特許第5706156号(P5706156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5706156吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706156
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20150402BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20150402BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20150402BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   B01J20/30
   B01J20/26 D
   C08F8/00
   C08F20/06
【請求項の数】17
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2010-502906(P2010-502906)
(86)(22)【出願日】2009年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2009054913
(87)【国際公開番号】WO2009113678
(87)【国際公開日】20090917
【審査請求日】2011年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2008-64408(P2008-64408)
(32)【優先日】2008年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-88072(P2008-88072)
(32)【優先日】2008年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-115446(P2008-115446)
(32)【優先日】2008年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-115751(P2008-115751)
(32)【優先日】2008年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-187904(P2008-187904)
(32)【優先日】2008年7月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-238918(P2008-238918)
(32)【優先日】2008年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸治
(72)【発明者】
【氏名】奥田 純男
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 邦彦
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/074816(WO,A1)
【文献】 特開平07−232062(JP,A)
【文献】 特開平09−194598(JP,A)
【文献】 特開2001−079829(JP,A)
【文献】 特開2004−300425(JP,A)
【文献】 特開2004−352776(JP,A)
【文献】 特開2005−097604(JP,A)
【文献】 特開2005−081204(JP,A)
【文献】 特開平11−070307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
B01J 2/00− 2/30
C08F 20/06
C08J 3/00− 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合ゲルを得る重合工程と、
上記重合ゲルを乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、
上記乾燥物を減圧下で粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得る粉砕工程と、
上記粒子状吸水性樹脂を篩い分ける分級工程と、
上記各工程において生成した生成物を他の工程に輸送する輸送工程とを含む、粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項2】
重合ゲルを得る重合工程と、
上記重合ゲルを乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、
上記乾燥物を減圧下で粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得る粉砕工程と、
上記粒子状吸水性樹脂を篩い分ける分級工程と、
上記分級工程で得た粒子状吸水性樹脂から得られた粒子状吸水剤を整粒する整粒工程と、
上記各工程において生成した生成物を他の工程に輸送する輸送工程とを含む、粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項3】
重合ゲルを得る重合工程と、
上記重合ゲルを乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、
上記乾燥物を減圧下で粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得る粉砕工程と、
上記粒子状吸水性樹脂を篩い分ける分級工程と、
上記分級工程で得た粒子状吸水性樹脂の表面近傍を架橋して、粒子状吸水剤を得る表面架橋工程と、
上記粒子状吸水剤を包装材容器に入れて包装する包装工程と、
上記各工程において生成した生成物を、他の上記工程に輸送する輸送工程とを含む、粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項4】
重合ゲルを得る重合工程と、
上記重合ゲルを乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、
上記乾燥物を減圧下で粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得る粉砕工程と、
上記粒子状吸水性樹脂を篩い分ける分級工程と、
上記分級工程で得た粒子状吸水性樹脂の表面近傍を架橋して、粒子状吸水剤を得る表面架橋工程と、
上記粒子状吸水剤を整粒する整粒工程と、
上記整粒工程で得た粒子状吸水剤を包装材容器に入れて包装する包装工程と、
上記各工程において生成した生成物を、他の上記工程に輸送する輸送工程とを含む、粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項5】
上記粉砕工程から上記包装工程までの所要時間の50%以上が減圧状態とされている請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
上記粉砕工程以降の合計所要時間の50%以上が減圧状態とされている請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
上記粉砕工程の次になされる輸送工程が、減圧状態とされている請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
上記粉砕工程以降の全ての工程が、減圧状態とされている請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
上記輸送工程が、加圧による輸送工程を含む請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
上記粉砕工程以降の全ての工程が、減圧状態又は加圧状態とされている請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
造粒工程を更に含む請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
上記減圧状態における工程内の、大気圧に対する減圧度が、0kPaを超えて10kPa以下である請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
該粒子状吸水性樹脂は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の不定形破砕状粒子である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項14】
上記重合工程を連続ニーダー重合又は連続ベルト重合により行う、請求項1〜13のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項15】
上記表面架橋工程が、オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物、多価アルコール化合物、またはオキセタン化合物よりなる群から選択される1種又は2種以上の脱水エステル化反応性表面架橋剤を用いて、150から250℃の範囲の温度で行われる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項16】
該粒子状吸水剤の無加圧下吸水倍率(CRC)が15g/g以上であり、食塩水流れ誘導性(SFC)が30(×10−7・cm・s・g−1)以上である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項17】
該粒子状吸水剤中に含まれる重量平均粒子径が150μm未満の微粉の含有量は、粒子吸水剤の全重量に対して、1重量%未満である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料には、体液吸収の観点から、その構成材としての吸水性樹脂が、吸水剤として幅広く利用されている。かかる吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の鹸化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、およびカチオン性モノマーの架橋体等が知られている。この吸水性樹脂は、シート状、繊維状、フィルム状とされても用いられうるが、一般には、粉末状(粒子状)とされて吸水剤に用いられている。かかる粉末(粒子)としては、例えば、その重量平均粒子径が200〜800μm程度である粒子状吸水剤が汎用されている。粒子状吸水剤は、多くの工程を経て製造される。この工程には、重合工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程等が含まれうる。
【0003】
粒子状吸水剤の製造の際には、諸物性の向上が考慮される。諸物性を向上させる目的で、製造工程の検討がなされている。例えば、米国特許出願公開第2003/087983号明細書(特許文献1)は、磁力線照射工程により金属製異物を除去する製造方法を開示する。この製造方法は、吸水性樹脂の劣化を効果的に抑制しうる。
【0004】
粒子状吸水剤の製造過程においては、重合ゲル等から水分が蒸発する。この水蒸気を含んだ湿気は、各工程の製造装置や配管を経由して、製造設備の全体に波及しうる。この湿気は、製造装置や配管の内部に結露を生じさせうる。製造工程中の粒子状吸水性樹脂が湿気や水分を吸収すると、粒子状吸水性樹脂同士が凝集したり、粒子状吸水性樹脂が装置又は配管の内面に付着しやすくなったりして、安定的な生産が妨げられる。これに加えて、製造工程中における粒子状吸水性樹脂の吸湿は、最終的に得られる粒子状吸水剤の品質を低下させうる。
【0005】
また、粒子状吸水剤の製造の際には、吸水性樹脂の微粉(例えば、粒径が150μm未満の微粉)の形成を伴う。微粉が、オムツ等に含まれた場合、粒子状吸水剤からなる吸収性物品を目詰まりさせて、この吸収性物品の通液性を低下させる要因となる。また、微粉は粒子状吸水剤の表面架橋効果に影響し、この微粉を含んだ粒子状吸水剤に表面架橋が施されても、通液性、加圧下吸水倍率等の諸物性が充分に向上されない場合もある。
【0006】
粒子状吸水剤の製造において発生する微粉の量は、重合工程で得られる重合ゲル中の固形分量、即ち、乾燥物あるいは乾燥粉砕物の数重量%〜十数重量%、場合によっては数十重量%にも及ぶ場合がある。この微粉の廃棄は、粒子状吸水剤の収率低下に加えて微粉廃棄費用の発生を伴うので、粒子状吸水剤の生産コストの上昇を招来してしまう。微粉は物性に劣るので、この微粉を廃棄せずに他の用途に利用することは難しい。微粉に対する需要は一般に少ないので、この微粉を販売することも難しい。
【0007】
そこで、微粉の少ない安価な粒子状吸水剤を得る方法として、微粉を再利用する手法、すなわち微粉リサイクル法が数多く提案されている。微粉リサイクル法としては、(I)微粉をそのまま、重合前の単量体を含んだ水溶液に混ぜて重合させる方法(特許文献2参照)、(II)微粉をそのまま、重合途中のゲルに混ぜて重合させる方法(特許文献3および4参照)、(III)微粉をそのまま、重合で得られた重合ゲルに混ぜる方法、(IV)微粉を水性液で造粒して得られる大きな粒子を、重合で得られた重合ゲルに混ぜる方法(特許文献5参照)などがある。これらのうち、(I)〜(III)の方法では、微粉がそのまま利用される。これらの方法では、微粉を均一に混ぜることが困難であることに加え、微粉がモノマーや水などを吸収してその性能が低下する恐れがある。この観点から、複数の微粉からなる造粒粒子を利用する(IV)の方法が好ましいと考えられる。(IV)の方法においては、一般に水をバインダーとして微粉(一次粒子)同士が結合されて大きな粒子としての造粒粒子(二次粒子)が形成される。この造粒粒子には水としての水性液が含まれているので、この造粒粒子の乾燥が必要である。また、(IV)の方法の応用として、複数の微粉からなる造粒粒子同士をさらに凝集させて得られる造粒ゲル(三次粒子)を粉砕して粒子化する方法も考えられるが、該方法では造粒ゲルが多量の水を含んでしまうので、この造粒ゲルの乾燥に多大なエネルギーが消費されてしまう。このような方法は、製造コストが上昇するので、好ましい方法とは言えない。
【0008】
粒子状吸水剤の製造方法は、通常、吸水性樹脂に表面架橋剤を添加して加熱することにより、吸水性樹脂の表面近傍が架橋される工程(表面架橋工程)を含む。この工程は、加熱された粒子状吸水剤を冷却する工程を伴うことが多い。この冷却工程においては、減圧して生じる気流により、加熱された粒子状吸水剤を冷却しつつ、吸水性樹脂の微粉及び/又は残存している表面架橋剤の一部を除去する方法(特許文献6参照)が用いられる場合がある。この方法では、この工程よりも前の工程で発生した微粉を含んだまま、表面架橋がなされる。このため、残存する微粉を除去することができず、残存する微粉が作業環境を悪化させるという問題がある。この微粉が吸水性樹脂と表面架橋剤との混合性を悪化させるため、吸水性樹脂の表面近傍が充分に架橋されないという問題もある。さらに、表面架橋剤の一部が作用して、残存する微粉の造粒がなされ、その後の工程や、吸水材の製造時(例えば、オムツ等の吸収性物品の生産時)に、造粒された微粉が解砕され、この解砕された微粉がダストとして舞い、作業環境を悪化させるという問題及び、この解砕された微粉が吸収性物品の性能(例えば、通液性)を阻害するという問題が生じることも懸念される。
【0009】
また、粒子状吸水剤の高性能化に伴い、後述する無加圧下吸水倍率(CRC)、加圧下吸水倍率(AAP)、及び食塩水流れ誘導性(SFC)といった吸水性樹脂の物性の向上が求められている。その要求に応えるために、吸水性樹脂の表面に強固な表面架橋構造を導入したり、多くの添加剤(例えば、水不溶性微粒子等)を使用したりしているが、かかる工程では、長時間のプロセスとなることが多い。このため、吸水性樹脂粒子が破壊され、微粉の副生を招いてしまう。つまり、吸水性樹脂に高物性を求めると、得られる吸水剤中の微粉が増加することになる。
【先行技術文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/087983号明細書
【特許文献2】米国特許第5342899号明細書
【特許文献3】米国特許第4970267号明細書
【特許文献4】米国特許第4950692号明細書
【特許文献5】米国特許第6458921号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0181031号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記文献に記載の方法で微粉のリサイクルが図られているものの、粒子状吸水剤に含まれる微粉の除去は未だ充分ではないのが現状である。微粉の除去が不充分なので、粒子状吸水剤の、通液性、加圧下吸水倍率等の諸物性が充分に向上されえないという問題がある。
【0012】
また、粒子状吸水剤においては、安定的な生産の確保が要求される。特に、工業的スケールでの製造設備では、設備が安定的に運転されることが重要である。
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、物性向上に寄与し、更には生産性の改善等にも寄与しうる粒子状吸水剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法において、減圧状態が用いられる。従来、熱劣化を防止するため、減圧重合や減圧乾燥を行うことは吸水性樹脂の分野において知られていた。これに対して本発明では、従来の減圧重合や減圧乾燥とは全く異なる観点から、減圧の有効性を見いだした。即ち本発明者らは、乾燥工程よりも後の工程、即ち粉砕工程以降の工程において減圧を行うという新たな製造方法が、通液性向上等の物性向上に寄与しうることを見いだした。また、この減圧による物性向上には、種々の要因が関与していることが判明した。
【0015】
さらに、本発明者らは、減圧を用いた本製造方法が安定的な生産に寄与しうることを見出した。更にこの製造方法は、作業環境の改善にも寄与しうることが判明した。
【0016】
すなわち、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法は、重合ゲルを得る重合工程と、上記重合ゲルを乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、上記乾燥物又は上記重合ゲルを粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得る粉砕工程と、上記粒子状吸水性樹脂を篩い分ける分級工程と、上記各工程において生成した生成物を他の工程に輸送する輸送工程とを含む。本製造方法では、上記粉砕工程、上記分級工程及び上記粉砕工程後における上記輸送工程から選択される一以上の工程が、減圧状態とされている。
【0017】
本発明に係る粒子状吸水剤の他の製造方法は、重合ゲルを得る重合工程と、上記重合ゲルを乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、上記乾燥物又は上記重合ゲルを粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得る粉砕工程と、上記粒子状吸水性樹脂を篩い分ける分級工程と、上記分級工程で得た粒子状吸水性樹脂から得られた粒子状吸水剤を整粒する整粒工程と、上記各工程において生成した生成物を他の工程に輸送する輸送工程とを含む。本製造方法では、上記粉砕工程、上記分級工程、上記整粒工程及び上記粉砕工程後における上記輸送工程から選択される一以上の工程が、減圧状態とされている。
【0018】
本発明に係る粒子状吸水剤の他の製造方法は、重合ゲルを得る重合工程と、上記重合ゲルを乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、上記乾燥物又は上記重合ゲルを粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得る粉砕工程と、上記粒子状吸水性樹脂を篩い分ける分級工程と、上記分級工程で得た粒子状吸水性樹脂の表面近傍を架橋して、粒子状吸水剤を得る表面架橋工程と、上記粒子状吸水剤を包装材容器に入れて包装する包装工程と、上記各工程において生成した生成物を、他の上記工程に輸送する輸送工程とを含む。本製造方法では、上記粉砕工程、上記分級工程、上記表面架橋工程、上記包装工程及び上記粉砕工程後における上記輸送工程から選択される一以上の工程が、減圧状態とされている。
【0019】
本発明に係る粒子状吸水剤の他の製造方法は、重合ゲルを得る重合工程と、上記重合ゲルを乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、上記乾燥物又は上記重合ゲルを粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得る粉砕工程と、上記粒子状吸水性樹脂を篩い分ける分級工程と、上記分級工程で得た粒子状吸水性樹脂の表面近傍を架橋して、粒子状吸水剤を得る表面架橋工程と、上記粒子状吸水剤を整粒する整粒工程と、上記粒子状吸水剤を包装材容器に入れて包装する包装工程と、上記各工程において生成した生成物を、他の上記工程に輸送する輸送工程とを含む。本製造方法では、上記粉砕工程、上記分級工程、上記表面架橋工程、上記整粒工程、上記包装工程及び上記粉砕工程後における上記輸送工程から選択される一以上の工程が、減圧状態とされている。
【0020】
好ましくは、上記粉砕工程が、減圧状態とされる。好ましくは、上記粉砕工程の次になされる輸送工程が、減圧状態とされる。
【0021】
好ましくは、上記粉砕工程以降の全ての工程が、減圧状態とされる。本発明の製造方法では、重合工程と、乾燥工程と、粉砕工程と、分級工程と、輸送工程とを必須として含み、これに加えて、必要に応じて表面架橋工程、冷却工程、整粒工程、包装工程、収集工程、及び造粒工程を含む。本発明において、粉砕工程以降の全ての工程とは、粉砕工程から、本製造方法において最後に行う工程(最終工程)までの全ての工程を意味するものとする。具体的には、分級工程、表面架橋工程、冷却工程、整粒工程、包装工程、及び輸送工程のうちで最後に行う工程が最終工程である。例えば、包装工程を含む製造方法の場合、粉砕工程以降の全ての工程とは、粉砕工程から包装工程までの工程を意味する。
【0022】
好ましくは、本発明の製造方法は、造粒工程を含む。
【0023】
好ましくは、上記粉砕工程以降の合計所要時間の50%以上が減圧状態とされる。例えば、上記粉砕工程から上記包装工程までの所要時間の50%以上が減圧状態とされる。即ち、好ましくは、上記粉砕工程から上記包装工程までに要する処理時間のうち、減圧状態とされている時間が50%以上とされる。本発明の製造工程における最終工程は、例えば、包装工程である。包装工程を有さない製造方法の場合における最終工程として、例えば、輸送工程、整粒工程等が挙げられる。
【0024】
好ましくは、上記輸送工程は、加圧による輸送工程を含む。好ましくは、上記粉砕工程以降の全ての工程が、減圧状態又は加圧状態とされている。なお、加圧状態とされている工程は輸送工程であるのが好ましい。輸送工程以外の工程は加圧状態とされないのが好ましい。
【0025】
好ましくは、上記減圧状態における工程内の、大気圧に対する減圧度が、0kPaを超えて10kPa以下とされる。
【0026】
好ましくは、本製造方法では、該粒子状吸水性樹脂は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の不定形破砕状粒子である。
【0027】
好ましくは、本製造方法では、上記重合工程を連続ニーダー重合又は連続ベルト重合により行う。
【0028】
好ましくは、本製造方法では、上記表面架橋工程が、オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物、多価アルコール化合物、オキセタン化合物よりなる群から選択される1種又は2種以上の脱水エステル化反応性表面架橋剤を用いて、150から250℃の範囲の温度で行われる。
【0029】
好ましくは、本製造方法では、該粒子状吸水剤の無加圧下吸水倍率(CRC)が15g/g以上であり、食塩水流れ誘導性(SFC)が30(×10−7・cm・s・g−1)以上である。
【0030】
好ましくは、本製造方法では、該粒子状吸水剤の150μm未満の微粉量が1重量%未満である。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、粉砕工程以降の工程内が減圧状態とされることにより、粒子状吸水剤の物性が向上する。また、減圧に伴う排気により、除湿がなされる。この除湿により、工程内における粒子状吸水性樹脂の吸湿が抑制される。よって、粒子状吸水性樹脂同士の凝集や、粒子状吸水性樹脂の装置等への付着が抑制され、生産が安定化しうる。更に本発明では、微粉が効果的に除去されうる。その結果、本発明の製造方法により得られた粒子状吸水剤は、通液性、加圧下吸水倍率等の諸物性に優れる。また、本発明により、製造工程で発生する微粉の外部への漏れが抑制されうる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の製造方法により粒子状吸水剤を製造するために用いられる製造設備が示された概略構成図である。
図2図2は、図1の製造設備に含まれる粉砕装置及び分級装置の概略構成が示された図である。
図3図3は、図1の製造設備に含まれる整粒装置の概略構成が示された図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明では、減圧が、粒子状吸水剤の物性を向上させうるという新たな知見が得られた。特に、粉砕工程以降の工程に要する時間のうちの50%以上が減圧状態とされている場合、効果が高いことが判明した。以下、本発明にかかる吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法について詳しく説明るが、本発明の範囲はこれらの説明に限定されない。
【0034】
(1)用語の定義
(a)「吸水性樹脂」
本明細書において、「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味し、以下の物性を有するものをいう。即ち、吸水倍率(CRC/実施例で規定)が、必須に5g/g以上、好ましくは10〜100g/g、更に好ましくは20〜80g/gであり、また、水可溶分(Extractables/ERT450.2−02(2002)で規定)が、必須に0〜50重量%、好ましくは0〜30重量%、更に好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜10重量%である高分子ゲル化剤をいう。なお、該吸水性樹脂は、全量(100%)が重合体である形態に限定されず、上記性能を維持する範囲において、後述する添加剤等を含んでいてもよい。
【0035】
(b)「ポリアクリル酸(塩)」
本明細書において、「ポリアクリル酸(塩)」とは、繰り返し単位として、アクリル酸(塩)を主成分とする重合体を意味する。具体的には、架橋剤を除く単量体として、アクリル酸(塩)を、必須に50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは、実質100モル%含む重合体を意味する。重合体としての塩は、必須に水溶性塩を含み、好ましくは一価塩、更に好ましくはアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩である。その中でも特にアルカリ金属塩が好ましく、更にはナトリウム塩が好ましい。
【0036】
(c)「吸水剤」
本明細書において、「吸水剤」とは、吸水性樹脂を主成分とする水性液のゲル化剤を意味する。なお、前記水性液としては、水に限らず、尿、血液、糞、廃液、湿気や蒸気、氷、水と有機溶媒及び/又は無機溶媒との混合物、雨水、地下水等であってもよく、水を含めば特定に制限されるものではない。中でも前記水性液としては、より好ましくは、尿、特に人尿を挙げることができる。本発明に係る吸水性樹脂(ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂)の含有量は、全体に対して、好ましくは70〜99.9重量%であり、より好ましくは80〜99.7重量%であり、さらに好ましくは90〜99.5重量%である。吸水性樹脂以外のその他の成分としては、吸水速度や粉末(粒子)の耐衝撃性の観点から、水が好ましく、必要により後述の添加剤が含まれる。
【0037】
(d)「EDANA」および「ERT」
「EDANA」は、European Disposables and Nonwovens Associationの略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)の吸水性樹脂の測定法(ERT/EDANA Recomeded Test Methods)の略称である。本明細書においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)を参照して、吸水性樹脂の物性を測定している。
【0038】
(e)粒子
本明細書において、「粒子」とは、篩分級で規定される粒径が5mm以下の流動性を有する固体を意味する。固体であれば、含水率について特に制限されないが、通常、30重量%未満、更に好ましくは20重量%以下である。また、粒径の下限としては、例えば、1nmである。更に、粉体として一定の流動性を有していればよく、例えば、Flow Rate(ERT450.2−02)が測定可能な固体、あるいは(ERT420.2−02)で篩分級が可能な固体を意味する。固体の形状については、特に制限されず、不定形破砕状粒子、球状、略球状やそれらの造粒物(凝集物)が挙げられるが、好ましくは、不定形破砕状粒子が含まれる。
【0039】
なお、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、X以上Y以下であることを示す。また、重量を示す「1トン(1t)」は、1メトリック・トン(1 Metoric ton)であることを指す。
【0040】
(2)粒子状吸水剤の製造方法
図1は、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造設備2の一例が示された概略構成図である。本実施形態に係る製造工程は、重合工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、冷却工程、整粒工程及び充填工程を含む。更にこの製造方法は、上記各工程において生成した生成物を次の工程に輸送する輸送工程を含む。これらの工程の全てが必須ではない。本発明は、少なくとも、重合工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、及び輸送工程を含む。
【0041】
この製造設備2は、上記重合工程がなされる重合装置4a、上記乾燥工程がなされる乾燥装置4b、上記粉砕工程がなされる粉砕装置4c、上記分級工程がなされる分級装置4d、上記表面架橋工程がなされる混合装置4e及び加熱装置4f、上記冷却工程がなされる冷却装置4g、上記整粒工程がなされる整粒装置4h並びに上記充填工程がなされる充填装置4iを備えている。更に設備2は、微粉を収集する収集工程を行うための微粉捕捉装置6を備えている。この製造設備2では、これら各装置が配管8で連結されている。この製造設備2は、粒子状吸水剤を連続的に製造しうる。更に、この製造設備2には、上記収集工程で収集された微粉を造粒する造粒工程がなされる造粒装置4jが設けられている。
【0042】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0043】
[重合工程]
重合工程は、重合により吸水性樹脂となりうる単量体(以下、モノマーとも称することもある)を重合させて重合ゲルを生成させる工程である。本発明にかかる製造方法で用いる重合法としては、特に限定されるものではないが、例えば、バルク重合、沈殿重合、水溶液重合、逆相懸濁重合等が挙げられる。性能面及び重合制御の容易さから、モノマーが水溶液とされて用いられうる水溶液重合または逆相懸濁重合が好ましい。上記重合工程を行う重合装置4aとしては特に制限はなく、従来公知のものを使用できる。
【0044】
上記モノマーは特に限定されないが、例えば以下に示すようなものが挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等の、アニオン性不飽和単量体およびその塩;メルカプト基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の、アミド基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体;等である。これらモノマーは単独で用いられてもよく、適宜2種以上が混合されて用いられてもよい。得られる吸水性樹脂の性能及びコストの点から、吸水性樹脂はポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が好ましく、そのためモノマーは、アクリル酸および/またはその塩(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、アミン類等の塩、中でもコスト面からナトリウム塩が好ましい)を主成分として用いることが好ましい。アクリル酸および/またはその塩の使用量は全モノマー成分(後述する内部架橋剤は除く)に対して70モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である(上限は100モル%である)。なお、前記モノマーが酸基含有単量体の場合、その中和率には特に制限はなく、必要に応じて、重合後に重合ゲルが中和されてもよい。衛生用品など人体に触れる可能性のある用途では、重合後の中和は必要とされない。この中和率は、40モル%以上90モル%以下が好ましく、50モル%以上80モル%以下がより好ましい。
【0045】
重合工程において前述のモノマーを水溶液とする場合、該水溶液(以下、「モノマー溶液」と称することもある)中のモノマーの濃度は、特に限定されるものではないが、10〜70重量%の範囲内が好ましく、20〜60重量%の範囲内がさらに好ましい。また、上記水溶液重合または逆相懸濁重合を行う際には、水以外の溶媒が必要に応じて併用されてもよい。なお、併用される溶媒の種類は、特に限定されるものではない。更に、これらのモノマーに、重合禁止剤や鉄分を含んでいてもよい。前記鉄分の含有量としては、5重量ppm以下が好ましく、1重量ppm以下がより好ましい。また、前記の重合禁止剤としては、特に制限されないが、例えば、メトキシフェノール類が好ましく使用することができる。この場合、重合禁止剤の使用量としては、160重量ppm以下であり、米国特許第7049366号に開示されている。
【0046】
重合工程においては、例えば、ラジカル重合開始剤を用いることができる。このラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、重合させるモノマーの種類、重合条件等に合わせて、通常の吸水性樹脂の重合において利用されているものの中から1種または2種以上が選択されて使用されればよい。例えば、熱分解型開始剤(例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド等のアゾ化合物;など)や、光分解型開始剤(例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物など)等を挙げることができる。これらのなかでも、コスト面および残存モノマー低減能から、熱分解型開始剤が好ましく、過硫酸塩が特に好ましい。また、還元剤の併用はこれらラジカル重合開始剤の分解を促進しうるので、両者を組み合わせてレドックス系開始剤とすることもできる。前記の還元剤としては、特に限定されないが、例えば、亜硫酸(塩)(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等)、亜硫酸水素(塩)(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム等)、ピロ亜硫酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、亜二チオン酸(塩)、三チオン酸(塩)、四チオン酸(塩)、チオ硫酸(塩)、ジメチルスルホキサイド、亜リン酸(塩)、亜硝酸(塩)、二酸化チオ尿素、アミノ酸、アミン類(エタノールアミンなど)等が挙げられる。より好ましくは、光分解型開始剤と熱分解型開始剤を併用することである。前述の重合工程に用いられるラジカル重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、モノマーの使用量に対して、通常、0.001〜2重量%であることが好ましく、0.01〜0.5重量%であることがより好ましい。該モノマーの使用量に対するラジカル重合開始剤の使用量が0.001重量%未満であることは、未反応のモノマーが多くなり得られる吸水性樹脂中の残存モノマー量が増加してしまうという点で好ましくない。一方、該使用量が2重量%を超えることは、得られる吸水性樹脂中の水可溶成分が増加してしまうという点で好ましくない。なお、この重合工程においては、前述のラジカル重合開始剤の代わりに、放射線、電子線、紫外線などの活性エネルギー線が照射されて、モノマーが重合されてもよい。
【0047】
重合工程においては、必要に応じて、内部架橋剤を用いることができる。内部架橋剤としては、1分子内に2個以上の重合性不飽和基や2個以上の反応性基を有する従来公知の内部架橋剤が挙げられる。具体的には、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリアリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかから、反応性を考慮して、1種または2種以上が用いられうる。特に、内部架橋剤としては、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物が好ましい。内部架橋剤の使用量は、所望する吸水性樹脂の物性により適宜決定されればよいが、通常、内部架橋剤の使用量は、モノマーに対して0.001〜5モル%の範囲がよい。内部架橋剤の使用量が少なすぎると、重合ゲルの強度が低下し可溶分が増加する傾向にあり、逆に多すぎると吸水倍率等の物性が低下する傾向にある。なお、内部架橋剤は、反応系に一括添加されてもよく、分割添加されてもよい。
【0048】
重合工程においては、さらに必要に応じて、反応系に、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒などの各種発泡剤;澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子;各種界面活性剤;次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤;などが、本発明の効果を損なわない範囲(例えば、モノマー100重量部に対して、各種発泡剤は30重量部以下、親水性高分子は30重量部以下、連鎖移動剤は1重量部以下)で適宜添加されてもよい。
【0049】
重合工程における重合温度は、特に限定されないが、通常、10〜140℃とされるのが好ましい。重合温度が10℃未満であると、重合時間が長くなり生産性が低下するのみならず、吸水性樹脂の物性も低下する恐れがある。一方、140℃を超えると、吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。重合時間も、特に限定されないが、モノマー及び重合開始剤の種類、重合温度などに応じて適宜決定されればよい。また、前述の重合は、通常、装置および操作の容易さ等の観点から常圧下で行われるが、重合系の沸騰温度を下げるために、この重合が減圧されて行われるのも好ましい態様である。
【0050】
この製造方法では、性能面及び重合制御の容易性の観点から、例えば、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレートを含むアクリル酸部分ナトリウム塩水溶液からなるモノマー溶液に、熱分解型開始剤としての過硫酸ナトリウムと還元剤としてのL−アスコルビン酸とが混合された後、この混合液がサイドに堰を有する平面スチールベルトに供給されつつ、このベルト上で連続的に水溶液重合がなされてもよい。このような重合方法は、ベルト重合とも称される。このベルト重合以外の重合方法として、米国特許6867269号の実施例1に記載の連続ニーダー重合が用いられてもよい。この場合においても、所望の性能を有する吸水性樹脂が得られうる。
【0051】
即ち、本発明においては、上記重合工程を連続ニーダー重合又は連続ベルト重合により行うことが好ましい。かような場合には、続く乾燥工程等において高物性の不定形破砕状粒子が高生産性で得られるが、続く粉砕工程等で微粉や粉塵が発生しやすい。しかし、かかる問題を解決するために、本発明を好ましく適用することができる。上記連続ニーダー重合は、例えば、米国特許第6987151号明細書及び米国特許第6710141号明細書等に開示され、また、上記連続ベルト重合は、例えば、米国特許第4893999号明細書、米国特許第6241928号明細書及び米国特許出願公開第2005−215734号明細書等に開示されている。
【0052】
[乾燥工程]
乾燥工程は、前述の重合工程で得られた重合ゲル(含水ゲル状重合体)を乾燥する工程である。重合工程で得られた重合ゲルは、通常、解砕処理により0.1〜5mm程度の粒子状の状態にして、乾燥工程に供されることが好ましい。粒子状のゲルとすることにより、ゲルの表面積が大きくなるため、上述した乾燥工程が円滑に進行しうる。解砕手段は特に制限されないが、例えば、ミートチョッパー、ローラー型カッター、ギロチンカッター、スライサー、ロールカッター、シュレッダー、ハサミなどの各種の切断手段を単独でまたは適宜組み合わせて使用することができる。該乾燥工程における乾燥方法は特に限定されないが、上記乾燥装置4bとしての通常の乾燥機及び加熱炉を用いた方法が広く採用され、例えば、バンド乾燥機、攪拌乾燥機、流動層乾燥機などの1種または2種以上を好適に用いることができる。乾燥温度としては、比較的高い温度が設定されることが好ましく、具体的には、100〜250℃が好ましく、120〜220℃がより好ましく、150〜200℃がさらに好ましい。乾燥時間は特に限定されないが、得られる乾燥物が所望の固形分率となるような時間が設定されればよい。乾燥工程において得られる乾燥物の固形分率(180℃で3時間加熱した後の残存量)が、90重量%以上であるのが、粉砕のし易さの点で好ましい。一般に、重合ゲルの粒子径、乾燥温度、風量などにもよるが、生産効率の点から、乾燥時間は通常、2時間以内とすることが好ましい。
【0053】
即ち、乾燥工程において得られる乾燥物の固形分率が高められると、粉砕の際に、微粉や粉塵が発生しやすくなる。しかし、かかる問題を解決するために、高温・高固形分での乾燥に本発明を好ましく適用することができる。
【0054】
[粉砕工程]
粉砕工程は、重合ゲル又はその乾燥物を粉砕する工程である。粉砕は通常、乾燥工程で得られた重合ゲルの乾燥物に対して行うが、乾燥前の、重合工程で得られた重合ゲルに対して行っても良い。この粉砕により、粉砕物としての粒子状吸水性樹脂が得られる。粉砕は、所望の粒径(好ましくは、重量平均粒子径200〜800μm)の粒子状吸水性樹脂がより多く得られるように行うことが好ましい。粉砕方法については、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、粉砕装置4cとしては、例えば、ロールミル、ナイフミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミルなどが挙げられる。この粉砕により微粉が発生するので、粉砕工程で得られる粒子状吸水性樹脂には微粉が含まれる。
【0055】
即ち、粉砕工程で得られる粒子状吸水性樹脂は、不定形破砕状粒子となる。かかる形状は、比表面積が大きく、かつ、パルプへの固定も容易となるため、好ましい。また、粉砕工程においては、微粉や粉塵(ダスト)が発生しやすいが、かかる問題を解決するために、本発明を好ましく適用することができる。
【0056】
[分級工程]
分級工程は、前述の粉砕工程で得られた粉砕物を分級する工程である。分級工程において、粉砕物が篩い分けられる。この分級工程において、所望の粒径(好ましくは、重量平均粒子径200〜800μm)を有する粒子を選択して目的とする粒子状吸水性樹脂が得られうる。分級方法については、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。上記分級工程を行う分級装置4dとしては、特に制限されないが、篩分級(金属篩、ステンレス鋼製)を用いることが好ましい。また、目的とする物性および粒度を達成するため、分級工程は複数枚の篩を同時に使用することが好ましい。なお、この分級工程において、粉砕物に微粉として含まれている粒子状吸水性樹脂が残存物として得られうる。
【0057】
[表面架橋工程]
本発明では、上記分級工程の後に、表面架橋工程を行うことが好ましい。表面架橋工程は、前述の分級工程で得られた粒子状吸水性樹脂の表面近傍を表面架橋剤を用いて架橋して粒子状吸水剤を得る工程である。「表面架橋」とは、粒子状吸水性樹脂表面の架橋密度を増大させることを意味する。「表面近傍」とは、粒子状吸水性樹脂の表層の部分であり、その厚みが数10μm以下ないし全体の1/10以下である部分を指すが、この厚みは目的に応じて適宜決定される。かような表面架橋は、表面架橋工程前の吸水性樹脂からの無加圧下吸水倍率(CRC)の低下により確認されうる。
【0058】
表面架橋工程に用いられる表面架橋剤としては、米国特許第6228930号明細書、米国特許第6071976号明細書、米国特許第6254990号明細書等に例示されている従来公知の表面架橋剤が好適に用いられる。好ましくは、オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物、多価アルコール化合物、またはオキセタン化合物よりなる群から選択される脱水エステル化反応性表面架橋剤の1種または2種以上を用いることが好ましい。かかる表面架橋工程においては、高物性の粒子状吸水剤が得られるものの、脱水エステル化反応を高温下で行う必要があり、該粒子状吸水剤の含水率は低くなる。したがって、微粉や粉塵が発生することもあるが、かかる問題を解決するために、本発明を好ましく適用することができる。
【0059】
具体的には、特に限定されないが、2−オキサゾリジノン等の(モノ、ジ、またはポリ)オキサゾリジノン化合物(米国特許第6559239号);1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物(米国特許第5409771号明細書);エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;オキセタン化合物(米国特許出願公開第2002/72471)が挙げられる。中でも炭素数2〜10の多価アルコール及び炭素数2〜10のオキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。炭素数3〜8の多価アルコールが特に好ましい。この他、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物やそれらの無機塩ないし有機塩(アジリジニウム塩など);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物又は塩化物等の多価金属化合物;等を用いてもよい。これら表面架橋剤は単独で用いてもよく、反応性を考慮して2種類以上が混合されて用いられてもよい。なお、表面架橋工程は、その効果を考慮して2回以上行ってもよく、その場合、2回目以降に用いられる表面架橋剤に、1回目と同一の表面架橋剤が用いられてもよいし、1回目の表面架橋剤とは異なる表面架橋剤が用いられてもよい。
【0060】
表面架橋工程において、前述の表面架橋剤の使用量は、選定される表面架橋剤、表面架橋剤の組み合わせ等にもよるが、粒子状吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内が好ましく、0.01〜5重量部の範囲内がより好ましい。この範囲で表面架橋剤が用いられることにより、粒子状吸水剤の表面近傍の架橋密度を内部のそれよりも高くすることができる。表面架橋剤の使用量が10重量部を超える場合は、不経済であるばかりか、粒子状吸水性樹脂に最適な架橋構造を形成する上で架橋剤の供給が過剰であるので、好ましくない。表面架橋剤の使用量が0.001重量部未満の場合は、粒子状吸水剤の加圧下吸水倍率等の性能を向上させる上で、充分な改良効果が得られないので、好ましくない。
【0061】
表面架橋工程では、粒子状吸水性樹脂と表面架橋剤との混合にあたり、溶媒として水を用いることが好ましい。水の使用量は、吸水性樹脂の種類、粒子状吸水性樹脂の粒径、含水率等にもよるが、粒子状吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、0重量部を超え、20重量部以下が好ましく、0.5〜10重量部の範囲内がより好ましい。粒子状吸水性樹脂と表面架橋剤との混合にあたり、必要に応じて、親水性有機溶媒が併用されてもよい。ここで併用されうる親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂の種類、粒子状吸水性樹脂の粒径、含水率等にもよるが、粒子状吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、10重量部以下の範囲内がより好ましい。
【0062】
表面架橋を行うに際しては、水及び/又は親水性有機溶媒と表面架橋剤とが予め混合されて水溶液を得た後、次いで、その水溶液が粒子状吸水性樹脂に噴霧又は滴下されて混合される方法が好ましく、噴霧による混合方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさとしては、平均粒子径で0.1〜300μmの範囲内が好ましく、0.1〜200μmの範囲がより好ましい。
【0063】
粒子状吸水性樹脂と、上記表面架橋剤、水及び親水性有機溶媒との混合に、上記混合装置4eが用いられる。この混合装置4eは、両者を均一かつ確実に混合するために、大きな混合力を備えているのが好ましい。この混合装置4eとしては、例えば円筒型混合機、二重壁円錐混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型ニーダー、粉砕型ニーダー、回転式混合機、気流型混合機、タービュライザー、バッチ式レディゲミキサー、連続式レディゲミキサー等が好適である。
【0064】
表面架橋工程において、表面架橋反応は、室温でも進行しうる。ただし、反応の促進並びに添加された水及び溶媒の除去の観点から、粒子状吸水性樹脂と表面架橋剤との混合後、さらに、加熱処理を行い、粒子状吸水性樹脂の表面近傍を架橋させることが好ましい。すなわち、粒子状吸水性樹脂の表面近傍で架橋剤を反応させるには、架橋剤の反応性、製造装置の簡易性、生産性等を考慮すると加熱処理が行われるのが好ましい。該加熱処理において、処理温度は、選定される表面架橋剤にもよるが、80℃以上が好ましい。処理温度が80℃未満の場合には、加熱処理に時間がかかるので、生産性の低下が引き起こされる上に、均一な表面架橋が達成されない。この場合、粒子状吸水剤の、加圧下における吸収特性が低下する上に、未反応の表面架橋剤の残存が懸念される。処理温度が250℃を超える場合は、粒子状吸水性樹脂の劣化が引き起こされて表面架橋された粒子状吸水剤の性能が低下する為、好ましくない。この観点から、処理温度(熱媒温度または材料温度/特に熱媒温度)としては、好ましくは100〜250℃の範囲内、より好ましくは150〜250℃の範囲内(特に上記脱水エステル化反応性表面架橋剤では好適)である。加熱時間としては、1分〜2時間の範囲内が好ましい。加熱温度と加熱時間の組み合わせの好適例としては180℃で0.1〜1.5時間、200℃で0.1〜1時間である。
【0065】
上記加熱処理を行う加熱装置4fとしては、公知の乾燥機又は加熱炉が用いられる。例えば、伝導伝熱型、輻射伝熱型、熱風伝熱型、誘電加熱型の乾燥機又は加熱炉が好適である。具体的には、ベルト式、溝型攪拌式、スクリュー式、回転型、円盤型、捏和型、流動層式、気流式、赤外線型、電子線型の乾燥機又は加熱炉が挙げられる。
【0066】
表面架橋工程では、加熱処理は静置状態又は撹拌下で行なわれうる。撹拌下で加熱処理が実施される場合、粒子状吸水性樹脂と表面架橋剤との混合がなされた混合装置内で混合物が加熱されて表面架橋が完成させられてもよいし、例えば2軸溝型撹拌乾燥装置に混合物を投入して、該混合物が加熱されて表面架橋が完成させられてもよい。
【0067】
[冷却工程]
冷却工程は、表面架橋工程の後、任意に実施される工程であり、例えば、米国特許第6378453号明細書等に開示されている工程である。この冷却工程は、前述の表面架橋工程で加熱され表面近傍が架橋されて得られる粒子状吸水剤が、後述する整粒工程に投入される前に、冷却させられる工程である。この冷却工程で用いられる上記冷却装置4gとしては、特に制限はないが、例えば、内壁その他の伝熱面の内部に冷却水が通水されている2軸撹拌乾燥機等が用いられうる。この冷却水の温度は、加熱温度未満とされ、好ましくは25℃以上80℃未満とされる。上記表面架橋工程において、粒子状吸水性樹脂の表面架橋が室温で実施される場合がある。この場合、表面架橋により得られる粒子状吸水剤は加熱されないので、この冷却工程は実施されなくてもよい。この冷却工程は、必要によりこの製造方法にさらに含まれていてもよい他の工程である。
【0068】
[添加剤の添加工程]
本発明では、上記表面架橋剤以外の添加剤を添加する添加工程がさらに設けられてもよい。この添加工程は、上記重合工程以降に設けられるのが好ましく、上記乾燥工程以降に設けられるのがより好ましい。上記冷却工程又はその他の工程において、添加剤が添加されてもよい。この添加剤としては、例えば、下記の(A)消臭成分(好ましくは植物成分)、(B)多価金属塩、(C)無機粒子((D)複合含水酸化物を含む)、(E)通液性向上剤、(F)その他の添加物等が添加されてもよい。この添加により、粒子状吸水剤に種々の機能が付与されうる。更に、この粒子状吸水剤には、下記の(G)キレート剤が添加されてもよい。かかる添加剤の使用工程では高物性(例えば、高SFC)の吸水剤を得られるが、添加剤自身が粉塵となる場合もある。したがって、かかる問題を解決するために、本発明を好ましく適用することができる。
【0069】
この製造方法では、上記(A)〜(E)及び(F)の使用量は、目的及び付加機能によっても異なるが、通常、その1種類の添加量として、吸水性樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.001〜5質量部、さらに好ましくは0.002〜3質量部の範囲である。通常、この添加量が0.001質量部より少ない場合、添加剤による十分な効果及び付加機能が得られず、この添加量が10質量部を超える場合、添加量に見合った効果が得られないか、吸水性能が低下してしまう。
【0070】
(A)消臭成分
本発明の製造方法で得られる粒子状吸水剤は、消臭性を発揮させるために、上記量で消臭成分、好ましくは植物成分を配合することができる。植物成分としては、好ましくはポリフェノール、フラボン及びその類、カフェインから選ばれる少なくとも1種の化合物であるのが好ましく、タンニン、タンニン酸、五倍子、没食子及び没食子酸から選ばれる少なくとも1種の化合物であるのがさらに好ましい。これら植物成分以外に、粒子状吸水剤に添加されうる植物成分を含んだ植物としては、例えば、ツバキ科の植物ではツバキ、ヒカサキ、モッコク等が挙げられ、イネ科の植物ではイネ、ササ、竹、トウモロコシ、麦等が挙げられ、アカネ科の植物ではコーヒー等が挙げられる。本発明において用いられる植物成分の形態としては植物から抽出したエキス(精油)、植物自体、植物加工業や食物加工業における製造工程で副生する植物滓及び抽出滓等が挙げられるが、特に限定されない。
【0071】
(B)多価金属塩
本発明の製造方法で得られる粒子状吸水剤には、通液性及び吸湿時の粉体流動性の向上の目的で、多価金属塩が配合されうる。この多価金属塩の好ましい量は、上記の通りである。この多価金属塩としては、有機酸の多価金属塩及び無機の多価金属塩が例示される。好ましい無機の多価金属塩として、例えば、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどが挙げられる。また、尿などの吸収液との溶解性の点から、これらの結晶水を有する塩を使用するのが好ましい。特に好ましいくは、アルミニウム化合物である。このアルミニウム化合物の中でも、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウムが好ましく、硫酸アルミニウムが特に好ましい。硫酸アルミニウム18水塩、硫酸アルミニウム14〜18水塩などの含水結晶の粉末は、最も好適に使用することができる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用して用いても良い。上記多価金属塩は、ハンドリング性及び粒子状吸水剤との混合性の観点から、溶液状態で用いられることが好ましく、特に水溶液状態で用いられるのが好ましい。
【0072】
その他、用いられる有機酸の多価金属塩及びその混合方法は、例えば、米国特許第7282262号に例示されている。本発明に用いられる、その分子内に炭素数が7個以上ある有機酸の多価金属塩としては、脂肪酸、石油酸、高分子酸等のアルカリ金属塩以外の金属塩がある。該有機酸の多価金属塩を構成する有機酸としては、カプロン酸、オクチル酸、オクチン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の長鎖又は分枝の脂肪酸;安息香酸、ミリスチシン酸、ナフテン酸、ナフトエ酸、ナフトキシ酢酸等の石油酸;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスルホン酸等の高分子酸;が例示できるが、分子内にカルボキシル基を有する有機酸であるのが好ましく、より好ましくはカプロン酸、オクチル酸、オクチン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、牛脂肪酸やヒマシ硬化脂肪酸等の脂肪酸である。さらに好ましくは分子内に不飽和結合を有しない脂肪酸で、例えば、カプロン酸、オクチル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸である。最も好ましくは、炭素数が12個以上で分子内に不飽和結合を有しない長鎖脂肪酸で、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸である。
【0073】
(C)無機粒子
本発明の製造方法で得られる粒子状吸水剤は、吸湿時のブロッキング防止のために無機粒子、特に水不溶性無機粒子を配合することができる。本発明に使用される無機粉末としては、具体的には例えば、二酸化珪素や酸化チタン等の金属酸化物;天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩);カオリン;タルク;クレー;ベントナイト等が挙げられる。このうち二酸化珪素及び珪酸(塩)がより好ましく、コールターカウンター法により測定された平均粒子径が0.001〜200μmの二酸化珪素及び珪酸(塩)がさらに好ましい。
【0074】
(D)複合含水酸化物
本発明の製造方法で得られた粒子状吸水剤には、優れた吸湿流動性(吸水性樹脂又は吸水剤が吸湿した後の粉体の流動性)を示し、さらに、優れた消臭機能を発揮させるために亜鉛と珪素、又は亜鉛とアルミニウムを含む複合含水酸化物が配合されていてもよい。
【0075】
(E)通液性向上剤
通液性向上剤とは、非水溶性無機微粒子、水溶性多価金属塩、水溶性高分子、ポリアミン等の、後述する食塩水流れ誘導性(SFC)が6(×10−7・cm・s・g−1)以上である吸水性樹脂又は吸水剤の食塩水流れ誘導性(SFC)を10(×10−7・cm・s・g−1)以上向上させる添加剤をいう。したがって、前述の(A)〜(D)に例示された添加剤であっても、この通液性向上剤に該当する場合もある。この製造方法では、この通液性向上剤は、水溶性多価金属化合物又はポリカチオン化合物であるのが好ましい。具体的には、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物及びアミノ基を有する化合物からなる群より選択される1種以上の化合物であるのがより好ましい。より具体的には、例えば硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、(ポリ)塩化アルミニウム、これらの水和物等の、水溶性の多価金属化合物;高分子ポリアミン化合物、好ましくは水溶性高分子ポリアミン、より具体的には重量平均分子量200〜1000000のポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の、ポリカチオン化合物;シリカ、アルミナ、ベントナイト等の、非水溶性の無機微粒子;などが挙げられ、これらの1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン等の水溶性多価金属塩が、食塩水流れ誘導性(SFC)を向上させる点で好ましい。また、通液性向上剤は、吸水性樹脂表面全体により均一に添加しやすく、通液性向上剤の偏析等がない点から、水溶液であることが好ましい。通液性向上剤は、吸水性樹脂に対して、0.001〜10重量%の割合で用いることが好ましく、0.01〜5重量%の割合で用いることがより好ましい。
【0076】
(F)その他の添加物
本発明の製造方法で得られた粒子状吸水剤には、必要に応じて、例えば、消毒剤、抗菌剤、香料、各種の無機粉末、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料、酸化剤、還元剤、水性塩類等を、本発明の効果を損なわない範囲(例えば、粒子状吸水剤100重量部に対して、30重量部以下、さらには10重量部以下)で適宜添加し、これにより、種々の機能を付与させることもできる。
【0077】
(G)キレート剤
本発明で用いられる粒子状吸水剤は、キレート剤を含んでも良い。キレート剤を混合する工程は特に限定されないが、前記単量体又は単量体溶液に、キレート剤を混合することが好ましい。上記キレート剤としては、高分子キレート剤及び非高分子キレート剤が例示される。好ましくは、酸基含有非高分子キレート剤であり、さらに好ましくは、リン酸ないしカルボン酸基を含む非高分子キレート剤が用いられる。この非高分子キレート剤に含まれる酸基の数は、2〜100個、さらには2〜50個、特に2〜10個である。このキレート剤が、窒素含有する非高分子キレート剤が用いられ、また、窒素を含むキレート剤も好適に用いられうる。このキレート剤としては、例えば、イミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、ジアミノプロパノール四酢酸、エチレンジアミン−2−プロピオン酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン二酢酸およびこれらの塩等のアミノカルボン酸系金属キレート剤;エチレンジアミン−N,N’−ジ(メチレンホスフィン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスフィン酸)、ニトリロ酢酸−ジ(メチレンホスフィン酸)、ニトリロジ酢酸−(メチレンホスフィン酸)、ニトリロ酢酸−β−プロピオン酸−メチレンホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン−N,N’−ジ酢酸−N,N’−ジ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン−N,N’−ジ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ポリメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、およびこれらの塩等のリン化合物が挙げられる。キレート剤の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して10質量ppm以上、1000質量ppm以下が好ましい。
【0078】
上記(B)〜(E)に例示した添加剤は、水溶液や水分散液として添加してもよい。また、該添加剤が固体の場合、粉体(粒径が300μm以下が好ましい)として、吸水性樹脂に乾式混合してもよい。
【0079】
また、上記(B)及び(E)は、表面処理剤として好適に用いられうる。本願において表面処理とは、吸水性樹脂表面あるいは表面近傍の領域が、化学的あるいは物理的に修飾されていることを意味する。ここで、化学的修飾とは、何らかの化学結合を伴った修飾の状態を意味し、物理的修飾とは化学的な結合を伴わない、物理的な被覆、付着を意味する。表面処理における結合の形態は限定されない。また、表面処理は、上述した表面架橋を含む概念である。さらに、上記の表面架橋剤による表面架橋以外にも、例えば3価アルミニウムのような多価金属による、表面カルボキシル基のイオン結合による表面架橋も、表面処理に含まれる。これらの表面架橋は吸水性樹脂と共有結合あるいはイオン結合のような化学的結合を伴った化学的修飾である。一方、物理的な修飾とは、同じく吸水性樹脂表面あるいは表面近傍が、吸水性樹脂と共有結合あるいはイオン結合のような化学的結合の形態をとらず、単なる物理的付着で修飾されている状態を示す。このような状態も、本願における表面処理に含まれる。例えば、先に述べた多価アルコールで被覆されている状態や、水溶性多価金属塩で化学的結合を伴わない状態で被覆されている状態は、表面処理された状態である。
【0080】
特に本発明では、通液性を向上させる添加剤として多価金属塩が好ましい。多価金属塩は、添加後、混合されることが好ましい。混合する装置としては、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機、レディゲミキサーなどを挙げることができる。
【0081】
なお、多価金属塩は、水溶液として吸水性樹脂に混合されることが好ましい。水溶液の液滴の大きさは、適宜調整されうる。多価金属イオン(例えば、アルミニウムイオン)が吸水性樹脂粒子の内部に浸透・拡散することを防ぐ観点から、水溶液は、所定温度での飽和濃度に対して50%以上の濃度が好ましく、より好ましくは60%以上の濃度、さらに好ましくは70%以上の濃度、さらに好ましくは80%以上の濃度、特に好ましくは90%以上の濃度である。もちろん、飽和濃度(=飽和濃度に対して100%)であってもよいし、飽和濃度を超えた分散液でもよい。水溶液の温度は溶解度や粘度調整のため、沸点以下の範囲で適宜調整されるが、通常、室温程度で混合される。
【0082】
[整粒工程]
本発明では、整粒工程を設けてもよい。前述した粉砕工程及び分級工程において、その粒径が調整されたにも関わらず、冷却工程後の粒子状吸水剤には、大きな粒径を有する凝集物が含まれる場合がある。この凝集物は、主として、表面架橋剤の混合時や、表面架橋反応時において生成されうる。この整粒工程では、粒度が再調整される工程であり、この凝集物の解砕処理及び分級処理が行なわれる。このような整粒方法は、米国特許第7347330号明細書、米国特許出願公開第2005−011325号明細書等に開示されている。この解砕処理及び分級処理の順序及び回数は、特に限定されない。この整粒工程では、例えば、粒子状吸水剤に対して、先ず分級処理がなされる。この分級処理では、ふるいや気流分級機などの分級装置が用いられうる。この分級処理において、例えば、大きな目開きを有する篩いが用いられることにより、粒径の大きな凝集物が得られうる。このようにして、粒径の大きな凝集物が除かれた後、小さな目開きを有する篩いが用いられることにより、その粒径が小さい微粉が除去される。この分級処理により得られる凝集物には、解砕処理がなされうる。この解砕処理により、凝集物を構成する粒子が個々の粒子に解き分けられて一次粒子としての粒子状吸水剤が得られうる。この解砕処理には、例えばナイフカッター式解砕機が用いられる。この解砕処理により得られた解砕物に対しては、上記分級処理が再度実施される。この整粒工程では、その粒径が小さい微粉が除去されつつ、所望の粒径(好ましくは、重量平均粒子径200〜800μm)を有する粒子状吸水剤が得られうる。生産性の観点から、この整粒工程は、上記冷却工程の後に実施されるのが好ましい。この製造方法では、この解砕処理に用いられる装置及び分級処理に用いられる装置から、上記整粒装置4hが構成される。なお、この整粒工程において、微粉として含まれている粒子状吸水剤が残存物として得られうる。
【0083】
[包装工程]
本発明では、上述した整粒工程後に包装工程を設けてもよい。包装工程は、前述の整粒工程で整粒された粒子状吸水剤が包装される工程である。例えば、この包装工程では、ホッパーに移された粒子状吸水剤が、上記充填装置4iにより包装材容器に充填される。包装材容器としては、例えば、フレキシブルコンテナバック等の貯蔵バックが用いられる。この製造方法では、貯蔵バックに充填された粒子状吸水剤が、所定の検査を経て出荷される。
【0084】
[輸送工程]
この製造方法では、輸送工程は、上記各工程において生成した、重合ゲル、粒子状吸水性樹脂、粒子状吸水剤等の生成物を他の工程に輸送する工程である。この輸送工程では、例えば、上記各工程に設けられる各装置同士を連結する上記配管8内の圧力が制御されることにより、一の工程で生成した生成物が他の工程に輸送される。この製造方法では、例えば、空気輸送により重合ゲル、粒子状吸水性樹脂、粒子状吸水剤等の生成物が輸送される。なお、空気輸送に代えて、コンベア等の輸送機が用いられてもよい。即ち、一の工程において使用される装置と、他の工程において使用される他の装置とが、コンベア等のような輸送機を介して連結されることにより、一の工程で生成した生成物が、他の工程に輸送されてもよい。更に輸送工程では、重力による自然落下により輸送がなされてもよい。この製造方法では、例えば、輸送工程により、上記重合工程で生成した重合ゲルが上記乾燥装置4bに輸送される。輸送工程により、上記乾燥工程で乾燥された重合ゲルの乾燥物が上記粉砕装置4cに輸送される。輸送工程により、上記粉砕工程で得られた粒子状吸水性樹脂が上記分級装置4dに輸送される。輸送工程により、上記分級工程で篩い分けられた粒子状吸水性樹脂が上記混合装置4eに輸送される。輸送工程により、上記表面架橋工程でその表面部分が架橋された粒子状吸水剤が上記冷却装置4gに輸送される。輸送工程により、上記冷却工程で冷却された粒子状吸水剤が上記整粒装置4hに輸送される。あるいは、輸送工程により、上記分級工程で篩い分けられた粒子状吸水性樹脂から得られた粒子状吸水剤が上記整粒装置4hに輸送される。輸送工程により、上記整粒工程で整粒された粒子状吸水剤が上記充填装置4iに輸送される。あるいは、輸送工程により、上記冷却工程で冷却された粒子状吸水剤が上記充填装置4iに輸送される。この製造方法では、上記各工程以外の別の工程が含まれる場合においても、この別の工程で生成した生成物が輸送工程により上記各工程のいずれかに輸送されるのが好ましい。この製造方法によれば、粒子状吸水剤が連続的に製造されうる。輸送工程以外の各工程は、直接連結されてもよいが、輸送工程を介して連結されるのが好ましい。よって、輸送工程以外の工程数に相当する数の輸送工程が存在するのが好ましい。この観点から、輸送工程の数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、より好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。輸送工程の数の上限は適宜決定されるが、例えば、30以下、更には20以下とされる。複数の輸送工程において用いられている輸送装置は、同一の装置であってもよいし、異なる装置であってもよい。
【0085】
[収集工程]
本発明の製造方法は、収集工程を含むことが好ましい。前述したように、この製造方法では、上記粉砕工程における乾燥した重合ゲルの粉砕により、微粉が発生する。上記整粒工程における解砕処理においても微粉が発生する。さらに、上記輸送工程で輸送中にある粒子状吸水性樹脂及び粒子状吸水剤の摩耗等により、微粉が発生することがある。さらに、上記表面架橋工程における加熱処理以降のプロセスで粒子状吸水剤がダメージを受けることにより、微粉が発生することもある。さらには、後述する装置により捕捉された微粒子を走査型電子顕微鏡、X線マイクロアナライザー等によって観察すると、この微粉に混じって、長径20μm以上100μm以下の二酸化ケイ素等からなる無機微粒子の凝集物(ダスト)が存在することもある。このような凝集物(ダスト)の存在は、添加剤及び気体中の埃に起因する。収集工程により、微粉(吸水性樹脂)に加えてこの凝集物(ダスト)が除去されうる。この凝集物(ダスト)の除去により、作業環境が向上しうる。また、この凝集物(ダスト)の除去は、粒子状吸水剤の物性の向上に寄与しうる。
【0086】
この製造方法では、上記各工程のいずれかに微粉が存在しうる。微粉は、各工程がなされる各装置の内部及び配管8の内部に存在する気体に含まれうる。この製造方法では、上記各工程のいずれかにおいて、微粉は工程内の気体中に含まれている。収集工程は、この気体中の微粉を捕集材を用いて収集する工程である。前述したように、この収集工程では、上記微粉捕捉装置6が使用される。微粉捕捉装置6は、気体を吸引しうる装置を有している。この気体の吸引により、減圧状態が達成される。またこの吸引された気体を捕集材に通過させることにより、微粉が捕捉される。この製造方法では、微粉は、上記輸送工程により、上記微粉捕捉装置6に輸送される。微粉捕捉装置6は、1台が用いられてもよいし、2台以上が用いられてもよい。
【0087】
微粉とは、本発明の製造方法で得ようとする粒子状吸水剤の粒径よりも小さい粒径を有するものであり、従来は通常、廃棄物として処理されていたものである。後述するが、粒子状吸水剤の重量平均粒子径(D50)(JIS標準篩分級により規定)は200〜800μmであることが好ましく、例えば、本発明の製造方法で得られる粒子状吸水剤の重量平均粒子径(D50)は200〜450μmであることが好ましい。微粉は、得られる粒子状吸水剤の重量平均粒子径(D50)が前述した所望の範囲になるよう除かれた残存物であり、具体的には、微粉の重量平均粒子径(D50)は10〜150μmの範囲内にある。好ましくは、微粉は、実質150μm未満の粒子径(JIS標準篩分級により規定)を有する粒子を、70〜100重量%、さらには90〜100重量%含んでいることが望ましい。また、微粉の形状としては、例えば、逆相懸濁重合で得られた球形のもの及び水溶液重合で得られた不定形のものが挙げられる。また、微粉は、上記表面架橋処理が施されたものであってもよいし、施されていないものであってもよいし、それらの混合物であってもよい。
【0088】
好ましくは、微粉捕捉装置6は、捕集材を備えている。この捕集材は、フィルターである。この捕集材は、気体の通過によりこの気体に含まれる粒子(微粉等)を除去しうるように構成されている。好ましくは、この捕集材として、バッグフィルターが用いられる。このバッグフィルターは、一方側が開口した円筒状の袋である。
【0089】
この製造方法では、この微粉捕捉装置6は、第一配管8aにより、上記各工程で用いられる装置又はそれらを連結する配管のいずれかと繋げられる。図1に示されている微粉捕捉装置6では、第一配管8aは、図中矢印線S1からS20で示される箇所の少なくともいずれかと連結される。この第一配管8aは、S1からS20のいずれか一箇所に連結されてもよいし、S1からS20のうちの複数箇所に連結されていてもよいし、S1からS20の全ての箇所に連結されてもよい。この連結箇所は、微粉の発生状況が考慮されて適宜決められる。この連結により、上記工程のいずれかに存在する微粉が、第一配管8aを通じてこの微粉捕捉装置6に輸送される。第一配管8aは、複数箇所に連結できるように分岐していてもよい。
【0090】
この製造方法では、第一配管8aを通じて気体が微粉捕捉装置6に導入される。この導入に、後述される減圧状態が利用されてもよい。この気体は、上記捕集材を通過する。この通過により、微粉は、捕集材に捕捉される。この捕集材を通過した気体は、この微粉捕捉装置6の外側に排出される。捕集材に捕捉された微粉は、例えば振動により微粉が篩い落とされる。パルスエアーが吹き付けられることにより、この微粉が篩い落とされてもよい。そして好ましくは、篩い落とされた微粉は、第二配管8bを通じて、後述する造粒装置4jに輸送される。この微粉捕捉装置6は、微粉の収集効率に優れる。この製造方法によれば、製造過程で発生する微粉が、その飛散を防止しつつ、効率よく収集されうる。
【0091】
この製造方法では、第二配管8bを通じて、この微粉捕捉装置6で収集された微粉が排出される。好ましくは、この微粉捕捉装置6は、第二配管8bにより、造粒工程を行うための造粒装置4jに連結される。造粒工程の詳細については後述される。微粉を造粒して得られた造粒物は、配管8を経て、上記各工程で用いられる装置のいずれかと繋げられる。図1に示されている微粉捕捉装置6では、造粒装置4jは、重合装置4aと乾燥装置4bとを連結する配管8に連結されている。これにより、造粒された微粉は、第二配管8bを通じて乾燥工程に投入される。この製造方法では、微粉が廃棄されることなく再利用されうる。この再利用は、生産コストの削減に寄与しうる。
【0092】
この製造方法では、工程内に湿気が存在する場合であっても、この湿気が効果的に排出されうる。よって、粒子状吸水性樹脂同士の凝集や、粒子状吸水性樹脂の装置等への付着が抑制され、生産が安定化しうる。更に、この製造方法では、微粉が排除された気体が外部に排出されるので、微粉が粉塵として舞うことが抑制される。この製造方法では、良好な作業環境が維持されうる。
【0093】
さらに、この製造方法では、粒子状吸水剤から微粉が効率よく除去されるので、加圧下吸水倍率、通液性などの物性に優れる粒子状吸水剤が得られうる。しかも、この製造方法は微粉の収集効率に優れるので、この収集された微粉が有効に再利用されることにより、微粉の再利用という生産コスト上の効果も得られうる。
【0094】
この製造方法では、JIS12種カーボンブラック(粒径:0.03μm〜0.2μm)の捕集効率に優れる捕集材が、微粉捕捉装置6に用いられるのが好ましい。高い捕集効率を有する捕集材を備えた微粉捕捉装置6は、微粉の排出による作業環境の悪化を防止しうる上に、微粉を効率よく収集しうる。この観点から、この捕集効率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、99.9%以上がさらに好ましく、99.99%以上が特に好ましい。
【0095】
上記捕集材の捕集効率は、例えば、JIS B9908:2001形式1の方法により測定される。この捕集効率は、市販のダスト計により計測される、捕集材の通過前のダスト量及びその通過後のダスト量に基づいて実質的に得られうる。具体的には、図1の第一配管8a内のダスト量の計測により、捕集材を通過する前のダスト量W0(mg/m)が得られる。第二配管8b内のダスト量の計測により、捕集材を通過した後のダスト量Wf(mg/m)が得られる。このようにして得られたW0及びWfを用いて、下記計算式に基づいて捕集効率が算出される。なお、このダスト計としては、例えば、柴田科学製の商品名「P5Lデジタルダストメーター」が挙げられる。また、ここで測定されるダストには、吸水性樹脂の微粉および凝集物が含まれる。
【0096】
【数1】
【0097】
微粉が捕集材の内部に入り込んだ場合、微粉が捕集材を目詰まりさせてしまう。この目詰まりにより、気体がこの捕集材を通過しにくくなる。この観点から、微粉をその表面で捕捉しうる捕集材が好ましい。このような捕集材が用いられることにより、微粉が安定して捕集されうる上に、この捕集材の交換頻度の低減がなされうる。このような捕集材による微粉の収集工程を含む製造方法は、粒子状吸水剤の生産性に寄与しうる。この捕集材は特に限定されず、例えば、織布又は不織布からなるフィルタークロス及びメンブレンフィルターが挙げられ、特にメンブレンフィルターが好ましい。このメンブレンフィルターは、メンブレンと基材とを含んでいる。メンブレンは多数の微細な穴又は微細な隙間を含んでいる。これらの穴又は隙間は、厚さ方向に連続している。このメンブレンは、気体を通過させうる。メンブレンは、基材に積層されている。基材は、メンブレンを支持しうる。図示されていないが、基材は多数の穴又は隙間を含んでいる。この基材は、気体を通過させうる。メンブレンに含まれる穴又は隙間の大きさは上記粒子状吸水剤の製造で発生する微粉の粒径よりも小さい。具体的には、メンブレンに含まれる穴又は隙間の大きさ(孔径)は、0.1〜20μmであり、メンブレンの厚さは0.001〜1mmである。また、基材に含まれる穴又は隙間の大きさ(孔径)は、メンブレンの孔径より大きければよく、特に制限されない。基材の厚さは1〜5mmである。かような範囲であれば、微粉がメンブレンの内部に入り込むことがなく、したがって、気体に含まれて微粉捕捉装置6に運ばれた微粉は、このメンブレンの表面で捕捉されうる。
【0098】
この製造方法では、微粉が、メンブレンの表面で捕捉されるので、メンブレンを通じて基材にまで到達しにくい。微粉の、メンブレンフィルターの内部への侵入が抑制されるので、この微粉によるメンブレンフィルターの目詰まりが防止されうる。すなわち、このメンブレンフィルターでは、メンブレンの表面に捕捉された微粉が物理的衝撃(例えば、パルス波)により簡単に除去されるため、メンブレンの使用前における質量と使用後における質量との差は小さい。この製造方法では、このメンブレンフィルターを通過する気体の単位時間あたりの量(以下、透過流束)が適切に維持されやすい。したがって、このメンブレンフィルターは、この微粉捕捉装置6の圧力損失の低下に寄与しうる。このメンブレンフィルターは、ランニングコストを低減しうる。これにより、この製造方法は、生産性に優れる。この製造方法では、粒子状吸水剤から微粉が効率よく除去されるので、加圧下吸水倍率、通液性などの物性に優れる粒子状吸水剤が得られうる。
【0099】
大きな透過流束が得られうるという観点から、上記基材として、織布、不織布、スポンジ等が例示される。汎用性の観点から、この基材としては、不織布が好ましい。この基材の材質としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ガラス繊維、アラミド繊維及びポリイミドが例示される。この基材の材質は、微粉捕捉装置6の運転条件等が考慮されて適宜決められる。
【0100】
この製造方法では、メンブレンの材質としては、特に制限されないが、メンブレン表面に捕捉された微粉が容易に振り払えうる(ダストリリース性に優れる)という観点から、ポリテトラフルオロエチレンであるのが特に好ましい。このポリテトラフルオロエチレンからなるメンブレンを備えるメンブレンフィルターは、この微粉捕捉装置6による微粉の収集効率の向上に寄与しうる。このようなメンブレンフィルターは、ランニングコストをさらに低減しうる。この製造方法は、生産性に優れる。この製造方法では、粒子状吸水剤から微粉が効率よく除去されるので、加圧下吸水倍率、通液性などの物性に優れる粒子状吸水剤が得られうる。
【0101】
前述したように、この製造方法では、上記冷却工程において、粒子状吸水剤に多価金属塩又は無機粒子を配合することができる。この配合により、粒子状吸水剤のブロッキングが防止されうる。この場合においても、メンブレンフィルターのメンブレンがその表面で微粉を捕捉しうるので、微粉の、メンブレンフィルターの内部への侵入が抑制されうる。このメンブレンフィルターは、耐久性に優れる。このメンブレンフィルターが用いられることにより、微粉捕捉装置6における捕集材の交換頻度がさらに低減されうる。したがって、このメンブレンフィルターは、ランニングコストを低減しうる。これにより、この製造方法は、生産性に優れる。
【0102】
[造粒工程]
本発明の好ましい製造方法は、造粒工程を含む。造粒工程は、微粉に水性液を添加して、造粒粒子を得る工程である。この微粉は、上記分級工程、上記整粒工程及び上記収集工程で得られうる。微粉の回収率を高める観点からは、上記収集工程で得られた微粉の全てがこの造粒工程に供されうるのが好ましい。造粒粒子は複数の微粉よりなる。造粒粒子の重量平均粒子径は、20mm以下、好ましくは0.3〜10mm、さらに好ましくは0.35〜5mmである。好ましくは、この造粒粒子は、上記乾燥工程に投入されて上記重合ゲルの共存下で乾燥させられる。後述されるように、好ましくは、この造粒工程では、上記減圧状態を行うための吸引によって捕集された微粉が用いられる。即ち、好ましくは、この造粒工程では、収集工程により捕集された微粉が用いられる。
【0103】
この造粒工程では、生じた造粒物が造粒粒子であることは、光学顕微鏡によって個々の粒子が形状を保ったまま複数集まり凝集している事実や、吸液時に複数の不連続粒子として膨潤する事実により確認できる。
【0104】
この造粒工程では、造粒粒子は、乾燥負荷の観点から、含水率が75重量%以下であることが好ましく、より好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは65重量%以下であるのがよい(下限は、0重量%を超え、好ましくは5重量%以上である)。造粒粒子の含水率が上記重合ゲルのそれよりも極端に高い場合、この造粒粒子と上記重合ゲルとが共存されて乾燥させられる際に部分的に乾燥が不完全となる恐れがある。
【0105】
この造粒工程で使用される水性液の溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、親水性有機溶剤(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等)を含んだ水溶液などが挙げられる。物性や造粒強度の観点から、水性液は、水を好ましくは90〜100重量%、より好ましくは99〜100重量%含んでいることが望ましく、水のみからなることが特に好ましい。上記水性液は、溶媒に添加剤が溶解されてもよい。この添加剤とは、熱分解型ラジカル重合開始剤、酸化剤および還元剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤である。また、前記水性液には、本発明の効果を損なわない範囲で、架橋剤、キレート剤、界面活性剤などの他の添加剤を少量含有させることもできる。例えば、架橋剤としては、前述したような表面架橋剤を用いることができる。水性液に架橋剤を含有させることで、水可溶成分の低減や造粒強度の向上が期待できる。
【0106】
この造粒工程において、上記添加剤として使用されうる熱分解型ラジカル重合開始剤としては、重合工程において例示した熱分解型開始剤を同様に好ましく使用することができる。これらの中でも、過酸化物が好ましく、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩が特に好ましい。これら熱分解型ラジカル重合開始剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。酸化剤としては、造粒粒子と上記重合ゲルとが共存されて乾燥させられる際にモノマーと反応しうるものであれば、特に制限されない。この酸化剤としては、例えば、塩素酸塩、臭素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩などの無機酸化剤、前記熱分解型ラジカル重合開始剤としても例示された過硫酸塩や過酸化水素、t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の無機過酸化物あるいは有機過酸化物などが挙げられる。これらの中でも、過硫酸塩、過酸化水素が好ましく、過硫酸塩が特に好ましい。これら酸化剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。還元剤は、特に限定されず、有機系還元剤であっても無機系還元剤であってもよい。この還元剤としては、好ましくは無機系還元剤がよく、特に、イオウ系、リン系、窒素系還元剤が好適である。具体的には、例えば、重合工程において例示した還元剤を同様に好ましく使用することができる。これらの中でも、イオウ系還元剤、特に、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜二チオン酸塩が好ましく、それらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましい。これらの中でも、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムが特に好ましい。これら還元剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。この添加剤としては、前述したなかでも、熱分解型ラジカル重合開始剤が好ましく、特に、過硫酸塩を添加剤とすることが、優れた残存モノマー低減効果を発揮しうる点で好ましい。
【0107】
この造粒工程において、上記水性液における上記添加剤の含有量は、特に限定されないが、微粉に対して0.0001〜1重量%であることが好ましい。0.0001重量%未満であると、充分に残存モノマーを低減できない恐れがあり、一方、1重量%を超えると、乾燥後に得られる最終的な粒子状吸水剤に着色が生じる恐れがある。また、前記添加剤(特に、熱分解型ラジカル重合開始剤)は、重合工程において使用されることがある。その場合、造粒前の微粉の量に対する前記水性液中の前記添加剤の含有量が、重合工程で添加される添加剤の量(モノマー成分の単位重量当たりに対する量)に対して、1〜500重量%であることが好ましく、5〜400重量%であることがより好ましく、10〜300重量%であることがさらに好ましい。なお、重合工程において前記添加剤が使用される場合、重合工程で添加される添加剤と水性液中に含有させる添加剤とは、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0108】
造粒工程では、前記水性液の使用量は、特に制限されないが、微粉100重量部に対し、25重量部以上、280重量部以下であることが好ましい。より好ましくは200重量部以下、さらに好ましくは150重量部以下である。水性液の使用量が280重量部を超えると、一体化した巨大なゲル状物が得られることとなり、該ゲル状物をさらに乾燥、粉砕して造粒粒子とする必要が生じ、しかも乾燥に多大な負荷がかかることになる。一方、水性液の使用量が25重量部よりも少ない場合、造粒強度が不充分になり、最終製品において優れた特性を発揮することができなくなるおそれがあるとともに、混合が不均一になり造粒が困難になるおそれがある。
【0109】
この造粒工程では、前記微粉を造粒するに際しては、前記微粉と前記水性液とを混合すればよいのであるが、特に、前記造粒に際し、前記水性液を予め加熱しておくことが好ましく、さらに、該加熱した水性液と前記微粉とを高速混合することにより造粒することが、好ましい態様である。これにより、一体化した巨大なゲル状物ではなく、直接粒径が制御された造粒粒子を得ることができ、その結果、ゲル状物をさらに乾燥、粉砕して造粒粒子とする必要がなくなるとともに、一体化した巨大なゲル状物が得られる場合に生じる問題、すなわち、混合に巨大な力が必要なったり、ゲル状の塊が混練状態となったりするため、主鎖の切断や絡まりなどによって、粒子状吸水剤自身が劣化するという問題を回避することができる。
【0110】
この造粒工程では、前記造粒の好ましい態様において、水性液の加熱の際の温度は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。また、該温度の上限は水性液の沸点以下であり、沸点は塩類や他の溶媒の添加、圧力(減圧・加圧)などを変化させて種々調整してよいが、温度が100℃を超えても大きな変化はないため、通常、100℃以下で行われる。なお、水性液を予め加熱しておく場合には、前記添加剤は、別途、室温または冷却下で比較的濃度の高い水溶液としておき、この水性液が、微粉との混合直前に、加熱しておいた比較的多量の水性液残部と混合されることが好ましい。
【0111】
この造粒工程では、前記造粒の好ましい態様においては、予め水性液を加熱することに加え、さらに、微粉自体も加熱されていることが好ましい。この微粉の加熱の際の温度も、通常、40℃以上、好ましくは50℃以上であり、100℃を超えても大きな変化はないため、通常、100℃以下で行われる。なお、微粉自体を加熱しておく場合、その手段は特に制限されず、例えば、乾燥による加熱ののち保温することにより行ってもよいし、別途外部から加熱するようにしてもよい。
【0112】
この造粒工程では、前記造粒の好ましい態様において、加熱された水性液と微粉とは高速混合される。高速混合とは、水性液と微粉との混合が完了し、造粒粒子が生成するまでの時間が短時間であることを意味する。すなわち、水性液と微粉との接触時点から造粒粒子が生成するまでの時間、言い換えれば混合時間が短時間であるということである。該混合時間は、好ましくは3分以下、より好ましくは1分以下であり、1秒から60秒が最も好ましい。混合時間が長い場合には、水性液と微粉との均一な混合が困難となり一体化した巨大なゲル状物となりやすい。また、混合時間が長いと、生じた造粒粒子を重合ゲルとともに乾燥工程に供されるまでの間に、水性液中に含有させた前記添加剤が分解してしまい、乾燥工程において充分な量の添加剤が存在しえないこととなる恐れがある。さらに、混合を長時間続けると、混合完了後に得られる粒子状吸水剤の水可溶分の増加や加圧下吸水倍率の低下など、粒子状吸水剤の性能低下を招く場合もある。
【0113】
この造粒工程では、高速混合を達成するための手段としては、加熱された水性液を、攪拌中の微粉に一気に投入することが挙げられる。すなわち、水性液を、例えば噴霧する等の方法で徐々に添加する場合には、途中で微粉が大きな凝集塊となったり、混練されたりして、粒子状吸水剤の劣化を生じるおそれがある。加熱された水性液の投入時間は、60秒以下であることが好ましく、30秒以下であることがさらに好ましく、10秒以下であることが最も好ましい。また、高速混合を達成するための手段として、上記とは逆に、微粉を攪拌中にある加熱された水性液に投入する方法も挙げられる。この場合も、微粉の投入時間が、60秒以下であることが好ましく、30秒以下であることがさらに好ましく、10秒以下であることが最も好ましい。また、高速混合を達成するための手段として、微粉と加熱された水性液とを同時に一気に混合する方法も挙げられる。この場合も、両者の投入時間が、60秒以下であることが好ましく、30秒以下であることがさらに好ましく、10秒以下であることが最も好ましい。また、両者を連続的に同時に投入し、高速混合して、連続的に造粒粒子を得ることも可能である。なお、前述のように、前記添加剤の分解を考慮すれば、造粒粒子と重合ゲルとを共存させて乾燥するまでの時間はできるだけ短い方が好ましく、重合工程で連続的に重合ゲルを得る場合、これに連続的に造粒粒子を混ぜ合わせて短時間に乾燥工程に送ることが好ましい態様である。
【0114】
(粒子状吸水剤)
本発明の製造方法により得られる粒子状吸水剤の、JIS標準篩分級により規定される重量平均粒子径(D50)は、好ましくは200〜800μm、より好ましくは200〜450μm、より好ましくは220〜430μm、さらに好ましくは250〜400μmである。また、本発明の粒子状吸水剤は特定の粒度分布を有する場合、最も効果を発揮し得る。好ましい粒度分布として、上下限850〜150μm(JIS標準篩;Z8801−1(2000)で規定)に占める粒子、すなわち、重量平均粒子径(D50)が150〜850μmである粒子の割合が、吸水剤全体に対して好ましくは90〜100重量%、さらには95〜100重量%、特に好ましくは98〜100重量%である。そして、150μm通過物、すなわち、粒子状吸水剤中に含まれる重量平均粒子径が150μm未満の微粉の含有量は、粒子吸水剤の全重量に対して、1重量%未満が好ましく、0.5重量%未満がより好ましい。粒度分布は、特定の範囲であることが好ましい。その対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20〜0.50、さらに好ましくは0.30〜0.40とされる。重量平均粒子径(D50)、150μm未満の粒子の含有率、および粒度の対数標準偏差(σζ)が前記範囲を外れると、通液性及び吸水速度が低下する場合がある。なお、対数標準偏差及び重量平均粒子径は、米国特許出願公開第2006/0204755号明細書で規定される。
【0115】
なお、本発明に係る粒子状吸水剤又は粒子状吸水性樹脂の粒子形状は限定されない。この粒子形状として、球状、略球状、(粉砕物である)不定形破砕状、棒状、多面体状、ソーセージ状(例;米国特許第4973632号)、皺を有する粒子(例;米国特許第5744564号)などが挙げられる。それらは一次粒子(single particle)でもよく、造粒粒子でもよく、一次粒子と造粒粒子との混合物でもよい。また、粒子は発泡した多孔質でもよい。好ましくは、不定形破砕状の一次粒子又はそれらの造粒物が挙げられる。
【0116】
異臭及び衛生の観点から、粒子状吸水剤の残存モノマー量は、0以上500ppm以下が好ましい。より好ましくは0以上400ppm以下、より好ましくは0以上300ppm以下、より好ましくは0以上250ppm以下、より好ましくは0以上200ppm以下、さらに好ましくは0以上150ppm以下、特に好ましくは0以上100ppm以下である。上記重合に使用されるモノマーの主成分がアクリル酸及び/又はその塩である場合、未反応のアクリル酸及び/又はその塩の含有量が500ppm以下であるのが好ましい。残存モノマー量の測定では、蓋付きプラスチック容器中の1000gの脱イオン水に、0.5gの吸水剤が加えられて2時間攪拌される。攪拌後、膨潤ゲル化した吸水剤が濾紙を用いて濾別され、濾液が液体クロマトグラフィーで分析される。一方、既知濃度のモノマー(アクリル酸)の溶液が同様に分析され、得られる検量線が外部標準とされる。この外部標準に基づき、濾液の希釈倍率が考慮されて残存モノマー量が求められる。
【0117】
以上、本発明は、表面架橋されたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、以下の物性を有する新規な粒子状吸水剤を提供する。また、以下の物性を有していれば、本発明の効果が顕著に発揮される。更に、以下の物性を有する粒子状吸水剤の製造方法に、好ましく適用することができる。
【0118】
粒子状吸水剤の、生理食塩水に対する無加圧下吸水倍率(CRC)は15g/g以上であるのが好ましい。一般に、無加圧下吸水倍率が15g/g未満である粒子状吸水剤がオムツ等の吸収性物品に使用されると、高物性が得られない恐れがある。一方、無加圧下吸水倍率が高いほど吸収性物品は高物性が得られるので特にその上限は制限されないが、製造が困難となる上にコストが高くなるという観点から60g/g以下とすることが好ましい。この無加圧下吸水倍率は、より好ましくは15〜50g/g、特に好ましくは25〜35g/gである。
【0119】
本発明の製造方法により得られる粒子状吸水剤は、4.8kPa荷重下での生理食塩水の加圧下吸水倍率(AAP:Absorbency against Presure)は、好ましくは15g/g以上、より好ましくは22g/g以上、さらに好ましくは24g/g以上、最も好ましくは25g/g以上である。一般に、加圧下吸水倍率が15g/g未満である粒子状吸水剤がオムツ等の吸収性物品に使用されると、高物性が得られない恐れがある。一方、加圧下吸水倍率が高いほど吸収性物品は高物性が得られるので特にその上限は制限されないが、製造が困難となる上にコストが高騰するという観点からこの加圧下吸水倍率の上限は35g/g以下とすることが好ましい。
【0120】
上記加圧下吸水倍率(AAP)は、米国特許第6071976号に記載の方法に従って得られうる。より詳細には、50g/cm(4.8kPa)での生理食塩水に対する加圧下吸水倍率(60分値)が測定されている。この測定は、23±2℃の環境下で行われる。
【0121】
本発明の製造方法で得られる粒子状吸水剤の通液性(SFC)は、粒子状吸水剤または吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値である。この通液性(SFC)の値が大きいほど、粒子状吸水剤は高い液透過性を有することを示している。微粉の除去により、通液性(SFC)の値が高められうる。この通液性(SFC)は、好ましくは30(×10−7・cm・s・g−1)以上であり、より好ましくは50(×10−7・cm・s・g−1)以上である。通液性(SFC)が30(×10−7・cm・s・g−1)未満の場合、オムツ等の吸収性物品中での粒子状吸水剤の濃度が30質量%以上、より具体的には50質量%以上の場合において、尿の吸収速度が遅くなり、漏れが引き起こされる恐れがある。本願において、この通液性(SFC)は、食塩水流れ誘導性とも称される。
【0122】
この製造方法では、前述した粒子状吸水剤の優れた物性が安定に保持されかつブロッキングが防止されうるという観点から、上記各工程において、乾燥された気体が通されるのが好ましい。この気体としては、その露点が−30℃以下であるのが好ましく、−35℃以下であるのがより好ましく、−40℃以下であるのが特に好ましい。乾燥された気体を通すことが困難な場合、加熱された気体が通されるのが好ましい。加熱方法としては、特に限定されないが、気体が熱源を用いて直接加熱されてもよいし、上記各工程間に設けられる各装置や配管8等の加熱により、通される気体が間接的に加熱されてもよい。この加熱された気体の温度は、30℃以上であるのが好ましく、50℃以上であるのがより好ましく、70℃以上であるのがさらに好ましい。
【0123】
本発明では、上記各工程のうち少なくとも一の工程が、減圧状態とされる。本発明の一例は、重合ゲルを得る重合工程と、上記重合ゲルを乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、上記乾燥物又は上記重合ゲルを粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得る粉砕工程と、上記粒子状吸水性樹脂を篩い分ける分級工程と、上記各工程において生成した生成物を他の工程に輸送する輸送工程と、さらに含まれていてもよい他の工程とを含み、上記粉砕工程、上記分級工程、上記さらに含まれていてもよい他の工程及び上記粉砕工程後における上記輸送工程から選択される一以上の工程が、減圧状態とされている粒子状吸水剤の製造方法である。上記さらに含まれていてもよい他の工程は、例えば、整粒工程、表面架橋工程、冷却工程及び包装工程から選択される一又は二以上の工程である。さらに含まれていてもよい他の工程は、本発明において必須ではない。
【0124】
どの工程が減圧状態とされるかは、限定されない。好ましくは、粉砕工程が減圧状態とされる。好ましくは、分級工程が減圧状態とされる。好ましくは、整粒工程が減圧状態とされる。好ましくは、粉砕工程の次の輸送工程が、減圧状態とされる。好ましくは、粉砕工程後における輸送工程が、減圧状態とされる。好ましくは、粉砕工程と分級工程との間の輸送工程が、減圧状態とされる。好ましくは、上記粉砕工程、上記分級工程、上記整粒工程及び上記粉砕工程後における上記輸送工程から選択される一以上の工程が、減圧状態とされる。表面架橋工程や包装工程が減圧状態とされてもよい。好ましくは、上記粉砕工程、上記分級工程、上記整粒工程及びこれらの工程間における上記輸送工程が、減圧状態とされる。特に、粉砕工程以後の工程は、微粉が浮遊しやすい。上記製造工程では、各装置や配管等から微粉を含む気体(空気)が漏れ出しうる。微粉を含む気体が漏れ出した場合、工場内の空気中に含まれる微粉の量が増加し、作業環境が悪化しうる。また、微粉を含む空気が漏れ出ることにより、微粉の回収率が低下しうる。上記減圧状態により、装置や配管等からの上記漏れが効果的に抑制されうる。また、これらの減圧状態により、微粉を含む気体(空気)が微粉捕捉装置6へと効果的に導かれうる。この場合、微粉捕捉装置6が減圧装置を備えているのが好ましい。この減圧装置は、減圧状態を生成しうる装置である。この減圧装置は、気体の吸引により減圧状態を生成しうる。この減圧装置により、各工程内の空気が微粉捕捉装置6へと吸い込まれるので、微粉捕捉装置6による微粉の捕捉が効果的に達成されうる。粉砕工程後の工程の少なくとも一工程において、工程内が減圧状態とされているのがよい。
【0125】
特に、粉砕工程では、微粉が飛散しやすい。よって、粉砕工程が減圧状態とされるのが好ましい。また、整粒工程は、微粉を解砕するための工程を有しているのが一般的であり、この解砕工程には、通常、粉砕機が用いられる。整粒工程に粉砕機が用いられた場合、微粉の飛散が発生しやすい。よって、整粒工程が減圧状態とされるのが好ましい。このように、吸水性樹脂又は吸水剤の粉砕を伴う工程は、減圧状態とされるのが好ましい。
【0126】
なお、上記のように微粉が造粒されて再利用される場合、微粉を含む造粒粒子は、例えば乾燥工程に投入されることが好ましい。この場合、造粒粒子から微粉が再分離することがあり得る。また、造粒工程において、微粉が造粒されずに残存することがありうる。よって、造粒粒子が投入された以後の工程において、微粉が空気中に浮遊することがありうる。このような観点から、粉砕工程よりも前の工程が減圧状態とされてもよい。また、図1において、分級装置4dから造粒工程4jへの輸送工程(微粉輸送工程)が減圧状態とされてもよいし、整粒装置4hから造粒工程4jへの輸送工程(微粉輸送工程)が減圧状態とされてもよい。このように例えば、減圧装置は、図1の工程S1から工程S20までの間で一箇所以上に取り付けられうる。減圧に起因する効果を高める観点から、好ましくは、減圧装置は、図1の工程S1から工程S20までの間で二箇所以上、より好ましくは四箇所以上に取り付けられる。経済性の観点から、減圧装置は、図1の工程S1から工程S20までの間で二十箇所以下、より好ましくは十箇所以下に取り付けられる。
【0127】
減圧状態を達成できる限り、減圧装置は特に限定されない。この減圧装置は、単に排気を行う排気装置であってもよいし、吸引した気体をフィルターに通過させた後にこの気体を排気する吸引排気装置であってもよい。この排気により、工程内の湿気が効果的に除去されうる。減圧装置を備えた上記微粉捕捉装置6は、微粉を捕捉しうるフィルターを備えた吸引排気装置である。上記排気装置として、排気ファンや排気ブロワーが例示される。なお、工程や装置に応じて減圧度を適宜調整するにあたり、減圧度を高めて微粉を低減しやすくする観点からは、排気ブロワーが好ましい。
【0128】
図2は、設備2における粉砕装置4c及び分級装置4dの概略構成の一例を示す図である。粉砕装置4cは、第一粉砕装置4c1と、第二粉砕装置4c2と、工程内配管12とを有する。分級装置4dは、2台設けられている。
【0129】
本実施形態では、2段階の粉砕工程がなされる。第一粉砕装置4c1には、乾燥工程に供された乾燥物が輸送されてくる。この第一粉砕装置4c1により第一段階の粉砕工程がなされ、第一粉砕物が得られる。この第一粉砕物が、工程内配管12を経て、第二粉砕装置4c2に供給される。第二粉砕装置4c2は2台設けられている。工程内配管12は分岐しており、第一粉砕物は、2台の第二粉砕装置4c2のそれぞれに供給される。第二粉砕装置4c2により、第一粉砕物がより細かく粉砕されて、第二粉砕物が得られる。この第二粉砕物が、分級装置4dに供給される。2台の分級装置4dに、第二粉砕物が供給される。分級装置4dにより分級された分級物のうち、所望の粒子径を有するものは、表面架橋工程(混合装置4e)に供される。また分級物のうち、粒子径が小さすぎるものは、微粉として、造粒工程(造粒装置4j)に供される。分級物のうち粒子径が大きすぎるものは、再度、第一粉砕装置4c1に供される。
【0130】
図2において矢印で示されるのは、排気装置が取り付けられている箇所である。矢印S41及びS42が示すように、排気装置は、第一粉砕装置4c1に取り付けられている。第一粉砕装置4c1では2箇所に排気装置が取り付けられている。矢印S43及びS44が示すように、排気装置は、第二粉砕装置4c2に取り付けられている。更に、矢印S51及びS52が示すように、排気装置は、第二粉砕装置4c2と分級装置4dとを結ぶ配管8に取り付けられている。この排気装置が取り付けられた装置又は配管は、減圧されている。このように、図2の実施形態では、粉砕工程の次になされる輸送工程が、減圧状態とされている。このように、排気装置等の減圧装置は、製造設備の各装置や各配管に取り付けられうる。上記工程内配管12に減圧装置が取り付けられてもよい。一の排気箇所につき1台の排気装置が設けられていても良いし、複数の排気箇所に一台の排気装置が連結されていてもよい。なお、工程内配管に減圧装置が取り付けられた場合、当該工程内配管を含む工程が減圧状態とされていることを意味する。
【0131】
図3は、設備2における整粒装置4hの概略構成の一例を示す図である。整粒装置4hは、ホッパー4h1と、粉砕機4h2と、分級装置4h3と、ホッパー4h4と、工程内配管12とを有する。
【0132】
冷却工程を経た粒子状吸水剤が、ホッパー4h1に一時的に貯留される。次に、粒子状吸水剤は、ホッパー4h1から粉砕機4h2へと送られる。この粉砕機4h2で解砕された粒子状吸水剤は、分級装置4h3へと送られる。分級装置4h3により分級された分級物のうち、所望の粒子径を有するものは、充填装置4iに供される。また分級物のうち、粒子径が小さすぎるものは、微粉として、ホッパー4h4を経由して、造粒工程4jに供される。分級物のうち粒子径が大きすぎるものは、再度、粉砕機4h2に輸送される。この輸送は、コンベア14によりなされる。即ち、大きすぎる分級物は、コンベア14を経由して、分級装置4h3から粉砕機4h2へと戻される。
【0133】
図3において矢印で示されるのは、排気装置が取り付けられている箇所である。矢印S141が示すように、排気装置は、ホッパー4h1に取り付けられている。矢印S142が示すように、排気装置は、粉砕機4h2に取り付けられている。矢印S143が示すように、排気装置は、コンベア14を輸送手段とする工程内配管12に取り付けられている。矢印S144が示すように、排気装置は、ホッパー4h4に取り付けられている。ホッパー4h4は、微粉を貯留するためのホッパーである。この排気装置が取り付けられた装置又は配管は、減圧されている。このように、排気装置等の減圧装置は、製造設備の各装置や各配管に取り付けられうる。一の排気箇所につき1台の排気装置が設けられていても良いし、複数の排気箇所に一台の排気装置が連結されていてもよい。
【0134】
図2及び図3において説明された上記排気装置により排出された気体の処理方法は、限定されない。この排気は、微粉捕捉装置6に送られてもよいし、他の処理がなされてもよい。排気は、単に工程の外部に排出されるだけでもよい。この排気により、工程内の湿気が効果的に除去されうる。
【0135】
上記排気装置により、工程内が減圧状態とされている。本願において「工程内」とは、以下の(a)〜(c)を含む概念である。
【0136】
(a)その工程を行う装置又は配管等の内部。
【0137】
(b)その工程を行う装置又は配管等を覆う囲いの内部。
【0138】
(c)その工程を行う装置又は配管等が置かれた部屋の内部。
【0139】
装置や配管等が実質的に閉じた空間を有しており、装置の内部を減圧することが可能な場合は、上記(a)が採用されうる。装置自体の内部を減圧することが困難な場合には、上記(b)又は上記(c)が採用されてもよい。
【0140】
「減圧状態」とは、大気圧よりも気圧が低い状態を意味する。また「大気圧に対する減圧度」とは、大気圧との圧力差を意味し、気圧が大気圧よりも低い場合に正(プラス)の値として表現される。例えば、大気圧が標準大気圧(101.3kPa)である場合、「減圧度が10kPa」とは、気圧が91.3kPaであることを意味する。本願において、「大気圧に対する減圧度」は、単に「減圧度」とも称される。
【0141】
減圧に起因する上記効果を高める観点から、減圧度の下限値は、0kPaを超えるのが好ましく、0.01kPa以上がより好ましく、0.05kPa以上がより好ましい。系内における粉の吊り上がりを抑制する観点、及び排気装置に対する過度のコストを抑制する観点から、減圧度の上限値は、10kPa以下が好ましく、8kPa以下がより好ましく、5kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が一層好ましい。減圧度の好ましい数値範囲は、上記下限値と上記上限値との間で任意に選択できる。
【0142】
本発明に係る製造方法は、上記減圧状態の工程を含んでいるので、粒子状吸水剤を連続して安定に生産しうる。この製造方法は、微粉の捕集効率に優れる。このような製造方法は、好ましくは500kg/時間以上、さらに好ましくは1000kg/時間以上、特に好ましくは1500kg/時間以上の生産規模(上限は10000kg/時間)において、連続的に得られる製品の吸水特性の安定化に寄与しうる。この製造方法は、捕集材に収集された微粉が全生産量の10質量%以下である場合において、より効果的となりうる。この製造方法は、捕集材に収集された微粉が全生産量の5質量%以下である場合において、さらに効果的となりうる。この製造方法は、捕集材に収集された微粉が全生産量の3質量%以下である場合において、得られる製品の品質が高く維持されうるので、効果的である。
【0143】
以上に述べたように、本発明では、減圧状態により、湿気を含んだ空気を除去できるので、除湿が容易になされうる。除湿により、安定的な生産が可能とされるとともに、粒子状吸水剤の凝集や物性低下が抑制されうる。更に、上記減圧状態により、装置や配管等からの上記漏れが効果的に抑制されうる。また、これらの減圧状態により、空気中の微粉の回収が容易とされうる。また減圧状態により、輸送工程が効率的に実施されうる。減圧状態により、輸送対象物が空気輸送されうる。即ち、減圧状態を用いた空気輸送により、重合ゲル、粒子状吸水性樹脂、粒子状吸水剤等の生成物が輸送されうる。この減圧状態を用いた空気輸送により、効率のよい連続生産が可能とされうる。
【0144】
上記各工程は、同一又は別個の装置によりバッチにて行われてもよいが、好ましくは、上記各工程が連結されて連続生産がなされる。各工程での処理時間は適宜決定される。各工程における処理時間は、例えば以下の通りである。重合工程の処理時間は、例えば0.1分以上10時間以下、更には1分以上1時間以下である。乾燥工程の処理時間は、例えば0.1分以上10時間以下、更には1分以上1時間以下である。粉砕工程の処理時間は、例えば0.01秒以上1時間以下、更には0.1秒以上0.5時間以下である。分級工程の処理時間は、例えば0.01秒以上1時間以下、更には0.1秒以上0.5時間以下である。輸送工程の処理時間は、例えば0.01秒以上1時間以下、更には0.1秒以上0.5時間以下である。表面架橋工程の処理時間は0.1分以上5時間以下、更には1分以上1時間以下である。冷却工程の処理時間は、例えば1分以上2時間以下、更には0.1時間以上1時間以下である。整粒工程の処理時間は、例えば1分以上2時間以下、更には0.1時間以上1時間以下である。好ましくは、全工程中の2箇所以上、更には3箇所以上、更には4箇所以上、更には5箇所以上が減圧とされる。粒子状吸水剤の物性向上の観点から、上記粉砕工程以降の処理時間のうち、減圧状態の時間が占める割合Rdは、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、70%以上が一層好ましく、80%以上がより一層好ましく、90%以上が特に好ましい。Rdの上限は特に制限されないが、100%以下であることが好ましい。なお、粉砕工程の開始時点から最終工程(包装工程等)の終了時点までに要する時間(合計所要時間)がT1である。例えば、包装工程が存在する場合、この時間T1は、上記粉砕工程から上記包装工程までの所要時間である。この時間T1のうち、工程中の製造対象物(粒子状吸水性樹脂等)が減圧状態とされている時間がT2であるとき、上記割合Rd(%)は、次の式により算出される。
【0145】
【数2】
【0146】
なお、上記T1は限定されない。通常、上記T1は、0.5時間以上24時間以下、更には、1時間以上20時間以下である。
【0147】
従来、熱劣化を防止するため、減圧重合や減圧乾燥は吸水性樹脂の技術分野において知られていた。これに対して本発明では、上述の通り、従来とは全く違う目的(通液性向上等)で、粉砕工程以降の工程を減圧状態としている。
【0148】
通液性等の物性向上を達成する観点から、本発明に係る粒子状吸水剤のより好ましい製造方法は、重合ゲルを得る重合工程と、上記重合ゲルを乾燥して乾燥物を得る乾燥工程、上記乾燥物を粉砕する粉砕工程、上記粒子状吸水性樹脂を篩い分ける分級工程、上記粒子状吸水性樹脂の表面近傍を架橋して粒子状吸水剤を得る表面架橋工程、上記粒子状吸水剤を包装材容器に入れて包装する包装工程及び上記各工程において生成した生成物を他の工程に輸送する輸送工程を必須に含んでおり、更に、上記表面架橋工程がなされた粒子状吸水剤を冷却する冷却工程及び上記粒子状吸水剤を整粒する整粒工程からなる群から選ばれる0工程以上2工程以下含み、上記粉砕工程から上記包装工程までの処理時間のうちの50%以上が減圧状態とされている粒子状吸水剤の製造方法である。好ましくは、この製造方法は、上記冷却工程及び上記整粒工程からなる群から選ばれる1工程以上2工程以下を含む。
【0149】
なお、本発明において、重合工程や乾燥工程における圧力は特に限定されないが、粒子状吸水剤の物性の観点から、これらの工程は常圧(大気圧)とされるのがよい。
【0150】
輸送工程については減圧状態とされることが好ましいが、加圧による輸送工程も好ましい。即ち、輸送工程は、減圧状態又は加圧状態とされるのが好ましい。加圧による輸送工程として、空気輸送が例示される。即ち、加圧による輸送と減圧による輸送とが併用されるのが好ましく、加圧輸送とするのか、減圧輸送とするのかは、特に限定されず、任意の輸送方法を選択することができる。
【0151】
空気輸送は、機械的輸送と比較して多くのメリットを有する。空気輸送のメリットとして、メカニカルな部分が少なく機械的トラブルが少ないこと、耐久性に優れること、ベルトコンベアなどと違い戻りラインが不要でありワンウェイ(one way)であること、異物が混入しにくいこと、等が挙げられる。減圧装置によって輸送先から空気を吸引することにより、減圧空気輸送が達成されうる。即ち、減圧装置によって輸送先から空気を吸引することにより、輸送工程が減圧状態とされつつ、輸送元から輸送先への空気輸送が達成されうる。このように、本発明に係る輸送工程は、空気輸送とされてもよい。本発明に係る輸送工程は、減圧空気輸送とされてもよい。また、加圧による輸送工程が採用されてもよい。本発明に係る輸送工程は、加圧空気輸送とされてもよい。加圧空気輸送の利点として、配管サイズを細くすることができること、及び、加圧にドライエアーを用いることにより配管内の結露を抑制できることが挙げられる。
【0152】
本発明において、重合工程、乾燥工程及び輸送工程以外の全ての工程における圧力が、加圧状態とされてもよい。加圧状態とすることで、装置、配管等への塵、埃等の侵入を防ぐことができ、粒子状吸水性樹脂や粒子状吸水剤への異物の混入を低減できるため、高品質の粒子状吸水剤を得ることができる。また、本発明の製造方法では、重合工程、乾燥工程及び輸送工程以外の工程を減圧状態とするか、加圧状態とするかは特に限定されず、任意の状態を選択することができる。
【0153】
なお、「加圧状態」とは、大気圧より気圧が高い状態を意味する。また、「大気圧に対する加圧度」とは、大気圧との圧力差を意味し、気圧が大気圧より高い場合に正(プラス)の値として表現される。例えば、大気圧が標準大気圧(101.3kPa)である場合、「加圧度が10kPa」とは、気圧が111.3kPaであることを意味する。本願において、「大気圧に対する加圧度」は、単に「加圧度」とも称される。なお、加圧度は、0〜1MPaとするのがよい。
【0154】
工程内における吸湿や結露を抑制する観点から、少なくとも一の工程内において、当該工程内の空気の好ましい温度Taは、25℃以上とされ、より好ましくは30℃以上とされ、更に好ましくは50℃以上とされる。温度が高すぎると、粒子状吸水剤の物性がかえって低下する場合があることから、この温度Taは、150℃以下が好ましい。生産安定化の観点から、この好ましい温度Taは、特に、粉砕工程、分級工程及び整粒工程において採用されるのが好ましい。これらの工程において吸湿や結露が発生した場合、安定的な生産が妨げられやすい。また、製造設備中に存在するホッパー等の貯留部は、多量の粒子状吸水性樹脂が比較的長い間貯留されるため、湿気の吸収が発生しやすい。また、ホッパー等の貯留部内で凝集が発生した場合、粒子状吸水性樹脂が貯留部の排出口から排出されにくくなるため、安定的な生産が妨げられやすい。これらの観点から、製造設備中に存在する貯留部のうち、N個(Nは1以上の整数)の貯留部の内部空気が、上記好ましい温度Taとされるのが好ましい。安定的な生産の観点から、上記Nは、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がより好ましい。経済性の観点から、上記Nは15以下が好ましく、10以下がより好ましい。また配管で凝集が発生した場合、配管の閉塞が起こりやすいため、安定的な生産が妨げられやすい。貯留部(ホッパー)又は配管の内部空気を加熱するためには、ホッパーや配管等の外側に加熱部材が配置されるのが好ましい。この加熱部材として、バンドヒーター等の電気ヒーター、高温の蒸気又は加熱された液体を透過させうるパイプ又はジャケット等が採用されうる。扱いやすさの観点から、上記液体は、水が好ましい。熱伝導性の観点から、上記加熱部材(パイプ等)の材質は、金属が好ましく、銅又は銅系の合金がより好ましい。この加熱部材は、ホッパー等の貯留部の外面に巻回されているのが好ましい。
【実施例】
【0155】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。なお、本明細書では、「質量部」は「重量部」と、「質量%」は「重量%」と同義である。
【0156】
(CRCの測定)
生理食塩水に対する無加圧下吸水倍率(CRC)は、次のようにして得られうる。まず、粒子状吸水剤約0.2gが正確にはかり取られ(この重量が下記式の「粒子状吸水剤の質量」となる)、不織布製の袋(60mm×85mm)に均一に入れられて、25±2℃に調温された生理食塩水中(約200g)に浸漬された。30分後に袋が引き上げられて、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式H−122小型遠心分離機)を用いて250G(250×9.81m/s)で3分間水切りが施される。次に、この水切りが施された袋の質量W4(g)が測定される。また、同様の操作が、粒子状吸水剤を含まない不織布製の袋について行われ、この袋の質量W3(g)が測定される。そして、これら質量W4及びW3を用いて、次式に従って無加圧下吸水倍率が算出される。
【0157】
【数3】
【0158】
(AAPの測定)
4.8kPa加圧下の生理食塩水に対する加圧下吸水倍率(AAP4.8kPa)は次のようにして得られうる。まず、その底に400メッシュのステンレス製金網(目開き38μm)が溶着された、内径60mmのプラスチック製支持円筒が準備される。次に、この金網の上に、粒子状吸水剤0.900gが均一に散布されて、その上に外径が60mmより僅かに小さく支持円筒の壁面との間に隙間が生じず、かつ上下に摺動しうるピストン(cover plate)が載置された。次に、支持円筒、粒子状吸水剤及びピストンの質量W6(g)が測定された。次に、このピストンにおもりが載置されることにより、粒子状吸水剤に対して4.8kPaの圧力が均一に加えられるように調整された。このように調整された状態が、この加圧下吸水倍率の測定装置である。次に、直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mm、厚さ5mmのガラスフィルターを置き、25±2℃に調温した生理食塩水がガラスフィルターの上面と同レベルになるように注がれる。このガラスフィルターの上面に直径9cmの濾紙(トーヨー濾紙(株)製、No.2)が1枚載せられて表面が全て濡れるようにし、過剰の生理食塩水が除かれる。次に、上記測定装置が濾紙上にのせられて、生理食塩水が加圧下で吸収させられる。生理食塩水の水面がガラスフィルターの上面より下がった場合には生理食塩水が追加されて、水面レベルが一定に保持される。1時間後に測定装置を取り出し、おもりを取り除いた質量W5(g)が測定される。質量W5は、支持円筒、膨潤した吸水剤及びピストンの合計質量である。そして、これら質量W5及びW6を用いて、次式に従って4.8kPa加圧下の加圧下吸水倍率AAP(4.8kPa)(g/g)が算出される。但し、式中のWsは粒子状吸水剤の質量(g)を示す。
【0159】
【数4】
【0160】
本発明の製造方法で得られる粒子状吸水剤を用いてなる吸収性物品は、例えば、粒子状吸水剤と必要により親水性繊維とをシート状などに成形して得られうる。親水性繊維が用いられない場合には、紙や不織布に粒子状の粒子状吸水剤を固定させることにより吸収性物品が得られうる。このような吸収性物品における粒子状吸水剤の含有量(コア濃度)は、例えば、10〜100重量%、好ましくは30〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%であるのがよい。また、この吸収性物品は、密度が0.06〜0.5g/ccの範囲であり、坪量が0.01〜0.2g/cmの範囲であるように調整されていることが望ましい。なお、用いられる繊維基材34としては、例えば、粉砕された木材パルプ、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等の親水性繊維などを例示でき、それらがエアレイドされたものが好ましい。
【0161】
本発明の製造方法により得られる粒子状吸水剤に含まれる、微粉の量は少ない。このような粒子状吸水剤では、微粉による通液性の阻害が抑制されている。この粒子状吸水剤は、通液性に優れる。このため、本発明の製造方法は、特に高い通液性(SFC)が求められる粒子状吸水剤の製造方法として望ましい。
【0162】
(SFCの測定)
食塩水流れ誘導性(SFC)の測定では、0.900gの吸水剤が容器に均一に入れられる。この吸水剤が人工尿に浸漬されつつ、2.07kPaで加圧させられる。60分後に、膨潤した吸水剤(ゲル層)の高さが記録される。吸水剤が2.07kPaで加圧された状態で、0.69質量%食塩水が、ゲル層を通される。このときの室温は、20℃から25℃に調整される。コンピューターと天秤とを用いて、ゲル層を通過する液体量が20秒間隔で記録されて、通過する液体の流速Fs(T)が算出される。流速Fs(T)は、増加質量(g)を増加時間(s)で割ることにより算出される。食塩水の静水圧が一定となり安定した流速が得られた時刻がTsとされて、このTsから10分の間に計測されたデータのみが流速計算に使用される。Tsから10分の間に計測される流速から、Fs(T=0)の値が得られる。この値は、ゲル層を通過する最初の流速である。Fs(T)が時間に対してプロットされて、最小2乗法により得られる結果に基づいてFs(T=0)が計算される。食塩水流れ誘導性(SFC)は、下記数式によって算出される。
【0163】
【数5】
【0164】
この数式において、L0はゲル層の高さ(cm)であり、ρは食塩水の密度(g/cm)であり、Aはゲル層の断面積A(cm)であり、ΔPはゲル層にかかる静水圧(dyne/cm)である。上記人工尿は、0.25gの塩化カルシウムの二水和物、2.0gの塩化カリウム、0.50gの塩化マグネシウムの六水和物、2.0gの硫酸ナトリウム、0.85gのリン酸二水素アンモニウム、0.15gのリン酸水素二アンモニウム及び994.25gの純水が混合されて得られる。このような評価は、米国特許第5849405号の明細書に記載されたSFC試験に準じて行われる。
【0165】
[実施例1]
図1で示される製造設備を用いて、粒子状吸水剤を連続生産した。この製造設備は、1時間あたり1500kgの粒子状吸水剤を生産する能力を有している。この製造設備で発生する微粉は、配管S4〜S20及び配管8aを介して微粉捕捉装置6に収集されている。更に、微粉捕捉装置6で収集された微粉は、配管8bを介して造粒装置4jに供給されている。なお、捕集材として、メンブレン(材質:ポリテトラフルオロエチレン、孔径:2.5μm、厚み:0.02mm、捕集効率:99.9%)と基材(材質:ポリエステル、平均孔径:50μm、厚さ:2.3mm、捕集効率:50%)とから構成されるメンブレンフィルターであるバッグフィルターを用いた。捕集材に収集された微粉は全生産量の2質量%以下であった。
【0166】
また、分級工程で分離された微粉、及び整粒工程で分離された微粉についても、それぞれ配管8を介して造粒装置4jに供給されている。造粒装置4jにおいては、微粉捕捉装置6で収集された微粉、分級工程で分離された微粉、及び整粒工程で分離された微粉が混合され、造粒されている。なお、造粒工程において、水性液としては温水を微粉100重量部に対し110重量部用い、微粉の温度は60℃、水性液の温度は70℃とし、混合装置タービュライザーで、0.3秒間、高速連続混合した。造粒された造粒粒子(平均粒子径:0.5〜3mm、含水率:55質量%)は、配管8を介して、重合工程と乾燥工程の間の輸送配管に供給されている。
【0167】
微粉捕捉装置6には、減圧装置(吸引装置)が備えられているため、微粉捕捉装置6と配管で接続されている各装置及び配管は減圧状態となっている。但し、整粒工程から包装工程への輸送配管では、空気輸送が行われているため、加圧状態となっている。なお、各工程の減圧度及び加圧度は以下の通りである。
【0168】
【表1】
【0169】
中和率75モル%のアクリル酸部分ナトリウム塩(以下、「単量体」と称する。)水溶液に、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数=9)0.06モル%(対単量体全モル数)を添加し、単量体濃度を38重量%とした。なお、上記「平均n数」とは、ポリエチレングリコール鎖中のエチレンオキシド重合度の平均数を意味する。
【0170】
得られた単量体水溶液に窒素ガスを吹き込み、溶存酸素濃度を0.5重量ppmに調整した。次いで、過硫酸ナトリウム0.14g(対単量体1モル)とL−アスコルビン酸0.005g(対単量体1モル)とをラインミキシングで混合した。
【0171】
このラインミキシングで得られた混合物を、両端に堰を有する平面スチールベルトに厚み25mmとなるように供給し、連続的に95℃で30分間静置水溶液重合を行い、含水状態にある重合ゲルを得た(重合工程)。
【0172】
この重合ゲルを孔径7mmのミートチョッパーで1mmに細分化した。細分化された重合ゲルをバンド乾燥機の多孔板上に厚みが50mmとなるように載せ、180℃で30分間、熱風乾燥を行い、粒子状吸水性樹脂を得た(乾燥工程)。
【0173】
得られた粒子状吸水性樹脂は、3段ロールミル(ロールギャップ:上から順に、1.0mm/0.55mm/0.42mm)に供給し、粉砕した(粉砕工程)。次いで、この粉砕物を目開き850μm及び150μmの金属篩網を有する分級装置で分級し、粒径が150〜850μmである粒子が98重量%である、粒子状吸水性樹脂を得た(分級工程)。なお、この粒子状吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(CRC)は、35(g/g)であった。
【0174】
次に、粒子状吸水性樹脂100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.30重量部、プロピレングリコール0.50重量部、純水2.70重量部に調整された表面処理剤溶液と、粒子状吸水性樹脂とを、高速連続混合機(タービュライザー/1000rpm)に供給し、混合した。次いで、200℃に調整したパドルドライヤー(溝型撹拌式乾燥機)で40分間加熱した(表面架橋工程)。
【0175】
その後、パドルドライヤー(溝型攪拌式乾燥機)を用いて60℃まで冷却し(冷却工程)、目開き850μm及び150μmの金属篩網を用いて分級を行い、粒径が150〜850μmである、製品としての粒子状吸水剤を得た(整粒工程)。更に、この粒子状吸水剤が、包装材容器に入れられ(包装工程)、製品として出荷した。
【0176】
本実施例1において、粉砕工程の開始時点から包装工程の終了時点までに要した時間T1は3時間であった。また、工程中の製造対象物が減圧状態とされている時間T2は2.8時間であった(Rd値=約93%)。
【0177】
[比較例1]
配管S4〜S20と配管8aとを接続しなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状吸水剤を製造した。したがって、空気輸送を行っている整粒工程と包装工程の間の輸送工程のみ、加圧状態であり、その他の工程は常圧状態とした。
【0178】
[実施例2]
図1で示される製造設備を用いて、粒子状吸水剤を連続生産した。この製造設備は、1時間あたり1500kgの粒子状吸水剤を生産する能力を有している。配管S4、S5、S14が、配管8aを介して微粉捕捉装置6に接続され、粉砕工程、粉砕工程と分級工程との間の輸送工程、及び整粒工程で発生する微粉を収集している。更に、微粉捕捉装置6で収集された微粉は、配管8bを介して造粒装置4jに供給されている。なお、捕集材として、メンブレン(材質:ポリテトラフルオロエチレン、孔径:2.5μm、厚み:0.02mm、捕集効率:99.9%)と基材(材質:ポリエステル、平均孔径:50μm、厚さ:2.3mm、捕集効率:50%)とから構成されるメンブレンフィルターであるバッグフィルターを用いた。
【0179】
また、分級工程で分離された微粉、及び整粒工程で分離された微粉についても、それぞれ配管8を介して造粒装置4jに供給されている。造粒装置4jにおいては、微粉捕捉装置6で収集された微粉、分級工程で分離された微粉、及び整粒工程で分離された微粉が混合され、造粒されている。なお、造粒工程において、水性液としては温水を微粉100重量部に対し110重量部用い、微粉の温度は60℃、水性液の温度は70℃とし、混合装置タービュライザーで、0.3秒間、高速連続混合した。造粒された造粒粒子(平均粒子径:0.5〜3mm、含水率:55質量%)は、配管8を介して、重合工程と乾燥工程の間の輸送配管に供給されている。
【0180】
微粉捕捉装置6には、減圧装置(吸引装置)が備えられているため、微粉捕捉装置6と配管で接続されている各装置及び配管は減圧状態となっている。なお、各工程の減圧度は以下の通りである。
【0181】
【表2】
【0182】
中和率75モル%のアクリル酸部分ナトリウム塩(以下、「単量体」と称する。)水溶液に、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数=9)0.06モル%(対単量体全モル数)を添加し、単量体濃度を38重量%とした。
【0183】
得られた単量体水溶液に窒素ガスを吹き込み、溶存酸素濃度を0.5重量ppmに調整した。次いで、過硫酸ナトリウム0.14g(対単量体1モル)とL−アスコルビン酸0.005g(対単量体1モル)とをラインミキシングで混合した。
【0184】
このラインミキシングで得られた混合物を、両端に堰を有する平面スチールベルトに厚み25mmとなるように供給し、連続的に95℃で30分間静置水溶液重合を行い、含水状態にある重合ゲルを得た(重合工程)。
【0185】
この重合ゲルを孔径7mmのミートチョッパーで1mmに細分化した。細分化された重合ゲルをバンド乾燥機の多孔板上に厚みが50mmとなるように載せ、180℃で30分間、熱風乾燥を行い、粒子状吸水性樹脂を得た(乾燥工程)。
【0186】
得られた粒子状吸水性樹脂は、3段ロールミル(ロールギャップ:上から順に、1.0mm/0.55mm/0.42mm)に供給し、粉砕した(粉砕工程)。次いで、この粉砕物を目開き850μm及び150μmの金属篩網を有する分級装置で分級し、粒径が150〜850μmである粒子が98重量%である、粒子状吸水性樹脂を得た(分級工程)。なお、この粒子状吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(CRC)は、35(g/g)であった。
【0187】
次に、粒子状吸水性樹脂100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.30重量部、プロピレングリコール0.50重量部、純水2.70重量部に調整された表面処理剤溶液と、粒子状吸水性樹脂とを、高速連続混合機(タービュライザー/1000rpm)に供給し、混合した。次いで、200℃に調整したパドルドライヤー(溝型撹拌式乾燥機)で40分間加熱した(表面架橋工程)。
【0188】
その後、パドルドライヤー(溝型攪拌式乾燥機)を用いて60℃まで冷却し(冷却工程)、目開き850μm及び150μmの金属篩網を用いて分級を行い、粒径が150〜850μmである、製品としての粒子状吸水剤を得た(整粒工程)。更に、この粒子状吸水剤が、包装材容器に入れられ(包装工程)、製品として出荷した。
【0189】
本実施例2において、粉砕工程の開始時点から包装工程の終了時点までに要した時間T1は3時間であった。また、工程中の製造対象物が減圧状態とされている時間T2は1.5時間であった(Rd値=50%)。
【0190】
[比較例2]
配管S4、S5、S14と配管8aとを接続しなかった以外は実施例2と同様の操作を行い、粒子状吸水剤を製造した。したがって、すべての工程が常圧状態であった。
【0191】
[実施例3]
図1図2及び図3で示される製造設備を用いて、粒子状吸水剤(150000kg)を連続製造した。この製造設備は、1時間あたり1500kgの粒子状吸水剤を製造する能力を有している。微粉捕捉装置に繋げられている第一配管8aは、図1中、矢印線S1からS20で示された箇所の内、S4(粉砕装置4c)、S5(粉砕装置4cと分級装置4dとの間の輸送配管)及びS14(整粒装置4h)で示される箇所に連結され、これらの連結箇所が減圧状態とされた。S4(粉砕装置4c)における第一配管8aの連結箇所は、図2で示されるS41からS44の4箇所とされた。S5(粉砕装置4cと分級装置4dとの間の輸送配管)における第一配管8aの連結箇所は、図2で示されるS51とS52の2箇所とされた。S14(整粒装置4h)における第一配管8aの連結箇所は、図3で示されるS141からS144の4箇所とされた。第一配管8aが連結された箇所は、微粉捕捉装置6に含まれる減圧装置(吸引装置)によって減圧された。さらにこの実施例3では、図1における各箇所の減圧度は、次の通りとされた。即ち、第一粉砕装置4c1の装置内部の減圧度は0.28kPa〜0.30kPaとされ、第二粉砕装置4c2の減圧度は0.30kPa〜0.31kPaとされ、第二粉砕装置4c2と分級装置4dとの間の配管(輸送工程)における減圧度は0.50kPa〜0.65kPaとされ、ホッパー4h1の内部における減圧度は0.21kPaとされ、粉砕機4h2の内部における減圧度は0.18kPaとされ、分級機4h3の内部における減圧度は0.11kPaとされ、ホッパー4h4の内部における減圧度は0.69kPaとされ、コンベア14を覆う内部空間の減圧度は0.21kPaとされた。
【0192】
【表3】
【0193】
微粉捕捉装置に繋げられている第二配管8bは、造粒装置4jに繋げられた。この造粒装置は、重合装置4aと乾燥装置4bとを連結する配管8に繋げられた。減圧に伴い吸引された気体中に含まれる微粉は、第一配管8aを通じてこの微粉捕捉装置6で収集された(収集工程)。この収集には、捕集材として、バッグフィルターが用いられた。この収集された微粉は、第二配管8bを通じて造粒装置4jに投入された。この製造装置では、分級装置4dと造粒装置4jとは配管8で繋げられており、この分級装置4dでより分けられた微粉は、この配管及びホッパーを経由して造粒装置4jに投入された。また、整粒装置4hと造粒装置4jとは配管8で繋げられており、この整粒装置でより分けられた微粉は、この配管及びホッパーを経由して造粒装置4jに投入された。この造粒装置4jにおいて、微粉から得られた造粒粒子が、乾燥工程(乾燥装置4b)に投入された。
【0194】
この実施例3では、まず、モノマーとしての75モル%が中和されたアクリル酸部分ナトリウム塩と、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数=9)とを含んだ水溶液が、モノマー溶液として準備された。このモノマー溶液において、モノマー濃度は、38質量%に調整された。内部架橋剤の濃度は、モノマーに対して0.06モル%となるように調整された。
【0195】
次に、このモノマー溶液を定量ポンプで連続フィードしつつ、窒素ガスを連続的に吹き込むことにより、このモノマー溶液の酸素濃度が0.5ppm以下に調整された。次に、モノマー溶液に、過硫酸ナトリウム及びL−アスコルビン酸が、モノマー1モルに対して過硫酸ナトリウム/L−アスコルビン酸の質量が0.14g/0.005gとなるようにラインミキシングで混合された。次に、その両側に堰を有する平面スチールベルトにその厚みが約25mmとなるように、モノマー溶液を供給して、水溶液重合が95℃で30分間実施されて、含水状態にある重合ゲルが得られた(重合工程)。
【0196】
次に、この重合ゲルが粉砕されて、さらにこの粉砕された重合ゲルが孔径7mmのミートチョッパーで約1mmに細分化された。これをバンド乾燥機の多孔板上に薄く拡げて載せて、180℃で30分間熱風乾燥して、重合ゲルの乾燥物としての粒子状吸水性樹脂が得られた(乾燥工程)。
【0197】
次に、この乾燥物が粉砕されて、粒子状の乾燥物が得られた。この粒子状の乾燥物の全量が、3段ロールミル(ロールギャップの構成は、上から1.0mm/0.55mm/0.42mm)に連続供給されてさらに粉砕された(粉砕工程)。上記第一粉砕装置4c1及び第二粉砕装置4c2が、この3段ロールミルとされた。
【0198】
次に、目開き850μmの金属篩網及び目開き150μmの金属篩網を有する分級装置で分級されて(分級工程)、粒子状吸水性樹脂が得られた。この粒子状吸水性樹脂の約98質量%が、その粒径が150μmから850μmである粒子状吸水性樹脂であった。なお、この粒子状吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(CRC)は、35g/gであった。
【0199】
次に、表面処理剤溶液が準備された。この表面処理剤溶液は、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール及び純水からなり、粒子状吸水性樹脂100質量部に対して、1,4−ブタンジオールが0.30質量部、プロピレングリコールが0.50質量部、純水が2.70質量部となるように調整された。次に、この粒子状吸水性樹脂を高速連続混合機(タービュライザー/1000rpm)に1000kg/時間で連続供給して、上記表面処理剤溶液がスプレーで噴霧されて、この表面処理剤溶液と粒子状吸水性樹脂とが混合された。次に、この表面処理剤溶液が混合された粒子状吸水性樹脂が、200℃に調整されたパドルドライヤーで40分間加熱された(表面架橋工程)。
【0200】
その後、60℃に冷却された(冷却工程)。
【0201】
冷却(冷却工程)後、目開き850μmの金属篩網及び目開き150μmの金属篩網を用いて分級されて、その粒径が150μmから850μmである製品としての粒子状吸水剤が得られた(整粒工程)。この整粒工程を行った整粒装置4hの構成は、図3で示される通りである。
【0202】
次に、この粒子状吸水剤が、包装材容器に入れられた(包装工程)。
【0203】
この実施例3では、粉砕工程の開始時点から包装工程の終了時点までに要した時間T1は3時間であり、この時間T1のうち、工程中の製造対象物が減圧状態とされている時間T2は2.8時間であった(Rd値=約93%)。
【0204】
[比較例3]
第一配管8aを図1のいずれの装置及び配管に繋げなかった他は実施例3と同様にして、粒子状吸水剤を製造した。この比較例1では、減圧状態とされた部分が設けられなかった。また、この比較例1では、減圧による微粉の収集は行われなかった(Rd値=0%)。なお、比較例1において、分級工程及び整粒工程で得られる150μm金属篩網を通過した微粉は、造粒装置に投入された。
【0205】
[実施例4]
冷却工程において、50%の硫酸アルミニウム水溶液が吸水性樹脂に対して1質量%添加された他は実施例3と同様にして、粒子状吸水剤を製造した。
【0206】
[比較例4]
冷却工程において50%の硫酸アルミニウム水溶液を吸水性樹脂に対して1質量%添加した他は比較例3と同様にして、粒子状吸水剤を製造した。
【0207】
[粒子状吸水剤の性能評価]
粒子状吸水剤について、ダスト量(AD)、微粉含有率、無加圧下吸水倍率(CRC)、加圧下吸水倍率(AAP)及び食塩水流れ誘導性(SFC)が計測された。無加圧下吸水倍率(CRC)、加圧下吸水倍率(AAP)及び食塩水流れ誘導性(SFC)の計測方法は、前述した通りである。これらの結果が、下記表1に示されている。
【0208】
[ダスト量の評価]
ダスト量は、Heubach Engineering GmbH社(独)製の商品名「ホイバッハ・ダストメーター(Heubach DUSTMETER)を用いて計測された。このダスト量は、所定時間の吸引によりガラス繊維濾紙に捕捉された質量を計測することにより得られた。計測時の測定モードは、TypeIとされた。この計測は、温度が25℃±2℃であり、相対湿度が20〜40%である雰囲気において、大気圧下で実施された。詳細には、まず、回転ドラムに、製造された粒子状吸水剤(100.00g)が入れられる。次に、保留粒子径(JIS P3801)が0.5μmであり、その直径が50mmであるガラス繊維濾紙(例えば、ADVANTEC社製の商品名「GLASS FIBER GC−90又はその相当品)の質量Daが、0.00001g単位まで計測される。次に、回転ドラムに、ガラス繊維濾紙が装着されたフィルターケースが取り付けられる。次に、ドラム回転数が30回転/分、吸引風量が20L/分の条件で、ダストメーターが30分間運転される。所定時間経過後、ガラス繊維濾紙の質量Dbが、0.00001g単位まで計測される。質量Da及びDbを用いて、下記数式に基づいてダスト量ADが算出される。この結果が下記の表1に示されている。
【0209】
【数6】
【0210】
[微粉の含有率評価]
粒子状吸水剤(100.00g)をその目開きが150μmの金属篩網で分級して、この粒子状吸水剤に含まれる微粉(150μm未満)の質量の比率が計測された。この結果が下記の表1に示されている。
【0211】
[粒子状吸水剤の性能評価]
粒子状吸水剤について、無加圧下吸水倍率(CRC)、加圧下吸水倍率(AAP)及び通液性(SFC)が計測された。無加圧下吸水倍率(CRC)、加圧下吸水倍率(AAP)及び通液性(SFC)の測定方法は前述した通りである。この結果が下記の表に示されている。
【0212】
【表4】
【0213】
表に示されるように、実施例はダスト量の発生量及び製品として得られる粒子状吸水剤に含まれる微粉の量が少ない上に、無加圧下吸水倍率(CRC)、加圧下吸水倍率(AAP)及び食塩水流れ誘導性(SFC)に優れる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明にかかる吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法は、例えば、紙オムツや生理用ナプキン、失禁パット等の吸収体を含む衛生材料等の吸収性物品の製造に好適に適用できる。
図1
図2
図3