(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706385
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】液晶化合物および液晶媒体
(51)【国際特許分類】
C07C 43/225 20060101AFI20150402BHJP
C09K 19/32 20060101ALI20150402BHJP
C09K 19/42 20060101ALI20150402BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20150402BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20150402BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
C07C43/225 C
C09K19/32
C09K19/42
C09K19/30
C09K19/12
G02F1/13 500
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-220785(P2012-220785)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2013-112682(P2013-112682A)
(43)【公開日】2013年6月10日
【審査請求日】2012年10月2日
(31)【優先権主張番号】201110381815.5
(32)【優先日】2011年11月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508054404
【氏名又は名称】達興材料股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】512256317
【氏名又は名称】江蘇和成顯示科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Jiangsu Hecheng Display Technology Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】王 俊智
(72)【発明者】
【氏名】謝 玉▲英▼
(72)【発明者】
【氏名】游 石枝
(72)【発明者】
【氏名】張 宏偉
(72)【発明者】
【氏名】譚 玉東
【審査官】
松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−089421(JP,A)
【文献】
特開平07−072442(JP,A)
【文献】
特開平05−262678(JP,A)
【文献】
特開昭56−079647(JP,A)
【文献】
特開2008−189927(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第04409526(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09K
G02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表され、
【化1】
式中、R1が、H、炭素原子が1〜10個のアルキル基、または炭素原子が2〜10個のアルケニル基を示し、アルキル基またはアルケニル基上の各-(CH
2)-が、置換されていないか、あるいは、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-により置換され、アルキル基またはアルケニル基上の水素原子が、フッ素原子で置換されてもよく、
A
1、A
2、A
3およびA
4が、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、および2,5-テトラヒドロピラニレンから成る群を示し、A
1、A
2、A
3およびA
4のうち少なくとも1つが、インダン-2,5-ジイル
で、少なくとも1つが、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり、且つ1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイルが、置換されていないか、あるいは、1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイル上の少なくとも1つの水素原子が、フッ素原子により置換されてもよく、
m、n、oおよびpが、それぞれ0、1または2であり、且つm、n、oおよびpが、同時に0ではなく、
Z
1、Z
2およびZ
3が、それぞれ独立して、単結合、ビニレン、-COO-、-OCO-、-CF
2O-または-OCF
2-を示し、ビニレン上の水素原子が、フッ素原子により置換されてもよく、
式(1)中の末端基-O-CH=CF
2がインダン-2,5-ジイルと接しない液晶化合物。
【請求項2】
m≠0の時、A1が、インダン-2,5-ジイルである請求項1に記載の液晶化合物。
【請求項3】
Z1が、インダン-2,5-ジイルの5位において接する請求項2に記載の液晶化合物。
【請求項4】
m=1、A1がインダン-2,5-ジイルであり、A2、A3およびA4の少なくとも1つが2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンである請求項1に記載の液晶化合物。
【請求項5】
前記1,4-フェニレン上の少なくとも1つの水素原子が、フッ素原子により置換される請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶化合物。
【請求項6】
式(1)が、下記の式(I-A)〜式(I-E)で表される化合物から成る群より選ばれた少なくとも1つである請求項1に記載の液晶化合物。
【化2】
【請求項7】
式(1)で表され、
【化3】
式中、R1が、H、炭素原子が1〜10個のアルキル基、または炭素原子が2〜10個のアルケニル基を示し、アルキル基またはアルケニル基上の各-(CH
2)-が、置換されていないか、あるいは、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-により置換され、
A
1、A
2、A
3およびA
4が、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、および2,5-テトラヒドロピラニレンから成る群を示し、A
1、A
2、A
3およびA
4のうち少なくとも1つが、インダン-2,5-ジイル
で、少なくとも1つが、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり、且つ1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイルが、置換されていないか、あるいは、1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイル上の少なくとも1つの水素原子が、フッ素原子により置換されてもよく、
m、n、oおよびpが、それぞれ0、1または2であり、且つm、n、oおよびpが、同時に0ではなく、
Z
1、Z
2およびZ
3が、それぞれ独立して、単結合、ビニレン、-COO-、-OCO-、-CF
2O-または-OCF
2-を示し、ビニレン上の水素原子が、フッ素原子により置換されてもよく、式(1)中の末端基-O-CH=CF
2がインダン-2,5-ジイルと接しない液晶化合物と、
少なくとも1種類の式(1)で表される液晶化合物と区別されるものを含む混合物と
を含む液晶媒体。
【請求項8】
前記混合物が、下記の式(I)〜式(VII)で表される化合物から成る群より選ばれた少なくとも1つの液晶化合物を含み、
【化4】
式中、X
1、X
21、X
22、X
23が、それぞれ独立して、F、Cl、-CF
3または-OCF
3であり、R、R11、R12およびR21が、それぞれ独立して、H、炭素原子が1〜15個のアルキル基、または炭素原子が2〜15個のアルケニル基を示し、A1が、1,4-フェニレンであり、A
11、A
12、A
13、A
14、A
21、A
22、A
23が、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、および2,5-テトラヒドロピラニレンから成る群より選ばれたものであり、A2、A3およびA4のうち少なくとも1つが、インダン-2,5-ジイルであり、その他が、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、および2,5-テトラヒドロピラニレンから成る群より選ばれたものであり、L
1が、-F
2CO-または-OCF
2-であり、Z
11、Z
12、Z
13、Z
21およびZ
22が、それぞれ独立して、単結合、-O-、-F
2CO-、-OCF
2-、-COO-または-OCO-であり、上記の式(I)中、m=1、n、oおよびpが、それぞれ独立して0〜3の整数であり、且つn+o+p≧3である請求項
7に記載の液晶媒体。
【請求項9】
式(1)で表される液晶化合物の前記液晶媒体中の比率が、1〜20%である請求項7に記載の液晶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶化合物および液晶媒体に関するものであり、特に、比較的低い粘度を有する液晶化合物および液晶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(liquid crystal display)は、液晶光電変化を利用したディスプレイであり、小型、軽量、低消費電力、高品質表示等の魅力的な利点を有するため、近年、フラットディスプレイの主流となっている。技術の進歩にともない、業界においても常に様々な方法を利用して、ユーザーの要求に応じた高色飽和度の液晶ディスプレイの開発が進められている。
【0003】
液晶ディスプレイ中の液晶材料については、熱安定性、優れた誘電特性および比較的低い粘度を有する液晶化合物および液晶媒体が現在の要求に符合する。特に、液晶材料が熱安定性を有する時、液晶ディスプレイにより優れた表示効果を持たせることができる。同時に、優れた誘電特性を有する液晶材料は、液晶ディスプレイの駆動電圧をより低くすることができるため、省エネの目的を達成することができる。また、比較的低い粘度を有する液晶材料は、液晶ディスプレイの反応速度を上げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱安定性、優れた誘電特性および比較的低い粘度を有する液晶化合物および液晶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(1)で表される液晶化合物を提供する。
【0006】
【化1】
【0007】
式中、R1は、H、または炭素原子が1〜10個のアルキル基、または炭素原子が2〜10個のアルケニル基を示し、アルキル基またはアルケニル基上の各-(CH
2)-は、置換されていないか、あるいは、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-により置換され、アルキル基またはアルケニル基上の水素原子は、フッ素原子で置換されてもよい。A
1、A
2、A
3およびA
4は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、および2,5-テトラヒドロピラニレンから成る群を示す。A
1、A
2、A
3およびA
4のうち少なくとも1つは、インダン-2,5-ジイルであり、且つ1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイルは、置換されていないか、あるいは、1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイル上の少なくとも1つの水素原子は、フッ素原子により置換されてもよい。m、n、oおよびpは、それぞれ0、1または2であり、且つm、n、oおよびpは、同時に0ではない。Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立して、単結合、ビニレン、-COO-、-OCO-、-CF
2O-または-OCF
2-を示し、ビニレン上の水素原子は、フッ素原子により置換されてもよい。
【0008】
本発明は、また、式(1)で表される液晶化合物および混合物を含む液晶媒体を提供する。
【0009】
【化2】
【0010】
式中、R1は、H、または炭素原子が1〜10個のアルキル基、または炭素原子が2〜10個のアルケニル基を示し、アルキル基またはアルケニル基上の各-(CH
2)-は、置換されていないか、あるいは、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-により置換される。A
1、A
2、A
3およびA
4は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、および2,5-テトラヒドロピラニレンから成る群を示す。A
1、A
2、A
3およびA
4のうち少なくとも1つは、インダン-2,5-ジイルであり、且つ1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイルは、置換されていないか、あるいは、1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイル上の少なくとも1つの水素原子は、フッ素原子により置換されてもよい。m、n、oおよびpは、それぞれ0または1または2であり、且つm、n、oおよびpは、同時に0ではない。Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立して、単結合、ビニレン、-COO-、-OCO-、-CF
2O-または-OCF
2-を示し、ビニレン上の水素原子は、フッ素原子により置換されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の液晶化合物は、熱安定性および優れた誘電特性を有するため、この液晶化合物を含む液晶媒体を使用したディスプレイは、より優れた表示効果と比較的低い駆動電圧を有することができる。また、本発明の液晶化合物は、比較的低い粘度を有するため、この液晶化合物を含む液晶媒体を使用したディスプレイは、より速い反応速度を有することができる。
【0012】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、以下に幾つかの実施形態を挙げて詳細を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本文中、単一官能基の表示範囲は、置換されていない官能基と、置換された(substituted)官能基とを含み、単一基の表示範囲は、置換されていない基と、置換された基とを含む。例えば、1,4-フェニレンは、置換されていない1,4-フェニレンと、置換された1,4-フェニレンとを含む。その他の単一官能基または単一基についても、全てこのように表示されるが、本分野の技術者にとって周知であるため、ここでは繰り返し説明しない。
液晶化合物および液晶媒体
【0014】
本発明は、式(1)で表される液晶化合物を提供する。
【0016】
式中、R1は、H、炭素原子が1〜10個のアルキル基、または炭素原子が2〜10個のアルケニル基を示し、アルキル基またはアルケニル基上の各-(CH
2)-は、置換されていないか、あるいは、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-により置換され、アルキル基またはアルケニル基上の水素原子は、フッ素原子で置換されてもよい。
【0017】
A
1、A
2、A
3およびA
4は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、および2,5-テトラヒドロピラニレンから成る群を示す。A
1、A
2、A
3およびA
4のうち少なくとも1つは、インダン-2,5-ジイルであり、且つ1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイルは、置換されていないか、あるいは、1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイル上の少なくとも1つの水素原子は、フッ素原子により置換されてもよい。
【0018】
m、n、oおよびpは、それぞれ0または1または2であり、且つm、n、oおよびpは、同時に0ではない。
【0019】
Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立して、単結合、ビニレン、-COO-、-OCO-、-CF
2O-または-OCF
2-を示し、ビニレン上の水素原子は、フッ素原子により置換されてもよい。
【0020】
ある実施形態中、m≠0の時、A
1は、インダン-2,5-ジイルである。
【0021】
ある実施形態中、Z
1は、インダン-2,5-ジイルの5位において接する。
【0022】
ある実施形態中、m=1、A
1は、インダン-2,5-ジイルであり、A
2、A
3およびA
4は、1,4-フェニレンである。
【0023】
ある実施形態中、1,4-フェニレン上の少なくとも1つの水素原子は、フッ素原子により置換される。
【0024】
ある実施形態中、式(1)は、例えば、下記の式(I-A)〜式(I-E)で表され化合物である。
【0026】
本発明の液晶化合物は、インダン構造を有するため、良好な比誘電率を有することができる。
【0027】
また、本発明の液晶化合物は、その他の液晶化合物と液晶媒体を構成することができる。ある実施形態中、液晶媒体は、上述した液晶化合物および混合物を含む。前記液晶化合物は、式(1)で表される。
【0029】
式中、R1は、H、炭素原子が1〜10個のアルキル基、または炭素原子が2〜10個のアルケニル基を示し、アルキル基またはアルケニル基上の各-(CH
2)-は、置換されていないか、あるいは、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-により置換される。
【0030】
A
1、A
2、A
3およびA
4は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、および2,5-テトラヒドロピラニレンから成る群を示す。A
1、A
2、A
3およびA
4のうち少なくとも1つは、インダン-2,5-ジイルであり、且つ1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイルは、置換されていないか、あるいは、1,4-フェニレンおよびインダン-2,5-ジイル上の少なくとも1つの水素原子は、フッ素原子により置換されてもよい。
【0031】
m、n、oおよびpは、それぞれ0、1または2であり、且つm、n、oおよびpは、同時に0ではない。
【0032】
Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立して、単結合、ビニレン、-COO-、-OCO-、-CF
2O-または-OCF
2-を示し、ビニレン上の水素原子は、フッ素原子により置換されてもよい。
【0033】
ある実施形態中、前記混合物は、少なくとも1種類の式(1)で表される液晶化合物と区別されるものを含む。
【0034】
また、ある実施形態中、前記混合物は、下記の式(I)〜式(VII)で表される化合物から成る群より選ばれた少なくとも1つの液晶化合物を含む。
【0036】
式中、X
1、X
21、X
22、X
23は、それぞれ独立して、F、Cl、-CF
3または-OCF
3である。R、R11、R12およびR21は、それぞれ独立して、H、炭素原子が1〜15個のアルキル基、または炭素原子が2〜15個のアルケニル基を示す。A1は、1,4-フェニレンである。A
11、A
12、A
13、A
14、A
21、A
22、A
23は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、および2,5-テトラヒドロピラニレンから成る群より選ばれたものである。A2、A3およびA4のうち少なくとも1つは、インダン-2,5-ジイルであり、その他は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、および2,5-テトラヒドロピラニレンから成る群より選ばれたものである。L
1は、-F
2CO-または-OCF
2-である。Z
11、Z
12、Z
13、Z
21およびZ
22は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-F
2CO-、-OCF
2-、-COO-または-OCO-である。上記の式(I)中、m=1、n、oおよびpは、それぞれ独立して0〜3の整数であり、且つn+o+p≧3である。
【0037】
本実施形態の液晶媒体中、液晶媒体の総重量により計算した式(1)で表される液晶化合物の液晶媒体中の比率は、例えば、1〜20%である。より好ましい実施形態の液晶媒体中、液晶媒体の総重量により計算した式(1)で表される液晶化合物の液晶媒体中の比率は、例えば、5〜15%である。
【0038】
本実施形態の液晶媒体は、式(1)で表される化合物を含むため、本実施形態の液晶媒体も、熱安定性、優れた誘電特性および比較的低い粘度を有する。
液晶化合物の合成方法
[実験例1]
【0044】
500mlの三口フラスコ中に11.2gのジイソプロピルアミンおよび150mlの無水テトラヒドロフランを加えた。窒素雰囲気下で温度を−5℃まで下げてから、46mlのn-ブチルリチウムのn-ヘキサン溶液(2.4mol/L)を滴下し、温度を0℃以下に制御した。滴下が終わった後、引き続き温度を0℃に制御して1時間撹拌した。それから、温度を−78℃まで下げて、14.3gのエチルバレレートと10mlの無水テトラヒドロフランの混合物を滴下した。滴下が終わった後、−78℃で30分撹拌した。続いて、25gの4-ブロモベンジルブロミドと100mlのテトラヒドロフランの混合物を滴下し、滴下が終わった後、温度を−78℃に制御して1時間撹拌した。低温設備を取り除き、反応温度が室温になってから、再度12時間撹拌した。処理後、淡黄色の油状物が得られ、この油状物を100mlのエタノールで溶解して、100ml、10%の水酸化ナトリウム水溶液の中に加え、3時間熱再循環して、室温になるまで冷却し、淡黄色の固体が得られた。石油エーテルで再結晶して類白色の固体18gが得られ、収率は67%であった。
【0047】
250mlの三口フラスコ中に18gの化合物A1および50mlの塩化チオニルを加え、3時間熱再循環した後、過量の塩化チオニルを蒸発させて除去した。続いて、120mlのジクロロメタンを加え、窒素雰囲気下で温度を0℃まで下げてから、分別して計10gの無水三塩化アルミニウムを加えた後、5時間再循環した。処理後、黄色の固体14gが得られ、収率は83%であり、純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧99%であった。
【0050】
250mlの三口フラスコ中に14gの化合物A2、23mlのトリエチルシラン、および40mlのトリフルオロアセテートを加え、室温で12時間撹拌した。続いて、反応液を炭酸ナトリウム水溶液の中に入れて、pH値を7〜8に調整し、黄色の油状物が得られた。減圧蒸留して無色透明の液体12gが得られ、収率は91%であり、純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧97%であった。
【0053】
1000mlの三口フラスコ中に12gの化合物A3、7.9gの3,5-ジフルオロベンゼンホウ酸、21.3gの炭酸ナトリウム、100mlの水、100mlのエタノール、200mlのトルエン、および0.5gのPd(PPh
3)
4を加え、窒素雰囲気下で6時間熱再循環した。処理後、淡黄色の油状物が得られ、エタノールを用いて再結晶を行い、白色の固体10.2gが得られた。収率は75%であり、純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧99%であった。
【0056】
500mlの三口フラスコ中に18gの化合物A4、および200mlの無水テトラヒドロフランを加え、窒素雰囲気下で温度を−100℃まで下げて、28mlのn-BuLiのn-ヘキサン溶液(2.4mol/L)を滴下した。滴下が終わった後、温度を−100℃に制御して1時間撹拌し、ジフルオロジブロモメタン28gを滴下した。滴下が終わった後、温度を−100℃に制御して1時間撹拌し、室温に戻して加水分解を行った。処理後、23.8gの黄色の固液混合物が得られ、収率は90%であった。
【0059】
500mlの三口フラスコ中に29gの化合物A5、300mlのDMF、9.9gの1-トリフルオロエトキシ2,6-ジフルオロフェノール、6.6gの無水炭酸カリウム、0.7gのヨウ化カリウムを加え、90℃で湯煎して0.5時間撹拌した。冷却した後水の中に入れ、処理後、11gの白色の固体が得られた。純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧99.7%であり、収率は50%であった。
【0062】
50mlの三口フラスコ中に1.2gのジイソプロピルアミンおよび20mlの無水テトラヒドロフランを加え、窒素雰囲気下で温度を−5℃まで下げて、4.6mlのn-ブチルリチウムのn-ヘキサン溶液(2.4mol/L)を滴下するとともに、温度を0℃に制御して、滴下が終わった後、引き続き1時間撹拌した。別の250mlの三口フラスコ中に5.5gの化合物A6および80mlの無水テトラヒドロフランを加え、窒素雰囲気下で温度を−65℃まで下げて、上記で作成したLDAを滴下し、0.5時間撹拌して加水分解を行った。処理後、エタノール再結晶の白色の固体3.0gが得られ、純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧99.5%であり、融点は38℃であった。
[実験例2]
【0068】
500mlの三口フラスコ中に11.2gのジイソプロピルアミンおよび150mlの無水テトラヒドロフランを加え、窒素雰囲気下で温度を−5℃まで下げてから、46mlのn-ブチルリチウムのn-ヘキサン溶液(2.4mol/L)を滴下した。温度を0℃以下に制御し、滴下が終わった後、引き続き温度を0℃に制御して、1時間撹拌した。それから、温度を−78℃まで下げて、14.3gのエチルバレレートと10mlの無水テトラヒドロフランの混合物を続けて滴下した。滴下が終わった後、−78℃で30分撹拌した。続いて、25gの4-ブロモベンジルブロミドと100mlのテトラヒドロフランの混合物を滴下し、滴下が終わった後、温度を−78℃に制御して1時間撹拌した。低温設備を取り除き、室温になってから、再度12時間撹拌した。処理後、淡黄色の油状物が得られ、この油状物を100mlのエタノールで溶解して、100ml、10%の水酸化ナトリウム水溶液の中に加え、3時間熱再循環して、室温になるまで冷却し、淡黄色の固体が得られた。石油エーテルで再結晶して無色の固体18gが得られ、収率は67%であった
【0071】
250mlの三口フラスコ中に18gの化合物B1および50mlの塩化チオニルを加え、3時間熱再循環した後、過量の塩化チオニルを蒸発させて除去した。それから、120mlのジクロロメタンを加えて溶解し、窒素雰囲気下で温度を0℃まで下げてから、分別して計10gの無水三塩化アルミニウムを加えた後、5時間再循環した。処理後、黄色の固体14gが得られ、収率は83%であり、純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧99%であった。
【0074】
250mlの三口フラスコ中に14gの化合物B2、23mlのトリエチルシランおよび40mlのトリフルオロアセテートを加え、室温で12時間撹拌した。反応液を炭酸ナトリウム水溶液の中に入れて、pH値を7〜8に調整した。黄色の油状物が得られ、減圧蒸留して無色透明の液体12gが得られた。収率は91%であり、純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧97%であった。
【0077】
1000mlの三口フラスコ中に12gの化合物B3、7.9gの3,5-ジフルオロベンゼンホウ酸、21.3gの炭酸ナトリウム、100mlの水、100mlのエタノール、200mlのトルエンおよび0.5gのPd(PPh
3)
4を加え、窒素雰囲気下で6時間熱再循環した。処理後、淡黄色の油状物が得られ、エタノールを用いて再結晶を行い、白色の固体10.2gが得られた。収率は75%であり、純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧99%であった。
【0080】
250mlの三口フラスコ中に9.0gの化合物B4、4.2gのt-BuOK、および100mlの無水テトラヒドロフランを加え、窒素雰囲気下で温度を−100℃まで下げて、17mlのn-BuLiのn-ヘキサン溶液(2.4mol/L)を滴下した。滴下が終わった後、温度を−100℃に制御して1時間撹拌し、それから、9.5gのホウ酸トリイソブチルと50mlの無水テトラヒドロフランの混合液を滴下した。滴下が終わった後、温度を−100℃に制御して1時間撹拌し、室温に戻して加水分解を行った。処理後、6.9gの黄色の固液混合物が得られ、収率は65%であった。
【0083】
1000mlの三口フラスコ中に14.2gの化合物B5、3、9.7gの3,5-ジフルオロブロモベンゼン、21.3gの炭酸ナトリウム、100mlの水、100mlのエタノール、200mlのトルエンおよび0.5gのPd(PPh
3)
4を加え、窒素雰囲気下で6時間熱再循環した。処理後、淡黄色の油状物が得られ、エタノールを用いて再結晶を行い、白色の固体12.8gが得られた。収率は75%であり、純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧99%であった。
【0086】
500mlの三口フラスコ中に35.2gの化合物B6および250mlの無水テトラヒドロフランを加え、窒素雰囲気下で温度を−70℃以下まで下げ、46mlのn-ブチルリチウムの滴下を開始し、滴下が終わった後、−70℃で2時間撹拌した。ジフルオロジブロモメタン84g/100mlの無水テトラヒドロフランの溶液を滴下し、滴下が終わった後、−70℃で1時間撹拌した。加水分解を行い、処理後、黄色の固体43gが得られた。純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧70%であり、収率は90%であった。
【0089】
1000mlの三口フラスコ中に35.9gの化合物B7、500mlのDMF、12gの1-トリフルオロエトキシ2,6-ジフルオロフェノール、9.0gの無水炭酸カリウム、および1.0gのヨウ化カリウムを加え、90℃で湯煎して0.5時間撹拌した。冷却した後水の中に入れ、処理後、21.5gの白色の固体が得られた。純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧99.7%であり、収率は60%であった。
【0092】
50mlの三口フラスコ中に2.3gのジイソプロピルアミンおよび20mlの無水テトラヒドロフランを加え、窒素雰囲気下で温度を−5℃まで下げて、9mlのn-ブチルリチウムのn-ヘキサン溶液(2.4mol/L)を滴下するとともに、温度を0℃に制御して、滴下が終わった後、温度を0℃に制御して1時間撹拌した。別の100mlの三口フラスコ中に5.6gの化合物B8、20mlの無水テトラヒドロフランを滴下し、窒素雰囲気下で温度を−65℃まで下げて、上記で作成したLDAを滴下し、0.5時間撹拌して、加水分解を行った。処理後、エタノール再結晶の白色の固体3.1gが得られ、純度(ガスクロマトグラフGCにより測定)は≧99.5%であり、融点は73℃〜75℃であり、収率は58%であった。
【0093】
以上、化合物I-AおよびI-Bの合成方法のみを記載して説明を行ったが、本分野の技術者であれば、化合物I-AおよびI-Bの合成方法に基づいて、化合物I-C、I-DおよびI-Eの合成方法についても当然理解されよう。
液晶化合物の特性の試験
【0094】
実験例1〜5は、それぞれ、上述した化合物I-A〜化合物I-Eを示したものである。比較例1の化合物は、式II-Aで表される。化合物II-Aのうち、1つの末端はインダン-2,5-ジイルを有し、別の末端は本発明と同じ構造を有する。
【0096】
以下、実験例1〜5および比較例1について、複屈折係数(Δn)、比誘電率(Δε)、熱重量分析(TGA、5%重量損失)および粘度(γ1)の測定を行い、その結果を表1に示す。
【0098】
表1からわかるように、比較例1(化合物II-A)と比較して、実験例1〜実験例5の化合物I-A〜I-E(本発明の液晶化合物)は、粘度が低く、誘電特性が高く、熱安定性に優れている。
液晶媒体の特性の試験
【0099】
以下、実例1〜実例4は、化合物I-A〜I-D(本発明の液晶化合物)をそれぞれその他の液晶化合物と組み合わせて液晶媒体を組成し、これらの液晶媒体に対して相転移温度(Tni)、比誘電率(Δε)および複屈折率(Δn)の測定を行ったものであり、その結果を表2に示す。
【0100】
組み合わせに用いたその他の液晶化合物は、以下の通りである。
【0103】
以下、実例5および実例6は、化合物I-D(本発明の液晶化合物)をその他の液晶化合物と組み合わせて液晶媒体を組成したものである。また、対照例1〜3は、その他の液晶化合物(本発明の液晶化合物を含まない)によって液晶媒体を組成したものである。そして、これらの液晶媒体に対して、相転移温度(Tni)、比誘電率(Δε)、複屈折率(Δn)および粘度(γ1)の測定を行い、その結果を表3に示す。
【0105】
表2および表3からわかるように、対照例1〜3の液晶媒体と比較すると、本発明の液晶化合物(I-D)を含む液晶媒体は、適切な相転移温度(Tni)を含むため、熱安定性および適切な透明点を有し、同時に、優れた誘電特性および比較的低い粘度を有する。したがって、この液晶化合物を含む液晶媒体を採用した液晶ディスプレイは、より優れた表示効果を有する。さらに重要なこととして、粘度が比較的低いことにより応答時間が短縮されるため、反応速度がより速い。
【0106】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。