(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
本実施形態のパターン照射光装置100は、運転者からの指示に従って、前方視界に、空間的に規則性を有する照射パターンを形成するパターン照射を行う車両用の照明装置である。
【0017】
図1(a)は、本実施形態のパターン照射光装置100の機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態のパターン照射光装置100は、運転者からの指示を受け付けるスイッチ110と、制御部120と、パターン照射を行う左右のパターン前照灯130L、130Rとを備える。以下、本明細書において左右のパターン前照灯130を特に区別する必要がない場合は、パターン前照灯130で代表する。
【0018】
図1(b)は、本実施形態のパターン照射光装置100の車両900上での配置を説明するための図である。本図に示すように、スイッチ110は、運転者の手元近くに配置される。例えば、前照灯の点灯スイッチの近傍、または、前照灯の点灯スイッチと兼用で設けられる。また、左右のパターン前照灯130L、130Rは、それぞれ、車両900が備える左右の車両用前照灯910に組み込まれる。制御部120は、スイッチ110とパターン前照灯130との間に設けられる。
【0019】
図2(a)は、本実施形態のパターン前照灯130の車両用前照灯910内の配置例を説明するための図である。本図に示すように、本実施形態の車両用前照灯910は、ロービーム照射を実現するロービーム用前照灯911と、ロービーム用前照灯910とともに点灯してハイビーム照射を実現するハイビーム用前照灯912と、パターン前照灯130とを備える。このように、パターン前照灯130は、車両用前照灯910が備えるロービーム用前照灯911とハイビーム用前照灯912とは別個独立に車両用前照灯910内に配置される。なお、パターン前照灯130の車両用前照灯910内の配置位置はこれに限られない。車両の左右の中心線に対して左右対象となる位置に配置されていればよい。
【0020】
次に、本実施形態のパターン前照灯130の光学構造を説明する。
図2(b)、
図2(c)は、本実施形態のパターン前照灯130の光学構造を説明するための図である。本図に示すように、パターン前照灯130は、基板131と、基板上に配置される光源アレイ132と、基板131の上に光源アレイ132を覆うように配置される半球状の光学部材(レンズ)133とを備える。
【0021】
光源アレイ132は、
図2(c)に示すようにアレイ状に配置された点光源により構成される。点光源として、例えば、LED等の発光素子を用いる。各点光源は、独立に点灯/消灯を制御可能とする。例えば、各点光源がLEDで構成される場合、それぞれドライバを備え、制御部120から送信される信号により各ドライバが駆動され、個々の点光源の点灯/消灯が制御される。ドライバは、車両用前照灯910に内蔵されるか、別体として車両用前照灯910の外に固定される。
【0022】
光源アレイ132は、各点光源の点灯/消灯が独立に制御されることにより、様々な点灯パターンでの点灯を実現する。光源アレイ132の個々の点光源からの光を光学素子133を通して投影することにより、前方空間に点灯パターンに対応する照射パターンが形成される。
【0023】
制御部120は、スイッチ110を介した運転者からの指示に従って、パターン前照灯130の所定の点光源を点灯させるパターン信号を生成し、パターン前照灯130に送信する。パターン前照灯130は、パターン信号に従って、光源アレイ132を構成する点光源を点灯させることにより、パターン照射を行う。
【0024】
制御部120は、例えば、車両900が備えるECU(electronic control unit)内に構築される。また、制御部120は、CPUとメモリと記憶装置とを備え、制御部120の各機能は、CPUが記憶装置に格納されたプログラムをメモリにロードして実行することにより実現する。制御部120は、ECU外に独立して構築されてもよい。
【0025】
本実施形態では、パターン信号の基となる点灯パターンデータは、予め、点灯パターンデータベース(点灯パターンDB)121に保持される。点灯パターンDB121は、制御部120が備える記憶装置に構築される。本実施形態では、点灯パターンデータとして、例えば、縦縞状、横縞状、格子状の各点灯パターンデータを保持する。点灯パターンデータは、これらに限られず、上述のように、一定の法則に従って空間的に繰り返される規則性を有する照射パターンを、前方視界に形成可能なパターンであればよい。
【0026】
以下、縦縞状点灯パターンデータ、横縞状点灯パターンデータ、格子状点灯パターンデータを例に、それぞれに基くパターン信号による、光源アレイ132の各点光源の点灯/消灯(点灯パターン)と、それにより前方視界に生成される照射パターンとを説明する。照射パターンは、
図3に示す前方視界を例にあげて説明する。
【0027】
図4(a)は、縦縞状点灯パターンデータに基く光源アレイ132の点灯パターン210を説明するための図である。本図において、各マス目は点光源(光学素子)1個に対応する。なお、点光源の個数はこれに限られない。また、斜線部が点灯箇所、その他が消灯箇所である。以下、本明細書で同様とする。なお、消灯箇所は、必ずしも消灯する必要はなく、斜線部の点光源よりも低照度で点灯させてもよい。
【0028】
本図に示すように、縦縞状点灯パターンデータに基くパターン信号を受信すると、パターン前照灯130は、光源アレイ132のアレイ状に配置された各点光源の、同一列(縦方向)全体211を、所定の間隔で点灯させる。そして、前方視界に縦縞状のパターン照射光を照射する。この照射を縦縞状パターン照射と呼ぶ。
【0029】
パターン前照灯130から照射される縦縞状のパターン照射光により前方視界に形成される照射パターン212を
図4(b)に示す。本図に示すように、本実施形態の縦縞状パターン照射による照射パターン212は、前方視界の照射領域に縦縞線(縦縞を形成する各線)213を形成する。
【0030】
本図に示すように、縦縞状パターン照射を行うことにより、道路と雪壁の境目301でパターン照射光が形成する縦縞線213が折れ曲がって見えるので、道路と、路肩や壁などが視覚的に区別しやすい。このため、運転者は、道路境界、道路形状(直線なのかカーブなのか)、などの進行方向の道路形状が把握しやすくなる。
【0031】
図5(a)は、横縞状点灯パターンデータに基く光源アレイ132の点灯パターン220を説明するための図である。本図に示すように、横縞状点灯パターンデータに基くパターン信号を受信すると、パターン前照灯130は、光源アレイ132のアレイ状に配置された各点光源の、同一行(横方向)全体221を、所定の間隔で点灯させる。そして、前方視界に横縞状のパターン照射光を照射する。この照射を横縞状パターン照射と呼ぶ。
【0032】
パターン前照灯130から照射される横縞状のパターン照射光により前方視界に形成される照射パターン222を
図5(b)に示す。本図に示すように、本実施形態の横縞状パターン照射による照射パターン222は、前方視界の照射領域に横縞線(横縞を形成する各線)223を形成する。
【0033】
例えば、前方の道路上に障害物が存在する場合(例えば、
図3のこぶ状の盛り上がり302)には、縦縞状のパターン照射光による照射パターンでは判別しづらい。ところが、横縞状のパターン照射光を前方に照射することで、
図5(b)に示すように地面に平行な形状(この場合は道路面を指す)に対する変化(この場合は前方のこぶ)が見やすくなる。このため、道路上の障害物や道路の凹凸の状態が判別しやすくなる。
【0034】
横縞状パターン照射時は、横縞状のパターン照射光を照射する位置と運転者の視線の高さとの差が大きいほど視差が大きくなる。本実施形態では、パターン前照灯130が車両900の車両用前照灯910に内蔵されるため、十分な差が得られ、変化が識別しやすい。
【0035】
図6(a)は、格子状照射パターンデータに基く光源アレイ132の点灯パターン230を説明するための図である。本図に示すように、格子状照射パターンデータに基くパターン信号を受信すると、パターン前照灯130は、光源アレイ132のアレイ状に配置された各点光源の、同一列(縦方向)全体211および同一行(横方向)全体221を、それぞれ所定の間隔で点灯させる。そして、前方視界に格子状のパターン照射光を照射する。この照射を格子状パターン照射と呼ぶ。
【0036】
パターン前照灯130から照射される格子状のパターン照射光により、前方視界に形成される照射パターン232を
図6(b)に示す。本図に示すように、本実施形態の格子状パターン照射による照射パターン232は、前方視界の照射領域に、縦縞線213と横縞線223とからなる格子状の影を形成する。
【0037】
格子状パターン照射は、上記の縦縞状パターン照射と横縞状パターン照射とを組み合わせである。両方法を組み合わせることで、それぞれの特長を補完し合え、より確実に明確に前方の道路状況が把握できる。
【0038】
なお、パターン照射は、運転者がスイッチ110を介して指示を行うことにより、実現される。本実施形態のスイッチ110は、予め用意されたパターン照射の選択を受け付け可能な構成を有する。本実施形態では、運転者は、スイッチ110を介して、予め用意された照射パターンの中から選択することにより、パターン照射の指示と、用いる照射パターンの指示とを行う。例えば、本実施形態では、縦縞状照射パターンと、横縞状照射パターンと、格子状照射パターンとが予め選択可能なよう構成され、運転者はこれらの中から選択する。
【0039】
点灯パターンDB121には、各照射パターンを実現する点灯パターンデータが対応づけて保持される。制御部120は、スイッチ110を介して運転者からの指示を受け、対応する点灯パターンデータを点灯パターンDB121から抽出し、パターン信号を生成し、パターン前照灯130に出力する。
【0040】
パターン前照灯130では、パターン信号を受け、パターン信号で点灯を指示される点光源を点灯させる。
【0041】
なお、パターン照射は、運転者がスイッチ110を介して消灯の指示を行うことにより終了する。運転者がスイッチ110を介して消灯の指示を行うと、制御部120は、パターン信号のパターン前照灯130への送信を停止し、パターン前照灯130は、パターン照射を終了する。また、瞬時または一定時間点灯して自動的に消灯復帰するスイッチを用い、消灯指示を不要にしてもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、運転者からの指示により、前方視界に規則的な照射パターンを形成するパターン照射を行う。道路およびその周辺において、形状が変化している部分では、パターン照射光が形成する照射パターンが曲がって見える。このため、積雪量やコントラストに関わらず、どのような状況でも道路形状を的確に把握することができる。例えば、上述のように、縦縞のパターン照射光を照射することにより、道路と側面の路肩や外壁の境界、また、カーブ道路やT字路などの前方の道路形状が把握しやすくなる。また、横縞のパターン照射光を照射することにより、道路の凹凸や障害物などの路面の変化が識別しやすくなる。
【0043】
また、本実施形態によれば、積雪時に限らず、コントラストの少ない夜間の状況(荒れたオフロード、霧)においても同様な効果を得ることができる。特に、霧の場合、ハイビーム照射およびロービーム照射のみの従来の前照灯の照射光は、光幕現象により空気中の水蒸気により散乱され、運転視界が妨げられる。これは、この前照灯の照射光の発光面積が大きいためである。しかしながら、本実施形態のパターン照射光装置のパターン前照灯であれば、従来の前照灯の照射光より発光面積が小さいため、光の散乱を低減することができる。従って、散乱も低減し、遠方の反射光が視認しやすくなる。そのため、霧等の状況においても、運転者は道路形状を把握しやすい。
【0044】
なお、上記実施形態では、ハイビーム照射、ロービーム照射とは別個独立に、パターン照射の指示を行うスイッチ110を備える場合を例にあげて説明しているが、これに限られない。1つのスイッチにより、ハイビーム照射、ロービーム照射及びパターン照射の指示を行うよう構成してもよい。この場合、パターン照射単独と、パターン照射とハイビーム照射、ロービーム照射との組み合わせの指示とを選択可能とする。
【0045】
例えば、上述のように、照射パターンとして、縦縞状照射パターン、横縞状照射パターン、格子状照射パターンの3種が用意されている場合、1)縦縞状パターン照射指示、2)横縞状パターン照射指示、3)格子状パターン照射指示、4)ハイビーム照射および縦縞状パターン照射指示、5)ハイビーム照射および横縞状パターン照射指示、6)ハイビーム照射および格子状パターン照射指示、7)ロービーム照射および縦縞状パターン照射指示、8)ロービーム照射および横縞状パターン照射指示、9)ロービーム照射および格子状パターン照射指示、の計9種の指示を可能とする。
【0046】
また、上記実施形態では、
図2(a)に示すように、パターン前照灯130は、車両用前照灯910内に、ロービーム用前照灯911およびハイビーム用前照灯912とは別個に設ける場合を例にあげて説明した。しかし、パターン前照灯130が、例えば、ロービーム用前照灯911およびハイビーム用前照灯912のいずれか一方を兼用するよう構成してもよい。
【0047】
図7(a)は、本実施形態のパターン前照灯130がロービーム用前照灯911の機能を兼用する場合の車両用前照灯910aの外観を説明するための図である。本図に示すように、この場合、車両用前照灯910aは、ロービーム照射兼パターン照射用前照灯(兼用前照灯)130aと、ハイビーム用前照灯912とを備える。
【0048】
この場合、兼用前照灯130aで、パターン前照灯130が実現する各パターン照射とロービーム照射とを実現する。従って、点灯パターンDB121には、各パターン照射を実現する点灯パターンデータに加え、ロービーム照射を実現する点灯パターンデータを備える。ロービーム照射を実現する点灯パターンデータによる光源アレイ132の点灯パターン901の一例を
図7(b)に示す。
【0049】
この場合も、上記同様、運転者は、パターン照射単独と、パターン照射とハイビーム照射、ロービーム照射との組み合わせの指示とを選択可能とする。
【0050】
ロービーム照射とパターン照射との組み合わせが指示された場合、制御部120は、両点灯パターンデータを合成した点灯パターンデータを生成し、それに基きパターン信号を生成する。なお、予め、ロービーム照射と各パターン照射とを合成した照射を実現する点灯パターンデータを点灯パターンDB121に保持するよう構成してもよい。
【0051】
本実施形態のパターン前照灯130がハイビーム用前照灯912の機能を兼用する場合も同様である。ただし、点灯パターンDB121には、ロービーム照射を実現する点灯パターンデータの代わりに、ハイビーム照射を実現する点灯パターンデータ(後述)を備える。
【0052】
さらに、パターン前照灯130がロービーム用前照灯911およびハイビーム用前照灯912の機能を兼用するよう構成してもよい。
【0053】
図8(a)は、本実施形態のパターン前照灯130がロービーム用前照灯911およびハイビーム用前照灯912の機能を兼用する場合の車両用前照灯910bの外観を説明するための図である。本図に示すように、この場合、車両用前照灯910bは、ロービーム照射兼ハイビーム照射兼パターン照射用前照灯(兼用前照灯)130bを備える。
【0054】
この場合、兼用前照灯130bで、パターン前照灯130が実現する各パターン照射とロービーム照射とハイビーム照射とを実現する。従って、点灯パターンDB121には、各パターン照射を実現する点灯パターンデータおよびロービーム照射を実現する点灯パターンデータに加え、ハイビーム照射を実現する点灯パターンデータを備える。ハイビーム照射を実現する点灯パターンデータによる光源アレイ132の点灯パターン902の一例を
図8(b)に示す。
【0055】
この場合も、上記同様、運転者は、パターン照射単独と、パターン照射とハイビーム照射、ロービーム照射との組み合わせの指示とを選択可能とする。
【0056】
ロービーム照射とパターン照射との組み合わせ、または、ハイビーム照射とパターン照射との組み合わせが指示された場合、制御部120は、両点灯パターンデータを合成した点灯パターンデータを生成し、それに基きパターン信号を生成する。なお、予め、ロービーム照射と各パターン照射とを合成した照射を実現する点灯パターンデータ、ハイビーム照射と各パターン照射とを合成した照射を実現する点灯パターンデータを、点灯パターンDB121に保持するよう構成してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、運転者からスイッチ110を介して点灯のパターン照射の指示を受け付けると、消灯の指示を受け付けるまで、同一のパターン照射が継続される。しかし、パターン照射の制御はこれに限られない。異なるパターン照射を所定の時間間隔で順に照射するよう制御してもよい。
【0058】
例えば、パターン照射の指示を受け付けると、所定の時間ごとに、縦縞状パターン照射と横縞状パターン照射とを繰り返す。このように構成することにより、残像効果により格子状パターン照射時と同様の効果を得ることができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、左右のパターン前照灯130L、130Rに、制御部120から同一のパターン信号を送信し、同一のパターン照射を実現するよう構成しているが、これに限られない。左右のパターン前照灯130L、130Rに、それぞれ独立にパターン信号を送信可能とし、両前照灯130Lおよび130Rが異なるパターン照射を行うよう構成してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、各点光源の点灯および消灯を独立に制御可能としているが、これに限られない。各点光源の点灯および消灯は、点灯パターンDBに用意される点灯パターンを実現可能な単位で制御可能であればよい。
【0061】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態について説明する。第一の実施形態では、左右のパターン前照灯それぞれから、複数のパターン照射を実現する。一方、本実施形態では、左右のパターン前照灯は、それぞれ、固定のパターン照射を行う。
【0062】
図9は、本実施形態のパターン照射光装置400の機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態のパターン照射光装置400は、運転者からの指示を受け付けるスイッチ410と、制御部420と、パターン照射を行う左右のパターン前照灯430L、430Rとを備える。
【0063】
本実施形態のパターン照射光装置400の車両900上での配置は第一の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0064】
次に、本実施形態の左右の車両用前照灯910Lおよび910Rの構成を説明する。
図10は、左右の車両用前照灯910Lおよび910Rの構成を説明するための図である。本図に示すように、本実施形態の左側車両用前照灯910Lは、ロービーム照射を実現するロービーム用前照灯911Lと、ロービーム用前照灯911Lとともに点灯してハイビーム照射を実現するハイビーム用前照灯912Lと、パターン前照灯430Lとを備える。また、本実施形態の右側車両用前照灯910Rは、ロービーム照射を実現するロービーム用前照灯911Rと、ロービーム用前照灯911Lとともに点灯してハイビーム照射を実現するハイビーム用前照灯912Rと、パターン前照灯430Rとを備える。
【0065】
なお、前照灯、ロービーム用前照灯、ハイビーム用前照灯、パターン前照灯について、左右を区別する必要がない場合は、それぞれ、車両用前照灯910、ロービーム用前照灯911、ハイビーム用前照灯912、パターン前照灯430で代表する。
【0066】
本実施形態の各パターン前照灯430L、430Rの光学構造は、第一の実施形態と同様であるため、ここでは、説明を省略する。
【0067】
次に、本実施形態の各パターン前照灯430Lおよび430Rが実現するパターン照射について説明する。上述のように、本実施形態の各パターン前照灯430Lおよび430Rは、それぞれ、予め定められた固定のパターン照射を行う。従って、各パターン前照灯430Lおよび430Rは、そのパターン照射を実現する固定の点灯パターンで点灯する。
【0068】
具体的には、パターン前照灯430Lおよび430Rのいずれか一方が、第一の実施形態の
図4(a)に示す縦縞状点灯パターン210、他方が第一の実施形態の
図5(a)に示す横縞状点灯パターン220で点灯する。以下、本実施形態では、左側パターン前照灯430Lが、点灯の指示を受け付けると縦縞状点灯パターン210で点灯し、右側パターン前照灯430Rが、横縞状点灯パターン220で点灯する場合を例にあげて説明する。
【0069】
本実施形態のスイッチ410は、第一の実施形態同様、運転者の手元に、例えば、前照灯灯火スイッチの近くに、または、前照灯灯火スイッチと兼用で設けられる。スイッチ410は、第一の実施形態同様、予め用意されたパターン照射の選択を受け付け可能な構成を有する。第一の実施形態同様、本実施形態においても、運転者は、予め用意された照射パターンの中から選択することにより、パターン照射の指示と、用いる照射パターンの指示とを行う。例えば、本実施形態では、縦縞状照射パターンと、横縞状照射パターンと、格子状照射パターンとが予め選択可能なよう構成され、運転者はこれらの中から選択する。
【0070】
本実施形態の制御部420は、スイッチ110を介して運転者からの指示を受け、対応するパターン照射を実現する左右のパターン前照灯430Lおよび430Rに点灯の指示を送信する。
【0071】
例えば、縦縞状パターン照射の指示を受け付けると、左のパターン前照灯430Lに、横縞状パターン照射の指示を受け付けると、右のパターン前照灯430Rに、格子状パターン照射の指示を受け付けると、左右のパターン前照灯430Lおよび430Rに、それぞれ、点灯の指示を送信する。
【0072】
制御部420から点灯の指示を受け付けると、本実施形態のパターン前照灯430Lは、光源アレイ132を構成する各点光源を
図4(a)に示す縦縞状の点灯パターン210で点灯させ、縦縞状パターン照射を行う。これにより、前方視界に
図4(b)に示す照射パターン212が形成される。
【0073】
また、制御部420から点灯の指示を受け付けると、本実施形態のパターン前照灯430Rは、光源アレイ132を構成する各点光源を
図5(a)に示す横縞状の点灯パターン220で点灯させ、横縞状パターン照射を行う。これにより、前方視界に
図5(b)に示す照射パターン222が形成される。
【0074】
なお、左右のパターン前照灯430Lおよび430Rが制御部420から、同時に点灯の指示を受け付けると、両パターン前照灯430Lおよび430Rは、それぞれ、点灯パターン210および点灯パターン220で点灯し、パターン照射を行うため、前方視界に
図6(b)に示す照射パターン232が形成される。
【0075】
本実施形態においても、第一の実施形態同様、運転者がスイッチ410を介して消灯の指示を行うことにより、パターン照射を終了する。すなわち、運転者がスイッチ410を介して消灯の指示を行うと、制御部420は、パターン前照灯430への点灯の指示の送信を停止し、パターン前照灯430は、パターン照射を終了する。また、第一の実施形態同様、瞬時または一定時間点灯して自動的に消灯復帰するスイッチを用い、消灯指示を不要にしてもよい。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、運転者からの指示により、前方視界に、縦縞状のパターン照射と、横縞状のパターン照射と、格子状のパターン照射とを行う。従って、第一の実施形態同様、縦縞のパターン照射光を照射することにより、道路と側面の路肩や外壁の境界、また、カーブ道路やT字路などの前方の道路形状が把握しやすくなる。また、横縞のパターン照射光を照射することにより、道路の凹凸や障害物などの路面の変化が識別しやすくなる。
【0077】
このように、本実施形態によれば、積雪量やコントラストに係わらず、道路状況、形状を的確に把握しやすくなる。
【0078】
また、本実施形態によれば、左右のパターン前照灯の点灯パターンが固定されているため、点灯パターンDBを保持する必要がなく、また、それに基く制御も不要となり、簡易な構成で上記効果を実現できる。
【0079】
さらに、左右のパターン前照灯から同時にパターン照射する場合、左右のパターン前照灯による照射パターンの重なりのズレを防ぐため、取り付け位置や光軸のズレなどの調整に高い精度が要求される。しかし、本実施形態によれば、左右のパターン前照灯が、それぞれ別の照射パターンを照射するため、このような調整が不要となる。
【0080】
なお、上記実施形態では、左右のパターン前照灯430Lおよび430Rは、点光源がアレイ状に配置される光源アレイ132で構成される場合を例にあげて説明したが、パターン前照灯430Lおよび430Rの構成はこれに限られない。点灯パターンが固定であるため、予め定められた点灯パターンのみを実現可能な点光源配置としてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、車両用前照灯910が、ロービーム用前照灯911およびハイビーム用前照灯912とは別個に、パターン前照灯430を備える場合を例にあげて説明しているが、車両用前照灯910の構成はこれに限られない。第一の実施形態同様、パターン前照灯430は、ロービーム用前照灯およびハイビーム用前照灯のいずれか一方の機能を兼用するよう構成してもよい。さらに、第一の実施形態同様、パターン前照灯430が、ロービーム用前照灯、ハイビーム用前照灯、およびパターン前照灯の各機能を実現するよう構成してもよい。
【0082】
ただし、兼用する場合は、第一の実施形態同様、点灯パターンDBを備える。そして、点灯パターンDBには、ロービーム照射を実現する点灯パターンデータ(ロービーム点灯パターンデータ)と、ハイビーム照射を実現する点灯パターンデータ(ハイビーム点灯パターンデータ)と、左側パターン前照灯用点灯パターンデータと、右側パターン前照灯用点灯パターンデータとを備える。
【0083】
上述のように、左側パターン前照灯430Lが縦縞状パターン照射を行い、右側パターン前照灯430Rが横縞状パターン照射を行う場合、左側パターン前照灯用点灯パターンデータとして、ロービーム照射またはハイビーム照射と縦縞状パターン照射とを合成した照射を実現する点灯パターンデータを保持する。右側パターン前照灯用点灯パターンデータとして、ロービーム照射またはハイビーム照射と横縞状パターン照射とを合成した照射を実現する点灯パターンデータを保持する。
【0084】
例えば、1の前照灯でロービーム照射、ハイビーム照射、パターン照射を行う場合、ロービーム照射の指示を受け付けると、制御部420は、ロービーム点灯パターンデータに基きパターン信号を生成して両前照灯に送信する。それを受け、左右の前照灯は、ロービーム照射を行う。ハイビーム照射の指示を受け付けると、制御部420は、ハイビーム点灯パターンデータに基きパターン信号を生成して両前照灯に送信する。それを受け、左右の前照灯は、ハイビーム照射を行う。また、パターン照射の指示を受け付けると、制御部420は、指示されたパターン照射を実現可能な前照灯に点灯の指示を送信する。点灯の指示を受信した前照灯は、パターン照射を行う。
【0085】
さらに、ロービーム照射またはハイビーム照射とパターン照射との組み合わせの照射の指示を受け付けると、制御部420は、指示されたパターン照射に応じて、左右の前照灯の中の当該パターン照射を実現可能な前照灯に、合成された点灯パターンデータに基いてパターン信号を生成して送信し、他の前照灯があれば、指示された照射に基き、ロービーム点灯パターンデータまたはハイビーム点灯パターンデータからパターン信号を生成して送信する。
【0086】
なお、上記各実施形態では、規則性のあるパターンを前方視界に形成するパターン照射を行うパターン照射光装置を備えることにより、雪道などの前方視界のコントラストの低い状況でも、視認性を高めている。さらに、左右の車両用前照灯910Lおよび910R内に、前方視界を撮影する撮像素子(カメラ)920Lおよび920Rを内蔵させ、撮像周期と前照灯の点灯周期とを同期制御してもよい。
【0087】
この場合の左右の車両用前照灯910Lおよび910R内の撮像素子(カメラ)920Lおよび920Rの配置を
図11(a)に示す。また、左右の車両用前照灯910Lおよび910Rの点灯周期と撮像素子(カメラ)920Lおよび920Rの撮像周期とを
図11(b)に示す。
図11(a)では、1の車両用前照灯910Lが、ハイビーム照射、ロービーム照射、パターン照射を行う場合、すなわち兼用前照灯911bを備える場合を例示する。
【0088】
図11(b)に示すように、ここでは、左右の車両用前照灯910L内と910Rとにおいて、兼用前照灯911bLおよび911bRを、それぞれ1/2周期ずらして点灯させる。また、左側の兼用前照灯911bLの点灯タイミングと、左側の撮像素子920Lの撮像タイミングも同様に、1/2周期ずらす。右側の兼用前照灯911bRと撮像素子920Rとの点灯および撮像タイミングも同様とする。
【0089】
具体的には、
図11(b)の太線部に示すように、右側の兼用前照灯911bRが消灯している状態で、左側の兼用前照灯911bLが点灯し、右側の撮像素子920Rが撮像する。次の1/2周期のタイミングで、太線矢印で示すように、右側の兼用前照灯911bRが点灯し、左側の兼用前照灯911bLが消灯し、左側の撮像素子920Lが撮像する。
【0090】
一般に、
図12に示すように、兼用前照灯911bからの光の一部は、車両用前照灯910のレンズカバー930の内面で反射し、前照灯に内蔵された撮像素子920にとって外乱光となる。ところが、このように発光と撮像とを制御することにより、撮像素子920に外乱光が入射することを防ぐことができる。
【0091】
従って、外乱光の少ない状態で撮影した画像を用い、各種の認識処理を行うことができ、認識結果の精度も高まる。従って、この認識結果を補完的に用いることにより、パターン照射のみの場合に比べ、さらに運転者の周囲状況の把握を容易にし、安全な運転を支援できる。