(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706630
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】積層ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/20 20060101AFI20150402BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
H02K1/20 C
H02K1/20 Z
H02K9/06 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-80908(P2010-80908)
(22)【出願日】2010年3月31日
(65)【公開番号】特開2011-217450(P2011-217450A)
(43)【公開日】2011年10月27日
【審査請求日】2012年5月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤嶽 雅志
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】石毛 光
【審査官】
河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−036333(JP,U)
【文献】
韓国登録特許第10−0944150(KR,B1)
【文献】
実開昭61−013547(JP,U)
【文献】
実開昭61−134650(JP,U)
【文献】
特開平07−087711(JP,A)
【文献】
特開平09−191587(JP,A)
【文献】
特開平07−264810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/20
H02K 1/18
H02K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板のコアを転積して積層形成する積層ステータであって、
前記電動機鋼板のコアに、放熱フィン付き通風孔で構成された放熱フィン部と、放熱フィン無し通風孔で構成された通風部とが、電動機の回転軸を中心として点対称の位置に夫々2つ形成され、
上記放熱フィン部と、通風部とが交互に隣接して重なるように、所定枚数ずつのコアを順次転積して積層することにより、上記放熱フィン部と通風部によって前記回転軸方向の流れを分岐する分岐路を有する通風路が形成されたことを特徴とする積層ステータ。
【請求項2】
請求項1に記載の積層ステータにおいて、
前記電磁鋼板のコアは前記放熱フィン付き通風孔及び放熱フィン無し通風孔の少なくとも一方の外側に枠体が形成され、コアを積層することにより前記枠体で前記通風路と外部を仕切るカバーを構成することを特徴とする積層ステータ。
【請求項3】
請求項1に記載の積層ステータにおいて、
前記放熱フィン無し通風孔は前記電磁鋼板のコアの一部を切欠いて構成され、コアを積層することにより外部に開放した通風路を構成することを特徴とする積層ステータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層ステータにおいて、
前記電磁鋼板のコアに形成された放熱フィンはコアの積層面に沿った放熱面とコアの積層方向に沿った放熱面を有することを特徴とする積層ステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の固定子を構成する積層ステータに係り、特に外周部に放熱フィンと通風路が形成される積層ステータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動機は銅損や鉄損等の種々のエネルギー損によって発熱する。この発熱は電動機の能力を決定する要因の1つであり、電動機の連続出力は発熱と放熱能力とのバランスによって決定される。従って、ステータ表面等の電動機の放熱面積を拡大して放熱効率を向上させること、また、電動機を自力通風形あるいは他力通風形のファンで冷却することによって、電動機の連続出力を増大させることができる。
【0003】
従来の軸方向に冷却風を送る電動機の積層ステータの冷却構造として、特許文献1を挙げることができる。これは電磁鋼板の同一形状に成形されたコアを同じ姿勢で積層して積層ステータを構成するものであり、各コアに形成された通風孔で構成される連続した通風路にファンにより風を流すことにより冷却を行う、
図8に従来の積層ステータを説明した図を示す。
図8(a)は電磁鋼板のコアを積層する工程を説明した図、
図8(b)は積層ステータの図である。
図9は
図8の積層ステータを積層方向より見た正面図である。
図8において、外周に放熱フィン27を備えた同一形状に整形された電磁鋼板のコア21を積層して積層ステータ22を構成し、通風カバー26によって積層ステータ22の外側を覆い、この通風カバー26と放熱フィン27によって軸方向の通風路が構成される。
【0004】
図9において、積層ステータ22の内部で発生した熱は、ステータ外周部に形成された放熱フィン27と、積層ステータ22を覆う通風カバー26によって形成される通風路25を通る冷却風との間で、熱交換が行なわれることにより冷却される。
【0005】
また、他の従来例として特許文献2には、熱伝導性の良好な複数枚の板材を積層して構成した積層体の側面に、各板材の周縁の位置ずれにより生じる隙間を利用して自然冷却する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−177689号公報
【特許文献2】特開平10−163022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の軸方向に冷却風を送る自力通風形あるいは他力通風形のファンを有する電動機の積層ステータは、特許文献1や
図8、
図9では、通風路内に配置される放熱フィンが、通風方向と同方向に一様に重ねられているため、放熱フィンの放熱面積を大きく取ることが難しかった。また、特許文献2では各板材の周縁の位置ずれにより生じる隙間を利用して自然冷却するものであり、放熱面積を大きく取ることが難しいと共に周縁からのみの放熱であるため、発熱部からの距離があり放熱効率の点で問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、放熱面積を大きく取ることができる通風路を備えた積層ステータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、電磁鋼板のコアを転積して積層形成する積層ステータ
であって、前記電動機鋼板のコアに
、放熱フィン付き通風孔で構成された放熱フィン部と
、放熱フィン無し通風孔で構成された通風部
とが、電動機の回転軸を中心として点対称の位置に夫々2つ形成され、上記放熱フィン部と、通風部とが交互に隣接して重なるように、所定枚数ずつのコアを順次転籍して積層することにより、上記放熱フィン部と通風部によって
前記回転軸方向の流れを分岐する分岐路を有する通風路が形成されたことを特徴とする。
【0011】
また、上記に記載の積層ステータにおいて、
放熱フィン付き通風孔
及び放熱フィン無し通風孔の少なくとも一方の外側に枠体が形成され、コアを積層することにより前記枠体で前記通風路と外部を仕切るカバーを構成することを特徴とする。
【0012】
また、上記に記載の積層ステータにおいて、前記放熱フィン無し通風孔は前記電磁鋼板のコアの一部を切欠いて構成され、コアを積層することにより外部に開放した通風路を構成することを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の積層ステータにおいて、前記電磁鋼板のコアに形成された放熱フィンはコアの積層面に沿った放熱面とコアの積層方向に沿った放熱面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コアを積層形成する積層ステータにおいて、通風路の放熱フィンの放熱面積を大きく取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明実施例1のコアの転積工程と積層ステータの説明図である。
【
図2】同じく積層ステータを積層方向より見た正面図である。
【
図3】同じく積層ステータを用いた電動機と冷却風の流れ説明図である。
【
図4】本発明実施例2のコアの転積工程の説明図である。
【
図5】本発明実施例3のコアの転積工程の説明図である。
【
図6】本発明実施例2の積層ステータを用いた電動機と冷却風の流れ説明図である。
【
図7】本発明実施例2の積層ステータの通風路の詳細と冷却風の流れ説明図である。
【
図8】従来技術を示す積層ステータと通風カバーを示した説明図である。
【
図9】
図8の積層ステータを積層方向より見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1は本発明の実施例1示す積層ステータを説明した図で、(a)は電磁鋼板のコアを転積する工程を説明した図、(b)はコアが積層された状態の積層ステータの斜視図である。
図2は
図1の積層ステータを積層方向より見た正面図である。
図1において、本実施例の電磁鋼板の各1枚のコア1は、外周の対角部に放熱フィン7と放熱フィン7を覆う通風孔5(放熱フィンつき通風孔)で構成される放熱フィン部3が形成されている。この通風孔5の外側には枠体10がコアと一体に形成されている。また他の対角部には、放熱フィンが無い通風部4が設けられ、具体的には外部に開放された通風孔9(放熱フィン無し通風孔)で形成されている。
【0018】
積層ステータの組立に際しては、
図1(a)に示すように、前記電磁鋼板のコア1を積層方向軸を中心にして、90度ずつ回転させながら1枚ずつ(又は所定枚数を束ねた状態で)積層(転積)することによって、
図1(b)に示すような積層ステータ2が構成される。転積は板厚偏差による積層誤差を少なくするため、回転させながら板材を積層することにより、積層ステータの板厚に影響を与えないようにするためである。上記の積層によって、前記放熱フィン7は1枚(又は所定枚数)おきに前記開放された通風孔9が介在するので、前記放熱フィン7の表裏面と端面は前記開放された通風孔9(通風部4)に晒される。従って、この表裏面と端面は放熱面として機能し、積層方向に対して垂直な表裏の放熱面(積層面に沿った放熱面)と、積層方向に沿った端面が放熱面となる。
【0019】
また、前記放熱フィンつき通風孔5は、積層方向にコアの1枚(又は所定枚数)おきに積層ステータ内に積層方向(電動機の軸方向)の通風路8を形成し、この通風孔5の間に前記開放された通風孔9(通風部4)が介在するので、この開放された通風孔9が通風路8の分岐路6を構成する。
【0020】
図3は本実施例の積層ステータ2を用いた電動機と冷却風の流れ説明図である。11はと13はそれぞれ上記積層ステータ2の前後を支えるとともに回転軸12を支える前フランジと後フランジ、14は上記後フランジの後方に設けられたファンカバーである。前フランジ11と積層体2の間には、積層体2内に形成された通風路8に連通する通風路(8)が形成される。上記構成において、ファンカバー14内のファンが駆動されると、上記通風路8を矢印方向の冷却風が流れる。このとき、分岐路6が通風路8と連通して外部に開放しているので、通風路8の風の流れによって外部から冷却風を吸込む。この外部から分岐路6と通風路8を通じて吸込んだ冷却風によって、前記放熱フィン7の表裏面と積層方向に沿った端面が冷され、積層ステータ5の冷却を行う。
【0021】
本実施例による電磁鋼板のコア1による積層体2は、通風カバーが不要であり、板厚偏差による積層誤差を少なくするための転積技術を利用することにより、コア1を90度ずつ回転することにより、放熱面積を大きく取れる積層ステータを構成することができる。
【0022】
図4は本発明実施例2のコアの転積工程の説明図である。電磁鋼板の各コア1の外周の一対の対角部に放熱フィン7と放熱フィン7を覆う通風孔5(放熱フィンつき通風孔)で構成される放熱フィン部3が形成されている。もう一対の対角部に、放熱フィンが無い通風部4が設けられ、具体的には放熱フィン無し通風孔9で形成されている。前記の通風孔5と9の外側にはそれぞれ枠体10がコアと一体に形成されている。実施例1と異なり本実施例2の特徴点は、放熱フィン無し通風孔9の外側に枠体10がコアと一体に形成されていることである。
【0023】
積層ステータの組立に際しては、
図4に示すように、前記電磁鋼板のコア1を積層方向軸を中心にして、90度ずつ回転させながら1枚ずつ(又は所定枚数を束ねた状態で)積層(転積)することによって、
図6に示すような積層ステータ2が構成される。
図6は実施例2の積層ステータを用いた電動機と冷却風の流れ説明図で、
図7は実施例2の積層ステータの通風路の詳細と冷却風の流れ説明図である。
【0024】
図7で、上記の積層によって、前記放熱フィン7は1枚(又は所定枚数)おきに前記通風孔9が介在するので、前記放熱フィン7の表裏面7aと端面7bは前記通風孔9(通風部4)に晒される。従って、この表裏面7aと端面7bは放熱面として機能し、表裏面7aは積層方向に対して垂直な(積層面に沿った)表裏の放熱面であり、端面7bは積層方向に沿った放熱面となる。また、前記通風孔5は、積層方向にコアの1枚(又は所定枚数)おきに積層方向(電動機の軸方向)の通風路8を形成し、通風孔5の間に通風孔9(通風部4)が介在するので、この通風孔9で通風路8の分岐路6を構成する。この分岐路6は、通風路8に連通して左右方向、上方向のいずれの方向にも、千鳥状、ジグザグ状に分かれて風を流すように構成されている。
【0025】
本実施例2による電磁鋼板のコア1による積層体2は、通風孔5、9の外側にそれぞれ枠体10が形成されているので、枠体10同士の積層によって通風カバーが構成され、
図8、
図9に示すような従来のカバー26は不要である。
【0026】
図6において電動機と冷却風の流れを説明すると、前フランジ11と積層体2の前面の間には、積層体2内に形成された通風路8に連通する通風路(8)が形成される。上記構成において、ファンカバー14内のファンが駆動されると、上記通風路8を矢印方向の冷却風が流れる。このとき、通風路8を流れる冷却風は分岐路6に分かれて流れ、これらの通風路、分岐路に面している前記放熱フィン7の表裏面および積層方向に沿った端面の広い冷却面を冷しながら再び通風路に8に合流し、積層ステータ5全体の冷却を行う。
【0027】
図5は本発明実施例3のコアの転積工程の説明図である。本実施例では、電磁鋼板の各コア1の外周の角部の2辺に、放熱フィン7として板状のフィン7が形成されている。各コア1の外周の他の角部の2辺に、放熱フィンが無い通風部4である通風孔9が形成され、この通風孔9の外側には枠体10がコアと一体に形成されている。実施例2と異なり本実施例3の特徴点は、放熱フィン7として板状のフィン7が形成されていることである。
【0028】
積層ステータの組立に際しては、
図5に示すように、前記電磁鋼板のコア1を積層方向軸を中心にして、90度ずつ回転させながら1枚ずつ(又は所定枚数を束ねた状態で)積層(転積)することによって、
図6に示すような積層ステータ2が構成され、実施例2と同様に通風路8を冷却風が流れて積層ステータ全体が冷却される。本実施例3では、電磁鋼板のコア1による積層体2は、通風孔5の外側に枠体10が形成され、また、放熱フィン7として板状のフィン7が形成されているので、枠体10と板状のフィン7の積層によって通風カバーが構成され、
図8、
図9に示すような従来のカバー26は不要である。
【0029】
また、通風孔9は電磁鋼板の各コア1の外周の角部の2辺に設けられているので、90度ずつ回転させながら1枚ずつ(又は所定枚数を束ねた状態で)積層(転積)することによって、通風孔9と板状のフィン7によって螺旋状の通風路8が形成される。
図6(b)に示される通風路8が積層ステータの外周を螺旋状に回転するように形成される。渦巻状の通風路8は通風距離が長くなり、大きな冷却面積となっている板状の各フィン7の両面に接触して冷却風が流れることで熱交換効率が良くなり、積層ステータ2全体を効果的に冷却することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…電磁鋼板のコア、2…積層ステータ、3…放熱フィン部、4…通風部、5…放熱フィン付き通風孔、6…分岐路、7…放熱フィン、7a…コアの積層面に沿った放熱面、7b…コアの積層方向に沿った放熱面、8…通風路、9…放熱フィン無し通風孔、10…枠体、11…前フランジ、12…回転軸、13……後フランジ、14…ファンカバー。