(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
まず、本発明に係る熱処理装置の全体構成について概説する。
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。熱処理装置1は基板として略円形の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。
【0032】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容する略円筒形状のチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するランプハウス5と、を備える。また、熱処理装置1は、チャンバー6およびランプハウス5に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0033】
チャンバー6は、ランプハウス5の下方に設けられており、略円筒状の内壁を有するチャンバー側部63、および、チャンバー側部63の下部を覆うチャンバー底部62によって構成される。また、チャンバー側部63およびチャンバー底部62によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。熱処理空間65の上方は上部開口60とされており、上部開口60にはチャンバー窓61が装着されて閉塞されている。
【0034】
チャンバー6の天井部を構成するチャンバー窓61は、石英により形成された円板形状部材であり、ランプハウス5から出射された光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。チャンバー6の本体を構成するチャンバー底部62およびチャンバー側部63は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されており、チャンバー側部63の内側面の上部のリング631は、光照射による劣化に対してステンレススチールより優れた耐久性を有するアルミニウム(Al)合金等で形成されている。
【0035】
また、熱処理空間65の気密性を維持するために、チャンバー窓61とチャンバー側部63とはOリングによってシールされている。すなわち、チャンバー窓61の下面周縁部とチャンバー側部63との間にOリングを挟み込むとともに、クランプリング90をチャンバー窓61の上面周縁部に当接させ、そのクランプリング90をチャンバー側部63にネジ止めすることによって、チャンバー窓61をOリングに押し付けている。
【0036】
チャンバー底部62には、保持部7を貫通して半導体ウェハーWをその下面(ランプハウス5からの光が照射される側とは反対側の面)から支持するための複数(本実施の形態では3本)の支持ピン70が立設されている。支持ピン70は、例えば石英により形成されており、チャンバー6の外部から固定されているため、容易に取り替えることができる。
【0037】
チャンバー側部63は、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部66を有し、搬送開口部66は、軸662を中心に回動するゲートバルブ185により開閉可能とされる。チャンバー側部63における搬送開口部66とは反対側の部位には熱処理空間65に処理ガス(例えば、窒素(N
2)ガスやヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス、あるいは、酸素(O
2)ガス等)を導入する導入路81が形成され、その一端は弁82を介して図示省略の給気機構に接続され、他端はチャンバー側部63の内部に形成されるガス導入バッファ83に接続される。また、搬送開口部66には熱処理空間65内の気体を排出する排出路86が形成され、弁87を介して図示省略の排気機構に接続される。
【0038】
図2は、チャンバー6をガス導入バッファ83の位置にて水平面で切断した断面図である。
図2に示すように、ガス導入バッファ83は、
図1に示す搬送開口部66の反対側においてチャンバー側部63の内周の約1/3に亘って形成されており、導入路81を介してガス導入バッファ83に導かれた処理ガスは、複数のガス供給孔84から熱処理空間65内へと供給される。
【0039】
また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部において半導体ウェハーWを水平姿勢にて保持しつつフラッシュ光照射前にその保持する半導体ウェハーWの予備加熱を行う略円板状の保持部7と、保持部7をチャンバー6の底面であるチャンバー底部62に対して昇降させる保持部昇降機構4と、を備える。
図1に示す保持部昇降機構4は、略円筒状のシャフト41、移動板42、ガイド部材43(本実施の形態ではシャフト41の周りに3本配置される)、固定板44、ボールネジ45、ナット46およびモータ40を有する。チャンバー6の下部であるチャンバー底部62には保持部7よりも小さい直径を有する略円形の下部開口64が形成されており、ステンレススチール製のシャフト41は、下部開口64を挿通して、保持部7(厳密には保持部7のホットプレート71)の下面に接続されて保持部7を支持する。
【0040】
移動板42にはボールネジ45と螺合するナット46が固定されている。また、移動板42は、チャンバー底部62に固定されて下方へと伸びるガイド部材43により摺動自在に案内されて上下方向に移動可能とされる。また、移動板42は、シャフト41を介して保持部7に連結される。
【0041】
モータ40は、ガイド部材43の下端部に取り付けられる固定板44に設置され、タイミングベルト401を介してボールネジ45に接続される。保持部昇降機構4により保持部7が昇降する際には、駆動部であるモータ40が制御部3の制御によりボールネジ45を回転し、ナット46が固定された移動板42がガイド部材43に沿って鉛直方向に移動する。この結果、移動板42に固定されたシャフト41が鉛直方向に沿って移動し、シャフト41に接続された保持部7が
図1に示す半導体ウェハーWの受渡位置と
図5に示す半導体ウェハーWの処理位置との間で滑らかに昇降する。
【0042】
移動板42の上面には略半円筒状(円筒を長手方向に沿って半分に切断した形状)のメカストッパ451がボールネジ45に沿うように立設されており、仮に何らかの異常により移動板42が所定の上昇限界を超えて上昇しようとしても、メカストッパ451の上端がボールネジ45の端部に設けられた端板452に突き当たることによって移動板42の異常上昇が防止される。これにより、保持部7がチャンバー窓61の下方の所定位置以上に上昇することはなく、保持部7とチャンバー窓61との衝突が防止される。
【0043】
また、保持部昇降機構4は、チャンバー6の内部のメンテナンスを行う際に保持部7を手動にて昇降させる手動昇降部49を有する。手動昇降部49はハンドル491および回転軸492を有し、ハンドル491を介して回転軸492を回転することより、タイミングベルト495を介して回転軸492に接続されるボールネジ45を回転して保持部7の昇降を行うことができる。
【0044】
チャンバー底部62の下側には、シャフト41の周囲を囲み下方へと伸びる伸縮自在のベローズ47が設けられ、その上端はチャンバー底部62の下面に接続される。一方、ベローズ47の下端はベローズ下端板471に取り付けられている。べローズ下端板471は、鍔状部材411によってシャフト41にネジ止めされて取り付けられている。保持部昇降機構4により保持部7がチャンバー底部62に対して上昇する際にはベローズ47が収縮され、下降する際にはべローズ47が伸張される。そして、保持部7が昇降する際にも、ベローズ47が伸縮することによって熱処理空間65内の気密状態が維持される。
【0045】
図3は、保持部7の構成を示す断面図である。保持部7は、半導体ウェハーWを予備加熱(いわゆるアシスト加熱)するホットプレート(加熱プレート)71、および、ホットプレート71の上面(保持部7が半導体ウェハーWを保持する側の面)に設置されるサセプタ72を有する。保持部7の下面には、既述のように保持部7を昇降するシャフト41が接続される。サセプタ72は石英(あるいは、窒化アルミニウム(AIN)等であってもよい)により形成され、その上面には半導体ウェハーWの位置ずれを防止するピン75が設けられる。サセプタ72は、その下面をホットプレート71の上面に面接触させてホットプレート71上に設置される。これにより、サセプタ72は、ホットプレート71からの熱エネルギーを拡散してサセプタ72上面に載置された半導体ウェハーWに伝達するとともに、メンテナンス時にはホットプレート71から取り外して洗浄可能とされる。
【0046】
ホットプレート71は、ステンレススチール製の上部プレート73および下部プレート74にて構成される。上部プレート73と下部プレート74との間には、ホットプレート71を加熱するニクロム線等の抵抗加熱線76が配設され、導電性のニッケル(Ni)ロウが充填されて封止されている。また、上部プレート73および下部プレート74の端部はロウ付けにより接着されている。
【0047】
図4は、ホットプレート71を示す平面図である。
図4に示すように、ホットプレート71は、保持される半導体ウェハーWと対向する領域の中央部に同心円状に配置される円板状のゾーン711および円環状のゾーン712、並びに、ゾーン712の周囲の略円環状の領域を周方向に4等分割した4つのゾーン713〜716を備え、各ゾーン間には若干の間隙が形成されている。また、ホットプレート71には、支持ピン70が挿通される3つの貫通孔77が、ゾーン711とゾーン712との隙間の周上に120°毎に設けられる。
【0048】
6つのゾーン711〜716のそれぞれには、相互に独立した抵抗加熱線76が周回するように配設されてヒータが個別に形成されており、各ゾーンに内蔵されたヒータにより各ゾーンが個別に加熱される。保持部7に保持された半導体ウェハーWは、6つのゾーン711〜716に内蔵されたヒータにより加熱される。また、ゾーン711〜716のそれぞれには、熱電対を用いて各ゾーンの温度を計測するセンサ710が設けられている。各センサ710は略円筒状のシャフト41の内部を通り制御部3に接続される。
【0049】
ホットプレート71が加熱される際には、センサ710により計測される6つのゾーン711〜716のそれぞれの温度が予め設定された所定の温度になるように、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が制御部3により制御される。制御部3による各ゾーンの温度制御はPID(Proportional,Integral,Derivative)制御により行われる。ホットプレート71では、半導体ウェハーWの熱処理(複数の半導体ウェハーWを連続的に処理する場合は、全ての半導体ウェハーWの熱処理)が終了するまでゾーン711〜716のそれぞれの温度が継続的に計測され、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が個別に制御されて、すなわち、各ゾーンに内蔵されたヒータの温度が個別に制御されて各ゾーンの温度が設定温度に維持される。なお、各ゾーンの設定温度は、基準となる温度から個別に設定されたオフセット値だけ変更することが可能とされる。
【0050】
6つのゾーン711〜716にそれぞれ配設される抵抗加熱線76は、シャフト41の内部を通る電力線を介して電力供給源(図示省略)に接続されている。電力供給源から各ゾーンに至る経路途中において、電力供給源からの電力線は、マグネシア(マグネシウム酸化物)等の絶縁体を充填したステンレスチューブの内部に互いに電気的に絶縁状態となるように配置される。なお、シャフト41の内部は大気開放されている。
【0051】
次に、ランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、ランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。ランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。ランプハウス5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53がチャンバー窓61と相対向することとなる。ランプハウス5は、チャンバー6内にて保持部7に保持される半導体ウェハーWにランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することにより半導体ウェハーWを加熱する。
【0052】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0053】
図6は、フラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。同図に示すように、コンデンサ93と、コイル94と、フラッシュランプFLと、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)96とが直列に接続されている。フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧に応じた電荷が充電される。また、トリガー電極91にはトリガー回路97から高電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングは制御部3によって制御される。
【0054】
IGBT96は、ゲート部にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を組み込んだバイポーラトランジスタであり、大電力を取り扱うのに適したスイッチング素子である。IGBT96のゲートにはIGBT制御部98が接続されている。IGBT制御部98は、IGBT96のゲートにパルス信号を印加してIGBT96を駆動する回路である。具体的には、IGBT制御部98がIGBT96のゲートに所定値以上の電圧(Hiの電圧)を印加するとIGBT96がオン状態となり、所定値未満の電圧(Lowの電圧)を印加するとIGBT96がオフ状態となる。このようにして、フラッシュランプFLを含む駆動回路はIGBT96によってオンオフされる。IGBT96がオンオフすることによってフラッシュランプFLと対応するコンデンサ93との接続が断続される。
【0055】
IGBT制御部98がIGBT96のゲートに印加するパルス信号の波形は、制御部3の波形設定部31によって設定される。波形設定部31は入力部33からの入力内容に基づいてパルス信号の波形を設定し、それをIGBT制御部98に出力する。IGBT制御部98は、波形設定部31が波形に従ってIGBT96のゲートにパルス信号を出力してIGBT96をオンオフする。
【0056】
コンデンサ93が充電された状態でIGBT96がオン状態となってガラス管92の両端電極に高電圧が印加されたとしても、キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加して絶縁を破壊した場合には両端電極間の放電によってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
【0057】
また、
図6に示すように、フラッシュランプFLの駆動回路には、コンデンサ93の両端電圧を測定する電圧モニター21が設けられている。電圧モニター21は、一種のA/D変換器であり、アナログ信号であるコンデンサ93の両端電圧をデジタル信号に変換して制御部3に伝達する。
【0058】
電圧モニター21は、2つの抵抗器22,23を備えた分圧回路を介してコンデンサ93の両端電圧を測定する。すなわち、コンデンサ93の両端電極間を直列接続した2つの抵抗器22,23にて接続し、抵抗器22と抵抗器23との間に電圧モニター21を接続する。一端が接地されている抵抗器23の抵抗値に比して抵抗器22の抵抗値は著しく大きい(例えば、抵抗器23の抵抗値が10kΩであるのに対して抵抗器22の抵抗値は10MΩ)。通常、充電直後のコンデンサ93の両端電圧は非常に大きい(本実施形態では約4000V)のであるが、このような分圧回路を設けることによって、電圧モニター21にかかる負荷を小さくすることができる(上記の例であれば約4V)。また、抵抗器23の両端には、ノイズ除去のためのコンデンサ24が接続されている。
【0059】
図6に示すような駆動回路は複数本のフラッシュランプFLに1対1で対応して設けられており、本実施形態では30本のフラッシュランプFLが設けられているため、駆動回路も30個設けられている。すなわち、フラッシュランプFLを放電させて発光させるための電荷を蓄積するコンデンサ93は、30本のフラッシュランプFLに1対1で対応して30個設けられている。また、各コンデンサ93の蓄電電圧を測定する電圧モニター21は、30個のコンデンサ93に1対1で対応して30個設けられている。
【0060】
図1のリフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射された光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。このような粗面化加工を施しているのは、リフレクタ52の表面が完全な鏡面であると、複数のフラッシュランプFLからの反射光の強度に規則パターンが生じて半導体ウェハーWの表面温度分布の均一性が低下するためである。
【0061】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。また、制御部3は、波形設定部31および検出部32を備えるとともに、入力部33に接続されている。波形設定部31および検出部32は、制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。入力部33としては、キーボード、マウス、タッチパネル等の種々の公知の入力機器を採用することができる。上述のように、入力部33からの入力内容に基づいて、波形設定部31がパルス信号の波形を設定し、それをIGBT制御部98に出力する。また、検出部32は、複数の電圧モニター21による測定結果に基づいて、複数のコンデンサ93の蓄電状態を検出するが、その詳細についてはさらに後述する。
【0062】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にフラッシュランプFLおよびホットプレート71から発生する熱エネルギーによるチャンバー6およびランプハウス5の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6のチャンバー側部63およびチャンバー底部62には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱するための気体供給管55および排気管56が設けられて空冷構造とされている(
図1,5参照)。また、チャンバー窓61とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、ランプハウス5およびチャンバー窓61を冷却する。
【0063】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。本明細書では、まず、フラッシュ光照射加熱処理の全体の手順について簡単に説明した後、特にコンデンサ93の電圧モニターについて説明する。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0064】
まず、保持部7が
図5に示す処理位置から
図1に示す受渡位置に下降する。「処理位置」とは、フラッシュランプFLから半導体ウェハーWに光照射が行われるときの保持部7の位置であり、
図5に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。また、「受渡位置」とは、チャンバー6に半導体ウェハーWの搬出入が行われるときの保持部7の位置であり、
図1に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。熱処理装置1における保持部7の基準位置は処理位置であり、処理前にあっては保持部7は処理位置に位置しており、これが処理開始に際して受渡位置に下降するのである。
図1に示すように、保持部7が受渡位置にまで下降するとチャンバー底部62に近接し、支持ピン70の先端が保持部7を貫通して保持部7の上方に突出する。
【0065】
次に、保持部7が受渡位置に下降したときに、弁82および弁87が開かれてチャンバー6の熱処理空間65内に常温の窒素ガスが導入される。続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入され、複数の支持ピン70上に載置される。
【0066】
半導体ウェハーWの搬入時におけるチャンバー6への窒素ガスのパージ量は約40リットル/分とされ、供給された窒素ガスはチャンバー6内においてガス導入バッファ83から
図2中に示す矢印AR4の方向へと流れ、
図1に示す排出路86および弁87を介してユーティリティ排気により排気される。また、チャンバー6に供給された窒素ガスの一部は、べローズ47の内側に設けられる排出口(図示省略)からも排出される。なお、以下で説明する各ステップにおいて、チャンバー6には常に窒素ガスが供給および排気され続けており、窒素ガスの供給量は半導体ウェハーWの処理工程に合わせて様々に変更される。
【0067】
半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入されると、ゲートバルブ185により搬送開口部66が閉鎖される。そして、保持部昇降機構4により保持部7が受渡位置からチャンバー窓61に近接した処理位置にまで上昇する。保持部7が受渡位置から上昇する過程において、半導体ウェハーWは支持ピン70から保持部7のサセプタ72へと渡され、サセプタ72の上面に載置・保持される。保持部7が処理位置にまで上昇するとサセプタ72に保持された半導体ウェハーWも処理位置に保持されることとなる。
【0068】
ホットプレート71の6つのゾーン711〜716のそれぞれは、各ゾーンの内部(上部プレート73と下部プレート74との間)に個別に内蔵されたヒータ(抵抗加熱線76)により所定の温度まで加熱されている。保持部7が処理位置まで上昇して半導体ウェハーWが保持部7と接触することにより、その半導体ウェハーWはホットプレート71に内蔵されたヒータによって予備加熱されて温度が次第に上昇する。
【0069】
この処理位置にて約60秒間の予備加熱が行われ、半導体ウェハーWの温度が予め設定された予備加熱温度T1まで上昇する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし700℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では500℃)。また、保持部7とチャンバー窓61との間の距離は、保持部昇降機構4のモータ40の回転量を制御することにより任意に調整することが可能とされている。
【0070】
約60秒間の予備加熱時間が経過した後、保持部7が処理位置に位置したまま制御部3の制御によりランプハウス5のフラッシュランプFLから半導体ウェハーWへ向けてフラッシュ光が照射される。フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射を行うに際しては、予め電源ユニット95がコンデンサ93を充電して電荷を蓄積しておく。また、入力部33からの入力内容に基づいて、IGBT96のゲートに出力するパルス信号の波形を波形設定部31が設定しておく。そして、その波形に従ってIGBT制御部98がIGBT96のオンオフを制御してコンデンサ93からフラッシュランプFLに流れる電流をチョッパ制御し、フラッシュランプFLを発光させて半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射する。フラッシュランプFLの総発光時間は、波形設定部31が設定するパルス信号の波形に依存するものの、長くても1秒以下である。
【0071】
処理位置の保持部7に保持された半導体ウェハーWにフラッシュ光が照射されることにより、その半導体ウェハーWの表面温度は短時間のうちに処理温度T2にまで昇温される。処理温度T2は、半導体ウェハーWに注入された不純物の活性化が生じる温度であって、1000℃以上とされる。
【0072】
以上のようにしてフラッシュランプFLによるフラッシュ光照射加熱が終了し、処理位置における約10秒間の待機の後、保持部7が保持部昇降機構4により再び
図1に示す受渡位置まで下降し、半導体ウェハーWが保持部7から支持ピン70へと渡される。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWは装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWのフラッシュ光照射加熱処理が完了する。
【0073】
既述のように、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスがチャンバー6に継続的に供給されており、その供給量は、保持部7が処理位置に位置するときには約30リットル/分とされ、保持部7が処理位置以外の位置に位置するときには約40リットル/分とされる。
【0074】
続いて、コンデンサ93の電圧モニターについてさらに説明する。
図7,8は、熱処理装置1における、コンデンサ93の電圧モニターに関する処理手順を示すフローチャートである。まず、波形設定部31がパルス信号の波形を設定する(ステップS1)。
図9は、パルス信号の波形の一例を示す図である。パルス信号の波形は、パルス幅の時間(オン時間)とパルス間隔の時間(オフ時間)とをパラメータとして順次設定したレシピを入力部33から入力することによって規定することができる。このようなパラメータを記述したレシピをオペレータが入力部33から制御部3に入力すると、それに従って制御部3の波形設定部31は
図9に示すようなオンオフを繰り返すパルス波形を設定する。そして、波形設定部31は、設定した波形をIGBT制御部98に出力する。本実施形態では、30本のフラッシュランプFLに1対1で対応して30個のIGBT制御部98が設けられており、それら30個のIGBT制御部98に対して同一の
図9に示す如きパルス波形が出力される。
【0075】
また、電源ユニット95によるコンデンサ93に対する充電が開始される(ステップS2)。本実施形態においては、電源ユニット95が4000Vの電圧をコンデンサ93に所定の充電時間(例えば50秒)印加して充電を行う。30本のフラッシュランプFLに対応して設けられた30個のコンデンサ93の全てが電源ユニット95によって個別に充電される。ステップS2,S3の充電工程において、30個のコンデンサ93のそれぞれには、その静電容量と充電電圧とに応じた電荷が蓄積される。
【0076】
所定の充電時間が経過した後、ステップS3からステップS4に進み、30個全てのコンデンサ93の充電後の蓄電電圧が電源ユニット95による充電電圧と等しいか否かが判定される。ここで、「蓄電電圧」とは、コンデンサ93に蓄積された電荷によって生じる電圧であり、電圧モニター21によって測定されるのは蓄電電圧である。また、「充電電圧」とは、充電時に電源ユニット95がコンデンサ93に印加する電圧(本実施形態では、4000V)である。
【0077】
ステップS4では、30個のコンデンサ93に1対1で対応して設けられた30個の電圧モニター21による電圧測定結果に基づいて、制御部3の検出部32が30個のコンデンサ93のそれぞれについて蓄電電圧が充電電圧と等しいか否かを判定する。なお、判定に際して、蓄電電圧が充電電圧に対する許容範囲内(例えば、充電電圧の±5%以内)に収まっているか否かで判定するようにしても良い。
【0078】
30個のコンデンサ93のうちの1つでも蓄電電圧が充電電圧と異なることを検出部32が検出した場合には、ステップS5に進んで充電エラーとして対応処理が行われる。具体的には、蓄電電圧が充電電圧と異なっていたコンデンサ93および当該コンデンサ93に充電を行った電源ユニット95を検査し、不具合があれば修理・交換等を行う。
【0079】
一方、30個全てのコンデンサ93の蓄電電圧が充電電圧と等しい場合は、全てのコンデンサ93について正常な充電が行われた場合であり、ステップS6に進んでフラッシュランプFLの放電を開始する。また、これと同時にIGBT制御部98が波形設定部31によって設定された
図9の如きパルス波形に従ってIGBT96のゲートにパルス信号を出力する(ステップS7)。これによりフラッシュランプFLが発光し、半導体ウェハーWにフラッシュ光が照射される。但し、本実施形態においては、IGBT96がオンオフを繰り返すことによってコンデンサ93からフラッシュランプFLに流れる電流がチョッパ制御される。
【0080】
IGBT制御部98が
図9のパルス波形に従ってIGBT96のゲートにパルス信号を出力すると、IGBT制御部98から出力されたパルス信号がオンのときにはIGBT96がオン状態となり、オフのときにはIGBT96がオフ状態となる。その結果、フラッシュランプFLおよびコンデンサ93を含む回路がIGBT96によってオンオフされる。
【0081】
また、IGBT制御部98がIGBT96を最初にオン状態とするタイミングと同期して制御部3がトリガー回路97を制御してトリガー電極91にトリガー電圧を印加する。コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にてIGBT96がオン状態となり、かつ、それと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されると、コンデンサ93に蓄積された電荷がフラッシュランプFLのガラス管92内の両端電極間で放電して電流として流れ始め、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。すなわち、フラッシュランプFLが発光を開始し、フラッシュランプFLを流れる電流値は時間とともに増大する。
【0082】
一旦、フラッシュランプFLの通電が開始され、その電流値が所定値以上残っている状態で断続的にIGBT96がオンオフを繰り返す場合には、トリガー電極91に高電圧を印加しなくてもフラッシュランプFLに電流が流れ続ける。すなわち、最初にIGBT96がオン状態となるときのみトリガー電極91に高電圧を印加すれば、その後はトリガー電圧を印加せずともフラッシュランプFLに電流が継続して流れる。IGBT96がオン状態のときにはフラッシュランプFLのガラス管92内に流れる電流値が増加し、オフ状態のときには電流値が減少する。なお、パルス間隔の時間が長い場合やフラッシュランプFLを流れる電流値が低い場合には、IGBT96がオン状態となる毎にトリガー電極91に高電圧を印加しても良い。また、一定時間間隔にてトリガー電極91に高電圧を印加するようにしても良い。
【0083】
このようにしてフラッシュランプFLを電流が流れ続け、IGBT96がオンオフを実行するパターンによって電流値の波形が規定される。フラッシュランプFLの発光強度は、フラッシュランプFLに流れる電流にほぼ比例する。従って、フラッシュランプFLの発光波形はフラッシュランプFLを流れる電流値の波形に近似したものとなる。
【0084】
IGBT96を使用することなく単純にフラッシュランプFLを発光させた場合には、コンデンサ93に蓄積されていた電荷が1回の発光でほぼ全て消費され、フラッシュランプFLからの出力波形は
図11に示すような幅が0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度のシングルパルスとなる。これに対して、本実施形態においては、フラッシュランプFLを含む回路中にIGBT96を接続してそのゲートにパルス信号を出力することにより、当該回路がIGBT96によって断続的にオンオフされ、コンデンサ93からフラッシュランプFLに流れる電流がチョッパ制御される。その結果、いわばフラッシュランプFLの発光がチョッパ制御されることとなり、コンデンサ93に蓄積された電荷はフラッシュランプFLにて断続的に放電されて分割して消費され、極めて短い時間の間にフラッシュランプFLが点滅を繰り返す。なお、電流値が完全に”0”になる前にIGBT96がオン状態となって電流値が再度増加するため、フラッシュランプFLが点滅を繰り返している間も発光強度が完全に”0”になるものではない。
【0085】
以上のように、入力部33からの入力内容に基づいて制御部3の波形設定部31がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってIGBT制御部98がパルス信号をIGBT96のゲートに出力する。そして、IGBT制御部98から出力されたパルス信号に従ってIGBT96がオンオフ制御され、フラッシュランプFLを含む回路がIGBT96によってオンオフされることによりフラッシュランプFLを流れる電流がチョッパ制御され、その結果フラッシュランプFLの発光波形が規定される。すなわち、波形設定部31は直接的にはIGBT96のゲートに出力するパルス信号の波形を設定するものの、間接的にフラッシュランプFLの発光波形を設定する。入力部33から入力するパルス幅の時間およびパルス間隔の時間を適宜調整することによって、IGBT制御部98がIGBT96のゲートに出力するパルス信号の波形が変化し、フラッシュランプFLの発光波形も自由に設定することができるのである。
【0086】
図10は、フラッシュランプFLに流れる電流をチョッパ制御した場合における発光波形の一例を示す図である。IGBT制御部98が
図9に示すような波形のパルス信号をIGBT96のゲートに出力して、フラッシュランプFLに流れる電流をチョッパ制御した場合には当該フラッシュランプFLの発光波形は
図10のようになる。
図10に示す発光波形では、最初に発光強度が時間とともにある程度にまで上昇し、その後細かな増減を繰り返しながら発光強度は概ね一定の値となり、さらにその後発光強度が減少する。
図10に示すような発光波形にてフラッシュランプFLが発光し、処理位置の保持部7に保持された半導体ウェハーWにフラッシュ光が照射される。なお、ステップS6,S7にてフラッシュランプFLの放電発光が開始されるタイミングは、半導体ウェハーWの約60秒間の予備加熱時間が経過した時点である。
【0087】
図10に示すようなフラッシュランプFLの発光が終了すると、ステップS8からステップS9に進み、30個のコンデンサ93の残留電圧が所定の許容範囲内に収まっているか否かが判定される。ここで、「残留電圧」とは、蓄電電圧の一種であり、特にフラッシュ発光終了後にコンデンサ93の残留している電荷によって生じる電圧である。
【0088】
ステップS9では、30個のコンデンサ93に1対1で対応して設けられた30個の電圧モニター21による電圧測定結果に基づいて、制御部3の検出部32が30個のコンデンサ93のそれぞれについて残留電圧が所定の許容範囲内に収まっているか否かを判定する。IGBT96を使用せずに
図11のようなシングルパルスにてフラッシュランプFLを発光させた場合には、コンデンサ93に蓄積された電荷のほとんどがフラッシュランプFLで放電されて消費されてしまう。これに対して、IGBT96を用いてフラッシュランプFLに流れる電流をチョッパ制御した場合には、波形設定部31が設定するパルス信号の波形にも依存するものの、通常はコンデンサ93に蓄積された電荷の一部がフラッシュランプFLでの放電によって消費される。この場合、フラッシュランプFLの発光が終了した後も、コンデンサ93には消費されなかった電荷が残留している。ステップS9では、フラッシュ発光終了後もコンデンサ93に残留している電荷によって生じる残留電圧のチェックを行っているのである。
【0089】
図12は、30個のコンデンサ93の残留電圧の判定を説明するための図である。
図12の横軸は、30本のフラッシュランプFLに1対1で対応して設けられた駆動回路に順次付されたチャンネル番号を示している。縦軸は、電圧モニター21によって測定されたコンデンサ93の残留電圧を示している。
図12において、上限値V
Hと下限値V
Lとの間が残留電圧の許容範囲である。この許容範囲の値(上限値V
Hおよび下限値V
Lの絶対値)は、波形設定部31が設定するパルス信号の波形に応じて設定される。すなわち、パルス信号のトータルオン時間が長い場合には、IGBT96がオン状態となっている時間が長くなるため、コンデンサ93の電荷が多量に消費されることとなり、フラッシュ発光終了後にコンデンサ93に残留している電荷は少なくなる。よって、このようなケースでは、許容範囲の値が比較的小さく設定される。逆に、パルス信号のトータルオン時間が短い場合には、それほど電荷が消費されず、フラッシュ発光終了後にコンデンサ93に残留している電荷も多くなるため、許容範囲の値は比較的大きく設定される。なお、許容範囲の幅(上限値V
Hと下限値V
Lとの差)は判定精度に応じて適宜設定される。
【0090】
ステップS9での判定の結果、30個全てのコンデンサ93の残留電圧が許容範囲内に収まっている場合は、全てのコンデンサ93に対応するフラッシュランプFLにて正常な放電発光が行われた場合であり、ステップS2に戻ってステップS9までの処理を繰り返す。なお、新たなパルス信号の波形を設定するのであれば、ステップS9からステップS1に戻るようにしても良い。
【0091】
一方、30個のコンデンサ93のうちの1つでも残留電圧が許容範囲内に収まっていない場合には、ステップS10に進み、許容範囲から外れているコンデンサ93の残留電圧が許容範囲の上限値V
Hよりも大きいか、下限値V
Lよりも小さいかを検出部32が判定する。
図12に示す例においては、チャンネル番号4番の回路に含まれるコンデンサ93の残留電圧が許容範囲の上限値V
Hよりも大きい。このことは、何らかの原因によってチャンネル番号4番に対応するフラッシュランプFLが未発光であったために、コンデンサ93に蓄積された電荷が消費されなかったことを意味している(ステップS12)。フラッシュランプFLが未発光となる原因としては、IGBT96がパルス信号を印加しても閉じなかった場合やトリガー電極91を含むフラッシュランプFL自体のトラブルが想定される。よって、このような場合には、チャンネル番号4番の回路に含まれるIGBT96やフラッシュランプFLを検査して不具合があれば修理・交換等を行う。
【0092】
また、
図12に示す例においては、チャンネル番号28番の回路に含まれるコンデンサ93の残留電圧が許容範囲の下限値V
Lよりも小さい。このことは、チャンネル番号28番に対応するコンデンサ93に蓄積された電荷の大半がフラッシュランプFLで放電されて消費されたことを意味している。このような現象が生じる原因は、ほとんどの場合IGBT96のショートであると考えられる(ステップS11)。すなわち、IGBT96がスイッチング素子として機能しなくなり、コンデンサ93からフラッシュランプFLに電流が流れ続けたために、コンデンサ93に蓄積された電荷のほとんどが消費されたのである。よって、このような場合には、チャンネル番号28番の回路に含まれるIGBT96を検査して不具合があれば修理・交換等を行う。
【0093】
コンデンサ93の残留電圧が許容範囲から外れる原因としては、当該コンデンサ93に対応するIGBT96のゲートに他のIGBT96とは異なる波形のパルス信号が出力されたことも考えられる。残留電圧が許容範囲から外れたコンデンサ93を含む駆動回路にハード上の不具合が見つからない場合は、対応するIGBT96に出力されたパルス信号の波形についても検査を行うのが好ましい。
【0094】
図12に示す例において、チャンネル番号4番,28番以外の残余のチャンネル番号に対応する回路に含まれるコンデンサ93の残留電圧は許容範囲内に収まっている。よって、これらのチャンネル番号に対応するフラッシュランプFLでは予定された正常なフラッシュ発光が行われており、回路を構成する素子も正常に機能している。
【0095】
本実施形態においては、30個のコンデンサ93に1対1で対応して30個の電圧モニター21を設け、各コンデンサ93の蓄電電圧を個別に測定するようにしている。そして、30個の電圧モニター21による測定結果に基づいて、検出部32が30個のコンデンサ93の蓄電状態を検出している。30個のコンデンサ93の蓄電状態を個別に検出することによって、30本のフラッシュランプFLの駆動回路における接触不良などの回路異常を個別にチェックして不適切な強度にてフラッシュランプFLが発光するのを防止することができる。
【0096】
コンデンサ93の蓄電状態を検出するタイミングとしては、ステップS3で30個のコンデンサ93への充電が完了してからステップS6で30本のフラッシュランプFLの放電を開始するまでの間が好ましい(ステップS4)。ステップS4での蓄電状態の検出は、30個のコンデンサ93の全てについて適正に充電されたか否かをチェックするために行う。30個のコンデンサ93のそれぞれについて蓄電電圧が充電電圧と等しいか否かを判定し、1つでも異なる場合には、検出部32が蓄電異常として検出する。
【0097】
また、コンデンサ93の蓄電状態を検出するタイミングとしては、ステップS8で30本のフラッシュランプFLの発光が終了した後に行うことも好ましい(ステップS9,S10)。ステップS9,S10での蓄電状態の検出は、30個のコンデンサ93の全てについて蓄積されていた電荷が適正に放電されたか否かをチェックするために行う。30個のコンデンサ93のそれぞれについて残留電圧が所定の許容範囲内に収まっているか否かを判定し、1つでも許容範囲から外れている場合には、検出部32が蓄電異常として検出する。
【0098】
フラッシュ発光後の蓄電状態の検出によって、フラッシュランプFLが適正に発光したか否かをもチェックすることができる。すなわち、発光後のコンデンサ93の残留電圧が許容範囲の上限値V
Hよりも大きければ、そのコンデンサ93に対応するフラッシュランプFLが未発光であったことを意味しており、フラッシュランプFL自体の異常等が想定される。逆に、発光後のコンデンサ93の残留電圧が許容範囲の下限値V
Lよりも小さければ、そのコンデンサ93に対応するフラッシュランプFLが予定以上に発光したことを意味しており、IGBT96のショートが想定される。
【0099】
いずれにしても、検出部32が30個のコンデンサ93のうちの1つについてでも蓄電状態の異常を検出したときには、当該コンデンサ93を含む駆動回路を検査し、不具合箇所があればその修理等を行う。このようにすることにより、30本のフラッシュランプFLの全てについて適正かつ均一な強度にて発光させることができる。
【0100】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、コンデンサ93への充電完了後およびフラッシュランプFLの発光終了後に蓄電状態を検出するようにしていたが、熱処理装置1が異常停止したときに本発明に係る技術を用いてコンデンサ93の蓄電状態を検出するようにしても良い。具体的には、熱処理装置1が異常停止(例えば、半導体ウェハーWの落下などによる緊急停止)したときに、電圧モニター21によって30個のコンデンサ93の蓄電電圧を個別に測定し、検出部32が各コンデンサ93に残留する電荷の有無を検出する。熱処理装置1が異常停止した場合には、当然に装置の補修作業を行うことになるのであるが、その際コンデンサ93に高圧の電荷が残留していると危険である。このため、上記のようにして電圧モニター21による測定結果に基づいて30個のコンデンサ93に残留する電荷の有無を検出すれば、確実な安全確認を行うことができる。電荷が残留しているコンデンサ93については別途安全に放電させて電荷を無くしてから補修作業を行うことは勿論である。
【0101】
また、上記実施形態においては、フラッシュランプFLの駆動回路にIGBT96を組み込んでフラッシュランプFLを流れる電流をチョッパ制御するようにしていたが、IGBT96を組み込んでいない駆動回路であっても本発明に係る技術を適用することができる。すなわち、IGBT96を設けていない駆動回路のコンデンサ93に対して電圧モニター21を設け、その蓄電電圧を測定するようにしても良い。この場合、フラッシュ発光終了後はコンデンサ93に蓄積されていた電荷がほとんど全て消費されているものの、コンデンサ93が適正に充電されたか否かのチェックおよびコンデンサ93に残留する電荷の有無のチェックについては上記と同様に行うことができる。
【0102】
また、IGBT96に代えて、ゲートに入力された信号レベルに応じて回路をオンオフできる他のトランジスタを用いるようにしても良い。もっとも、フラッシュランプFLの発光には相当に大きな電力が消費されるため、大電力の取り扱いに適したIGBTやGTO(Gate Turn Off)サイリスタを採用するのが好ましい。
【0103】
また、上記実施形態においては、ランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる(1本でも良い)。この場合、フラッシュランプFLの本数に応じて、同数のコンデンサ93および電圧モニター21を設け、各コンデンサ93の蓄電電圧を個別に測定する。そして、電圧モニター21による測定結果に基づいて、検出部32がコンデンサ93の蓄電状態を検出する。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。
【0104】
また、IGBT96のゲートに出力するパルス信号の波形の設定は、入力部33から逐一パルス幅やパルス間隔等のパラメータを入力することに限定されるものではなく、例えば、オペレータが入力部33から波形を直接グラフィカルに入力するようにしても良いし、以前に設定されて磁気ディスク等の記憶部に記憶されていた波形を読み出すようにしても良いし、或いは熱処理装置1の外部からダウンロードするようにしても良い。
【0105】
また、上記実施形態においては、IGBT制御部98を制御部3とは別の要素としていたが、入力に対して十分高速に応答して出力できるコンピュータにて制御部3を構成するのであれば、IGBT制御部98の機能を制御部3によって実現するようにしても良い。
【0106】
また、上記実施形態においては、ホットプレート71に載置することによって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしていたが、予備加熱の手法はこれに限定されるものではなく、ハロゲンランプを設けて光照射によって半導体ウェハーWを予備加熱温度T1にまで予備加熱するようにしても良い。
【0107】
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。