(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行駆動源としてのエンジン及びモータと、前記エンジンと前記モータとの間に介装され前記エンジンを駆動系から切り離すクラッチと、変速機を介して前記走行駆動源からの出力トルクが伝達される駆動輪とを備えたハイブリッド電気自動車の制御装置であって、
前記クラッチの断接状態を検出するクラッチ状態検出手段と、
車両の走行状態が発進状態か走行中の加速状態かを判定する車両状態判定手段と、
前記駆動輪のスリップを検出するスリップ検出手段と、
前記車両の車体速と前記駆動輪の車輪速とから前記駆動輪の実スリップ率又は該実スリップ率に対応するパラメータ値である実スリップ対応値を算出するスリップ
対応値算出手段と、
前記スリップ検出手段により前記駆動輪のスリップが検出されたら、前記クラッチ状態検出手段により検出された前記クラッチの断接状態と、前記車両状態判定手段により判定された前記車両の走行状態が発進状態であるか走行中の加速状態であるかに基づいて、前記駆動輪のスリップ率又は該スリップ率に対応するパラメータ値であるスリップ対応値の目標値を設定する目標値設定手段と、
前記スリップ検出手段により前記駆動輪のスリップが検出されたら、前記スリップ対応値算出手段により算出された前記実スリップ対応値が前記目標値設定手段により設定された前記目標値になるように前記走行駆動源の出力トルクを制御する、目標スリップ制御を行なう出力トルク制御手段とを備え、
前記車両が発進状態の場合の前記目標値は、前記車両が走行中の加速状態の場合の前記目標値よりも低スリップ側に設定されている
ことを特徴とする、ハイブリッド電気自動車の制御装置。
前記出力トルク制御手段は、前記スリップ対応値算出手段により算出された前記実スリップ対応値と、前記目標値設定手段により設定された前記目標値との差に基づくフィードバック制御によって前記走行駆動源の出力トルクを制御する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
前記出力トルク制御手段は、前記駆動輪の前記実スリップ対応値が予め設定された基準スリップ対応値よりも低スリップ側の状態が予め設定された時間以上継続した場合、又は、前記変速機が前記モータと前記駆動輪との動力連結を開放する変速段切替の場合には、前記目標スリップ制御を終了する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は本実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の動力系及びその制御装置の構成図、
図2は本制御装置のブロック図、
図3は本制御にかかるスリップ率の特性及びその目標値を説明するグラフ、
図4はその制御を説明するフローチャートである。これらの図を参照して説明する。
【0020】
〔動力系の構成〕
まず、本実施形態にかかる制御装置が適用されるハイブリッド電気自動車の動力系の構成を説明する。
本実施形態にかかるハイブリッド電気自動車は、例えば、トラック又はバスといった商用車であり、中でも、乗用車に比べて車体の大きい大型車,中型車であり、ディーゼルエンジンを搭載している。
【0021】
図1に示すように、車両(ここでは、車両前部)には、駆動系として、エンジン(内燃機関)1,クラッチユニット2,モータ(電動発電機)3及び変速機(トランスミッション)4を備えており、更に、変速機4は、プロペラシャフト5,リアディファレンシャル(リアデフ)6,ドライブシャフト7,7を介して駆動輪である後輪8,8と動力伝達可能に接続されている。なお、前輪9,9は従動輪となっている。
【0022】
本実施形態では、変速機4に、いわゆるデュアルクラッチ式変速機(以下、DCTとも言う)が用いられている。このDCTは、クラッチと変速ギヤ機構とが、奇数段と偶数段との二系統に分かれており、2つのクラッチを掛け替えることにより極めて短時間(クラッチの掛け替え時間のみ)で変速を行なうことができる。
つまり、クラッチユニット2には、第1クラッチ2Aと第2クラッチ2Bとが同一軸線上に並んで配設されている。これらの第1クラッチ2A及び第2クラッチ2Bは、図示しないクラッチアクチュエータによってそれぞれの接続及び遮断が独立して行われるようになっている。
【0023】
また、変速機4には、2速,4速,6速の偶数段の変速段のギヤ対を装備した第1変速ギヤ機構4Aと、1速,3速,5速の奇数段の変速段のギヤ対を装備した第2変速ギヤ機構4Bとが、同一軸線上に並んで配設されている。
第1クラッチ2A及び第2クラッチ2Bの各入力側はエンジン1の出力軸1Aに接続され、第1クラッチ2Aの出力側は第1変速ギヤ機構4Aの入力軸(第1入力軸)40Aに、第2クラッチ2Bの出力側は第2変速ギヤ機構4Bの入力軸(第2入力軸)40Bに、それぞれ接続されている。
【0024】
第1入力軸40Aは中空軸であり、第2入力軸40Bの外周に同軸状に配置される。第1入力軸40Aには2速ドライブギヤ42a,4速ドライブギヤ44a,6速ドライブギヤ46aが回転自在に装備され、第2入力軸40Bの第1入力軸40Aの端部から突出した部分には1速ドライブギヤ41a,3速ドライブギヤ43a,5速ドライブギヤ45aが回転自在に装備されている。
【0025】
なお、モータ3は、クラッチユニット2と第1,第2変速ギヤ機構4A,4Bとの間の第1入力軸40Aの外周に装備されている。つまり、第1入力軸40Aの外周には、モータ3の回転子(ロータ)31Aが固設され、この回転子3Aの外周には、図示しない変速機ケーシングに支持されて固定子(ステータ)3Bが回転子3Aと対向して配置され、力行時には電力供給を受けて回転子3Aを回転させ、回生時には回転子3A側の回転によって発電し、回転子3A側に発電負荷に応じた制動力を付与する。
【0026】
また、第1入力軸40A及び第2入力軸40Bの隣には、カウンタ軸40Cが入力軸40A,40Bと平行に配備されている。カウンタ軸40Cには、2速ドリブンギヤ42b,4速ドリブンギヤ44b,6速ドリブンギヤ46b及び1速ドリブンギヤ41b,3速ドリブンギヤ43b,5速ドリブンギヤ45bが固設され、それぞれ対応する変速段のドライブギヤと噛合している。このカウンタ軸40Cは、ギヤ対48を介してプロペラシャフト5と連結されており、カウンタ軸40Cは、プロペラシャフト5と連動する。
【0027】
上記のように、各ドライブギヤ41a〜46aはいずれも入力軸40A又は40Bに回転自在に軸支されているが、それぞれ同期装置47a〜47dを通じて、各入力軸40A,40Bと一体に回転するようになっている。2速ドライブギヤ42aを例示して説明すると、同期装置47aは、入力軸40A又は40Bに一体回転し且つ軸方向にスライド可能に装備されたスリーブ47slと、このスリーブ47slをスライド駆動する図示しないアクチュエータと、各ドライブギヤにそれぞれ固設されたクラッチギヤ47cgとからなり、スリーブ47slがスライドしてクラッチギヤ47cgと係合すると、係合したクラッチギヤ47cgが固設されたドライブギヤが対応する入力軸40A又は40Bと一体回転する。
【0028】
したがって、例えば2速段を達成する場合、2速ドライブギヤ42aのクラッチギヤ47cgに、対応するスリーブ47slをスライドさせて係合させれば、2速ドライブギヤ42aが入力軸40Aと一体に回転するようになり、この時、第1クラッチ2Aが接続されていれば、エンジン1,第1クラッチ2A,第1入力軸40A,2速ドライブギヤ42a,2速ドリブンギヤ42b,カウンタ軸40C,ギヤ対48,プロペラシャフト5,リアデフ6,ドライブシャフト7,7,駆動輪8,8という動力伝達経路が形成され、エンジン1の回転は、2速段に応じた変速比で変速されて駆動輪8,8に伝達される。
【0029】
同様に、4速段,6速段の場合も、各クラッチギヤ47cgに対応するスリーブ47slを係合させ第1クラッチ2Aを接続させれば達成することができる。
1速段,3速段,4速段の場合も、同様に、各クラッチギヤ47cgに対応するスリーブ47slを係合させ第2クラッチ2Bを接続させれば達成することができる。
したがって、例えば、2速段から3速段にシフトアップするには、2速ドライブギヤ42aのクラッチギヤ47cgに、対応するスリーブ47slを係合させ、第1クラッチ2Aを接続した2速段走行状態において、第2クラッチ2Bを遮断した状態で、3速ドライブギヤ43aのクラッチギヤ47cgに、対応するスリーブ47slを係合させておいて、第1クラッチ2Aを切り離しつつ第2クラッチ2Bを接続していく、いわゆるクラッチ掛け替えを行なう。2速段走行中に、切替先の変速段(この場合、3速段)のクラッチギヤ47cgとスリーブ47slとの係合を予め実施しておくことができるので、トルク伝達に影響する変速動作はクラッチ掛け替えのみとなり、実質的に速やかな変速(変速段の切替)を行なえる。
【0030】
このように、第1クラッチ2Aと第2クラッチ2Bとの一方を接続する際には、他方を遮断するが、本駆動系の場合、第1入力軸40Aにモータ3が装備されているので、第1クラッチ2Aと第2クラッチ2Bとの両方を遮断しても、モータ3とは動力伝達できるので、両クラッチ2A,2Bを遮断して、モータ3単独による駆動トルクでの走行や、エンジンブレーキを利用することなく回生制動主体の制動を実現することができる。
【0031】
なお、モータ3は、インバータ31によって作動を制御される。インバータ31は、力行時には、バッテリ(例えば、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池の単電池(セル)が複数個直列接続された電池群)32からモータ3に電力を供給して出力トルクを発生させる電動機として機能させ、回生制動時には、車両の運動エネルギを用いて電力を発電(回生発電)する発電機としてモータ3を機能させ、回生発電による電力を、通常状態ではバッテリ32の充電に用いる。
【0032】
〔制御系の全体構成〕
上述のエンジン1,クラッチ2A,2B,モータ3,バッテリ32及びインバータ31の制御又は管理は、コンピュータを用いた電子制御によって行なわれるようになっている。
エンジン1を制御するためにエンジンECU61が、モータ3を操作するインバータ31を制御するためにインバータECU62が、バッテリ32を管理するためにバッテリECU63が、それぞれ設けられ、これらのエンジンECU61,インバータECU62,バッテリECU63及びクラッチ2を制御するために、車両ECU60が設けられている。
【0033】
これらの各ECU60,61,62,63は、いずれもCPU,ROM,RAM,入出力回路等からなるコンピュータであって、適宜の機器類が付設又は接続されている。
車両ECU60は、車両の走行状態(例えば、車速(車体速),加速度)や、駆動輪8のスリップ状態や、車両への駆動又は制動指令の状態(例えば、アクセル操作量やブレーキ操作量)や、バッテリ32の充電量(以下、充電量の値を「SOC」で示す)等に基づいて、エンジンECU61,インバータECU62,バッテリECU63及びクラッチ2A,2Bを制御する。
【0034】
また、バッテリECU63には、バッテリ32の充放電電流を検出するバッテリ電流センサ51と、バッテリ32の充放電電圧を検出するバッテリ電圧センサ52と、バッテリ32の充放電回数を検出するバッテリ充放電カウンタ54とが接続されており、バッテリ32の充電量SOCは、このバッテリECU63によって、バッテリ32の充放電時の電流,電圧に基づいて算出される。したがって、バッテリECU63は、バッテリ充電量検出手段に相当する。
【0035】
これらの各センサ51,52やカウンタ54は、バッテリ32の各セルに接続され、この各セルの電流,電圧,充放電回数を検出してもよいし、幾つかのセルに対して一つのセンサが接続され、この幾つかのセルの電流,電圧,充放電回数を検出してもよいし、これらの各セルに対してまたは幾つかのセルに対して1つのセンサを接続することを適宜組み合わせて各センサを配設してもよい。
【0036】
また、インバータECU62は、インバータ31を制御することにより、インバータ31に接続されたモータ3,バッテリ32の電力の授受を管理する。例えば、モータ3の回生発電による発電電力を、通常状態であればバッテリ32の充電にあてるが、バッテリ32の充電が不可能な場合には、他の電力消費機器へ供給しうる。
車両ECU60は、駆動時には、アクセル操作量に基づいて、車両に必要な駆動トルクを設定すると共に、エンジン1とモータ3との何れを使用するか或いは両方を使用するかを設定し、エンジン1とモータ3との両方を使う場合には駆動トルクの配分を行なう。エンジンECU61やインバータECU62は、車両ECU60により設定された駆動トルクを出力するようにエンジン1又はモータ3の作動を制御する。
【0037】
例えば車両の発進時には、基本的には、クラッチ2を切ってモータ3のみの駆動トルクを用い、その後の走行時には、エンジン1を始動させてクラッチ2を接続して、エンジン1の駆動トルクを主体に、モータ3の駆動トルクを補助的に用いて走行する。ただし、バッテリ32の充電量が不足している場合や、バッテリ32の温度が所定温度以上に昇温している場合には、発進時や走行時にモータ3を用いずエンジン1のみを用いて走行する。
【0038】
また、制動時には、基本的には、クラッチ2を切って駆動輪8の回転エネルギをモータ3のみに送って回生発電を行なう。この回生発電による電力は、通常は、バッテリ32の充電に用いられる。
ただし、バッテリ32の充電量SOCが上限又は上限の近傍に達している場合や、バッテリ32の温度が所定温度以上に昇温している場合には、回生発電による電力をバッテリ32の充電に用いることはできない。
【0039】
つまり、バッテリ32は充電量が過剰に高くなると劣化が促進される。また、充電量が過剰に低下しても劣化を招く。そこで、車両ECU60は、バッテリ32の充電量も管理する。
そして、本装置の場合、車両ECU60は、上記のハイブリッド電気自動車特有の各制御に加えて、駆動輪8のスリップ状態を、クラッチ2A,2Bの断接状態及び車両の走行状態に基づいて制御するスリップ制御を実施する点が特徴的である。このスリップ制御について、以下に説明する。
【0040】
〔スリップ制御〕
まず、このスリップ制御は、駆動輪8の空転時における駆動輪8のスリップ率(スリップ比とも言う)又はこのスリップ率に対応するパラメータ値であるスリップ対応値について、目標値を設定し、実際のスリップ対応値(実スリップ対応値)がこの目標値になるように制御するものである。ここでは、スリップ対応値がスリップ率λ自体である場合を説明する。そこで、ここでは、スリップ制御について、スリップ率制御と呼ぶ。
【0041】
なお、空転時における駆動輪8のスリップ率λは、車体速Vと駆動輪8の車輪速V
dwとから下式(1)によって定義される。なお、ここでは、車体速Vは従動輪(前輪)9の車輪速V
fwから求めることとする。
λ=(V−V
dw)/V
dw ・・・(1)
【0042】
スリップ対応値としては、このスリップ率λ以外に、スリップ率に対応するパラメータ値として、例えば、駆動輪8の車輪速V
dwと従動輪(前輪)9の車輪速V
fwとの回転速度差ΔV(=V
dw−V
fw)を用いてもよい。
【0043】
車両ECU60には、かかるスリップ率制御のために、車両の走行状態が発進状態か加速状態かを判定する車両状態判定手段60aと、駆動輪8のスリップを検出するスリップ検出手段60bと、車体速Vと駆動輪8の車輪速V
dwとから駆動輪8の実スリップ率λ
rを算出するスリップ率算出手段(スリップ対応値算出手段)60cと、駆動輪8のスリップ時に、駆動輪8のスリップ率λの目標値である目標スリップ率λ
tbを設定する目標スリップ率設定手段(目標値設定手段)60dと、駆動輪8のスリップ率λが目標スリップ率λ
tbになるようにモータ3及びエンジン1の出力トルク(回生時等の負のトルクも含む)を制御する出力トルク制御手段(モータ制御手段及びエンジン制御手段)60eと、目標スリップ率制御が達成可能であるか否かを判定する達成判定手段60fと、クラッチ2A,2Bを制御するクラッチ制御手段60gと、目標スリップ率制御の終了を判定する終了判定手段60hとを、何れもコンピュータソフトウェアによる機能要素として備えている。
【0044】
また、車両ECU60には、かかるスリップ率制御のために、駆動輪8の車輪速V
dwを検出する車輪速センサ55と、車体速Vに相当する従動輪(前輪)9の車輪速V
fwを検出する車輪速センサ56と、第1,第2クラッチ2A,2Bのそれぞれの断接状態を検出するクラッチスイッチ(クラッチ状態検出手段)57とから、それぞれの検出信号が入力されるようになっている。なお、各クラッチ2A,2Bのそれぞれの断接状態を検出する手段としては、各クラッチ2A,2Bの可動要素のストロークを検出するストロークセンサでもよい。
【0045】
車両状態判定手段60aは、車体速Vから、車両の発進と走行中の加速とを判定する。つまり、車体速Vの増加状態が予め設定された時間以上継続すると車両が加速中であると判定し、この時、車両の加速開始時の車体速Vが予め設定された微小閾値(車両の停止を判定する閾値)V
0未満であれば、この加速を発進と判定し、車体速Vが微小閾値V
0以上であれば、この加速を走行中の加速と判定する。
【0046】
スリップ検出手段60bは、車輪速センサ55により検出される駆動輪8の車輪速V
dwの時間変化率ΔV
dwが予め設定された基準変化率ΔV
dw1を超えたら、駆動輪8にスリップが発生していると判定する。つまり、駆動輪8の空転によるスリップ開始時には、駆動輪8の車輪速V
dwが瞬時に急増するのでこれをとらえて、駆動輪8のスリップを判定する。判定閾値である基準変化率ΔV
dw1は、駆動輪8が路面をグリップしているときの時間変化率の最大値(車両の最大加速度に対応する)よりも大きい値が設定される。なお、このスリップ判定がされたら、その後、スリップ率制御を終えるまでは、駆動輪8のスリップしているものと判定を続行する。なお、このスリップ判定については、駆動輪8の車輪速V
dwと従動輪(前輪)9の車輪速V
fwとの差ΔVが(V
dw−V
fw)が基準差ΔV1を超えたら、駆動輪8にスリップが発生していると判定してもよい。
【0047】
スリップ率算出手段60cは、車体速Vと駆動輪8の車輪速V
dwとから上記の式(1)によって空転時における駆動輪8の実スリップ率λ
rを算出する。
目標スリップ率設定手段60dは、スリップ検出手段60bにより駆動輪8のスリップが検出されたら、クラッチスイッチ57により検出されたクラッチ2A,2Bの断接状態と、車両状態判定手段60aにより判定された車両の走行状態に基づいて、駆動輪8の目標スリップ率λ
tbを設定する。
【0048】
本制御装置では、この目標スリップ率λ
tbの設定に特徴があり、
図3に示すように、クラッチ2A,2Bが接続状態か遮断状態か、及び、車両の走行状態が発進状態か加速状態かによって、4通りの目標スリップ率λ
tbが用意されている。また、目標スリップ率λ
tbは1つの値ではなく、幅を持った帯域(バンド)として設定されている。
このように、目標スリップ率λ
tbを、幅を持った目標値帯域として設定するのは、後述のスリップ率λに基づくフィードバック制御を安定させることができるためである。ただし、制御態様によっては、目標スリップ率を、幅を持たないポイントとして設定することも可能である。
【0049】
図3に示す第1の目標スリップ率帯域λ
tb1は、クラッチ2A,2Bが何れも遮断状態でエンジン1の出力トルクが車両の走行に関与していない場合の発進時の目標スリップ率帯域λ
tbである。この時には、モータ3の出力トルクにより車両の走行をしている。なお、この場合には、変速機4の変速段は、モータ3が装備された第1変速ギヤ機構4Aの変速段の何れかが使用されていることになる。
【0050】
図3に示す第2の目標スリップ率帯域λ
tb2は、クラッチ2A,2B
の何れかが接続状態でエンジン1の出力トルクが車両の走行に関与している場合の発進時の目標スリップ率帯域λ
tbである。この時には、モータ3が装備された第1変速ギヤ機構4Aの変速段の何れかが使用されていれば、エンジン1の出力トルクにモータ3の出力トルクを加えて車両を走行させることもできる。
【0051】
図3に示す第3の目標スリップ率帯域λ
tb3は、クラッチ2A,2Bが何れも遮断状態でエンジン1の出力トルクが車両の走行に関与していない場合の加速時の目標スリップ率帯域λ
tbである。この時には、モータ3の出力トルクにより車両の走行をしている。また、この場合には、変速機4の変速段は、モータ3が装備された第1変速ギヤ機構4Aの変速段の何れかが使用されていることになる。
【0052】
図3に示す第4の目標スリップ率帯域λ
tb4は、クラッチ2A,2Bが何れかが接続状態でエンジン1の出力トルクが車両の走行に関与している場合の発進時の目標スリップ率帯域λ
tbである。この時には、モータ3が装備された第1変速ギヤ機構4Aの変速段の何れかが使用されていれば、エンジン1の出力トルクにモータ3の出力トルクを加えて車両を走行させることもできる。
【0053】
図3に示すように、車両の発進時の目標スリップ率帯域λ
tbである第1の目標スリップ率帯域λ
tb1及び第2の目標スリップ率帯域λ
tb2は、何れもスリップ率λが大きい(即ち、スリップが少ない)領域に設定され、一方、車両の加速時の目標スリップ率帯域λ
tbである第3の目標スリップ率帯域λ
tb3及び第4の目標スリップ率帯域λ
tb4は、何れもスリップ率λが小さい(即ち、スリップが大きい)領域に設定されている。
【0054】
これは、車両の発進時には、駆動輪8のスリップを確実に抑えて発進することが最も重要であるため、車両の発進時の目標スリップ率帯域λ
tb1,λ
tb2は、何れもスリップ率λ(スリップ比)が大きい(即ち、スリップが少ない)領域に設定されている。
一方、車両の走行時には、駆動輪8のタイヤは適度に滑っているときに最大摩擦力を発揮する特性があるので、駆動輪8のスリップをある程度許容した方が、加速性を良好にすることができる。このため、車両の加速時の目標スリップ率帯域λ
tb3,λ
tb4は、何れもスリップ率λ(スリップ比)が小さい(即ち、スリップが大きい)領域に設定されている。
【0055】
また、クラッチ2A,2Bが何れも遮断状態でエンジン1の出力トルクが車両の走行に関与せずに、モータ3の出力トルクのみにより車両の走行をしている場合は、車両の発進時においても加速時においても、目標スリップ率帯域λ
tb1,λ
tb3は、クラッチ2A,2Bの何れかが接続状態でエンジン1の出力トルクが車両の走行に関与している場合の目標スリップ率帯域λ
tb2,λ
tb4よりも、幅が狭くなっている。
【0056】
これは、モータ3の出力トルクのみにより車両の走行をしている場合は、実スリップ率λ
rを目標スリップ率帯域λ
tb内に制御するには、モータ3の出力トルクのみを制御すればよい。モータ3はトルク制御時の応答性がよいため、目標スリップ率帯域λ
tbを狭く設定しても十分に制御することができる。したがって、クラッチ2A,2Bが何れも遮断状態の場合の目標スリップ率帯域λ
tb1,λ
tb3は、スリップ率λをより適切な状態にすべく目標スリップ率帯域λ
tbの幅を比較的狭くしているのである。
【0057】
一方、エンジン1の出力トルクを用いて車両の走行をしている場合は、実スリップ率λ
rを目標スリップ率帯域λ
tb内に制御するには、エンジン1のみの出力トルクを制御するか、或いは、エンジン1とモータ3との両方の出力トルクを制御することになり、いずれにしても、エンジン1の出力トルクの制御が必須となる。エンジン1の場合、トルク制御時の応答性が低いので、目標スリップ率帯域λ
tbの幅を狭くすると、制御を安定させることができない。そこで、クラッチ2A,2Bの何れかが接続状態の場合の目標スリップ率帯域λ
tb2,λ
tb4は、制御安定性を考慮して目標スリップ率帯域λ
tbの幅を比較的広くしているのである。
【0058】
出力トルク制御手段60eは、駆動輪8のスリップ時に、スリップ率算出手段60cにより算出された実スリップ率λ
rが目標スリップ率設定手段60dにより設定された目標スリップ率帯域λ
tb内になるようにモータ3及びエンジン1の出力トルクを制御する。
ここでは、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tbから外れたら、実スリップ率λ
rと目標スリップ率帯域λ
tbとの偏差、つまり、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tb内に入るのに必要な値Δλに基づくフィードバック制御によって、モータ3及びエンジン1の出力トルクを制御する。
【0059】
偏差Δλは、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tbの上限値λ
tbmax(
図3中、各帯域の左側の境界値)よりも大きい(
図3中、左側)なら下式(2)により、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tbの下限値λ
tbmin(
図3中、各帯域の右側の境界値)よりも小さい(
図3中、右側)なら下式(3)により、それぞれ求めるものとする。
Δλ=λ
r−λ
tbmax ・・・(2)
Δλ=λ
r−λ
tbmin ・・・(3)
【0060】
この場合のフィードバック制御には、ここではPID制御を用いるものとするが、P制御,I制御,D制御をどのような組み合わせで用いるかは必要に応じて設定すればよい。
【0061】
なお、
図2は、スリップ率算出手段60c,目標スリップ率設定手段60d,及び出力トルク制御手段60dの各処理に関するブロック図であり、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tbから外れたらΔλを算出して、ΔλをPID制御によって処理して出力トルク補正量ΔTを出し、ドライバの要求トルクT
drに出力トルク補正量ΔT(n)を加算して、今回の目標出力トルクT
t(n)を出力する。
【0062】
なお、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tbから外れていなければ、ドライバの要求トルクT
drに、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tbに入ったときの出力トルク補正量ΔT(k)を加算して、今回の目標出力トルクT
t(n)を出力する。実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tbに入ったら、前回の出力トルク補正量ΔT(n−1)を今回の出力トルク補正量ΔT(n)にセットするので、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tbから外れていない限りは、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tbに入ったときの出力トルク補正量ΔT(k)が今回の出力トルク補正量ΔT(n)にセットされる。
【0063】
出力トルク制御手段60eでは、モータ3のみを使用した走行であれば、目標出力トルクT
t(n)が全てモータ3で達成されるように、インバータECU62に指令信号を出力し、エンジン1のみを使用した走行であれば、目標出力トルクT
t(n)が全てエンジン1で達成されるように、エンジンECU61に指令信号を出力する。また、モータ3とエンジン1とを共に使用した走行であれば、目標出力トルクT
t(n)がエンジン1とモータ3との各分担目標トルクに割り振って、エンジンECU61,インバータECU62にそれぞれ指令信号を出力する。
【0064】
達成判定手段60fは、車両ECU60のメモリ内に予め記憶されたモータ3の最大出力トルクと、出力トルク制御手段60eにより設定された目標出力トルクT
t(n)のモータ分担目標トルクとを比較して、目標スリップ率制御が達成可能であるか否かを判定する。つまり、達成判定手段60fは、目標出力トルクT
t(n)の分担目標トルクがモータ3の最大出力トルク以内ならば目標スリップ率制御が達成可能であると判定し、目標出力トルクT
t(n)の分担目標トルクがモータ3の最大出力トルクよりも大きければ、目標スリップ率制御が達成不可能であると判定する。
【0065】
クラッチ制御手段60gは、クラッチスイッチ57により、クラッチ2A,2Bのいずれかが接続状態であることが検出され、且つ、達成判定手段60fがモータ3の最大出力トルクで目標スリップ制御が達成不可能であると判定した場合、接続状態であるクラッチ2A,2Bを遮断状態に切り替える。これは、エンジンの出力トルクが目標スリップ制御の達成を不可能としている場合があり、これを排除するためである。
【0066】
例えば、エンジン1の出力トルクが高過ぎて駆動輪8がスリップしている場合に、目標出力トルクT
t(n)を達成するために、モータ3に負のトルク、即ち、回生トルクを発生させる必要がある状況が考えられ、エンジン1の出力トルクが高過ぎるとモータ3に最大の回生トルクを発生させても目標出力トルクT
t(n)を達成できない場合がある。この場合には、クラッチ2A,2Bのいずれも開放状態として、エンジンの出力トルクを抜けば速やかに目標出力トルクT
t(n)を達成できる場合がある。クラッチ制御手段60gの上記制御は、この点に着目したものである。
【0067】
終了判定手段60hは、目標スリップ率制御の終了を判定する駆動輪8の実スリップ率λ
rが予め設定された基準スリップ率λ
0よりも低スリップ側(スリップ率が高い側)の状態が予め設定された所定時間以上継続した場合、又は、変速機4がモータ3と駆動輪8との動力連結を開放する変速段切替の場合(本実施形態では、第1変速ギヤ機構4Aのギヤ段を変更している場合)には、目標スリップ率制御を終了するものと判定する。
【0068】
実スリップ率λ
rが基準スリップ率λ
0よりも高い状態が所定時間以上継続すれば、駆動輪8のスリップは終了した(許容の範囲内に保持されている)と判断でき、目標スリップ率制御は不要となり、変速機4がモータ3と駆動輪8との動力連結を開放する変速段切替の場合、モータ3を車両の駆動に使用できず目標スリップ率制御は不可能となる。このため、かかる制御終了条件を設定している。
【0069】
制御の終了が判定されると、出力トルク制御手段60eは、目標スリップ率制御を終了する。この終了は即座に終了するのではなく、ランプ制御によって緩やかに行なうことが好ましい。
【0070】
〔作用,効果〕
本発明の一実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置は、上述のように構成されているので、例えば
図4に示すように、目標スリップ率制御が実施される。なお、
図4に示す処理は所定の制御周期で実施されるものとする。
【0071】
図4(a)に示すように、まず、車両ECU60は、車輪速センサ56により検出される従動輪9の車輪速V
fwを車体速Vとして取得し、車輪速センサ55により検出される駆動輪8の車輪速V
dwを取得し、クラッチスイッチ57からクラッチ2A,2Bの断接情報を取得する(ステップS10)。
次に、スリップ検出手段60bにより、駆動輪8にスリップが発生しているかを判定し(ステップS20)、駆動輪8にスリップが発生していれば、スリップ率算出手段60cにより、車体速Vと駆動輪8の車輪速V
dwとから駆動輪8の空転時における実スリップ率λ
rを算出する(ステップS30)。
【0072】
次に、目標スリップ率設定手段60dが、クラッチスイッチ57により検出されたクラッチ2A,2Bの断接状態を判定し(ステップS40)、車両状態判定手段60aにより判定された車両の走行状態が発進状態であるか加速状態であるかを判定し(ステップS50,S60)、これらの判定結果から、駆動輪8の目標スリップ率λ
tbを設定する。
目標スリップ率設定手段60dは、クラッチ2A,2Bが何れも遮断状態(エンジン1の出力トルクが車両の走行に関与していない場合)での発進時には、目標スリップ率帯域λ
tbとして第1の目標スリップ率帯域λ
tb1を設定する(ステップS70)。また、クラッチ2A,2Bが何れも遮断状態での加速時には、目標スリップ率帯域λ
tbとして第3の目標スリップ率帯域λ
tb3を設定する(ステップS80)。
【0073】
一方、目標スリップ率設定手段60dは、クラッチ2A,2Bの何れかが接続状態(エンジン1の出力トルクが車両の走行に関与している場合)での発進時には、目標スリップ率帯域λ
tbとして第2の目標スリップ率帯域λ
tb2を設定する(ステップS90)。また、クラッチ2A,2Bの何れかが接続状態での加速時には、目標スリップ率帯域λ
tbとして第4の目標スリップ率帯域λ
tb4を設定する(ステップS100)。
【0074】
こうして目標スリップ率帯域λ
tbが設定されると、出力トルク制御手段60eは、駆動輪8のスリップ時に、スリップ率算出手段60cにより算出された実スリップ率λ
rが目標スリップ率設定手段60dにより設定された目標スリップ率帯域λ
tb内になるようにモータ3及びエンジン1の出力トルクを制御する。
つまり、
図4(b)に示すように、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tb内に含まれるか否かを判定し(ステップS110)、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tb内に含まれれば、現状の目標トルクを維持するように、前回の補正トルク(出力トルク補正量)ΔT(n−1)を今回の補正トルク(出力トルク補正量)ΔT(n)に設定して(ステップS140)、ドライバの要求トルクT
drに設定した出力トルク補正量ΔT(n)を加算して、今回の目標出力トルクT
t(n)を算出する(ステップS150)。
【0075】
一方、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tb内に含まれなければ、つまり、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tbから外れたら、実スリップ率λ
rと目標スリップ率帯域λ
tbとの偏差、即ち、実スリップ率λ
rが目標スリップ率帯域λ
tb内に入るのに必要な値Δλを算出し(ステップS120)、ΔλをPID処理して今回の補正トルク(出力トルク補正量)ΔT(n)を算出して(ステップS130)、ドライバの要求トルクT
drに今回の出力トルク補正量ΔT(n)を加算して、今回の目標出力トルクT
t(n)を算出する(ステップS150)。
【0076】
出力トルク制御手段60eでは、モータ3のみを使用した走行であれば、目標出力トルクT
t(n)を全てモータ3の目標出力トルクとし、エンジン1のみを使用した走行であれば、目標出力トルクT
t(n)を全てエンジン1の目標出力トルクとし、モータ3とエンジン1とを共に使用した走行であれば、目標出力トルクT
t(n)をエンジン1とモータ3との各分担目標トルクに割り振る。こうして、目標出力トルクT
t(n)に応じて、モータ3或いはエンジン1の出力トルクを制御する(ステップS160)。
【0077】
このように、本スリップ率制御では、駆動輪8のスリップが検出されたら、クラッチ2A,2Bの断接状態と、車両の走行状態(発進状態か加速状態か)とに基づいて、駆動輪8の目標スリップ率λ
tを設定し、実スリップ率λ
rが目標スリップ率λ
tになるようにモータ3又はエンジン1の出力トルクを制御するので、駆動輪8のスリップ率を適切に制御することができる。
【0078】
特に、車両が発進状態の場合の目標スリップ率λ
tを、車両が加速状態の場合の目標値よりも低スリップ側(スリップ率なら高い側)に設定するので、発進時には、駆動輪8のスリップを確実に抑えて発進することができ、走行中の加速時には、スリップをある程度許容することにより、走行性能を良好に確保しながら駆動輪8のスリップを抑えることができる。
【0079】
また、目標スリップ率λ
tを、幅を持った帯域として設定することにより、制御を安定させることができる。
特に、クラッチ2A,2Bが接続状態の場合、制御指令に対する追従性の低いエンジン1も制御対象となるが、この場合に、目標スリップ率帯域λ
tbを比較的広い帯域とするので、制御を安定させることができる。一方、クラッチ2A,2Bが遮断状態の場合、制御指令に対する追従性の高いモータ3のみが制御対象となるので、目標スリップ率帯域λ
tbをクラッチ2A,2Bが接続状態の場合よりも比較的狭い帯域とするので制御を安定させながら、スリップ状態をより適切に制御することができる。
【0080】
また、モータ3やエンジン1の出力トルク制御に、実スリップ率λ
tと目標スリップ率λ
tとの差Δλに基づくフィードバック制御(ここでは、PID制御)を用いているので、モータ3やエンジン1の出力トルクを適切に制御することができる。
さらに、エンジン1の出力トルクが高過ぎるとモータ3に最大の回生トルクを発生させても目標出力トルクT
t(n)を達成できない場合があるが、この場合には、クラッチ2A,2Bのいずれも開放状態として、エンジンの出力トルクを抜けば速やかに目標出力トルクT
t(n)を達成できる。
【0081】
なお、目標スリップ率制御の終了を判定する駆動輪8の実スリップ率λ
rが予め設定された基準スリップ率λ
0よりも低スリップ側(スリップ率が高い側)の状態が予め設定された所定時間以上継続した場合、又は、変速機4がモータ3と駆動輪8との動力連結を開放する変速段切替の場合(本実施形態では、第1変速ギヤ機構4Aのギヤ段を変更している場合)には、目標スリップ率制御を終了するので、不要な制御の実施が回避される。
【0082】
〔その他〕
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、かかる実施形態の一部を変更したり、かかる実施形態の一部のみを適用したりして、実施することができる。
例えば、上記の実施形態では、クラッチと変速ギヤ機構とが、奇数段と偶数段との二系統に分かれたデュアルクラッチ式変速機が例示されているが、本発明は、クラッチが1つのみで変速ギヤ機構も分かれていないシングルクラッチ式変速機にも適用しうるものである。
【0083】
また、上記の実施形態では、大型又は中型の商用車への適用例を説明したが、本発明の対象はかかる自動車に限定されず、また、自動車以外の車両(鉄道車両)への適用も可能である。
また、車両に搭載されるエンジンもディーゼルエンジンに限定されない。