(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
式(1)中のポリアルキレングリコール単位(A−O)は、一つのC
2−C
4アルキレンオキシド単位、または互いに異なることができる複数のC
2−C
4アルキレンオキシド単位の配列である。異なる単位が、ランダムな順列で、または連続で(ブロック状で)配列されることができる。(A−O)が単独のアルコキシ基を表す場合には、(A−O)はプロポキシ基またはブトキシ基を意味する。(A−O)が1超のアルコキシを表す場合は、(A−O)は少なくとも一つのプロポキシ基または少なくとも一つのブトキシ基を含む。これらのポリアルキレングリコール単位は、エーテルピロリドンカルボン酸の製造の第一段階において、開始剤アルコールのヒドロキシル基を一種または複数種のC
2−C
4アルキレンオキシドでアルコキシル化してポリアルキレングリコールとすることによって生じ、この際、複数種のアルキレンオキシドとのアルコキシル化は、アルキレンオキシドの混合物を用いてまたは順番に行うことができる。しかし、本発明では、アルキレンオキシドのうちの一つはエチレンオキシドとは異なったものでなければならない。
【0020】
好ましい実施形態の一つでは、ポリアルキレングリコール単位(A−O)は、順番に配列されたアルコキシ基を含む。更に別の好ましい実施の一つでは、プロポキシ−及び/またはブトキシ基の割合は、20モル%超、特に50モル%超である。特に好ましい実施形態の一つでは、これは純粋なポリプロピレングリコール単位である。
【0021】
−(A−O)−基は、好ましい実施形態の一つでは、次式(2)のポリ(オキシアルキレン)基を表す。
【0023】
式中、
lは0〜200の数を意味し、
mは0〜200の数を意味し、
nは0〜200の数を意味し、
この際、l+nは少なくとも1である。
【0024】
lは好ましくは1〜10の数を表す。mは好ましくは20〜50の数を表す。nは1〜10の数を表す。
【0025】
更に別の好ましい実施形態では、lは0を表し、mは1〜50、特に5〜25の数を表し、そしてnは1〜200、特に2〜25を表す。
【0026】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、l及びmは0を表し、そしてnは1〜50、特に20〜30を表す。
【0027】
本発明のエーテルピロリドンカルボン酸の(A−O)単位中に含まれるアルコキシ基の数は、ポリアルキレングリコール基の分子量によって最良に定義される。それで、ポリアルキレングリコール基の数平均分子量は一般的に少なくとも75g/モル、好ましくは200g/モル超、特に好ましくは1,000〜10,000g/モルである。ポリアルキレングリコール基の数平均分子量は、例えば単位R
1−[(A−O)−H]
xのゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって決定することができる。本発明のエーテルピロリドンカルボン酸の有効性は、中間段階として使用されるポリアルキレングリコールの分子量と共に大きくなる。しかし、分子量は、pH>7における初期不溶解性、特に高い割合でプロポキシ−またはブトキシ基を含む高分子量エーテルピロリドンカルボン酸の初期不溶解性によって制限される。
【0028】
R
1は、1〜7個の炭素原子を含む一価、二価、三価もしくは四価のアルコールのヒドロキシ水素原子を形式的に除去して得られる基である。このアルコールは好ましくは2〜6個の炭素原子を含む。更に、R
1は好ましくは脂肪族基である。ここで、形式的な除去とは、ヒドロキシル水素原子が省略されることと理解されるべきである。メタノールCH
3OHから出発した場合は、すなわちR
1はCH
3Oであり、エチレングリコールHO−CH
2−CH
2−OHから出発した場合には、R
1はO−CH
2−CH
2−OHまたはO−CH
2−CH
2−Oのいずれかである。個々の酸素原子−Oはここではオキシ基と称される。オキシ基の数はxに一致する。オキシ基の数は、二価、三価もしくは四価のアルコールの場合には、このアルコールのOH基の数と同じかまたはそれより少ないことがあり得る。好ましいアルコールは、式R
3−OH(R
3=C
1−C
4)のモノアルコール、すなわちメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール及びtert−ブタノールである。式OH−R
4−OH(R
4=C
2−C
6−アルキレン)のジオール、例えばエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリオール類、例えばグリセリンまたはトリメチロールプロパン、及びテトラオール類、例えばペンタエリトリトールも同様に好適である。
【0029】
好ましい実施形態の一つでは、R
1基はCH
3O−であり、更に別の好ましい実施形態の一つでは、これは二官能基、特にエチレングリコール及び1,2−プロピレングリコールである。
【0030】
工業的な製造では、必ずしも開始単位R
1Hから出発する必要はなく、開始剤アルコールは既に一つまたはそれ以上のアルコキシ基を含んでいてもよく、これを更にアルコキシル化する。それゆえ、すなわち、適当な開始剤アルコールは、メチルグリコール、メチルジグリコール、メチルトリグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、低分子量ポリアルキレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルジプロピレングリコール、及び低分子量ポリプロピレングリコールである。
【0031】
y及びR
2は、ポリアルキレングリコールエーテルアミンを生成するポリアルキレングリコールの反応のタイプによって定義される。エーテルアミンがポリアルキレングリコールのアミノリシスによって生じた場合には、yは1であり、そしてR
2は、ポリアルキレングリコールの末端基から与えられ、すなわち水素、メチル基またはエチル基であることができる。エーテルアミンが、アクリロニトリルの付加及びその後の水素化によって得られた場合は、yは2でありそしてR
2は水素である。好ましい実施形態の一つでは、yは1でありそしてR
2はCH
3である。完成したエーテルピロリドンカルボン酸の使用における問題(pH>7での難水溶性)を回避するために、ポリアルキレングリコールからポリアルキレングリコール−エーテルアミンへの反応において高い転化率が好ましく、この転化率は少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、特に好ましくは>99%である。
【0032】
様々なアルコキシ基、分子量及び官能性を有する一連のエーテルアミンが、例えばJeffamine(登録商標)またはPolyetheramineの名称で商業的に入手できる。
【0033】
xの数は1〜4であることができ、アミノ基の数を与えるものである。エーテルアミンが一つのアミノ基を有する場合にはxは1となり、二つのアミノ基を有する場合にはxは2となり、等々である。
【0034】
アミン官能基とイタコン酸との反応によって、ピロリドンカルボン酸単位が生ずる。不足量のイタコン酸を使用することによって、より少ないカルボン酸含有率を達成できるが、これは部分的にポリアミドの生成を招く。加えて副生成物が難溶性であるため、高い転化率が好ましい。特に好ましくは、>99%の転化率が目標とされる。ピロリドンを生成する効果的な閉環も同様に非常に重要である。なぜならば、エンドユースにおける中間第二アミンは幾つかの国で、特にドイツにおいて規制上の問題を提起するものである。そのため、好ましくは<1重量%の低いアミン含有率が留意され、特に好ましくは<0.5重量%の残留アミン含有率が目標とされる。
【0035】
各ステップが付加ステップまたは縮合ステップであること、すなわち全ての原料が生成物中に残留し(但し水は除く)、そうして廃棄物が全く生じないことが該方法の格別な利点であることが強調されるべきである。
【0036】
更に別の好ましい形態の一つでは、元のアルコールの全ての官能基がピロリドンカルボン酸基に転化され、そうしてxがアルコールの官能性基の数を反映する。
【0037】
こうして得られたエーテルピロリドンカルボン酸は、冷却潤滑剤濃厚物の製造に使用することができ、この濃厚物は使用の前に水で希釈して完成品の冷却潤滑剤にする。この際、典型的な希釈比は、1:1〜1:100部、好ましくは1:25〜1:10部の濃厚物:水である。この際、従来技術から既知の潤滑剤と比べて、例えばライヒャルト摩擦摩耗試験器(Reichert−Reibverschlusswaage)で測定して匹敵する潤滑作用を達成するために、比較的少量しか必要とされない。本発明のエーテルピロリドンカルボン酸は、合成金属加工液の典型的なpH値において曇点を示さず、加工材料または加工具上に邪魔な残渣が全く残らず、そして該液体は、石灰石鹸及び電解質に対する高い安定性の故に長い寿命を有する。濃厚物中の濃度は0.1〜60重量%、好ましくは1〜25重量%、特に好ましくは5〜15重量%であることができ、そしてこの濃度は、使用において、(例えばライヒャルト摩擦摩耗試験器で測定できる)十分な潤滑作用が達成されるように選択される。エーテルピロリドンカルボン酸自体は蒸留水中には可溶である必要はなく、中和剤の使用によってpH>7において可溶性になれば十分であるかまたはむしろ好ましい。
【0038】
該濃厚物は、溶剤としての水の他、潤滑剤としての本発明によるエーテルピロリドンカルボン酸、及びpH値の調節のための中和剤を含む。pH値は、最終的な作業濃度に希釈した後に7〜11、好ましくは8〜10、特に好ましくは8.5〜9.5である。
【0039】
これに適した中和剤は次式(3)のアミンである。
【0041】
式中、
R
5、R
6及びR
7は、互いに独立して水素または炭素原子数1〜100の炭化水素残基を表す。
【0042】
第一の好ましい実施形態では、R
5及び/またはR
6及び/またはR
7は互いに独立して肪族基を表す。これは好ましくは1〜24個、特に好ましくは2〜18個、特に3〜6個の炭素原子を有する。この脂肪族基は線状、分枝状または環状であることができる。これは更に飽和状または不飽和状であることができる。該脂肪族基は好ましくは飽和状である。この脂肪族基は置換基、例えばヒドロキシ基、C
1〜C
5アルコキシ基、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基及び/またはC
5−C
20アリール基、例えばフェニル基を有することができる。上記のC
5−C
20アリール基は、それらが場合によりハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、C
1−C
20アルキル基、C
2−C
20アルケニル基、ヒドロキシル基、C
1−C
5アルコキシ基、例えばメトキシ基、アミド基、シアノ基、ニトリル基及び/またはニトロ基によって置換されていることができる。特に好ましい実施形態の一つでは、R
5及び/またはR
6及び/またはR
7は、互いに独立して、水素、C
1−C
6アルキル基、C
2−C
6アルケニル基またはC
3−C
6シクロアルキル基を表し、特に炭素原子数1、2または3のアルキル基を表す。これらの基は三つまでの置換基を有することができる。特に好ましい脂肪族基R
5及び/またはR
6及び/またはR
7は、水素、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、n−プロピル、iso−プロピル、ヒドロキシプロピル、n−ブチル、iso−ブチル及びtert−ブチル、ヒドロキシブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びメチルフェニルである。
【0043】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、R
5とR
6は、それらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成する。この環は、好ましくは4またはそれ以上、例えば4、5、6またはそれ以上の環員を有する。この際、好ましくは、他の環員は、炭素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子である。この環は、更にそれらが置換基、例えばアルキル基を有していてもよい。適当な環構造は、例えば、モルホリニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、イミダゾリル基及びアゼパニル基である。好ましい実施形態の一つでは、R
7はHまたは炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。
【0044】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、R
5、R
6及び/またはR
7は、互いに独立して、場合により置換されたC
6−C
12アリール基、または環員数5〜12の場合により置換されたヘテロ芳香族基を表す。
【0045】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、R
5、R
6及び/またはR
7は、互いに独立してヘテロ原子が割り込んだアルキル基を表す。特に好ましいヘテロ原子は酸素及び窒素である。
【0046】
それで、R
5、R
6及び/またはR
7は、互いに独立して、好ましくは次式(4)の基を表す。
【0048】
式中、
R
8は、炭素原子数2〜6、好ましくは炭素原子数2〜4のアルキレン基、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンまたはこれらの混合物を表し、
R
9は、水素、炭素原子数1〜24の炭化水素基、または式-R
8-NR
10R
11の基を表し、
aは、2〜50、好ましくは3〜25、特に好ましくは4〜10の数を表し、そして
R
10、R
11は、互いに独立して、水素、炭素原子数1〜24、好ましくは炭素原子数2〜18の脂肪族基、環員数5〜12のアリール基もしくはヘテロアリール基、ポリ(オキシアルキレン)単位数1〜50のポリ(オキシアルキレン)基を表し、この際、ポリオキシアルキレン単位は、炭素原子数2〜6のアルキレンオキシド単位から誘導され、またはR
10及びR
11は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、4、5、6もしくはそれ以上の環員を有する環を形成する。
【0049】
更に好ましくは、R
5、R
6及び/またはR
7は、互いに独立して、次式(5)の基を表す。
【0051】
式中、
R
12は、炭素原子数2〜6、好ましくは炭素原子数2〜4のアルキレン基、例えばエチレン、プロピレンまたはこれらの混合物を表し、
各R
13は、互いに独立して、水素、炭素原子数が24まで、例えば炭素原子数2〜20のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、ポリオキシアルキレン基−(R
8−O)
p−R
9、またはポリイミノアルキレン基−[R
12−N(R
13)]
q−(R
13)を表し、この際、R
8、R
9、R
12及びR
13は上記の意味を有し、そしてq及びpは互いに独立して1〜50を表し、そして
bは、1〜20、好ましくは2〜10の数、例えば3、4、5または6を表す。
【0052】
式(5)の基は、好ましくは1〜50、特に2〜20の窒素原子を含む。
【0053】
特に好ましい中和剤は、水溶性アルキルアミン、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、及び少なくとも1重量%、好ましくは1〜5重量%の水溶解性を有する限りは長鎖モノ−、ジ−及びトリアルキルアミンである。ここでアルキル鎖は分枝状であることができる。また、オリゴアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、それのより高級な同族体、並びにこれらの混合物も同様に好適である。この系列で更に別の適当なアミンは、これらのオリゴアミンのアルキル化、特にメチル化された物、例えばN,N−ジメチルジエチレンアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、及び同じ構造原理のより長鎖の及び/またはより高度にアルキル化されたアミンである。本発明において特に適したものは、アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジグリコールアミン、トリグリコールアミン及びより高級の同族体、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン及びより長鎖のアルキルジエタノールアミンであり、この際アルキル基は環状及び/または分枝状であることができる。更に別の適したアルカノールアミンは、ジアルキルエタノールアミン、例えばジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、ジブチルエタノールミン及びより長鎖のジアルキルエタノールアミンであり、この際もアルキル基は分枝状または環状であることができる。更に本発明の意味において、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール及びより高級の同族体、並びに対応するモノ−及びジメチルプロパノールアミン及びより長鎖のモノ−及びジアルキルアミノアルコールも使用できる。とりわけ、2−アミノ−メチルプロパノール(AMP)、2−アミノプロパンジオール、2−アミノ−2−エチルプロパンジオール、2−アミノブタンジオール及び他の2−アミノアルカノール、アミノアルキルアミンアルコール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどの特殊なアミン類、並びに末端キャップされた物、例えばメチルグリコールアミン、メチルジグリコールアミン及びより高級な同族体、ジ(メチルグリコール)アミン、ジ(メチルジグリコール)アミン及びそれらのより高級な同族体、並びに対応するトリアミン及びポリアルキレングリコールアミン(例えばJeffamine(登録商標))が適している。通常は及び本発明の意味において、上記のアミン類の混合物が、目的のpH値の調節に使用される。濃厚物中のこれらのアミンの濃度は、1〜60重量%、好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは15〜25重量%であり、希釈後に目的のpH値が得られるように選択される。
【0054】
窒素含有中和剤はMをアンモニウム基にさせる。Mに関連してアンモニウム基という用語は、この基が置換されていてもよいことを意味する。置換基のタイプは、上述したような窒素含有中和剤のタイプから与えられる。
【0055】
他の好適な中和剤は、アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び酸化カルシウムである。
【0056】
例えば曇点消泡(Truebungspunkt−Entschaeumung)を達成するために、曇点が望ましい場合には、ポリアルキレングリコールを添加することができるが、これは、潤滑剤として使用される場合よりもかなり少量で使用される。それで、濃厚物は、ポリアルキレングリコールを最大でも10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.5〜1.5重量%の量で含んでよい。
【0057】
適当なポリアルキレングリコールは、エーテルピロリドンカルボン酸の製造の原料として適したポリアルキレングリコールと基本的な構造は同じであるが、異なるアルコキシ基の量比が、所望の曇点が達成されるように選択される。好ましい実施形態の一つでは、これは、それ自体が25〜90℃、好ましくは30〜80℃、特に30〜60℃の曇点(水中1%)を有するEO−PO−EOブロックポリマーである。
【0058】
本発明では、該冷却潤滑剤濃厚物は更に水溶性腐食防止剤を、0.1〜60重量%、好ましくは5〜25重量%、特に好ましくは10〜20重量%の量で含む。適当な腐食保護剤は、ベンゼンスルホン酸アミドカプロン酸、トルエンスルホン酸アミドカプロン酸、ベンゼンスルホン酸(N−メチル)アミドカプロン酸、トルエンスルホン酸(N−メチル)アミドカプロン酸(全て式(6))、アルカノイルアミドカルボン酸、特にイソノナノイルアミドカプロン酸(式(7))、及びトリアジン−2,4,6−トリス(アミノヘキサン酸)(式(8))、または式(6)〜(8)の化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアミン塩である。
a)トルエン−もしくはベンゼンスルホンアミドカプロン酸(式(6))
【0060】
R
14、R
15はHまたはCH
3。
b)イソノナノイルアミドカプロン酸(式(7))
【0062】
c)トリアジン−トリスアミノヘキサン酸(式(8))
【0064】
更に別の既知の適当な腐食保護剤は、線状もしくは分枝状C
6〜C
8カルボン酸、例えばオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−イソデカン酸、ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、マレイン酸、クエン酸、並びにより長鎖のジカルボン酸、例えばデカン二酸、ウンデカン二酸またはドデカン二酸(ここでそれらの鎖は分枝状であること、または環状であることもできる)、及びポリカルボン酸である。同様に適当な腐食保護剤は、アルカンスルホン酸アミド、アルカンスルホンアミドカルボン酸及びフタル酸半アミドである。更に、上述の化合物の塩も使用することができる。
【0065】
一般に広まっている無機系腐食防止剤の一つはホウ酸、及びそれの塩、アミド及びエステルである。
【0066】
上記の腐食保護剤のうちの一つの塩が使用される場合には、遊離の酸と作動流体中に含まれる中和剤との反応によって生ずる塩が好ましい。
【0067】
或る用途では、摩耗の減少のための
極圧/耐摩耗添加剤(EP/AW添加剤)の使用が必要である。本発明では、該濃厚物は、EP/AW添加剤として、例えば、水溶性リン酸エステル、それの塩、並びに中和剤によって塩に転化されそして可溶性になる水不溶性リン酸エステルを含むことができる。適当なリン酸エステルは、エタノール、ブタノール、プロパノール、メタノール、ヘキサノール、オクタノール、iso−オクタノール、フェノール及び更に別のより高級なアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール及びそれらの混合物のモノ−及びジエステル、並びにエトキシル化されたアルコール及びそれらの混合物のモノ−及びジエステルである。
【0068】
更に別の適当なEP/AW添加剤は、水溶性硫黄化合物、例えば硫化物、二硫化物、メルカプトベンズチアゾール、硫黄化アクリル酸、ジチオビス(チアゾール)、例えばジメルカプトジチオジアゾール及びそれの塩、ジチオジカルボン酸、特にジチオ(ジアリールカルボン酸)、例えばジチオジ安息香酸及びそれの塩である。
【0069】
EP/AW添加剤の濃度は一般的に0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0070】
上記の添加剤の他に、該濃厚物は、本発明に従い、殺生物剤、消泡剤、水軟化剤または可溶化剤、例えばブチルグリコールまたはブチルジグリコールを含むことができる。
【0071】
該冷却潤滑剤濃厚物の製造は、添加剤を任意の順序で単に混ぜることによって行うことができる。しかし、高粘度の相を避けるために、先ず水を仕込み、次いで直ちに水溶性の添加剤を任意の順番で加えることが推奨される。次いで、中和剤を、その後に、中和によって始めて水溶性になる添加剤を添加することができる。エーテルピロリドンカルボン酸は、どの時点でも加えることができる。好ましい実施形態の一つでは、エーテルピロリドンカルボン酸は純水中には不溶性であるが、>7のpH値で始めて可溶性である。この場合、好ましくは先ず中和剤を水中に溶解し、次いでエーテルピロリドンカルボン酸を加える。
【0072】
冷却潤滑剤として使用するためには、こうして製造された濃厚物を、蒸留水またはその他の上水もしくは水道水と、1:1〜1:100部、一般的に1:25〜1:10部の濃厚物:水の比率で希釈し、そして使用する。
【実施例】
【0073】
例1〜11: N−置換5−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸の製造のための一般的な指針
標準的な攪拌装置中に1当量のアミンを仕込みそして攪拌下に50℃に加温する。ここで1当量のイタコン酸を少しずつ加え、そしてこの反応混合物をゆっくりと180℃に加温する。反応の進行中に、1当量の反応水を留去する。得られた生成物を酸価(SZ)及び塩基窒素(bas.−N)によって特徴付けする。
【0074】
例1:(比較例)
133gの3−(2−メトキシ−エトキシ)プロピルアミン及び130gのイタコン酸から、226.5mgKOH/gのSZ及び<0.1%のbas.−Nを有する240gの5−オキソ−[3−(2−メトキシ−エトキシ)プロピル−]ピロリジン−3−カルボン酸が得られた。
【0075】
例2:(比較例)
103gの4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン及び65gのイタコン酸から、271.4mgKOH/gのSZ及び<0.1%のbas.−Nを有する155gの5−オキソ−[4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジ]−ピロリジン−3−カルボン酸が得られた。
【0076】
例3:(比較例)
105gの2−(2−アミノエトキシ)−エタノール及び130gのイタコン酸から、174.3mgKOH/gのSZ及び<0.1%のbas.−Nを有する210gの5−オキソ−[2−ヒドロキシエチル]−エトキシ]ピロリジン−3−カルボン酸が得られた。
【0077】
例4:
230g(1モル)のPolyetheramin(登録商標)D−230(230g/モルの平均分子量を有するポリプロピレングリコールジアミン)及び260g(2モル)のイタコン酸から、<0.1%のbas.−N及び251mgKOH/gのSZを有する454gの生成物が淡黄色の液体として得られた。
【0078】
例5:
442g(1モル)のPolyetheramin(登録商標)D−400(400g/モルの平均分子量を有するポリプロピレングリコールジアミン)及び260g(2モル)のイタコン酸から、<0.1%のbas.−N及び164mgKOH/gのSZを有する665gの生成物が淡黄色の液体として得られた。
【0079】
例6:
500g(0.25モル)のPolyetheramin(登録商標)D−2000(2,000g/モルの平均分子量を有するポリプロピレングリコールジアミン)及び65g(0.5モル)のイタコン酸から、<0.1%のbas.−N及び52mgKOH/gのSZを有する546gの生成物が淡黄色の液体として得られた。
【0080】
例7:
514g(0.25モル)のJeffamine(登録商標)M−2070(約2,000g/モルの平均分子量を有するメチルポリ(エトキシ)ポリ(プロポキシ)モノアミン)及び32.5g(0.25モル)のイタコン酸から、<0.1%のbas.−N及び25.1mgKOH/gのSZを有する535gの生成物が黄色の液体として得られた。
【0081】
例8:
611g(1モル)のJeffamin(登録商標)ED−600(600g/モルの平均分子量を有する、PO−EO−POブロックポリマーに基づくジアミン)及び260g(2モル)のイタコン酸から、<0.1%のbas.−N及び130mgKOH/gのSZを有する835gの生成物が淡黄色の液体として得られた。
【0082】
例9:
518g(0.25モル)のJeffamine(登録商標)ED−2003(2,000g/モルの平均分子量を有する、PO−EO−POブロックポリマーに基づくジアミン)及び65g(0.5モル)のイタコン酸から、<0.1%のbas.−N及び47mgKOH/gのSZを有する573gの生成物が黄色の液体として得られた。
【0083】
例10:
98g(0.2モル)のPolyetheramin(登録商標)T403(440g/モルの平均分子量を有するトリメチロールプロパントリス(ポリプロピレングリコールアミン)及び78g(0.6モル)のイタコン酸から、<0.1%のbas.−N及び198mgKOH/gのSZを有する160gの生成物が黄色の液体として得られた。
【0084】
例11:
226g(0.04モル)のPolyetheramin(登録商標)T5000(5,000g/モルの平均分子量を有する(グリセリルトリス(ポリプロピレングリコールアミン)及び15.6g(0.12モル)のイタコン酸から、<0.1%のbas.−N及び27mgKOH/gのSZを有する230gの生成物が黄色の液体として得られた。
【0085】
例1〜11からのエーテルピロリドンカルボン酸を二倍過剰のトリエタノールアミンと反応させて実際の水溶性潤滑剤とし、そして水溶液中で、硬水に対するそれの挙動、曇点及びライヒャルト摩擦摩耗試験器での潤滑性能(荷重:1.5kg/走行距離100m/鋼製ローラー/摩耗痕の結果mm
2)を測定した。比較として、従来技術からのポリアルキレングリコールGenapol(登録商標)PN30及びGenapol(登録商標)Bを測定した。例1〜3は、英国特許出願公開第1323061号明細書(特許文献5)からの従来技術、すなわち(ポリ)エチレングリコールアミンに由来するエーテルピロリドンカルボン酸に相当する。読み易いように、以下の表においてエーテルピロリドンカルボン酸という用語はEPCと簡略する。摩耗跡が>30mm
2の場合には、より低い濃度は測定しなかった。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
ポリアルキレングリコールGenapol(登録商標)B及びPN30は非常に良好な潤滑性を示すが、前記の不利な曇点も有する。例1〜3は、従来技術からの、エチレンオキシドに由来するPEG鎖しか含まない低分子量エーテルピロリドンカルボン酸が、良好な潤滑剤に対する要求を満たないことを示している。というのも、ライヒャルト測定において、10%の使用濃度での摩耗跡は少なくとも20mm
2未満であるべきであるからである。
【0089】
例4〜11は、本発明のエーテルピロリドンカルボン酸では有利に曇点が存在しないこと、及び該エーテルピロリドンカルボン酸の同等のまたは優れた潤滑作用を示している。特に高分子量の物(例6、7、9、11)は向上した潤滑作用を示す。上記したような好ましい実施形態の一つでは、純粋なポリプロピレン鎖を有するエーテルピロリドンカルボン酸(例4〜6、10、11)であり、これらは、高分子量形態において、非常に低い濃度でさえ最良の潤滑値を示す(例6、11)。
【0090】
以下の例は、エーテルピロリドンカルボン酸を含む冷却潤滑剤濃厚物の製造及びそれの使用を例示するものである。
【0091】
例12:冷却潤滑剤濃厚物(比較例)
250mlのビーカー中に40gの水を仕込む。ここで、絶えず攪拌しながら、先ず15gのトリエタノールアミン(中和剤)、次いで20gのイソノナノイルアミドカプロン酸(腐食防止剤)、9gのGenapol B及び1gのGenapol PN30を加える。清澄化のために5gのブチルジグリコールを加える。
【0092】
例13: 例6のエーテルピロリドンカルボン酸を含む冷却潤滑剤濃厚物
250mlのビーカー中に45gの水を仕込む。ここで、絶えず攪拌しながら、先ず17gのトリエタノールアミン、次いで20gのイソノナノイルカプロン酸、次いで例6からの8gのECSを加える。
【0093】
例14: 例6のエーテルピロリドンカルボン酸を含む冷却潤滑剤濃厚物
250mlのビーカー中に、45gの水を仕込む。ここで、絶えず攪拌しながら、先ず15gのトリエタノールアミン及び2gのモノエタノールアミンを加え、次いで12gのイソノナノイルカプロン酸、8gのジチオジ安息香酸(AW/EP添加剤)、次いで例7からの8gのECSを加える。
【0094】
例15: 例11のエーテルピロリドンカルボン酸を含む冷却潤滑剤濃厚物
250mlのビーカー中に、45gの水を仕込む。ここで、絶えず攪拌しながら、先ず17gのトリエタノールアミン、次いで20gのイソノナノイルカプロン酸、次いで例11からの8gのECSを加える。
【0095】
表2に、例6及び11からの最良の作用を有するエーテルピロリドンカルボン酸を含む本発明の濃厚物から製造された合成冷却潤滑剤並びに従来技術の応用技術上のデータを記載する。pH値は微量のモノエタノールアミンを用いて8.5に調節した。
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
表2は、従来技術(例12)と比較して、該エーテルカルボン酸を含む(例13〜15)冷却潤滑剤濃厚物から製造された冷却潤滑剤の効果を示す。該エーテルカルボン酸は、中和剤、腐食防止剤、場合により及びEP/AW添加剤(例14)と一緒に、ポリアルキレングリコール(Genapol PN30、Genapol B)よりも少量で使用される。腐食保護及び硬水に対する安定性は損なわれない。