特許第5706198号(P5706198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706198
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】ウインドウガラス昇降装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20150402BHJP
   E05F 15/665 20150101ALI20150402BHJP
【FI】
   E05F11/48 D
   E05F15/16
   E05F11/48 E
   E05F11/48 C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-52846(P2011-52846)
(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公開番号】特開2012-188850(P2012-188850A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2013年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】内村 浩之
【審査官】 川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−162892(JP,A)
【文献】 特開2002−180743(JP,A)
【文献】 特開昭56−85079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/48
E05F 15/665
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに固定され、一端に舌片部が形成されるガイドレールと、
ウインドウガラスに固定されると共に、前記ガイドレールに沿って昇降するキャリアプレートと、
このキャリアプレートを昇降させるケーブルと、
このケーブルが巻回されたドラムを回転させ、前記ケーブルを駆動するケーブル駆動部と、
前記ガイドレールの前記舌片部と前記ケーブル駆動部との間に配置され、これらガイドレールとケーブル駆動部とを前記ドアに固定するためのブラケットとを備え、
前記舌片部、及び前記ブラケットは、それぞれ前記ドラムを回転可能に支持するための軸部が挿通され、この軸部を中心に回動可能に構成されており、
前記舌片部、及びブラケットに、それぞれ互いを接合するための接合部が設けられ、
前記ケーブル駆動部は、
モータと、
このモータに連結される減速機構とを備え、
前記減速機構は、
前記モータの動力が伝達され、この動力を前記ドラムに出力する減速歯車と、
この減速歯車を収納し、一面に開口部を有するケーシングとを備え、
前記ケーシングには、前記ブラケットに組み付けられる3つのボルト取付け座が形成され、
前記3つのボルト取付け座は、前記軸部よりも径方向外側で周方向に等間隔に配置されている一方、
各前記接合部は、前記ボルト取付け座よりも前記軸部側で、且つ前記ドラムの投影面上に配置されており、
前記接合部のうち、前記ブラケット側の接合部は、前記軸部を中心とした回転方向に沿って所定長さ形成されていることを特徴とするウインドウガラス昇降装置。
【請求項2】
前記減速機構は、さらに前記ケーシングの開口部を閉塞すると共に、前記ケーシングに対して相対回転可能に取り付けられるボトムカバー備え、
前記ボトムカバーは、前記ドラムを収納可能な筒状のドラムカバー部を有し、このドラムカバー部の周壁に、前記ドラムから繰り出される前記ケーブルを挿通可能なケーブル溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のウインドウガラス昇降装置。
【請求項3】
前記ケーシングと前記ボトムカバーとの間に、シール部材を介装すると共に、
前記ドラムカバー部の少なくとも一部と前記ブラケットとを当接させ、このブラケットと前記ケーシングとにより前記ボトムカバーを挟持したことを特徴とする請求項2に記載のウインドウガラス昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウインドウガラス昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のドアに設けられているウインドウガラスを昇降させるためのウインドウガラス昇降装置が知られている。この種の装置として、例えば、ドアに固定されるガイドレールと、このガイドレールに摺動自在に設けられ、ウインドウガラスを支持するキャリアプレートと、ガイドレールの下端に取り付けられるケーブル駆動部と、上端に取り付けられるプーリと、このプーリとケーブル駆動部との間にループ状に張り渡され、その一部がキャリアプレートに係合されているケーブルとを備え、ケーブル駆動部のドラムハウジングの上端に、ガイドレールの下端を挿入する隙間および挿入孔を形成した装置がある(例えば、特許文献1参照)。
これによれば、ドラムハウジングの上端に、ガイドレールの下端を嵌合させるだけで、これらドラムハウジングとガイドレールとの組み付けを完了することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−28973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドアの内部構造によっては、ウインドウガラス昇降装置のレイアウトを変更する場合がある。このような場合の一例として、例えば、ガイドレールとケーブル駆動部との相対取付角度を変更することがある。しかしながら、上述の従来技術にあっては、ドラムハウジングの上端に、ガイドレールの下端を嵌合させているので、ガイドレールとケーブル駆動部との相対取付角度を容易に変更することができないという課題がある。
また、ウインドウガラス昇降装置のレイアウトパターンごとにドラムハウジングを用意する必要があるという課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ガイドレールとケーブル駆動部との相対取付角度を容易に変更することができ、部品の共有化を図ることができるウインドウガラス昇降装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車両のドアに固定され、一端に舌片部が形成されるガイドレールと、ウインドウガラスに固定されると共に、前記ガイドレールに沿って昇降するキャリアプレートと、このキャリアプレートを昇降させるケーブルと、このケーブルが巻回されたドラムを回転させ、前記ケーブルを駆動するケーブル駆動部と、前記ガイドレールの前記舌片部と前記ケーブル駆動部との間に配置され、これらガイドレールとケーブル駆動部とを前記ドアに固定するためのブラケットとを備え、前記舌片部、及び前記ブラケットは、それぞれ前記ドラムを回転可能に支持するための軸部が挿通され、この軸部を中心に回動可能に構成されており、前記舌片部、及びブラケットに、それぞれ互いを接合するための接合部が設けられ、前記ケーブル駆動部は、モータと、このモータに連結される減速機構とを備え、前記減速機構は、前記モータの動力が伝達され、この動力を前記ドラムに出力する減速歯車と、この減速歯車を収納し、一面に開口部を有するケーシングとを備え、前記ケーシングには、前記ブラケットに組み付けられる3つのボルト取付け座が形成され、前記3つのボルト取付け座は、前記軸部よりも径方向外側で周方向に等間隔に配置されている一方、各前記接合部は、前記ボルト取付け座よりも前記軸部側で、且つ前記ドラムの投影面上に配置されており、前記接合部のうち、前記ブラケット側の接合部は、前記軸部を中心とした回転方向に沿って所定長さ形成されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成することで、ガイドレールとブラケットとの相対取付角度を所定角度変化させた場合であってもガイドレールの接合部とブラケットの接合部とをラップさせることができる。この結果、ガイドレールとケーブル駆動部との相対取付角度を容易に変更することができる。また、ウインドウガラス昇降装置のレイアウトパターンごとにブラケットを用意する必要がないので、この分、部品の共有化を図ることができる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、前記減速機構は、さらに前記ケーシングの開口部を閉塞すると共に、前記ケーシングに対して相対回転可能に取り付けられるボトムカバー備え、
前記ボトムカバーは、前記ドラムを収納可能な筒状のドラムカバー部を有し、このドラムカバー部の周壁に、前記ドラムから繰り出される前記ケーブルを挿通可能なケーブル溝が形成されていることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、ケーシングの開口部を閉塞するボトムカバーにドラムを支持する機能を持たせることができ、部品点数を減少することができる。また、ケーブル溝が形成されているドラムカバー部が、ケーシングに対して相対回転可能に取り付けられているので、ガイドレールとケーブル駆動部との相対取付角度が変化することにより、ドラムからのケーブルの繰り出し方向が変化した場合であっても、ドラムカバー部の取付角度を容易に変更することができる。このため、組み付け作業性を向上させることが可能になる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、前記ケーシングと前記ボトムカバーとの間に、シール部材を介装すると共に、前記ドラムカバー部の少なくとも一部と前記ブラケットとを当接させ、このブラケットと前記ケーシングとにより前記ボトムカバーを挟持したことを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、ケーシングに対してボトムカバーを相対回転可能としてもケーシングとボトムカバーとの間のシール性を高めることができる。
また、ブラケットとケーシングとによりボトムカバーを挟持することにより、ボトムカバーの固着力を向上させることができ、組み付け後にボトムカバーが回転しまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガイドレールとブラケットとの相対取付角度を所定角度変化させた場合であってもガイドレールの接合部とブラケットの接合部とをラップさせることができる。この結果、ガイドレールとケーブル駆動部との相対取付角度を容易に変更することができる。また、ウインドウガラス昇降装置のレイアウトパターンごとにブラケットを用意する必要がないので、この分、部品の共有化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における車両のドアの概略側面図である。
図2】本発明の実施形態におけるドアに搭載されたウインドウレギュレータの分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態におけるケーブル駆動部の横断面図である。
図4】本発明の実施形態におけるウインドウレギュレータを示し、(a)は、ケーブル駆動部にガイドレールを取り付けた状態の上面図、(b)は、ウインドウレギュレータからガイドレールと下側ブラケットを取り外した状態の上面図、(c)は、(b)の斜視図である。
図5】本発明の実施形態におけるウインドウレギュレータを示し、(a)は、ケーブル駆動部にガイドレールを取り付けた状態の上面図、(b)は、ウインドウレギュレータからガイドレールと下側ブラケットを取り外した状態の上面図、(c)は、(b)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(ウインドウレギュレータ)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、車両のドアの概略側面図、図2は、ドアに搭載されたウインドウレギュレータの分解斜視図である。
図1図2に示すように、ウインドウガラス昇降装置であるウインドウレギュレータ1は、車両のドア100の内部に搭載されている。ウインドウレギュレータ1は、ドア100内に、重力方向上下(図1における上下)に沿って延設されたガイドレール2と、ガイドレール2にスライド自在に設けられ、ウインドウガラス3を支持するキャリアプレート4と、このキャリアプレート4を昇降させるケーブル5と、ケーブル5を駆動させるケーブル駆動部6と、ガイドレール2とケーブル駆動部6とを互いに固定するための下側ブラケット7とを備えている。
【0015】
ガイドレール2は、金属板にプレス加工等を施すことにより形成されたものであって、その上端は上側ブラケット8を介してドア100に固定されている。ガイドレール2にスライド自在に設けられたキャリアプレート4は、ガイドレール2の幅方向に沿って長くなるように平面視略菱形状に形成されている。
キャリアプレート4の長手方向両側、つまり、キャリアプレート4の水平方向両側には、ウインドウガラス3の下部を連結するための取付孔9a,9bが形成されている。これら取付孔9a,9bは、キャリアプレート4とウインドウガラス3との取付位置誤差を吸収するために、キャリアプレート4の長手方向に沿って長くなるように長円形状に形成されている。
【0016】
また、キャリアプレート4には、ケーブル5の両端末部が連結されている。キャリアプレート4の上部には、ケーブル駆動部6からガイドレール2の上端に設けられているプーリ10に巻回された後、キャリアプレート4に向かって引き出されたケーブルが連結されている。一方、キャリアプレートの下部には、ケーブル駆動部6を介してキャリアプレート4に向かって引き出されたケーブルが連結されている。
さらに、キャリアプレート4の下端には、このキャリアプレート4を昇降させた際、ケーブル駆動部6との衝突衝撃を緩和させるためのストッパピン11が設けられている。
【0017】
(ケーブル駆動部)
図3は、ケーブル駆動部の横断面図である。
図2図3に示すように、ケーブル駆動部6は、電動モータ12と、この電動モータ12に連結された減速機構13とを備えている。電動モータ12は、有底筒状のヨーク14内に不図示のアーマチュアが回転自在に設けられた、所謂直流ブラシ付モータである。そして、減速機構13を構成するケーシング16の一側に、ヨーク14が取り付けられるようになっている。
【0018】
減速機構13は、電動モータ12の動力が伝達される減速歯車15と、この減速歯車15を収納し、一面に開口部16aを有する略箱状のケーシング16と、このケーシング16の開口部16aを閉塞するボトムカバー17とを有し、減速歯車15にケーブル5が巻回されるドラム18が連結されている。
減速歯車15は、電動モータ12の不図示のアーマチュアと一体となって回転するウォーム軸21と、このウォーム軸21に噛合うウォームホイール22とにより構成されている。
【0019】
ケーシング16は、ウォーム軸21を収納可能なようにウォーム軸21に沿って長く形成されたウォーム軸収納部61と、ウォームホイール22を収納するウォームホイール収納部62とが一体成形されたものである。そして、ウォーム軸収納部61の基端側に、電動モータ12のヨーク14が取付けられている一方、ウォームホイール収納部62に開口部16aが形成されている。
【0020】
また、ケーシング16の外周部には、3つのボルト取付け座63a,63b,63cが一体成形されている。これらボルト取付け座63a,63b,63cは、ケーシング16に下側ブラケット7を固定するためのものであって、ボルト64をウォームホイール22の回転軸方向に沿って挿通可能に略円筒状に形成されている。
さらに、3つのボルト取付け座63a,63b,63cのうち、1つのボルト取付け座63aは、ウォーム軸収納部61の径方向外側に配置され、その他の2つのボルト取付け座63b,63cは、ウォームホイール収納部62の外周部に配置され、且つウォームホイール22の回転中心を中心にして振り分け配置されている。これにより、3つのボルト取付け座63a,63b,63cは周方向に略等間隔に配置される。
【0021】
また、ウォームホイール収納部62の底壁62aには、ウォームホイール22の回転中心に対応する箇所に、略円柱状の軸部23が開口部16a側に向かって突設されている。一方、ウォームホイール22には、軸部23を挿入可能な軸受凹部24が形成されている。この軸受凹部24とケーシング16の軸部23とが摺動することにより、ケーシング16内でウォームホイール22が回転する。
【0022】
また、ウォームホイール22には、ケーシング16の軸部23と同軸上に出力軸25がウォームホイール収納部62の底壁62aとは反対側に向かって、ケーシング16から突出するように一体成形されている。出力軸25の径方向中央には、この出力軸25と、下側ブラケット7と、ガイドレール2とを互いに固定するためのセンターピン26が挿通される挿通孔27が形成されている。
【0023】
センターピン26は段付軸状に形成されており、頭部26aを基端として先端側に大径軸26bと小径軸26cとがこの順で一体成形されている。
一方、ケーシング16の軸部23には、出力軸25の挿通孔27に挿通可能なボス部28が突出形成されており、このボス部28にセンターピン26の小径軸26cを圧入可能な凹部28aが形成されている。この凹部28aにセンターピン26の小径軸26cを圧入固定することにより、ボス部28とセンターピン26とで出力軸25が回転自在に支持される。ここで、ボス部28の外径とセンターピン26の大径軸26bの外径は、互いに同一径に設定されている。
【0024】
また、ケーシング16の軸部23に突出形成されているボス部28は、基端側に段差部28bが形成されている。この段差部28bには、Oリング29が装着されている。一方、出力軸25の挿通孔27には、段差部28bに対応する部位が段差により拡径形成されており、ボス部28の段差部28b、及びOリング29を受け入れ可能になっている。これにより、出力軸25(ウォームホイール22)と軸部23との間のシール性が確保され、ウォームホイール22の挿通孔27からケーシング16の内部に水等が浸入することを防ぐことができる。
【0025】
さらに、出力軸25には、ケーシング16の開口部16aに対応する基端部に段差により拡径された拡径部25aが形成されている。この拡径部25aよりも先端側には、外周面にスプライン31が形成されており、出力軸25にドラム18がスプライン嵌合されている。
【0026】
ドラム18は略円柱状に形成されたものであって、径方向略中央のウォームホイール22側の端面18aに、出力軸25を挿入可能な凹部32が形成されている。この凹部32の内周面にスプライン33が形成されることにより、出力軸25とドラム18とがスプライン嵌合される。これにより、ウォームホイール22とドラム18とが相対回転不能に連結され、ドラム18がウォームホイール22と一体となって回転する。
【0027】
また、ドラム18の径方向中央には、センターピン26の大径軸26bを挿通可能な挿通孔19が形成されており、センターピン26によってドラム18が回転自在に支持された状態になっている。挿通孔19は、凹部32に連通形成されている。
さらに、ドラム18は、このウォームホイール22側の端面18aが出力軸25の拡径部25aの端面に当接するようになっており、これによりドラム18の軸方向の位置が決定される。
【0028】
また、ドラム18の外周面には、螺旋状の案内溝34が形成されており、この案内溝34に沿ってケーブル5が複数巻回されている。これにより、ドラム18が正/逆回転すると、回転方向下流側のケーブル5がドラム18に引き込まれ、回転方向上流側のケーブル5がドラム18から繰り出される。そして、ケーブル5が連結されているキャリアプレート4が、ガイドレール2に沿ってスライド移動する。キャリアプレート4がガイドレール2に沿ってスライド移動することにより、ウインドウガラス3の開閉動作が行われる。
【0029】
ケーシング16の開口部16aを閉塞するボトムカバー17は、平板状のカバー本体35を有している。ここで、ケーシング16の開口部16aは、平面視円形状に形成されており、カバー本体35も開口部16aに対応するように平面視円形状に形成されている。これにより、ケーシング16に対して、カバー本体35が相対回転可能に設けられている。
また、ケーシング16の開口部16aは、ウォームホイール収納部62の底壁62a側に向かうに従って、徐々に縮径するように段差部16bが形成されている一方、カバー本体35の内面35aには、段差部16bにインロー嵌合可能なインロー部36aが形成されている。
【0030】
さらに、カバー本体35の径方向略中央には、ケーシング16から突出する出力軸25を挿通可能な挿通孔36bが形成されている。ここで、出力軸25の挿通孔36bに対応する箇所には、拡径部25aが形成されている。したがって、出力軸25にスプライン嵌合されているドラム18は、カバー本体35よりも出力軸25の先端側に配置された状態になる。
カバー本体35の内面35aには、インロー部36aから挿通孔36bに至る間にシール部材37が装着されている。これにより、ケーシング16の開口部16aとカバー本体35のインロー部36aとの間、及び出力軸25の拡径部25aとカバー本体35の挿通孔36bとの間のシール性が確保される。
【0031】
カバー本体35の外面35bには、ドラム18の周囲を取り囲むように略筒状のドラムカバー部38が一体成形されている。ドラム18を保護すると共に、ドラム18に巻回されているケーブル5の巻き崩れを防止するためのものであって、ドラムカバー部38にドラム18が収納された状態になっている。
ドラムカバー部38の周壁38aには、開口部38bからカバー本体35にかけて大きく切り欠かれたケーブル溝39が周方向に4箇所形成されている。これらケーブル溝39を介してドラム18に巻回されたケーブル5がドラムカバー部38の外側に引き出される。
【0032】
ドラムカバー部38の開口部38bには、この開口部38bを閉塞するように下側ブラケット7が設けられている。下側ブラケット7は、ドラムカバー部38側に配置された第1ブラケット41と、この第1ブラケット41上に配置された第2ブラケット42とにより構成されている。
【0033】
第1ブラケット41は、ドラムカバー部38の開口部38bを閉塞する略円板状のカバー部41aと、カバー部41aの一側に一体成形されたフランジ部41bとにより構成されている。カバー部41aは、ドラムカバー部38を上から押さえることにより、ボトムカバー17のケーシング16からの脱落を防止すると共に、ドラムカバー部38に収納されているドラム18の抜け方向への移動を規制するためのものである。
【0034】
カバー部41aの外周縁には、ドラムカバー部38における開口部38bの周縁に外嵌可能な嵌合部43が立ち上がり形成されている。この嵌合部43とドラムカバー部38との嵌合は、相対回転可能な程度の嵌合になっている。また、カバー部41aの径方向中央には、センターピン26の大径軸26bを挿通可能な挿通孔44が形成されている。さらに、カバー部41aのドラム18側の面には、挿通孔44の周囲を取り囲むようにリブ45が形成されている。このリブ45は、カバー部41aの剛性を高める役割を有していると共に、カバー部41aとドラム18の端面との接触面積を減少させ、これらカバー部41aとドラム18との間に生じる摺動摩擦抵抗を減少させる役割を有している。
【0035】
カバー部41aの一側に一体成形されたフランジ部41bは、ケーシング16に形成されている3つのボルト取付け座63a,63b,63cのうち、ウォーム軸収納部61の径方向外側に配置されているボルト取付け座63aに向かって延出形成されたものである。具体的には、フランジ部41bは、カバー部41aからケーシング16に向かって屈曲延出する側壁46aと、側壁46aの先端からボルト取付け座63aに向かってカバー部41aと平行に延出する舌片部46bとが一体成形されている。
【0036】
舌片部46bのボルト取付け座63aに対応する部位には、ボルト64を挿通可能なブッシュ47が設けられている。このブッシュ47とボルト取付け座63aとにボルト64を挿通することにより、ケーシング16と第1ブラケット41とが一体化する。さらに、この第1ブラケット41により、ドラム18の抜け方向への移動が規制される。
【0037】
第1ブラケット41上に配置された第2ブラケット42は、ケーシング16の外周部に一体成形されている3つのボルト取付け座63a,63b,63cのうち、ウォームホイール収納部62の外周部に配置された2つのボルト取付け座63b,63c間に跨るように、断面略ハット状に形成したものである。
【0038】
すなわち、第2ブラケット42は、第1ブラケット41のカバー部41a上に配置され、ボルト取付け座63b,63c間に亘って長く形成されたベース部42aと、このベース部42aの長手方向両端からケーシング16側に向かって屈曲延出する側壁42b,42bと、側壁42b,42bの先端から長手方向外側に向かってベース部42aと平行に延出する舌片部42c,42cとが一体成形されている。
【0039】
舌片部42c,42cのボルト取付け座63b,63cに対応する部位には、それぞれブッシュ48,48が設けられている。これらブッシュ48とボルト取付け座63b,63cとにそれぞれボルト64を挿通することにより、ケーシング16と第2ブラケット42とが一体化する。
【0040】
このように、ケーシング16に、第1ブラケット41の舌片部46b、および第2ブラケット42の舌片部42c,42cが固定される一方、ドラムカバー部38の開口部38bを閉塞するように第1ブラケット41のカバー部41aが設けられると共に、このカバー部41a上に第2ブラケット42のベース部42aが設けられる。このため、ケーシング16と下側ブラケット7(第1ブラケット41、及び第2ブラケット42)とによりボトムカバー17が挟持された状態になる。
【0041】
一方、ベース部42aには、第1ブラケット41の挿通孔44に対応する部位に、挿通孔49が形成されている。また、ベース部42aには、短手方向ウォーム軸収納部61とは反対側に溶接部51が延出形成されている。溶接部51は、第2ブラケット42とガイドレール2とを溶着するための部位である。溶接部51は平面視略三角形状に形成されており、その頂点Tがベース部42aの短手方向最外側に位置するようになっている。
【0042】
一方、ガイドレール2の下端には、ガイドレール2の長手方向に沿って舌片部2aが形成されており、この舌片部2aが溶接部51と重ね合わさるようになっている。この重ね合わさった部分に、溶接部51との接合ポイントPが設定されている(図4図5参照)。これにより、ガイドレール2とケーブル駆動部6とが下側ブラケット7を介して一体化される。
【0043】
また、ガイドレール2の舌片部2aには、センターピン26の頭部26aを挿通可能な挿通孔2bが形成されている。すなわち、センターピン26を、第1ブラケット41、及び第2ブラケット42をこの順で重ね合わせた後、第2ブラケット42の上から挿通し、ドラム18の挿通孔19、および出力軸25の挿通孔27を介してケーシング16のボス部28の凹部28aに圧入固定する。これにより、センターピン26の頭部26aで第1ブラケット41、及び第2ブラケット42のセンターピン26からの抜けを防止することができる。
【0044】
そして、このように固定された第2ブラケット42の上からガイドレール2を、このガイドレール2の挿通孔2bにセンターピン26の頭部26aを挿通するように取付ける。
これにより、第1ブラケット41、第2ブラケット42、ドラム18、及び出力軸25がセンターピン26に回転自在に支持された状態になり、且つセンターピン26を中心にしてガイドレール2が回動自在に取付けられる。このため、センターピン26を中心にしてガイドレール2を回動させることにより、ガイドレール2とケーブル駆動部6との相対角度を変化させることができる。
【0045】
このとき、第2ブラケット42に形成されている溶接部51が平面視略三角形状に形成されており、その頂点Tがベース部42aの短手方向最外側に位置するようになっているので、第2ブラケット42とガイドレール2との相対位置が変化しても溶接部51上でガイドレール2と溶接することができる。すなわち、溶接部51は、センターピン26を中心にした回転方向に沿って、ガイドレール2の回動角度分の長さだけ形成されていることになる。
【0046】
また、ガイドレール2とケーブル駆動部6との相対角度が変化することにより、ドラム18からのケーブル5の引き出し方向が変化するが、ドラムカバー部38が一体成形されているボトムカバー17が、ケーシング16に対して相対回転可能に設けられているので、ドラムカバー部38とケーブル5とが干渉してしまうのが防止される。
【0047】
(下側ブラケット、及びボトムカバーの作用)
より詳しく、図4図5に基づいて、下側ブラケット7、及びボトムカバー17の作用について説明する。
図4図5は、ウインドウレギュレータ1を示し、それぞれガイドレール2に対するケーブル駆動部6の取付け角度が異なる。また、図4(a)、図5(a)は、ケーブル駆動部6にガイドレール2を取り付けた状態の上面図、図4(b)、図5(b)は、ウインドウレギュレータ1からガイドレール2と下側ブラケット7を取り外した状態の上面図、図4(c)、図5(c)は、それぞれ図4(b)、図5(b)の斜視図である。
【0048】
図4(a)に示すように、ケーブル駆動部6を構成する電動モータ12の回転軸線とガイドレール2の長手方向との間の角度をθとしたとき、下側ブラケット7の第2ブラケット42に形成されている溶接部51と、ガイドレール2の舌片部2aとの接合ポイントPが、溶接部51の頂点T寄りにあるとする。
【0049】
これに対し、図5(a)に示すように、ガイドレール2をセンターピン26を中心に角度αだけ回動させ、電動モータ12の回転軸線とガイドレール2の長手方向との間の角度をθ+αとしたとき、接合ポイントPもセンターピン26を中心にして角度αだけずれる。このとき、溶接部51の根元、つまり、ベース部42a寄りに接合ポイントPがずれる。すなわち、溶接部51がセンターピン26を中心にした回転方向に沿って、ガイドレール2の回動角度α分の長さだけ形成されているので、ガイドレール2が回動しても接合ポイントPを溶接部51上に位置させることができる。
【0050】
また、電動モータ12の回転軸線とガイドレール2の長手方向との間の角度がθのとき、ケーブル5の引き出し方向は図4(b)、図4(c)に示す状態であるのに対し、電動モータ12の回転軸線とガイドレール2の長手方向との間の角度がθ+αのとき、ケーブル5の引き出し方向は図5(b)、図5(c)に示す状態となる。
ここで、ケーブル5が巻回されているドラム18は、ドラムカバー部38に収納された状態になっており、このドラムカバー部38に形成されたケーブル溝39を介してケーブル5が引き出されている。しかしながら、ドラムカバー部38が一体成形されているボトムカバー17は、ケーシング16に対して相対回転可能に設けられているので、ボトムカバー17を角度αだけ回動させることにより、ドラムカバー部38とケーブル5との干渉を回避できる。
【0051】
(効果)
したがって、上述の実施形態によれば、ドラム18を回転自在に支持するセンターピン26に、下側ブラケット7とガイドレール2とが挿通されて、センターピン26を中心にして下側ブラケット7、及びガイドレール2が回動自在に構成されていると共に、下側ブラケット7の第2ブラケット42に形成されている溶接部51を、センターピン26を中心にした回転方向に沿って、ガイドレール2の回動角度α分だけ長くなるように形成しているので、電動モータ12の回転軸線とガイドレール2の長手方向との間の角度をθからθ+αに変化させた場合であっても第2ブラケット42の溶接部51とガイドレール2の接合ポイントPとを重ね合わせることができる。この結果、ガイドレール2とケーブル駆動部6との相対取付角度を容易に変更することができる。また、ウインドウレギュレータ1のレイアウトパターンごとに下側ブラケット7を用意する必要がないので、この分、部品の共有化を図ることができる。
【0052】
また、ケーシング16に対してボトムカバー17が相対回転可能に設けられており、このボトムカバー17にドラムカバー部38を一体成形し、このドラムカバー部38の周壁38aに、ケーブル5を引き出すためのケーブル溝39を形成している。このため、ボトムカバー17にドラム18を支持する機能を持たせることができ、部品点数を減少することができる。また、ドラムカバー部38もボトムカバー17と一体となって回動するので、ガイドレール2とケーブル駆動部6との相対取付角度が変化することにより、ドラム18からのケーブル5の繰り出し方向が変化した場合であっても、ドラムカバー部38の取付角度を容易に変更することができる。このため、組み付け作業性を向上させることが可能になる。
【0053】
さらに、ボトムカバー17には、インロー部36aインロー部36aから挿通孔36bに至る間にシール部材37が装着されている。このため、ケーシング16の開口部16aとカバー本体35のインロー部36aとの間、及び出力軸25の拡径部25aとカバー本体35の挿通孔36bとの間のシール性が確保される。
【0054】
そして、ボトムカバー17上に一体成形されているドラムカバー部38の開口部38b側に、下側ブラケット7(第1ブラケット41、及び第2ブラケット42)を配置し、この下側ブラケット7とケーシング16とにより、ボトムカバー17、及びドラムカバー部38を挟持している。このため、ケーシング16に対してボトムカバー17を相対回転可能に設けた場合であってもボトムカバー17の固着力を向上させることができ、車両のドア100の内部にウインドウレギュレータ1を組み付けた後にボトムカバー17が回転しまうことを防止することができる。
【0055】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、下側ブラケット7を、ドラムカバー部38側に配置された第1ブラケット41と、この第1ブラケット41上に配置された第2ブラケット42とにより構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第1ブラケット41と第2ブラケット42とを一体化したものを下側ブラケット7としてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態では、第2ブラケット42に形成されている溶接部51は、平面視略三角形状に形成されており、その頂点Tがベース部42aの短手方向最外側に位置するようになっている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、溶接部51は、センターピン26を中心にした回転方向に沿って、ガイドレール2の回動角度分だけ長く形成されていればよい。
【0057】
さらに、上述の実施形態では、第2ブラケット42に形成された溶接部51とガイドレール2の接合ポイントPとを溶着させた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第2ブラケット42とガイドレール2とが接合されればよい。例えば、接着剤等を用いて第2ブラケット42の溶接部51とガイドレール2の接合ポイントPとを接合してもよい。
【0058】
そして、上述の実施形態では、下側ブラケット7を構成する第1ブラケット41は、ドラムカバー部38の開口部38bを閉塞する略円板状のカバー部41aを有している場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、少なくともドラムカバー部38の開口部38bと、第1ブラケット41のカバー部41a、及び第2ブラケット42のベース部42aの少なくとも何れかの一部とが当接するように構成されていればよい。このように構成されていれば、下側ブラケット7とケーシング16とにより、ボトムカバー17、及びドラムカバー部38を挟持することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ウインドウレギュレータ(ウインドウガラス昇降装置)
2 ガイドレール
2a 舌片部
4 キャリアプレート
5 ケーブル
6 ケーブル駆動部
7 下側ブラケット(ブラケット)
8 上側ブラケット(ブラケット)
12 電動モータ(モータ)
13 減速機構
15 減速歯車
16 ケーシング
16a 開口部
17 ボトムカバー
18 ドラム
26 センターピン(軸部)
37 シール部材
38 ドラムカバー部
38a 周壁
39 ケーブル溝
51 溶接部(接合部)
63a,63b,63c ボルト取付け座
100 ドア
P 接合ポイント(接合部)
図1
図2
図3
図4
図5