【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について図を参照しつつ説明する。
【0038】
<第1実施例>
第1実施例に係る血圧低下予測装置について、
図1から
図8を参照して説明する。
【0039】
先ず、第1実施例に係る血圧低下予測装置の構成について、
図1を参照して説明する。
【0040】
図1は、第1実施例に係る血圧低下予測装置の構成を示すブロック図である。
【0041】
図1において、第1実施例に係る血圧低下予測装置100は、患者である生体900が人工透析を受けている最中に生体900の血圧低下を予測するための装置であり、脈拍数算出部110と、血流量算出部120と、脈波振幅算出部130と、リスクレベル決定部150を有する血圧低下予測部140と、出力部160とを備えている。血圧低下予測装置100は、血流波形出力装置800が出力する血流波形が入力されるように構成されている。血流波形出力装置800は、例えばレーザードップラーフローメトリー法が用いられるレーザー血流計であり、生体900の血流波形(即ち、血流量の経時的な変化を示す波形信号)を出力する。
【0042】
脈拍数算出部110、血流量算出部120及び脈波振幅算出部130は、血流波形出力装置800から入力される血流波形に基づいて、生体900の脈拍数、血流量及び脈波振幅をそれぞれ算出する。
【0043】
図2は、第1実施例における、血流波形に基づいて、脈拍数、血流量及び脈波振幅を算出する方法を説明するための説明図である。なお、
図2には、血流波形出力装置800が出力する血流波形の一例が示されている。
【0044】
図2において、脈拍数算出部110は、血流波形において脈波に相当する波形の振動数、即ち、血流波形の周期Aの逆数(1/A)を、脈拍数として算出する。なお、脈拍数の算出方法は、高速フーリエ変換などの他の算出方法を用いてもよい。
【0045】
血流量算出部120は、血流波形の所定時間における平均値Bを、血流量として算出する。
【0046】
脈波振幅算出部130は、血流波形において脈波に相当する波形の振幅Cを、脈波振幅として算出する。なお、脈波振幅の算出方法は、高速フーリエ変換などの他の算出方法を用いてもよい。
【0047】
このように、血圧低下予測装置100は、血流波形出力装置800から出力される血流波形から脈拍数、血流量及び脈波振幅という3つの変動パラメータを取得するように構成されている。
【0048】
ここで、脈拍数算出部110によって行われる脈拍数計測処理、血流量算出部120によって行われる血流量計測処理、及び脈波振幅算出部130によって行われる脈波振幅計測処理について、
図3、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0049】
図3は、血圧低下予測装置100における脈拍数計測処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
図3において、脈拍数計測処理では、先ず、脈拍数の初期値が脈拍数算出部110によって記録される(ステップS10)。即ち、脈拍数算出部110は、人工透析が開始された際に血流波形出力装置800から入力される血流波形に基づいて、脈拍数を算出し、この算出した脈拍数を脈拍数の初期値HR0として例えばメモリー等に記録する。
【0051】
次に、脈拍数の現在の平均値HRtが脈拍数算出部110によって算出される(ステップS11)。即ち、脈拍数算出部110は、血流波形出力装置800から入力される血流波形に基づいて、現時点を含む所定時間における脈拍数の平均値を算出し、この算出した平均値を現在の平均値HRtとして例えばメモリー等に記録する。
【0052】
次に、現在の平均値HRtが直前の平均値と比べて変化しているか否か、より具体的には、現在の平均値HRtが直前の平均値と比べて「下降している」、「上昇している」及び「変化していない」のいずれであるかが脈拍数算出部110によって判定される(ステップS12)。即ち、脈拍数算出部110は、所定期間毎に血流波形に基づいて脈拍数の平均値HRtを算出し、現在の平均値HRtが直前の平均値HRtよりも小さい場合には、脈拍数が下降していると判定し、現在の平均値HRtが直前の平均値HRtよりも大きい場合には、脈拍数が上昇していると判定し、現在の平均値HRtが直前の平均値HRtと同じである場合には、脈拍数が変化していないと判定する。
【0053】
脈拍数が下降していると判定された場合には(ステップS12:「下降」)、脈拍数変化フラグHR1の値が「−1」に設定され(ステップS13)、脈拍数が変化していないと判定された場合には(ステップS12:「変化なし」)、脈拍数変化フラグHR1の値が「0」に設定され(ステップS14)、脈拍数が上昇していると判定された場合には(ステップS12:「上昇」)、脈拍数変化フラグHR1の値が「1」に設定される(ステップS15)。なお、脈拍数変化フラグHR1は、脈拍数の現在の平均値HRtが直前の平均値と比べて「下降している」、「上昇している」及び「変化していない」のいずれであるかが判定された判定結果を保持するための記憶手段である。
【0054】
脈拍数変化フラグHR1の値が「−1」に設定された(ステップS13)後には、再びステップS11に係る処理が行われる。
【0055】
脈拍数変化フラグHR1の値が「1」に設定された(ステップS15)後には、再びステップS11に係る処理が行われる。
【0056】
脈拍数変化フラグHR1の値が「0」に設定された(ステップS14)後には、現在の平均値HRtが初期値HR0と同じであるか否かが脈拍数算出部110によって判定される(ステップS16)。即ち、脈拍数算出部110は、現在の生体900の脈拍数の平均値として算出した平均値HRtが、人工透析が開始された際の生体900の脈拍数として算出した初期値HR0と一致するか否か、即ち、生体900の脈拍数が、人工透析が開始されてから変化しておらず、初期値HR0のまま維持されているか否かを判定する。言い換えれば、脈拍数算出部110は、現在、脈拍数が変化していない場合において、脈拍数が、人工透析の開始の際の値である初期値HR0のまま維持されているのか、或いは、人工透析の開始後に変化して初期値HR0とは異なる値で維持されているのかを判定する。
【0057】
現在の平均値HRtが初期値HR0と同じであると判定された場合には(ステップS16:YES)、再びステップS11に係る処理が行われる。
【0058】
現在の平均値HRtが初期値HR0と同じでない(即ち、異なる)と判定された場合には(ステップS16:NO)、脈拍数飽和フラグHR2の値が「1」に設定される(ステップS17)。なお、脈拍数飽和フラグHR2は、現在の平均値HRtが初期値HR0と同じであるか否かが判定された判定結果を保持するための記憶手段であり、脈拍数飽和フラグHR2の初期値は、現在の平均値HRtが初期値HR0と同じであることを示す「0」に設定される。
【0059】
このように、脈拍数計測処理では、人工透析が開始された後、血流波形出力装置800から出力される血流波形に基づいて所定期間毎に脈拍数(具体的には、所定時間における脈拍数の平均値)が算出されるとともに、算出された脈拍数の変化の有無が判定され、この判定結果が脈拍数変化フラグHR1及び脈拍数飽和フラグHR2に記録される。
【0060】
図4は、血圧低下予測装置100における血流量計測処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
図4において、血流量計測処理では、先ず、血流量の初期値が血流量算出部120によって記録される(ステップS20)。即ち、血流量算出部120は、人工透析が開始された際に血流波形出力装置800から入力される血流波形に基づいて、血流量を算出し、この算出した血流量を血流量の初期値BF0として例えばメモリー等に記録する。
【0062】
次に、血流量の現在の平均値BFtが血流量算出部120によって算出される(ステップS21)。即ち、血流量算出部120は、血流波形出力装置800から入力される血流波形に基づいて、現時点を含む所定時間における血流量の平均値を算出し、この算出した平均値を現在の平均値BFtとして例えばメモリー等に記録する。
【0063】
次に、現在の平均値BFtが直前の平均値と比べて変化しているか否か、より具体的には、現在の平均値BFtが直前の平均値と比べて「下降している」、「上昇している」及び「変化していない」のいずれであるかが血流量算出部120によって判定される(ステップS22)。即ち、血流量算出部120は、所定期間毎に血流波形に基づいて血流量の平均値BFtを算出し、現在の平均値BFtが直前の平均値BFtよりも小さい場合には、血流量が下降していると判定し、現在の平均値BFtが直前の平均値BFtよりも大きい場合には、血流量が上昇していると判定し、現在の平均値BFtが直前の平均値BFtと同じ場合には、血流量が変化していないと判定する。
【0064】
血流量が下降していると判定された場合には(ステップS22:「下降」)、血流量変化フラグBF1の値が「−1」に設定され(ステップS23)、血流量が変化していないと判定された場合には(ステップS22:「変化なし」)、血流量変化フラグBF1の値が「0」に設定され(ステップS24)、血流量が上昇していると判定された場合には(ステップS22:「上昇」)、血流量変化フラグBF1の値が「1」に設定される(ステップS25)。なお、血流量変化フラグBF1は、血流量の現在の平均値が直前の平均値と比べて「下降している」、「上昇している」及び「変化していない」のいずれであるかが判定された判定結果を保持するための記憶手段である。
【0065】
血流量変化フラグBF1の値が「−1」に設定された(ステップS23)後には、再びステップS21に係る処理が行われる。
【0066】
血流量変化フラグBF1の値が「1」に設定された(ステップS25)後には、再びステップS21に係る処理が行われる。
【0067】
血流量変化フラグBF1の値が「0」に設定された(ステップS24)後には、現在の平均値BFtが初期値BF0と同じであるか否かが血流量算出部120によって判定される(ステップS26)。即ち、血流量算出部120は、現在の生体900の血流量の平均値として算出した平均値BFtが、人工透析が開始された際の生体900の血流量として算出した初期値BF0と一致するか否か、即ち、生体900の血流量が、人工透析が開始されてから変化しておらず、初期値BF0のまま維持されているか否かを判定する。言い換えれば、血流量算出部120は、現在、血流量が変化していない場合において、血流量が、人工透析の開始の際の値である初期値BF0のまま維持されているのか、或いは、人工透析の開始後に変化して初期値BF0とは異なる値で維持されているのかを判定する。
【0068】
現在の平均値BFtが初期値BF0と同じであると判定された場合には(ステップS26:YES)、再びステップS21に係る処理が行われる。
【0069】
現在の平均値BFtが初期値BF0と同じでない(即ち、異なる)と判定された場合には(ステップS26:NO)、血流量飽和フラグBF2の値が「1」に設定される(ステップS27)。なお、血流量飽和フラグBF2は、現在の平均値BFtが初期値BF0と同じであるか否かが判定された判定結果を保持するための記憶手段であり、血流量飽和フラグBF2の初期値は、現在の平均値BFtが初期値BF0と同じであることを示す「0」に設定される。
【0070】
このように、血流量計測処理では、人工透析が開始された後、血流波形出力装置800から出力される血流波形に基づいて所定期間毎に血流量(具体的には、所定時間における血流量の平均値)が算出されるとともに、算出された血流量の変化の有無が判定され、この判定結果が血流量変化フラグBF1及び血流量飽和フラグBF2に記録される。
【0071】
図5は、血圧低下予測装置100における脈波振幅計測処理の流れを示すフローチャートである。
【0072】
図5において、脈波振幅計測処理では、先ず、脈波振幅の初期値が脈波振幅算出部130によって記録される(ステップS30)。即ち、脈波振幅算出部130は、人工透析が開始された際に血流波形出力装置800から入力される血流波形に基づいて、脈波振幅を算出し、この算出した脈波振幅を脈波振幅の初期値PW0として例えばメモリー等に記録する。
【0073】
次に、脈波振幅の現在の平均値PWtが脈波振幅算出部130によって算出される(ステップS31)。即ち、脈波振幅算出部130は、血流波形出力装置800から入力される血流波形に基づいて、現時点を含む所定時間における脈波振幅の平均値を算出し、この算出した平均値を現在の平均値PWtとして例えばメモリー等に記録する。
【0074】
次に、現在の平均値PWtが直前の平均値と比べて変化しているか否か、より具体的には、現在の平均値PWtが直前の平均値と比べて「下降している」、「上昇している」及び「変化していない」のいずれであるかが脈波振幅算出部130によって判定される(ステップS32)。即ち、脈波振幅算出部130は、所定期間毎に血流波形に基づいて脈波振幅の平均値PWtを算出し、現在の平均値PWtが直前の平均値PWtよりも小さい場合には、脈波振幅が下降していると判定し、現在の平均値PWtが直前の平均値PWtよりも大きい場合には、脈波振幅が上昇していると判定し、現在の平均値PWtが直前の平均値PWtと同じである場合には、脈波振幅が変化していないと判定する。
【0075】
脈波振幅が下降していると判定された場合には(ステップS32:「下降」)、脈波振幅変化フラグPW1の値が「−1」に設定され(ステップS33)、脈波振幅が変化していないと判定された場合には(ステップS32:「変化なし」)、脈波振幅変化フラグPW1の値が「0」に設定され(ステップS34)、脈波振幅が上昇していると判定された場合には(ステップS32:「上昇」)、脈波振幅変化フラグPW1の値が「1」に設定される(ステップS35)。なお、脈波振幅変化フラグPW1は、脈波振幅の現在の平均値が直前の平均値と比べて「下降している」、「上昇している」及び「変化していない」のいずれであるかが判定された判定結果を保持するための記憶手段である。
【0076】
脈波振幅変化フラグPW1の値が「−1」に設定された(ステップS33)後には、再びステップS31に係る処理が行われる。
【0077】
脈波振幅変化フラグPW1の値が「1」に設定された(ステップS35)後には、再びステップS31に係る処理が行われる。
【0078】
脈波振幅変化フラグPW1の値が「0」に設定された(ステップS34)後には、現在の平均値PWtが初期値PW0と同じか否かが脈波振幅算出部130によって判定される(ステップS36)。即ち、脈波振幅算出部130は、現在の生体900の脈波振幅の平均値として算出した平均値PWtが、人工透析が開始された際の生体900の脈波振幅として算出した初期値PW0と一致するか否か、即ち、生体900の脈波振幅が、人工透析が開始されてから変化しておらず、初期値PW0のまま維持されているか否かを判定する。言い換えれば、脈波振幅算出部130は、現在、脈波振幅が変化していない場合において、脈波振幅が、人工透析の開始の際の値である初期値PW0のまま維持されているのか、或いは、人工透析の開始後に変化して初期値PW0とは異なる値で維持されているのかを判定する。
【0079】
現在の平均値PWtが初期値PW0と同じであると判定された場合には(ステップS36:YES)、再びステップS31に係る処理が行われる。
【0080】
現在の平均値PWtが初期値PW0と同じでない(即ち、異なる)と判定された場合には(ステップS36:NO)、脈波振幅飽和フラグPW2の値が「1」に設定される(ステップS37)。なお、脈波振幅飽和フラグPW2は、現在の平均値PWtが初期値PW0と同じであるか否かが判定された判定結果を保持するための記憶手段であり、脈波振幅飽和フラグPW2の初期値は、現在の平均値PWtが初期値PW0と同じであることを示す「0」に設定される。
【0081】
このように、脈波振幅計測処理では、人工透析が開始された後、血流波形出力装置800から出力される血流波形に基づいて所定期間毎に脈波振幅(具体的には、所定時間における脈波振幅の平均値)が算出されるとともに、算出された脈波振幅の変化の有無が判定され、この判定結果が脈波振幅変化フラグPW1及び脈波振幅飽和フラグPW2に記録される。
【0082】
再び
図1において、血圧低下予測部140は、リスクレベル決定部150を備えており、生体900の血圧低下を予測する。
【0083】
リスクレベル決定部150は、前述した脈拍数計測処理、血流量計測処理及び脈波振幅計測処理の結果に基づいて、生体900に血圧低下が発生するリスク(即ち、血圧低下が発生する可能性)を示す血圧低下リスクレベルを決定する。本実施形態では、血圧低下リスクレベルは「LV0」、「LV1」、「LV2」、及び「LV3」のいずれかの値に決定される。なお、血圧低下リスクレベルの決定方法については、
図6から
図8を参照して後に詳細に説明する。血圧低下リスクレベルは、本発明に係る「リスクレベル」の一例である。
【0084】
出力部160は、リスクレベル決定部150によって決定された血圧低下リスクレベルを外部に出力する出力部であり、リスクレベル決定部150によって決定された血圧低下リスクレベルに応じて、緑色、黄色、橙色及び赤色のうちのいずれかの色を外部に表示する。具体的には、出力部160は、血圧低下リスクレベルが「LV0」である場合には緑色を表示し、血圧低下リスクレベルが「LV1」である場合には黄色を表示し、血圧低下リスクレベルが「LV2」である場合には橙色を表示し、血圧低下リスクレベルが「LV3」である場合には赤色を表示する。即ち、出力部160は、血圧低下リスクレベルを色として外部に出力する。
【0085】
次に、前述のように構成された血圧低下予測装置100の動作について、
図6から
図8を参照して説明する。
【0086】
図6は、血圧低下予測装置100における血圧低下リスクレベルの決定処理の流れを示すフローチャートである。
【0087】
図6において、血圧低下予測装置100の動作時には、先ず、出力部160によって緑色が表示される(ステップS110)。即ち、リスクレベル決定部150は、血圧低下リスクレベルに初期値として、血圧低下のリスクがほとんど無い或いは極低いことを示す「LV0」を設定し、出力部160は、この設定された血圧低下リスクレベル(即ち、「LV0」)に応じて、緑色を外部に表示する。なお、血圧低下予測装置100の動作時には、前述した脈拍数計測処理、血流量計測処理及び脈波振幅計測処理が継続的に行われる。
【0088】
次に、脈拍数、血流量及び脈波振幅のいずれかに変化があるか否かがリスクレベル決定部150によって判定される(ステップS120)。即ち、リスクレベル決定部150は、脈拍数計測処理により算出された脈拍数、血流量算出処理により算出された血流量、及び脈波振幅処理により算出された脈波振幅のいずれかが下降或いは上昇しているか否かを判定する。具体的には、リスクレベル決定部150は、前述した脈拍数変化フラグHR1、血流量変化フラグBF1及び脈波振幅変化フラグPW1のいずれかが「0」とは異なる値(即ち、「1」又は「−1」)であるか否かを判定する。
【0089】
脈拍数、血流量及び脈波振幅のいずれにも変化がないと判定された場合には(ステップS120:NO)、再びステップS110に係る処理が行われる。即ち、リスクレベル決定部150は、脈拍数、血流量及び脈波振幅のいずれにも変化がないと判定した場合には、血圧低下リスクレベルを「LV0」のまま維持する。
【0090】
脈拍数、血流量及び脈波振幅のいずれかに変化があると判定された場合には(ステップS120:YES)、変動パターンテーブルが参照されることにより血圧低下リスクレベルが決定され、この決定された血圧低下リスクレベルに対応する色が外部に表示される(ステップS130、S140及びS150)。具体的には、リスクレベル決定部150は、
図7に示す変動パターンテーブル149を参照して血圧低下リスクレベルを決定する。なお、変動パターンテーブル149は、本発明に係る「リスクレベル決定テーブル」の一例である。
【0091】
図7は、血圧低下予測装置100における変動パターンテーブル149を概念的に示す概念図である。
【0092】
図7において、変動パターンテーブル149は、脈拍数変化フラグHR1、脈拍数飽和フラグHR2、脈波振幅変化フラグPW1、脈波振幅飽和フラグPW2、血流量変化フラグBF1及び血流量飽和フラグBF2の各々の取り得る値の組み合わせと、これら組み合わせにそれぞれ対応する血圧低下リスクレベルとが予め格納された、血圧低下リスクレベルを決定するための参照テーブル(ルックアップテーブル)である。言い換えれば、変動パターンテーブル149は、脈拍数、血流量及び脈波振幅の各々の変動の組み合わせと、これら組み合わせが生じた場合にそれぞれ想定される血圧低下リスクレベルとが予め対応付けられて格納された参照テーブルである。
【0093】
具体的には、変動パターンテーブル149には、脈拍数変化フラグHR1が「0」であり、脈拍数飽和フラグHR2が「0」であり、脈波振幅変化フラグPW1が「−1」であり、脈波振幅飽和フラグPW2が「0」であり、血流量変化フラグBF1が「0」であり、血流量飽和フラグBF2が「0」であるという組み合わせ(以下、この組み合わせを「第0変動パターン」と適宜称する)に対応する血圧低下リスクレベルとして、血圧低下のリスクがほとんど無い或いは極低いことを示す「LV0」が格納されている。変動パターンテーブル149には、脈拍数変化フラグHR1が「1」であり、脈拍数飽和フラグHR2が「0」であり、脈波振幅変化フラグPW1が「−1」であり、脈波振幅飽和フラグPW2が「0」であり、血流量変化フラグBF1が「0」であり、血流量飽和フラグBF2が「0」であるという組み合わせ(以下、この組み合わせを「第1変動パターン」と適宜称する)に対応する血圧低下リスクレベルとして、「LV0」よりも血圧低下が発生するリスクが高いことを示す「LV1」が格納されている。また、変動パターンテーブル149には、脈拍数変化フラグHR1が「0」であり、脈拍数飽和フラグHR2が「0」であり、脈波振幅変化フラグPW1が「−1」であり、脈波振幅飽和フラグPW2が「0」であり、血流量変化フラグBF1が「−1」であり、血流量飽和フラグBF2が「0」であるという組み合わせ(以下、この組み合わせを「第2変動パターン」と適宜称する)に対応する血圧低下リスクレベルとして、「LV1」が格納されている。また、変動パターンテーブル149には、脈拍数変化フラグHR1が「1」であり、脈拍数飽和フラグHR2が「0」であり、脈波振幅変化フラグPW1が「−1」であり、脈波振幅飽和フラグPW2が「0」であり、血流量変化フラグBF1が「−1」であり、血流量飽和フラグBF2が「0」であるという組み合わせ(以下、この組み合わせを「第3変動パターン」と適宜称する)に対応する血圧低下リスクレベルとして、「LV1」よりも血圧低下が発生するリスクが高いことを示す「LV2」が格納されている。また、変動パターンテーブル149には、脈拍数変化フラグHR1が「0」であり、脈拍数飽和フラグHR2が「1」であり、脈波振幅変化フラグPW1が「−1」であり、脈波振幅飽和フラグPW2が「0」であり、血流量変化フラグBF1が「−1」であり、血流量飽和フラグBF2が「0」であるという組み合わせ(以下、この組み合わせを「第4変動パターン」と適宜称する)に対応する血圧低下リスクレベルとして、「LV2」よりも血圧低下が発生するリスクが高いことを示す「LV3」が格納されている。また、変動パターンテーブル149には、脈拍数変化フラグHR1が「1」であり、脈拍数飽和フラグHR2が「0」であり、脈波振幅変化フラグPW1が「−1」であり、脈波振幅飽和フラグPW2が「0」であり、血流量変化フラグBF1が「0」であり、血流量飽和フラグBF2が「1」であるという組み合わせ(以下、この組み合わせを「第5変動パターン」と適宜称する)に対応する血圧低下リスクレベルとして、「LV3」が格納されている。また、変動パターンテーブル149には、脈拍数変化フラグHR1が「0」であり、脈拍数飽和フラグHR2が「1」であり、脈波振幅変化フラグPW1が「−1」であり、脈波振幅飽和フラグPW2が「0」であり、血流量変化フラグBF1が「0」であり、血流量飽和フラグBF2が「1」であるという組み合わせ(以下、この組み合わせを「第6変動パターン」と適宜称する)に対応する血圧低下リスクレベルとして、「LV3」が格納されている。また、変動パターンテーブル149には、脈拍数変化フラグHR1が「−1」であり、脈拍数飽和フラグHR2が「0」であり、脈波振幅変化フラグPW1が「−1」であり、脈波振幅飽和フラグPW2が「0」であり、血流量変化フラグBF1が「−1」であり、血流量飽和フラグBF2が「0」であるという組み合わせ(以下、この組み合わせを「第7変動パターン」と適宜称する)に対応する血圧低下リスクレベルとして、「LV3」が格納されている。
【0094】
更に、変動パターンテーブル149には、血圧低下リスクレベルに対応して表示すべき表示色が格納されている。具体的には、血圧低下リスクレベルとしての「LV0」に対応する表示色として「緑」が格納されており、血圧低下リスクレベルとしての「LV1」に対応する表示色として「黄」が格納されており、血圧低下リスクレベルとしての「LV2」に対応する表示色として「橙」が格納されており、血圧低下リスクレベルとしての「LV3」に対応する表示色として「赤」が格納されている。
【0095】
このような変動パターンテーブル149は、脈拍数、血流量及び脈波振幅の各々の変動の組み合わせが生じた場合における血圧低下が発生するリスクを予め実験的・経験的に或いはシミュレーションにより推定することで、予め作成することができる。
【0096】
図6及び
図7において、リスクレベル決定部150は、変動パターンテーブル149を参照し(ステップS130)、脈拍数、血流量及び脈波振幅の変動パターン(即ち、脈拍数変化フラグHR1、脈拍数飽和フラグHR2、脈波振幅変化フラグPW1、脈波振幅飽和フラグPW2、血流量変化フラグBF1及び血流量飽和フラグBF2の組み合わせ)が、変動パターンテーブル149上の変動パターン(即ち、第0から第7変動パターン)のいずれかと一致するか否かを判定する(ステップS140)。
【0097】
脈拍数、血流量及び脈波振幅の変動パターンが、変動パターンテーブル149上の変動パターンのいずれとも一致しないと判定された場合には(ステップS140:NO)、再びステップS110に係る処理が行われる。
【0098】
脈拍数、血流量及び脈波振幅の変動パターンが、変動パターンテーブル149上の変動パターンのいずれかと一致すると判定された場合には(ステップS140:YES)、一致した変動パターンに対応付けけられた血圧低下リスクレベルに対応する表示色が出力される(ステップS150)。即ち、変動パターンテーブル149上の変動パターンのうち、現在の脈拍数、血流量及び脈波振幅の変動パターンと一致する変動パターンに対応して格納された血圧低下リスクレベルが、現在の血圧低下リスクレベルとしてリスクレベル決定部150によって決定され、この決定された血圧低下リスクレベルに対応する表示色が出力部160によって表示される。
【0099】
このように本実施例では特に、リスクレベル決定部150は、脈拍数計測処理、血流量算出処理及び脈波振幅処理によって得られる現在の脈拍数、血流量及び脈波振幅の変動パターンに基づいて、変動パターンテーブル149を参照することにより血圧低下リスクレベルを決定する。よって、リスクレベル決定部150によれば、脈拍数、血流量及び脈波振幅の各々の変動に基づいて、血圧低下が発生する前の早期に血圧低下を予測でき、血圧低下が発生するリスクを示す血圧低下リスクレベルを適切に決定できる。なお、血圧低下リスクレベルの決定に際しては、脈拍数、血流量及び脈波振幅の各々の変動に加え、現段階のリスクレベルを考慮して次段階のリスクレベルを決定してもよい。即ち、例えば、現在の血圧低下リスクレベルが「LV0」である場合において、脈拍数、血流量及び脈波振幅の変動パターンが、変動パターンテーブル149上の「LV3」の血圧低下リスクレベルに対応する変動パターン(即ち、第4から第7変動パターン)に一致するときには、血圧低下リスクレベルを現在の血圧低下リスクレベルである「LV0」よりも1段階高い血圧低下リスクレベルである「LV1」に決定してもよい。つまり、血圧低下リスクレベルが段階的に高くなるように(即ち、血圧低下リスクレベルが例えば「LV0」→「LV1」→「LV2」→「LV3」の順に1段階ずつ高くなるように)、血圧低下リスクレベルを決定してもよい。言い換えれば、例えば、現在、血圧低下リスクレベルが「LV0」であり、緑色が外部に表示されている場合において、脈拍数、血流量及び脈波振幅の変動パターンが、変動パターンテーブル149上の「LV3」の血圧低下リスクレベルに対応する変動パターン(即ち、第4から第7変動パターン)に一致したときには、表示色を緑色から赤色に変化させるのではなく、緑色から黄色に変化させてもよい。
【0100】
ここで、
図8は、人工透析を受けている最中の生体900の脈拍数、血流量及び脈波振幅の経時的な変化の一例を示すグラフである。なお、
図8では、横軸は、人工透析が開始されてから経過した時間(即ち、透析時間)である。また、
図8では、実線L1が脈拍数の経時的な変化の一例を示し、実線L2が血流量の経時的な変化の一例を示し、実線L3が脈波振幅の経時的な変化の一例を示している。
【0101】
図8では、人工透析による除水によって循環血流量が減少し、1回心拍出量の変動に応じて変動する場合が多いと考えられる脈波振幅が透析時間とともに減少する場合を一例として示している。
図8の例では、人工透析が開始されると、生体900の脈拍数は、時間T1が経過した時点において上昇し始め、時間T3が経過した時点において飽和して一定値となり、生体900の血流量は、時間T1よりも長く且つ時間T3よりも短い時間T2が経過した時点において下降し始め、生体900の脈波振幅は、時間T1が経過する前から下降し始め、時間T3が経過した後まで下降し続ける。
【0102】
血圧は心拍出量(即ち、1回心拍出量と心拍数との積)と末梢血管抵抗との積で決まる。即ち、血圧は心拍数と1回心拍出量と末梢血管抵抗との積で決まる。生体は、通常、血圧が低下しそうになると、心拍数や末梢血管抵抗を反射的に調節することで、血圧を維持する。即ち、心拍数や末梢血管抵抗は、血圧が低下する前に変化する場合が多い。脈拍数は心拍数に相当し、血流量は末梢血管抵抗の変動に応じて変動する場合が多く、脈波振幅は1回心拍出量の変動に応じて変動することが推測される。
図8の例では、透析時間T1の時点において、脈拍数が上昇している。これは、生体が脈拍数を増大させることにより、血圧を維持することを示している。また、
図8の例では、透析時間T2の時点において、血流量が減少している(即ち、下降している)。これは、生体が抹消血管抵抗を増大させることにより、血圧を維持することを示している。抹消血管抵抗が増大することで、血流量が減少する。即ち、
図8の例では、透析時間T1の時点から透析時間T2の時点までの期間は、生体が脈拍数を増大させることにより血圧を維持する段階(以下、「第1血圧維持段階」と適宜称する)であり、透析時間T2の時点から透析時間T3の時点までの期間は、生体が抹消血管抵抗を増大させることにより血圧を維持する段階(以下、「第2血圧維持段階」と適宜称する)である。また、透析時間T3よりも後の期間は、脈拍数や抹消血管抵抗を変動させることにより血圧を維持することができなくなった期間、即ち、血圧低下が発生する段階(以下、「血圧維持不能段階」と適宜称する)である。
図8の例に示されるように、血圧低下が発生する前(即ち、透析時間T3が経過する以前)に、血圧低下が発生し得る程度に応じて脈拍数、血流量及び脈波振幅は変動する。
【0103】
そこで、本実施例に係る血圧低下予測装置100では、血流波形に基づいて得られた脈拍数、血流量及び脈波振幅の変動パターンに基づいて、リスクレベル決定部150によって血圧低下リスクレベルを決定する。よって、血圧低下が発生する前の早期に血圧低下を予測でき、血圧低下が発生するリスクを示す血圧低下リスクレベルを適切に決定できる。したがって、リスクレベル決定部150によって決定された血圧低下リスクレベルを、出力部160によって外部に出力することで、患者である生体900や、医師或いは看護師などの関係者に血圧低下のリスクを知らせることができる。この結果、血圧低下が予測される生体900に対する処置が遅れてしまうことを低減或いは防止できる(即ち、血圧低下のリスクがある患者である生体900に対して早期に処置を行うことが可能となる)。
【0104】
なお、血圧低下予測装置100は、
図7を参照して前述した変動パターンテーブル149が、ユーザー(例えば、患者である生体900や、医師或いは看護師などの関係者)によって書き換え可能に構成されている。変動パターンテーブル149を、例えば、患者毎に或いは患者の過去や現在の状態に応じて、適宜書き換えることより、より適切に血圧低下リスクレベルを決定することが可能となる(即ち、より精度良く血圧低下を早期に予測することが可能となる)。
【0105】
また、本実施例では、血圧低下リスクレベルとして、「LV0」、「LV1」、「LV2」及び「LV3」の4つのレベルが設定されている例を挙げたが、例えば、脈拍数、血流量及び脈波振幅の各々の変化率(即ち、所定時間あたりの変化量)などを基準として各レベルを細分化することにより、血圧低下リスクレベルの数を増やしてもよい。また、血圧低下リスクレベルは、例えば、生体900の状態が前述した第1及び第2血圧維持段階のいずれであるかに応じて設定されてもよい。
【0106】
更に、本実施例では特に、レーザー血流計である血流波形出力装置800から入力される血流波形に基づいて、脈拍数、血流量及び脈波振幅を算出するので、例えばカフや電極を用いて血圧を測定する場合と比較して、生体900にほとんど或いは全く負担をかけなくて済むという有利な効果もある。
【0107】
加えて、本実施例では特に、前述したように、出力部160は、リスクレベル決定部150によって決定された血圧低下リスクレベルに応じて、緑色、黄色、橙色及び赤色のうちのいずれかの色を外部に表示する。よって、患者である生体900や、医師或いは看護師などの関係者に血圧低下リスクレベルを直感的に認識させることができる。なお、出力部160は、リスクレベル決定部150によって決定された血圧低下リスクレベルに応じた数字や文字、文章、図形、記号、或いは音などを出力するように構成されてもよい。また、出力部160は、リスクレベル決定部150によって決定された血圧低下リスクレベルに応じて、血圧計などの外部機器に信号を送って前記血圧計などの外部機器を自動的に動作させるようにしてもよい。
【0108】
なお、血圧低下予測装置100は、脈拍数算出部110によって算出された脈拍数、血流量算出部120によって算出された血流量、脈波振幅算出部130によって算出された脈波振幅の各々の変動を同時に示すグラフを表示するように構成されてもよい。この場合には、患者である生体900や、医師或いは看護師などの関係者が、血圧低下が発生するリスクを直感的に把握することも可能になり、実践上大変便利である。
【0109】
また、血圧低下予測装置100は、必ずしもリスクレベル決定テーブルを使用しなくともよい。
【0110】
また、リスクレベル決定部150は、脈拍数、血流量及び脈波振幅の変動パターン(即ち、脈拍数、血流量及び脈波振幅の各々の変動の組み合わせ)に加えて、透析時間に基づいて、血圧低下リスクレベルを決定するように構成されてもよい。この場合には、血圧低下リスクレベルをより適切に決定することが可能となる。
【0111】
また、リスクレベル決定部150は、血流量と脈波振幅との間の相関値を算出し、この算出した相関値に基づいて、血圧低下リスクレベルを決定するように構成されてもよい。例えば、リスクレベル決定部150は、血流量と脈波振幅とが相関をもって減少する場合(即ち、血流量と脈波振幅との間の相関値が所定値よりも大きく、且つ、血流量及び脈波振幅が減少する場合)には、血圧低下リスクレベルを相対的に高いレベルに決定してもよい。この場合には、血圧低下リスクレベルをより適切に決定することが可能となる。
【0112】
また、リスクレベル決定部150は、脈拍数、血流量及び脈波振幅の各々の平均の偏差の値に基づいて、血圧低下リスクレベルを決定するように構成されてもよい。この場合には、血圧低下リスクレベルをより適切に決定することが可能となる。
【0113】
また、血圧低下予測装置100は、脈拍数、血流量及び脈波振幅に加えて、血流波形から得られる血圧低下に関する他の情報に基づいて、血圧低下リスクレベルを決定するように構成されてもよい。この場合には、血圧低下リスクレベルをより適切に決定することが可能となる。この際、血圧低下予測装置100は、人工透析を過去に受けた患者の血圧低下に関する情報に基づいて、血圧低下リスクレベルを決定してもよい。
【0114】
また、血圧低下予測装置100は、リスクレベル決定部150によって決定された血圧低下リスクレベルに応じて、生体900の血圧の血圧計による計測を、患者である生体900や、医師或いは看護師などの関係者に促すように構成されてもよい。或いは、血圧低下予測装置100は、リスクレベル決定部150によって決定された血圧低下リスクレベルに応じて、生体900の血圧を血圧計により計測するように構成されてもよい。
【0115】
<変形例>
前述した実施形態では、リスクレベル決定部150は、脈拍数計測処理、血流量計測処理及び脈波振幅計測処理の結果に基づいて、
図7に示す変動パターンテーブル149を参照して血圧低下リスクレベルを決定する例を挙げたが、リスクレベル決定部150は、脈拍数計測処理及び血流量計測処理の結果に基づいて、
図9に示す変動パターンテーブル149bを参照して血圧低下リスクレベルを決定してもよい。
【0116】
図9は、変形例に係る変動パターンテーブル149bを概念的に示す概念図である。
【0117】
図9において、変動パターンテーブル149bは、脈拍数変化フラグHR1、脈拍数飽和フラグHR2、血流量変化フラグBF1及び血流量飽和フラグBF2の各々の取り得る値の組み合わせと、これら組み合わせにそれぞれ対応する血圧低下リスクレベルとが予め格納された、血圧低下リスクレベルを決定するための参照テーブル(ルックアップテーブル)である。言い換えれば、変動パターンテーブル149bは、脈拍数及び血流量の各々の変動の組み合わせと、これら組み合わせが生じた場合にそれぞれ想定される血圧低下リスクレベルとが予め対応付けられて格納された参照テーブルである。
【0118】
このような変動パターンテーブル149bは、
図7を参照して前述した変動パターンテーブル149と概ね同様に、脈拍数及び血流量の各々の変動の組み合わせが生じた場合における血圧低下が発生するリスクを予め実験的・経験的に或いはシミュレーションにより推定することで、予め作成することができる。
【0119】
この変形例によれば、変動パターンテーブル149bを参照して、脈拍数及び血流量の各々の変動に基づいて、早期に血圧低下を予測でき、血圧低下リスクレベルを適切に決定できる。
【0120】
以上説明したように、本実施例に係る血圧低下予測装置100によれば、生体900にほとんど負担をかけることなく、生体900の血圧低下を早期に予測でき、血圧低下が発生するリスクを示す血圧低下リスクレベルを適切に決定できる。更に、患者である生体900や、医師或いは看護師などの関係者に血圧低下のリスクを知らせることができる。この結果、血圧低下のリスクがある生体900に対して早期に処置を行うことが可能となる。
【0121】
<第2実施例>
第2実施例に係る血圧低下予測装置100bについて、
図10を参照して説明する。
【0122】
図10は、第2実施例に係る血圧低下予測装置の構成を示すブロック図である。なお、
図10において、
図1に示した第1実施例に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0123】
図10において、第2実施例に係る血圧低下予測装置100bは、前述した第1実施例における脈拍数算出部110、血流量算出部120及び脈波振幅算出部130にそれぞれ代えて、脈拍数算出部110b、血流量算出部120b及び脈波振幅算出部130bを備える点、及び前述した第1実施例における血流波形出力装置800が出力する血流波形が入力される構成に代えて、血流量検出手段810の出力及び脈波検出手段820の出力が入力される構成を有する点で、前述した第1実施例に係る血圧低下予測装置と異なり、その他の点については、前述した第1実施例に係る血圧低下予測装置100と概ね同様に構成されている。
【0124】
血流量検出手段810は、生体900の血流量を検出可能な例えばレーザードップラー血流計などの血流量検出手段であり、生体900の血流量を示す検出信号を血圧低下予測装置100bに出力する。
【0125】
脈波検出手段820は、生体900の脈波を検出可能な例えば心電計、光電脈波計などの脈波検出手段であり、生体900の脈波を示す検出信号を血圧低下予測装置100bに出力する。
【0126】
血流量算出部120bは、血流量検出手段810が出力する検出信号に基づいて、生体900の血流量を算出する。
【0127】
脈拍数算出部110bは、脈波検出手段820が出力する検出信号に基づいて、生体900の脈拍数を算出する。
【0128】
脈波振幅算出部130bは、脈波検出手段820が出力する検出信号に基づいて、生体900の脈波振幅を算出する。
【0129】
本実施例では、リスクレベル決定部150は、血流量算出部120bによって算出された血流量、脈拍数算出部110bによって算出された脈拍数、及び脈波振幅算出部130bによって算出された脈波振幅の各々の変動パターンに基づいて、血圧低下リスクレベルを決定する。よって、血圧低下が発生する前の早期に血圧低下を予測でき、血圧低下が発生するリスクを示す血圧低下リスクレベルを適切に決定できる。したがって、リスクレベル決定部150によって決定された血圧低下リスクレベルを、出力部160によって外部に出力することで、患者である生体900や、医師或いは看護師などの関係者に血圧低下のリスクを知らせることができる。この結果、血圧低下が予測される生体900に対する処置が遅れてしまうことを低減或いは防止できる。
【0130】
このように第2実施例に係る血圧低下予測装置100bは、血流波形に基づいて生体900の血圧低下を予測する前述した第1実施例に係る血圧低下予測装置100とは異なり、例えばレーザードップラー血流計などである血流量検出手段810の出力と例えば心電計、光電脈波計などである脈波検出手段820の出力とに基づいて、血圧低下を予測でき、血圧低下リスクレベルを適切に決定できる。
【0131】
<第3実施例>
第3実施例に係る血圧低下予測装置100cについて、
図11を参照して説明する。
【0132】
図11は、第3実施例に係る血圧低下予測装置の構成を示すブロック図である。なお、
図11において、
図10に示した第2実施例に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0133】
図11において、第3実施例に係る血圧低下予測装置100cは、前述した第2実施例における脈波振幅算出部130bに代えて脈波振幅算出部130cを備える点、及び血流量検出手段810の出力及び脈波検出手段820の出力に加えて、脈波振幅検出手段830の出力が入力される点で、前述した第2実施例に係る血圧低下予測装置100bと異なり、その他の点については、前述した第2実施例に係る血圧低下予測装置100bと概ね同様に構成されている。
【0134】
脈波振幅検出手段830は、生体900の脈波振幅を検出可能な例えば光電脈波計などの脈波振幅検出手段であり、生体900の脈波振幅を示す検出信号を血圧低下予測装置100cに出力する。
【0135】
脈波振幅算出部130cは、脈波振幅検出手段830が出力する検出信号に基づいて、生体900の脈波振幅を算出する。
【0136】
本実施例では、リスクレベル決定部150は、血流量算出部120bによって算出された血流量、脈拍数算出部110bによって算出された脈拍数、及び脈振幅算出部130cによって算出された脈波振幅の各々の変動パターンに基づいて、血圧低下リスクレベルを決定する。よって、血圧低下が発生する前の早期に血圧低下を予測でき、血圧低下が発生するリスクを示す血圧低下リスクレベルを適切に決定できる。
【0137】
このように第3実施例に係る血圧低下予測装置100cは、前述した第2実施例に係る血圧低下予測装置100bとは異なり、血流量検出手段810の出力と脈波検出手段820の出力と脈波振幅検出手段830の出力とに基づいて、血圧低下を予測でき、血圧低下リスクレベルを適切に決定できる。
【0138】
なお、血圧低下を予測する精度を高める観点からは、脈波検出手段820としては、心電計などの専用の計測器を用いることが好ましいが、光電脈波計或いは血流計が用いられてもよい。即ち、脈拍数算出部110bは、心電計などの専用の計測器が出力する検出信号に基づいて、脈拍数を算出してもよいし、光電脈波計或いは血流計が出力する検出信号に基づいて、脈拍数を算出してもよい。
【0139】
本発明は、前述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う血圧低下予測装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。また、本発明は、生体の脱水症状を予測する装置にも適用可能である。即ち、例えば、血圧低下リスクレベルに応じて脱水症状のレベルを決定することも可能である。