(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ装置において、前記第1突起と前記先端面との間に、前記第1連通路と前記第2連通路との間での水の行き来を防止する防水膜を設けることを特徴とするモータ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたモータによれば、ギヤケースのブリーザ取付部にはフック受を一体に設け、ブリーザにはフック部を一体に設けている。したがって、溶融したアルミ材料等を鋳造成形してフック受を形成する際に、単純な形状の引き抜き型(上下金型)を用いることができない。また、プラスチック等の樹脂材料を射出成形してフック部を形成する際にも、単純な形状の引き抜き型を用いることができない。したがって、フック部およびフック受の製造工程が煩雑化するばかりか、フック部をフック受に引っ掛ける作業(装着作業)に手間が掛かり、ひいては製造コストが嵩むという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、ブリーザキャップのギヤケースへの引っ掛け構造を廃止して、製造工程および装着作業の簡素化を図ることができるモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモータ装置は、回転軸を回転自在に収容するモータケースと、前記回転軸により駆動されるギヤ機構を収容するギヤケースと、前記ギヤケースに当該ギヤケースの外部に向けて突出するよう設けられ、前記ギヤケースの内部と外部とを連通する第1連通路を形成する円筒部と、前記円筒部に当該円筒部を外部から覆うよう嵌合され、底部および円筒本体部を有するブリーザキャップと、を備えたモータ装置であって、前記ブリーザキャップは、前記底部の前記円筒本体部側に突出して設けられ、前記円筒部の先端面と部分的に当接し、前記先端面と前記底部との間に前記第1連通路と接続される第2連通路を形成する第1突起と、前記円筒本体部の径方向内側に突出して設けられ、前記円筒部の外周面と部分的に当接し、前記外周面と前記円筒本体部との間に前記第2連通路と接続される第3連通路を形成する第2突起とを備え、前記第1突起および前記第2突起が、前記ブリーザキャップの周方向において同一位置に形成され
、前記第2突起を、前記円筒本体部の軸方向に延びて前記円筒本体部の先端側に向かうにつれて前記ブリーザキャップの径方向に対する肉厚寸法が徐々に大きくなる逆テーパ形状とし、前記外周面に対して弾性接触させたことを特徴とする。
【0009】
本発明のモータ装置は、前記第2突起を、前記円筒本体部の周方向に沿って所定間隔で複数設けることを特徴とする。
【0010】
本発明のモータ装置は、前記第1突起を、前記底部に放射状に複数設けることを特徴とする。
【0011】
本発明のモータ装置は、前記第1突起と前記先端面との間に、前記第1連通路と前記第2連通路との間での水の行き来を防止する防水膜を設けることを特徴とする。
【0013】
本発明のモータ装置は、前記円筒本体部の径方向内側に、前記円筒本体部の剛性を高める補強リブを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のモータ装置によれば、ギヤケースの内外を連通する第1連通路を形成する円筒部をギヤケースに設け、円筒部にその外部から覆うよう嵌合され、底部および円筒本体部を有するブリーザキャップを設け、底部の円筒本体部側に、円筒部の先端面と部分的に当接し、先端面と底部との間に第1連通路と接続される第2連通路を形成する第1突起を設け、円筒本体部の径方向内側に、円筒部の外周面と部分的に当接し、外周面と円筒本体部との間に第2連通路と接続される第3連通路を形成する第2突起を設ける。これにより、ブリーザキャップを円筒部に被せて嵌合させるだけで、第1連通路と接続される第2連通路,第2連通路と接続される第3連通路を形成しつつ、第1突起および第2突起を円筒部の先端面および外周面にそれぞれ当接させることができる。したがって、従前のような引っ掛け構造を廃止してブリーザキャップおよび円筒部をそれぞれ引き抜き型により成形し得る形状にでき、製造工程および装着作業を簡素化し、ひいてはモータ装置の製造コストを低減することができる。
【0015】
本発明のモータ装置によれば、第2突起を、円筒本体部の周方向に沿って所定間隔で複数設けるので、ブリーザキャップを円筒部の径方向に対する正規の位置に位置決めすることができる。したがって、第3連通路を円筒部の周方向に沿ってその流路面積が均一となるよう形成でき、製品毎にばらつくこと無く充分な防水機能および呼吸機能を得ることができる。
【0016】
本発明のモータ装置によれば、第1突起を、底部に放射状に複数設けるので、ブリーザキャップを円筒部の軸方向に対する正規の位置に位置決めすることができる。したがって、第2連通路を円筒部の周方向に沿ってその流路面積が均一となるよう形成でき、製品毎にばらつくこと無く充分な防水機能および呼吸機能を得ることができる。
【0017】
本発明のモータ装置によれば、第1突起と先端面との間に、第1連通路と第2連通路との間での水の行き来を防止する防水膜を設けるので、第1連通路を介してギヤケース内に水が浸入するのをより確実に防止できる。よって、ギヤ機構の正常な動作を長期に亘り維持することができる。
【0018】
本発明のモータ装置によれば、第2突起を、外周面に対して弾性接触させるので、ブリーザキャップの円筒部に対する抜け強度を向上させることができる。
【0019】
本発明のモータ装置によれば、円筒本体部の径方向内側に、円筒本体部の剛性を高める補強リブを設けるので、ブリーザキャップの円筒部への装着による弾性変形を抑制することができる。よって、第3連通路の流路面積が小さくなって絞られるのを防止しつつ、ブリーザキャップの円筒部に対する抜け強度をより向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1はワイパ装置を搭載した車両を示す概略図を、
図2は
図1のワイパ装置を形成するワイパモータの出力軸側を示す平面図を、
図3は
図2のワイパモータの内部構造を説明する説明図を、
図4は
図2のA−A線に沿う部分断面図を、
図5はギヤケースを示す斜視図を、
図6(a),(b),(c)は、ブリーザキャップの詳細構造を説明する説明図を、
図7(a)は
図6(c)のB−B断面図,(b)は
図6(c)のC−C断面図をそれぞれ表している。
【0023】
図1に示すように、車両10の前方側にはフロントガラス(ウィンドシールド)11が設けられている。フロントガラス11の車両前方側にはワイパ装置12が設けられ、当該ワイパ装置12は、フロントガラス11に付着した雨水や埃等を払拭して運転者の視界を良好に確保するようになっている。
【0024】
ワイパ装置12は、運転席側(DR側)と助手席側(AS側)とで2本のワイパアーム13を備えている。各ワイパアーム13の基端側は、車両10に設けられた一対のワイパ軸14にそれぞれ取り付けられ、各ワイパアーム13の先端側は、各ワイパ軸14を中心として揺動自在となっている。
【0025】
ワイパ装置12はワイパモータ(モータ装置)15を備え、当該ワイパモータ15は、各ワイパアーム13を揺動駆動するようになっている。ワイパモータ15は出力軸16を備え、当該出力軸16は、車両10の下方に向けられてリンク機構17を介して各ワイパ軸14に接続されている。そして、ワイパモータ15を作動させると、出力軸16の回転運動がリンク機構17により揺動運動に変換され、各ワイパ軸14に伝達される。これにより、各ワイパアーム13の先端側がフロントガラス11上で揺動運動する。
【0026】
各ワイパアーム13の先端側には、ワイパブレード18がそれぞれ回動自在に取り付けられている。各ワイパブレード18は、フロントガラス11に弾性接触しており、ワイパモータ15により各ワイパアーム13を揺動駆動すると、各ワイパブレード18は、フロントガラス11上の所定の払拭範囲19を往復払拭動作してフロントガラス11に付着した雨水等を払拭する。
【0027】
図2および
図3に示すように、ワイパモータ15は、モータ部20とギヤ部30とを備えており、これらのモータ部20およびギヤ部30は、一対の締結ネジSにより一体化されている。
【0028】
モータ部20は、磁性材料よりなる鋼板等をプレス加工(深絞り加工)することで有底筒状に形成されたヨーク(モータケース)21を備えている。ヨーク21の内部には、
図3に示すように、略円弧形状に形成された一対の永久磁石22が対向配置され、各永久磁石22の内側には、所定の隙間(エアギャップ)を介してアーマチュア23が回転自在に設けられている。アーマチュア23の回転中心にはアーマチュア軸(回転軸)24が貫通して固定され、アーマチュア軸24はアーマチュア23とともにヨーク21の内部に回転自在に収容されている。
【0029】
アーマチュア軸24の軸方向一端側(図中左側)は、ヨーク21の底部に軸受(図示せず)を介して回転自在に支持されている。アーマチュア軸24の軸方向他端側(図中右側)は、ギヤ部30を形成するギヤケース31の内部にまで延ばされている。アーマチュア軸24の軸方向他端側には、減速機構33を構成する一対のウォーム25が設けられ、各ウォーム25は、減速機構33を構成する一対のカウンタギヤ34の大径歯部34aにそれぞれ噛み合わされている。
【0030】
アーマチュア軸24の各ウォーム25とアーマチュア23との間には、アーマチュア23に巻装されたコイル26に電気的に接続されるコンミテータ27が固定されている。コンミテータ27の外周部分には一対のブラシ28が摺接するようになっており、これにより各ブラシ28に駆動電流を供給することで、コンミテータ27を介してコイル26に駆動電流が供給される。コイル26に駆動電流を供給することでアーマチュア23には電磁力が発生し、ひいてはアーマチュア軸24は所定の回転数および回転方向で回転する。ただし、本実施の形態においてはブラシ付きモータを採用しているが、ブラシレスモータ等の他の形式のモータを採用することもできる。
【0031】
ギヤ部30は、ギヤケース31と当該ギヤケース31の開口部分を閉塞するギヤカバー32とを備えている。ギヤケース31は、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することによりバスタブ状に形成され、ギヤカバー32は、溶融したプラスチック材料等を射出成形することによりバスタブ状に形成されている。ギヤケース31およびギヤカバー32は、それぞれの開口部分を互いに突き合わせて密着させることにより接続されている。
【0032】
ギヤケース31の内部には、
図3に示すように、減速機構(ギヤ機構)33が回転自在に収容されている。減速機構33は、アーマチュア軸24により回転駆動され、一対のカウンタギヤ34と一のウォームホイール35とを備えている。各カウンタギヤ34は、大径歯部34aと小径歯部34bとを備え、各大径歯部34aは、アーマチュア軸24に設けた各ウォーム25に噛み合わされている。ウォームホイール35は、各カウンタギヤ34よりも大径に形成され、その外周部分には歯部35aが形成されている。ウォームホイール35の歯部35aは、各カウンタギヤ34の小径歯部34bのそれぞれに噛み合わされている。ここで、各ウォーム25,各カウンタギヤ34,ウォームホイール35は、本発明におけるギヤ機構を構成している。
【0033】
ウォームホイール35の回転中心には、出力軸16の基端側が固定され、当該出力軸16の先端側はギヤケース31の外部に延出されている。出力軸16の先端側にはリンク機構17が連結(
図1参照)され、これにより出力軸16の回転力はリンク機構17に伝達される。ここで、
図3の矢印に示すように、アーマチュア軸24の回転は各カウンタギヤ34を介してウォームホイール35に伝達される。このとき、アーマチュア軸24の回転数は所定の回転数にまで減速され、出力軸16からは高トルク化された回転力が出力される。したがって、ワイパモータ15は小型でありながら高出力が可能であり、車両搭載性に優れたモータ装置となっている。
【0034】
ギヤカバー32の底部には制御基板(図示せず)が装着され、当該制御基板の一端側は、ギヤケース31のモータ部20側(ヨーク21側)に一体に設けられたブラシホルダ収容部31a側に延ばされている。ブラシホルダ収容部31aの内部には、各ブラシ28やチョークコイル等の他の電子部品(図示せず)が装着されたブラシホルダ(図示せず)が収容され、制御基板の一端側のターミナル(図示せず)は、ブラシホルダのターミナル(図示せず)に電気的に接続されている。ここで、ブラシホルダ収容部31aのモータ部20側とは反対側には、ブラシホルダのターミナルを収容するターミナル収容部31bが一体に設けられ、ブラシホルダ収容部31aの内部とターミナル収容部31bの内部とは、互いに連通している。
【0035】
ギヤカバー32のモータ部20側とは反対側には、コネクタ接続部32aが一体に設けられ、当該コネクタ接続部32aの内部には、制御基板の他端側のターミナル(図示せず)が収容されている。コネクタ接続部32aには、車両10側の外部コネクタ(図示せず)が電気的に接続され、当該外部コネクタには、車両10に設置したコントローラや操作スイッチ等(図示せず)が電気的に接続されている。これにより、操作スイッチをオン操作することで、コントローラから制御基板を介して各ブラシ28に駆動電流が供給される。
【0036】
図4および
図5に示すように、ギヤケース31の底部31cには、ギヤケース31の内部と外部とを連通する円筒部36が一体に設けられている。円筒部36の直径寸法はd1に設定され、円筒部36にはブリーザキャップ40が装着されている。円筒部36はギヤケース31の外部に向けて突出、つまりギヤカバー32側とは反対側に向けて突出している。円筒部36の径方向内側には、空気が流通する第1連通路36aが形成され、当該第1連通路36aは、略L字形状に屈曲されてブラシホルダ収容部31aの内部に連通している。ここで、ブラシホルダ収容部31aの内部は、
図5に示すように、アーマチュア軸24の他端側が貫通する貫通孔37およびターミナル収容部31bの収容室38を介して、ギヤケース31の減速機構33側に連通している。
【0037】
図4に示すように、円筒部36は、その軸方向に向けて真っ直ぐに延びており、その径方向に突出する部分が存在しない。つまり円筒部36には、従前のようなブリーザキャップを固定するための引っ掛け構造を設けていない。このように円筒部36は単純な形状であるため、例えば図示しない引き抜き型(上下金型)で成形可能となっている。ただし、ブラシホルダ収容部31aは円筒部36と直交する方向に開口し、第1連通路36aは略L字形状に形成するため、スライド金型(左右金型)や切削ドリル等により成形される。
【0038】
ギヤケース31の底部31cには、円筒部36に加えて、出力軸支持部31d,3つの取付脚部31e,一対のカウンタギヤ支持部31fが一体に形成されている。出力軸支持部31dは、軸受(図示せず)を介して出力軸16の先端側を回転自在に支持し、出力軸支持部31dには、出力軸16と出力軸支持部31dとの間をシールするシール部材31g(
図2参照)が装着されている。
【0039】
各取付脚部31eには、ワイパモータ15を車両10の前方側のバルクヘッド等に固定するための取付ブラケット(図示せず)が、締結ボルト(図示せず)により固定される。各カウンタギヤ支持部31fには、各カウンタギヤ34を回転自在に支持する支持ピン34c(
図3参照)がそれぞれ装着されている。また、ギヤケース31の底部31cには、ギヤケース31内に収容した減速機構33の回転駆動に伴う変形を防止すべく、複数の補強リブ39が設けられている。
【0040】
図6および
図7に示すように、ブリーザキャップ40は、弾性変形が容易なゴム等の樹脂材料を成形することで有底筒状に形成されている。ブリーザキャップ40は、底部41および円筒本体部42を備え、ギヤケース31の円筒部36に被せるようにして嵌合される。つまり、ブリーザキャップ40は、円筒部36の外周面36bおよび先端面36c(
図4参照)を外部から覆うよう嵌合される。
【0041】
底部41の内側には、円筒本体部42側に向けて突出する5つの第1突起41aが一体に設けられ、当該各第1突起41aは、底部41の中心部分から放射状に、かつ底部41の周方向に沿って等間隔(72°間隔)で設けられている。各第1突起41aは、ブリーザキャップ40を円筒部36に装着した状態のもとで先端面36cに当接するようになっている。このように、先端面36cに部分的に各第1突起41aを当接させることで、底部41の周方向に沿う各第1突起41a間で、かつ先端面36cと底部41との間には、第1連通路36aと連通する5つの第2連通路41b(
図4参照)が形成される。ここで、各第1突起41aは、先端面36cにそれぞれ当接することにより、ブリーザキャップ40の円筒部36に対する傾斜を抑制している。
【0042】
円筒本体部42の内側には、当該円筒本体部42の径方向内側に向けて突出する5つの第2突起42aが一体に設けられている。各第2突起42aは、
図6(c)に示すように、各第1突起41aに対応して円筒本体部42の周方向に沿って等間隔(72°間隔)で設けられ、ブリーザキャップ40を円筒部36に装着した状態のもとで、各第2突起42aは外周面36bに当接するようになっている。このように、外周面36bに部分的に各第2突起42aを当接させることで、円筒本体部42の周方向に沿う各第2突起42a間で、かつ外周面36bと円筒本体部42との間には、第2連通路41bと連通する5つの第3連通路42b(
図4参照)が形成される。ここで、各第2突起42aは、外周面36bにそれぞれ当接することにより、ブリーザキャップ40の円筒部36に対する傾斜を抑制している。
【0043】
図7に示すように、各第2突起42aは、円筒本体部42の軸方向に延びて設けられ、円筒本体部42の先端側(
図7中下方側)に向かうにつれて、ブリーザキャップ40の径方向に対する肉厚寸法が徐々に大きくなっている。各第2突起42aは、所定角度α°(例えば4.8°)で緩やかに傾斜した逆テーパ形状となっており、各第2突起42aの最も小径となる部分の内径寸法d2は、円筒部36の外径寸法d1よりも小さい寸法に設定されている(d2<d1)。これにより、各第2突起42aは、円筒部36の外周面36bに対して弾性接触し、ブリーザキャップ40の円筒部36に対する充分な抜け強度を確保している。ただし、ブリーザキャップ40が車両10の上方を向くようにワイパモータ15を車両10に搭載する場合には、各第2突起42aを外周面36bに対して弾性接触させずに、ブリーザキャップ40を円筒部36に緩く嵌合させることができる。
【0044】
各第2突起42aの先端側(
図7中下方側)には、ブリーザキャップ40の円筒部36への装着を案内するテーパ面42cがそれぞれ設けられている。これにより、各テーパ面42cを円筒部36の先端面36cに対向させて押し込むことで、ブリーザキャップ40を円筒部36に容易に装着することができる。
【0045】
図7(b)に示すように、円筒本体部42の軸方向に沿う各第1突起41aと各テーパ面42cとの間には、円筒本体部42の周方向に延びる2つの補強リブ42d,42eが一体に設けられている。各補強リブ42d,42eは、円筒本体部42の軸方向に沿って、各第2突起42aの最も弾性変形する部位に対応して設けられ、これにより各第2突起42aの外周面36bへの弾性接触による円筒本体部42の弾性変形を抑制する。このように、各補強リブ42d,42eは、ブリーザキャップ40を円筒部36に装着した状態のもとで、円筒本体部42の剛性を高めて当該円筒本体部42の弾性変形を抑制し、外周面36bと円筒本体部42との間に形成される各第3連通路42bの開口面積が小さくなる(絞られる)のを防止して、空気のスムーズな流通を確保するようになっている。
【0046】
各補強リブ42d,42eは、円筒本体部42の径方向内側に突出して設けられ、各補強リブ42d,42eの最も小径となる部分の内径寸法d3は、円筒部36の外径寸法d1よりも大きい寸法に設定されている(d3>d1)。これにより、各第3連通路42bの開口面積は、空気の流通を絞らない充分な面積となっている。一方、各補強リブ42d,42eは、各第3連通路42bから各第2連通路41bへの雨水等の浸入を防止する障壁としても機能する。ただし、円筒本体部42に必要とされる強度や防水機能等に応じて、補強リブを省略したりその数を任意に設定したりしても良い。
【0047】
ここで、ブリーザキャップ40は、図示しない引き抜き型(上下金型)を用いて射出成形されるが、当該ブリーザキャップ40は弾性変形が容易なゴム等の樹脂材料により形成されている。したがって、各第2突起42aや各補強リブ42d,42eがあっても、引き抜き型を引き抜く際に円筒本体部42が一時的に弾性変形して、ブリーザキャップ40を引き抜き型から容易に取り外せる。なお、各第2突起42aや各補強リブ42d,42eの径方向内側への突出量は、例えば0.5〜1.5mmと比較的小さいため、引き抜き型を引き抜く際に円筒本体部42が破断するようなことは無い。
【0048】
次に、以上のように形成したワイパモータ15の呼吸機能について、
図4を用いて詳細に説明する。なお、図中実線矢印は空気の流れを、図中破線矢印は雨水の流れをそれぞれ表している。
【0049】
ワイパモータ15を長時間連続して駆動すると、ワイパモータ15は高温となる。そして、高温の状態でワイパモータ15に雨水等が掛かると、ワイパモータ15は急激に冷却される。これにより、ギヤケース31の内部の温度が急激に低下して、ギヤケース31の内部が負圧となり、ギヤケース31の内部に空気が流入するようになる。このとき、外部の空気は、第3連通路42b,第2連通路41b,第1連通路36aにより屈曲されながら流れて、その後、ギヤケース31のブラシホルダ収容部31a内に流入する。また、ブラシホルダ収容部31aの内部に流入した空気は、貫通孔37および収容室38(
図5参照)にも流れる。このように、ギヤケース31の内部に空気が流入することにより、ギヤケース31の内外での差圧を無くすことができる。
【0050】
一方、ワイパモータ15に掛かる雨水等は、ギヤケース31やブリーザキャップ40の外側に掛かる。しかしながら第3連通路42b,第2連通路41b,第1連通路36aにより形成される流路は、雨水が流入するには狭くかつ屈曲している。そのため、雨水は第3連通路42b,第2連通路41b,第1連通路36aに入り込み難く、ワイパモータ15の外部で跳ね返される。このようにして、ワイパモータ15の防水機能を確保している。
【0051】
以上詳述したように、第1実施の形態に係るワイパモータ15によれば、ギヤケース31の内外を連通する第1連通路36aを形成する円筒部36をギヤケース31に設け、円筒部36を外部から覆うよう嵌合され、底部41および円筒本体部42を有するブリーザキャップ40を設け、底部41の円筒本体部42側に、円筒部36の先端面36cと部分的に当接し、先端面36cと底部41との間に第1連通路36aと接続される第2連通路41bを形成する第1突起41aを設け、円筒本体部42の径方向内側に、円筒部36の外周面36bと部分的に当接し、外周面36bと円筒本体部42との間に第2連通路41bと接続される第3連通路42bを形成する第2突起42aを設けた。
【0052】
これにより、ブリーザキャップ40を円筒部36に被せて嵌合させるだけで、第1連通路36aと接続される第2連通路41b,第2連通路41bと接続される第3連通路42bを形成しつつ、第1突起41aおよび第2突起42aを円筒部36の先端面36cおよび外周面36bにそれぞれ当接させることができる。したがって、従前のような引っ掛け構造を廃止してブリーザキャップ40および円筒部36をそれぞれ引き抜き型により成形し得る形状にでき、製造工程および装着作業を簡素化し、ひいてはワイパモータ15の製造コストを低減することができる。
【0053】
また、第1実施の形態に係るワイパモータ15によれば、第3連通路42bを円筒部36の周方向に沿ってその流路面積が均一となるよう形成でき、製品毎にばらつくこと無く充分な防水機能および呼吸機能を得ることができる。
【0054】
さらに、第1実施の形態に係るワイパモータ15によれば、第1突起41aを、底部41に放射状に複数設けたので、ブリーザキャップ40を円筒部36の軸方向に対する正規の位置に位置決めすることができる。したがって、第2連通路41bを円筒部36の周方向に沿ってその流路面積が均一となるよう形成でき、製品毎にばらつくこと無く充分な防水機能および呼吸機能を得ることができる。
【0055】
また、第1実施の形態に係るワイパモータ15によれば、第2突起42aを、外周面36bに対して弾性接触させたので、ブリーザキャップ40の円筒部36に対する抜け強度を向上させることができる。
【0056】
さらに、第1実施の形態に係るワイパモータ15によれば、円筒本体部42の径方向内側に、円筒本体部42の剛性を高める補強リブ42d,42eを設けたので、ブリーザキャップ40の円筒部36への装着による弾性変形を抑制することができる。よって、第3連通路42bの流路面積が小さくなって絞られるのを防止しつつ、ブリーザキャップ40の円筒部36に対する抜け強度をより向上させることができる。
【0057】
次に、本発明の第2実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0058】
図8は、第2実施の形態に係るブリーザキャップの
図4に対応する部分断面図を表している。
【0059】
図8に示すように、第2実施の形態に係るブリーザキャップ50は、略円盤形状に形成された繊維膜(防水膜)51を備えている。当該繊維膜51は、細かい網目を有する不織布等により形成され、水の通過を規制する一方、空気の流通を許容するようになっている。繊維膜51の直径寸法は、円筒部36の外径寸法d1と同じ寸法に設定され、第1連通路36aを完全に覆うようになっている。繊維膜51は、各第1突起41aと円筒部36の先端面36cとの間に設けられ、第1連通路36aと第2連通路41bとの間での雨水(水)の行き来を防止するようになっている。ここで、繊維膜51は円筒部36の先端面36cに予め固定され、当該状態のもとでブリーザキャップ50は円筒部36に取り付けられている。
【0060】
以上のように形成した第2実施の形態に係るワイパモータ15においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、第2実施の形態に係るワイパモータ15によれば、各第1突起41aと先端面36cとの間に、第1連通路36aと第2連通路41bとの間での雨水の行き来を防止する繊維膜51を設けたので、第1連通路36aを介してギヤケース31内に雨水が浸入するのをより確実に防止できる。よって、減速機構33(
図3参照)の正常な動作を長期に亘り維持することができる。
【0061】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、第1連通路36aを略L字形状に形成し、ギヤケース31のブラシホルダ収容部31aと外部とを連通するようにしたものを示したが、本発明はこれに限らず、ギヤケース31の底部31cに減速機構33側に連通する真っ直ぐな第1連通路を形成することもできる。この場合、第1連通路においても引き抜き型で成形可能となる。
【0062】
また、上記各実施の形態においては、底部41に5つの第1突起41aを設け、かつ円筒本体部42に5つの第2突起42aを設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、第1突起41aおよび第2突起42aをそれぞれ少なくとも3つずつ設けるようにしても良い。要は、ブリーザキャップ40を円筒部36に対して傾斜すること無く正規の位置に位置決めできるのであれば、第1突起および第2突起の個数を任意に設定することができる。
【0063】
さらに、上記各実施の形態においては、モータ装置としてのワイパモータ15を、フロントガラス11を払拭するワイパ装置12に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、リヤガラスを払拭するリヤワイパ装置にも適用することができる。
【0064】
また、上記各実施の形態においては、本発明に係るモータ装置を、ワイパモータ15に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、パワーウィンド装置のモータ装置やスライドドア開閉装置のモータ装置等、ギヤ機構を有する他のモータ装置にも適用することができる。