(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照して本発明に係るヒンジの実施の一形態であるヒンジ1について説明する。
図1に示すヒンジ1は第一連結対象物を第二連結対象物に回動可能に連結するものである。
ここで、「第一連結対象物」および「第二連結対象物」は、本発明に係るヒンジにより回動可能に連結される二つの対象物(物品)を指す。
「第一連結対象物」および「第二連結対象物」の具体例としては、電子機器を構成する二つの部材等が挙げられる。
電子機器を構成する二つの部材の具体例としては、レジスターの本体および画像表示部、眼底カメラの本体および外部モニター、書画カメラの本体およびビデオカメラ支持用アーム、等が挙げられる。なお、「第一連結対象物」および「第二連結対象物」は上記具体例に限定されるものではない。
【0018】
図1から
図7に示す如く、ヒンジ1はシャフト10、固定ブラケット20、スペーサ30、第一ワッシャ40、回動ブラケット50、第二ワッシャ60、皿バネ71・72および第三ワッシャ80を具備する。
【0019】
以下では便宜上、
図1に示す如く組み立てられた状態のヒンジ1におけるシャフト10の軸線方向を基準として「上下方向(上方および下方)」、「前後方向(前方および後方)」および「左右方向(左方および右方)」を定義し、これらの方向を用いてヒンジ1を構成する各部材(ヒンジ1が具備する各部材)の形状を説明する。
より詳細には、組み立てられた状態のヒンジ1におけるシャフト10の軸線方向に平行な方向として上下方向を定義し、当該上下方向に対して垂直な方向として前後方向を定義し、上下方向および前後方向の両方に対して垂直な方向として左右方向を定義する。
なお、ここで定義した上下方向、前後方向および左右方向は、ヒンジ1が使用されるときの姿勢(向き)を指すものではない。すなわち、ヒンジ1は、
図1に示す姿勢とは異なる姿勢(向き)でも使用することが可能である。
【0020】
以下では
図8から
図10を用いてシャフト10について説明する。
シャフト10は本発明に係る軸部材の実施の一形態である。
図10の(a)および
図10の(b)に示す如く、シャフト10は押さえ側カシメ部11、押さえ側係止部12、軸支部13、固定側係止部14および固定側カシメ部15を備える。
より詳細には、シャフト10はシャフト10の軸線方向、より詳細にはシャフト10の下端部(一端部)から上端部(他端部)に向かって押さえ側カシメ部11、押さえ側係止部12、軸支部13、固定側係止部14および固定側カシメ部15が並んだ形状を有する。
【0021】
本実施形態のシャフト10は亜鉛合金の一種であるZDC2(JIS H 5301)からなるダイカスト品(鋳造品)であり、押さえ側カシメ部11、押さえ側係止部12、軸支部13、固定側係止部14および固定側カシメ部15が一体成型されたものである。
ZDC2はZDC1(JIS H 5301)、ZDC3(JIS H 5301)、BERIC(日曹金属化学(株)の商標)等の他の亜鉛合金に比べて銅の含有量が少ない。
そのため、ZDC2は他の亜鉛合金に比べて塑性変形時の割れが少なく、機械的性質の経年劣化および寸法の経年変化が小さいという特長を有する。
【0022】
シャフト10には、シャフト10の下端部(一端部)から上端部(他端部)までシャフト10の軸線方向に貫通する軸貫通孔16が形成される。
軸貫通孔16は本発明に係る軸貫通孔の実施の一形態である。軸貫通孔16の軸線はシャフト10の軸線5(
図10の(b)参照)と一致する(同心である)。
軸貫通孔16には、例えば第一連結対象物および第二連結対象物の間で電力あるいは電気信号をやり取りするための配線、第一連結対象物および第二連結対象物の間で流体(液体、気体、あるいはこれらの混合物等)をやり取りするための配管等が通される。
【0023】
押さえ側カシメ部11は本発明に係る押さえ側カシメ部の実施の一形態である。
図10の(a)に示す如く、押さえ側カシメ部11はシャフト10の一端部(本実施形態では、下端部)を成す。
図8の(b)、
図9の(b)、
図10の(a)および
図10の(b)に示す如く、押さえ側カシメ部11の外形は概ね円筒形状である。
より詳細には、軸貫通孔16が押さえ側カシメ部11を上下に貫通しており、軸貫通孔16の内周面から押さえ側カシメ部11の外周面までの厚さ(押さえ側カシメ部11の肉厚)がシャフト10の周方向において一定である。
【0024】
図9の(b)および
図10の(b)に示す如く、軸貫通孔16の内周面のうち、軸貫通孔16の一端部(下端部)、より詳細には押さえ側カシメ部11に対応する部分には押さえ側テーパ面16aが形成される。
押さえ側テーパ面16aは軸貫通孔16の一端部側の開口部分に向かって拡径する。
すなわち、押さえ側テーパ面16aからシャフト10の軸線までの距離は、シャフト10の一端部に近づくほど大きくなる(
図10の(b)参照)。
【0025】
押さえ側係止部12は本発明に係る押さえ側係止部の実施の一形態である。
図10の(a)に示す如く、押さえ側係止部12はシャフト10の軸線方向において押さえ側カシメ部11に連なる部分(本実施形態の場合、押さえ側カシメ部11の上方に連なる部分)を成す。
図8の(b)、
図9の(b)および
図10の(a)に示す如く、押さえ側係止部12の本体部分は、その外径が押さえ側カシメ部11の外径と同じとなる円筒形状である。
より詳細には、軸貫通孔16が押さえ側係止部12を上下に貫通しており、軸貫通孔16の内周面から押さえ側係止部12の本体部分の外周面までの厚さ(押さえ側係止部12の本体部分の肉厚)がシャフト10の周方向において一定である。
【0026】
図9の(b)に示す如く、押さえ側係止部12の本体部分の外周面には計四つの押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dが形成される。
押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dは本発明に係る押さえ側係止突起の実施の一形態である。
図8の(b)、
図9の(b)および
図10の(a)に示す如く、本実施形態の押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dは概ねシャフト10の軸線方向に延びた角柱形状の凸条である。
図9の(b)に示す如く、押さえ側係止突起12aは「押さえ側係止部12の本体部分の外周面のうち左方に対応する部分」に形成され、押さえ側係止部12の本体部分の左方に突出する。押さえ側係止突起12bは「押さえ側係止部12の本体部分の外周面のうち右方に対応する部分」に形成され、押さえ側係止部12の本体部分の右方に突出する。押さえ側係止突起12cは「押さえ側係止部12の外周面のうち前方に対応する部分」に形成され、押さえ側係止部12の本体部分の前方に突出する。押さえ側係止突起12dは「押さえ側係止部12の本体部分の外周面のうち後方に対応する部分」に形成され、押さえ側係止部12の本体部分の後方に突出する。
このように、押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dはシャフト10の半径方向(シャフト10の軸線方向に対して垂直な方向)に突出する。
【0027】
軸支部13は本発明に係る軸支部の実施の一形態である。
図10の(a)に示す如く、軸支部13はシャフト10の軸線方向において押さえ側係止部12に連なるとともに押さえ側係止部12を挟んで押さえ側カシメ部11の反対側となる部分(本実施形態の場合、押さえ側係止部12の上方に連なる部分)を成す。
図8の(b)および
図10の(a)に示す如く、軸支部13の本体部分は、その外径が押さえ側係止部12の本体部分の外径(ひいては押さえ側カシメ部11の外径)と同じとなる円筒形状である。
より詳細には、軸貫通孔16が軸支部13を上下に貫通しており、軸貫通孔16の内周面から軸支部13の本体部分の外周面までの厚さ(軸支部13の本体部分の肉厚)がシャフト10の周方向において一定である。
【0028】
図8の(a)、
図8の(b)および
図10の(a)に示す如く、軸支部13の本体部分の外周面には押さえ側フランジ13a、固定側フランジ13b、および計四つのリブ13c・13d・13e・13fが形成される。
押さえ側フランジ13aは上下一対の盤面および外周端面を有する概ね円盤形状の部分である。押さえ側フランジ13aは軸支部13の本体部分の外周面における一端部(押さえ側係止部12との境界となる部分)からシャフト10の半径方向外向きに突出する。
固定側フランジ13bは上下一対の盤面および外周端面を有する概ね円盤形状の部分である。固定側フランジ13bは軸支部13の本体部分の外周面における他端部(後述する固定側係止部14との境界となる部分)からシャフト10の半径方向外向きに突出する。
リブ13c・13d・13e・13fは長方形状の板状の部分である。
リブ13c・13d・13e・13fは軸支部13の本体部分の外周面において押さえ側フランジ13aおよび固定側フランジ13bで挟まれる部分からシャフト10の半径方向外向きに突出する。
より詳細には、リブ13cは「軸支部13の本体部分の外周面のうち左方に対応する部分」から軸支部13の本体部分の左方に突出し、リブ13dは「軸支部13の本体部分の外周面のうち右方に対応する部分」から軸支部13の本体部分の右方に突出し、リブ13eは「軸支部13の本体部分の外周面のうち前方に対応する部分」から軸支部13の本体部分の前方に突出し、リブ13fは「軸支部13の本体部分の外周面のうち後方に対応する部分」から軸支部13の本体部分の後方に突出する。
リブ13c・13d・13e・13fのシャフト10の軸線方向における一端部は押さえ側フランジ13aの盤面に連なっており、リブ13cのシャフト10の軸線方向における他端部は固定側フランジ13bの盤面に連なっている。
リブ13c・13d・13e・13fの突出側の端面(シャフト10の半径方向外向きの端面)は押さえ側フランジ13aの外周端面および固定側フランジ13bの外周端面と面一となる。
すなわち、リブ13c・13d・13e・13fの突出側の端面、押さえ側フランジ13aの外周端面および固定側フランジ13bの外周端面は、シャフト10の軸線5を中心とする仮想的な円柱の外周面上に配置される。
【0029】
固定側係止部14は本発明に係る固定側係止部の実施の一形態である。
図10の(a)に示す如く、固定側係止部14はシャフト10の軸線方向において軸支部13に連なるとともに軸支部13を挟んで押さえ側係止部12の反対側となる部分(本実施形態の場合、軸支部13の上方に連なる部分)を成す。
図8の(a)、
図9の(a)および
図10の(a)に示す如く、固定側係止部14の本体部分は、その外径が軸支部13の本体部分の外径(ひいては押さえ側係止部12の本体部分の外径および押さえ側カシメ部11の外径)と同じとなる円筒形状である。
より詳細には、軸貫通孔16が固定側係止部14を上下に貫通しており、軸貫通孔16の内周面から固定側係止部14の本体部分の外周面までの厚さ(固定側係止部14の本体部分の肉厚)がシャフト10の周方向において一定である。
【0030】
図9の(a)に示す如く、固定側係止部14の外周面には計二つの固定側係止突起14a・14bが形成される。固定側係止突起14a・14bは本発明に係る固定側係止突起の実施の一形態である。
図8の(a)、
図9の(a)および
図10の(a)に示す如く、本実施形態の固定側係止突起14a・14bは概ねシャフト10の軸線方向に延びた角柱形状の凸条である。
図9の(a)に示す如く、固定側係止突起14aは「固定側係止部14の本体部分の外周面のうち左方に対応する部分」に形成され、固定側係止部14の本体部分の左方に突出する。固定側係止突起14bは「固定側係止部14の本体部分の外周面のうち右方に対応する部分」に形成され、固定側係止部14の本体部分の右方に突出する。
このように、固定側係止突起14a・14bはシャフト10の半径方向(シャフト10の軸線方向に対して垂直な方向)に突出する。
【0031】
固定側カシメ部15は本発明に係る固定側カシメ部の実施の一形態である。
図10の(a)に示す如く、固定側カシメ部15はシャフト10の他端部(本実施形態では、上端部)を成す。
より詳細には、固定側カシメ部15はシャフト10の軸線方向において固定側係止部14に連なるとともに固定側係止部14を挟んで軸支部13の反対側となる部分(本実施形態の場合、固定側係止部14の上方に連なる部分)を成す。
図8の(a)、
図9の(a)、
図10の(a)および
図10の(b)に示す如く、固定側カシメ部15の外形は概ね円筒形状である。
より詳細には、軸貫通孔16が固定側カシメ部15を上下に貫通しており、軸貫通孔16の内周面から固定側カシメ部15の外周面までの厚さ(固定側カシメ部15の肉厚)がシャフト10の周方向において一定である。
【0032】
図9の(a)および
図10の(b)に示す如く、軸貫通孔16の内周面のうち、軸貫通孔16の他端部(上端部)、より詳細には固定側カシメ部15に対応する部分には固定側テーパ面16bが形成される。
固定側テーパ面16bは軸貫通孔16の他端部側の開口部分に向かって拡径する。すなわち、固定側テーパ面16bからシャフト10の軸線5までの距離は、シャフト10の他端部に近づくほど大きくなる(
図10の(b)参照)。
【0033】
以下では
図11を用いて固定ブラケット20について説明する。
固定ブラケット20は本発明に係る固定部材の実施の一形態である。
固定ブラケット20は本体部21および屈曲部26を備える。
本実施形態の固定ブラケット20は鋼板からなる部材であり、鋼板に対して適宜折り曲げ、穿孔等の機械加工を施すことにより製造される。
本体部21は上下一対の板面を有する板状の部分であり、固定ブラケット20の主たる構造体を成す。
【0034】
本体部21には挿通孔22、係止孔23・24、および貫通孔25a・25b・25c・25d・25eが形成される。
【0035】
挿通孔22は本発明に係る「固定部材の挿通孔」の実施の一形態である。
挿通孔22はシャフト10を固定ブラケット20に挿通するための孔であり(
図6参照)、本体部21の前後中央部かつ左右中央部となる位置において本体部21の上下一対の板面を上下に貫通する。
挿通孔22の内周面には固定側係止溝22a・22bが形成される。固定側係止溝22a・22bは本発明に係る固定側係止溝の実施の一形態である。
本実施形態の固定側係止溝22aは「挿通孔22の内周面において左方に対応する部分」に形成され、固定側係止溝22bは「挿通孔22の内周面において右方に対応する部分」に形成される。
【0036】
係止孔23・24は後で詳述するスペーサ30を固定ブラケット20に相対回転不能に係止するための孔であり、本体部21の上下一対の板面を上下に貫通する。
係止孔23は挿通孔22の右前方となる位置に配置され、係止孔24は挿通孔22の左後方となる位置に配置される。
【0037】
貫通孔25a・25b・25c・25d・25eは固定ブラケット20を図示せぬ第一連結対象物(例えば、レジスターの本体、眼底カメラの本体、書画カメラの本体等)に固定するための孔であり、本体部21の上下一対の板面を上下に貫通する。
貫通孔25aは挿通孔22の前方かつやや左寄りとなる位置に配置され、貫通孔25bは挿通孔22の前方かつやや右寄りとなる位置に配置され、貫通孔25cは挿通孔22の後方かつやや左寄りとなる位置に配置され、貫通孔25dは挿通孔22の後方かつやや右寄りとなる位置に配置され、貫通孔25eは挿通孔22の右方かつやや後寄りとなる位置に配置される。
【0038】
屈曲部26は前後一対の板面を有し、左右方向に長い概ね長方形状の板状の部分である。屈曲部26の上端部は本体部21の後端部に連なっている。
屈曲部26には貫通孔26a・26bが形成される。貫通孔26a・26bは固定ブラケット20を図示せぬ第一連結対象物に固定するための孔であり、屈曲部26の前後一対の板面を前後に貫通する。
貫通孔26aは屈曲部26の左端部に配置され、貫通孔26bは屈曲部26の右端部に配置される。
【0039】
貫通孔25a・25b・25c・25d・25eおよび貫通孔26a・26bにそれぞれ図示せぬボルトを貫装し、これらのボルトを第一連結対象物に形成されたネジ穴に螺装することにより、固定ブラケット20は第一連結対象物に固定される。
【0040】
以下では
図6および
図7を用いて固定ブラケット20をシャフト10に取り付ける手順について説明する。
【0041】
まず、
図6に示す如く、シャフト10の他端部(上端部)、より詳細には固定側カシメ部15および固定側係止部14が固定ブラケット20の挿通孔22に挿通される。
シャフト10の他端部(上端部)が固定ブラケット20の挿通孔22に挿通され、固定ブラケット20の本体部21の下側の板面のうち挿通孔22の近傍となる部分(
図11の(b)参照)が軸支部13の固定側フランジ13bの上側の盤面(
図8の(a)参照)に当接したとき、固定側係止突起14aは固定側係止溝22aに嵌合し、固定側係止突起14bは固定側係止溝22bに嵌合する。
その結果、固定ブラケット20がシャフト10に相対回転不能に係止される。
【0042】
次に、固定側係止部14が固定ブラケット20の挿通孔22に挿通された状態で固定側カシメ部15にカシメ加工が施される。
より詳細には、シャフト10を所定の位置に固定し、固定側係止部14を固定ブラケット20の挿通孔22に挿通し、シャフト10の軸貫通孔16の他端部側(上端部側)の開口部に図示せぬカシメ用ポンチの先端部を差し込み、当該カシメ用ポンチを下方に押し下げる(カシメ用ポンチを軸貫通孔16の内部に押し込む)、という一連の作業を行うことにより、固定側カシメ部15にカシメ加工が施される。
固定側カシメ部15にカシメ加工を施すことにより、固定側カシメ部15は塑性変形し、固定側カシメ部15はシャフト10の半径方向に押し拡げられるとともに下方(軸支部13に接近する方向)に押し下げられる。ここで、本実施形態では軸貫通孔16の他端部側(上端部側)に固定側テーパ面16bが形成されているので、固定側カシメ部15はシャフト10の半径方向にスムーズに押し拡げられる。
その結果、
図7に示す如く、塑性変形した固定側カシメ部15は固定ブラケット20の本体部21の上側の板面のうち挿通孔22の近傍となる部分(
図11の(a)参照)に当接し、固定ブラケット20をシャフト10から脱落不能に支持する。
より詳細には、軸支部13(固定側フランジ13b)および塑性変形した固定側カシメ部15が固定ブラケット20を上下に挟むことにより、固定ブラケット20がシャフト10から脱落不能に支持される。
【0043】
このようにして、固定ブラケット20はシャフト10に相対回転不能、かつシャフト10から脱落不能に固定される。
また、シャフト10に固定された固定ブラケット20を先に説明した如く第一連結対象物に固定することにより、シャフト10は固定ブラケット20を介して第一連結対象物に固定される。
【0044】
以下では
図12を用いてスペーサ30について説明する。
スペーサ30は「シャフト10に固定された固定ブラケット20」から後で詳述する「シャフト10に回動可能に軸支された回動ブラケット50」までの距離を一定に保持するための部材である。
【0045】
図12に示すスペーサ30は上下一対の端面、外周面および内周面を有し、概ねリング状(軸線方向に短い円筒形状)の部材である。
本実施形態のスペーサ30は樹脂材料を一体成型することにより製造される。また、スペーサ30の上下一対の端面に周方向の溝を形成して適宜「肉抜き」を行うことにより、スペーサ30に要求される強度を確保しつつスペーサ30の軽量化(省資源化)を図っている。
【0046】
スペーサ30には挿通孔31が形成される。挿通孔31はスペーサ30の上下一対の端面を上下に貫通する孔であり、挿通孔31の内周面がスペーサ30の内周面を成す。
スペーサ30の上側の端面には係止突起33・34が形成される。係止突起33・34は概ね円柱形状の突起であり、スペーサ30の上側の端面から上方に突出する。
【0047】
以下では
図14の(a)を用いて第一ワッシャ40について説明する。
第一ワッシャ40は上下一対の盤面、外周面および内周面を有する薄いリング状(軸線方向に短い円筒形状)の部材である。第一ワッシャ40は例えばステンレス鋼、銅合金等の金属材料で構成される。
第一ワッシャ40には挿通孔41が形成される。挿通孔41は第一ワッシャ40の上下一対の盤面を上下に貫通する。挿通孔41の内周面が第一ワッシャ40の内周面を成す。
第一ワッシャ40には係止孔43・44が形成される。係止孔43・44は第一ワッシャ40の上下一対の盤面を上下に貫通する。係止孔43・44は挿通孔41を挟む位置に配置される。
【0048】
以下では
図13の(a)および
図13の(b)を用いて回動ブラケット50について説明する。
回動ブラケット50は本発明に係る回動部材の実施の一形態である。
本実施形態の回動ブラケット50は鋼板からなる部材であり、鋼板に対して適宜折り曲げ、穿孔等の機械加工を施すことにより製造される。
本実施形態の回動ブラケット50は本体部51、回動規制部55および脚部56・57・58・59を備える。
【0049】
本体部51は上下一対の板面を有する板状の部分であり、回動ブラケット50の主たる構造体を成す。
本体部51には挿通孔52が形成される。挿通孔52は本体部51の上下一対の板面を上下に貫通する。
本体部51には係止突起53・54が形成される。係止突起53・54は概ね円柱形状の突起であり、本体部51の上側の板面から上方に突出する。
【0050】
回動規制部55は前後一対の板面を有する板状の部分である。回動規制部55の上端部は本体部51の前端部に連なる。
【0051】
脚部56・57・58・59は本体部51から延びた板状の部分である。
より詳細には、脚部56の上端部は本体部51の左前部に連なり、脚部57の上端部は本体部51の右前部に連なり、脚部58の上端部は本体部51の左後部に連なり、脚部59の上端部は本体部51の右後部に連なる。
脚部56には貫通孔56a・56bが形成され、脚部57には貫通孔57a・57bが形成され、脚部58には貫通孔58a・58b・58cが形成され、脚部59には貫通孔59a・59bが形成される。
【0052】
貫通孔56a・56b・57a・57b・58a・58b・58c・59a・59bにそれぞれ図示せぬボルトを貫装し、これらのボルトを図示せぬ第二連結対象物(例えば、レジスターの画像表示部、眼底カメラの外部モニター、書画カメラのビデオカメラ支持用アーム等)に形成されたネジ穴に螺装することにより、回動ブラケット50は第二連結対象物に固定される。
【0053】
以下では
図14の(b)を用いて第二ワッシャ60について説明する。
第二ワッシャ60は本発明に係る摩擦力発生部材の実施の一形態である。
第二ワッシャ60は上下一対の盤面を有する概ね円盤形状の部材である。
本実施形態の第二ワッシャ60は鋼板に打ち抜き加工を施すことにより製造される。
第二ワッシャ60には挿通孔61が形成される。挿通孔61は本発明に係る「摩擦力発生部材の挿通孔」の実施の一形態である。挿通孔61は第二ワッシャ60の上下一対の盤面を上下に貫通する。
挿通孔61の内周面には第二押さえ側係止溝61a・61b・61c・61dが形成される。第二押さえ側係止溝61a・61b・61c・61dは本発明に係る第二押さえ側係止溝の実施の一形態である。
本実施形態の第二押さえ側係止溝61aは「挿通孔61の内周面において左方に対応する部分」に形成され、第二押さえ側係止溝61bは「挿通孔61の内周面において右方に対応する部分」に形成され、第二押さえ側係止溝61cは「挿通孔61の内周面において前方に対応する部分」に形成され、第二押さえ側係止溝61dは「挿通孔61の内周面において後方に対応する部分」に形成される。
【0054】
以下では
図15の(a)を用いて皿バネ71・72について説明する。
皿バネ71・72は本発明に係る弾性部材の実施の一形態である。
皿バネ71は上下一対の盤面、外周面および内周面を有する概ね円盤形状の部材である。本実施形態の皿バネ71は弾性変形可能な材料であるバネ鋼からなる板材に打ち抜き加工を施すことにより製造される。
皿バネ71には挿通孔71aが形成される。挿通孔71aは本発明に係る「弾性部材の挿通孔」の実施の一形態である。挿通孔71aは皿バネ71の上下一対の盤面を上下に貫通する。挿通孔71aの内周面が皿バネ71の内周面を成す。
皿バネ71の上下一対の盤面は外周面側の端部から内周面側の端部に向かって下方に傾斜している(
図6参照)。
【0055】
皿バネ72は上下一対の盤面、外周面および内周面を有する概ね円盤形状の部材であり、皿バネ72には挿通孔72aが形成される。
本実施形態の皿バネ72は皿バネ71と同じ形状かつ同じ材料からなるものを上下逆にしたものに相当することから、皿バネ72の詳細な説明については省略する。
【0056】
以下では
図15の(b)を用いて第三ワッシャ80について説明する。
第三ワッシャ80は本発明に係る押さえ部材の実施の一形態である。
第三ワッシャ80は上下一対の盤面を有する概ね円盤形状の部材である。
本実施形態の第三ワッシャ80は鋼板に打ち抜き加工を施すことにより製造される。
第三ワッシャ80には挿通孔81が形成される。挿通孔81は本発明に係る「押さえ部材の挿通孔」の実施の一形態である。挿通孔81は第三ワッシャ80の上下一対の盤面を上下に貫通する。
挿通孔81の内周面には押さえ側係止溝81a・81b・81c・81dが形成される。
押さえ側係止溝81a・81b・81c・81dは本発明に係る押さえ側係止溝の実施の一形態である。
本実施形態の押さえ側係止溝81aは「挿通孔81の内周面において左方に対応する部分」に形成され、押さえ側係止溝81bは「挿通孔81の内周面において右方に対応する部分」に形成され、押さえ側係止溝81cは「挿通孔81の内周面において前方に対応する部分」に形成され、押さえ側係止溝81dは「挿通孔81の内周面において後方に対応する部分」に形成される。
第三ワッシャ80には回動規制突起82が形成される。
本実施形態の回動規制突起82は第三ワッシャ80の外周面から第三ワッシャ80の半径方向(より詳細には、右後方)に突出する。
【0057】
以下では
図7を用いてスペーサ30、第一ワッシャ40、回動ブラケット50、第二ワッシャ60、皿バネ71・72および第三ワッシャ80をシャフト10に取り付ける手順について説明する。
なお、以下の説明では固定ブラケット20は既にシャフト10に固定されているものとする。
【0058】
まず、
図7に示す如く、シャフト10の一端部(下端部)、より詳細には押さえ側カシメ部11、押さえ側係止部12および軸支部13がスペーサ30の挿通孔31に挿通される。
シャフト10の一端部(下端部)がスペーサ30の挿通孔31に挿通され、次いでスペーサ30の上側の端面(
図12の(a)参照)が固定ブラケット20の本体部21の下側の板面(
図11の(b)参照)に当接したとき、係止突起33は係止孔23に嵌合し、係止突起34は係止孔24に嵌合する(
図1および
図4の(a)参照)。
その結果、スペーサ30は固定ブラケット20、ひいてはシャフト10に相対回転不能に係止される。
【0059】
次に、
図7に示す如く、シャフト10の一端部(下端部)、より詳細には押さえ側カシメ部11、押さえ側係止部12および軸支部13が第一ワッシャ40の挿通孔41に挿通される。
シャフト10の一端部(下端部)が第一ワッシャ40の挿通孔41に挿通されたとき、第一ワッシャ40はシャフト10(より詳細には、軸支部13)に回転可能に軸支され、第一ワッシャ40の上側の盤面(
図14の(a)参照)はスペーサ30の上側の端面(
図12の(b)参照)に当接する。
【0060】
続いて、
図7に示す如く、シャフト10の一端部(下端部)、より詳細には押さえ側カシメ部11、押さえ側係止部12および軸支部13が回動ブラケット50の挿通孔52に挿通される。
シャフト10の一端部(下端部)が回動ブラケット50の挿通孔52に挿通され、回動ブラケット50の本体部51の上側の板面(
図13の(a)参照)が第一ワッシャ40の下側の盤面に当接したとき、係止突起53は係止孔43に嵌合し、係止突起54は係止孔44に嵌合する。
その結果、第一ワッシャ40は回動ブラケット50に相対回転不能に係止され、第一ワッシャ40および回動ブラケット50は一体的にシャフト10(より詳細には、軸支部13)に回転可能(回動可能)に軸支される。
【0061】
続いて、
図7に示す如く、シャフト10の一端部(下端部)、より詳細には押さえ側カシメ部11および押さえ側係止部12が第二ワッシャ60の挿通孔61に挿通される。
シャフト10の一端部(下端部)が第二ワッシャ60の挿通孔61に挿通されたとき、押さえ側係止突起12aは第二押さえ側係止溝61aに嵌合し、押さえ側係止突起12bは第二押さえ側係止溝61bに嵌合し、押さえ側係止突起12cは第二押さえ側係止溝61cに嵌合し、押さえ側係止突起12dは第二押さえ側係止溝61dに嵌合する。
その結果、第二ワッシャ60はシャフト10に相対回転不能に係止される。
【0062】
図10の(b)に示す如くシャフト10の軸支部13の軸線方向(上下方向)の高さ(押さえ側フランジ13aの下側の盤面から固定側フランジ13bの上側の盤面までの距離)をH1とし、
図12の(a)に示す如くスペーサ30の軸線方向(上下方向)の高さ(スペーサ30の上下一対の端面間の距離)をH2とし、
図14の(a)に示す如く第一ワッシャ40の軸線方向(上下方向)の高さ(第一ワッシャ40の上下一対の盤面間の距離)をH3とし、
図13の(a)に示す如く回動ブラケット50の本体部51の軸線方向(上下方向)の高さ(本体部51の上下一対の板面間の距離)をH4としたとき、本実施形態ではH1はH2、H3およびH4の和よりも小さい(H1<H2+H3+H4が成立する)。
従って、
図7に示す如く、シャフト10の一端部(下端部)が第二ワッシャ60の挿通孔61に挿通され、かつ第二ワッシャ60の上側の盤面の外周部が回動ブラケット50の本体部51の下側の板面に当接したとき、第二ワッシャ60の上側の盤面の内周部は軸支部13の下端面(より詳細には、押さえ側フランジ13aの下側の盤面)には当接しない。
【0063】
続いて、
図7に示す如く、シャフト10の一端部(下端部)、より詳細には押さえ側カシメ部11および押さえ側係止部12が皿バネ71の挿通孔71aに挿通される。
シャフト10の一端部(下端部)が皿バネ71の挿通孔71aに挿通されたとき、皿バネ71の上側の盤面の外周部が第二ワッシャ60の下側の盤面の外周部に当接する。
【0064】
続いて、
図7に示す如く、シャフト10の一端部(下端部)、より詳細には押さえ側カシメ部11および押さえ側係止部12が皿バネ72の挿通孔72aに挿通される。
シャフト10の一端部(下端部)が皿バネ72の挿通孔72aに挿通されたとき、皿バネ72の上側の盤面の内周部が皿バネ71の下側の盤面の内周部に当接する。
【0065】
続いて、
図7に示す如く、シャフト10の一端部(下端部)、より詳細には押さえ側カシメ部11および押さえ側係止部12が第三ワッシャ80の挿通孔81に挿通される。
押さえ側係止部12が第三ワッシャ80の挿通孔81に挿通されたとき、押さえ側係止突起12aは押さえ側係止溝81aに嵌合し、押さえ側係止突起12bは押さえ側係止溝81bに嵌合し、押さえ側係止突起12cは押さえ側係止溝81cに嵌合し、押さえ側係止突起12dは押さえ側係止溝81dに嵌合する。
その結果、第三ワッシャ80はシャフト10に相対回転不能に係止される。なお、シャフト10(押さえ側係止部12)が第三ワッシャ80の挿通孔81に挿通されているとき、シャフト10はシャフト10の軸線方向(上下方向)に移動可能である。
また、押さえ側係止部12が第三ワッシャ80の挿通孔81に挿通されたとき、第三ワッシャ80の上側の盤面の外周部は皿バネ72の下側の盤面の外周部に当接する。
【0066】
続いて、
図7に示す如く、軸支部13がスペーサ30の挿通孔31、第一ワッシャ40の挿通孔41および回動ブラケット50の挿通孔52に挿通され、かつ押さえ側係止部12が第二ワッシャ60の挿通孔61、皿バネ71の挿通孔71a、皿バネ72の挿通孔72aおよび第三ワッシャ80の挿通孔81に挿通された状態で、押さえ側カシメ部11にカシメ加工が施される。
より詳細には、シャフト10を所定の位置に固定し、軸支部13をスペーサ30の挿通孔31、第一ワッシャ40の挿通孔41および回動ブラケット50の挿通孔52に挿通し、押さえ側係止部12を第二ワッシャ60の挿通孔61、皿バネ71の挿通孔71a、皿バネ72の挿通孔72aおよび第三ワッシャ80の挿通孔81に挿通し、シャフト10の軸貫通孔16の一端部側(下端部側)の開口部に図示せぬカシメ用ポンチの先端部を差し込み、当該カシメ用ポンチを上方に押し上げる(カシメ用ポンチを軸貫通孔16の内部に押し込む)、という一連の作業を行うことにより、押さえ側カシメ部11にカシメ加工が施される。
【0067】
押さえ側カシメ部11にカシメ加工を施すことにより、押さえ側カシメ部11は塑性変形し、押さえ側カシメ部11はシャフト10の半径方向に押し拡げられるとともに上方(軸支部13に接近する方向)に押し上げられる。ここで、本実施形態では軸貫通孔16の一端部側(下端部側)に押さえ側テーパ面16aが形成されているので、押さえ側カシメ部11はシャフト10の半径方向にスムーズに押し拡げられる。
その結果、
図7に示す如く、塑性変形した押さえ側カシメ部11は第三ワッシャ80の下の盤面のうち挿通孔81の近傍となる部分に当接し、スペーサ30、第一ワッシャ40、回動ブラケット50、第二ワッシャ60、皿バネ71・72および第三ワッシャ80をシャフト10から脱落不能に支持する。
より詳細には、シャフト10に固定された固定ブラケット20および塑性変形した押さえ側カシメ部11がスペーサ30、第一ワッシャ40、回動ブラケット50、第二ワッシャ60、皿バネ71・72および第三ワッシャ80を上下に挟むことにより、スペーサ30、第一ワッシャ40、回動ブラケット50、第二ワッシャ60、皿バネ71・72および第三ワッシャ80がシャフト10から脱落不能に支持される。
【0068】
また、押さえ側カシメ部11にカシメ加工を施すことにより、カシメ加工により塑性変形した押さえ側カシメ部11が第三ワッシャ80を上方(シャフト10の軸線方向かつ第三ワッシャ80が皿バネ71・72に接近する方向)に押す。
その結果、第三ワッシャ80が皿バネ71・72に当接し、皿バネ71・72を上方(シャフト10の軸線方向かつ皿バネ71・72が圧縮される方向)に押し、皿バネ71・72が弾性変形する。
【0069】
そして、皿バネ71・72が弾性変形することにより、皿バネ71・72が第二ワッシャ60を上方(シャフト10の軸線方向かつ第二ワッシャ60が回動ブラケット50に接近する方向)に押し、第二ワッシャ60が回動ブラケット50に当接する。
その結果、第一ワッシャ40の上側の盤面とスペーサ30の上側の端面との間、および、第二ワッシャ60の上側の盤面の外周部と回動ブラケット50の本体部51の下側の板面との間には、皿バネ71・72の弾性力(弾性変形した皿バネ71・72が元の形状に戻ろうとする力)に基づく摩擦力が発生する。
なお、本実施形態では固定ブラケット20がシャフト10に相対回転不能に固定され、スペーサ30が固定ブラケット20に相対回転不能に係止され、かつ第一ワッシャ40が回動ブラケット50に相対回転不能に係止されているので、実質的にはシャフト10と回動ブラケット50との間に皿バネ71・72の弾性力に基づく摩擦力が発生することとなる。
【0070】
このように、本発明において「軸部材と回動部材との間に弾性部材の弾性力に基づく摩擦力が発生する」場合とは、軸部材と回動部材とが直接的に当接している部分に摩擦力が発生する場合に限定されない。
すなわち、軸部材と回動部材との間に単数または複数の別部材が介在し、複数の別部材の間、別部材と軸部材との間、あるいは別部材と回動部材との間に摩擦力が発生する場合等、「実質的に軸部材と回動部材との間に弾性部材の弾性力に基づく摩擦力が発生する場合」も含む。
【0071】
そして、シャフト10と回動ブラケット50との間に皿バネ71・72の弾性力に基づく摩擦力が発生することにより、シャフト10に対する回動ブラケット50の回動に抗するトルクが発生する。換言すれば、シャフト10と回動ブラケット50との間に発生する摩擦力がシャフト10に対する回動ブラケット50の回動に抗するトルクとなる。
その結果、シャフト10と回動ブラケット50との間に発生する摩擦力よりも大きいトルクが外部からヒンジ1に作用した場合にはシャフト10に対して回動ブラケット50が回動するが、シャフト10と回動ブラケット50との間に発生する摩擦力以下のトルクが外部からヒンジ1に作用した場合にはシャフト10に対して回動ブラケット50が回動しない。
【0072】
以上の如く、ヒンジ1は、
固定ブラケット20を介して図示せぬ第一連結対象物に固定されるシャフト10と、
シャフト10に回動可能に軸支されるとともに図示せぬ第二連結対象物に固定される回動ブラケット50と、
シャフト10が挿通される挿通孔71a・72aがそれぞれ形成される皿バネ71・72と、
シャフト10がシャフト10の軸線方向に移動可能に挿通される挿通孔81が形成される第三ワッシャ80と、
を具備し、
シャフト10には、シャフト10の一端部から他端部までシャフト10の軸線方向に貫通する軸貫通孔16が形成され、
シャフト10は、
シャフト10の一端部を成し、外周面から軸貫通孔16の内周面までの厚さがシャフト10の周方向において一定である円筒形状の押さえ側カシメ部11と、
シャフト10の軸線方向において押さえ側カシメ部11に連なる円筒形状の部分を成し、外周面にはシャフト10の半径方向に突出する押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dが形成される押さえ側係止部12と、
シャフト10の軸線方向において押さえ側係止部12に連なるとともに押さえ側係止部12を挟んで押さえ側カシメ部11の反対側となる部分であって回動ブラケット50が軸支される部分を成す軸支部13と、
を備え、
第三ワッシャ80の挿通孔81の内周面には押さえ側係止溝81a・81b・81c・81dが形成され、
シャフト10の押さえ側係止部12が第三ワッシャ80の挿通孔81に挿通されたときには押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dが押さえ側係止溝81a・81b・81c・81dに嵌合することにより第三ワッシャ80がシャフト10に相対回転不能に係止され、
回動ブラケット50がシャフト10の軸支部13に軸支されるとともにシャフト10の押さえ側係止部12が皿バネ71・72の挿通孔71a・72aおよび第三ワッシャ80の挿通孔81に挿通された状態で押さえ側カシメ部11にカシメ加工を施すことにより、当該カシメ加工により塑性変形した押さえ側カシメ部11が第三ワッシャ80をシャフト10の軸線方向かつ第三ワッシャ80が皿バネ71・72に接近する方向(本実施形態では、上方)に押し、第三ワッシャ80が皿バネ71・72に当接して皿バネ71・72をシャフト10の軸線方向かつ圧縮される方向(本実施形態では、上方)に押し、皿バネ71・72が弾性変形し、シャフト10と回動ブラケット50との間に皿バネ71・72の弾性力に基づく摩擦力が発生し、シャフト10に対する回動ブラケット50の回動に抗するトルクが発生し、塑性変形した押さえ側カシメ部11が回動ブラケット50、皿バネ71・72および第三ワッシャ80をシャフト10から脱落不能に支持する。
このようにヒンジ1を構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、シャフト10の押さえ側カシメ部11と押さえ側係止部12とはシャフト10の軸線方向において明確に分けられており、かつ、押さえ側カシメ部11の外周面から軸貫通孔16の内周面までの厚さ(押さえ側カシメ部11の肉厚)がシャフト10の周方向において一定である円筒形状であるため、押さえ側カシメ部11にカシメ加工を施した場合でも押さえ側カシメ部11の塑性変形量はシャフト10の周方向において概ね均一であり、塑性変形した押さえ側カシメ部11に「割れ(クラック)」が発生することを防止することが可能である。
また、押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dが押さえ側係止溝81a・81b・81c・81dに嵌合することにより、第三ワッシャ80をシャフト10に相対回転不能に係止することが可能である。
さらに、第三ワッシャ80をシャフト10に相対回転不能に係止することにより、第三ワッシャ80と塑性変形した押さえ側カシメ部11との当接部分における摩耗を防止することが可能であり、ひいてはヒンジ1の耐久性向上(長寿命化)に寄与する。
【0073】
また、ヒンジ1は
シャフト10が挿通される挿通孔61が形成される第二ワッシャ60を具備し、
第二ワッシャ60の挿通孔61の内周面には第二押さえ側係止溝61a・61b・61c・61dが形成され、
シャフト10の押さえ側係止部12が第二ワッシャ60の挿通孔61に挿通されたときには押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dが第二押さえ側係止溝61a・61b・61c・61dに嵌合することにより第二ワッシャ60がシャフト10に相対回転不能に係止され、
回動ブラケット50がシャフト10の軸支部13に軸支されるとともにシャフト10の押さえ側係止部12が第二ワッシャ60の挿通孔61、皿バネ71・72の挿通孔71a・72aおよび第三ワッシャ80の挿通孔81に挿通された状態で押さえ側カシメ部11にカシメ加工を施すことにより、当該カシメ加工により塑性変形した押さえ側カシメ部11が第三ワッシャ80をシャフト10の軸線方向かつ第三ワッシャ80が皿バネ71・72に接近する方向(本実施形態では、上方)に押し、第三ワッシャ80が皿バネ71・72に当接して皿バネ71・72をシャフト10の軸線方向かつ圧縮される方向(本実施形態では、上方)に押し、皿バネ71・72が弾性変形し、皿バネ71・72が第二ワッシャ60をシャフト10の軸線方向かつ第二ワッシャ60が回動ブラケット50に接近する方向(本実施形態では、上方)に押し、第二ワッシャ60が回動ブラケット50に当接してシャフト10と回動ブラケット50との間に皿バネ71・72の弾性力に基づく摩擦力が発生し、シャフト10に対する回動ブラケット50の回動に抗するトルクが発生し、塑性変形した押さえ側カシメ部11が回動ブラケット50、第二ワッシャ60、皿バネ71・72および第三ワッシャ80をシャフト10から脱落不能に支持する。
このようにヒンジ1を構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dが第二押さえ側係止溝61a・61b・61c・61dに嵌合することにより、第二ワッシャ60をシャフト10に相対回転不能に係止することが可能である。
さらに、第二ワッシャ60をシャフト10に相対回転不能に係止することにより、皿バネ71・72はシャフト10に相対回転不能に係止された第二ワッシャ60およびシャフト10に相対回転不能に係止された第三ワッシャ80によって挟まれた位置に配置されることとなり、シャフト10に対して回動ブラケット50が回動した場合でも第二ワッシャ60と皿バネ71との当接部分、および第三ワッシャ80と皿バネ72との当接部分は相対回転せず、これらの当接部分における摩耗を防止することが可能であり、ひいてはヒンジ1の耐久性向上(長寿命化)に寄与する。
【0074】
また、ヒンジ1は、
シャフト10および第一連結対象物に固定されることによりシャフト10を第一連結対象物に固定する固定ブラケット20を具備し、
シャフト10は、
シャフト10の軸線方向において軸支部13に連なるとともに軸支部13を挟んで押さえ側係止部12の反対側となる部分であって円筒形状の部分を成し、外周面にはシャフト10の半径方向に突出する固定側係止突起14a・14bが形成される固定側係止部14と、
シャフト10の軸線方向において固定側係止部14に連なるとともに固定側係止部14を挟んで軸支部13の反対側となる部分であってシャフト10の他端部を成し、外周面から軸貫通孔16の内周面までの厚さがシャフト10の周方向において一定である円筒形状の固定側カシメ部15と、
を備え、
固定ブラケット20にはシャフト10を挿通する挿通孔22が形成され、
固定ブラケット20の挿通孔22の内周面には固定側係止溝22a・22bが形成され、
シャフト10の固定側係止部14が固定ブラケット20の挿通孔22に挿通されたときには固定側係止突起14a・14bが固定側係止溝22a・22bに嵌合することにより固定ブラケット20がシャフト10に相対回転不能に係止され、
シャフト10の固定側係止部14が固定ブラケット20の挿通孔22に挿通された状態で固定側カシメ部15にカシメ加工を施すことにより、当該カシメ加工により塑性変形した固定側カシメ部15が固定ブラケット20をシャフト10から脱落不能に支持する。
このようにヒンジ1を構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、シャフト10の固定側カシメ部15と固定側係止部14とはシャフト10の軸線方向において明確に分けられており、かつ、固定側カシメ部15の外周面から軸貫通孔16の内周面までの厚さ(固定側カシメ部15の肉厚)がシャフト10の周方向において一定である円筒形状であるため、固定側カシメ部15にカシメ加工を施した場合でも固定側カシメ部15の塑性変形量はシャフト10の周方向において概ね均一であり、塑性変形した固定側カシメ部15に「割れ(クラック)」が発生することを防止することが可能である。
また、固定側係止突起14a・14bが固定側係止溝22a・22bに嵌合することにより、固定ブラケット20をシャフト10に相対回転不能に固定することが可能である。
さらに、固定ブラケット20をシャフト10に相対回転不能に固定することにより、固定ブラケット20と塑性変形した固定側カシメ部15との当接部分における摩耗を防止することが可能であり、ひいてはヒンジ1の耐久性向上(長寿命化)に寄与する。
【0075】
本実施形態では、固定ブラケット20と図示せぬ第一連結対象物とは別部材であり、ボルトにより固定ブラケット20を図示せぬ第一連結対象物に固定するが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係る固定部材および第一連結対象物が一体的に成形されても良い(第一連結対象物が固定部材を兼ねても良く、あるいは第一連結対象物の一部が固定部材を成しても良い)。
【0076】
本実施形態では、回動ブラケット50と図示せぬ第二連結対象物とは別部材であり、ボルトにより回動ブラケット50を図示せぬ第二連結対象物に固定するが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係る回動部材および第二連結対象物が一体的に成形されても良い(第二連結対象物が回動部材を兼ねても良く、あるいは第二連結対象物の一部が回動部材を成しても良い)。
【0077】
本実施形態ではシャフト10が亜鉛合金の一種であるZDC2からなるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係る軸部材を構成する材料は本発明に係るヒンジに要求される機械的強度を確保することが可能であり、かつ軸部材の端部(押さえ側カシメ部、あるいは固定側カシメ部)にカシメ加工を施したときに当該端部に割れ(クラック)が発生しにくい材料を選択することが望ましい。ZDC2はこのような条件を満たす材料の一例である。
【0078】
本実施形態では押さえ側係止部12には計四つの押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dが形成され、押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dは概ねシャフト10の軸線方向に延びた角柱形状の凸条であるが、本発明に係る押さえ側係止突起の個数および形状はこれに限定されない。
すなわち、押さえ部材(および摩擦力発生部材)を係止可能であれば、押さえ側係止突起の個数は単数でも複数でも良く、押さえ側係止突起の形状が押さえ側係止突起12a・12b・12c・12dとは異なる形状(例えば、軸部材の軸線方向視で軸部材の半径方向に突出した半円形状の断面を有し、軸部材の軸線方向に延びた形状の凸条)でも良い。
【0079】
本実施形態では、弾性部材として皿バネ71・72(円錐台の外周面の如き外形を有する部材)を用いたが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係る弾性部材は、軸部材を挿通する挿通孔が形成され、かつ当該挿通孔に軸部材が挿通されているときに当該軸部材の軸線方向に弾性変形することにより当該軸部材の軸線方向における長さが変化し得る部材であれば良い。
本発明に係る弾性部材の具体例としては、皿バネ、ウェーブワッシャ(波形ばね座金)、スプリングワッシャ(ばね座金)、ゴムブッシュ(円筒形状に成形されたゴム製の部材)等が挙げられる。
【0080】
本実施形態では説明の便宜上、まず固定側カシメ部15にカシメ加工を施し、次いで押さえ側カシメ部11にカシメ加工を施したが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジにおいては、先に押さえ側カシメ部にカシメ加工を施し、後で固定側カシメ部にカシメ加工を施しても良く、押さえ側カシメ部および固定側カシメ部の両方に同時にカシメ加工を施しても良い。
【0081】
本実施形態では回動ブラケット50が回動規制部55を備え、第三ワッシャ80には回動規制突起82が形成される。
その結果、シャフト10の軸線方向から見て回動規制部55および回動規制突起82が重ならない範囲(角度)においてはシャフト10に対して回動ブラケット50が回動することができる。また、回動規制部55および回動規制突起82が重なる範囲(角度)においては回動規制部55および回動規制突起82が当接する(干渉する)ため、シャフト10に対して回動ブラケット50は回動することができない。
このように、回動規制部55および回動規制突起82を設け、これらの形状を適宜選択することにより、ヒンジ1の用途に応じてヒンジ1の回動する範囲(角度)を適宜設定することが可能である。