特許第5706275号(P5706275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許5706275ダイオード、半導体装置およびMOSFET
<>
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000002
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000003
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000004
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000005
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000006
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000007
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000008
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000009
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000010
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000011
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000012
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000013
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000014
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000015
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000016
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000017
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000018
  • 特許5706275-ダイオード、半導体装置およびMOSFET 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706275
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】ダイオード、半導体装置およびMOSFET
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20150402BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20150402BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20150402BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20150402BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20150402BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20150402BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20150402BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20150402BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   H01L29/91 D
   H01L29/78 657D
   H01L29/78 653C
   H01L29/78 655D
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 652G
   H01L29/06 301D
   H01L29/91 K
   H01L29/91 H
   H01L29/91 F
   H01L29/78 652C
   H01L27/08 102E
   H01L27/06 102A
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2011-189264(P2011-189264)
(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公開番号】特開2013-51346(P2013-51346A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2013年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 悟
(72)【発明者】
【氏名】山下 侑佑
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆英
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 順
【審査官】 大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−118642(JP,A)
【文献】 特開2000−101101(JP,A)
【文献】 特開2011−222681(JP,A)
【文献】 特開2009−141202(JP,A)
【文献】 特開平02−066977(JP,A)
【文献】 特開平06−037335(JP,A)
【文献】 特開2008−278552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/861
H01L 21/8234
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 29/06
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード電極と、第1導電型の半導体からなるカソード領域と、低濃度の第1導電型の半導体からなるドリフト領域と、第2導電型の半導体からなるアノード領域と、アノード電極を備えるダイオードであって、
前記ドリフト領域と前記アノード領域の間に形成された、前記ドリフト領域よりも濃度が高い第1導電型の半導体からなるバリア領域と、
前記バリア領域とオーミック接合した中継電極と、
前記ダイオードが形成されている半導体基板の外部に設けられた整流素子を備えており、
前記整流素子のアノードが配線を介して前記アノード電極に接続しており、前記整流素子のカソードが配線を介して前記中継電極に接続しており、
前記整流素子の順方向電圧降下が、前記アノード領域と前記バリア領域の間のpn接合のビルトイン電圧よりも小さいことを特徴とするダイオード。
【請求項2】
前記バリア領域と前記ドリフト領域の間に形成された、第2導電型の半導体からなる電界進展防止領域をさらに備えていることを特徴とする請求項1のダイオード。
【請求項3】
前記アノード領域から前記ドリフト領域まで達するトレンチが形成されており、
前記トレンチの内部に絶縁膜で被覆されたトレンチ電極が形成されていることを特徴とする請求項1または2のダイオード。
【請求項4】
前記カソード領域に部分的に形成された、第2導電型の半導体からなるカソードショート領域をさらに備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項のダイオード。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項のダイオードとIGBTが一体化された半導体装置であって、
前記IGBTが、コレクタ電極と、第2導電型の半導体からなるコレクタ領域と、前記ドリフト領域から連続しており、低濃度の第1導電型の半導体からなる第2ドリフト領域と、第2導電型の半導体からなるボディ領域と、第1導電型の半導体からなるエミッタ領域と、エミッタ電極と、前記エミッタ領域と前記第2ドリフト領域の間の前記ボディ領域に対して絶縁膜を挟んで対向するゲート電極を備えており、
前記IGBTが、前記第2ドリフト領域と前記ボディ領域の間に形成された、前記第2ドリフト領域よりも濃度が高い第1導電型の半導体からなる第2バリア領域と、
前記第2バリア領域とオーミック接合した第2中継電極と、
前記IGBTが形成されている半導体基板の外部に設けられた第2整流素子を備えており、
前記第2整流素子のアノードが配線を介して前記エミッタ電極に接続しており、前記第2整流素子のカソードが配線を介して前記第2中継電極に接続しており、
前記第2整流素子の順方向電圧降下が、前記ボディ領域と前記第2バリア領域の間のpn接合のビルトイン電圧より小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記第2バリア領域と前記第2ドリフト領域の間に形成された、第2導電型の半導体からなる第2電界進展防止領域をさらに備えることを特徴とする請求項5の半導体装置。
【請求項7】
ドレイン電極と、第1導電型の半導体からなるドレイン領域と、低濃度の第1導電型の半導体からなるドリフト領域と、第2導電型の半導体からなるボディ領域と、第1導電型の半導体からなるソース領域と、ソース電極と、前記ソース領域と前記ドリフト領域の間の前記ボディ領域に対して絶縁膜を挟んで対向するゲート電極を備えるMOSFETであって、
前記ドリフト領域と前記ボディ領域の間に形成された、前記ドリフト領域よりも濃度が高い第1導電型の半導体からなるバリア領域と、
前記バリア領域とオーミック接合した中継電極と、
前記MOSFETが形成されている半導体基板の外部に設けられた整流素子を備えており、
前記整流素子のアノードが配線を介して前記ソース電極に接続しており、前記整流素子のカソードが配線を介して前記中継電極に接続しており、
前記整流素子の順方向電圧降下が、前記ボディ領域と前記バリア領域の間のpn接合のビルトイン電圧よりも小さいことを特徴とするMOSFET。
【請求項8】
前記バリア領域と前記ドリフト領域の間に形成された、第2導電型の半導体からなる電界進展防止領域をさらに備えていることを特徴とする請求項7のMOSFET。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオード、半導体装置およびMOSFETに関する。
【背景技術】
【0002】
PNダイオードの逆回復特性を向上し、スイッチング損失を低減する技術が従来から開発されている。特許文献1には、PINダイオードとショットキーダイオードを組み合わせたMPSダイオードが開示されている。特許文献1の技術では、pアノード領域のサイズをリーチスルー限界まで小さくすることで、pアノード領域からnドリフト領域への正孔注入を抑制し、スイッチング損失の低減を図っている。特許文献2には、pアノード領域とnドリフト領域の間にnドリフト領域よりも高濃度のn型不純物を有するnバリア領域を設けたPINダイオードが開示されている。特許文献2の技術では、nバリア領域によってpアノード領域からnドリフト領域への正孔注入を抑制し、スイッチング損失の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−163357号公報
【特許文献2】特開2000−323488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アノード電極とnドリフト領域(またはnバリア領域)をショットキー接合する場合、ショットキー接合の界面の温度に応じて、ダイオードの動作特性が変化する。ダイオードが形成されている半導体基板の上部にショットキー接合界面を形成した場合、半導体基板が発熱して高温となると、ショットキー接合界面も高温となって、ダイオードの動作特性が大きく変化してしまう。発熱による半導体基板の温度上昇の影響を受けにくい構造で、ダイオードにおけるスイッチング損失の低減を実現することが可能な技術が期待されている。
【0005】
本明細書では上記の課題を解決する技術を提供する。本明細書では、発熱による半導体基板の温度上昇の影響を受けにくい構造で、ダイオードにおけるスイッチング損失の低減を実現することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示するダイオードは、カソード電極と、第1導電型の半導体からなるカソード領域と、低濃度の第1導電型の半導体からなるドリフト領域と、第2導電型の半導体からなるアノード領域と、アノード電極を備えている。そのダイオードは、前記ドリフト領域と前記アノード領域の間に形成された、前記ドリフト領域よりも濃度が高い第1導電型の半導体からなるバリア領域を備えている。そのダイオードでは、前記バリア領域が、外部の整流素子を介して、前記アノード電極と電気的に接続している。そのダイオードでは、前記整流素子の順方向電圧降下が、前記アノード領域と前記バリア領域の間のpn接合のビルトイン電圧よりも小さい。
【0007】
上記のダイオードでは、アノード電極とカソード電極の間に順バイアスが印加されると、整流素子を介して順電流が流れる。これにより、バリア領域とアノード電極の電位差が整流素子での電圧降下とほぼ等しくなる。整流素子での電圧降下は、アノード領域とバリア領域の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、アノード領域からドリフト領域への正孔の注入が抑制される。
【0008】
次いで、アノード電極とカソード電極の間の電圧が順バイアスから逆バイアスに切り替わると、整流素子によって逆電流が制限されるとともに、アノード領域とバリア領域の間のpn接合によって逆電流が制限される。上記のダイオードでは、順バイアスの印加時においてアノード領域からドリフト領域への正孔の注入が抑制されているから、逆回復電流が小さく、逆回復時間が短い。上記のダイオードによれば、ドリフト領域のライフタイム制御を行うことなく、スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0009】
また、上記のダイオードでは、アノード電極とカソード電極の間に逆バイアスが印加されると、整流素子だけでなく、アノード領域とバリア領域の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。これにより、整流素子にかかる電界が軽減される。上記のダイオードによれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することが出来る。
【0010】
さらに、上記のダイオードでは、アノード電極とバリア領域の間の電気的な接続に関して、外部の整流素子によって、整流作用を実現している。一般に、ショットキー接合界面によって整流作用を実現する場合、その動作特性はショットキー接合界面の温度に大きな影響を受ける。ダイオードが形成されている半導体基板の上部にショットキー接合界面を形成した場合、半導体基板が発熱して高温となると、ショットキー接合界面も高温となって、動作特性が変化してしまう。これに対して、上記のダイオードでは、整流素子が外部に設けられているので、ダイオードが形成されている半導体基板が発熱して高温となる場合でも、動作特性が変化することがない。上記のダイオードによれば、発熱による半導体基板の温度上昇の影響を受けにくい構造で、スイッチング損失を低減することができる。
【0011】
なお、上記した外部の整流素子は、上記のダイオードが形成されている半導体基板の上方でなければ、どのような場所に配置されていてもよい。例えば、外部の整流素子は、上記のダイオードが形成されている半導体基板とは別の半導体基板に形成されていて、配線を介してアノード電極とバリア領域に接続していてもよい。
【0012】
なお、上記のダイオードにおけるバリア領域は、不純物濃度が均一である単一の半導体領域から構成されていてもよいし、不純物濃度が異なる複数の半導体領域から構成されていてもよい。
【0013】
上記のダイオードは、前記バリア領域と前記ドリフト領域の間に形成された、第2導電型の半導体からなる電界進展防止領域をさらに備えていることが好ましい。
【0014】
上記のダイオードでは、アノード電極とカソード電極の間に逆バイアスが印加されると、ドリフト領域と電界進展防止領域の間のpn接合によって逆電流が制限される。上記のダイオードによれば、逆バイアスの印加時のリーク電流を低減することができる。
【0015】
また、上記のダイオードでは、アノード電極とカソード電極の間に逆バイアスが印加されると、整流素子だけでなく、アノード領域とバリア領域の間のpn接合の界面から伸びる空乏層と、ドリフト領域と電界進展防止領域の間のpn接合の界面でも電界が分担される。これにより、整流素子にかかる電界と、アノード領域とバリア領域の間のpn接合にかかる電界が軽減される。上記のダイオードによれば、逆バイアスに対する耐圧をさらに向上することが出来る。
【0016】
上記のダイオードは、前記アノード領域から前記ドリフト領域まで達するトレンチが形成されており、前記トレンチの内部に絶縁膜で被覆されたトレンチ電極が形成されていることが好ましい。
【0017】
上記のダイオードでは、アノード電極とカソード電極の間に逆バイアスが印加される際に、ドリフト領域の内部におけるトレンチ電極の先端近傍の箇所に電界集中が生じ、これによって、整流素子にかかる電界と、アノード領域とバリア領域の間のpn接合の界面にかかる電界が軽減される。上記のダイオードによれば、逆バイアスに対する耐圧をさらに向上することが出来る。
【0018】
上記のダイオードは、前記カソード領域に部分的に形成された、第2導電型の半導体からなるカソードショート領域をさらに備えていることが好ましい。
【0019】
上記のダイオードでは、アノード電極とカソード電極の間に順バイアスが印加される際に、カソードショート領域が存在することにより、カソード領域からドリフト領域への電子の注入が抑制される。これにより、順バイアスから逆バイアスへ切り替わる際の逆回復電流をさらに小さくし、逆回復時間をさらに短くすることができる。上記のダイオードによれば、スイッチング損失をさらに低減することが出来る。
【0020】
本明細書はさらに、上記のダイオードとIGBTが一体化された半導体装置を開示する。その半導体装置では、前記IGBTが、コレクタ電極と、第2導電型の半導体からなるコレクタ領域と、前記ドリフト領域から連続しており、低濃度の第1導電型の半導体からなる第2ドリフト領域と、第2導電型の半導体からなるボディ領域と、第1導電型の半導体からなるエミッタ領域と、エミッタ電極と、前記エミッタ領域と前記第2ドリフト領域の間の前記ボディ領域に対して絶縁膜を挟んで対向するゲート電極を備えている。その半導体装置では、前記IGBTが、前記第2ドリフト領域と前記ボディ領域の間に形成された、前記第2ドリフト領域よりも濃度が高い第1導電型の半導体からなる第2バリア領域を備えている。その半導体装置では、前記第2バリア領域が、外部の第2整流素子を介して、前記エミッタ電極と電気的に接続している。その半導体装置では、前記第2整流素子の順方向電圧降下が、前記ボディ領域と前記第2バリア領域の間のpn接合のビルトイン電圧より小さい。
【0021】
上記の半導体装置では、ダイオードとIGBTの寄生ダイオードの双方について、発熱による半導体基板の温度上昇の影響を受けにくい構造で、スイッチング損失を低減し、かつ逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0022】
なお、上記した外部の第2整流素子は、上記のIGBTが形成されている半導体基板の上方でなければ、どのような場所に配置されていてもよい。例えば、外部の整流素子は、上記のIGBTが形成されている半導体基板とは別の半導体基板に形成されていて、配線を介してエミッタ電極と第2バリア領域に接続していてもよい。
【0023】
なお、上記の半導体装置のIGBTにおける第2バリア領域は、不純物濃度が均一である単一の半導体領域から構成されていてもよいし、不純物濃度が異なる複数の半導体領域から構成されていてもよい。
【0024】
上記の半導体装置は、前記第2バリア領域と前記第2ドリフト領域の間に形成された、第2導電型の半導体からなる第2電界進展防止領域をさらに備えることが好ましい。
【0025】
上記の半導体装置では、IGBTの寄生ダイオードについて、逆バイアスに対する耐圧をさらに向上し、かつ逆バイアス時のリーク電流を低減することができる。また、IGBTの駆動時に、コレクタ電極からエミッタ電極へ流れる電流が電界進展防止領域とドリフト領域の間のpn接合によって抑制されるため、IGBTの飽和電流を低減することができる。
【0026】
本明細書はさらに、MOSFETを開示する。そのMOSFETは、ドレイン電極と、第1導電型の半導体からなるドレイン領域と、低濃度の第1導電型の半導体からなるドリフト領域と、第2導電型の半導体からなるボディ領域と、第1導電型の半導体からなるソース領域と、ソース電極と、前記ソース領域と前記ドリフト領域の間の前記ボディ領域に対して絶縁膜を挟んで対向するゲート電極を備えている。そのMOSFETは、前記ドリフト領域と前記ボディ領域の間に形成された、前記ドリフト領域よりも濃度が高い第1導電型の半導体からなるバリア領域を備えている。そのMOSFETでは、前記バリア領域が、外部の整流素子を介して、前記ソース電極と電気的に接続している。そのMOSFETでは、前記整流素子の順方向電圧降下が、前記ボディ領域と前記バリア領域の間のpn接合のビルトイン電圧よりも小さい。
【0027】
上記のMOSFETによれば、発熱による半導体基板の温度上昇の影響を受けにくい構造で、寄生ダイオードのスイッチング損失を低減し、かつ逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0028】
なお、上記した外部の整流素子は、上記のMOSFETが形成されている半導体基板の上方でなければ、どのような場所に配置されていてもよい。例えば、外部の整流素子は、上記のMOSFETが形成されている半導体基板とは別の半導体基板に形成されていて、配線を介してソース電極とバリア領域に接続していてもよい。
【0029】
なお、上記のMOSFETにおけるバリア領域は、不純物濃度が均一である単一の半導体領域から構成されていてもよいし、不純物濃度が異なる複数の半導体領域から構成されていてもよい。
【0030】
上記のMOSFETは、前記バリア領域と前記ドリフト領域の間に形成された、第2導電型の半導体からなる電界進展防止領域をさらに備えていることが好ましい。
【0031】
上記のMOSFETでは、逆バイアスに対する耐圧をさらに向上し、かつ逆バイアス時のリーク電流を低減することができる。
【発明の効果】
【0032】
本明細書が開示する技術によれば、発熱による半導体基板の温度上昇の影響を受けにくい構造で、ダイオードにおけるスイッチング損失の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施例1のダイオード2の構成を模式的に示す図である。
図2】実施例2のダイオード32の構成を模式的に示す図である。
図3】実施例3のダイオード42の構成を模式的に示す図である。
図4】実施例4のダイオード52の構成を模式的に示す図である。
図5】実施例5のダイオード62の構成を模式的に示す図である。
図6】実施例1のダイオード2の変形例の構成を模式的に示す図である。
図7】実施例2のダイオード32の変形例の構成を模式的に示す図である。
図8】実施例3のダイオード42の変形例の構成を模式的に示す図である。
図9】実施例6の半導体装置72の構成を模式的に示す図である。
図10】実施例7の半導体装置82の構成を模式的に示す図である。
図11】実施例8の半導体装置102の構成を模式的に示す図である。
図12】実施例9の半導体装置162の構成を模式的に示す図である。
図13】実施例10の半導体装置172の構成を模式的に示す図である。
図14】実施例11の半導体装置182の構成を模式的に示す図である。
図15】実施例12の半導体装置202の構成を模式的に示す図である。
図16】実施例13の半導体装置232の構成を模式的に示す図である。
図17】実施例14の半導体装置242の構成を模式的に示す図である。
図18】実施例15の半導体装置252の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(実施例1)
図1に示すように、本実施例のダイオード2は、シリコンの半導体基板4を用いて形成されている。半導体基板4には、高濃度n型半導体領域であるnカソード領域6と、n型半導体領域であるnバッファ領域8と、低濃度n型半導体領域であるnドリフト領域10と、n型半導体領域であるnバリア領域12と、p型半導体領域であるpアノード領域14が順に積層されている。本実施例では、n型半導体領域には不純物として例えばリンが添加されており、p型半導体領域には不純物として例えばボロンが添加されている。本実施例では、nカソード領域6の不純物濃度は1×1017〜5×1020[cm-3]程度であり、nバッファ領域8の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度であり、nドリフト領域10の不純物濃度は1×1012〜1×1015[cm-3]程度であり、nバリア領域12の不純物濃度は1×1015〜1×1018[cm-3]程度であり、pアノード領域14の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度である。また、nバリア領域12の厚みは0.5〜3.0[μm]程度である。
【0035】
半導体基板4の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域16が、所定の間隔を隔てて複数形成されている。nピラー領域16の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度である。nピラー領域16は、pアノード領域14を貫通して、nバリア領域12の上側表面まで達するように形成されている。また、pアノード領域14の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるpコンタクト領域18が所定の間隔を隔てて複数形成されている。pコンタクト領域18の不純物濃度は1×1017〜1×1020[cm-3]程度である。
【0036】
半導体基板4の下側表面には、金属製のカソード電極20が形成されている。カソード電極20は、nカソード領域6とオーミック接合によって接合している。カソード電極20は、カソード端子21に接続している。
【0037】
半導体基板4の上側表面には、金属製のアノード電極22が形成されている。アノード電極22は、pアノード領域14およびpコンタクト領域18とオーミック接合によって接合している。アノード電極22は、アノード端子23に接続している。
【0038】
半導体基板4の上側表面において、アノード電極22が形成されていない箇所には、絶縁膜11が形成されている。絶縁膜11の上側表面には、絶縁膜11を貫通してnピラー領域16の上側表面に達する中継電極13が形成されている。中継電極13はnピラー領域16とオーミック接合によって接合している。中継電極13は、半導体基板4の外部に設けられた整流素子15を介して、アノード端子23に接続している。
【0039】
整流素子15は、アノード15aからカソード15bへの順方向電流を許容し、カソード15bからアノード15aへの逆方向電流を制限する。整流素子15のアノード15aは配線17aを介してアノード端子23に接続している。整流素子15のカソード15bは配線17bを介して中継電極13に接続している。本実施例では、整流素子15はショットキーバリアダイオードである。なお、整流素子15としては、順方向電圧降下が、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合のビルトイン電圧より低いものであれば、ショットキーバリアダイオード以外のものを使用してもよい。例えば、整流素子15としては、ゲルマニウムのpnダイオードを用いてもよいし、ヘテロ接合ダイオードを用いてもよい。
【0040】
ダイオード2の動作について説明する。アノード端子23とカソード端子21の間に順バイアスが印加されると、アノード端子23から整流素子15を介してnピラー領域16に順電流が流れる。nピラー領域16とnバリア領域12はほぼ同電位であるため、nバリア領域12とアノード電極22の電位差は整流素子15での電圧降下とほぼ等しくなる。整流素子15での電圧降下は、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、pコンタクト領域18やpアノード領域14からnドリフト領域10への正孔の注入が抑制される。アノード端子23とカソード端子21の間には、配線17a、整流素子15、配線17b、中継電極13、nピラー領域16、nバリア領域12、nドリフト領域10、nバッファ領域8、nカソード領域6を経由する順電流が流れる。
【0041】
次いで、アノード端子23とカソード端子21の間の電圧が順バイアスから逆バイアスに切り替わると、整流素子15によってnピラー領域16を通る逆電流が制限され、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合によってpアノード領域14を通る逆電流が制限される。上述したように、本実施例のダイオード2では、順バイアスの印加時においてpコンタクト領域18およびpアノード領域14からnドリフト領域10への正孔の注入が抑制されているから、逆回復電流が小さく、逆回復時間が短い。本実施例のダイオード2によれば、nドリフト領域10のライフタイム制御を行うことなく、スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0042】
また、本実施例のダイオード2では、アノード端子23とカソード端子21の間に逆バイアスが印加されると、整流素子15だけでなく、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。これにより、整流素子15にかかる電界が軽減される。本実施例のダイオード2によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することが出来る。
【0043】
本実施例のダイオード2では、nピラー領域16における不純物濃度が、nバリア領域12における不純物濃度よりも高い。このような構成とすることによって、pアノード領域14の厚みを小さくすることなく、順バイアスの印加時におけるnバリア領域12とアノード電極22の間の電位差を小さくすることが出来る。本実施例のダイオード2によれば、逆バイアスに対する耐圧を低下させることなく、スイッチング損失を低減することが出来る。
【0044】
本実施例のダイオード2では、アノード電極22とnバリア領域12の間の電気的な接続に関し、半導体基板4上に形成されたショットキー接合界面ではなく、半導体基板4の外部に設けられた整流素子15によって、整流作用を実現している。一般に、ショットキー接合界面によって整流作用を実現する場合、その動作特性はショットキー接合界面の温度に大きな影響を受ける。半導体基板4の上部にショットキー接合界面を形成した場合、半導体基板4が発熱して高温となると、ショットキー接合界面も高温となって、動作特性が変化してしまう。これに対して、本実施例のダイオード2では、整流素子15が外部に設けられているので、半導体基板4が発熱して高温となる場合でも、動作特性が変化することがない。本実施例のダイオード2によれば、発熱による半導体基板4の温度上昇の影響を受けにくい構造で、スイッチング損失を低減することができる。
【0045】
(実施例2)
図2に示すように、本実施例のダイオード32は、シリコンの半導体基板34を用いて形成されている。半導体基板34には、高濃度n型半導体領域であるnカソード領域6と、n型半導体領域であるnバッファ領域8と、低濃度n型半導体領域であるnドリフト領域10と、p型半導体領域であるp電界進展防止領域36と、n型半導体領域であるnバリア領域12と、p型半導体領域であるpアノード領域14が順に積層されている。本実施例では、p電界進展防止領域36の不純物濃度は1×1015〜1×1019[cm-3]程度である。また、p電界進展防止領域36の厚みは1.0〜2.0[μm]程度である。
【0046】
半導体基板34の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域16が、所定の間隔を隔てて複数形成されている。nピラー領域16は、pアノード領域14を貫通して、nバリア領域12の上側表面まで達するように形成されている。また、pアノード領域14の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるpコンタクト領域18が所定の間隔を隔てて複数形成されている。
【0047】
半導体基板34の下側表面には、金属製のカソード電極20が形成されている。カソード電極20は、nカソード領域6とオーミック接合によって接合している。カソード電極20は、カソード端子21に接続している。
【0048】
半導体基板34の上側表面には、金属製のアノード電極22が形成されている。アノード電極22は、pアノード領域14およびpコンタクト領域18とオーミック接合によって接合している。アノード電極22は、アノード端子23に接続している。
【0049】
半導体基板34の上側表面において、アノード電極22が形成されていない箇所には、絶縁膜11が形成されている。絶縁膜11の上側表面には、絶縁膜11を貫通してnピラー領域16の上側表面に達する中継電極13が形成されている。中継電極13はnピラー領域16とオーミック接合によって接合している。中継電極13は、半導体基板34の外部に設けられた整流素子15を介して、アノード端子23に接続している。整流素子15のアノード15aは配線17aを介してアノード端子23に接続している。整流素子15のカソード15bは配線17bを介して中継電極13に接続している。
【0050】
ダイオード32の動作について説明する。アノード端子23とカソード端子21の間に順バイアスが印加されると、アノード端子23から整流素子15を介してnピラー領域16に順電流が流れる。nピラー領域16とnバリア領域12はほぼ同電位であるため、nバリア領域12とアノード電極22の電位差は整流素子15での電圧降下とほぼ等しくなる。整流素子15での電圧降下は、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、pコンタクト領域18やpアノード領域14からnドリフト領域10への正孔の注入が抑制される。アノード端子23とカソード端子21の間には、配線17a、整流素子15、配線17b、中継電極13、nピラー領域16、nバリア領域12、p電界進展防止領域36、nドリフト領域10、nバッファ領域8、nカソード領域6を経由する順電流が流れる。なお、nバリア領域12とp電界進展防止領域36の間にはpn接合が存在するが、p電界進展防止領域36のp型不純物濃度は低く、p電界進展防止領域36の厚みは薄いため、アノード端子23とカソード端子21の間の順電流に及ぼす影響は少ない。
【0051】
次いで、アノード端子23とカソード端子21の間の電圧が順バイアスから逆バイアスに切り替わると、整流素子15によってnピラー領域16を通る逆電流が制限され、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合によってpアノード領域14を通る逆電流が制限される。また、nドリフト領域10とp電界進展防止領域36の間のpn接合によっても逆電流が制限される。上述したように、本実施例のダイオード32では、順バイアスの印加時においてpコンタクト領域18およびpアノード領域14からnドリフト領域10への正孔の注入が抑制されているから、逆回復電流が小さく、逆回復時間が短い。本実施例のダイオード32によれば、nドリフト領域10のライフタイム制御を行うことなく、スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0052】
また、本実施例のダイオード32では、アノード端子23とカソード端子21の間に逆バイアスが印加されると、整流素子15だけでなく、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面から伸びる空乏層と、nドリフト領域10とp電界進展防止領域36の間のpn接合の界面でも電界が分担される。これにより、整流素子15にかかる電界と、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合にかかる電界が軽減される。本実施例のダイオード32によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することが出来る。
【0053】
(実施例3)
図3に示すように、本実施例のダイオード42は、実施例1のダイオード2と同様に、シリコンの半導体基板4を用いて形成されている。半導体基板4には、高濃度n型半導体領域であるnカソード領域6と、n型半導体領域であるnバッファ領域8と、低濃度n型半導体領域であるnドリフト領域10と、n型半導体領域であるnバリア領域12と、p型半導体領域であるpアノード領域14が順に積層されている。半導体基板4の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域16が、所定の間隔を隔てて複数形成されている。nピラー領域16は、pアノード領域14を貫通して、nバリア領域12の上側表面まで達するように形成されている。また、半導体基板4の上側には、複数のトレンチ44が所定の間隔で形成されている。それぞれのトレンチ44は、pアノード領域14の上側表面からnバリア領域12を貫通してnドリフト領域10の内部まで達している。トレンチ44の内部には、絶縁膜46によって被覆されたトレンチ電極48が充填されている。また、pアノード領域14の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるpコンタクト領域18が所定の間隔を隔てて複数形成されている。
【0054】
半導体基板4の下側表面には、金属製のカソード電極20が形成されている。カソード電極20は、nカソード領域6とオーミック接合によって接合している。カソード電極20は、カソード端子21に接続している。
【0055】
半導体基板4の上側表面には、金属製のアノード電極22が形成されている。アノード電極22は、pアノード領域14およびpコンタクト領域18とオーミック接合によって接合している。アノード電極22は、アノード端子23に接続している。
【0056】
半導体基板4の上側表面において、アノード電極22が形成されていない箇所には、絶縁膜11が形成されている。絶縁膜11の上側表面には、絶縁膜11を貫通してnピラー領域16の上側表面に達する中継電極13が形成されている。中継電極13はnピラー領域16とオーミック接合によって接合している。中継電極13は、半導体基板4の外部に設けられた整流素子15を介して、アノード端子23に接続している。整流素子15のアノード15aは配線17aを介してアノード端子23に接続している。整流素子15のカソード15bは配線17bを介して中継電極13に接続している。
【0057】
本実施例のダイオード42の動作は、実施例1のダイオード2の動作とほぼ同じである。本実施例のダイオード42では、アノード端子23とカソード端子21の間に逆バイアスが印加される際に、トレンチ電極48に印加される電圧を調整することで、耐圧を向上することができる。例えば、逆バイアスの印加時にトレンチ電極48とアノード電極22がほぼ同電位となるようにトレンチ電極48に印加される電圧を調整すると、nドリフト領域10の内部におけるトレンチ電極48の先端近傍の箇所に電界集中が生じ、これによって、整流素子15や、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面にかかる電界が軽減される。なお、トレンチ電極48の電位は必ずしもアノード電極22と同電位にする必要はない。逆バイアスの印加時に、トレンチ電極48の電位を、カソード電極20の電位より低くなるようにすることで、整流素子15や、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面にかかる電界を軽減することができる。本実施例のダイオード42によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0058】
(実施例4)
図4に示すように、本実施例のダイオード52は、実施例2のダイオード32と同様に、シリコンの半導体基板34を用いて形成されている。半導体基板34には、高濃度n型半導体領域であるnカソード領域6と、n型半導体領域であるnバッファ領域8と、低濃度n型半導体領域であるnドリフト領域10と、p型半導体領域であるp電界進展防止領域36と、n型半導体領域であるnバリア領域12と、p型半導体領域であるpアノード領域14が順に積層されている。半導体基板34の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域16が、所定の間隔を隔てて複数形成されている。nピラー領域16は、pアノード領域14を貫通して、nバリア領域12の上側表面まで達するように形成されている。また、半導体基板34の上側には、複数のトレンチ44が所定の間隔で形成されている。それぞれのトレンチ44は、pアノード領域14の上側表面からnバリア領域12とp電界進展防止領域36を貫通してnドリフト領域10の内部まで達している。トレンチ44の内部には、絶縁膜46によって被覆されたトレンチ電極48が充填されている。また、pアノード領域14の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるpコンタクト領域18が所定の間隔を隔てて複数形成されている。
【0059】
半導体基板34の下側表面には、金属製のカソード電極20が形成されている。カソード電極20は、nカソード領域6とオーミック接合によって接合している。カソード電極20は、カソード端子21に接続している。
【0060】
半導体基板34の上側表面には、金属製のアノード電極22が形成されている。アノード電極22は、pアノード領域14およびpコンタクト領域18とオーミック接合によって接合している。アノード電極22は、アノード端子23に接続している。
【0061】
半導体基板34の上側表面において、アノード電極22が形成されていない箇所には、絶縁膜11が形成されている。絶縁膜11の上側表面には、絶縁膜11を貫通してnピラー領域16の上側表面に達する中継電極13が形成されている。中継電極13はnピラー領域16とオーミック接合によって接合している。中継電極13は、半導体基板34の外部に設けられた整流素子15を介して、アノード端子23に接続している。整流素子15のアノード15aは配線17aを介してアノード端子23に接続している。整流素子15のカソード15bは配線17bを介して中継電極13に接続している。
【0062】
本実施例のダイオード52の動作は、実施例2のダイオード32の動作とほぼ同じである。本実施例のダイオード52では、実施例3のダイオード42と同様に、アノード端子23とカソード端子21の間に逆バイアスが印加される際に、トレンチ電極48に印加される電圧を調整することで、耐圧を向上することができる。例えば、逆バイアスの印加時にトレンチ電極48とアノード電極22がほぼ同電位となるようにトレンチ電極48に印加される電圧を調整すると、nドリフト領域10の内部におけるトレンチ電極48の先端近傍の箇所に電界集中が生じ、これによって、整流素子15や、pアノード領域14とnバリア領域12の間のpn接合の界面や、nドリフト領域10とp電界進展防止領域36の間のpn接合の界面にかかる電界が軽減される。本実施例のダイオード52によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0063】
(実施例5)
図5に示すように、本実施例のダイオード62は、実施例4のダイオード52とほぼ同様の構成を備えている。本実施例のダイオード62では、nカソード領域6に、高濃度p型半導体領域であるpカソードショート領域64が、所定の間隔を隔てて複数形成されている点で、実施例4のダイオード52と異なる。本実施例では、pカソードショート領域64の不純物濃度は1×1017〜5×1020[cm-3]程度である。
【0064】
本実施例のダイオード62の動作は、実施例4のダイオード52とほぼ同じである。本実施例のダイオード62では、アノード端子23とカソード端子21の間に順バイアスが印加される際に、pカソードショート領域64が形成されていることで、nカソード領域6からnドリフト領域10への電子の注入が抑制される。本実施例のダイオード62によれば、順バイアスの印加時において、pコンタクト領域18およびpアノード領域14からnドリフト領域10への正孔の注入が抑制されているだけでなく、nカソード領域6からnドリフト領域10への電子の注入も抑制されているので、逆回復電流をさらに小さくし、逆回復時間をさらに短くすることができる。本実施例のダイオード62によれば、さらにスイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0065】
なお、上記のようにpカソードショート領域64を設けることによる逆回復特性の改善は、他の形態のダイオードにおいても効果的である。すなわち、図6に示すダイオード66のように、実施例1のダイオード2において、nカソード領域6にpカソードショート領域64を設けた構成とすることもできるし、図7に示すダイオード68のように、実施例2のダイオード32において、nカソード領域6にpカソードショート領域64を設けた構成とすることもできるし、図8に示すダイオード70のように、実施例3のダイオード42において、nカソード領域6にpカソードショート領域64を設けた構成とすることもできる。
【0066】
(実施例6)
図9に示すように、本実施例の半導体装置72は、実施例3のダイオード42とほぼ同様の構成を備えている。半導体装置72では、pアノード領域14の上側表面において、トレンチ44に隣接する箇所に、高濃度n型半導体領域であるnエミッタ領域74が形成されている。本実施例では、nエミッタ領域74の不純物濃度は1×1018〜1×1020[cm-3]程度である。nエミッタ領域74は、アノード電極22とオーミック接合によって接合している。
【0067】
本実施例の半導体装置72は、ドレイン電極に相当するカソード電極20と、ドレイン領域に相当するnカソード領域6と、nバッファ領域8と、nドリフト領域10と、ボディ領域に相当するpアノード領域14と、ソース領域に相当するnエミッタ領域74と、ソース電極に相当するアノード電極22と、nエミッタ領域74とnドリフト領域10の間のpアノード領域14に対して絶縁膜46を挟んで対向する、ゲート電極に相当するトレンチ電極48を備える縦型のMOSFETの構造を有している。
【0068】
実施例3のダイオード42と同様に、本実施例の半導体装置72によれば、寄生ダイオードの逆回復特性を改善して、スイッチング損失を低減することができる。また、実施例3のダイオード42と同様に、本実施例の半導体装置72によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0069】
(実施例7)
図10に示すように、本実施例の半導体装置82は、実施例4のダイオード52とほぼ同様の構成を備えている。半導体装置82では、pアノード領域14の上側表面において、トレンチ44に隣接する箇所に、nエミッタ領域74が形成されている。nエミッタ領域74は、アノード電極22とオーミック接合によって接合している。
【0070】
本実施例の半導体装置82は、ドレイン電極に相当するカソード電極20と、ドレイン領域に相当するnカソード領域6と、nバッファ領域8と、nドリフト領域10と、ボディ領域に相当するpアノード領域14と、ソース領域に相当するnエミッタ領域74と、ソース電極に相当するアノード電極22と、nエミッタ領域74とnドリフト領域10の間のpアノード領域14に対して絶縁膜46を挟んで対向する、ゲート電極に相当するトレンチ電極48を備える縦型のMOSFETの構造を有している。
【0071】
実施例4のダイオード52と同様に、本実施例の半導体装置82によれば、寄生ダイオードの逆回復特性を改善して、スイッチング損失を低減することができる。また、実施例4のダイオード52と同様に、本実施例の半導体装置82によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上し、逆バイアス時のリーク電流を抑制することができる。
【0072】
(実施例8)
図11に示すように、本実施例の半導体装置102は、シリコンの半導体基板104を用いて形成されている。半導体装置102は、IGBT領域106と、ダイオード領域108を備えている。IGBT領域106において、半導体基板104は、高濃度p型半導体領域であるpコレクタ領域110と、n型半導体領域であるnバッファ領域112と、低濃度n型半導体領域であるnドリフト領域114と、n型半導体領域であるnバリア領域116と、p型半導体領域であるpボディ領域118が順に積層されている。本実施例では、pコレクタ領域110の不純物濃度は1×1017〜5×1020[cm-3]程度であり、nバッファ領域112の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度であり、nドリフト領域114の不純物濃度は1×1012〜1×1015[cm-3]程度であり、nバリア領域116の不純物濃度は1×1015〜1×1018[cm-3]程度であり、pボディ領域118の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度である。また、nバリア領域116の厚みは0.5〜3.0[μm]程度である。ダイオード領域108において、半導体基板104は、高濃度n型半導体領域であるnカソード領域120と、nバッファ領域112と、nドリフト領域114と、nバリア領域122と、p型半導体領域であるpアノード領域124が順に積層されている。本実施例では、nカソード領域120の不純物濃度は1×1017〜5×1020[cm-3]程度であり、nバリア領域122の不純物濃度は1×1015〜1×1018[cm-3]程度であり、pアノード領域124の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度である。また、nバリア領域122の厚みは0.5〜3.0[μm]程度である。半導体基板4の上側には、複数のトレンチ126が所定の間隔で形成されている。
【0073】
IGBT領域106において、トレンチ126は、pボディ領域118の上側表面からnバリア領域116を貫通して、nドリフト領域114の内部まで達している。トレンチ126の内部には、絶縁膜128で被覆されたゲート電極130が充填されている。pボディ領域118の上側表面において、トレンチ126に隣接する箇所には、高濃度n型半導体領域であるnエミッタ領域132が形成されている。nエミッタ領域132の不純物濃度は1×1018〜1×1020[cm-3]程度である。また、pボディ領域118の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域134が形成されている。nピラー領域134の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度である。nピラー領域134は、pボディ領域118を貫通して、nバリア領域116の上側表面まで達するように形成されている。さらに、pボディ領域118の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるpコンタクト領域136が形成されている。pコンタクト領域136の不純物濃度は1×1017〜1×1020[cm-3]程度である。
【0074】
ダイオード領域108において、トレンチ126は、pアノード領域124の上側表面からnバリア領域122を貫通して、nドリフト領域114の内部まで達している。トレンチ126の内部には、絶縁膜138で被覆されたゲート電極140が充填されている。pアノード領域124の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域142が形成されている。nピラー領域142の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度である。nピラー領域142は、pアノード領域124を貫通して、nバリア領域122の上側表面まで達するように形成されている。また、pアノード領域124の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるpコンタクト領域144が形成されている。pコンタクト領域144の不純物濃度は1×1017〜1×1020[cm-3]程度である。
【0075】
半導体基板104の下側表面には、金属製のコレクタ/カソード電極146が形成されている。コレクタ/カソード電極146は、pコレクタ領域110およびnカソード領域120とオーミック接合によって接合している。コレクタ/カソード電極146は、IGBT領域106においてはコレクタ電極として機能し、ダイオード領域108においてはカソード電極として機能する。コレクタ/カソード電極146は、コレクタ/カソード端子147に接続している。
【0076】
半導体基板104の上側表面には、金属製のエミッタ/アノード電極148が形成されている。エミッタ/アノード電極148は、IGBT領域106のnエミッタ領域132およびpコンタクト領域136、およびダイオード領域108のpコンタクト領域144とオーミック接合によって接合している。エミッタ/アノード電極148は、IGBT領域106においてはエミッタ電極として機能し、ダイオード領域108においてはアノード電極として機能する。エミッタ/アノード電極148は、エミッタ/アノード端子149に接続している。
【0077】
半導体基板104のIGBT領域106の上側表面において、エミッタ/アノード電極148が形成されていない箇所には、絶縁膜103が形成されている。絶縁膜103の上側表面には、絶縁膜103を貫通してnピラー領域134の上側表面に達する中継電極105が形成されている。中継電極105はnピラー領域134とオーミック接合によって接合している。中継電極105は、半導体基板104の外部に設けられた整流素子107を介して、エミッタ/アノード端子149に接続している。
【0078】
整流素子107は、アノード107aからカソード107bへの順方向電流を許容し、カソード107bからアノード107aへの逆方向電流を制限する。整流素子107のアノード107aは配線109aを介してエミッタ/アノード端子149に接続している。整流素子107のカソード107bは配線109bを介して中継電極105に接続している。本実施例では、整流素子107はショットキーバリアダイオードである。なお、整流素子107としては、順方向電圧降下が、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合のビルトイン電圧より低いものであれば、ショットキーバリアダイオード以外のものを使用してもよい。例えば、整流素子107としては、ゲルマニウムのpnダイオードを用いてもよいし、ヘテロ接合ダイオードを用いてもよい。
【0079】
半導体基板104のダイオード領域108の上側表面において、エミッタ/アノード電極148が形成されていない箇所には、絶縁膜113が形成されている。絶縁膜113の上側表面には、絶縁膜113を貫通してnピラー領域142の上側表面に達する中継電極115が形成されている。中継電極115はnピラー領域142とオーミック接合によって接合している。中継電極115は、半導体基板104の外部に設けられた整流素子117を介して、エミッタ/アノード端子149に接続している。
【0080】
整流素子117は、アノード117aからカソード117bへの順方向電流を許容し、カソード117bからアノード117aへの逆方向電流を制限する。整流素子117のアノード117aは配線119aを介してエミッタ/アノード端子149に接続している。整流素子117のカソード117bは配線119bを介して中継電極115に接続している。本実施例では、整流素子117はショットキーバリアダイオードである。なお、整流素子117としては、順方向電圧降下が、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合のビルトイン電圧より低いものであれば、ショットキーバリアダイオード以外のものを使用してもよい。例えば、整流素子117としては、ゲルマニウムのpnダイオードを用いてもよいし、ヘテロ接合ダイオードを用いてもよい。
【0081】
IGBT領域106のゲート電極130は図示しない第1ゲート端子に導通している。ダイオード領域108のゲート電極140は、図示しない第2ゲート端子に導通している。
【0082】
以上のように、半導体装置102は、トレンチ型のIGBTとして機能するIGBT領域106とフリーホイーリングダイオードとして機能するダイオード領域108が逆並列に接続された構造を有している。
【0083】
半導体装置102の動作について説明する。ゲート電極130に電圧が印加されておらず、従ってIGBT領域106が駆動していない場合には、IGBT領域106は寄生ダイオードとして機能する。この状態で、エミッタ/アノード端子149とコレクタ/カソード端子147の間に順バイアスが印加されると、ダイオード領域108では、エミッタ/アノード端子149から整流素子117を介してnピラー領域142に順電流が流れる。nピラー領域142とnバリア領域122はほぼ同電位であるため、nバリア領域122とエミッタ/アノード電極148の電位差は整流素子117での電圧降下とほぼ等しくなる。整流素子117での電圧降下は、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、pコンタクト領域144やpアノード領域124からnドリフト領域114への正孔の注入が抑制される。IGBT領域106では、エミッタ/アノード端子149から整流素子107を介してnピラー領域134に順電流が流れる。nピラー領域134とnバリア領域116はほぼ同電位であるため、nバリア領域116とエミッタ/アノード電極148の電位差は整流素子107での電圧降下とほぼ等しくなる。整流素子107での電圧降下は、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合のビルトイン電圧よりも十分に小さいので、pコンタクト領域136やpボディ領域118からnドリフト領域114への正孔の注入が抑制される。エミッタ/アノード端子149とコレクタ/カソード端子147の間には、配線119a、整流素子117、配線119b、中継電極115、nピラー領域142、nバリア領域122、nドリフト領域114、nバッファ領域112、nカソード領域120を経由する順電流と、配線109a、整流素子107、配線109b、中継電極105、nピラー領域134、nバリア領域116、nドリフト領域114、nバッファ領域112、nカソード領域120を経由する順電流が流れる。
【0084】
次いで、エミッタ/アノード端子149とコレクタ/カソード端子147の間の電圧が順バイアスから逆バイアスに切り替わると、ダイオード領域108に関しては、整流素子117によってnピラー領域142を通る逆電流が制限され、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合によってpアノード領域124を流れる逆電流が制限され、IGBT領域106に関しては、整流素子107によってnピラー領域134を通る逆電流が制限され、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合によってpボディ領域118を流れる逆電流が制限される。上述したように、ダイオード領域108では、順バイアスの印加時においてpコンタクト領域144およびpアノード領域124からnドリフト領域114への正孔の注入が抑制されており、IGBT領域106では、順バイアスの印加時においてpコンタクト領域136およびpボディ領域118からnドリフト領域114への正孔の注入が抑制されている。従って、半導体装置102は、逆回復電流が小さく、逆回復時間が短い。本実施例の半導体装置102によれば、nドリフト領域114のライフタイム制御を行うことなく、スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0085】
また、本実施例の半導体装置102では、エミッタ/アノード端子149とコレクタ/カソード端子147の間に逆バイアスが印加されると、IGBT領域106では、整流素子107だけでなく、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。さらに、nドリフト領域114のトレンチ126の先端部近傍に電界が集中することで、整流素子107にかかる電界と、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合にかかる電界が軽減される。同様に、エミッタ/アノード端子149とコレクタ/カソード端子147の間に逆バイアスが印加されると、ダイオード領域108では、整流素子117だけでなく、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。さらに、nドリフト領域114のトレンチ126の先端部近傍に電界が集中することで、整流素子117にかかる電界と、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合にかかる電界が軽減される。本実施例の半導体装置102によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0086】
(実施例9)
図12に示すように、本実施例の半導体装置162は、実施例8の半導体装置102とほぼ同様の構成を備えている。半導体装置162は、シリコンの半導体基板164を用いて形成されている。半導体基板164は、実施例8の半導体基板104とほぼ同様の構成を備えている。半導体基板164では、IGBT領域106において、nドリフト領域114とnバリア領域116の間に、p型半導体領域であるp電界進展防止領域166が形成されており、ダイオード領域108において、nドリフト領域114とnバリア領域122の間に、p型半導体領域であるp電界進展防止領域168が形成されている。p電界進展防止領域166およびp電界進展防止領域168の不純物濃度は1×1015〜1×1019[cm-3]程度である。また、p電界進展防止領域166およびp電界進展防止領域168の厚みは1.0〜2.0[μm]程度である。IGBT領域106において、トレンチ126は、pボディ領域118の上側表面からnバリア領域116およびp電界進展防止領域166を貫通して、nドリフト領域114の内部まで達している。ダイオード領域108において、トレンチ126は、pアノード領域124の上側表面からnバリア領域122およびp電界進展防止領域168を貫通して、nドリフト領域114の内部まで達している。
【0087】
本実施例の半導体装置162によれば、実施例8の半導体装置102と同様に、エミッタ/アノード端子149とコレクタ/カソード端子147の間に順バイアスが印加される際に、ダイオード領域108では、pコンタクト領域144およびpアノード領域124からnドリフト領域114への正孔の注入が抑制されており、IGBT領域106では、pコンタクト領域136およびpボディ領域118からnドリフト領域114への正孔の注入が抑制されている。従って、順バイアスから逆バイアスへ切り換わる際の、逆回復電流を小さくし、逆回復時間を短くすることができる。スイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0088】
また、本実施例の半導体装置162によれば、エミッタ/アノード端子149とコレクタ/カソード端子147の間に逆バイアスが印加されると、IGBT領域106では、整流素子107だけでなく、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合の界面から伸びる空乏層と、nドリフト領域114とp電界進展防止領域166の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。さらに、nドリフト領域114のトレンチ126の先端部近傍に電界が集中することで、整流素子107にかかる電界と、pボディ領域118とnバリア領域116の間のpn接合にかかる電界と、nドリフト領域114とp電界進展防止領域166の間のpn接合にかかる電界が軽減される。同様に、エミッタ/アノード端子149とコレクタ/カソード端子147の間に逆バイアスが印加されると、ダイオード領域108では、整流素子117だけでなく、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合の界面から伸びる空乏層と、nドリフト領域114とp電界進展防止領域168の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。さらに、nドリフト領域114のトレンチ126の先端部近傍に電界が集中することで、整流素子117にかかる電界と、pアノード領域124とnバリア領域122の間のpn接合にかかる電界と、nドリフト領域114とp電界進展防止領域168の間のpn接合にかかる電界が軽減される。本実施例の半導体装置162によれば、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0089】
また、本実施例の半導体装置162によれば、エミッタ/アノード端子149とコレクタ/カソード端子147の間に逆バイアスが印加される際に、ダイオード領域108ではp電界進展防止領域168とnバリア領域122の間のpn接合によって逆電流が制限されるので、整流素子117を通過するリーク電流が低減し、IGBT領域106では、p電界進展防止領域166とnバリア領域116の間のpn接合によって逆電流が制限されるので、整流素子107を通過するリーク電流が低減する。本実施例の半導体装置162によれば、逆バイアス印加時のリーク電流を低減することができる。
【0090】
さらに、本実施例の半導体装置162では、IGBT領域106のゲート電極130に電圧を印加してIGBT領域106を駆動する場合に、IGBT領域106においてコレクタ/カソード電極146からエミッタ/アノード電極148へ流れる電流がp電界進展防止領域166によって抑制されるため、IGBT領域106の飽和電流を低減することが出来る。
【0091】
(実施例10)
図13に示すように、本実施例の半導体装置172は、実施例8の半導体装置102とほぼ同様の構成を備えている。本実施例の半導体装置172では、ダイオード領域108のnカソード領域120に、高濃度p型半導体領域であるpカソードショート領域174が、所定の間隔を隔てて複数形成されている点で、実施例8の半導体装置102と異なる。本実施例では、pカソードショート領域174の不純物濃度は1×1017〜5×1020[cm-3]程度である。本実施例の半導体装置172によれば、順バイアスの印加時において、nカソード領域120からnドリフト領域114への電子の注入が抑制されているので、実施例8の半導体装置102に比べて、逆回復電流をさらに小さくし、逆回復時間をさらに短くすることができる。本実施例の半導体装置172によれば、さらにスイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0092】
(実施例11)
図14に示すように、本実施例の半導体装置182は、実施例9の半導体装置162とほぼ同様の構成を備えている。本実施例の半導体装置182では、ダイオード領域108のnカソード領域120に、pカソードショート領域174が、所定の間隔を隔てて複数形成されている点で、実施例9の半導体装置162と異なる。本実施例の半導体装置182によれば、順バイアスの印加時において、nカソード領域120からnドリフト領域114への電子の注入が抑制されているので、実施例9の半導体装置162に比べて、逆回復電流をさらに小さくし、逆回復時間をさらに短くすることができる。本実施例の半導体装置182によれば、さらにスイッチング損失を小さくすることが出来る。
【0093】
(実施例12)
図15に示すように、本実施例の半導体装置202は、シリコンの半導体基板204を用いて形成されている。半導体基板204は、高濃度n型半導体領域であるnカソード領域206と、n型半導体領域であるnバッファ領域208と、低濃度n型半導体領域であるnドリフト領域210が順に積層されている。本実施例では、nカソード領域206の不純物濃度は1×1017〜5×1020[cm-3]程度であり、nバッファ領域208の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度であり、nドリフト領域210の不純物濃度は1×1012〜1×1015[cm-3]程度である。
【0094】
ドリフト領域210の上側表面には、n型半導体領域であるnバリア領域212が、所定の間隔を隔てて複数形成されている。nバリア領域212の上型表面には、p型半導体領域であるpアノード領域214が部分的に形成されている。pアノード領域214の上側表面には、n型半導体領域であるnピラー領域216が形成されている。nピラー領域216は、pアノード領域214を貫通して、nバリア領域212の上側表面まで達するように形成されている。また、pアノード領域214の上側表面には、高濃度p型半導体領域であるpコンタクト領域218と、高濃度n型半導体領域であるnエミッタ領域220がそれぞれ形成されている。本実施例では、nバリア領域212の不純物濃度は1×1015〜1×1018[cm-3]程度であり、pアノード領域214の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度であり、nピラー領域216の不純物濃度は1×1016〜1×1019[cm-3]程度であり、pコンタクト領域218の不純物濃度は1×1017〜1×1020[cm-3]程度であり、nエミッタ領域220の不純物濃度は1×1018〜1×1020[cm-3]程度である。また、nバリア領域212の厚さは0.5〜3.0[μm]程度である。
【0095】
半導体基板204の下側表面には、金属製のカソード電極222が形成されている。カソード電極222は、nカソード領域206とオーミック接合によって接合している。カソード電極222は、カソード端子223に接続している。
【0096】
半導体基板204の上側表面には、金属製のアノード電極224と、金属製のゲート電極226が形成されている。アノード電極224は、pアノード領域214、pコンタクト領域218およびnエミッタ領域220の一部とオーミック接合によって接合している。アノード電極224は、アノード端子225に接続している。ゲート電極226は、絶縁膜230を介してnドリフト領域210、nバリア領域212、pアノード領域214およびnエミッタ領域220の一部と対向するように配置されている。ゲート電極226は、ゲート端子227に導通している。
【0097】
半導体基板204の上側表面において、アノード電極224とゲート電極226が形成されていない箇所には、絶縁膜211が形成されている。絶縁膜211の上側表面には、絶縁膜211を貫通してnピラー領域216の上側表面に達する中継電極213が形成されている。中継電極213はnピラー領域216とオーミック接合によって接合している。中継電極213は、半導体基板204の外部に設けられた整流素子215を介して、アノード端子225に接続している。
【0098】
整流素子215は、アノード215aからカソード215bへの順方向電流を許容し、カソード215bからアノード215aへの逆方向電流を制限する。整流素子215のアノード215aは配線217aを介してアノード端子225に接続している。整流素子215のカソード215bは配線217bを介して中継電極213に接続している。本実施例では、整流素子215はショットキーバリアダイオードである。なお、整流素子215としては、順方向電圧降下が、pアノード領域214とnバリア領域212の間のpn接合のビルトイン電圧より低いものであれば、ショットキーバリアダイオード以外のものを使用してもよい。例えば、整流素子215としては、ゲルマニウムのpnダイオードを用いてもよいし、ヘテロ接合ダイオードを用いてもよい。
【0099】
本実施例の半導体装置202は、ドレイン電極に相当するカソード電極222と、ドレイン領域に相当するnカソード領域206と、バッファ領域208と、nドリフト領域210と、ボディ領域に相当するpアノード領域214と、ソース領域に相当するnエミッタ領域220と、ソース電極に相当するアノード電極224と、nエミッタ領域220とnドリフト領域210の間のpアノード領域214に対して絶縁膜230を挟んで対向するゲート電極226を備える縦型のMOSFETの構造を有している。
【0100】
本実施例の半導体装置202では、nドリフト領域210とpアノード領域214の間にnバリア領域212が形成されており、アノード電極224と整流素子215を介して電気的に接続するnピラー領域216を介して、nバリア領域212がアノード電極224と導通している。このような構成とすることによって、アノード端子225とカソード端子223の間の寄生ダイオードについて、逆回復特性を改善して、スイッチング損失を低減することができる。また、アノード端子225とカソード端子223の間の逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0101】
(実施例13)
図16に示すように、本実施例の半導体装置232は、実施例12の半導体装置202とほぼ同様の構成を備えている。本実施例の半導体装置232も、実施例12の半導体装置202と同様に、縦型のMOSFETの構造を有している。本実施例の半導体装置232では、nドリフト領域210とnバリア領域212の間に、p型半導体領域であるp電界進展防止領域234が形成されている。p電界進展防止領域234の不純物濃度は1×1015〜1×1019[cm-3]程度である。また、p電界進展防止領域234厚さは1.0〜2.0[μm]程度である。
【0102】
本実施例の半導体装置232によれば、実施例12の半導体装置202と同様に、アノード端子225とカソード端子223の間の寄生ダイオードについて、逆回復特性を改善して、スイッチング損失を低減することができる。
【0103】
また、本実施例の半導体装置232では、nドリフト領域210とnバリア領域212の間にp電界進展防止領域234が形成されているので、実施例12の半導体装置202に比べて、アノード端子225とカソード端子223の間の逆バイアスに対する耐圧を向上し、逆バイアス時のリーク電流を低減することができる。
【0104】
(実施例14)
図17に示すように、本実施例の半導体装置242は、実施例12の半導体装置202とほぼ同様の構成を備えている。本実施例の半導体装置232では、nカソード領域206において、高濃度p型半導体領域であるpコレクタ領域244が部分的に形成されている。本実施例では、pコレクタ領域244の不純物濃度は1×1017〜5×1020[cm-3]程度である。
【0105】
半導体装置242は、プレーナ型のIGBTとフリーホイーリングダイオードが逆並列に接続された構造を有している。すなわち、コレクタ電極に相当するカソード電極222と、pコレクタ領域244と、nバッファ領域208と、nドリフト領域210と、pアノード領域214と、nエミッタ領域220と、エミッタ電極に相当するアノード電極224と、絶縁膜230と、ゲート電極226によって、プレーナ型のIGBTを構成しており、カソード電極222と、nカソード領域206と、nバッファ領域208と、nドリフト領域210と、pアノード領域214と、pコンタクト領域218と、アノード電極224によって、フリーホイーリングダイオードを構成している。本実施例の半導体装置242は、上記のようなIGBTとダイオードのそれぞれについて、nドリフト領域210とpアノード領域214の間に形成されたnバリア領域212と、nバリア領域212と電気的に接続されたnピラー領域216と、nピラー領域216とアノード電極224を接続するように配置された整流素子215が付加された構成を有している。
【0106】
本実施例の半導体装置242では、アノード端子225とカソード端子223の間に順バイアスが印加される際に、pアノード領域214およびpコンタクト領域218からnドリフト領域210への正孔の注入が抑制される。従って、逆回復特性を向上し、スイッチング損失を低減することができる。
【0107】
また、本実施例の半導体装置242では、アノード端子225とカソード端子223の間に逆バイアスが印加されると、整流素子215だけでなく、pアノード領域214とnバリア領域212の間のpn接合の界面から伸びる空乏層によっても電界が分担される。従って、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0108】
(実施例15)
図18に示すように、本実施例の半導体装置252は、実施例14の半導体装置242とほぼ同様の構成を備えている。本実施例の半導体装置252では、nドリフト領域210とnバリア領域212の間に、p型半導体領域であるp電界進展防止領域234が形成されている。p電界進展防止領域234の不純物濃度は1×1015〜1×1019[cm-3]程度である。また、p電界進展防止領域234厚さは1.0〜2.0[μm]程度である。半導体装置252は、プレーナ型のIGBTとフリーホイーリングダイオードが逆並列に接続された構造を有している。
【0109】
本実施例の半導体装置252によれば、アノード端子225とカソード端子223の間に順バイアスが印加される際に、pアノード領域214およびpコンタクト領域218からnドリフト領域210への正孔の注入が抑制される。従って、逆回復特性を向上し、スイッチング損失を低減することができる。
【0110】
また、本実施例の半導体装置252では、アノード端子225とカソード端子223の間に逆バイアスが印加されると、整流素子215だけでなく、pアノード領域214とnバリア領域212の間のpn接合の界面から伸びる空乏層と、p電界進展防止領域234とnドリフト領域210の間のpn接合から伸びる空乏層によっても電界が分担される。従って、逆バイアスに対する耐圧を向上することができる。
【0111】
また、本実施例の半導体装置252では、p電界進展防止領域234とnドリフト領域210の間のpn接合によって、逆電流が制限される。従って、逆バイアス印加時に整流素子215を通過するリーク電流が低減される。
【0112】
さらに、本実施例の半導体装置252では、ゲート電極226に電圧を印加してIGBTを駆動する場合に、コレクタ電極に相当するカソード電極222からエミッタ電極に相当するアノード電極224へ流れる電流がp電界進展防止領域234によって抑制されるため、IGBTの飽和電流を低減することができる。
【0113】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0114】
例えば、上記の実施例におけるnピラー領域16,134,142,216は、対応するnバリア領域12,116,122,212と同じ不純物濃度として、単一のnバリア領域として形成してもよい。あるいは、上記の実施例におけるnピラー領域16,134,142,216を、金属埋め込み層で代替する構成としてもよい。
【0115】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0116】
2 ダイオード;4 半導体基板;6 nカソード領域;8 nバッファ領域;10 nドリフト領域;11 絶縁膜;12 nバリア領域;13 中継電極;14 pアノード領域;15 整流素子;15a アノード;15b カソード;16 nピラー領域;17a 配線;17b 配線;18 pコンタクト領域;20 カソード電極;21 カソード端子;22 アノード電極;23 アノード端子;32 ダイオード;34 半導体基板;36 p電界進展防止領域;42 ダイオード;44 トレンチ;46 絶縁膜;48 トレンチ電極;52 ダイオード;62 ダイオード;64 pカソードショート領域;66 ダイオード;68 ダイオード;70 ダイオード;72 半導体装置;74 nエミッタ領域;82 半導体装置;102 半導体装置;103 絶縁膜;104 半導体基板;105 中継電極;106 IGBT領域;107 整流素子;107a アノード;107b カソード;108 ダイオード領域;109a 配線;109b 配線;110 pコレクタ領域;112 nバッファ領域;113 絶縁膜;114 nドリフト領域;115 中継電極;116 nバリア領域;117 整流素子;117a アノード;117b カソード;118 pボディ領域;119a 配線;119b 配線;120 nカソード領域;122 nバリア領域;124 pアノード領域;126 トレンチ;128 絶縁膜;130 ゲート電極;132 nエミッタ領域;134 nピラー領域;136 pコンタクト領域;138 絶縁膜;140 ゲート電極;142 nピラー領域;144 pコンタクト領域;146 カソード電極;147 カソード端子;148 アノード電極;149 アノード端子;162 半導体装置;164 半導体基板;166 p電界進展防止領域;168 p電界進展防止領域;172 半導体装置;174 pカソードショート領域;182 半導体装置;202 半導体装置;204 半導体基板;206 nカソード領域;208 nバッファ領域;210 nドリフト領域;211 絶縁膜;212 nバリア領域;213 中継電極;214 pアノード領域;215 整流素子;215a アノード;215b カソード;216 nピラー領域;217a 配線;217b 配線;218 pコンタクト領域;220 nエミッタ領域;222 カソード電極;223 カソード端子;224 アノード電極;225 アノード端子;226 ゲート電極;227 ゲート端子;230 絶縁膜;232 半導体装置;234 p電界進展防止領域;242 半導体装置;244 pコレクタ領域;252 半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18