特許第5706143号(P5706143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706143
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/48 20060101AFI20150402BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   B60N2/48
   B60N2/06
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-274276(P2010-274276)
(22)【出願日】2010年12月9日
(65)【公開番号】特開2012-121476(P2012-121476A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年11月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘幸
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−245744(JP,A)
【文献】 実開昭57−065652(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に分割されたシートを備え、左側シート、右側シート、およびこの両シートの中央に跨って、計3人が着座できるように設定されており、
少なくとも一側のシートが左右または前後方向にスライドして、離間した両シートの間にウォークスルースペースが形成されるようにしたシートであって、
前記両シートの中央に跨って着座する中央着座者用のヘッドレストは、左右に分割され、前記分割ヘッドレストは、前記両シートの対応するシートバックの上部にそれぞれ支持され、
この中央着座者用の分割ヘッドレストは、両シートの離間時には、ウォークスルースペースが開けられるように、シートとともに移動する一方、
前記中央着座者用の分割ヘッドレストは、シートバックの上部にそれぞれ独立して昇降可能に支持されていることを特徴とするシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォークスルースペースを形成できるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図6(a)のように、自動車用のリアシート30としては、左右に分割されたシート30L,30Rを備えたものがある。なお、ここで左右とは、着座者から見ての方向である(以下、同様。)。
【0003】
各シート30L,30Rの上部には、左側着座者用のヘッドレスト30aと右側着座者用のヘッドレスト30bとがそれぞれ支持されている。そして、図6(b)のように、一側のシート、本例では右側のシート30Rのクッションを跳ね上げた後に回転させて、両シート30L,30Rの間にウォークスルースペースSが形成されるようにしている(特許文献1参照)。
【0004】
前記のシート構造では、ウォークスルースペースSを形成するために、シート30Rのクッションを跳ね上げ操作と回転操作とが必要となるから、非常に手間がかかる。
【0005】
しかも、図6(a)の通常時は、左側シート30L、右側シート30R、およびこの両シート30L,30Rの中央に跨って、計3人が着座できるように設定されているが、中央着座者用のヘッドレストを設けることが困難である。
【0006】
そのため、図7(a)のように、少なくとも一側のシート、例えば、左側シート30Lを左方向Lにスライドさせて、離間した両シート30L,30Rの間にウォークスルースペースSが形成することが考えられる。このシート構造では、ウォークスルースペースSを形成するために、シート30Lをスライド操作するだけであるから、手間がかからない。
【0007】
また、いずれかのシート、例えば左側シート30Lのシートバック30dの上部に、両シート30L,30Rに跨って着座する中央着座者用のヘッドレスト30cを支持することで、中央着座者用のヘッドレスト30cを設けることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−189082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図7(b)のように、左側シート30Lを左方向Lにスライドさせて、離間した両シート30L,30Rの間にウォークスルースペースSを形成したとき、中央着座者用のヘッドレスト30cの右半分がウォークスルースペースSに突出したままとなる。
【0010】
そのため、中央着座者用のヘッドレスト30cがウォークスルースペースSの通行の障害になることから、これを改善したいという要望があった。
【0011】
本発明は、前記要望に応えるためになされたもので、中央着座者用のヘッドレストを設けても、ウォークスルースペースの通行の障害にならないように工夫したシートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、左右に分割されたシートを備え、左側シート、右側シート、およびこの両シートの中央に跨って、計3人が着座できるように設定されており、少なくとも一側のシートが左右または前後方向にスライドして、離間した両シートの間にウォークスルースペースが形成されるようにしたシートであって、前記両シートの中央に跨って着座する中央着座者用のヘッドレストは、左右に分割され、前記分割ヘッドレストは、前記両シートの対応するシートバックの上部にそれぞれ支持され、この中央着座者用の分割ヘッドレストは、両シートの離間時には、ウォークスルースペースが開けられるようにシートとともに移動する一方、前記中央着座者用の分割ヘッドレストは、シートバックの上部にそれぞれ独立して昇降可能に支持されていることを特徴とするシートを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、左右に分割されたシートの内、少なくとも一側のシートを左右または前後方向にスライドして、離間した両シートの間にウォークスルースペースを形成するようにしたシートを対象とするものである。
【0016】
ここで、両シートのシートバックの上部に、両シートに跨って着座する中央着座者用の分割ヘッドレストをそれぞれ支持することで、中央着座者もヘッドレストを使用することができる。
【0017】
そして、離間した両シートの間にウォークスルースペースを形成したときは、中央着座者用のヘッドレストもシートとともに移動する。したがって、中央着座者用のヘッドレストを設けても、ウォークスルースペースの通行の障害にならなくなる。
【0018】
また、中央着座者用のヘッドレストは、シートとともに移動するから、移動操作を別にする必要がないので、操作性が良好となり、簡単かつ迅速にウォークスルースペースを開けることができる。
【0019】
さらに、左右のシートバックの上部に分割ヘッドレストをそれぞれ設けるだけであるから、構造がシンプルでコスト安になる。
【0020】
一方、中央着座者用の分割ヘッドレストをそれぞれ独立して昇降可能に支持すれば、中央着座者用のヘッドレストも高さを調整できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態の自動車用のリアシートであり、(a)はウォークスルースペースを形成しない正面図、(b)はウォークスルースペースを形成した正面図である。
図2】リアシートの要部正面図である。
図3図2の側面図である。
図4】変形例の自動車用のリアシートであり、(a)はウォークスルースペースを形成しない正面図、(b)はウォークスルースペースを形成した正面図である。
図5】(a)(b)はシートを後方向にスライドさせることで、ウォークスルースペースを形成するタイプのシートの平面図、(c)(d)はくら形タイプのヘッドレストの説明図である。
図6】従来のシートであり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
図7】左側シートと右側シートであり、(a)は両シートの接近位置の正面図、(b)は左側シートを左方向にスライドさせて、ウォークスルースペースを形成した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、自動車用のリアシート1であり、(a)はウォークスルースペースSを形成しない正面図、(b)はウォークスルースペースSを形成した正面図である。
【0024】
リアシート1は、例えば5:5の比率で左右に分割されたシート1L,1Rを備え、左側シート1L、右側シート1R、およびこの両シート1L,1Rの中央に跨って、計3人が着座できるように設定されている。
【0025】
各シート1L,1Rの上部には、左側着座者用のヘッドレスト1aと右側着座者用のヘッドレスト1bとがそれぞれ支持されている。また、両シート1L,1Rの中央に跨って着座する中央着座者用のヘッドレスト1cは、左右に略均等に2分割され、この分割ヘッドレスト1c−L,1c−Rは、両シート1L,1Rの対応するシートバックの上部にそれぞれ支持されている。
【0026】
そして、図1(a)の状態から、図1(b)のように、少なくとも一側のシート、本例では左側シート1Lを左方向Lにスライドさせることで、離間した両シート1L,1Rの間にウォークスルースペースSが形成されるようになる。
【0027】
この場合、図1(b)のように、中央着座者用のヘッドレスト1cは、左側シート1Lの上部と右側シート1Rの上部に、分割ヘッドレスト1c−L,1c−Rとして略半分ずつを支持している。したがって、両シート1L,1Rの離間時には、ウォークスルースペースSが開けられるように、分割ヘッドレスト1c−Lは左側シート1Lとともに移動する。
【0028】
次に、中央着座者用のヘッドレスト1cの具体的な構成を説明する。図2はリアシート1の要部正面図、図3図2の側面図である。
【0029】
左側シート1Lの分割ヘッドレスト1c−Lには、左右一対の脚部13aを有するポール13が取付けられている。また、左側シート1Lの上部の右肩部の内部には、バックフレーム15の上部に左右一対のポールガイド14が固定されている。そして、各ポールガイド14でポール13の各脚部13aが昇降可能に支持されるようになる。
【0030】
これにより、分割ヘッドレスト1c−Lは、最下降位置Dと最上昇位置Uとに高さを調整することができる。なお、具体的に図示しないが、分割ヘッドレスト1c−Lには、最下降位置Dと最上昇位置U、およびその間の適当な位置でロックするためのロック機構が設けられている。
【0031】
同様に、右側シート1Rの分割ヘッドレスト1c−Rもポール13とポールガイド14とで昇降可能に支持され、同様のロック操作機構が設けられている。
【0032】
また、左側着座者用のヘッドレスト1aと右側着座者用のヘッドレスト1bもポール(不図示)とポールガイド14とで昇降可能に支持され、同様のロック操作機構が設けられている。
【0033】
前記のように自動車用のリアシート1を構成すれば、図1(a)のように、左側シート1Lが右側シート1Rに接近した位置であるとする。この場合には、中央着座者用のヘッドレスト1c(1c−L,1c−R)は、図1(a)、図2のように、両シート1L,1Rに跨って着座する中央着座者が使用できる位置に保持されるようになる。
【0034】
そして、図1(a)の状態から図1(b)のように、左側シート1Lを左方向Lにスライドさせて、離間した両シート1L,1Rの間にウォークスルースペースSを形成した状態では、中央着座者用の分割ヘッドレスト1c−Lも左側シート1Lとともに移動する。したがって、中央着座者用のヘッドレスト1c(1c−L,1c−R)を設けても、ウォークスルースペースSの通行の障害にならなくなる。
【0035】
また、中央着座者用の分割ヘッドレスト1c−Lは、左側シート1Lとともに移動するから、移動操作を別にする必要がないので、操作性が良好となり、簡単かつ迅速にウォークスルースペースを開けることができる。
【0036】
さらに、左右のシート1L,1Rのシートバックの上部に分割ヘッドレスト1c−L,1c−Rをそれぞれ設けるだけであるから、構造がシンプルでコスト安になる。
【0037】
また、中央着座者用の分割ヘッドレスト1c−L,1c−Rは、左右のシート1L,1Rのシートバックの上部にそれぞれ独立して昇降可能に支持しているから、中央着座者用のヘッドレスト1c(1c−L,1c−R)も高さを調整できるようになる。
【0038】
前記実施形態では、中央着座者用の分割ヘッドレスト1c−L,1c−Rは、前記両シート1L,1Rのヘッドレスト1a,1bと別体としたものであった。これに対して、図4(a)(b)のように、左側シート1Lの左側着座者用のヘッドレスト1aの右側部に中央着座者用の分割ヘッドレスト1c−L(ハッチングで示す。)を延長状態で一体化し、右側シート1Rの右側着座者用のヘッドレスト1bの左側部に中央着座者用の分割ヘッドレスト1c−R(ハッチングで示す。)を延長状態で一体化することもできる。なお、後方視界を確保する必要があるときは、中央着座者用の分割ヘッドレスト1c−L,1c−Rは、二点鎖線のように、左側着座者用と右側着座者用のヘッドレスト1a,1bよりも低くすることもできる。
【0039】
このように、両シート1L,1Rのヘッドレスト1a,1bをそれぞれ側方に延長させるだけで、分割ヘッドレスト1c−L,1c−Rとなるから、より構造がシンプルでコスト安になる。また、分割ヘッドレスト1c−L,1c−Rの昇降用のポールやポールガイドは、左側着座者用と右側着座者用のヘッドレスト1a,1bのものをそれぞれ兼用できるから、この点からも構造がシンプルでコスト安になる。
【0040】
前記実施形態は、左側シート1Lを左方向Lにスライドさせることで、離間した両シート1L,1Rの間にウォークスルースペースSが形成されるものであったが、図5(a)(b)のように、左側シート1Lを後方向にスライドさせることで、離間した両シート1L,1Rの間にウォークスルースペースSが形成されるものにも適用することができる。
【0041】
また、図5(c)のように、ヘッドレストHは、側面視でL字形のくら形タイプであり、後方視界を確保するために、ヘッドレストHをシートバックの上部内に沈ませるものがある。このようなくら形タイプのヘッドレストHを、図5(d)のように、両シート1L,1Rの中央に跨って着座する中央着座者用のヘッドレスト1cとした場合、例えば、シート1Rのシートバックでヘッドレスト1cを支持しているとする。そして、シート1Lのシートバックを矢印Fのように前倒させようとした時、シート1Lのシートバックがヘッドレスト1cに引っ掛かって前倒させることできない。これに対して、本実施形態のヘッドレスト1cは、左右に2分割しているから(1c―L,1c−R)、くら形タイプであっても、シート1L,1Rのいずれのシートバックも前倒させても支障が生じない。
【符号の説明】
【0042】
1 リアシート
1L 左側シート
1R 右側シート
1c 中央着座者用のヘッドレスト
1c−L,1c−R 分割ヘッドレスト
13 ポール
14 ポールガイド
L 左方向
S ウォークスルースペース
図1
図4
図5
図6
図7
図2
図3