特許第5706098号(P5706098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5706098カラーフィルタ剥離用組成物、及びこれを利用したカラーフィルタ再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706098
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】カラーフィルタ剥離用組成物、及びこれを利用したカラーフィルタ再生方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20150402BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   G02B5/20 101
   G02F1/1335 505
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2010-95083(P2010-95083)
(22)【出願日】2010年4月16日
(65)【公開番号】特開2011-39487(P2011-39487A)
(43)【公開日】2011年2月24日
【審査請求日】2013年4月12日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0076403
(32)【優先日】2009年8月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲光▼ 昊
(72)【発明者】
【氏名】金 璋 燮
【審査官】 池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−095019(JP,A)
【文献】 特開2007−254555(JP,A)
【文献】 特開2007−322731(JP,A)
【文献】 特開2005−331619(JP,A)
【文献】 特開2002−131524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスまたはプラスチックからなる基板上に配置された有機膜からなる隔壁によって区画された領域に液体インクを用いて形成されたカラーフィルタを、前記基板及び前記隔壁から剥離するためのカラーフィルタ剥離用組成物であって、
グリコールと水酸化カリウム(KOH)とを含み、前記グリコール濃度が91wt%以上96wt%以下であり、前記水酸化カリウム(KOH)の濃度が0.2wt%以上であることを特徴とするカラーフィルタ剥離用組成物。
【請求項2】
極性溶媒、アミン、及び無機溶媒のいずれか一つを含むことを特徴とする請求項に記載のカラーフィルタ剥離用組成物。
【請求項3】
前記グリコールは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(Diethylene Glycol Monobutyl Ether)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Diethylene Glycol Monoethyl Ether)及びエチレングリコールモノエチルエーテル(Ethylene Glycol Monoethyl Ether)のいずれか一つを含むことを特徴とする請求項に記載のカラーフィルタ剥離用組成物。
【請求項4】
ガラスまたはプラスチックからなる基板上に有機膜からなる隔壁を形成すること、
前記隔壁の間を埋める第1カラーフィルタを液体インクを用いて形成すること、及びグリコールと水酸化カリウム(KOH)とを含むカラーフィルタ剥離用組成物を用いて前記第1カラーフィルタを前記基板及び前記隔壁から除去することを含み、
前記グリコールの濃度が91wt%以上96wt%以下であり、前記水酸化カリウム(KOH)の濃度が0.2wt%以上であることを特徴とするカラーフィルタ剥離方法。
【請求項5】
前記第1カラーフィルタを除去することは、摂氏20度〜30度の温度で行われることを特徴とする請求項に記載のカラーフィルタ剥離方法。
【請求項6】
前記第1カラーフィルタを形成した後に、自然乾燥または摂氏150度以下の温度でベーク(Bake)することをさらに含むことを特徴とする請求項に記載のカラーフィルタ剥離方法。
【請求項7】
前記第1カラーフィルタは、前記隔壁を形成した後にインクジェットプリント法で形成することを特徴とする請求項に記載のカラーフィルタ剥離方法。
【請求項8】
前記第1カラーフィルタを除去した後に、前記隔壁を除去せずに、インクジェットプリント法を用いて前記隔壁の間に第2カラーフィルタを形成することをさらに含むことを特徴とする請求項に記載のカラーフィルタ剥離方法。
【請求項9】
前記第2カラーフィルタを形成する前に、前記隔壁をプラズマ処理することをさらに含むことを特徴とする請求項に記載のカラーフィルタ剥離方法。
【請求項10】
前記隔壁を形成した後に、前記隔壁をプラズマ処理することをさらに含むことを特徴とする請求項に記載のカラーフィルタ剥離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ剥離用組成物、及びこれを利用したカラーフィルタ再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置用カラーフィルタは、基板上に形成されたブラックマトリクス、及びこのブラックマトリクスの内部に形成されるカラーレジスト(赤色、緑色及び青色パターン)を含む。
【0003】
カラーレジストを形成する方法としては、顔料分散法(pigment dispersion)、染色法(dyeing)、電気化学的蒸着法(electrochemical deposition)、インクジェットプリント法(Inkjet printing method)などが主に利用されている。その中で、顔料分散法は、光硬化性樹脂組成物に顔料を分散させたカラーレジスト組成物を利用する方法であって、微細パターンを実現することができるので、最も広く使用されてきた。しかし、TVのような色再現率が高く、大型基板を用いて製造する場合には、コーティング及び現像工程において染みなどの問題を招くことがあり、工程管理が難しかった。したがって、工程を単純化し、かつ大量生産に適したインクジェットプリント法に関する研究が進められている。
【0004】
しかし、インクジェットプリント法を用いてカラーフィルタを製造する場合には、パターンの部分的な隆起(lifting)、線幅の拡大、ブラックマトリクスとの整合不良(misalignment)などの問題が生じることがあり、このような場合、既に硬化したカラーレジストを誤った部分だけ選択的に除去することは不可能である。カラーフィルタに不良が発生した場合には、カラーフィルタが形成されたガラス基板自体を廃棄処理するか、または再生して使用する。再生のためには、KOH、TMAHなどの強いアルカリを用いてカラーフィルタを除去しなければならず、既存の再生方法では、カラーフィルタを剥離する過程でブラックマトリクスの厚みを減少させたり、表面粗度を増加させたりする問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、隔壁または遮光部材を損傷することなく、選択的に不良カラーフィルタを除去するカラーフィルタ剥離用組成物、及びこれを利用したカラーフィルタ再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物は、グリコールと水酸化カリウム(KOH)とを含み、グリコール濃度が83wt%〜91wt%であり、水酸化カリウム(KOH)の重量パーセント(wt%)≧6−(0.065×グリコールの重量パーセント(wt%))の条件を満足するカラーフィルタ剥離用組成物である。
【0007】
カラーフィルタ剥離用組成物は、摂氏20度〜30度の温度で製造されてもよい。
【0008】
カラーフィルタ剥離用組成物は、極性溶媒(Polar solvent)、アミン(Amine)、及び無機溶媒のいずれか一つを含んでもよい。
【0009】
グリコールは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(Diethylene Glycol Monobutyl Ether)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Diethylene Glycol Monoethyl Ether)、及びエチレングリコールモノエチルエーテル(Ethylene GlycolMonoethyl Ether)のいずれか一つを含んでもよい。
【0010】
本発明の他の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物は、グリコールと水酸化カリウム(KOH)とを含み、グリコール濃度が91wt%以上であり、水酸化カリウム(KOH)の濃度が0.2wt%以上であってもよい。
【0011】
カラーフィルタ剥離用組成物は、摂氏20度〜30度の温度で製造されてもよい。
【0012】
カラーフィルタ剥離用組成物は、極性溶媒、アミン、及び無機溶媒のいずれか一つを含んでもよい。
【0013】
グリコールは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(Diethylene Glycol Monobutyl Ether)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Diethylene Glycol Monoethyl Ether)、及びエチレングリコールモノエチルエーテル(Ethylene Glycol Monoethyl Ether)のいずれか一つを含んでもよい。
【0014】
本発明の他の実施形態によるカラーフィルタ再生方法は、基板上に隔壁(partition)を形成すること、隔壁の間を埋める第1カラーフィルタを形成すること、及びグリコールと水酸化カリウム(KOH)とを含むカラーフィルタ剥離用組成物を用いて第1カラーフィルタを除去することを含み、グリコールの濃度は83wt%〜91wt%であり、水酸化カリウム(KOH)の重量パーセント(wt%)≧6−(0.065×グリコールの重量パーセント(wt%))の条件を満足するか、またはグリコール濃度が91wt%以上であり、水酸化カリウム(KOH)の濃度が0.2wt%以上であってもよい。
【0015】
第1カラーフィルタを除去することは、摂氏20度〜30度の温度で行ってもよい。
【0016】
カラーフィルタ剥離用組成物は、摂氏20度〜30度の温度で製造されてもよい。
【0017】
第1カラーフィルタを形成した後に、自然乾燥または摂氏150度以下の温度でベーク(bake)してもよい。
【0018】
第1カラーフィルタは、隔壁を形成した後に、インクジェットプリント法で形成されてもよい。
【0019】
第1カラーフィルタを除去した後に、隔壁を除去せずに、インクジェットプリント法を用いて隔壁の間に第2カラーフィルタを形成してもよい。
【0020】
第2カラーフィルタを形成する前に、隔壁をプラズマ処理してもよい。
【0021】
隔壁を形成した後に、隔壁をプラズマ処理してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、インクジェットプリント法を用いてカラーフィルタを製造するとき、ミスプリント(misprint)及び染み(stain)の発生などの不良が生じた場合にも、隔壁または遮光部材を損傷することなく、カラーフィルタだけを選択的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いたカラーフィルタ再生方法を説明するためのフローチャートである。
図2】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いたカラーフィルタ再生方法を説明するための断面図である。
図3】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いたカラーフィルタ再生方法を説明するための断面図である。
図4】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いたカラーフィルタ再生方法を説明するための断面図である。
図5A】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いてカラーフィルタを除去する前後のSEM写真である。
図5B】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いてカラーフィルタを除去する前後のSEM写真である。
図6】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いてカラーフィルタを除去する前後のSEM写真である。
図7】既存の剥離液を用いた後のカラーフィルタ領域の透過率を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態による剥離方法を用いた後のカラーフィルタ領域の透過率を示すグラフである。
図9】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物においてKOHの濃度に応じた透過率の変化を示すグラフである。
図10】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物においてKOHの濃度に応じた透過率の変化を示すグラフである。
図11】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物においてKOHの濃度に応じた透過率の変化を示すグラフである。
図12】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物においてグリコールの濃度に応じた透過率の変化を示すグラフである。
図13】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物においてグリコールの濃度に応じた透過率の変化を示すグラフである。
図14】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物においてグリコールの濃度に応じた透過率の変化を示すグラフである。
図15】本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物においてKOH及びグリコールの濃度関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明はここで説明される実施形態に限定されず、他の形態に具体化することもできる。ここで紹介する実施形態は、開示された内容を徹底かつ完全にするように、そして当業者に本発明の思想を十分に伝えるように提供したものである。
【0025】
図面において、層及び領域の厚さは明確性のために誇張して表わした。また、層が他の層または基板“上”にあるという場合、これは他の層または基板上に直接形成されているか、またはそれらの間に第3の層が介在することもできる。明細書の全体にわたって同一の参照番号に表示された部分は、同一の構成要素を意味する。
【0026】
本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物は、グリコールと水酸化カリウム(KOH)とを含み、グリコール濃度が83wt%〜91wt%であり、水酸化カリウム(KOH)の重量パーセント(wt%)≧6−(0.065×グリコールの重量パーセント(wt%))の条件を満足するか、またはグリコール濃度が91wt%以上であり、水酸化カリウム(KOH)の濃度が0.2wt%以上の剥離用組成物である。
【0027】
このような水酸化カリウム及びグリコールの含有量を有する剥離用組成物を用いて、インクジェットプリント法で形成されたカラーフィルタを剥離するとき、遮光部材(ブラックマトリクス)の損傷を減らすことができる。また、剥離後に残存するカラーフィルタの量を減らすことができる。
【0028】
グリコールは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(Diethylene Glycol Monobutyl Ether)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Diethylene Glycol Monoethyl Ether)、及びエチレングリコールモノエチルエーテル(Ethylene Glycol Monoethyl Ether)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0029】
カラーフィルタ剥離用組成物は、極性溶媒、アミン、及び無機溶媒のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0030】
カラーフィルタ剥離用組成物は、摂氏20度〜30度の温度で製造されてもよい。
【0031】
図1は、本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を利用したカラーフィルタ再生方法を説明するためのフローチャートである。図2図4は、本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を利用したカラーフィルタ再生方法を説明するための断面図である。
【0032】
図1図4を参照して、上記で説明したカラーフィルタ剥離用組成物を利用したカラーフィルタ再生方法について説明する。
【0033】
図1及び図2に示したように、透明なガラスまたはプラスチックなどで作られた絶縁基板100上に隔壁110を形成する(S10)。隔壁110は、絶縁基板100上に格子状に形成されてもよい。隔壁110は有機膜または透明有機膜で形成されてもよい。隔壁110は光漏れを遮断する遮光部材(ブラックマトリクス)の役割を果たしてもよい。
【0034】
隔壁110を形成する前に、絶縁基板100上にゲート線、データ線などの配線及び薄膜トランジスタを形成してもよい。
【0035】
次に、CF4を用いて隔壁110をプラズマ処理する(S20)。
【0036】
CF4を用いてプラズマ処理をする理由は、隔壁110に疎水性を付与するためである。
【0037】
次に、図1及び図3に示したように、カラーフィルタ120が隔壁110の間に形成された空間を埋めるように第1カラーフィルタ120を形成する(S30)。第1カラーフィルタ120は、インクジェットプリント法を用いて形成してもよい。第1カラーフィルタ120は、赤色カラーフィルタ120a、緑色カラーフィルタ120b、及び青色カラーフィルタ120cを含む。
【0038】
第1カラーフィルタ120を自然乾燥または摂氏150度以下の温度でベークする(S40)。
【0039】
自然乾燥は、10分〜300分ほど、特に60分であってもよく、第1カラーフィルタ120をベークせずに、そのまま置いておく。
【0040】
ベーキング(baking)は、特に摂氏110度の温度で90秒ほど行ってもよい。
【0041】
インクジェットプリント法を用いて、カラーフィルタを隔壁110の間に注入する際に、誤った位置にカラーフィルタが形成されたり、粒子(Particle)などによる染みが生じたりする場合がある。このように、カラーフィルタに不良が発生した場合には、カラーフィルタを本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離液を用いて除去し、再び形成することができる。
【0042】
本発明の実施形態によれば、図1及び図4に示したように、不良カラーフィルタが発生した場合、常温で剥離液(stripping solvent)を用いて、選択的に第1カラーフィルタ120を除去することができる(S50)。
【0043】
剥離液は、グリコールと水酸化カリウム(KOH)とを含み、グリコール濃度が83wt%〜91wt%であり、水酸化カリウム(KOH)の重量パーセント(wt%)≧6−(0.065×グリコールの重量パーセント(wt%))の条件を満足するか、またはグリコール濃度が91wt%以上であり、水酸化カリウム(KOH)の濃度が0.2wt%以上の条件を満足するカラーフィルタ除去用組成物を使用する。
【0044】
ここで、常温は摂氏20度〜30度範囲の温度を意味する。常温は25度が適切である。このように、常温範囲の20度〜30度範囲の温度で、本発明の実施形態によるカラーフィルタ除去用組成物を用いて第1カラーフィルタ120を除去する場合には、剥離後の隔壁110の損傷を最少化することができる。
【0045】
常温で剥離液を用いて第1カラーフィルタ120を除去すると、絶縁基板100と隔壁110だけが残るようになる。既存の高温剥離方法によれば、絶縁基板100だけを残して第1カラーフィルタ120と隔壁110を全て除去するか、または第1カラーフィルタ120を除去する過程で隔壁110の厚さの減少及び表面粗度(roughness)の増加を発生させる。一方、本発明の実施形態による剥離液と剥離方法を用いれば、隔壁110を損傷することなく、第1カラーフィルタ120だけを除去することができる。
【0046】
次に、CF4を用いて隔壁110を再びプラズマ処理する(S60)。
【0047】
次に、インクジェットプリント法を用いて第2カラーフィルタ(図示せず)を形成する(S70)。
【0048】
第2カラーフィルタを形成した後に、隔壁110及び第2カラーフィルタを覆うオーバーコート膜(図示せず)を形成してもよい。
【0049】
以下、本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いてカラーフィルタを剥離する場合に生じる効果について説明する。
【0050】
図5及び図6は、本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いてカラーフィルタを除去する前後のSEM(scanning electron microscope)写真である。
【0051】
図5は、カラーフィルタを除去する前の隔壁の厚さを示している。図5Bは、図5Aを拡大した写真である。図6は、カラーフィルタを除去した後の隔壁写真であって、カラーフィルタを除去する前の隔壁の厚さと大きな差がない。しかしながら、カラーフィルタの剥離後に隔壁の厚さが薄くなると、再びカラーフィルタを形成するときにオーバーフロー(overflow)が発生し得る。
【0052】
(実施形態1)
常温で0.4wt%以上の水酸化カリウム(KOH)、91wt%以上のグリコールを剥離液として用いた。
【0053】
下記の表1は、本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いて、カラーフィルタを剥離する前と後との隔壁として使用されたブラックマトリクスの表面粗度を比較したグラフである。
【表1】
【0054】
計5回のテストを行った結果、カラーフィルタの剥離前の平均粗度は7.25nmから、カラーフィルタの剥離後には8.23nmになり、表面粗度は平均0.98nm増加した。これは、非常に小さい範囲の変化であって、本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物を用いてカラーフィルタを剥離した場合、ブラックマトリクスに及ぶ損傷が少ないことを示す。
【0055】
下記の表2は、共通的に91wt%のグリコールを含み、それぞれ0.4wt%のKOH、2.0wt%のTMAH、PGMEA、LGLを含む剥離液を用いた場合の接触角(contact angle)を示す。接触角とは、ブラックマトリクスの上部面(upper surface)とカラーフィルタの側面(side surface)とがなす角度を意味する。接触角が過度に小さいと、カラーフィルタのオーバーフローが発生し得る。
【表2】
【0056】
カラーフィルタを剥離する前には、平均接触角がほぼ58度程度であった。剥離用組成物として、0.4wt%の水酸化カリウム(KOH)、91wt%のグリコールを用いた場合、接触角は59度及び59.9度であり、剥離前より接触角は若干増加したが、二回のテストにおいて大きな変化がないことが確認された。
【0057】
2.0wt%のTMAH(Tetramethyl ammonium hydroxide)、91wt%のグリコールを用いた場合にも、剥離前と比較すると、大きな差がないことが確認された。しかし、PGMEA(Propylene glycol monomethyl ether acetate)を用いた場合には、二回のテストで、それぞれ58.9度と56.4度の差があり、再現性に問題があった。
【0058】
有機洗浄剤(LGL)を用いた場合は、接触角が55.0度と55.9度であって、剥離前に比べて接触角が小さくなることが確認された。
【0059】
図7は、既存の剥離液を用いてカラーフィルタを剥離したときのガラス基板の透過率を示すグラフである。ガラス基板のみの状態のとき、透過率は100%となる。
【0060】
既存の剥離液を用いてカラーフィルタを剥離した場合には、図7に示すように短波長の場合に透過率が低くなることがわかる。
【0061】
図8は、本発明の実施形態による剥離液を用いた後のカラーフィルタ領域における透過率を示す。
【0062】
既存の剥離液を用いたときに、カラーフィルタが残存したことと比べ、本発明の実施形態に係る剥離液を用いた場合、カラーフィルタ除去後の透過率はベアー(bare)状態であるガラス基板のみの場合と同等であった。以下、水酸化カリウムの濃度別にカラーフィルタを除去した場合の実験例について説明する。図9図11は、本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物においてKOHの濃度に応じた透過率の変化を示したグラフである。
【0063】
(実験例1)
実験例1では、水酸化カリウム(KOH)の濃度を約0.1wt%、約0.2wt%、及び約0.4wt%に変化させて実験した。そして、インクジェットプリント法でカラーフィルタを形成した後、自然乾燥を60分ほど行い、常温でカラーフィルタを除去した。また、グリコールの一つであるカルビトール(Carbitol)を91wt%含有する剥離液を用いた。
【0064】
図9は、KOHが0.1wt%の剥離液を用いた後のガラス基板とカラーフィルタ領域の透過率を示した。ベアー(bare)状態のガラス基板と同等の状態A1、A2の透過率がほぼ100%のとき、赤色カラーフィルタ領域R1、R2、R3、緑色カラーフィルタ領域G1、G2、及び青色カラーフィルタ領域B1、B2、B3における透過率は96%〜99%程度である。特に、青色カラーフィルタの残存量が多いことにより、青色カラーフィルタ領域B1、B2、B3における透過率が落ちる。
【0065】
図10は、KOHが0.2wt%の剥離液を用いた後の青色カラーフィルタ領域B1、B2、B3の透過率を示した。短波長の場合には透過率が100%に近接したが、波長が530nm以上の場合には透過率が97%〜99%程度である。
【0066】
図11は、KOHが0.4wt%の剥離液を用いた後のカラーフィルタ領域の透過率を示した。赤色カラーフィルタ領域R1、R2、緑色カラーフィルタ領域G1、G2、及び青色カラーフィルタ領域B1、B2の大部分の透過率が100%に近接する。
【0067】
以上より、KOHが剥離液組成物において0.4wt%以上のとき、カラーフィルタが完全に除去されることがわかる。
【0068】
以下、グリコールの濃度別にカラーフィルタを除去した場合の実験例について説明する。図12図14は、本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物においてグリコールの濃度に応じた透過率の変化を示したグラフである。
【0069】
(実験例2)
実験例2では、水酸化カリウム0.7wt%、グリコール83wt%の場合と、水酸化カリウム0.4wt%、グリコール91wt%の場合と、水酸化カリウム0.2wt%、グリコール96wt%の場合に分けて実験した。そして、インクジェットプリント法でカラーフィルタを形成した後、自然乾燥を60分ほど行い、常温でカラーフィルタを除去した。
【0070】
図12は、水酸化カリウム0.7wt%、グリコール83wt%の場合の組成物を用いてカラーフィルタを剥離した後の、赤色カラーフィルタ領域R1、R2、R3の透過率を示した。短波長の場合にカラーフィルタの透過率が特に落ちることが確認された。
【0071】
図13は、水酸化カリウム0.4wt%、グリコール91wt%の場合の組成物を用いてカラーフィルタを剥離した後の、カラーフィルタ領域の透過率を示した。赤色カラーフィルタ領域R1、R2、緑色カラーフィルタ領域G1、G2、及び青色カラーフィルタ領域B1、B2の大部分の透過率が100%に近接していることが確認された。
【0072】
図14は、水酸化カリウム0.2wt%、グリコール96wt%の場合の組成物を用いてカラーフィルタを剥離した後の、カラーフィルタ領域の透過率を示した。赤色カラーフィルタ領域R1、R2、緑色カラーフィルタ領域G1、G2、及び青色カラーフィルタ領域B1、B2の大部分の透過率がほぼ100%に達していることが確認された。
【0073】
図15は、上記実験例1、2について一つのグラフとして示したものである。
【0074】
X軸はグリコールの重量パーセント(wt%)、Y軸は水酸化カリウム(KOH)の重量パーセント(wt%)を示し、斜線領域が本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離液の組成濃度を示す。
【0075】
グリコール濃度が83wt%〜91wt%の領域では、水酸化カリウム(KOH)の重量パーセント(wt%)≧6−(0.065×グリコールの重量パーセント(wt%))の条件を満たしている。
【0076】
また、グリコール濃度が91wt%を超える領域では、水酸化カリウム(KOH)の濃度が0.2wt%以上の条件を満たしていることがわかる。
【0077】
本発明の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物、及びカラーフィルタ再生方法は、液晶表示装置の上部基板を製造する過程に適用可能である。
【0078】
液晶表示装置は、現在、最も広く使用されているフラットパネル表示装置の一つであって、電極が形成されている二枚の表示板と、その間に挿入されている液晶層とからなり、電極に電圧を印加して液晶層の液晶分子を再配列させることにより、透過する光の量を調節する表示装置である。
【0079】
液晶表示装置の中でも、現在、主に使用されているものは、電界生成電極が二つの表示板にそれぞれ備えられている構造である。この中でも、一つの表示板(以下、「薄膜トランジスタ表示板」という)には、複数の薄膜トランジスタと画素電極とがマトリクス状に配列されており、他の表示板(以下、「共通電極表示板」という)には赤色、緑色及び青色のカラーフィルタが形成され、その全面を共通電極が覆う構造が主流である。
【0080】
しかし、このような液晶表示装置は、画素電極とカラーフィルタとが異なる表示板に形成されるので、画素電極とカラーフィルタとの正確な配置(align)が難しく、アライメント誤差(alignment error)が発生し得る。
【0081】
これを解決するために、カラーフィルタと薄膜トランジスタ及び画素電極を同一の表示板に形成する構造(color filter on array、COA)が提案された。
【0082】
薄膜トランジスタと共にカラーフィルタを形成するとき、カラーフィルタはインクジェットプリント法で形成してもよい。インクジェットプリント法は、区画された所定位置に液体インクを噴射して、それぞれのインクにより着色されたカラーフィルタによりイメージを実現する技術であって、赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ、及び青色カラーフィルタを含む複数のカラーフィルタを一度に形成することができるので、製造工程、製造時間、及び費用を大きく節減することができる。
【0083】
インクジェットプリント法によってカラーフィルタを形成するとき、隔壁を利用して所望する位置にインクを注入することができ、隔壁は画素の境界部分で光漏れを遮断する役割を果たす。
【0084】
本発明の他の実施形態によるカラーフィルタ剥離用組成物、及びカラーフィルタ再生方法は、COA構造のようにカラーフィルタを薄膜トランジスタ基板に形成する場合にも適用することができる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれらに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の種々の変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0086】
100 ガラス基板
110 隔壁
120 カラーフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
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図10
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図15