラフト結合したグラフト結合性化合物の一部であることを意味する。以下の検討は、特にフルオロエラストマーに適用されるが、フルオロエラストマーコーティングの下でのプライマーとして本発明に有用なプライマーポリマーに同様に適用できる。
【0302】
フルオロエラストマー硬化部位は、ポリマー構造にイオン的および/または共有結合的に結合したようになるコモノマーまたはグラフト化合物であることができ、周囲温度で硬化成分と反応することができるペンダント基を与える。末端官能基は存在することができるが、フルオロエラストマーがフルオロエラストマー1グラム当たり2から6mg塩基の酸価を示すように、十分なペンダント硬化部位が形成される、または存在していることが重要である。
【0303】
非官能性フルオロエラストマーへの酸性の水素保有官能基またはそれとの共反応性基の取込みは、官能基保有化合物を適切な官能基前駆体に変換することによって、またはフルオロエラストマーが形成している、形成されかつ溶液中にある、もしくは形成されかつ溶融状態にあるときに、適切な前駆体基の直接の取込みによって与えられる。代表的な知られているポリマー後法(post−polymer method)には、「エン(Ene)」反応が含まれ、それにより、アリル水素は、求電子試薬に移動し、その後、2つの不飽和末端間、での、または溶液中もしくは加熱溶融状態における脱水素ハロゲン化繰返し単位にわたるフリーラジカル付加を介してカップリングする。
【0304】
しかし、フルオロエラストマーが溶融状態である場合に、高い機械的せん断を与えることができる手段、例えば、押出機が知られており、官能基を取り込むまたは適切な前駆体ラジカルを直接取り込む所望の反応をもたらすためにミルが使用される。一方、適切な前駆体または前駆体ラジカルに変換される官能基が、メタル化等の技術によって取り込まれ、その後適切な求電子試薬と反応するとき、硬化部位化合物の取込みは、好ましくは、溶液中のポリマーによって達成される。
【0305】
第2のコーティング組成物における使用のための求核性または求電子性架橋硬化部位を非官能性付加ポリマーにこれまでに与える、種々の重合後官能化技術が知られている。ヒドロキシル基は、本明細書で用いられる硬化成分との架橋反応をもたらすための有用な官能基である。米国特許第4,118,427号明細書では、高分子量飽和炭化水素ポリマー(ポリイソブチレンゴムまたはエチレン−プロピレンゴム等)をオゾン化し、その後、オゾン化物質を、例えば、ジイソブチル水素化アルミニウム等の還元剤を用いることにより、還元し、ヒドロキシル含有ポリマーを形成することによるヒドロキシル含有硬化性液体炭化水素プレポリマーが開示されている。
【0306】
フルオロエラストマー上に取り込まれ、かつ求電子性基置換硬化成分または加水分解性硬化成分と共反応性であることができる求核および/または酸性水素官能基の部分的な列挙は、ヒドロキシ−、メルカプト−、イソシアナト−、アミノ−、フェノール−、およびカルボキシル−基である。フルオロエラストマー上に取り込まれ、かつ求核基−置換硬化成分と共反応性である例示的な求電子性基は、ハロゲン化アルキル−、ハロゲン化ベンジル−、ハロゲン化アリル−、エステル−、エーテル−、酸無水物−基等である。フルオロエラストマーがペンダント求核基を有する場合、シラン硬化成分のシリコーン原子の少なくとも1つの原子価に対して与えられる対応する基には、アルコキシ−、ヒドロキシ−、メルカプト−、イソシアナト−、アミノ−、フェノール−、グリシド−、カルボキシル−、オキシラン−、ハロゲン化ベンジル−、ハロゲン化アリル、ハロゲン化アルキル、エステル、エーテル、および/または酸無水物−基も含まれることができる。
【0307】
本明細書で用いられるグラフト官能化フルオロエラストマーの実施形態フィルム形成物質は、フルオロエラストマーと、フルオロエラストマーに共有結合するグラフト結合性基および少なくとも1個の活性水素含有基(硬化成分の反応性基の1つに結合形成するヒドロキシル基、チオール基またはカルボキシル基を含むが、これらの限定されない)を有するグラフト剤との反応生成物である。グラフト変性フルオロエラストマー(A部)は、硬化成分(B部)と単純な混合によって混合され、基材にコーティングするために、ゲル化前に、予想ポットライフまたは可使時間内で使用される。
【0308】
本明細書で用いられる代表的なフルオロエラストマーには、1種または複数のフッ素化モノマーから誘導されるポリマーが含まれる。本明細書で用いられる好ましいフルオロエラストマーは、フッ化ビニリデン、およびヘキサフルオロプロピレン等のモノマーから誘導され、多くの供給業者から市販されている。フルオロエラストマーの例は、1,1−ジヒドロペルフルオロブチルアクリレートを含む2種以上のフッ素化モノマーの組合せ;フッ化ビニリデンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー;フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー;フッ化ビニリデンとヒドロペンタフルオロプロピレンとのコポリマー;テトラフルオロエチレンとプロピレンとのコポリマー;およびフッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレンと、テトラフルオロエチレンとのターポリマー;フッ化ビニリデンと、テトラフルオロエチレンと、ペルフルオロビニルエーテルとのターポリマー;フッ化ビニリデンと、テトラフルオロエチレンと、プロピレンとのターポリマー;フッ化ビニリデンと、ヒドロペンタフルオロプロピレンと、テトラフルオロエチレンとのターポリマーから得られる。本発明によって変性された最も好ましいフルオロエラストマーは、市販されているが、ただし、酸価が、フルオロエラストマー1グラム当たり2から6mg塩基であることを条件とする。フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、またはフッ化ビニリデンと、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンとのターポリマーである特定のViton(登録商標)は、本明細書において好適であるために十分な酸価を有すると考えられる。他の好適なフルオロエラストマーは、FLUOREL(登録商標)マークの下でDyneon、およびTECHNIFLON(登録商標)マークの下でAusimontから入手できる。
【0309】
フルオロエラストマーが、ポリマー1グラム当たり約2mgKPH未満の酸価を示す場合、コーティングは完全に硬化せず、十分な引張強度を発現しない。第一級アミンの当量対酸硬化部位の当量の比が約3:1未満である場合、同様な不完全な硬化および不十分なフィルム強靭性が生じる。酸価がポリマー1グラム当たり6mg塩基を超える場合、フィルムは不完全な伸びを示し、屈曲−亀裂に悪影響が及ぼされる。モノ第一級アミノシラン硬化剤は重要である。第二級アミノシランは、周囲温度の硬化を示さない。
【0310】
共重合性コモノマーは、好ましくはモノカルボン酸であるが、ポリカルボン酸であることもできる。好ましいカルボキシルコモノマーは、3から約8個の炭素原子を有する。このような好ましいコモノマーの例は、アクリル酸、メタアクリル酸、エタクリル酸、β,β−ジメチルアクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸等である。最も好ましいカルボキシルコモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のモノカルボン酸モノマーである。
【0311】
本明細書でプライマーポリマーとして有用なポリ(オレフィン/アクリル酸エステル/カルボキシレート)コポリマーは、未硬化状態で熱可塑性であり、プライマーコーティングの一部としての使用のために好適に屈曲性である。これらは主として、少なくとも1種のα−オレフィンを、少なくとも1種のC
1〜C
18アルキル(メタ)アクリレートおよび(ポリイソシナネート、カルボジイミド、および他の硬化剤等の材料と架橋を形成するために利用しやすい)少量の不飽和プロトン性官能基保有コモノマーと重合させることによって生成されるコポリマーである。官能基保有コモノマーは、エチレン性不飽和基、および(酸、ヒドロキシ、エポキシ、イソシアネート、アミン、オキサゾリン、ジエンまたは他の反応性基を保有する)基を含むことができる。このような官能化モノマーの非存在下では、架橋部位は、例えば、ペンダントエステル基の部分加水分解によってα−オレフィン−エステルコポリマー中に生成させることができる。このようなオレフィンコポリマーのフィルム形成エラストマーの重合に好適なα−オレフィンには、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、オクテン、および組合せを含む同様のものが含まれる。C
2〜C
4α−オレフィンは好ましく、エチレンは最も好ましい。
【0312】
アルキルまたはアルコキシ(メタ)アクリレート酸およびエステルは、α−オレフィンプライマーポリマー中への取込みのための例示的な官能化コモノマーである。アルキル基の具体的な例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基およびデシル基;シクロアルキル基(シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等);アリール基(フェニル基およびトリル基等);ならびにアラルキル基(ベンジル基およびネオフィル基等)である。アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基およびオクトキシ基が含まれる。
【0313】
α−オレフィンと共重合させるための好適なアルキルまたはアルコキシ(メタ)アクリレートには、メチルアクリレート、エチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキアクリレート、メトキシアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリルアミド、およびメタクリルアミド等、またはそれらの混合物が含まれる。オレフィンモノマーと共重合できる官能性エチレン性不飽和モノマーの具体的な例は、不飽和カルボン酸のアルキルエステル(メチルアクリレートおよびブチルアクリレート等)と場合によって組み合わせた、不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸ならびにそれらの塩等)である。
【0314】
官能性酸、ヒドロキシ、エポキシ、イソシアネート、アミン、オキサゾリン、ジエンまたは他の反応性官能基を有する他のコモノマーには、ジエンモノマー、例えば、非共役ジエン(アルキリデンノルボルネン、アルケニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンおよびそれらの二量体等)および共役ジエン(ブタジエンおよびイソプレン等)が含まれる。ジヒドロジシクロペンタジエニル基含有(メタ)アクリレートの例には、ジヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレートおよびジヒドロジシクロペンタジエニルオキシエチル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0315】
プライマーポリマーとして有用な好ましいオレフィン/アクリル酸エステルコポリマーは、不飽和カルボン酸モノマー単位((メタ)アクリル酸またはマレイン酸由来等)、酸無水物単位(例えば、無水マレイン酸由来)または部分エステル単位(例えば、マレイン酸モノエチル)を取り込む。好ましい実施形態において、そのポリマーは、エチレンと、C
1〜C
4アルキルアクリレートと、カルボン酸モノマー単位とのターポリマーであり;より好ましくは、このようなターポリマーは、少なくとも約30モルパーセントのエチレン、約10から約69.5モルパーセントのマレイン酸モノエチルを含む。すべての場合において、α−オレフィンアクリレートゴムは本質的に非結晶性であり、約20℃未満のガラス転移点(Tg)を有することが好ましい。エチレン−カルボキシレートコポリマーは、VAMAC(登録商標)マークの下で市販されている。
【0316】
プライマーコーティング剤を製造するために好適なプライマーポリマーは、種々のポリマーブレンド、アロイ、力学的加硫ポリオレフィン、ポリエチレンをベースとしたマレイン化付加ポリマーの複合体、例えば、マレイン化ポリプロピレン、マレイン化スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロックコポリマー、マレイン化スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、マレイン化エチレン−プロピレンゴム、およびそれらのブレンドから選択することができ、本発明に従って、官能化フィルム形成エラストマーとして用いることができる。
【0317】
フルオロエラストマーコーティング前に塗布される最も好ましい官能化フィルム形成プライマーポリマーは、0℃未満のT
gを有し、カルボキシル化水素化ニトリルゴムおよびカルボキシ変性エチレンコポリマー(DupontによりVamac(登録商標)の商品名で販売されている)から選択される。
【0318】
本明細書で用いられるモノ第一級アミノ官能性シラン硬化剤には、構造(B)
【0319】
【化13】
【0320】
(式中、R、R
1、R
2およびaは、(A)について前に定義された通りであり;R
5は、水素、1から8個の炭素原子を有する一価脂肪族基、4から7個の環炭素原子を有する一価脂環式基、フェニル、(6個の核炭素原子を有し、かつ1個または複数の、1から4個の炭素原子を有する置換基アルキル基を含む)アルカリル基、および−R
6−NH−R
7からなる群から選択され、ここで、R
6は、1から20個の炭素を有する二価の脂肪族基、脂環式基および芳香族基からなる群から選択され、窒素原子の任意の対を隔てる好ましくは少なくとも2個の炭素原子が存在しており、ここで、R
6は好ましくは2から9個の炭素原子のアルキレン基であり、R
7はR
5と同じであり、好ましくは水素である)を有するものが含まれる。
【0321】
モノ第一級アミンである代表的な硬化剤には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノイソブチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルフェニルジエトキシシラン、δ−アミノブチルトリエトキシシラン、δ−アミノブチルメチルジエトキシシラン、δ−アミノブチルエチルジエトキシシラン、γ−アミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N−メチル−g−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N−エチル−δ−アミノブチルトリエトキシシラン、N−γ−アミノプロピル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノイソブチルトリエトキシシラン、N−γ−アミノプロピル−δ−アミノブチルトリエトキシシラン、N−アミノヘキシル−γ−アミノイソブチルメチルジエトキシシラン、メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシジエトキシシランから選択されるもの、または3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランもしくは3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、縮合アミノアルキルシラン[ビス(3−アミノプロピル)テトラメトキシまたはテトラエトキシジシロキサンNH
2(CH
2)
3−−Si(OCH
3)
2−−O−−(CH
3O)
2Si−(CH
2)
3NH
2等]、ポリグリコールエーテル変性アミノシラン(「Dynasylan121」の商標名のもとで販売されているもの等)およびトリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン(Huls AGから入手可能な「Dynasylan TRIAMO」等)として示される通りのものが含まれる。
【0322】
硬化成分は、1種のみの第一級アミンおよび少なくとも1種の加水分解性基、好ましくは最大4個の加水分解性基を含まなければならない。フルオロエラストマー硬化部位間の架橋の形成において、シランは水がない場合にフルオロエラストマーに結合し、このことにより酸性硬化部位への最初のイオン結合であると考えられ、FK−O
-−NH
+−R−Si−ORを介してフルオロエラストマーから伸び、ここで、FKは酸性硬化部位でのフルオロエラストマーであり、Rは、任意のC、O、NおよびS部分を含む任意の二価ヒドロカルビル部分である。隣接するSi−OR基の連結は、水分誘導縮合によって進むと考えられる。架橋鎖を示す多くの知られている有機シランによって与えられる無数のヒドロカルビル基があり、本明細書で提供されるいくつかの実施例から容易に理解できる。2個の共反応性架橋性基は、フルオロエラストマーを架橋する合計で少なくとも8個の原子、好ましくは架橋ポリマー硬化部位間の10〜16個の連結原子を与える。好ましいヒドロカルビル基は、C
2〜C
6置換または非置換のアルキレン基である。それぞれのシリコーン原子に結合した好ましい加水分解性基は、互いに結合し、C
1〜C
4アルコキシ基である。
【0323】
「加水分解性基」という用語は、水分の存在下で加水分解されるケイ素に結合した任意の基を意味する。加水分解性シリコーン結合基には、ハロゲン原子、例えば、F、Cl、BrまたはI;Yが、任意の炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基(メチル、エチル、イソプロピル、オクタデシル、アリル、ヘキセニル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、ベータ−フェニルエチル等)、およびヒドロカルビルエーテル(2−メトキシエチル、2−エトキシイソプロピル、2−ブトキシイソブチル、p−メトキシフェニルまたは−−(CH
2CH
2O)
2CH
3等);または任意のN,N−アミノ基(ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジフェニルアミノ、またはジシクロヘキシルアミノ等)であるときの式−−OYのアルコキシ基が含まれる。アミノ基X(NH
2、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルフェニルアミノまたはジシクロヘキシルアミノ等);式−ON=CM
2または−ON=CM’(式中、Mは、任意の一価の炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であり、M’はその両方の原子価が炭素に結合している任意の二価の炭化水素基、例えば、ヘキシレン、ペンチレンまたはオクチレンである)の任意のケトオキシム基;式−N(M)CONM”
2(式中、Mは炭化水素基またはハロ炭化水素基であり、M”はHまたは任意のM基である)の任意のウレイド基;式−−OOCMM”(式中、MおよびM’は上に定義されているかまたはハロゲン化炭化水素基である)のカルボキシル基、または式−NMC=O(M”)(式中、MおよびM”は上に定義されている)のカルボン酸アミド基は好ましくない。Xは、硫酸基または式−OSO
2(OM)(ここで、Mは上に定義された炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基である)の硫酸エステル基;シアノ基;イソシアネート基;および式−−OPO(OM)
2(式中、Mは上の通りに定義されている)のリン酸基またはリン酸エステル基であることもできる。
【0324】
第2のコーティング組成物の好ましいフルオロエラストマーコーティング剤の自然の色は、カーボンブラック等の添加顔料の非存在下で透明である。着色および/または不透明性は、従来のコーティング配合技術による既知の顔料粉砕によって得ることができる。粒子状金属粉末粒子は、反射特性に有用であり、好ましい実施形態において、エラストマー性コーティング組成物に取り込まれた抗真菌金属粒子として与えられる。好ましい実施形態において、好ましくは、飛行機の運動制御デバイスの外側外面に最も近い金属粒子によって、前記エラストマーコーティング上の真菌成長が阻害されるように、抗真菌金属粒子は取り込まれる。好ましい実施形態において、抗真菌金属粒子は、チタン、クロム、銀、亜鉛、銅、カドミウム、ニッケル、およびコバルト、ならびにそれらの混合物を含む抗真菌金属粒子群から選択される。「粒子」という用語は、不規則形状、顆粒形状、葉状形状または複雑な多種多様な形状を含む。形態には、微粒子固体または葉状形状薄片が含まれてもよい。これらは、溶剤、例えば、ミネラルスピリット中の分散液またはペーストとして入手できる。微粉化した蒸着フィルム由来の薄片が好適である。フルオロエラストマー100重量部当たり10から100重量部の濃度で用いられた5から25μmの粒径平均の金属粒子は、5ミル(0.013cm)の薄膜でキャスティングされる場合に、有効な放射エネルギー放射率を与え、かつ応力−亀裂を受けないためにコーティングにおける十分な耐曲げ疲労性をさらに与える。25から100ミクロンの平均粒径を有する金属粒子は、応力亀裂なしで十分な放射熱放射率を与えるために、フルオロエラストマー100重量部当たり少なくとも20重量部から150重量部までの濃度で用いられなければならない。好ましいアルミニウム粒子は、99.9%が325メッシュスクリーンを通過するような大きさ、すなわち、平均粒径で約45ミクロン未満、最も好ましくは8から35、特には10から20ミクロンの直径の薄片である。
【0325】
本発明の目的のために、溶剤という用語は広義には、実質的に分散された状態の中に、好ましくは溶液中に有機成分を溶解させるまたは保持することができる自由流動性液体担体として定義されることができる。好ましい溶剤には、水系ラテックスおよび/または非HAP[(有害性大気汚染物質(Hazardous Air Pollutant)]もしくは非VOC、もしくは非HAP、非VOC有機溶剤が含まれる。
【0326】
非HAP溶剤には、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、テトラヒドロフラン、n−メチルピロリドン、脂肪族炭化水素(ヘプタン等)、ジメチルホルムアミド、ジイソブチルケトン(DIBK)、メチルイソアミルケトン、モノクロロトルエン、パラ−クロロベンゾトリフルオリド(PCBTF)、およびvm&pナフサが含まれる。アセトンとDIBKとの組合せは、好ましい非HAP溶剤混合物である。単独でまたは任意の組合せでのアセトン、酢酸メチル、およびパラ−クロロベンゾトリフルオリド(PCBTF)は、HAP、およびVOC準拠コーティング剤として好ましい溶剤である。大気中で光化学反応性であるHAP溶剤の中には、ヘキサン、キシレン、トルエン、MEK、およびMIBKがある。HAPおよびVOC準拠が重要でない場合、トルエン、キシレン、MEKおよびMIBKは好ましい溶剤である。
【0327】
重量パーセント基準で、不揮発性物質は一般に、約3重量%から約30重量%で存在し、残りは溶剤であり、好ましくは約5重量%から約15重量%の不揮発性物質である。
【0328】
重量パーセント基準で、不揮発性物質は一般に、約3重量%から約30重量%で存在し、残りは溶剤であり、好ましくは約5重量%から約15重量%の不揮発性物質である。
【0329】
したがって、耐用年数および曲げ抵抗の間に燃料、油等に曝される場合、第2のコーティング組成物によるエラストマー40のコーティングは、エラストマー40の分解からの保護を与える。エラストマー40のコーティングの接着は、硬化物理的特性、例えば、強靭性および伸びを得ることと同様に必須である。200%伸びまで伸長された場合に、可撓性エラストマー40の亀裂または層間剥離なしでコーティングが完全に回復することが好ましい。本発明によるフルオロエラストマーコーティングは、非支持硬化コーティングフィルムに関するASTM−D412に従って試験して、200%、好ましくは300%±50%の改善された伸び、および600psi(4.13MPa)以上の引張強度を示す。
【0330】
以下の非限定的実施例により、第2のコーティングの特定の技術的要件の比較効果が例証される。
【0331】
[実施例]
酸価を測定するために、エラストマーをアセトンまたは1:1アセトン/MIBK溶液に溶解させ、次いで、0.01N水酸化ナトリウムでフェノールフタレイン終点まで滴定する。以下の実施例は、ポリマー1グラム当たり約1(±0.02)mg塩基の酸価を有するフルオロカーボンポリマーがモノ第一級アミノシランを用いて硬化しないか、または不十分に硬化して、受け入れられないほど低い引張強度および低い伸びを与えることを実証する。受け入れられない引張強度は600psi(4.13MPa)未満であり、受け入れられない伸びは200%未満である。以下の実施例は、第一級モノアミノシランの当量対硬化部位酸当量の最小比が3:1であることを例証する。当量比が12:1まで増加するにつれて、引張り強度は伸びの受け入れられない低下なしに改善する。12:1の当量比を超えると、強度は低下し、透明度は減少する。
【0332】
【表7】
【0333】
【表8】
【0334】
プライマーコーティング実施例
天然ゴムに対するコーティング接着性を試験するための実験において、溶剤、およびカルボキシル化エラストマー、例えば、カルボキシル化イソプレン樹脂、カルボキシル化NBRおよびカルボキシル化ポリエチレンからなるプライマーは、あたかも本明細書に全体的に含まれるように参照により本明細書に組み込まれる同時係属出願第10.205,178号明細書における教示に従って配合した。溶剤中の配合物は、25〜150重量部の第一級モノアミノアルコキシシランまたは第一級モノアミノアルコキシシランのブレンドを含んだ。塗布し、一晩放置させたコーティングは、天然ゴムに対する良好な接着性を示した。アミノシランまたはカルボキシル化樹脂のいずれも、天然ゴムに対する結合において個々には有効でないことが観察された。非アミノシランを評価し、無水マレイン酸付加ポリブタジエンと同様に有効でないことを見いだした。
【0335】
ゴム基材の下塗りは、Chemlok(登録商標)7701または7707を用いる従来の前処理を成功裏に置き換えた。
【0336】
上記プライマーをエラストマー40に塗布した場合、第2のコーティング組成物によるフルオロエラストマーコーティングは、顕著な接着性および耐屈曲性を示した。このフルオロエラストマーコーティングは、成形天然ゴム部品の耐燃料性および耐溶剤性を改善させた。
【0337】
第1および第2のコーティング組成物は好ましくは、環境工学的配慮事項および実験室試験の国防省試験法規格により示された通りの、抗真菌性試験法規格、MIL−STD−810を満たすことは理解されるはずである。さらに、第1のコーティング組成物および第2のコーティング組成物は好ましくは、中間エラストマー部材40と、硬質非伸長性外側部材および内側部材36、28との間に分解性物質の染み込み(これは、中間エラストマー部材40の完全性を損なう)を防ぐために、ロッド端部34が組み立てられる前に中間エラストマー部材40に塗布される。より具体的には、第1のコーティング組成物は中間エラストマー部材40に塗布され、これは少なくとも5分間乾燥させ、次いで、第2のコーティング組成物が塗布され、少なくとも5分間乾燥させる。次いで、ロッド端部34を、以下に記載の通りに組み立てる。
【0338】
好ましくは、
図3〜
図7に示されるように、硬質非伸長性内側部材の外側結合面48は、円筒状シェル面から構成される。好ましくは、硬質非伸長性内側部材38は、円筒管状内側部材である。好ましくは、硬質非伸長性内側部材38は、中心筒軸68を有する円筒管状中心穴58を有する円筒管状内側部材である。好ましくは、硬質非伸長性内部部材38は、中心筒軸68を有する円筒管状中心穴58を有する円筒管状内側部材であり、硬質非伸長性外側部材36は、内側面46を有する円筒管状中心穴56を有し、硬質外側部材中心穴56は中心軸66を有し、ここで、中間エラストマー40および硬質非伸長性内側部材38は、硬質外側部材中心穴中心軸66と一直線の硬質非伸長性内側部材中心筒軸68を有する硬質外側部材中心穴56に収容されている。
【0339】
図11および
図12に示されるように、硬質非伸長性外側部材36は好ましくは、内側円筒状穴面46を有する円筒状中心穴56を有し、ここで、中間エラストマー40は、硬質内側部材の外側結合面48から遠位にある非結合外側面60を有し、中間エラストマー非結合外側面60は、硬質外側部材の内側円筒状穴面46を係合する。好ましくは、非結合エラストマー面60は、硬質外側部材の内側円筒状穴面46を摩擦的に係合し、好ましくは、硬質内側部材38および結合エラストマー40は穴56の中に圧入されており、好ましくは非結合エラストマー外側面60は、硬質非伸長性外側部材36の内側円筒状穴面46より大きい直径を有し、好ましく非結合エラストマー面60は、潤滑されていない。好ましくは、非結合エラストマー面の接触面と硬質外側部材の内側円筒状穴面との潤滑は、それらの間の摩擦的係合を確実にするために抑制される。好ましくは、中間エラストマー40および内側部材38は、エラストマー型中でモールド結合される。好ましくは、中間エラストマー40は、エラストマー型中で硬質内側部材の外側結合面48にモールド結合され、好ましくは、エラストマー対金属結合接着剤は、エラストマー対金属外側結合面48の結合を確実にする。好ましくは、エラストマー対金属結合剤、好ましくはLord Chemlokエラストマー対金属結合系等のエラストマー対金属結合接着剤によって、エラストマーは硬質非伸長性部材の金属外側結合面48に結合される。好ましくは、中間エラストマー40は、外方向フランジ62と一緒に成形され、好ましくはエラストマーリップ(elastomeric lips)は、硬質外側部材の内側円筒状穴面46を係合している非結合エラストマーOD外側面60より大きい非結合ODを有し、エラストマー性フランジ62のODは、硬質外側部材の内側円筒状穴面IDより大きい。
【0340】
好ましくは、ロッド端部34は、外側部材、エラストマー、ならびに、好ましくは連結縦長さおよび作用線42に対して非平行直角を成す配列中心筒軸と一直線のかつ一致した内側部材中心筒軸とともに、同心管から構成される。好ましくは、筒軸66,68は、連結32と平行でないか、または同一線上にない。好ましくは、このような配列配向は、溶接、圧接、またはネジ結合等による強固な結合機構による、ロッド端部対連結ロッドの結合によって保持される。好ましくは、連結ロッド32は管である。
【0341】
図13A〜
図13Cに示されるように、本発明の好ましい実施形態には、連結端部34、35に対して連結ロッド32の不要な相対運動を低減させるための安全機構も含まれる。懸架連結ロッド32には、末端部74、76のそれぞれにおける螺旋状ネジ部70、72が含まれる。第1の外方向低剛性弾性ロッド端部34および遠位の第1の内方向連結端部35のそれぞれには、連結ロッド32のネジ部70、72との連携のための、螺旋状ネジ部78、80がそれぞれ含まれる。好ましい実施形態において、外方向および内方向の連結端部34、35の螺旋状ネジ部78、80、それぞれは同じハンドを有する。すなわち、外方向および内方向の連結端部34、35の両方は、右ネジ山または左ネジ山のいずれかを有する。外方向および内方向の連結端部34、35は好ましくは、同じピッチも有する。
【0342】
連結端部34、35には、それぞれ、非ネジストッパー部分82、84も含まれる。好ましくは、非ネジストッパー部分82、84は、硬質非伸長性外側部材36の首部に隣接する連結端部34、35上に配置される。ストッパー部分82、84は、ネジ山のより大きい直径以上を有する連結端部34、35の本体の直径によって形成することができる。
【0343】
組み立てられるとき、連結端部34は、連結端部34のネジ部78の一部(約2から4回転)のネジ回転を除くすべてが、連結ロッド32のネジ山と係合するように、連結ロッド32のネジ部70にネジ込まれる。同様に、連結端部35は、連結端部35のネジ部80の一部(約2から4回転)のネジ回転を除くすべてが、連結ロッド32のネジ山と係合するように、連結端部35は連結ロッド32のネジ部72にネジ込まれる。好ましくは、連結端部34、35のネジ山は、細いまたは極細のネジ山である。非ネジストッパー部分82は、懸架連結ロッド32が第1の内方向連結端部34に向かう方向にさらに動くことを防止するためのストップとして作用する。より具体的には、連結ロッド32の動きは、懸架連結ロッド32のネジ部70が非ネジ部82と接触するときに停止する。同様に、非ネジ部84は、懸架連結ロッド32のネジ部72が非ネジ部84と接触するときに、第1の内方向連結端部35に向かう方向への懸架連結ロッド32の動きを妨げる。
【0344】
好ましくは、補助動力ユニットの設置および修理の間の連結端部34、35の適切な配列および位置合わせを確実にするために、強化エポキシネジロック化合物は組立て中にネジに塗布される。すなわち、エポキシは、連結端部34、35が連結ロッド32で回転することを防止する。それにもかかわらず、エポキシが火災、腐食もしくは他の理由により機能しないか、または組立て中にネジ山に塗布されない場合、記載のネジ配置は、一方の連結ロッド端部から他方の連結ロッド端部の距離が変化することを防止し、連結端部34、35が完全に緩み、負荷容量を低下させ、またはさらに2から4つのネジ山を超えて緩むことを防止する。したがって、より少ないネジ山を係合させることの結果としての強度低下は非常に限定される。
【0345】
連結端部34、35に対する連結ロッド32の不要な動きを制限することに加えて、または制限することに対する代替手段として、外方向および内方向の連結端部34、35の螺旋状ネジ部78、80には好ましくは、過渡的な不完全ネジ部も含まれる。すなわち、ストッパー部分82、84に近い螺旋状ネジ部78、80は、並進運動を妨げ、ストッパー部分82、84に連結端部34、35を係止めするために浅くなる。好ましくは、連結端部34、35上の約2から4つの最後のネジ山は、完全深さの螺旋状ネジ部78、80よりも次第に浅くなる過渡的な不完全ネジ部である。より好ましくは、連結端部34、35上の約2つの最後のネジ山は過渡的な不完全ネジ部である。
【0346】
上記好ましい実施形態の代替も企図される。例えば、代わりに、過渡的な不完全ネジ部は、並進運動を妨げる異なるピッチを含むことができる。ネジストッパー部分82、84は、連結端部34、35がストッパー部分82、84に接触するときに懸架連結ロッド32が連結端部34、35のいずれかに向かう方向にさらに動くことを防止する突き合わせフランジを含むことができることも明らかであるはずである。同じハンドを有する対応する外方向および内方向の連結端部34、35とともに、螺旋状ネジ部70、72を有する懸架連結ロッド32が、任意の種類の飛行機懸架システムデバイスにおいて使用することができることは当業者によって理解されるはずである。これらの変更およびさらなる利用は、特許請求された通りの本発明の精神および範囲内であることが意図される。
【0347】
本発明には、重心24を有する飛行機補助動力ユニット22と少なくとも1種の飛行機補助動力ユニットの動作振動数とを隔てるための飛行機補助動力ユニット懸架システム20を製造する方法が含まれる。好ましくは、飛行機補助動力ユニット懸架システム20は、焦点化された、好ましくは少なくとも部分的に焦点化されたAPU重心で少なくとも部分的に焦点化された飛行機補助動力ユニット懸架システム20として製造される。この方法には、第1の懸架連結の第1の低剛性エラストマー性弾性ロッド端部34で終わる第1の硬質縦ロッド懸架ロッド連結34、低バネ定数を有する第1の懸架連結の第1の低剛性ロッド端部を提供することが含まれる。この方法には、第2の硬質縦ロッド懸架連結32、第2の懸架連結の第1の低剛性弾性ロッド端部34で終わる第2の懸架連結、低バネ定数を有する第2の懸架連結の第1の低剛性弾性ロッド端部34を提供することが含まれる。第1の懸架連結の第1の低剛性ロッド端部低バネ定数および第2の懸架連結の第1の低剛性ロッド端部低バネ定数は、飛行機補助動力ユニット22と、飛行機補助動力ユニット動作振動数未満の懸架補助動力ユニットの固有振動数を有する飛行機補助動力ユニットとの隔離を与える。好ましくは、懸架補助動力ユニットの固有振動数は、より低い振動数限界の上であり、ここで、このより低い振動数は、主エンジンウィンドミリング励起振動数である。好ましくは、飛行機補助動力ユニット懸架システムは、飛行機補助動力ユニット動作振動数未満の固有振動数帯域上限および主エンジンウィンドミリング励起振動数を超える固有振動数帯域下限を有する懸架補助動力ユニット固有振動数を提供する。好ましくは、固有振動数帯域下限は、約5〜20Hz以上、より好ましくは9から20Hz以上、より好ましくは20Hz以上である。好ましくは、第1の硬質縦ロッド懸架連結は遠位の第1懸架連結の第2の低剛性弾性ロッド端部34で終わり、第2の硬質縦ロッド懸架連結32は、遠位の第2の懸架連結の第2の低剛性弾性ロッド端部34で終わる。好ましくは、第1の硬質縦ロッド懸架連結は、第1の硬質縦ロッド懸架連結の縦方向長さに沿って、および第1の硬質縦ロッド懸架連結の第1の低剛性ロッド端部を通って走っているエラストマー性弾性バネ作用線を有し、第2の硬質縦ロッド懸架連結は、第2の硬質縦ロッド懸架連結の縦方向長さに沿っておよび第2の硬質縦ロッド懸架連結の第1の低剛性ロッド端部を通って走っているエラストマー性弾性バネ作用線を有し、ここで、第1の硬質縦ロッド懸架連結弾性バネ作用線は、飛行機補助動力ユニット重心に近接した第2の硬質縦ロッド懸架連結弾性バネ作用線と交差する。好ましくは、システム20は、連結の縦方向長さに沿っておよびロッド端部を通って走っているエラストマー性バネ作用線を有する懸架連結を有して、少なくとも部分的に焦点化されており、ここで、エラストマーバネ作用線は、APU重心に近接した焦点弾性中心軸と、焦点弾性中心軸において交差する(完全焦点合わせのために3平面が近接重心と交差し、2面で3分の2が部分的に焦点化され、1面のみで3分の1が部分的に焦点化される)。好ましくは、APU底部と飛行機床との間のマウント等によって重心の下の底部から支持されるのと対照的に、APUは、懸架連結上の飛行機の構造表面から垂れ下がり、好ましくは重心の大部分は、連結によって上および側面から支持される。好ましくは、APUは、主として引張り下にあり、圧縮下ではない長い縦の連結支柱によって飛行機の防火壁および天井から垂れ下がった。好ましくは、連結の少なくとも2つが重心の上にあり、好ましくは大部分が重心の上にあり、重心の下にない。好ましくは、ロッド端部には、硬質非伸長性外側部材、硬質非伸長性内側部材、および硬質非伸長性外側部材と硬質非伸長性内側部材との間の中間エラストマー、硬質非伸長性内側部材に結合した中間エラストマーが含まれる。好ましくは、硬質非伸長性内側部材は、硬質非伸長性内側部材の外側結合面に結合した中間エラストマーを有する外側結合面を有する。好ましくは、硬質非伸長性内側部材の外側結合面は、円筒状シェル面を含む。好ましくは、硬質非伸長性内側部材は、円筒管状内側部材を含む。好ましくは、硬質非伸張性内側部材は、中心筒軸を有する円筒管状中心穴を有する円筒管状内側部材を含む。好ましくは、硬質非伸長性内側部材は、中心筒軸を有する円筒管状中心穴を有する円筒管状非伸長性外側部材、および内側面を有する円筒管状中心穴を有する硬質非伸長性外側部材、中心軸を有する硬質外側部材中心穴を含み、ここで、中間エラストマーおよび硬質非伸長性内側部材は、硬質外側部材の中心穴中心軸と一直線の硬質非伸長性内側部材の中心筒軸を有する硬質外側部材中心穴に収容される。好ましくは、硬質非伸長性外側部材は、内側円筒状穴面を有する円筒状中心穴を有し、ここで、中間エラストマーは、硬質内側部材の外側結合面から遠位にある非結合外側面を有し、中間エラストマー非結合外側面は、硬質外側部材の内側円筒状穴面を係合する。好ましくは、非結合エラストマー面は、硬質外側部材の内側円筒状穴面を摩擦的に係合し、好ましくは、硬質内側部材および結合エラストマーは穴に圧入され、非結合エラストマー外側面は硬質非伸長性外側部材の内側円筒状穴面より大きい直径を有し、好ましくは、非結合エラストマー面は潤滑されていない。好ましくは、非結合エラストマー面の接合面と硬質外側部材の内側円筒状穴面との潤滑は、摩擦的係合を確実にするために抑制される。好ましくは、中間エラストマーは、外方向フランジと一緒に成形され、このようなエラストマーリップは、硬質外側部材の内側円筒状穴面を係合している非結合エラストマーOD外側面より大きい非結合ODを有し、ここで、エラストマー性フランジODは、硬質外側部材の内側円筒状穴面IDより大きい。好ましくは、中間エラストマー40は、内側硬質部材38と、0.05インチ(1.27mm)、好ましくは少なくとも0.06インチ(1.52mm)、好ましくは少なくとも2mmより大きい外側硬質部材36との間の中間エラストマー厚さを有して、ロッド端部34に低バネ定数を与える。好ましくは、中間エラストマー厚さは、低バネ定数を与えるために少なくとも0.1インチ(2.54mm)、例えば、約0.166インチ(4.2mm)である。好ましくは、ロッド端部34の低バネ定数は、500,000ポンド/インチ(87,600N/mm)未満であり、好ましくは、静的剛性率は250psi未満である。好ましくは、ロッド端部34の低バネ定数は、500,000ポンド/インチ(87,600N/mm)未満、好ましくは<300,000ポンド/インチ(52,500N/mm)、好ましくは<250,000ポンド/インチ(43,800N/mm)、好ましくは<200,000ポンド/インチ(35,000N/mm)、好ましくは<100,000ポンド/インチ(17,500N/mm)、好ましくは<50,000ポンド/インチ(8,800N/mm)である。好ましくは、ロッド端部34の低バネ定数は、20,000ポンド/インチ(3,500N/mm)から100,000ポンド/インチ(17,500N/mm)の範囲、好ましくは20,000ポンド/インチ(3,500N/mm)から50,000ポンド/インチ(8,800N/mm)の範囲である。好ましくは、ロッド端部の低バネ定数は、負荷面積に比例したエラストマー厚さによって与えられ、形状係数0.25から5を有する低い形状係数部を与え、エラストマー形状係数は
低バネ定数を与える。好ましくは、50,000ポンド/インチ(8,800N/mm)以下のロッド端部34は、飛行機補助動力ユニット懸架システム20に、約200HzAPU発生振動数(200±50Hz、好ましくは200±25Hz、例えば、約175Hz)および約500HzAPUタービン振動数(500±50、好ましくは500±25Hz、例えば、約520Hz)未満の懸架補助動力ユニットの固有振動数を与える。好ましくは、連結32には、縦支柱ロッドの両末端のロッド端部34が含まれ、好ましくはそのシステムは連結のためにXポンド/インチ(0.175X N/mm)の剛性を必要とし、その剛性の2倍、2Xポンド/インチ(0.350X N/mm)の剛性を有する2つのロッド端部34が用いられて、連結のための有益なエラストマー寿命性能および火災後のたわみ減少を与え、例えば、20,000ポンド/インチ(3,500N/mm)の剛性を必要とする連結システムのために、40,000ポンド/インチ(7,000N/mm)のロッド端部が(2倍の剛性を有する2つの)両端に使用される。
図2に示されるように、これらの低バネ定数は、ロッドエンド(K
radial)のための径方向バネ定数であり、連結32の縦方向長さに沿ったバネ作用線42を有して、ロッド端部の他のバネ定数(軸方向、コッキング、れじれの)はさらにより低く、好ましくは径方向のバネ定数より一桁低く、好ましくは<50,000ポンド/インチ(8,800N/m)、好ましくは<20,000ポンド/インチ(3,500N/mm)、好ましくは<10,000ポンド/インチ(1,800N/mm)、好ましくは<5,000ポンド/インチ(870N/mm)である。
図11〜
図14に示されるように、ロッド端部34を有する連結32は好ましくは、補助動力ユニット動作振動数において、好ましくは約176Hzの低い端部ジェネレータ振動数および約517Hzの低い端部タービン振動数の両方において、低動的力伝達関数を有する。単一ロッド端部34を有する連結32のために、好ましくは、低動的力伝達関数は<15%である。連結の両端上にロッド端部34を有する連結32のために、好ましくは、低動的力伝達関数は<3%、好ましくは<2%である。ロッド端部エラストマーは、エラストマーゴム材料(天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、イソブチレン−イソプレン、エチレン−プロピレン、およびシリコーン等)から形成される。好ましくは、ロッド端部中間エラストマー40は、EPDMポリマーである。連結の両端上にロッド端部34を有する連結32のために、好ましくは、中間エラストマー40は、内方向ロッド端部35および外方向ロッド端部34の両方にEPDMポリマーである。好ましくは、ロッド端部中間エラストマー40は、耐温度性EPDMポリマーであり、好ましくは、過酸化物硬化系と一緒に、EPDMポリマー、中補強性カーボンブラック、パラフィン系可塑剤、およびEPDMのための適切な抗分解剤から構成される。好ましくは、ロッド端部34は、外側部材、エラストマー、および内側部材の中心筒軸(好ましくは、線連結縦方向長さおよび作用線42に対して非平行直角を成す配列中心筒軸と一直線のおよび一致した)とともに、同心管から構成される。好ましくは、筒軸66,68は、連結32と平行でないかまたは同一線上にない。好ましくは、このような配列配向は、強固な結合機構、例えば、溶接、圧接、またはネジ結合によって、ロッド端部対連結ロッドの結合によって保持される。好ましくは、連結ロッド32は管である。
【0348】
様々な変更および変形が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明になされ得ることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、本発明の変更および変形に及ぶが、ただし、それらが添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入ることを条件とすることが意図される。