(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706191
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
F21S 8/10 20060101AFI20150402BHJP
F21Y 101/00 20060101ALN20150402BHJP
【FI】
F21S8/10 183
F21S8/10 181
F21Y101:00 100
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-43500(P2011-43500)
(22)【出願日】2011年3月1日
(65)【公開番号】特開2012-181980(P2012-181980A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2014年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守屋 広明
(72)【発明者】
【氏名】三間 泰行
【審査官】
石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−006606(JP,A)
【文献】
実開昭61−006205(JP,U)
【文献】
特開2000−149641(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02685265(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口したハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されたリフレクタと、
前記ハウジングの前面開口の周縁に沿って配置された環状のエクステンションと、
を備える車両用前照灯において、
前記ハウジングは、当該ハウジングの開口端から所定長さに亘って前後方向に沿った溝部を内周面に有し、
前記リフレクタは、左右方向に突設されたボス部を外周面に有し、
前記エクステンションは、後方に延出された延出部を有し、
前記溝部は、前記ハウジングの内周面の左右両側部に形成されるとともに、当該溝部の後端面が略半円状に形成され、
前記ボス部は、前記リフレクタの外周面の左右両側部に互いの中心軸を一致させて形成されるとともに、前記溝部の後端面の半径と略同一の外径を有する円筒状に形成され、
前記延出部は、前記エクステンションの左右両側部に形成されるとともに、当該延出部の後端面が前後方向に直交する平面状に形成され、
前記延出部の後端面と前記溝部の後端面とで前記ボス部を前後方向に挟持した状態で、前記エクステンションと前記ハウジングとが係合固定されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記リフレクタの後面には、前記ボス部と中心軸を一致させた円弧状のウォームホイールが形成され、
前記ハウジングの内部には、前記ウォームホイールと噛合するエイミングスクリュが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ヘッドライトなどの車両用前照灯として、光源から出射された光をリフレクタで前方へ反射させて所定の配光を形成するものが知られている。このリフレクタは、一般に、所望の配光性能を発揮するために高精度に位置決めされる必要があること等から、剛性の高い構造となっている。そのため、リフレクタをハウジングに保持させる構造には、リフレクタの弾性を利用したフック構造等を採用することができず、ねじやステイ等の別部品によって固定する構造が用いられていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−235079号公報
【特許文献2】実公平7−16245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車両用前照灯では、ねじやステイ等の別部品を用いてリフレクタを固定しているため、当該別部品自体の部品代や、当該別部品を組み立てる作業工数の分だけ、コストが嵩んでいた。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、ねじやステイ等の別部品を用いることなくリフレクタをハウジングに保持させることができる車両用前照灯の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
前面が開口したハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されたリフレクタと、
前記ハウジングの前面開口の周縁に沿って配置された環状のエクステンションと、
を備える車両用前照灯において、
前記ハウジングは、当該ハウジングの開口端から所定長さに亘って前後方向に沿った溝部を内周面に有し、
前記リフレクタは、左右方向に突設されたボス部を外周面に有し、
前記エクステンションは、後方に延出された延出部を有し、
前記溝部は、前記ハウジングの内周面の左右両側部に形成されるとともに、当該溝部の後端面が略半円状に形成され、
前記ボス部は、前記リフレクタの外周面の左右両側部に互いの中心軸を一致させて形成されるとともに、前記溝部の後端面の半径と略同一の外径を有する円筒状に形成され、
前記延出部は、前記エクステンションの左右両側部に形成されるとともに、当該延出部の後端面が前後方向に直交する平面状に形成され、
前記延出部の後端面と前記溝部の後端面とで前記ボス部を前後方向に挟持した状態で、前記エクステンションと前記ハウジングとが係合固定されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用前照灯において、
前記リフレクタの後面には、前記ボス部と中心軸を一致させた円弧状のウォームホイールが形成され、
前記ハウジングの内部には、前記ウォームホイールと噛合するエイミングスクリュが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハウジングが当該ハウジングの開口端から所定長さに亘って前後方向に沿った溝部を内周面に有し、リフレクタが左右方向に突設されたボス部を外周面に有し、エクステンションが後方に延出された延出部を有しており、延出部の後端面と溝部の後端面とでボス部を前後方向に挟持した状態で、エクステンションとハウジングとが係合固定されているので、ボス部が挟持されることでリフレクタがエクステンション及びハウジングに保持される。したがって、ねじやステイ等の別部品を用いることなく、リフレクタを精度良く位置決めしつつハウジングに保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態における車両用前照灯の分解斜視図である。
【
図2】実施形態における車両用前照灯の平面視での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態における車両用前照灯1の分解斜視図であり、
図2は、車両用前照灯1の平面視での断面図であり、
図3は、
図2のB部の拡大図であり、
図4は、
図3のC−C線での断面図である。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、「上」「下」「前」「後」「左」「右」との記載を、車両用前照灯1から見た方向を指すものとして、図面の記載と対応させて用いることとする。
【0012】
図1及び
図2に示すように、車両用前照灯1は、前面が開口した略円筒状のハウジング2を備えている。ハウジング2の内周面の左右両側部には、当該ハウジング2の開口端から前後方向の中央付近までに亘り、前後方向に沿った溝部21,21が形成されている。各溝部21は、前方に開口した略半円状の後端面21aと、開口端近傍の底面に形成された係止凹部21bとを有している。また、各溝部21は、後端から所定長さの部分に、前方を向く段付き面21c,21cを有しており、ハウジング2の開口端から当該段付き面21c,21cまでの方が当該段付き面21c,21cから後端までよりも上下方向の幅が広くなっている。この段付き面21c,21cの前後方向の位置については後述する。
【0013】
ハウジング2には、当該ハウジング2の前面開口を覆うように素通しのレンズ3が固定されている。このレンズ3とハウジング2とで形成される灯室内には、バルブ4と、リフレクタ5と、エクステンション6とが収容されている。
このうち、バルブ4は、フィラメント41を有しており、ハウジング2の前面開口へ向かって立設するように当該ハウジング2の後面(底面)中央に固定されている。
【0014】
リフレクタ5は、バルブ4から出射された光を前方へ反射させるものであり、前方に開口した正面視円形状の凹板状に形成されて、その底面が回転放物面を基調とする反射面51を構成している。リフレクタ5の底部中央には、バルブ4を挿通させるバルブ挿通孔52が形成されている。リフレクタ5の外周面の左右両側部には、互いの中心軸を一致させて左右方向へ突設された円筒状のボス部53,53が形成されている。ボス部53,53は、ハウジング2に形成された溝部21,21の略半円状の後端面21aの半径と略同一の外径を有している。リフレクタ5は、ボス部53,53と溝部21,21の後端面21aとを摺動可能に当接させた状態で保持されており、つまり、ボス部53,53によってハウジング2に軸支されている。リフレクタ5は、この保持状態において、反射面51の焦点がフィラメント41の近傍に位置するとともに、フィラメント41がボス部53,53の中心軸上に位置するように位置決めされている。
【0015】
また、リフレクタ5の後面(背面)には、ボス部53,53と中心軸を一致させた円弧状のウォームホイール54が形成されており、このウォームホイール54は、ハウジング2の下端から当該ハウジング2内に挿入されたエイミングスクリュ7と噛合している。そのため、エイミングスクリュ7を回転させることによって、ボス部53を溝部21の後端面21a及び後述する延出部61の後端面61bと摺動させつつ当該ボス部53,53の中心軸回りにリフレクタ5が回転し、エイミング調整が可能となっている。
【0016】
エクステンション6は、円環状に形成され、ハウジング2の前面開口の周縁に沿うようにリフレクタ5の前方に配置されている。エクステンション6の後端の左右両側部には、後方へ延出する延出部61,61が形成されている。延出部61,61は、
図3及び
図4に示すように、前後方向に略直交する平面状の後端面(先端面)61bを有しており、ハウジング2の溝部21,21に嵌合された状態で、後端面61bがリフレクタ5のボス部53,53と略点接触で当接している。つまり、延出部61,61の後端面61bと溝部21,21の後端面21aとでボス部53,53を前後方向に挟持している。
各延出部61の後端面61bには、後方へ突設された当接部61c,61cが上下方向の両端部に形成されている。この当接部61c,61cは、後端面61bがボス部53と当接したときに、溝部21の段付き面21c,21cと当接するように形成されており、当該当接部61c,61cの高さを調整することで、延出部61によるボス部53の押圧強さを調整するためのものである。したがって、溝部21の後端から段付き面21c,21cまでの前後方向の長さは、ボス部53の外径よりも当接部61c,61cの高さの分だけ短い長さとなっている。
各延出部61の外側面の基端部には、左右方向へ突設された係止突起61aが形成されている。この係止突起61aは、延出部61の後端面61bがボス部53と当接した状態で、ハウジング2の係止凹部21bと係合するようになっている。そして、この係合により、エクステンション6がハウジング2に固定されている。
【0017】
また、エクステンション6の内周面62は、後端から前端に向かって外方へ広がるように傾斜しているとともに、所定の曲率で湾曲した湾曲凸面状に形成されている。更に、この内周面62には、アルミニウム被膜が蒸着されているとともに、当該内周面62の全面に亘って複数のローレット62a,…が形成されている。
【0018】
続いて、車両用前照灯1の組立方法について説明する。
【0019】
まず、ハウジング2にバルブ4及びエイミングスクリュ7を取り付けた状態で、当該ハウジング2にリフレクタ5を嵌め込む。具体的には、リフレクタ5のボス部53,53を、ハウジング2の溝部21,21に沿って当該溝部21,21の開口端から後方へガイドさせていき、溝部21,21の後端面21aに当接させる。
【0020】
次に、エクステンション6をハウジング2に組み付ける。具体的には、エクステンション6の延出部61,61を、ハウジング2の溝部21,21に沿って当該溝部21,21の開口端から後方へガイドさせていき、各後端面61bの当接部61c,61cを溝部21の段付き面21c,21cに当接させるとともに、各後端面61bでボス部53を溝部21の後端面21aに押し当てる。こうして、延出部61,61の後端面61bと溝部21,21の後端面21aとでボス部53,53が挟持され、ハウジング2に対してリフレクタ5が適正に位置決めされる。そして、この状態で、延出部61,61の係止突起61aを溝部21,21の係止凹部21bに係合させることにより、エクステンション6をハウジング2に固定する。
【0021】
次に、ハウジング2の前面開口にレンズ3を被せて固定する。具体的には、ハウジング2とエクステンション6とで形成される凹部22にシール剤8を充填した状態で、当該凹部22にレンズ3の凸部31を嵌め込むことにより、レンズ3をハウジング2に固定する。
【0022】
以上のように、車両用前照灯1によれば、延出部61,61の後端面61bと溝部21,21の後端面21aとでボス部53,53を前後方向に挟持した状態で、エクステンション6とハウジング2とが係合固定されているので、ボス部53,53が挟持されることでリフレクタ5がエクステンション6及びハウジング2に保持される。したがって、ねじやステイ等の別部品を用いることなく、リフレクタ5を精度良く位置決めしつつハウジング2に保持させることができる。これにより、ねじやステイ等の別部品を用いることに伴うコスト増加を回避することができる。
【0023】
また、ハウジング2の溝部21,21の後端面21aが略半円状に形成され、リフレクタ5のボス部53,53が当該後端面21aの半径と略同一の外径を有する円筒状に形成されているので、ボス部53,53が溝部21,21の後端面21aと当接することで、当該ボス部53,53が溝部21,21の後端面21aに倣って芯出しされる。したがって、バルブ4が固定されたハウジング2に対し、リフレクタ5をより高精度に位置決めすることができる。
【0024】
また、溝部21,21の後端面21aが略半円状に形成され、ボス部53,53が互いの中心軸を一致させて形成されるとともに、溝部21,21の後端面21aの半径と略同一の外径を有する円筒状に形成され、延出部61,61の後端面61bが前後方向に直交する平面状に形成されているので、溝部21,21の後端面21aがボス部53,53の後側の面と円弧面で当接するとともに、延出部61,61の後端面61bがボス部53,53の前端と略点接触で当接する。したがって、ボス部53を溝部21の後端面21a及び延出部61の後端面61bと摺動させつつ当該ボス部53,53の中心軸回りにリフレクタ5を回転させて、エイミング調整を行うことができる。
【0025】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 車両用前照灯
2 ハウジング
21 溝部
21a 後端面
21b 係止凹部
21c 段付き面
3 レンズ
4 バルブ
5 リフレクタ
53 ボス部
6 エクステンション
61 延出部
61a 係止突起
61b 後端面
61c 当接部