特許第5706641号(P5706641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706641
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】ブラシモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 23/30 20060101AFI20150402BHJP
   H02K 13/04 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   H02K23/30
   H02K13/04
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-175757(P2010-175757)
(22)【出願日】2010年7月16日
(65)【公開番号】特開2011-24416(P2011-24416A)
(43)【公開日】2011年2月3日
【審査請求日】2013年6月27日
(31)【優先権主張番号】200910108770.7
(32)【優先日】2009年7月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502458039
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ザオ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン リ
(72)【発明者】
【氏名】ユー リ
(72)【発明者】
【氏名】マオ ション ジアン
(72)【発明者】
【氏名】リ シェン リウ
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−535450(JP,A)
【文献】 特開平10−341562(JP,A)
【文献】 電気学会通信教育会,電気学会大学講座 直流機(電気機器各論I),日本,社団法人電気学会,1970年 4月30日,再版,p.80-94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K3/00−3/28
H02K23/00−23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2P個の極をもつ固定子、回転子コアを含む回転子、整流子、及び回転子コアの歯の周りに巻かれた巻線を備えたブラシモータにおいて、
回転子コアは、N個の歯を備え、隣接する歯の間にスロットが形成され;
整流子は、Z1・・・ZX・・・ZY・・・ZMで表されたM個のセグメントを含み、Mは、Nより大きく、N、P、Y及びXは、整数であり、Mは、奇数の整数であり;
各巻線は、出発点がセグメントZXに接続され、そして終了点が別のセグメントZYに接続され、ZX及びZYは、式|Y−X|=(M±1)/Pを満足するものであり;
各巻線は、それに対応する歯(1つ又は複数)に巻かれた少なくとも1つのコイルを含み、一部の巻線は、異なる歯に巻かれた複数のコイルを含み、各巻線のコイルの全巻回数は同じであり;そして
複数の巻線により形成される巻線ユニットが、各隣接セグメント対のセグメント間に接続され、前記巻線ユニットの一部において、1つの巻線が第1の数のコイルを有し、別の巻線が第2の数のコイルを有し、前記第1の数と前記第2の数が異なっている、ブラシモータ。
【請求項2】
複数のコイルを含む前記一部の巻線は、各々、互いに逆方向に異なる歯の周りに巻かれた2つのコイルを有する、請求項1に記載のブラシモータ。
【請求項3】
前記一部の巻線の各巻線の2つのコイルは、2つのセグメント間に接続されると共に、前記2つのセグメント間に接続された仮想ウェーブ巻線として協働する、請求項2に記載のブラシモータ。
【請求項4】
同じ巻線の2つのコイルは、異なる巻回数を有する、請求項2又は3に記載のブラシモータ。
【請求項5】
各隣接巻線対の巻線は、共通の歯又は歯のグループの周りに巻かれたコイルを有する、請求項2、3又は4に記載のブラシモータ。
【請求項6】
前記巻線ユニットの一部において、各隣接巻線対の巻線のコイルは、同じ歯の周りに巻かれる、請求項5に記載のブラシモータ。
【請求項7】
各コイルは、1つの歯の周りに巻かれる、請求項1ないし6のいずれかに記載のブラシモータ。
【請求項8】
前記モータは、4個の極、5個の歯、25個のセグメント、及び25個の巻線を含む、請求項7に記載のブラシモータ。
【請求項9】
各コイルは、複数の歯の周りに巻かれる、請求項1ないし6のいずれかに記載のブラシモータ。
【請求項10】
前記モータは、4個の極、15個の歯、45個のセグメント、及び45個の巻線を含み、各コイルは、3個の歯の周りに巻かれる、請求項9に記載のブラシモータ。
【請求項11】
各巻線ユニットは、2つの巻線しか含まない、請求項1ないし10のいずれかに記載のブラシモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシモータに係り、より詳細には、ブラシモータの巻線に係る。
【背景技術】
【0002】
典型的なブラシモータは、固定子と、スロットで分離された多数の回転子突極を有する回転子コアを含む回転子と、整流子と、回転子コアの極の周りに巻かれた巻線とを備えている。回転子コアを巻線から絶縁するために各スロット内に絶縁材を配置することができる。慣習的なブラシウェーブ巻線モータは、通常、同じ数の回転子スロット(回転子極)及び整流子セグメント、例えば、25個の回転子スロット及び25個の整流子セグメントを採用している。
【0003】
通常は、固定子極、回転子極、及び整流子セグメントの数でモータの構造を記述する。回転子極の数は、回転子極によって画成されるスロットの数に等しいので、固定子極との混同を回避するため、従来、回転子極の数をスロット数と称している。又、従来、整流子セグメントをバーと称し、例えば、4極25スロット25バーのモータは、4個の固定子極、25個の回転子極、及び25個の整流子セグメントを伴うモータを指す。整流子セグメントの数が回転子極の数に等しい場合には、通常そうであるように、それらは記述されず、従って、前記例のモータは、単に、4極25スロットモータと称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の慣習的なブラシウェーブ巻線モータのスロット充填ファクタ(スロット内の絶縁ワイヤの合計断面積とスロットの断面積との比)は、特に小型モータが多数の狭い回転子スロットを有するときには、比較的小さく、モータの性能を制限する。
【0005】
従って、スロット充填ファクタの高い改良されたブラシモータが要望される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、その1つの態様において、2P個の極をもつ固定子、回転子コアを含む回転子、整流子、及び回転子コアの歯の周りに巻かれた巻線を備えたブラシモータであって、回転子コアは、N個の歯を備え、隣接する歯の間にスロットが形成され;整流子は、Z1・・・ZX・・・ZY・・・ZMで表されたM個のセグメントを含み、Mは、Nより大きく、N、P、Y及びXは、整数であり、Mは、奇数の整数であり;各巻線は、出発点がセグメントZXに接続され、そして終了点が別のセグメントZYに接続され、ZX及びZYは、式|Y−X|=(M±1)/Pを満足するものであり;各巻線は、それに対応する歯(1つ又は複数)に巻かれた少なくとも1つのコイルを含み、幾つかの巻線は、異なる歯に巻かれた複数のコイルを含み、各巻線のコイルの全巻回数は実質的に同じであり;そして複数の巻線により形成される巻線ユニットが、各対の隣接セグメント間に接続される、ブラシモータを提供する。
【0007】
好ましくは、複数のコイルを含む前記幾つかの巻線は、各々、互いに逆方向に異なる歯の周りに巻かれた2つのコイルを有する。
【0008】
好ましくは、2つのコイルを有する各巻線の2つのコイルは、2つのセグメント間に接続されると共に、前記2つのセグメント間に接続された仮想ウェーブ巻線として協働する。
【0009】
好ましくは、同じ巻線の2つのコイルは、異なる巻回数を有する。
【0010】
好ましくは、各対の隣接巻線は、共通の歯又は歯のグループの周りに巻かれたコイルを有する。
【0011】
好ましくは、ある巻線ユニットにおいて、隣接対の巻線のコイルは、同じ歯の周りに巻かれる。
【0012】
好ましくは、各コイルは、1つの歯の周りに巻かれる。
【0013】
好ましくは、モータは、4個の極、5個の歯、25個のセグメント、及び25個の巻線を含む。
【0014】
或いは又、各コイルは、複数の歯の周りに巻かれる。
【0015】
好ましくは、モータは、4個の極、15個の歯、45個のセグメント、及び45個の巻線を含み、各コイルは、3個の歯の周りに巻かれる。
【0016】
好ましくは、各巻線ユニットは、2つの巻線しか含まない。
【0017】
以下、添付図面を参照し、本発明の好ましい実施形態を一例として説明する。2つ以上の図に現れる同じ構造物、要素又は部品は、一般的に、それらが現れる全ての図において同じ参照番号で示す。図示されたコンポーネント及び特徴部の寸法は、一般的に、表現の便宜上及び明瞭化のために選択されたものであって、必ずしも正しいスケールで示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好ましい実施形態によるブラシモータの巻線構成を示す。
図2図1のブラシモータに対する巻線と歯とセグメントとの間の接続関係を示す巻線テーブルである。
図3】本発明の別の実施形態によるブラシモータの巻線構成を示す。
図4図3のブラシモータに対する巻線と歯とセグメントとの間の接続関係を示す巻線テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によるブラシモータは、2P個の磁極をもつ固定子、回転子コアを含む回転子、整流子、及び回転子コアに巻かれた巻線を備えている。回転子コアは、N個の歯を備え、隣接する歯の間にスロットが形成される。整流子は、Z1・・・ZX・・・ZY・・・ZMで表されたM個のセグメントを含み、Mは、Nより大きく、Mは、奇数の整数であり、そしてN、P、Y及びXは、整数である。各巻線は、出発点がセグメントZXに接続され、そして終了点が別のセグメントZYに接続され、ZX及びZYは、式|Y−X|=(M±1)/Pを満足するものである。各巻線は、それに対応する歯又は歯のセットに巻かれた少なくとも1つのコイルを含む。幾つかの巻線は、各々、異なる歯に巻かれた複数のコイルを含む。各巻線のコイルの全巻回は実質的に同じである。複数の巻線を含む巻線ユニットが、各対の隣接セグメント間に接続される。
【0020】
モータは、PMDC(永久磁石直流)モータ又はユニバーサルモータであり、洗濯機、ミキサー、ジューサー、ヘアドライヤー、電気掃除機、等に使用されるものである。
【0021】
4個の極、5個のスロット及び25個のバー(セグメント)をもつPMDCモータについて、一例として、以下に述べる。
【0022】
図1及び2を参照すれば、モータ800は、4個の固定子極を形成する4個の磁石100を有する固定子と、4個のブラシ200と、回転子コア300を有する回転子と、整流子400とを備えている。回転子コア300は、5個の歯A〜Eを有し、隣接する歯の間にスロットが形成されている。整流子400は、25個のセグメント1〜25を備えている。回転子は、更に、歯の周りに巻かれ且つスロットに収容された25個の巻線501〜525を備えている(図1には2つの巻線501、502しか示されていない)。各巻線は、出発点及び終了点が、各々セグメントの2つに接続される。巻線501〜525は、図2に示す巻線テーブルに基づいて順次に巻かれる。例えば、巻線501は、歯Aに15巻回で巻かれたコイルを含む。巻線501の出発点は、セグメント1に接続され、そしてその終了点は、セグメント14に接続される。歯Aに巻かれた巻線501は、セグメント1と14との間の接続されたウェーブ巻線を形成する。巻線502は、歯A及びの周りに各々巻かれた2つのコイルを含む。巻線502の出発点は、セグメント14に接続され、そしてその終了点は、セグメント2に接続される。巻線501及び502は、隣接セグメント1と2との間に接続された巻線ユニットを構成する。巻線502において、歯Aの周りに巻かれるコイル、及び歯の周りに巻かれるコイルは、巻回数が異なってもよい。
例えば、歯Aの周りに巻かれるコイルは、9巻回で、歯の周りに巻かれるコイルは、6巻回である。巻線502の全巻回数は、巻線501に等しい。巻線502では、歯Aの周りに巻かれるコイル、及び歯Eの周りに巻かれるコイルにより発生される逆EMF(起電力)のベクトル合成が、その巻線502が接続されるセグメント2及び14に対応する。
即ち、セグメント2と14との間に接続される巻線502の2つのコイルは、セグメント2と14との間に接続された仮想ウェーブ巻線として協働する。歯Aに巻かれるコイル、及び歯Eに巻かれるコイルは、互いに逆方向に巻かれる。
【0023】
図2に示すように、大文字は、コイルがそれに対応する歯に時計方向に巻かれることを表している。小文字は、コイルがそれに対応する歯に反時計方向に巻かれることを表している。文字の近くの数字は、対応する歯に巻かれるコイルの巻回数を表している。各対の隣接巻線は、共通の歯に巻かれたコイルを有する。例えば、巻線501では、コイルが歯Aに巻かれる。巻線502では、第1のコイルも歯Aに巻かれる。セグメント14と15との間に接続される巻線ユニットでは、巻線502のコイル及び巻線503のコイルが同じ歯A及びEに巻かれる。
【0024】
図3は、本発明の別の実施形態によるブラシモータの巻線構成を示す。この実施形態のモータは、4極、15スロット、45バーのモータである。従って、磁石100によって4個の固定子極が形成され、回転子コア300には15個の歯(A〜O)があり、そして整流子400には45個のセグメント(1〜45)がある。又、45個の回転子巻線(600〜645)があり、これら巻線の各コイルは、3つの歯に及び、即ち3つの歯の周りに巻かれている。図4は、図3のブラシモータに対する巻線と歯とセグメントとの間の接続関係を示す巻線テーブルである。このモータの巻線構成は、各コイルが3つの歯に巻かれることを除いて、第1の実施形態のモータに対する巻線構成と同様である。巻線601〜645の幾つかは、1つのコイルで構成され、そして他の巻線は、互いに逆方向に巻かれた2つのコイルで構成される。各対の隣接巻線は、共通の歯のグループに巻かれたコイルを有する。例えば、巻線601において、コイルは、歯O、A及びBに巻かれる。巻線602において、第1のコイルは、歯O、A及びBに巻かれる。巻線602の第2コイル、及び巻線603の第1コイルは、共通の歯d、e及びfに巻かれる。
【0025】
あるモータでは、同じ巻線の幾つかのコイルが同じ巻回数を有することが理解される。しかし、2つのセグメント間に接続された同じ巻線のコイルが、2つのセグメント間に接続された仮想ウェーブ巻線として協働するのが好ましい。
【0026】
固定子極は、個別の永久磁石により形成されるものとして示されたが、共通の永久磁石で形成されてもよいし、又は電磁石、即ち固定子コイルによって形成されてもよい。
【0027】
本発明の説明及び特許請求の範囲において、動詞「備える(comprise)」、「含む(include)」、「収容する(contain)」及び「有する(have)」並びにその変化は、各々、ここに述べたアイテムの存在を特定するために包括的な意味で使用され、付加的なアイテムの存在を除外するものではない。
【0028】
本発明は、1つ以上の好ましい実施形態を参照して説明したが、当業者であれば、種々の変更がなされ得ることが明らかであろう。それ故、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって決定されるものとする。
【0029】
例えば、固定子極は、個別の永久磁石により形成されるものとして示されたが、共通の永久磁石で形成されてもよいし、又は電磁石、即ち固定子コイルによって形成されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1〜25:セグメント
100:磁石
200:ブラシ
300:回転子コア
400:整流子
501〜525:巻線
600〜645:巻線
800:モータ
A〜E:歯
A〜O:歯
図1
図2
図3
図4