特許第5706256号(P5706256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5706256浚渫土砂の分別船とその分別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706256
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】浚渫土砂の分別船とその分別方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/94 20060101AFI20150402BHJP
   E02F 3/88 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   E02F3/94 A
   E02F3/88 E
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-149909(P2011-149909)
(22)【出願日】2011年7月6日
(65)【公開番号】特開2011-202502(P2011-202502A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2014年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511164400
【氏名又は名称】株式会社繩定
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】老田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】大谷 浩蔵
(72)【発明者】
【氏名】日隈 裕史
(72)【発明者】
【氏名】伊佐地 充
(72)【発明者】
【氏名】竹内 浩
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−348905(JP,A)
【文献】 特開平01−322030(JP,A)
【文献】 特開平06−026076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/94
E02F 3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の一部に上下方向に貫通する貫通孔を有する台船と、
前記貫通孔に水流を発生させる水流発生装置と、
堆積土砂から前記水流によって分別された混在物を、回収する混在物回収装置とからなること、
を特徴とする浚渫土砂の分別船。
【請求項2】
分別船の貫通孔の下部から水底に吊持された汚濁拡散防止装置は、膜昇降装置によって上下方向に伸縮自在であること、
を特徴とする請求項1に記載の浚渫土砂の分別船。
【請求項3】
混在物回収装置は、水流の向きと交わる回収装置の角度を可変する可変装置を有するものであること、
を特徴とする請求項1または2に記載の浚渫土砂の分別船。
【請求項4】
貫通孔の内部にある回収網は、昇降装置によって上下方向に昇降自在であること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の浚渫土砂の分別船。
【請求項5】
分別船は、独立した台船を互いに連結して形成した組立式台船であるとともに、前記独立した台船同士の間に空隙を設けることで貫通孔が形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の浚渫土砂の分別船。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の浚渫土砂の分別船によって堆積土砂の混在物を土砂から分別すること、
を特徴とする浚渫土砂の分別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底に木皮(もくひ)や沈木等の土砂と異なる固形物である混在物(以下、同じ)が堆積している土砂を浚渫する際に、前記木皮等の混在物と土砂とを分別する浚渫土砂の分別船とその分別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浚渫した土砂を例えば砂等のリサイクルできるものを分離する方法として、特許文献1〜3に記載されているように、旋回流によって濾過する方法(特許文献1)、振動させて気泡を混入させて比重差で分離させるもの(特許文献2)、内部が中空の函体に攪拌翼を備えて、ウォータージェット噴出口からジェット噴射して砂吸引装置で砂を吸引して分離するもの(特許文献3)が知られている。しかしながら、土砂中に堆積した木皮等の混在物を対象にして分離する方法に関しては、特に技術文献などで紹介されたものがなく、例えば、次のようにして行われている。
【0003】
木皮等の混在物混じりの土砂を陸上ヤードや大型平台船にバケットで揚土し、振動篩等の分別機や人力により分別および洗浄を行っていた。このほか、水面上にワイヤモッコや合成繊維ネットなどを貼り、木皮等の混在物混じり土砂を投下させ前記ネット上に留まる木皮などの混在物を分別及び洗浄するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−137910号公報
【特許文献2】特開2002−254063号公報
【特許文献3】特開2005−163364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の混在物が堆積した浚渫土砂の分別方法においては、混在物混じりの土砂をネット等で分別を行うと、木皮等の混在物がネットに絡みつき剥離させる時間が発生して工期が長期化する。また、振動篩等の分別機を用いると篩に木皮等が絡まり、篩の目を目詰まりさせる。土質により網上に発生する滞留時間に変化があり、土質による処理時間の違いが発生する。
【0006】
更に、目詰まりを解消するために、篩目に被さった木皮等の混在物を人力や洗浄にて取り除かなければならないので、手間が掛かる。前記振動篩による分別処理は、船団機器構成が多種になり経済性に問題がある。前記ネットによる分別法は、土砂による濁りの発生等の課題もある。本発明に係る浚渫土砂の分別船とその分別方法は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る浚渫土砂の分別船の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、躯体の一部に上下方向に貫通する貫通孔を有する台船と、前記貫通孔に水流を発生させる水流発生装置と、堆積土砂から前記水流によって分別された混在物を、回収する混在物回収装置とからなることである。
【0008】
前記分別船の貫通孔の下部から水底に吊持された汚濁拡散防止装置は、膜昇降装置によって上下方向に伸縮自在であることを含み、
前記混在物回収装置は、水流の向きと交わる回収装置の角度を可変する可変装置を有するものであることを含む。
また、貫通孔の内部にある回収網は、昇降装置によって上下方向に昇降自在であることである。
更に、前記分別船は、独立した台船を互いに連結して形成した組立式台船であるとともに、前記独立した台船同士の間に空隙を設けることで貫通孔が形成されていることである。
【0009】
また、本発明の浚渫土砂の分別方法の要旨は、上記浚渫土砂の分別船によって堆積土砂の混在物を土砂から分別することである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の浚渫土砂の分別船と分別方法によれば、分別機能を備えた分別船の機動性により、浚渫場所への移動や現地での浚渫作業の段取りが容易で迅速化され、浚渫・分別作業が効率的に行えるとともに、浚渫作業の工期も短縮される。
また、汚泥拡散防止装置によって環境汚染が防止される。更に、混在物回収装置は、旋回流との角度調節が可能なので混在物を効率的に回収することができる。回収網は、上下方向に昇降自在なので、混在物の回収作業が容易になるものである。分別船が、組立式台船でなるとすれば、専用の分別船である必要が無く、既存の独立した台船を活用して分別船が形成されるので、低コストで分別船を製作することができる、等の数々の優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る分別船1の使用状態の側面図(A)、他の実施例にかかる一部側面図(B)、更に他の実施例の一部側面図(C)である。
図2】同本発明に係る分別船1の使用状態の平面図(A)と、組立式台船15とした場合の平面図(B)とである。
図3】本発明に係る浚渫土砂の分別方法の作業の流れに沿ったフロー図である。
図4】同本発明の浚渫土砂の分別方法に使用する分別装置7における回収網4の斜視図(A)と、その回収網4に昇降装置4aが設けられていることを示す斜視図(B)とである。
図5】筒体5内の水流発生装置によって、水槽における水の流れが渦巻水流である場合の断面図(A)と、直射水流の場合の断面図(B)とである。
図6】筒体5内の水槽における水の流れが渦巻水流である場合の平面図(A)と、直射水流の場合の平面図(B)とである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る浚渫土砂の分別方法は、図1乃至図3に示すように、港湾等において所定の深さに航路を形成する際に、浅瀬となっている堆積土砂2を浚渫する浚渫工事において、堆積土砂2中に埋設された、木皮若しくは土砂2aと異なる固形物である混在物3を分別するため、分別船1を形成し、効率的に混在物3と土砂2aとを分別して、前記混在物3を再利用する方法である。
【0013】
また、前記混在物3は、浚渫の目的によって、堆積土砂2に埋設された有機物や無機物で形成されたものを含むものである。本発明に係る浚渫土砂の分別船1は、図1(A)と図2(A)とに示すように、分別装置7を台船12に一体に形成するものである。
【実施例1】
【0014】
本発明に係る分別船1は、図1(A)および図2(A)に示すように、堆積土砂2を土砂2aと混在物3と分別する分別装置7を台船12に一体的に備える。前記分別装置7は、図4(A)に示すように、前記台船12の一部に上下方向の貫通孔が設けられ、その貫通孔の周囲壁面が水密に密閉されて形成される筒体5と、該筒体5の下に上下方向に伸縮自在に設けられる汚濁拡散防止膜11とからなる。なお、図2(B)に示すように、分別船は、独立した台船15aを互いに連結して形成した組立式台船15とすることができる。また、前記独立した台船15a同士の間に空隙を設けることで貫通孔が形成されるものである。この組立式台船15であれば、専用の分別台船1を形成するコストが掛からず、小型の独立した台船15aを利用して形成することができて、台船の製造コストを廉価にすることができる。
【0015】
前記筒体5には、土砂・混在物分別用で比較的粗い目をした網状の回収網4を筒体内部に有する。前記回収網4は、図4(A),(B)に示すように、筒体5内で昇降装置4aによって上下方向に昇降自在である。この回収網4によって、堆積土砂2の中に埋設されていた沈木等の混在物3や、その他の雑物4bが回収され、再び土砂2aの中に混在物3が埋設しないようにされる。
【0016】
そして、この分別装置7は、図4(A),(B)に示すように、前記筒体5の下位置に連続するように設けられ筒体下面から水底までの周囲を囲ってシルト等の汚濁拡散を防止する汚濁拡散防止装置として汚濁拡散防止膜11がある。この汚濁拡散防止膜11は、例えば、シート状の防止膜である。この汚濁拡散防止膜11は、例えば、ドラムで巻き上げたり、ワイヤー又はロープで巻き上げたり、公知の膜用の膜昇降装置(図示せず)によって上下方向に伸縮自在である。
【0017】
前記筒体5の内周壁に設けられ当該筒体5の内部空間の水に、図5乃至図6に示すように、上下・水平方向において任意の方向から水流を発生させる水流発生装置9が設けられる。例えば、図5(A),図6(A)に示すように、内周壁から壁面に沿うように噴射水ポンプで水を噴射させて時計方向又は反時計方向に回転させる渦巻水流にしたり、図5(B)、図6(B)に示すように、内周壁から中央上部に向って噴射水ポンプ9aで水を噴射させて直射水流にしたりする水流発生装置9がある。なお、攪拌機等を備えて渦巻水流にしてもよい。
【0018】
以上のような分別装置7を一体に有する分別船1を形成して、本発明にかかる浚渫土砂の分別方法について説明する。前記分別船1を港湾の工事区域を土留矢板で囲った浚渫領域における浚渫位置に運び込むとともにアンカー1aで位置固定する。更に、膜用の膜昇降装置で汚濁拡散防止膜11を水底16まで落として分別装置7の下方周囲を囲わせる。
【0019】
次に、図2(A)に示すように、前記浚渫領域における堆積土砂2を台船(土運船)13に積み込んで、この台船13を分別船1の横に運び込む。この分別船1のクレーン8bによって前記台船13の混在物3が混じった堆積土砂2をバケット8aで掴んで前記分別装置7の分別用水槽5aに投入する。
【0020】
前記分別装置7における筒体5の水流発生装置9により混在物3を比重差による沈降時間差で分別する。この混在物3は、比重が1に近いこともあり、土砂2と共に沈むこともあるが、上向きの水流や浮力で沈降時間差が発生する。混在物3と分別された土砂2は、底に沈降していく。シルトなどの汚濁粒子は、汚濁拡散防止膜11によって拡散防止され、周囲の海等を汚すことはなく、環境が守られる。
【0021】
前記混在物3は、図6(A),(B)に示すように、分別用水槽5aにおける水流発生装置9や攪拌機などによる水流を利用して集められるようになり、図2に示すように、クレーン8b及び回収用モッコ14によって、回収用の台船13に回収される。その後、混在物3は、陸揚げされてトラックなどで工場に運ばれて、木皮等の混在物であればチップ等に裁断されて燃料として再利用され、その他の混在物であれば適宜に処理して再利用若しくは破棄等するものである。この混在物の分別方法を、図3にフロー図として示す。
【0022】
このように、分別装置7と台船12とが一体型であれば、分別装置7の設置・移動なども容易となり、土砂の分別作業能率が向上するものである。
【0023】
一方、前記分別船1の下に仮置きされた土砂2aは、その後に浚渫されて台船(土運船)13で運ばれて処分される。
【符号の説明】
【0024】
1 分別船、 1a アンカー、
2 堆積土砂、 2a 土砂
3 混在物、
4 回収網、 4a 昇降装置、
4b 雑物、
5 筒体、 5a 分別用水槽、
7 分別装置、
8a バケット(クラムシェル)、
8b クレーン、
9 水流発生装置、 9a 噴射水ポンプ、
10 混在物回収装置、 10a 抵抗板可変装置、
11 汚濁拡散防止膜、
12 台船、
13 台船、
14 回収用モッコ、
15 組立式台船、 15a 独立した台船、
16 水底。
図1
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図2
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図3
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図4
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図5
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図6
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