(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706255
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】浚渫土砂における混在物の分別方法と、それに使用する浚渫土砂の分別装置
(51)【国際特許分類】
E02F 7/00 20060101AFI20150402BHJP
【FI】
E02F7/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-149906(P2011-149906)
(22)【出願日】2011年7月6日
(65)【公開番号】特開2011-202501(P2011-202501A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2014年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】老田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】大谷 浩蔵
(72)【発明者】
【氏名】日隈 裕史
(72)【発明者】
【氏名】大村 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊佐地 充
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−000424(JP,A)
【文献】
特開2006−097378(JP,A)
【文献】
特開2006−346664(JP,A)
【文献】
特開2003−047808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体の内部空間の水で土砂と混在物とを分別し、分別された前記土砂を前記筒体の下位置の水底に仮置きする装置であって、
前記筒体の内部に設けられ前記分別された土砂と自然落下した雑物とが再混入しないように前記雑物を回収する回収網と、
前記筒体の内周壁に設けられ前記混在物を沈降時間差で前記土砂から分別させる水流発生装置とからなること、
を特徴とする浚渫土砂の分別装置。
【請求項2】
筒体の水流によって前記土砂から分別された混在物を回収するために、該混在物が前記水流によって偏在する箇所に前記筒体内側の壁面から内部に向かって突設された混在物回収装置を有するものであること、
を特徴とする請求項1に記載の浚渫土砂の分別装置。
【請求項3】
筒体の内部にある回収網は、昇降装置によって上下方向に昇降自在であること、
を特徴とする請求項1または2に記載の浚渫土砂の分別装置。
【請求項4】
筒体は、該筒体を水面近傍に浮沈させるバラスト装置と、前記筒体の周縁部に設けられ筒体を所望の設置位置に位置決めする位置固定装置とを有する浮体であること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浚渫土砂の分別装置。
【請求項5】
筒体の下位置に連続するように設けられ、筒体下面から水底までの周囲を囲って、汚濁拡散を防止するとともに上下方向に伸縮自在な汚濁拡散防止装置を有すること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の浚渫土砂の分別装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の浚渫土砂の分別装置を形成し、混在物が混じった土砂を前記分別装置に投入し、当該分別装置における筒体の水流発生装置により沈降時間差で混在物を土砂から分別し、前記土砂から分別された混在物を揚上装置で運搬用の台船に積み込むこと、
を特徴とする浚渫土砂における混在物の分別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木皮(もくひ)や沈木等の土砂以外の固形物である混在物(以下、同じ)が水底に堆積している土砂を浚渫する際に、前記木皮等の混在物と土砂とを分別する浚渫土砂における混在物の分別方法と、それに使用する浚渫土砂の分別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浚渫した土砂から例えば砂等のリサイクルできるものを分別する方法として、特許文献1〜3に記載されているように、旋回流によって濾過する方法(特許文献1)、振動させて気泡を混入させて比重差で分別させるもの(特許文献2)、内部が中空の函体に攪拌翼を備えて、ウォータージェット噴出口からジェット噴射して砂吸引装置で砂を吸引して分別するもの(特許文献3)が知られている。しかしながら、土砂中に堆積した木皮等の混在物を対象にして分別する方法に関しては、特に技術文献などで紹介されたものがなく、例えば、次のようにして行われている。
【0003】
木皮等の混在物混じりの土砂を陸上ヤードや大型平台船にバケットで揚土し、振動篩等の分別機や人力により分別および洗浄を行っていた。このほか、水面上にワイヤモッコや合成繊維ネットなどを貼り、木皮等の混在物混じり土砂を投下させ前記ネット上に留まる木皮などの混在物を分別及び洗浄するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−137910号公報
【特許文献2】特開2002−254063号公報
【特許文献3】特開2005−163364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の混在物が堆積した浚渫土砂の分別方法においては、混在物混じりの土砂をネット等で分別を行うと、木皮等の混在物がネットに絡みつき剥離させる時間が発生して工期が長期化する。また、振動篩等の分別機を用いると篩に木皮等が絡まり、篩の目を目詰まりさせる。土質により網上の滞留時間に変化があり、土質による処理時間の違いが発生する。
【0006】
更に、目詰まりを解消するために、篩目に被さった木皮等の混在物を人力や洗浄にて取り除かなければならないので、手間が掛かる。前記振動篩による分別処理は、船団機器構成が多種になり経済性に問題がある。前記ネットによる分別法は、土砂による濁りの発生等の課題もある。本発明に係る浚渫土砂内の混在物の分別方法とそれに使用する分別装置は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る浚渫土砂の分別装置の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、
浮体である筒体の内部空間の水で土砂と混在物とを分別
し、分別された前記土砂を前記筒体の下位置の水底に仮置きする装置であって、
前記筒体の内部に
設けられ前記分別された土砂と自然落下した雑物とが再混入しないように前記雑物を回収する回収網と、前記筒体
の内周壁に設けられ前記混在物を沈降時間差で前記土砂から分別させる水流発生装置とからなることである。
【0008】
前記筒体の水流によって前記土砂から分別された混在物を回収するために、該混在物が前記水流によって偏在する箇所に前記筒体内側の壁面から内部に向かって突設された混在物回収装置を有するものであることを含む。
【0009】
前記筒体の内部にある回収網は、昇降装置によって上下方向に昇降自在である。
【0010】
更に、
前記筒体は、該筒体を水面近傍に浮沈させるバラスト装置と、前記筒体の周縁部に設けられ筒体を所望の設置位置に位置決めする位置固定装置とを有する浮体であることである。
また、筒体の下位置に連続するように設けられ、筒体下面から水底までの周囲を囲って、汚濁拡散を防止するとともに上下方向に伸縮自在な汚濁拡散防止装置を有することを含むものである。
【0011】
本発明に係る浚渫土砂の分別方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、前記浚渫土砂の分別装置を形成し、混在物が混じった土砂を前記分別装置に投入し、当該分別装置における筒体の水流発生装置により
沈降時間差で混在物を土砂から分別し、前記土砂から分別された混在物を
揚上装置で運搬用の台船に積み込むことである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の浚渫土砂における混在物の分別方法と、その方法に使用する分別装置によれば、分別装置で容易に堆積土砂が混在物と分別されて、土質による作業能力の変化が少なく、分別作業が能率的に行われる。また、分別装置の機器構成がシンプルであるため、メンテナンスが容易、かつ、耐久性が高い。
堆積土砂の解泥によって生じるシルト等の汚濁が拡散するのを防止して、周囲の環境を保全しつつ混在物の分別ができる。
混在物の回収が方向を持たせて形成される水流と回収装置とで効率的に行うことができ、更に、雑物などが昇降自在な回収網で容易に回収できて、作業の能率が向上する。
更に、筒体を汎用性の高い組立式とすることで、容易に分別装置を製造し、製造コストも低減される、等の数々の優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る浚渫土砂の分別方法を作業流れの順番に示す全体概略図である。
【
図2】同本発明に係る浚渫土砂の分別方法における一部拡大した浚渫及び分別作業の説明図である。
【
図3】同本発明の浚渫土砂の分別方法に使用する分別装置1とクレーン8bを有するグラブ付台船8との配置を示す平面図である。
【
図4-A】同本発明の浚渫土砂の分別方法に使用する分別装置1における回収網4の斜視図(A)と、その回収網4に昇降装置4aが設けられていることを示す斜視図(B)とである。
【
図4-B】同本発明の浚渫土砂の分別方法に使用する分別装置1において、籠4cを回収網とした実施例の断面図である。
【
図5】筒体5内の水槽における水の流れが渦巻水流である場合の断面図(A)と、直射水流の場合の断面図(B)とである。
【
図6】筒体5内の水槽における水の流れが水平方向の渦巻水流である場合の平面図(A)と、鉛直方向の渦巻水流である場合の断面図(B)と、直射水流の場合の平面図(C)とである。
【
図7】筒体5に混在物回収装置10を設けた状態の概略平面図である。
【
図8】土塊解泥装置12の概略構成を示す斜視図である。
【
図9】本発明に係る浚渫土砂の分別方法を示す、分別作業の流れに沿ったフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る浚渫土砂の分別方法は、
図1乃至
図3に示すように、港湾等において所定の深さに航路を形成する際に、浅瀬となっている堆積土砂2を浚渫する浚渫工事において、堆積土砂2中に埋設された、木皮若しくは土砂以外の固形物である混在物3を分別するため、分別装置1を形成し、効率的に混在物3と土砂2とを分別して、前記混在物3を再利用する方法である。なお、前記混在物3は、浚渫の目的によって、堆積土砂2に埋設された有機物や無機物で形成されたものを含むものである。
【実施例1】
【0015】
本発明においては、浚渫すべき堆積土砂2の分別方法に使用する分別装置1を形成する。該分別装置1は、
図4−A(A)に示すように、土砂・混在物分別用で比較的粗い目をした網状の回収網4を内部に有する筒体5がある。
【0016】
前記筒体5は、例えば、矩形状の筒体5の周壁側に設けられ当該筒体5を水面近傍に浮沈させるバラスト装置6と、前記筒体5の周縁部に設けられ前記筒体を所望の設置位置に位置決めする位置固定装置(
図3参照)7と、を有する浮体である。なお、位置固定装置7は、
図3に示す実施例において仕分け船8の側部に固定しているので、一例として筒体5の外側に設けたチェーン,ロープ等である。
【0017】
前記筒体5の内周壁に設けられ当該筒体5の内部空間の水に、
図5乃至
図6に示すように、上下・水平方向において任意の方向に水流を発生させる水流発生装置9がある。この水流発生装置9は、例えば、
図5(A),
図6(A),(B)に示すように、内周壁から壁面に沿うようにミキサ装置9aで水を時計方向又は反時計方向に旋回させて渦巻水流にしたり、
図5(B),
図6(C)に示すように、内周壁から中央上部に向って噴射水ポンプ9bで水を噴射させて直射水流にしたりする水噴射装置9cがある。なお、攪拌機等を備えて上記渦巻水流にしてもよい。
【0018】
図7に示すように、前記筒体5の内部水面における水流によって混在物3が偏在する箇所に配設した混在物回収装置10がある。この混在物回収装置10として、例えば、
図7に示す水流に抵抗する抵抗板10aがある。この抵抗板10aは、筒体5内側の壁面から筒体5の内部に向って、上下方向に所望幅にして突設され、混在物3を引っ掛ける網目状の目を持った金属製板である。更に、水流の向きに直交するか若しくは水流の向きに鋭角に交わるように抵抗板10aの水流に対する角度を可変させる、油圧ジャッキ等の抵抗板可変装置10bが設けられている。
【0019】
前記回収網4は、
図4−A(A),(B)に示すように、筒体5の内部で底部から上位置の任意の位置にあって、例えばウィンチ等による昇降装置4aによって上下方向に昇降自在である。この回収網4によって、堆積土砂2の中に埋設されていた沈木やその他の雑物4bが回収され、再び土砂2の中に雑物4bが埋設しないようにされる。前記混在物回収装置10が、水中の混在物3を水面とその近傍位置で回収するのが目的であるのに対して、この回収網4は、堆積土砂2と共に自然落下してくる雑物4bを回収するのが目的である。また、
図4−Bに示すように、回収網の他の実施例として、籠4cを使用することもできる。
【0020】
そして、この分別装置1は、
図4−A(A),(B)に示すように、前記筒体5の下位置に連続するように設けられ筒体下面から水底までの周囲を囲ってシルト等の汚濁拡散を防止する汚濁拡散防止装置として汚濁拡散防止膜11がある。この汚濁拡散防止膜11は、例えば、シート状の防止膜である。この汚濁拡散防止膜11は、例えば、ドラムで巻き上げたり、ワイヤー又はロープで巻き上げたり、公知の膜用の膜昇降装置(図示せず)によって上下方向に伸縮自在である。
【0021】
更に、筒体5の水槽中に堆積土砂2を投入する前に、該堆積土砂2が硬い土塊である場合には、これを小さく破砕して小分けして前処理することが、分別作業において効率的となる。そこで、
図8に示すように、ホッパー12aと、該ホッパー12aの底部の開口部に設けられたスクリーン12bと、前記ホッパー12aに装備され該ホッパー内に水を噴射して土塊を解泥する水噴射装置12cと、前記ホッパー12aの下部に設けられる運搬・投入用のシュート12dとからなる土塊解泥装置12を、分別装置1に設けることが好ましい。
【0022】
この土塊解泥装置12を使用して、硬い堆積土砂2を小塊にしてから筒体5の分別用水槽5a中に投入することで、分別作業が能率的になる。また、筒体5の投入口の上方位置に、衝撃によって小塊にする緩衝板を設けたり、破砕によって小塊にする破砕板を設けたりしても良い。
【0023】
このようにして、筒体5の内側空間を水槽として、そこに堆積土砂2を投入して、若しくは、堆積土砂2を小塊にしてから水槽に投入して、混在物3を堆積土砂2と分別し、前記筒体5の底部に雑物回収網4を設けて雑物4aも回収し、堆積土砂2の水中への投入によるシルト等の汚濁も周囲へ拡散しないようにして、環境を守る分別装置1を形成するものである。
【実施例2】
【0024】
以上のような分別装置1を形成して、本発明にかかる浚渫土砂の分別方法について説明する。前記分別装置1を形成した後、
図1乃至
図2に示すように、該浚渫土砂の分別装置1を、港湾の工事区域を土留矢板18で囲った浚渫領域における浚渫位置に運び込むとともにアンカーなどで位置固定する。更に、膜用の膜昇降装置で汚濁拡散防止膜11を水底まで落として分別装置1の下方周囲を囲わせる。なお、前記筒体5の下部を水底近傍にまで着底させて汚濁拡散を防止する場合もある。
【0025】
次に、
図1に示すように、前記浚渫領域における堆積土砂2を台船(土運船)17に積み込んで、この台船17を仕分け船8の横に運び込む。この仕分け船8などの揚上重機8bによって前記台船17の混在物3が混じった堆積土砂2をバケット8aで掴んで前記分別装置1の分別用水槽5aに投入する。なお、土塊解泥装置12に先に前記堆積土砂2を投入して前処理し、それから分別用水槽5aに投入することもある。
【0026】
前記分別装置1における筒体5の
水流発生装置9により混在物3を比重差による沈降時間差で分別する
(図5、図6参照)。この混在物3は、堆積土砂2と共に沈むこともあるが、上向きの水流や浮力で沈降時間差が発生する。混在物3と分別された土砂2aは、底に沈降していく。シルトなどの汚濁粒子は、汚濁拡散防止膜11によって拡散防止され、周囲の海等を汚すことなく、水質環境を保全する。
【0027】
前記混在物3は、
図6(A),(B),(C)に示すように、分別用水槽5aにおけるミキサ装置9a若しくは水噴射装置9cや攪拌機などによる、水平方向または上下方向の旋回流や直射水流などの水流を利用して集められるようになり、
図1に示すように、モッコ19をクレーンなどの揚上重機等によって陸揚げされる。その後、混在物3は、トラックなどで工場に運ばれて、木皮等の混在物であればチップ等に裁断されて燃料として再利用され、その他の混在物であれば適宜に処理して再利用若しくは破棄等するものである。この混在物の分別方法を、
図9にフロー図として示す。
【0028】
一方、
図1に示すように、前記仕分け船8の下に仮置きされた土砂2aは、その後に浚渫されて台船(土運船)17で運ばれて処分される。
【符号の説明】
【0029】
1 分別装置、
2 堆積土砂、 2a 土砂、
3 混在物、
4 回収網、 4a 昇降装置、
4b 雑物、 4c 籠、
5 筒体、 5a 分別用水槽、
6 バラスト装置、
7 位置固定装置、
8 グラブ付台船、 8a バケット(クラムシェル)、
8b 揚上重機(クレーン)、
9 水流発生装置、 9a ミキサ装置、
9b 噴射水ポンプ、 9c 水噴射装置、
10 混在物回収装置、 10a 抵抗板、
10b 抵抗板可変装置、
11 汚濁拡散防止膜、
12 土塊解泥装置、 12a ホッパー、
12b スクリーン、 12c 水噴射装置、
12d シュート、
15 台船、
17 台船(土運船)
18 土留矢板、
19 モッコ。
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