(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周辺部分が、前記光学部分内部の流体チャネルと流体的に連結している流体チャンバを画定し、前記流体が、前記流体チャンバ及び前記流体チャネル内部に配置されている、請求項1に記載のAIOL。
アクティブチャネル内の流体の圧力が、非線形応答の第一の部分中に第一の圧力から第二の圧力に増大し、前記流体の圧力が、非線形応答の第二の部分中に前記第二の圧力から第三の圧力に増大する、請求項2に記載のAIOL。
アクティブチャネル内の流体の圧力が、非線形応答の第一の部分中に実質的に同じままであり、前記流体の圧力が、非線形応答の第二の部分中に第一の圧力から第二の圧力に増大する、請求項2に記載のAIOL。
前記光学部分が、前方素子と、後方素子と、前記前方素子と前記後方素子との間に配置された中間素子とを備え、前記中間素子が水晶体嚢の力に応答して偏向する、請求項1に記載のAIOL。
前記中間素子及び前記後方素子が、前記周辺部分と流体的に連結しているアクティブチャネルを画定し、前記前方素子及び前記中間素子がパッシブチャンバを画定し、前記流体が前記アクティブチャネル及び前記周辺部分内部に配置された第一の流体であり、前記パッシブチャンバが第二の流体を含む、請求項5に記載のAIOL。
前記AIOLが、前記光学部分及び周辺部分の少なくとも一方の内部に配置された流体を更に備え、前記アクチュエーション素子が、前記AIOL内部の流体の変位に応答して構成を変化させるように構成されている、請求項9に記載のAIOL。
前記周辺部分が、前記光学部分と流体的に連結している少なくとも一つのハプティックを備え、前記ハプティックが、前記周辺部分と前記光学部分との間で実質的に流体を変位させないように毛様体筋の動きに関係しない水晶体嚢の再成形に応答して変形するように構成されている、請求項17に記載のAIOL。
【背景技術】
【0002】
初めに、
図1及び
図2を参照して、本発明の背景において、人間の眼の構造及び動作について説明する。眼10は、角膜11、虹彩12、毛様体筋13、靭帯線維又は小帯14、水晶体嚢15、水晶体16、及び網膜17を含む。水晶体16は、粘性でゼラチン状の透明線維から成り、“たまねぎ状”の層構造に配置され、且つ透明で弾性な水晶体嚢15内に配置されている。水晶体嚢15は、その周囲の小帯14によって毛様体筋13に結合されていて、その毛様体筋13は、眼10の内面に取り付けられている。硝子体18は、眼10の中心部を充填する高度に粘性で透明な流体である。
【0003】
眼から分離されると、緩和した水晶体嚢及び水晶体は凸状を呈する。しかしながら、小帯14によって眼内に懸架されると、水晶体嚢15は、適度な凸状(毛様体筋が緩和した際)と高度な凸状(毛様体筋が収縮した際)との間で動く。
図2Aに示されるように、毛様体筋13が緩和すると、水晶体嚢15及び水晶体16は、その外周でより大きな直径へと引っ張られて、レンズがより薄くて(光軸に沿って測定した際に)長い形状を呈するようになる。
図2Bに示されるように、毛様体筋13が収縮すると、小帯及び水晶体嚢の張力が低下して、水晶体がより厚くて短い形状を呈することによって、水晶体の屈折力(ディオプトリパワー)を増大させる。
【0004】
水晶体は、毛様体筋によって支持されている透明で弾性な水晶体嚢内において瞳孔の後方に位置していて、略15ディオプトリの屈折力を提供し、また、網膜上に像を合焦させる重要な機能を果たす。この合焦機能は、“調節(アコモデーション,accommodation)”と称され、多様な距離における物体の結像を可能にする。
【0005】
若い人の眼の水晶体の屈折力は、適度な凸状から高度な凸状に水晶体の形状を調整することによって、15ディオプトリから略29ディオプトリの間で調整可能である。この調整を生じさせるものとして一般に受け入れられているメカニズムは、水晶体嚢(及びその中に含まれる水晶体)を支持する毛様体筋が緩和状態(適度な凸状に対応)及び収縮状態(高度な凸状に対応)との間で動くことである。水晶体自体が粘性でゼラチン質で透明な線維から成り、“たまねぎ状”の層構造に配置されているので、毛様体筋によって水晶体嚢に印加される力によって、レンズが形状を変化させる。
【0006】
人が年をとると、水晶体は硬化してあまり弾性ではなくなり、略45歳〜50歳までに、調節は、略2ディオプトリに減少する。高齢では、水晶体は非調節性であるとみなされ得て、“老眼”として知られる状態になる。結像距離は固定されているので、老眼は典型的に、近方視力及び遠方視力を促進するために二重焦点を必要とする。
【0007】
白内障は、世界中において主な失明原因であり、最も一般的な眼病である。白内障は患者の眼の混濁であり、局所的な混濁、又は拡散的で全般的な透明性の喪失である。白内障は、加齢の結果として、又は先天的な要因、トラウマ、炎症、代謝又は栄養疾患、若しくは放射線に伴って、生じる。年齢に関係する白内障が最も一般的である。白内障からの障害が個人の日常生活の活動に対して影響を与えたり変えたりする場合、眼内レンズ(IOL,intraocular lens)を埋め込んで外科的に水晶体を除去することが、機能性の制限を処置する好ましい方法である。
【0008】
白内障又は調節機能の低下を処置する方法の一つとして、水晶体嚢から水晶体マトリクスを除去して、眼内レンズ(IOL)で置換することが挙げられる。IOLの一種は、単一焦点距離(つまり、非調節性)を提供して、患者がかなり優れた遠方視力を有するようにする。しかしながら、そのレンズはもはや調節を行うことができないので、患者は典型的には読書用の眼鏡を必要とする。
【0009】
年齢に関係する調節機能の喪失は別にして、こうした喪失は、白内障の処置に対するIOLの配置に固有のものである。単一焦点距離のIOLの配置後には、調節はもはや可能ではないが、IOLを装着する人にとっては典型的に、その機能は既に失われている。
【0010】
調節式IOL(AIOL,accommodating IOL)は、(小帯の張力及び緩和に応答しての)水晶体嚢の形状の変化からの自然な力を利用することによって機能して、その力を用いてAIOLの形状又は位置の変化を推進して、AIOLの屈折力を調節する。AIOLの屈折力の変化の度合いは、少なくとも部分的には水晶体嚢からAIOLに与えられる力(水晶体嚢の形状変化によるもの)の量に依存する。従って、調節(及び/又は非調節)の度合いは、少なくとも部分的には埋め込まれたAIOLの外面と水晶体嚢との間の係合の度合いに依存する。AIOL(AIOLの少なくとも特定の部分)と水晶体嚢との間のより良い“フィット”は、水晶体嚢からAIOLへのより効率的な力の伝達を提供する。
【0011】
AIOLを埋め込む前に水晶体嚢のサイズ(例えば、直径、円周、深度等)を知ることが一般的には好ましい。更に、水晶体嚢の直径は、患者毎に、更には眼毎に違うものであり得て、小さな直径の水晶体嚢と大きな直径の水晶体嚢との間の直径の差は、略1.5mm、つまり1500マイクロメートルとなる。従って、AIOLと水晶体嚢との間のフィットは、測定された患者の水晶体嚢のサイズに依存する。例えば、水晶体嚢がAIOLよりもはるかに大きいと(従って、レンズとの良い“フィット”を有していないと)、水晶体嚢が形状を変えるがAIOLと接触しない(又はIOLと接触するが、AIOLに十分な力を印加しない)際に、水晶体嚢が発生させることのできる力の多くが無駄になり得て、調節性がほとんど又は全く無くなる。逆に、AIOLが水晶体嚢よりも大きくて、その埋め込み中に水晶体嚢内へ押し込むことを必要とすると、水晶体嚢は、毛様体筋の収縮が無くても、AIOLに対して力を及ぼす。場合によっては、AIOLは、毛様体筋が緩和した際においても永久に調節された構成に変わり得て、患者の近視寄りをもたらす。
【0012】
しかしながら、水晶体嚢の寸法は、正確には測定し難いものである。水晶体嚢の直径を測定する現状の方法は、略±300マイクロメートルの精度のものに過ぎない。従って、水晶体嚢を測定した後でさえも、水晶体嚢の正確な直径に基づくとその直径が望ましいものではないAIOLが埋め込まれる危険性が存在する。例えば、埋め込まれたAIOLが水晶体嚢の実際のサイズに対して大き過ぎるものになり得る。これは、永久的な近視寄りをもたらし得る。
【0013】
更に、レンズ埋め込み後の眼内の変化、更には埋め込み後のIOLに対する変化が生じ得る。例えば、埋め込み後(水晶体嚢はIOL周辺で収縮する)の水晶体嚢からの治癒反応(患者毎に異なるものであり得る)が存在することが指摘されている。これは、水晶体嚢からの水晶体の除去に応答しての水晶体嚢からの線維化反応であると考えられる。水晶体嚢の収縮は、埋め込み後のIOL、又はIOLの部分を変形させ得て、IOLの屈折力を変化させ得る。従って、IOLの設定点が、水晶体嚢の収縮等の眼内で生じる変化によって埋め込み後に影響され得る。
【0014】
埋め込み後の眼内の変化又はレンズ自体の変化を考慮する選択肢の一つは、レンズに対して又は目の一部分に対して埋め込み後の調整を行うことである。一部の埋め込み後の調整は介入を必要とするものである一方、一部のIOLは、眼内で生じる変化又はレンズに対して生じる変化を考慮するように埋め込み後の自己調整、又は自動調整を行うように構成されて配置される。例示的なレンズ及び眼に対して実行可能な埋め込み後の調整として、2003年2月2日出願の米国特許出願第10/358038号、2004年10月7日出願の米国特許出願第10/890576号、2006年8月21日出願の米国特許出願第11/507946号、2008年7月23日出願の米国特許出願第12/178304号、2003年2月6日出願の米国特許出願第10/360091号、2003年8月12日出願の米国特許出願第10/639894号、2005年11月21日出願の米国特許出願第11/284068号、2002年8月12日出願の米国仮出願第60/402746号、2002年8月23日出願の米国仮出願第60/405471号、米国仮出願第60/487541号、及び2002年8月29日出願の米国特許出願第10/231433号が挙げられ、これら全ては参照として本願に組み込まれる。
【0015】
一部の埋め込み後の変更に対して考えられる欠点の一つは、二次介入(つまり、IOLが水晶体嚢内に配置された後の追加のステップ又は手順)を必要とする点である。埋め込み後に眼内で生じる変化又はIOL自体に生じる変化を自動的に考慮できるIOLを埋め込み用に選択することは、二次介入の必要を回避する可能性を有し、全体的な埋め込みプロセスを短縮及び/又は単純化することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、上述の問題に鑑み、水晶体嚢のサイズの可変性、及び水晶体嚢のサイズを測定するための現状の不完全な方法を考慮した、及び/又は、眼内に生じる又は眼内レンズに対して生じ得る埋め込み後の変化を考慮した、更なるレンズ、及び適切なレンズを選択し埋め込む方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一側面は、光学部分と、周辺部分と、光学部分及び周辺部分の少なくとも一方の内部に配置された流体とを含む調節式眼内レンズ(AIOL)であり、そのAIOLは、水晶体嚢の力の量の増大に対して非線形な屈折力の応答を有する。
【0019】
一部実施形態では、非線形応答の第二の部分中のAIOLの屈折力の変化は、非線形応答の第一の部分中のAIOLの屈折力の変化よりも実質的に大きい。非線形応答の第一の部分中の屈折力の変化は、ゼロよりも大きくなり得る。
【0020】
一部実施形態では、非線形応答の第一の部分中のAIOLの屈折力の変化は実質的にゼロである。
【0021】
一部実施形態では、周辺部分は、光学部分内部の流体チャネルと流体的に連結している流体チャンバを画定し、その流体は、流体チャンバ及び流体チャネルの内部に配置される。アクティブチャネル内の流体の圧力は、非線形応答の第一の部分中に第一の圧力から第二の圧力に増大し得て、またその流体の圧力は、非線形応答の第二の部分中に第二の圧力から第三の圧力に増大し得る。また、アクティブチャネル内の流体の圧力は、第一の部分中に実質的に同じままであり得て、第二の部分中に第一の圧力から第二の圧力に増大し得る。
【0022】
一部実施形態では、光学部分は、前方素子と、後方素子と、前方素子と後方素子との間に配置された中間素子とを備え、その中間素子は、水晶体嚢の力に応答して偏向する。一部実施形態では、中間素子は、AIOLに対する水晶体嚢の力に応答して偏向するアクチュエータを備える。一部実施形態では、中間素子は、非線形応答の第一の部分中及び非線形応答の第二の部分中に偏向する。中間素子は、第一の部分の開始時に前方素子に接触していないものであり得て、第二の部分の開始時に前方素子に接触している。一部実施形態では、前方素子の曲率が、第一の部分中よりも第二の部分中においてより大きく変化する。中間素子及び後方素子は、周辺部分と流体的に連結しているアクティブチャネルを画定し得て、前方素子及び中間素子はパッシブチャンバを画定し、前記流体はアクティブチャネル及び周辺部分内部に配置された第一の流体であり、パッシブチャンバが第二の流体を含む。
【0023】
一部実施形態では、周辺部分は、水晶体嚢の力に応答して変形するハプティックを備える。
【0024】
一側面は、光学部分と、その光学部分の周辺の非光学部分とを含む調節式眼内レンズ(AIOL)であり、光学部分は、AIOLに対する水晶体嚢の力に応答して構成を変化させるアクチュエーション素子を備え、AIOLは、そのAIOLに対する水晶体嚢の力に応答して非線形な屈折力の応答を有する。
【0025】
一部実施形態では、光学部分が前方素子及び後方素子を備えて、アクチュエーション素子が前方素子と後方素子との間に配置される。アクチュエーション素子は、非線形応答の第一の部分の開始時に前方素子に接触していないものであり得るが、非線形応答の第二の部分の開始時に前方素子に接触している。前方素子の曲率は、水晶体嚢の力に応答して変形するように構成され得て、前方素子の曲率は、非線形応答の第一の部分中よりも非線形応答の第二の部分中により大きく変形する。
【0026】
一部実施形態では、AIOLの屈折力は、非線形応答の第二の部分中よりも非線形応答の第一の部分中において実質的に小さく変化する。
【0027】
一部実施形態では、非線形応答の第一の部分中のAIOLの屈折力は実質的に一定のままである。
【0028】
一部実施形態では、AIOLは、光学部分及び周辺部分の少なくとも一方の内部に配置された流体を更に備え、アクチュエーション素子が、AIOL内部の流体の変位に応答して構成を変化させるように構成されている。
【0029】
一側面は、調節式眼内レンズに対する水晶体嚢の力を考慮する方法である。本方法は、光学部分及び周辺部分を備えた調節式眼内レンズ(AIOL)を提供するステップと、AIOLを眼内に埋め込むステップと、AIOLに対して、そのAIOLに対する水晶体嚢の力に対する非線形な屈折力の応答を有させる一方で、光学部分内部のアクチュエーション素子に構成を変化させるステップとを備える。
【0030】
一部実施形態では、光学部分内部のアクチュエーション素子に構成を変化させるステップは、光学部分の前方素子と光学部分の後方素子との間に配置されたアクチュエーション素子を前方素子又は後方素子に向けて偏向させるステップを備える。その変化させるステップは、非線形応答の第一の部分中に前方素子又は後方素子に係合させずに、アクチュエーション素子を前方素子又は後方素子に向けて動かすステップを備え得る。また、その変化させるステップは、非線形応答の第二の部分中にアクチュエーション素子を前方素子又は後方素子に係合させるステップも含み得る。
【0031】
一部実施形態では、AIOLに対する水晶体嚢の力に応答して複数の屈折力変化フェイズを提供することが、非線形応答の第一の部分を提供することを含み、その第一の部分中において、AIOLの屈折力は、非線形応答の第二の部分中よりも実質的に小さく変化する。AIOLの屈折力は、非線形応答の第一の部分中に実質的に同じままであり得る。
【0032】
一部実施形態では、その変化させるステップが、前方素子の曲率を、非線形応答の第一の部分中よりも非線形応答の第二の部分中により大きく変化させるステップを備える。
【0033】
一側面は調節式眼内レンズのキットである。そのキットは、複数の調節式眼内レンズを含み、複数の調節式眼内レンズの各々は光学部分及び周辺部分を備え、複数の調節式眼内レンズの各々は、異なる物理パラメータを備えた光学部分素子を有する。異なる物理パラメータは光学部分素子の寸法であり得る。光学部分素子は、光学部分の前面と後面との間に配置されたアクチュエータであり得る。
【0034】
一側面は、埋め込み用の調節式眼内レンズを選択する方法である。本方法は、水晶体嚢の特性を測定するステップと、測定された特性に少なくとも部分的に基づいて、複数の調節式眼内レンズ(各調節式眼内レンズは異なる物理パラメータを備えた光学部分素子を有する)から一つの調節式眼内レンズを選択するステップと、その調節式眼内レンズを患者の眼の内部に埋め込むステップとを備える。
【0035】
一部実施形態では、選択するステップが、眼内レンズに対する水晶体嚢の力に対して非線形な屈折力の応答を提供する物理パラメータを備えた調節式眼内レンズを選択するステップを備える。
【0036】
一側面は、眼内レンズ(AIOL)を調節する方法である。本方法は、第一の種類の毛様体筋の動きに対する非線形な屈折力の応答の第一の部分中に屈折力を変化させ、且つ第二の種類の毛様体筋の動きに対する非線形な応答の第二の部分中に屈折力を変化させるAIOLを提供するステップを含み、第一及び第二の種類の毛様体筋の動きは同じ種類の動きであり、非線形な屈折力の応答の第一の部分中の屈折力の変化は、非線形な屈折力の応答の第二の部分中の屈折力の変化と異なる。また、本方法は、患者の眼の内部に調節式眼内レンズを埋め込んで、非線形な屈折力の応答を備えて埋め込まれたAIOLを提供するステップも含む。
【0037】
一部実施形態では、第一の部分中の屈折力の変化は、第二の部分中の屈折力の変化よりも実質的に小さく、第一の部分が第二の部分の前に生じる。第一の部分中には屈折力の変化が実質的にない場合もある。
【0038】
一部実施形態では、AIOLは表面素子を備え、第一の部分中の表面素子の曲率の変化の度合いは、第二の部分中の表面素子の曲率の変化の度合いと異なる。
【0039】
一部実施形態では、第一及び第二の種類の毛様体筋の動きは毛様体筋の収縮である。
【0040】
一側面は、調節式眼内レンズ(AIOL)を調節する方法である。本方法は、単一の種類の毛様体筋の動きに対して非線形な屈折力の変化の応答を有するAIOLを提供するステップと、患者の眼の中にAIOLを埋め込むステップと、単一の種類の毛様体筋の動きに応答して非線形にAIOLに調節を行わせるステップとを含む。
【0041】
一部実施形態では、単一の種類の毛様体筋の動きは毛様体筋の収縮である。
【0042】
一側面は、光学部分及び周辺部分を含む調節式眼内レンズであり、その調節式眼内レンズは、単一の種類の毛様体筋の動きに対する非線形な屈折力の変化の応答を有する。
【0043】
一側面は、光学部分と、周辺部分と、光学部分及び周辺部分の内部に配置された流体とを含む調節式眼内レンズであり、光学部分及び周辺部分が流体的に連結していて、周辺部分が、毛様体筋の動きに起因する水晶体嚢の再成形に応答して変形して、周辺部分と光学部分との間で流体を変位させて、周辺部分が、毛様体筋の動きに関係しない水晶体嚢の再成形に応答して周辺部分と光学部分との間で流体が実質的に変位しないように構成されている。
【0044】
一部実施形態では、周辺部分は、光学部分と流体的に連結している少なくとも一つのハプティックを備え、そのハプティックは、周辺部分と光学部分との間で流体が実質的に変位しないように毛様体筋の動きに関係しない水晶体嚢の再成形に応答して変形するように構成されている。
【0045】
一部実施形態では、少なくとも一つのハプティックの寸法は、AIOLが埋め込まれる水晶体嚢の寸法よりも大きい。
【0046】
一部実施形態では、周辺部分は、楕円形の断面を有する少なくとも一つのハプティックを含む。
【0047】
一側面は、二部品の調節式眼内レンズ(AIOL)を届ける方法である。本方法は、フレームが水晶体嚢に対して係合及び再成形を行うように患者の水晶体嚢の内部にフレーム素子を届けるステップと、水晶体嚢内部においてAIOLを、毛様体筋の動きに応答してAIOLに調節を行わせる位置に届けるステップとを含む。
【0048】
一部実施形態では、フレームを届けるステップは、フレームをデリバリー用構成から埋め込まれた構成に再構成させるステップを備える。
【0049】
一部実施形態では、水晶体嚢を再構成することは、軸方向に水晶体嚢を延伸させることを含む。軸方向に水晶体嚢を延伸させることは、水晶体嚢の前方部分を前方方向に延伸させて、水晶体嚢の後方部分を後方方向に延伸させることを備え得る。
【0050】
一部実施形態では、フレーム素子を届けるステップは、水晶体嚢が、毛様体筋の動きに関係しない水晶体嚢の力に起因してAIOLに対して力を印加することを防止するステップを備える。
【0051】
一部実施形態では、本方法は、AIOLに対してフレーム素子を固定するステップを含まない。
【0052】
[参照としての組み込み]
本明細書で言及される全ての文献及び特許出願は、各文献又は特許出願が参照として組み込まれる旨が明確且つ個別に述べられているのと同程度において、参照として本願に組み込まれるものである。
【0053】
本発明の新規特徴は、特に添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用されている例示的な実施形態を説明する以下の発明の詳細な説明及び添付図面を参照することによって得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本開示は一般的に、患者の水晶体嚢のサイズの可変性、水晶体嚢の不正確な測定、及び/又は水晶体嚢内に眼内レンズを埋め込んだ後に眼内に生じ得る又は眼内レンズに対して生じ得る変化を考慮するレンズ及び方法に関する。水晶体嚢のサイズの可変性及び水晶体嚢の不正確な測定は、眼内レンズと水晶体嚢との間のサイズ不整合につながる可能性がある。水晶体を除去して眼内レンズを埋め込んだ後の眼に生じ得る変化は、水晶体嚢に対する変化を含む。水晶体嚢に対する変化の例として、水晶体嚢の収縮(線維化反応を特徴とする)、水晶体嚢の硬化、水晶体嚢の成長、水晶体嚢の厚化又は薄化、なんらかの種類の水晶体嚢の治癒反応、治癒又は剥離嚢切開(torn Capsularhexis)、細長嚢切開(oblong capsularhexis)による水晶体嚢の膨張等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。水晶体嚢の収縮について本願では主に述べるが、眼内レンズは、埋め込み後の水晶体嚢に対する他の種類の変化を考慮するようにも適合可能である。
【0056】
本開示は主に、“調節式眼内レンズ(AIOL,accommodating intraocular lens)”について言及するものであり得るが、その実施形態及び方法はAIOLに限定されるものではなく、適切な非調節式眼内レンズ(まとめて“IOL”とする)にも適用可能である。従って、本願において“眼内レンズ”、“IOL”、“調節式眼内レンズ”、“AIOL”とは、非調節式眼内レンズ及び/又は調節式眼内レンズを指称しているものでもあり得る。従って、本願において“レンズ”とは、非調節式眼内レンズ及び調節式眼内レンズの両方を含み得る。しかしながら、一部実施形態では、水晶体嚢の不整合及び/又は水晶体嚢の応答の両方を考慮して、毛様体筋の収縮及び緩和に応答して調節を行う調節式眼内レンズについて具体的に説明する。
【0057】
患者の水晶体嚢の中にIOWを埋め込む前において、一般的には水晶体嚢が測定される。水晶体嚢、又は水晶体嚢の性質(例えば直径)が測定されると、埋め込み用に適切なサイズのIOLが選択される。一部実施形態では、適切なIOLが、複数のIOLのキットから選択され、その各IOLは、特定の水晶体嚢のサイズ用に異なる直径サイズ(測定又は見積もられたもの)を有する。キットを用いる代替例は、水晶体嚢の測定に基づいて所望の直径を備えたIOLを設計することである。しかしながら、代替実施形態(後述する)では、水晶体嚢の直径を測定することが必要でなくなり得る。以下で説明される一部眼内レンズは、水晶体嚢の直径を測定する必要がなく、サイズ不整合及び/又は埋め込み後の生じ得る変化を自動的に考慮するように構成される。水晶体嚢の直径を測定する必要なしにこれらの問題を考慮することができる眼内レンズを提供することは、埋め込み手順全体を単純化することによって顕著な利点を提供する。
【0058】
図3〜
図5は、調節式IOL10の単に例示的な実施形態を示し、その調節式IOL10については、2008年7月22日出願の同時係属米国特許出願第12/177857号(参照として本願に組み込まれる)により詳細に説明されている。IOL10は、ハプティック12及び14を備えた周辺の非光学部分を含む。また、IOLは、前方レンズ素子16と、アクチュエータ20を備えた中間層18と、基板又は後方素子22とを含む。ハプティック12及び14の内面は、後方素子22及び中間層18によって画定されるアクティブチャネル26と流体的に連結している内部ボリューム24を画定する。図示されるように、アクチュエータ20は中間層18に集積される。ハプティックは、バトレスボア(buttress bore,支持孔)13内にフィットするようなサイズ及び形状にされたハプティック取り付け素子15(硬質又はフレキシブルであり得る)を有する。接着層を、ハプティック取り付け素子の外面及び/又はバトレスボアの内面に適用することができて、ハプティックを光学部分に取り付けることを容易にする。IOLは、ハプティック及びアクティブチャネル内にシリコーンオイル等の第一の変位可能媒体を含む。IOLは、前方素子16及び中間層18によって画定されたパッシブチャンバ21も含む。パッシブチャンバは、第二の変位可能媒体(例えば、流体、エラストマ等)を含み、その第二の変位可能媒体は、ハプティック及びアクティブチャネル内の媒体と同じであるか、異なる変位可能媒体であり得る。図示されるように、アクティブチャネル及びパッシブチャンバは、流体的に連結されていない。一部実施形態では、両方の変位可能媒体がシリコーンオイル等の流体である。
【0059】
AIOL10が水晶体嚢(図示せず)に埋め込まれた後に、毛様体筋の動きに応答したハプティック12及び14の変形が、内部ボリューム24とアクティブチャネル26との間で変位可能媒体を変位させる。変位可能媒体がハプティックからアクティブチャネル内に変位すると、アクティブチャネル内の圧力が、パッシブチャンバ内の圧力に対して相対的に増大して、アクチュエータ20を前方方向に偏向させる。これによって、前方素子16の曲率を変化させることによって、この調節された構成におけるIOLの屈折力を増大させる。
【0060】
図6は、例示的なAIOLの光学部分の部分断面図(ハプティックは図示せず)であり、非調節状態(破線)及び調節状態(実線)における光学部分の略半分を示す。AIOLは、前方素子74と、アクチュエータ73を含む中間層78と、後方素子75を含む。アクチュエータ73は、偏向素子71及びベローズ70で構成される。アクティブチャネル72内の圧力が増大すると、ベローズ70は、非調節状態の略円錐形状から調節状態の曲線構成へと構成を変える。偏向素子71は、アクティブチャネル内の圧力の増大に起因して前方方向に押される。これによって、
図6の調節状態(実線)に示されるように、前方素子74も前方方向に偏向して、前方素子の曲率を急勾配にすることによって、レンズの屈折力を増大させる。
【0061】
一部実施形態では、埋め込まれるIOLの直径が、レンズの光学部分の直径、IOLの周辺部分のサイズ、又は両者の組み合わせを変更することによって、決められ得る。例えば、IOLの直径は、ハプティックの寸法を変更することによって変更可能である。
【0062】
一部実施形態では、IOLのサイズの適切性は、IOLの外寸に依存しない(又は少なくとも完全には依存しない)。こうした実施形態では、調整可能なIOLの例示的な代替側面には、IOLの内寸又はIOLの特定の構成要素の寸法、IOLの製造方法(例えばIOLの多様な構成要素を結合する方法)、IOLの少なくとも一部分内に配置された変位可能媒体の体積等が含まれるが、これらに限定されるものではない。しかしながら、IOLの外寸は、IOLの他の側面を更に調節する間に変更され得る。
【0063】
図7は、
図3〜
図6の実施形態の光学素子が、水晶体嚢のサイズ/レンズのサイズの不整合、及び/又は、埋め込み後の眼内の変化を考慮するように調節される実施形態を示す。
図7は、非調節性の構成のIOL50例示的な実施形態の断面図を示す(ハプティックは図示せず)。
図7のIOLと
図3〜
図6のものとの間の違いの一つは、流動性媒体が偏向素子55に向けて変位している全時間にわたって、アクチュエータ53の偏向素子55が前方素子59に接触していないことである。
図7の実施形態では、アクティブチャネル内の流体圧力が最初に変化し始めても、偏向素子55は前方素子59に接触していない。
図7は、非調節性の構成を表すものであり得て、この場合、IOLがその非調節性の構成である際に、偏向素子55は前方素子59に接触していない。
図3〜
図6に示されるIOLの偏向素子は、レンズが埋め込まれると、前方素子に少なくとも部分的に接触し、更には結合され得る。
図7のIOLは、偏向素子55と前方素子59との間の距離によって画定されるデッドゾーン58を備えて示されている。この実施形態では、埋め込み用に適切なサイズのIOLを提供するように変更されるIOLの側面は、デッドゾーンの長さである。レンズの他の内寸も調整可能である。
【0064】
図7の実施形態及び本願で説明される他の実施形態において、AIOLの屈折力は、AIOLに対する水晶体嚢の力に応答して非線形に変化する。つまり、AIOLに対する仮想的な屈折力対水晶体嚢の力のプロットの傾斜は、AIOLに対する水晶体嚢の力の全範囲にわたって一定ではない。一般的に、仮想的なプロットの傾斜は、水晶体嚢の力が増大するのと共に、増大する。水晶体嚢の力は、調節性の応答、サイズの不整合、埋め込み後の水晶体嚢の変化等によるものであり得る。AIOLは、なんらかの種類の非線形応答を有し得る。例えば、その応答は、複数の離散的な段階において生じると考えられる。各離散的な段階は、増大する水晶体嚢の力に応答して均一な屈折力の変化を有し得る。しかしながら、一部実施形態では、離散的な段階は均一な屈折力の変化を有さない。一部眼内レンズの応答は、複数の離散的な段階において生じるのではなくて、屈折力の変化が、増大する水晶体嚢の力に対して連続的であると考えられる。一部応答は、一以上の離散的な段階を含む連続的に増大する屈折力の組み合わせであると考えられる。他の全ての種類の非線形応答も本願に含まれる。
【0065】
一部実施形態では、AIOLは、水晶体嚢の再成形に応答した第一の屈折力変化フェイズと、更なる水晶体嚢の再成形に応答した第二の屈折力変化フェイズとを経るものであり、その第一のフェイズ中の屈折力の変化が、第二のフェイズ中の屈折力の変化と異なる。本願において、“フェイズ”との用語は、AIOLの応答全体において離散的なステップを指称することを意図したものではない。本願において、“フェイズ”とは、一般的にAIOLの非線形応答の一部分を指称するものであるが、非線形応答全体を含みこともある。一般的に、フェイズ、又は応答の一部分(任意に決定可能)は、AIOLの屈折力の変化に関係するものである。つまり、フェイズの屈折力の変化は、フェイズの終わりとフェイズの初めとの間の屈折力の差である。一般的に、非線形応答の第一のフェイズ中のIOLの屈折力の変化は、少なくとも非線形応答の第二のフェイズ中の屈折力の変化よりも小さい。つまり、屈折力の変化の傾斜は、一定ではなくて、非線形応答中の少なくとも或る点において増大する。一部実施形態では、第一のフェイズ中の屈折力の変化は実質的にゼロであり、第一のフェイズ中のIOLの屈折力が実質的に変化しない。他の実施形態では、第一のフェイズ中の屈折力の変化は実質的にゼロではないが、第二のフェイズ中の屈折力の変化よりも小さい。第一の屈折力中の屈折力の変化は、第二のフェイズ中の屈折力の変化よりも実質的に小さいものであり得る。
【0066】
図8〜
図10は、デッドゾーンを備えた例示的なIOL(ハプティックは図示せず)の光学部分の構成の変化の側断面図を示す。
図8は、製造後及び理論的には水晶体嚢内への埋め込み直後の初期構成のIOLを示す。
図10は、完全に調節された構成のIOLを示し、
図9は、アクチュエータが前方素子に接触している構成を示す。IOL300は、前方素子302と、中間層304(アクチュエータの偏向素子312を含む)と、後方素子306とを含む。偏向素子312及び前方素子302は、デッドゾーン又はギャップ310を画定する。
【0067】
アクティブチャネル308内又はパッシブチャンバ314内にほとんど又は全く圧力がないと、その幾何学的形状及びパッシブな流体状態は、デッドゾーン310が偏向素子312と前方素子302との間に存在するようなものである。
図3〜
図6に関して上述したように、アクティブチャネル308内の流体圧力の増大(ハプティックからアクティブチャネル308に向けての媒体の変位に起因する)によって、偏向素子312が前方方向に変形する(
図6に示される変形と同様)。しかしながら、偏向素子312が、前方素子302に直接接触していないので(つまり、両者の間にデッドゾーンが存在するので)、初めは、力が偏向素子312から前方素子302に直接伝わらない。従って、アクティブチャネル内の圧力の所定の初期増加に対しては、前方素子に伝えられる力の量は、
図7〜
図11に示される実施形態よりも、
図3〜
図6に示される実施形態において大きい(個々のAIOLは、他の全ての側面において同様に製造されているものとする)。デッドゾーンによって、AIOLは、水晶体嚢の力に応答して構成を変化させることができて、増大する水晶体嚢の力に応答した屈折力の変化が非線形になる。この実施形態の構成の変化は、偏向素子312の変形である。この実施形態では、AIOLの光学部分は、AIOLに対して作用する水晶体嚢の力に応答して構成を変化させる。
【0068】
アクティブチャネル308内の圧力が増大し続けると、偏向素子312は前方方向に偏向し続けて、
図9に示される構成のように、前方素子302に接触する。アクティブチャネル308内の圧力が増大し続けると、偏向素子312は前方方向に偏向し続けて、前方素子302の一部分に直接的な力を印加する(そして、偏向素子が偏向し続ける限り力を印加し続ける)ことによって、前方素子302を前方方向に偏向させる。これは、前方素子302の曲率を変化させることによって、IOLの屈折力を増大させる。
【0069】
一般的に、レンズの屈折力の変化は、
図8と
図9との間においてよりも、
図9と
図10との間において大きい。つまり、レンズの屈折力は、偏向素子が前方素子に接触する前よりも、偏向素子が前方素子に接触した後においてより大きく変化する。このようになるのは、前方素子の曲率の変化が、
図8と
図9との間よりも、
図9と
図10との間において実質的に大きいからである。デッドゾーンは、水晶体嚢の再成形に対するAIOLの屈折力の応答が線形ではないように例示的なレンズを構成することができる方法の一つである。
図8〜
図10の実施形態では、レンズの屈折力の変化は、偏向素子が前方素子に接触した後の方が大きい。
【0070】
初期の水晶体嚢の力に応答して少なくともある程度の屈折力の増大を有することには、生理学的な利点があり得る。例えば、調節効果が所望の屈折力をもたらすために始まっていると脳に知らせることが有利となり得る。
【0071】
使用の際には、水晶体嚢を測定した後に、AIOL300を、埋め込み後に、デッドゾーン310が、AIOL300周辺での水晶体嚢の収縮及び/又はAIOL300と水晶体嚢との間のサイズの不整合を考慮するように、選択可能である。従って、水晶体嚢の収縮及び/又はサイズの不整合によって、AIOLを
図9に示されるような構成に変化させ得る。AIOLの屈折力の変化は非線形であり、永久的な近視寄りが防止されるか少なくとも最小化されるようになる。また、AIOL300は、毛様体筋の動きに応答して
図10に示される完全に調節された構成へと調節され得る。
【0072】
一部実施形態では、前方素子は、非調節の構成(
図8)において略球形であり、アクティブチャネル内の圧力が増大し始めるとすぐに非球形になる。こうした実施形態では、
図8〜
図10を参照すると、レンズが
図8に示される構成から
図9に示される構成に向けて転移し始めるとすぐに、前方素子は非球形になる。しかしながら、前方素子は、
図10よりも
図9の構成においてはあまり球形ではない。また、前方素子の曲率の変化率は、
図9と
図10との間よりも、
図8と
図9との間において小さい。従って、レンズが
図8及び
図9の間で構成を変化させると、レンズの屈折力は増大する。しかしながら、この変化は、
図8及び
図10の構成間の全体的な屈折力の変化と比較すると、比較的顕著ではない。
【0073】
しかしながら、一部実施形態では、前方表面が、非調節の構成において球形であり、偏向素子が前方素子に接触するまで球形(又は実質的に球形)のままである。こうした実施形態では、
図8〜
図10を参照すると、前方素子は、
図8及び
図9において少なくとも略球形であり、レンズが
図9から
図10へと構成を変化させると、非球面になる。偏向素子と前方素子との間の接触が生じた後に、前方素子が前方方向に偏向されて、前方素子が非球面になる。
【0074】
一部実施形態では、アクティブチャネル内の圧力が増大し続けると(偏向素子が前方素子に接触する前又は後のいずれか)、アクチュエータが、前方方向に偏向し続ける。前方素子に対する相対的な偏向素子のサイズに起因して、パッシブチャンバ314内の流体が再分配して、前方素子の非球面効果を生成する。これは、小さな開口に対して、IOLの屈折力を更に増大させる。
【0075】
図8〜
図10に示される実施形態では、屈折力が
図8の構成から
図9において変化していて、初期力がIOLに印加されると、AIOLがより低い屈折力の変化率を提供し(
図9)、追加の力が印加され続けるとより高い屈折力の変化率を提供する(
図10)。
【0076】
デッドゾーン又は同様の目標を達成する他の特徴を含まない本願で説明されるIOLの実施形態は、デッドゾーンを備えたIOLよりも、水晶体嚢の再成形に応答してより線形に屈折力を変化させる(IOLの他の全ての側面は同じであり、水晶体嚢は同じサイズのものであるとする)。デッドゾーンの使用によって、患者に生じる近眼寄りの量を最小化しながら、初期力を水晶体嚢からIOLに印加することができる。
【0077】
使用時には、AIOLが埋め込まれた後に、水晶体嚢の収縮及びレンズ/水晶体嚢のサイズの不整合が、AIOLの構成を変化させ得る。場合によっては、水晶体嚢の収縮及びサイズの不整合が考慮された後であっても、AIOLの非調節の構成が、デッドゾーンを有したままであり得る(
図8を参照)。つまり、AIOLに印加される水晶体嚢の力が、AIOLを
図9に示される構成に完全には再構成していない。こうした実施形態では、デッドゾーン(又は他の同様の作用の特徴)の使用は、複数の種類の又はフェイズの調節を生じさせるものと考えられる。例えば、毛様体筋の動きからの略線形な調節性応答ではなくて、応答が、非線形となる。これは、レンズの屈折力の変化率の変更を意味する。例えば、
図7〜
図10に関して上述したように、水晶体嚢に印加される初期力は、偏向素子の変形をもたらすが、相対的に小さな調節をもたらすか、実質的に調節をもたらさない(つまり、比較的小さなレンズの光学変化をもたらすか、実質的にレンズの光学変化をもたらさない)。これは、第一の種類又はフェイズの調節と見なされる。しかしながら、偏向素子が前方素子に接触した後では、調節性の応答が増大する(つまりその率が増大する)。これは、第二の種類又は第二のフェイズの調節と見なされる。更に、一つ以上の転移又は中間の調節レベルが、二つの種類の調節の間に存在し得る。つまり、偏向素子が前方素子に接触し始めると生じる転移期間が、第一の種類の調節のより大きな調節をもたらし得るが、第二の種類の調節よりは小さい。デッドゾーンを使用した多数の種類又はフェイズの調節が存在し得るので、上記例は単に例示的なものである。
【0078】
デッドゾーンの長さの調整によって、所定の量の水晶体嚢の力に応答して、IOLの屈折力の率の変化を制御することができる。例えば、
図7のIOL50は、
図11に示されるIOL60のデッドゾーン68よりも小さなデッドゾーン58を有する。IOL50及びIOL60が全く同じサイズ(IOLの他の全ての側面も等しい)の水晶体嚢内に配置されると、水晶体嚢からハプティックに印加される力によって、偏向素子65が前方素子69に接触するのよりも早く、偏向素子55が前方素子59に接触する。これによって、前方素子59が、前方素子69よりも完全に偏向する。従って、非調節の構成から調節された構成へのIOL50の屈折力の変化は、IOL60の屈折力の変化よりも大きい。また、屈折力の変化率も、IOL60よりもIOL50において大きい。
【0079】
代わりに、IOL50及び60のそれぞれにおける非調節状態と調節状態との間の屈折力の差は、実質的に同じであり得る。例えば、IOL60は、前方素子の偏向の遅延が存在するように構成可能であるが、一旦偏向素子が前方素子に接触すると、IOL60に対する屈折力の率の変化は、IOL50における屈折力の率の変化よりも大きくなり、両者の前方素子が同じ量だけ完全に偏向する結果となる。
【0080】
上述のように、水晶体嚢のサイズは、患者毎に異なり得て、更には眼毎に異なり得る。水晶体嚢に対して大き過ぎるIOLが埋め込まれると、その水晶体嚢は、永久的な力をハプティックに印加し得て、これは、アクティブチャネル内の圧力を増大させ、レンズの屈折力を増大させ得る。従って、患者は、永久的な近視寄りを発症し得る。代わりに、IOLが小さ過ぎると、不十分な又は非効率な調節が生じ得る。これを考慮するため、測定された水晶体嚢のサイズに基づいた所望のデッドゾーンを備えたIOLを、水晶体嚢内に埋め込むことができる。例えば、水晶体嚢が測定されて、例えば略9.7mm等の比較的小さな直径を有する場合、水晶体嚢はIOLに近視寄りをもたらし得る力を印加し得る。これを考慮するため、IOLは、
図11に示されるIOL等の比較的大きなデッドゾーンを備えるように選択され得る。より大きなデッドゾーンによって、より大きな力が水晶体嚢からIOLに印加されるが、比較的小さな調節(調節の後続期間と比較して)がもたらされるか、実質的に調節がもたらされない。埋め込みの際には、小さな水晶体嚢は、毛様体筋の収縮がなくても、IOLに力を印加する傾向があるが、デッドゾーンによって、前方素子を接触させずに、アクチュエータを変形させる。これは、直接的な力が、アクチュエータから前方素子に印加されることを防止して、比較的小さな屈折力の変化をもたらすか、実質的に屈折力の変化をもたらさない。従って、近視寄りが防止されるか、少なくとも低減される。また、AIOLは、上述のように毛様体筋の動きに応答して調節を行い得る。
【0081】
代わりに、水晶体嚢が測定されて、例えば略11.3mmの比較的大きな直径を有する場合、IOLの外径は、IOLと水晶体嚢との間の良好なフィットを提供するには十分に大きくないことがあり、その水晶体嚢が、IOLの十分な屈折力の変化を生じさせることなく、毛様体筋の収縮に応答して構成を変化させ得る。これを考慮するため、
図7に示されるIOL50等のより小さなデッドゾーンを備えた(又は存在しない)IOLが選択され得る。比較的大きな水晶体嚢に埋め込まれると、水晶体嚢からIOLに伝えられる力が、より短いデッドゾーンによって、屈折力をより素早く(及びより大きな率で)変化させる。言い換えると、同じ水晶体嚢に配置される場合、水晶体嚢からIOLに印加される力は、より大きなデッドゾーンを備えたIOLよりも前方素子のより効率的な偏向をもたらす。
【0082】
使用時には、略±300マイクロメートル以上の精度で水晶体嚢を測定することが非常に難しく、また、水晶体嚢の直径が略1.5mmほど小さなサイズから大きなサイズへと変化し得るので、水晶体嚢に対してIOLが大き過ぎて、大きくて永久的な近視寄りがもたらされるという危険性が常に存在する。こうした危険性を考慮するために、本願で説明されるデッドゾーンを使用することができる。例えば、10ユニットの収縮力を印加することができる水晶体嚢は、理論的には線形に10ディオプトリの調節を生じさせる。これは理想的なものであり、近視寄りの危険性が常に存在し得る。従って、水晶体嚢の力に対するIOLの応答を非線形にすることがより安全となり得る。例えば、IOLは、最初の4ユニットの力がほとんど又は全く調節を生じさせず、次の6ユニットが完全な10ディオプトリの調節を生じさせるように設計され得る。この例では、IOLは、4ユニットのデッドゾーンを備えるように設計される。IOLが水晶体嚢に対して大き過ぎて、水晶体嚢がIOLに対して永久的な力を与える場合、IOLに対する力が4ユニットを超えるまでは、レンズの屈折力はシフトせず、又は比較的小さくシフトする。デッドゾーンが、IOLと水晶体嚢との間のサイズ不整合に起因する永久的な力を考慮するのに十分大きいことを保証することによって、近視寄りを防止又は少なくとも最小化することができる。
【0083】
代わりに、水晶体嚢が、10ユニットの寸法の変化(10ユニットの力とは対照的に)を提供するとして、理論的には10ディオプトリの調節を生じさせることができる。上記例と同様に、4ユニットの寸法の変化は、サイズ不整合及び/又は水晶体嚢の収縮を考慮することができる。この例では、水晶体嚢によって印加される力は、その寸法ほどは問題とならない。
【0084】
また、上述のような非線形な屈折力シフト応答を備えたレンズを選択することによって、レンズの埋め込み後に生じ得る水晶体嚢の収縮に適合することもできる。水晶体嚢は、IOL付近での収縮によって頻繁に自然に応答していて、上述のようなレンズに対する永久的な力を発生している。収縮時には、水晶体嚢の再成形が、IOLの屈折力の変化を生じさせて、眼の永久的な近視寄りをもたらし得る(毛様体筋が収縮していなくても)。レンズにデッドゾーンを組み込んで、水晶体嚢の力に応答して比較的小さな調節を提供するか実質的に調節を提供しないことによって、永久的な近視寄りを最小化又は防止しながら、水晶体嚢が、この自然な治癒プロセスを経るようにする。
【0085】
一部実施形態では、各レンズが異なるデッドゾーンの長さを有する複数のレンズのキットを使用する。水晶体嚢を初めに測定して、その測定に基づいて、特定のレンズを選択する。デッドゾーンを変化させることの追加的な利点の一つは、レンズの外寸を調節する必要がない点である。しかしながら、代わりに、キットは各種外寸(例えば外径)を備えた複数のレンズを含み得て、所定の外寸に対して、キットは、各種デッドゾーンを備えた複数のレンズを含み得る。これによって、最も適切なサイズのIOLを選択する更なる選択肢が提供可能である。
【0086】
一部実施形態では、水晶体嚢のサイズが所定の低閾値以下であると測定されると、第一のデッドゾーンを備えたIOLを使用することができ、水晶体嚢のサイズが所定の高閾値以上であると測定されると、デッドゾーンを備えないIOL(又は第一のデッドゾーンよりも小さな第二のデッドゾーンを備えたIOL)を使用することができる。IOLが水晶体嚢に対して大き過ぎるという危険性がほとんど又は全くない場合には、デッドゾーンを備えないIOLを使用することが望ましくなり得る。
【0087】
本願で説明される例示的なIOLのデッドゾーンの長さを変更する方法は多数存在する。デッドゾーンを調整する方法の一つは、偏向素子の(レンズの光路に沿った)軸長(axial length)を調整することである。例えば、
図7の実施形態の偏向素子58は、
図11の実施形態の偏向素子65の軸長“AL”よりも長い軸長“AL”を有する。一部実施形態では、デッドゾーンの軸長は略0マイクロメートルから400マイクロメートルの間である。偏向素子は、特定の軸長を有するように型の中で硬化させたポリマーであり得て、代わりに、偏向素子は、硬化後により短い軸長へと機械加工され得る。
【0088】
デッドゾーンを変更する代替方法は、パッシブチャンバ内の変位可能媒体の体積を調整することである。パッシブチャンバ内の変位可能媒体の体積を増大させることは、デッドゾーンを増大させる。これが生じる理由は、パッシブな変位可能媒体の量を増大させることは、アクチュエータに対する後ろ向きの力及び/又は前方素子に対する前向きの力を増大させることによって、アクチュエータと前方素子との間の距離を増大させるからである。同様に、パッシブな変位可能媒体の体積を減少させることは、デッドゾーンを減少させる。
【0089】
同様に、アクティブチャネル内の流体の体積を調整して、デッドゾーンを調整することができる。
【0090】
また、デッドゾーンは、前方素子の厚さ(つまり軸長)を変更することによっても調整可能である。前方素子の軸長を減少させることは、デッドゾーンを増大させる一方、前方素子の軸長を増大させることは、デッドゾーンを減少させる。また、デッドゾーンは、本願で説明されるIOL素子のいずれかを変更することによっても調整可能である。
【0091】
上述の実施形態では、IOLの光学部分の一部が、水晶体嚢の力に応答した構成の変化を経る。後述のように、デッドゾーンの代わりの(又は追加の)特徴をIOLに組み入れて、非線形応答の第一の部分中に変形する又は構成を変化させる機能を備えたシステムを提供すること又はその提供を補助することができる。
【0092】
図12は、水晶体嚢のサイズの可変性及び/又は埋め込み後の眼又は眼内レンズの変化を考慮し、毛様体筋の動きに応答して調節を行う眼内レンズの変形例を示す。眼内レンズ100は、前方素子102と、中間素子104と、後方素子106とを含む光学部分を含む。前方素子102及び中間素子104はパッシブチャンバ110を画定し、中間素子104及び後方素子106はアクティブチャネル108を画定する。ハプティック112は、アクティブチャンバ116及びパッシブチャンバ114を含む。パッシブチャンバ110は、第一の変位可能媒体(液体等)を収容し、パッシブチャンバ114と流体的に連結していて、アクティブチャネル108及びアクティブチャンバ116が流体的に連結していて、第二の変位可能媒体を収容する。
図12では、中間層が前方素子102と接触しているものとして示されているが、レンズは、前方素子102と中間素子との間にギャップを有するようにも製造可能である(上述の例のように)。
【0093】
眼内レンズ100が水晶体嚢124内に配置された後で(
図13を参照)、水晶体嚢は、治癒反応を経て、埋め込まれた眼内レンズ周辺で収縮して、
図13に示される矢印の方向で眼内レンズに対して力を印加し得る。代わりに又は追加的に、水晶体嚢は、水晶体嚢のサイズの決定から求められたものよりも小さなものであり得る(つまり、眼内レンズと水晶体嚢との間にサイズの不整合が存在する)。サイズの不整合に基づいて、水晶体嚢は、眼内レンズに対して同様の力を印加し得る。水晶体嚢が
図13に示されるように眼内レンズに対して力を印加すると、アクティブチャンバ116/アクティブチャネル108とパッシブチャンバ114/パッシブチャンバ110との間の連結は、アクティブチャネル108及びパッシブチャンバ110内の圧力を実質的に等しく保つ(又は圧力間の差を少なくとも最小化する)。アクティブチャネル108内の圧力がパッシブチャンバ110内の圧力に対して相対的に増大する際に眼内レンズの屈折力が一般的には増大するので、圧力を実質的に同じに保つことによって、屈折力の変化を生じさせずに(又は屈折力の変化を少なくとも最小化させて)、眼内レンズが、水晶体嚢の収縮及び/又は患者の水晶体嚢と眼内レンズとの間のサイズの不整合を考慮することができる。つまり、水晶体嚢の収縮及び/又はサイズの不整合による水晶体嚢の力が生じた際に、レンズが非調節の構成を実質的に保つ。
【0094】
また、眼内レンズ100は、毛様体筋が動いている間に生じる調節も可能にする。小帯は水晶体嚢から略半径方向に延伸し(
図2A及び
図2Bを参照)、毛様体筋の緩和中の水晶体嚢に対する小帯の力が
図14に概略的に示されている。毛様体筋の収縮中に、小帯の張力は減少する。小帯の半径方向の伸長によって、水晶体嚢が半径方向にハプティックを圧縮することができて、パッシブチャンバ112/110内(半径方向の圧縮によって比較的影響されない)よりもアクティブチャネル116/108内においてより大きな圧力変化を生じさせる。パッシブチャンバ110に対する相対的なアクティブチャネルの圧力の増大によって、上述のように中間素子104が変形させられる。中間体104の構成の変化が、前方素子102の曲率を変化させることによって、レンズの屈折力を変化させる。眼内レンズ100は、毛様体筋の動きに関連する半径方向の小帯の動きを、埋め込み後の水晶体嚢のサイズの不整合又は水晶体嚢の収縮に関連する他の水晶体嚢の力から分離する一つの例示的な方法を示す。
【0095】
図15及び
図16は、全ての(又は実質的に全ての)異なるサイズの水晶体嚢にフィットし、且つ、毛様体筋の動きによって生じるのではない水晶体嚢の力を考慮すると考えられる一つのサイズのレンズであると考えられる眼内レンズの一変形例を示す。この実施形態及び同様の実施形態では、ハプティックは、半径方向に水晶体嚢を伸ばすように設計されている。
図15は、水晶体嚢130に埋め込まれる眼内レンズの相対的なサイズを示し、
図16は、水晶体嚢130内に埋め込まれて、ハプティックのサイズを調節するようにその水晶体嚢130を伸ばしている眼内レンズを示す。この実施形態では、ハプティック132は、水晶体嚢よりも硬い領域136を有する。この実施形態では、各ハプティック132は、水晶体嚢よりも硬い前方及び後方領域136を有する。また、各ハプティックは、領域136よりも硬くなく一部実施形態では水晶体嚢と略同じ硬さの赤道領域138も含む。
【0096】
水晶体嚢よりも硬いハプティックの部分は、全ての(又は実質的に全ての)水晶体嚢を、そのサイズに関わりなく伸ばすように構成される。従って、レンズが埋め込まれると全ての水晶体嚢が伸ばされるので、眼内レンズは、患者の水晶体嚢のサイズに対して比較的独立したものになる。しかしながら、領域136よりも硬くない赤道領域138によって、水晶体嚢に対する小帯の力が変化している際の毛様体筋の運動中において、レンズの屈折力を調節することができる。小帯は軽量のバネなので、眼内レンズが水晶体よりも大きい又は小さい場合であっても、毛様体筋が眼内レンズ内の圧力変化を生じさせることができる。この実施形態は、水晶体嚢のサイズには本質的に敏感ではないが、毛様体筋の動きには感度が高い眼内レンズを提供する。
【0097】
一部実施形態では、ハプティックは、小帯に接触しない領域において硬質であり、小帯に接触する領域において柔軟である。
図17は、ハプティック140が水晶体嚢と比較して硬質である第一の領域144を含む眼内レンズの一変形例を示す。第一の領域144の硬さは、例えば、壁の厚さ、壁の幾何学的形状、物質の選択等によって制御可能であるが、これらに限定されるものではない。第一の領域144は、小帯に接触しない領域内(又は実質的に小帯に接触しない領域内)に配置されるようにして、水晶体嚢内部に置かれる。ハプティック140の第二の領域146は第一の領域144よりも弾力的であり、
図17において、第二の領域146は、第一の領域144の厚さ以下の厚さを有することによってより弾力的にされている。第二の領域144は小帯に接触する領域内に存在するので、毛様体筋の運動中の小帯の張力に応答するようにより弾力的にされる。弾力性は、例えば壁の厚さ、壁の幾何学的形状、物質の選択等によって調整可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
図18は、ハプティックが水晶体嚢よりも硬い硬質な固体リング150と、水晶体嚢よりも硬い第一の領域152と、第一の領域152よりも硬くない第二の領域154とを含む一変形例である。第二の領域154は、水晶体嚢内部の小帯と接触する領域内に大体配置されて、リング150及び第一の領域152は、小帯に接触しない領域内に大体配置される。硬質な固体リング150は、領域152及び154によって画定される流体で充填されたハプティックからは完全に別のものであり得る。硬質な固体リングは、例えば、PMMA、チタン、ニッケルチタン等の別の物質製でありえるが、これらの限定されるものではない。
【0099】
図19は、ハプティック160が水晶体嚢166内部の小帯に接触しない領域内に配置された第一の領域164と、小帯に接触する領域内に配置された第二の領域162とを含む代替例を示す。この実施形態では、第二の領域162は、第一の領域164よりも小さな壁の厚さを有する。ハプティックのこれら領域の硬質性は、本願で説明される方法及び他の方法で制御可能である。
【0100】
半径方向の柔軟性を維持しながら(上述の実施形態のように)光軸に沿って水晶体嚢を伸ばすために使用することができる他の例示的な特徴として、例えばI型梁、輪の力を利用するリング等が挙げられる。
【0101】
図20〜
図22は、眼内インプラントが水晶体嚢伸長フレーム170を含む一変形例を示す。フレーム170は、環状素子172及び支持部材174を含む。環状素子は水晶体嚢よりも硬質であり、例えば、PMMAやニチノール製であり得るが、これらに限定されるものではない。支持部材174(二つ図示されているが、一つ又はそれ以上が使用可能である)は、環状素子172を互いに離れた固定距離に維持する。また、支持部材174は比較的硬質であり、環状素子172と同じ又は異なる物質製であり得る。フレーム170は、折り畳み可能であり、眼の切り口からデリバリーデバイスによって挿入可能である。必要であれば、その幾何学的形状を挿入を簡単にするために調整し得る。例えば、環状素子172を分割して、挿入用の細長のデリバリー用構成とすることができる。
【0102】
フレーム170が、水晶体嚢内に最初に配置される。フレーム170は、単一サイズのフレームが全ての種類の水晶体嚢を伸ばすようなサイズにされ得る。例えば、フレームは、略9mmから略10.5mmの水晶体嚢の全ての患者がそのフレーム上に伸びるようなサイズにされ得る。フレームが水晶体嚢に対して相対的に硬いので、フレーム/水晶体嚢のシステムの幾何学的形状は、フレームの幾何学的形状によって支配されて決定される。水晶体嚢に挿入された単一サイズのフレームを有する全ての患者は、フレームの挿入前の略9mmから略10.5mmのサイズではなくて、本質的にフレームのサイズである水晶体嚢を有する。
図21は、二つの異なる水晶体嚢176及び178に対する環状素子172を備えた単一サイズのフレームを示す。水晶体嚢176は水晶体嚢178よりも大きい。
図22は、フレームが水晶体嚢内部に配置された後の水晶体嚢176及び178両方のサイズを示す。ここでは、両方の水晶体嚢が、実質的に同じサイズ及び構成を有する。
【0103】
水晶体嚢が水晶体嚢伸長フレーム170によって伸ばされた後に、
図23に示されるように眼内レンズ180を水晶体嚢内部に配置する。レンズ/水晶体嚢の界面(
図23では水晶体嚢/ハプティックの界面)は、支持部材174に係合しないように配置可能である。水晶体嚢が水晶体嚢のサイズの範囲の上端にある場合であっても、バネのように機能する小帯は、張力のかかったままである。
【0104】
図25は、眼が非調節となろうとする際に、水晶体嚢伸長フレーム170(環状素子172が示されている)の直径よりも大きな直径に水晶体嚢を引っ張っている小帯190を示す。
図24に示されるように、目が調節を行おうとすると(又は埋め込み後に水晶体嚢が収縮すると)、水晶体嚢伸長フレームは、ハプティック及びレンズが潰れたり、フレームによって決定される直径を超えて動作することを防止する。従って、水晶体嚢伸長フレームは、内部ハプティック止めとして機能することができて、レンズ又は他の水晶体嚢間デバイスに対して作用する水晶体嚢の赤道の機能を顕著に変化させずに、レンズ上への水晶体嚢の内側への動きを制限する性質を有する。
【0105】
図26A〜
図26Cはそれぞれ、三つの異なる水晶体嚢の断面図の上に置かれたAIOLの代替実施形態の断面図を示す。
図26A〜
図26Cは、水晶体嚢及びAIOLの断面の相対的なサイズを示す。これらの図面において、前方方向“A”は紙面の左側に大体向かい(角膜に向かう)、後方方向“P”は紙面の右側に大体向かう(網膜に向かう)。眼内レンズは、ハプティック202を含む周辺部分、及び後方素子204と中間素子206と前方素子208とを備えた光学部分を含む。眼内レンズは、
図3〜
図6に示される実施形態において説明したように、毛様体筋の動きに応答して調節を行う。
【0106】
ハプティック202は、そのハプティックが配置される水晶体嚢の周辺部分よりも大きくなるような形状及びサイズにされる。具体的には、この実施形態において、ハプティックの前方部分は、水晶体嚢よりも更に前方方向に延伸し、ハプティックの後方部分は、水晶体嚢よりも更に後方方向に延伸している。
図3〜
図6の実施形態に関して上述したように、フレキシブル材料を備えたハプティック202は、アクティブチャネル210と流体的に連結している内部チャンバを画定する。ハプティック202及びアクティブチャネル210内に配置された流動性媒体(流体等)は、フレキシブルなハプティックと水晶体嚢との間の相互作用に起因する水晶体嚢の再成形に応答して、変位する。ハプティック及び水晶体嚢の相対的なサイズに起因して、
図26A〜
図26Cに示される眼内レンズが、
図26A〜
図26Cに示されるいずれかの水晶体嚢に埋め込まれると、水晶体嚢の周辺部分はハプティックを受け入れるように再構成されるので、水晶体嚢は、その水晶体嚢がハプティックに係合する領域において、ハプティック202に力を印加する。追加の力が、埋め込み後の水晶体嚢の変化(例えば、水晶体嚢の収縮)に起因して、ハプティックスに更に印加され得る。
【0107】
ハプティック202と水晶体嚢200との間のサイズの不整合、及び埋め込み後の水晶体嚢に対する変化の両方に起因して力がハプティックに印加される際に、ハプティックと水晶体嚢との間の係合、並びにハプティック202及び水晶体嚢200のサイズ及び形状は、ハプティックとアクティブチャネルとの間の正味の流体の変位を実質的に提供しない。力がハプティックに印加されるが、その力は実質的にキャンセルされて、正味の流体の変位は実質的にもたらされない。正味の流体の動きを実質的に提供しないことは、アクティブチャネル210内に圧力増加を実質的にもたらさない。従って、
図3〜
図6に関して上述したように、前方素子208は、曲率の変化を実質的に受けないので、屈折力の変化が実質的に生じない。従って、ハプティックのサイズ及び形状は、眼内レンズの屈折力変化を最小化して、近視寄りを最小化する。それでも、眼内レンズは、
図3〜
図6に関して上述したように、毛様体筋の動きに応答して調節性の眼内レンズとして機能する。
【0108】
図26A〜
図26Cに示される実施形態では、ハプティックの上位及び下位部分(つまり図面の頂部及び底部)に与えられる力は、ハプティックの体積を増大させる傾向にあり、流体をハプティックに向けて変位させるので、レンズの屈折力を減少させる傾向にある。しかしながら、ハプティックの前方及び後方部分に対して与えられる力は、ハプティックの体積を減少させる傾向にあり、流体を光学系に向けて変位させて、レンズの屈折力を増大させる傾向にある。ハプティックは、ハプティックの頂部及び底部に印加される力が、ハプティックの側部に印加される力と実質的に等しくなるように、設計される。結果として、ハプティックの体積には実質的な変化が無いので、流体の動きが実質的に無い。この実施形態では、ハプティックは、水晶体嚢によってハプティックに対して印加される力が、ハプティックの体積の変化を実質的に生じさせず、眼内レンズの屈折力が変化することを実質的に防止するように、設計される。また、その原理は、水晶体嚢の力に応答して変形する周辺領域を有する非流体駆動の調節式眼内レンズにも応用可能である。レンズの屈折力が、埋め込み後の水晶体嚢のサイズの変化の不整合に応答して変化するように構成される方法に応じて、レンズの変形可能な周辺領域を、周辺領域に対して印加される正味の力が屈折力の変化を実質的にもたらさないように、構成することができる。
【0109】
ハプティック202は、
図26A〜
図26Cに示されるように略長円又は楕円形の断面を有する。一部実施形態では、ハプティックの前方から後方までの厚さは略3.2mmであり、ハプティックの幅は略1.2mmであり、ハプティックの壁の厚さは略0.2mmである。挙げられた寸法は限定的なものではない。一部実施形態では、水晶体嚢によって圧縮されているがまだ流体を動かしてはいない際の(つまり非調節の構成の)眼内レンズの直径は略9.1mmである。
【0110】
図26Aでは、水晶体嚢200は、9.80mmの直径“D”、4.25mmの厚さ“T”、10mmの前方の曲率半径“R
A”、及び5.53mmの後方の曲率半径“R
P”を有する。
図26Bでは、水晶体嚢は、9.8mmの直径、4.25mmの厚さ、7.86mmの前方の曲率半径、及び6mmの後方の曲率半径を有する。
図26Cでは、水晶体嚢は、10.21mmの直径、4.25mmの厚さ、10mmの前方の曲率半径、及び6mmの後方の曲率半径を有する。
【0111】
代替実施形態では、上述のデッドゾーンが、
図26A〜
図26Cに示されるAIOL内に組み込まれる。ハプティック202が、水晶体嚢の再成形に起因する屈折力のシフトを実質的に提供しない場合(毛様体筋の動きに起因する水晶体嚢の再成形を除く)であっても、水晶体嚢/ハプティックのサイズの不整合及び/又は埋め込み後の水晶体嚢の変化に応答して偏向素子に向かう流体の量が最小の場合には、デッドゾーンを組み込むことができる。デッドゾーンを、屈折力のシフトが実質的に無くなることに対する追加的な保証のために組み込むことができる。代わりに又は追加的に、デッドゾーンを
図26A〜
図26Cに示されるレンズに組み込んで、上記で詳述したように、二フェイズの屈折力の変化を提供することができる。
【0112】
デッドゾーン、又は水晶体嚢の収縮若しくは水晶体嚢のサイズの可変性を考慮する他の特徴を含むように修正可能な代替例のAIOLは、米国特許第7122053号明細書、米国特許第7261737号明細書、米国特許第7247168号明細書、米国特許第7217288号明細書、米国特許第6935743号明細書、米国特許出願公開第2007/0203578号明細書、米国特許出願公開第2007/0106377号明細書、米国特許出願公開第2005/0149183号明細書、米国特許出願公開第2007/0088433号明細書、2008年7月22日出願の米国特許出願第12/177857号に見出すことができ、これら全ては参照として本願に組み込まれる。
【0113】
一部実施形態では、IOLの多様な構成要素(前方素子、中間層、後方素子等)が、一つ又は複数の適切なポリマー組成物製であり得る。一部実施形態では、光学構成要素が、実質的に同じポリマー材料製であり得る。IOLの構成要素に使用可能な例示的なポリマー組成物として、共同所有の同時係属中の2008年2月21日出願の米国特許出願第12/034942号及び2008年7月22日出願の米国特許出願第12/177720号に記載されているものが挙げられる。本願における“流動性媒体”には、シリコーンオイルが含まれるが、これに限定されるものではない。光学部分の全ての構成要素(アクティブな流動性媒体及びパッシブな流動性媒体を含む)は、実質的に屈折率整合されて、前方素子の前面及び後方素子の後面によって形成される略単一のレンズ素子を提供することができる。本願において“実質的に屈折率整合”とは、その構成要素が同じ屈折率を有することを意図されたIOL、及びその構成要素が実質的に等しい屈折率を有するIOLのことを指称する。しかしながら、構成要素の一部は、異なる屈折率を有し得て、IOL内部に追加的な界面を形成する。
【0114】
可能な限り材料の屈折率を近く整合させることが望まれる場合、二以上のシリコーンオイルをブレンドして、その二以上のシリコーンオイル個々のよりも、ポリマーの屈折率に近いブレンドされた屈折率を有する流動性媒体を形成することができる。この屈折率整合方法は、市販のシリコーンオイルが、IOLの構成要素用に使用されるポリマー組成物の屈折率に近いことは近いが、要望通りには近くない屈折率を有する場合に有用となり得る。一部実施形態では、ポリマーは所定の屈折率を有するように選択される。そして、二以上の流体を所望のパーセンテージでブレンドして、その流体が、ポリマーの屈折率に可能な限り近く整合した屈折率を有するようにする。
【0115】
IOL内の流体(例えばシリコーンオイル)とポリマーとの間の屈折率整合を増強する更なる方法は、ポリマーが流体を(ある程度)吸収するようにポリマー及び流体を選択することである。一定量の流体を吸収することによって、結果としてのポリマーの屈折率が流体の屈折率に近づくので、流体とポリマーとの間の屈折率不整合が減少する。ポリマーがある程度のシリコーンオイルを吸収した後で、そのポリマーは、本質的にポリマー‐流体混合物となり、ポリマーの屈折率と流体の屈折率との間の屈折率を有する。
【0116】
本開示は、多様な水晶体嚢のサイズ及び/又は埋め込み後に生じる変化を考慮するレンズの設計及び選択を強調したものであったが、追加的な埋め込み後の修正を本願で説明されるレンズで用いることができる。例えば、以下の特許出願に開示される埋め込み後の修正方法又はレンズの特徴を用いて、埋め込み後のレンズの調整することができる:2003年2月2日出願の米国特許出願第10/358038号、2004年10月7日出願の米国特許出願第10/890576号、2006年8月21日出願の米国特許出願第11/507946号、2008年7月23日出願の米国特許出願第12/178304号、2003年2月6日出願の米国特許出願第10/360091号、2003年8月12日出願の米国特許出願第10/639894号、2005年11月21日出願の米国特許出願第11/284068号、2002年8月12日出願の米国仮出願第60/402746号、2002年8月23日出願の米国仮出願第60/405471号、米国仮出願第60/487541号、2002年8月29日出願の米国特許出願第10/231433号、これら全ては参照として本願に組み込まれる。本願で説明される適切なサイズのIOLを選択することができるだけではなくて、埋め込み後にレンズを修正することができることが有利であり得る。本願で説明されるいずれかのレンズに対する埋め込み後の調整を用いて、例えば、埋め込み後のレンズの設定点を調整することができる。
【0117】
本願の開示は、水晶体嚢のサイズの可変性、及び眼内に生じる若しくはレンズに対して生じる変化を考慮するために使用可能な流体充填AIOLの特定の構造の特徴を強調したものであるが、本開示はそれに限定されるものではない。代替的なAIOL(流体駆動、非流体駆動を含む)が、水晶体嚢の力、各種屈折力の率の変化等に対する非線形応答を有するように同様に構成及び配置可能である。本願で説明されるように、あらゆるAIOLに対して、埋め込み後に、レンズの屈折力を変化させることなく(またはほとんど変化させずに)、水晶体嚢の収縮に応答して変形できることが非常に有利となり得る。
【0118】
埋め込み後に眼内で生じる変化を考慮するように修正可能な代替例のAIOLは、米国特許第7452378号明細書、米国特許第7452362号明細書、米国特許第7238201号明細書、米国特許第7226478号明細書、米国特許第7198640号明細書、米国特許第7118596号明細書、米国特許第7087080号明細書、米国特許第7041134号明細書、米国特許第6899732号明細書、米国特許第6884261号明細書、米国特許第6858040号明細書、米国特許第6846326号明細書、米国特許第6818158号明細書、米国特許第6786934号明細書、米国特許第6764511号明細書、米国特許第6761737号明細書、米国特許出願公開第2008/0269887号明細書、米国特許第7220279号明細書、米国特許出願公開第2008/0300680号明細書、米国特許出願公開第2008/0004699号明細書、米国特許出願公開第2007/0244561号明細書、米国特許出願公開第2006/0069433号明細書に開示されていて、これら全ては参照として本願に組み込まれる。
【0119】
本願において本発明の好ましい実施形態について示して説明してきたが、このような実施形態が単に例示目的で提供されていることは当業者に明らかである。多数のバリエーション、変化、置換が、本発明から逸脱することなく当業者には思い付くものである。本願で説明される本発明の実施形態に対する多様な代替例を、本発明を実施するのに採用可能である。添付の特許請求の範囲が、本発明の範囲を定めるものであり、特許請求の範囲内の方法及び構造及びそれらの等価物がカバーされるものである。