(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態による直流用検電器について図面を参照して説明する。
ここでは、計測対象が、電車に電源を供給する架線(直流電車線)である場合を例として説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態による直流用検電器1を示す概略ブロック図である。
この図において、直流用検電器1は、引込電極10、接触端子11、計測部20、仮想接地部30、警報回路部40、テストスイッチ部51、除電スイッチ部52、及び基準電位部80を備えている。
【0020】
計測部20は、例えば、架線2の電圧によって放射される電界から架線2の電圧を計測する表面電位計である。計測部20は、基準電位部80のコモン端子T1を介して仮想接地部30に接続されている。計測部20は、基準電位部80の電位を基準として、架線2の電位を計測することにより架線2の(対地)電圧を計測する。また、計測部20は、計測した架線2の電圧が予め定められた値以上である場合に、警報回路部40(警報出力部)に警報を出力させる制御信号を出力する。
【0021】
また、計測部20は、チョッパー部(21、22)、検出電極23、抵抗24、及び計測回路部25を備えている。
チョッパー部(21、22)は、基準電位部80に接続された導体により形成される。チョッパー部(21、22)は、引込電極10と検出電極23との間に配置され、予め定められた所定の振動数によって振動する。なお、チョッパー部(21、22)が振動する方向は、例えば、検出電極23における引込電極10に対向する面と平行な向き、且つ、チョッパー部21とチョッパー部22が対向する向きである。このチョッパー部21とチョッパー部22とが振動することによって、チョッパー部21とチョッパー部22との間の距離間隔は、周期的に変化する。これにより、引込電極10から検出電極23に向かって、チョッパー部21とチョッパー部22との間を通過する電界が振動する。つまり、チョッパー部(21、22)は、引込電極10から放射される電界を振動させる。
【0022】
検出電極23は、引込電極10における電界の放出面と対向させて配置されている。検出電極23は、チョッパー部(21、22)と予め定められた距離間隔で配置されている。また、検出電極23は、抵抗24を介して基準電位部80に接続されている。検出電極23は、チョッパー部(21、22)によって振動された電界に応じて電荷を集散する。
【0023】
抵抗24は、一端が検出電極23に、他端が基準電位部80に、それぞれ接続されている。
計測回路部25は、検出電極23と基準電位部80との間に抵抗24を介して流れる電流の変化に基づいて、架線2の電位を計測する。これにより、計測回路部25は、架線2の(対地)電圧を計測する。また、計測回路部25は、計測した架線2の電圧が予め定められた値以上である場合に、警報回路部40に警報を出力させる制御信号を出力する。
【0024】
引込電極10は、導体により形成され、チョッパー部(21、22)又は検出電極23と予め定められた距離に配置されている。つまり、引込電極10とチョッパー部(21、22)との距離間隔は、固定間隔W1になっている。また、引込電極10は、直流用検電器1によって架線2の電圧の有無又は停電状態の確認が行われる際に、接触端子11を介して架線2に接触される。引込電極10は、架線2に接触された場合に、架線2と等しい電位になる。ここで、停電状態の確認とは、架線2に電圧が供給されていない状態を確認することである。
接触端子11は、導体により形成され、引込電極10に接続されている。接触端子11は、例えば、フック状の形状であり、架線2に接触される。
【0025】
仮想接地部30は、基準電位部80のコモン端子T1を介して計測部20に接続されている。仮想接地部30は、基準電位部80の電位を基準として直流電源31より供給される電圧を昇圧した直流電圧を放電電極部70に印加してプラス・マイナスイオンを生成する。仮想接地部30は、生成したプラス・マイナスイオンを放電電極部70から放出する。
また、仮想接地部30は、直流電源31、ダイオード32、コンデンサ33、発振回路部34、トランス部35、スイッチ部36、マイナス昇圧整流回路部100、プラス昇圧整流回路部200、抵抗(61、62)、及び放電電極部70を備えている。
【0026】
直流電源31は、陰極端子がコモン線L1に、陽極端子がスイッチ部36の一端に、それぞれ接続されている。直流電源31は、例えば、電池であり、スイッチ部36及びダイオード32を介して、発振回路部34に直流電圧を供給する。
ダイオード32は、アノード端子がスイッチ部36の他端に、カソード端子が発振回路部34の電圧供給線に、それぞれ接続されている。ダイオード32は、直流電源31から発振回路部34に流れる電流を整流する。
【0027】
コンデンサ33は、一端がコモン線L1に、他端がダイオード32のカソード端子に、それぞれ接続されている。コンデンサ33は、直流電源31から供給される電圧を安定化させる平滑コンデンサとして機能する。
【0028】
発振回路部34は、例えば、間欠発振する発振回路である。発振回路部34は、直流電源31から供給される電圧により間欠発振する交流電圧(一次側交流電圧)を生成する。
また、発振回路部34は、コンデンサ341、抵抗342、バイポーラトランジスタ343、及びダイオード344を備えている。
コンデンサ341と抵抗342とは、電圧供給線とトランス部35の一次側コイルの一端との間に直列に接続されている。抵抗342は、コンデンサ341に電荷を充電するための電流及びバイポーラトランジスタ343のベース電流を制限する。また、コンデンサ341は、電荷を充電することによって、バイポーラトランジスタ343のベース端子に電圧を供給する。抵抗342とコンデンサ341との時定数によって、間欠発振される時間間隔が設定されている。
【0029】
バイポーラトランジスタ343は、コレクタ端子が電圧供給線に、ベース端子が抵抗342とコンデンサ341とを接続する信号線に、エミッタ端子がトランス部35の一次側コイルの中間端子に、それぞれ接続されている。バイポーラトランジスタ343は、コンデンサ341に電荷が充電されて所定の電圧以上になると、コレクタ端子とエミッタ端子との間を導通状態にする。また、バイポーラトランジスタ343は、コンデンサ341に電荷が放電されて所定の電圧未満になると、コレクタ端子とエミッタ端子との間を非導通状態にする。
ダイオード344は、アノード端子がバイポーラトランジスタ343のエミッタ端子に、カソード端子がバイポーラトランジスタ343のコレクタ端子に、それぞれ接続されている。ダイオード344は、バイポーラトランジスタ343のエミッタ端子がコレクタ端子より高い電位になった場合に、エミッタ端子とコレクタ端子との間を導通状態にする。
【0030】
トランス部35は、基準電位部80のコモン線L1にそれぞれ接続されている一次側コイル及び二次側コイルを備えている。一次側コイルは、一端がコンデンサ341の一端に、他端がコモン線L1に、それぞれ接続されている。また、二次側コイルは、マイナス昇圧整流回路部100、及びプラス昇圧整流回路部200にそれぞれ接続されている。トランス部35は、一次側コイルに供給された一次側交流電圧を昇圧して、二次側コイルに二次側交流電圧として出力する。
【0031】
スイッチ部36は、直流電源31とダイオード32との間に接続される。スイッチ部36は、直流用検電器1が使用される際に、使用者によって導通状態にされる。
【0032】
マイナス昇圧整流回路部100は、トランス部35から供給され二次側交流電圧を、マイナス整流及び昇圧する。マイナス昇圧整流回路部100は、マイナス整流及び昇圧したコモン線L1の電位に対してマイナス側に昇圧した直流電圧を、抵抗61を介してマイナス電極(71、72)に印加する。ここでは、マイナス昇圧整流回路部100は、5倍圧整流回路を用いた例である。
また、マイナス昇圧整流回路部100は、コンデンサ101〜105、及びダイオード111〜115を備えている。
【0033】
コンデンサ101及びダイオード111は、トランス部35の二次側コイルの端子間に直列に接続されている。なお、ダイオード111は、カソード端子がトランス部35を介してコモン線L1に接続されている。コンデンサ101及びダイオード111は、トランス部35から供給され二次側交流電圧をマイナス整流する。
ダイオード112〜115は、抵抗61からダイオード111に向かう向きが順方向になるように、ダイオード111のアノード端子と抵抗61の一端との間に、直列に接続されている。また、コンデンサ102は、ダイオード111のカソード端子とダイオード113のカソード端子との間に接続され、コンデンサ103は、ダイオード113のカソード端子とダイオード115のカソード端子との間に接続されている。また、コンデンサ104は、ダイオード112のカソード端子とダイオード114のカソード端子との間に接続され、コンデンサ105は、ダイオード114のカソード端子とダイオード115のアノード端子との間に接続されている。
ダイオード111〜115及びコンデンサ101〜105は、電圧逓倍回路を5段備えた5倍圧整流回路として機能する。
【0034】
プラス昇圧整流回路部200は、トランス部35から供給され二次側交流電圧を、プラス整流及び昇圧する。プラス昇圧整流回路部200は、プラス整流及び昇圧したコモン線L1の電位に対してプラス側に昇圧した直流電圧を、抵抗62を介してプラス電極(73、74)に印加する。ここでは、プラス昇圧整流回路部200は、6倍圧整流回路を用いた例である。
また、プラス昇圧整流回路部200は、コンデンサ201〜106、及びダイオード211〜216を備えている。
【0035】
コンデンサ201及びダイオード211は、トランス部35の二次側コイルの端子間に直列に接続されている。なお、ダイオード211は、アノード端子がトランス部35を介してコモン線L1に接続されている。コンデンサ201及びダイオード211は、トランス部35から供給され二次側交流電圧をプラス整流する。
ダイオード212〜216は、ダイオード211から抵抗62に向かう向きが順方向になるように、ダイオード211のカソード端子と抵抗62の一端との間に、直列に接続されている。また、コンデンサ202は、ダイオード212のアノード端子とダイオード214のアノード端子との間に接続され、コンデンサ203は、ダイオード214のアノード端子とダイオード216のアノード端子との間に接続されている。また、コンデンサ204は、ダイオード211のアノード端子とダイオード213のアノード端子との間に接続され、コンデンサ205は、ダイオード213のアノード端子とダイオード215のアノード端子との間に接続されている。また、コンデンサ206は、ダイオード215のアノード端子とダイオード216のカソード端子との間に接続されている。
ダイオード211〜215及びコンデンサ201〜205は、電圧逓倍回路を6段備えた6倍圧整流回路として機能する。
【0036】
放電電極部70は、プラスイオンを放出するプラス電極(73、74)とマイナスイオンを放出するマイナス電極(71、72)との組を複数備えている。
図1に示される直流用検電器1では、例えば、2組備えている。
なお、プラス電極(73、74)及びマイナス電極(71、72)の配置については、後述する。
【0037】
警報回路部40(警報出力部)は、計測部20から供給される制御信号に基づいて、警報を出力する。つまり、警報回路部40は、計測部20により予め定められた値以上の電圧が計測された場合に、警報を出力する。すなわち、警報は、架線2に電圧が供給されている場合に出力される。
また、警報回路部40は、直流電源41、発光ダイオード42、スピーカ43、及びスイッチ部44を備えている。
直流電源41は、例えば、電池であり、発光ダイオード42及びスピーカ43に電圧を供給する。発光ダイオード42は、警報として光を出力する。また、スピーカ43は、警報としてブザー音を出力する。
スイッチ部44は、発光ダイオード42及びスピーカ43と直流電源41との間に接続されている。スイッチ部44は、計測部20により予め定められた値以上の電圧が計測された場合に、発光ダイオード42及びスピーカ43と直流電源41との間を導通状態にする。これにより、発光ダイオード42及びスピーカ43は、警報を光とブザー音により出力する。また、スイッチ部44は、テストスイッチ部51から供給される信号に基づいて、発光ダイオード42及びスピーカ43と直流電源41との間を導通状態にする。
【0038】
テストスイッチ部51は、例えば、ボタンスイッチなとのスイッチであり、警報出力部40から警報を出力させるスイッチである。テストスイッチ部51は、警報出力部40が正常に動作するか否かを確認する際に、直流用検電器1の使用者によって押下される。テストスイッチ部51は、直流用検電器1の使用者によって押下された場合に、スイッチ部44を導通状態にする信号を出力する。また、テストスイッチ部51は、直流用検電器1の使用者によって押下された場合に、後述する除電スイッチ部52を導通状態にさせる信号を出力する。
【0039】
除電スイッチ部52は、引込電極10と基準電位部80のコモン端子T1との間に接続されている。除電スイッチ部52は、テストスイッチ部51から供給される信号に基づいて、引込電極10と基準電位部80のコモン端子T1との間を導通状態にして、引込電極10の電位を基準電位部80と等しい電位にする。つまり、除電スイッチ部52は、テストスイッチ部51によって警報を出力させる際に、引込電極10と基準電位部80との間を導通状態にする。
【0040】
基準電位部80は、コモン端子T1及びコモン線L1を含んでいる。基準電位部80の電位は、直流用検電器1において基準となる電位である。また、基準電位部80は、トランス部35の一次側コイルの一端と二次側コイルの一端とを接続する共通の電位となるところである。直流用検電器1では、この基準電位部80を基準として電位の極性及び大きさが決まる。また、基準電位部80の電位は、仮想接地部30によって、大地と等しい電位となる。
【0041】
次に、プラス電極(73、74)及びマイナス電極(71、72)の配置について説明する。
図2は、本実施形態による放電電極部70における電極の配置を示す構成図である。
この図において、プラス電極(73、74)とマイナス電極(71、72)とは、円周上に等間隔に配置されている。さらに、プラス電極(73、74)又はマイナス電極(71、72)である電極のうち、隣り合う電極における円Z1の中心に対する角度が、それぞれ等しい角度となっている。また、プラス電極73(又は74)とマイナス電極71(又は72)とが円周において交互に配置されている。すなわち、プラス電極(73、74)又はマイナス電極(71、72)である電極の数は、偶数個(例えば、4個)であり、各電極が偶数個の頂点を持つ正多角形(例えば、正方形)の各頂点に配置されている。また、プラス電極73(又は74)とマイナス電極71(又は72)とは、正多角形(例えば、正方形)の隣り合う頂点において交互に配置されている。
【0042】
放電電極部70における電極を上述のような配置にする理由は、架線2の電圧の有無又は停電状態の確認が行われる際に風がふいた場合に、仮想接地における基準電位が変動することがあるためである。これは、放電電極部70においてプラスイオン及びマイナスイオンが風に流されて、プラスイオンとマイナスイオンとのバランスが崩れることが原因である。本実施形態における直流用検電器1では、放電電極部70における電極の配置を上述のように配置することにより、風の影響による基準電位部80の電位の変動を低減することができる。
【0043】
例えば、プラス電極73からマイナス電極71に向かって風がふいた場合、プラス電極73で生成されたプラスイオンは、マイナス電極71に向かって流れるため、マイナス電極71周辺のプラスイオンが多くなる。このため、マイナス電極71から放出されるマイナスイオンが多くなる。また、プラス電極73周辺では、マイナスイオンが少なくなるため、プラス電極73から放出されるプラスイオンが抑制される。一方、この場合は、マイナス電極72からプラス電極74に向かって風がふいていることになる。そのため、マイナス電極72とプラス電極74との間では、プラス電極73とマイナス電極71とは逆に、プラス電極74から放出されるプラスイオンが多くなり、マイナス電極71から放出されるマイナスイオンが抑制される。これにより、直流用検電器1では、部分的にプラスイオンとマイナスイオンとのバランスが崩れるが、放電電極部70全体としては、プラスイオンとマイナスイオンとのバランスを保つことができる。結果として、直流用検電器1は、風の影響による基準電位部80の電位の変動を低減することができる。
【0044】
また、仮想接地部30は、放電電極部70の周囲を円筒状に覆う導体部75を備えている。これにより、仮想接地部30は、外乱による影響を低減することができる。また、導体部75は、プラス電極(73、74)及びマイナス電極(71、72)に風が当たることを防ぐため、風の影響による基準電位部80の電位の変動を低減することができる。
また、放電電極部70は、直流用検電器1が使用される場合に、大地に対向させて配置されている。
【0045】
次に、本実施形態における直流用検電器1の動作について説明する。
まず、直流用検電器1が架線2の電圧の有無又は停電状態の確認を行う検電動作について説明する。
【0046】
まず、直流用検電器1において、スイッチ部36が、使用者によって導通状態にされ、接触端子11が架線2に接触される。スイッチ部36が導通状態にある場合、仮想接地部30は、基準電位部80を仮想接地させ、大地と等しい電位にする。
また、引込電極10は、接触端子11を介して架線2に接触され、架線2と等しい電位になる。これにより、引込電極10は、検出電極23に向けて電界を放射する。チョッパー部(21、22)は、振動することによって、チョッパー部21とチョッパー部22との間を通過する電界を振動(変化)させる。検出電極23は、この電界の変化を受けて、電荷を集散させる。この電荷の集散により抵抗24にチョッパー部(21、22)の振動数と同じ周波数の交流電流が流れる。
計測回路部25は、検出電極23と基準電位部80との間に抵抗24を介して流れる電流の変化に基づいて、架線2の電位を計測する。これにより、計測回路部25は、架線2の(対地)電圧を計測する。また、計測回路部25は、計測した架線2の電圧が予め定められた値以上である場合に、警報回路部40に警報を出力させる制御信号を出力する。
【0047】
警報回路部40のスイッチ44は、計測回路部25によって計測された架線2の電圧が予め定められた値以上である場合(架線2に電圧が供給されている場合)に、導通状態になる。これにより、直流電源41から発光ダイオード42及びスピーカ43に電圧が供給される。よって、警報回路部40は、架線2に電圧が供給されている場合に、光とブザー音の警報を出力する。これにより、使用者は、架線2の電圧の有無又は停電状態を確認することができる。
【0048】
なお、接触端子11が使用者の衣服に触れる等の原因で、引込電極10が帯電することがある。このように引込電極10が帯電した場合、引込電極10は、自然放電するこができない。そのため、計測部20は、帯電した引込電極10の電位を測定することになり、正確に計測できないことがある。この対策として、直流用検電器1は、除電スイッチ部52を備えている。
【0049】
除電スイッチ部52は、テストスイッチ部51から供給される信号に基づいて、引込電極10と基準電位部80のコモン端子T1との間を導通状態にして、引込電極10の電位を基準電位部80と等しい電位にする。ここで、テストスイッチ部51は、警報出力部40が正常に動作するか否かを確認する際に、使用者によって押下される。なお、使用者は、架線2の電圧の有無又は停電状態を確認する前に、テストスイッチ部51を押下する。テストスイッチ部51は、使用者によって押下された場合に、除電スイッチ部52を導通状態にさせる信号を出力する。つまり、除電スイッチ部52は、テストスイッチ部51によって警報を出力させる際に、引込電極10と基準電位部80との間を導通状態にする。これにより、引込電極10が基準電位部80と等しい電位に除電されるので、直流用検電器1は、正確に検電動作を行うことができる。
また、テストスイッチ部51は、使用者によって押下された場合に、警報回路部40に警報(音と光による警報)を出力させる。
【0050】
次に、仮想接地部30の動作について説明する。
まず、スイッチ部36が、使用者によって導通状態にされると、直流電源31は、ダイオード32を介して、直流電圧を発振回路部34に供給する。これにより、発振回路部34のコンデンサ341に電荷が充電される。バイポーラトランジスタ343は、コンデンサ341に電荷が充電されて所定の電圧以上になると、コレクタ端子とエミッタ端子との間を導通状態にする。これにより、発振回路部34が自励発振により間欠的に高周波発振する。すなわち、発振回路部34は、バイポーラトランジスタ343のベース電流を少なくして間欠発振させるため抵抗342の値を大きくしてある。そして、発振回路部34は、ある電荷量がコンデンサ341に充電されると発振し、その充電された電荷が放電すると発振は停止する。これを繰り返すことで間欠発振(一次側交流電圧)となり、トランス部35は、一次側コイルに供給された一次側交流電圧を昇圧して、二次側コイルに二次側交流電圧を間欠的に出力する。
【0051】
次に、マイナス昇圧整流回路部100は、トランス部35から供給され二次側交流電圧を、マイナス整流及び昇圧する。マイナス昇圧整流回路部100は、マイナス整流及び昇圧したコモン線L1の電位に対してマイナス側に昇圧した直流電圧を、抵抗61を介してマイナス電極(71、72)に印加する。また、プラス昇圧整流回路部200は、トランス部35から供給され二次側交流電圧を、プラス整流及び昇圧する。プラス昇圧整流回路部200は、プラス整流及び昇圧したコモン線L1の電位に対してプラス側に昇圧した直流電圧を、抵抗62を介してプラス電極(73、74)に印加する。
これにより、マイナス電極(71、72)は、マイナスイオンを放出し、プラス電極(73、74)はプラスイオンを放出する。
【0052】
なお、プラス電極(73、74)及びマイナス電極(71、72)では、大地を基準電位とした基準電位部80の電圧極性と逆極性のイオンの放出が抑制され、同極性のイオンの放出が多く行われる。
つまり、基準電位部80がプラス帯電している場合には、マイナス電極(71、72)の電位は大地との電位差が小さくなり、プラス電極(73、74)の電位は大地との電位差が大きくなる。これにより、仮想接地部30では、マイナス電極(71、72)によるマイナスイオンの放出が抑制され、プラス電極(73、74)によるプラスイオンの放出がマイナスイオンに対して多くなる。したがって、この場合に仮想接地部30では、プラス電極(73、74)のみから大地に向かって放電する。この結果、プラス電極(73、74)から放出されたプラスイオンが大地に達すると、基準電位部80からプラス電極(73、74)を通じて大地に至るプラスの空中電路が形成され、基準電位部80の正電荷が大地にと漏洩して除電される。つまり、仮想接地部30は、基準電位部80の電位を大地と等しい電位にして、仮想接地する。
【0053】
一方、基準電位部80がマイナス帯電している場合には、プラス電極(73、74)の電位は大地との電位差が小さくなり、マイナス電極(71、72)の電位は大地との電位差が大きくなる。これにより、仮想接地部30では、プラス電極(73、74)によるプラスイオンの放出が抑制され、マイナス電極(71、72)によるマイナスイオンの放出がプラスイオンに対して多くなる。したがって、この場合に仮想接地部30では、マイナス電極(71、72)のみから大地に向かって放電する。この結果、マイナス電極(71、72)から放出されたマイナスイオンが大地に達すると、基準電位部80からマイナス電極(71、72)を通じて大地に至るプラスの空中電路が形成され、基準電位部80の負電荷が大地に漏洩して除電される。つまり、仮想接地部30は、基準電位部80の電位を大地と等しい電位にして、仮想接地する。
【0054】
以上のように、直流用検電器1は、計測部20が基準電位部80の電位を基準として、架線2(計測対象)の電位を計測することにより架線2の(対地)電圧を計測する。仮想接地部30は、基準電位部80の電位を基準として直流電源より供給される電圧を昇圧した直流電圧を放電電極部70に印加してプラス・マイナスイオンを生成する。仮想接地部30は、生成したプラス・マイナスイオンを放電電極部70から放出する。これにより、プラス電極(73、74)及びマイナス電極(71、72)では、大地を基準電位とした基準電位部80の電圧極性と逆極性のイオンの放出が抑制され、同極性のイオンの放出が多く行われる。その結果、仮想接地部30では、同極性のイオンが大地に到達して、基準電位部80から放電電極部70を通じて大地に至る空中電路が形成される。これにより、直流用検電器1は、接地線によって接地しなくても、架線2の電圧の有無又は停電状態の確認を行うことができる。したがって、直流用検電器1は、接地線によって接地する必要がなく、利便性を向上することができる。
【0055】
また、放電電極部70は、プラスイオンを放出するプラス電極(73、74)とマイナスイオンを放出するマイナス電極(71、72)との組を複数(例えば、2組)備える。また、プラス電極(73、74)とマイナス電極(71、72)とは、円周上に配置されている。さらに、放電電極部70は、プラス電極(73、74)又はマイナス電極(71、72)である電極のうち、隣り合う電極の円の中心に対する角度がそれぞれ等しい角度となり、且つ、プラス電極(73、74)とマイナス電極(71、72)とが円周において交互に配置されている。これにより、直流用検電器1は、風の影響による基準電位部80の電位の変動を低減することができる。したがって、直流用検電器1は、精度よく安定して架線2の電圧を計測することができる。
【0056】
図3は、本実施形態における直流用検電器1の効果を示すグラフである。
この図において、グラフは、架線2の印加電圧と直流用検電器1を用いて計測した計測電圧の関係を示している。このグラフにおいて、横軸は、架線2に印加された印加電圧[V]を示している。また、縦軸の左辺は、直流用検電器1を用いて計測した計測電圧[V]を示し、縦軸の右辺は、計測を行った際の風速[m/s]を示している。
また、このグラフにおいて、白抜き四角は、計測値の最大を示し、黒三角は、計測値最小を示している。さらに、黒丸は、風速を示している。
このグラフが示すように、架線2の印加電圧と計測電圧とは比例関係にある。そのため、直流用検電器1は、架線2の電圧の有無又は停電状態の確認に使用することができる。
【0057】
また、白抜き四角、黒三角、及び黒丸によって示されるように、直流用検電器1は、風の影響を低減し、精度よく安定して計測することができる。
【0058】
<第2の実施形態>
次に、本発明による直流用検電器の別の一例について説明する。
図4は、本実施形態による直流用検電器1aを示す概略ブロック図である。
この図において、直流用検電器1aは、接触端子11、計測部20a、仮想接地部30、警報回路部40、及び基準電位部80を備えている。この図において、
図1と同じ構成には同一の符号を付す。また、放電電極部70における電極の配置は、
図2に示される第1の実施形態と同様である。
【0059】
計測部20aは、例えば、抵抗分圧を用いて架線2の電圧を計測する電位計である。計測部20aは、基準電位部80のコモン端子T1を介して仮想接地部30に接続されている。計測部20aは、基準電位部80の電位を基準として、接触端子11を介して架線2の電位を計測することにより架線2の(対地)電圧を計測する。また、計測部20aは、計測した架線2の電圧が予め定められた値以上である場合に、警報回路部40(警報出力部)に警報を出力させる制御信号を出力する。
【0060】
また、計測部20aは、抵抗26(第1の抵抗)、抵抗27(第2の抵抗)、及び電圧計測部28を備えている。
抵抗26及び抵抗27は、架線2と基準電位部80との間に直列に接続されている。抵抗26及び抵抗27は、架線2の電圧を電圧計測部28によって測定できるレベルの電圧に、抵抗分圧する抵抗分圧器として機能する。
電圧計測部28は、抵抗27の両端の電圧を計測する。電圧計測部28は、抵抗26と抵抗27とによって抵抗分圧された電圧に基づいて、架線2の(対地)電圧を計測する。また、電圧計測部28は、計測した架線2の電圧が予め定められた値以上である場合に、警報回路部40に警報を出力させる制御信号を出力する。
【0061】
本実施形態における直流用検電器1aの動作は、第1の実施形態における直流用検電器1の計測部20が、抵抗分圧を用いて計測する計測部20aに置き換った点、及び、引込電極10及び除電スイッチ部52を備えない点を除き、基本的に同様である。
【0062】
以上のように、直流用検電器1aは、計測部20a及び仮想接地部30を備える。仮想接地部30は、基準電位部80の電位を大地と等しい電位にして、仮想接地する。また、計測部20aは、抵抗27の両端の電圧を計測する。電圧計測部28は、抵抗26と抵抗27とによって抵抗分圧された電圧に基づいて、架線2の(対地)電圧の電圧を計測する。これにより、直流用検電器1aは、接地線によって接地しなくても、架線2の電圧の有無又は停電状態の確認を行うことができる。したがって、直流用検電器1aは、接地線によって接地する必要がなく、第1の実施形態における直流用検電器1と同様に、利便性を向上することができる。
【0063】
また、仮想接地部30の放電電極部70における電極の配置は、
図2に示される第1の実施形態と同様である。そのため、直流用検電器1aは、風の影響による基準電位部80の電位の変動を低減することができる。したがって、直流用検電器1aは、第1の実施形態における直流用検電器1と同様に、精度よく安定して架線2の電圧を計測することができる。
【0064】
なお、本発明の実施形態によれば、直流用検電器1(又は1a)は、基準電位部80の電位を基準として、架線2(計測対象)の電位を計測することにより架線2の(対地)電圧を計測する計測部20(又は20a)と、基準電位部80の電位を基準として直流電源31より供給される電圧を昇圧した直流電圧を放電電極部70に印加してプラス・マイナスイオンを生成し、生成したプラス・マイナスイオンを放電電極部70から放出する仮想接地部30とを備える。放電電極部70は、プラスイオンを放出するプラス電極73(又は、74)とマイナスイオンを放出するマイナス電極71(又は、72)との組を複数備え、プラス電極73(又は、74)とマイナス電極71(又は、72)とは、円周上に配置されており、プラス電極(73、74)又はマイナス電極(71、72)である電極のうち、隣り合う電極の円の中心に対する角度がそれぞれ等しい角度となり、且つ、プラス電極73(又は、74)とマイナス電極71(又は、72)とが円周において交互に配置されている。
【0065】
これにより、直流用検電器1(又は1a)は、接地線によって接地しなくても、架線2の電圧の有無又は停電状態の確認を行うことができる。したがって、直流用検電器1(又は1a)は、接地線によって接地する必要がなく、利便性を向上することができる。また、これにより、直流用検電器1(又は1a)は、風の影響による基準電位部80の電位の変動を低減することができる。結果として、直流用検電器1(又は1a)は、精度よく安定して架線2の電圧を計測することができる。
【0066】
また、直流用検電器1は、架線2(計測対象)に接触された場合に、架線2と等しい電位になる引込電極10を備える。計測部20は、引込電極10から放射される電界を振動させるチョッパー部(21、22)と、チョッパー部(21、22)によって振動された電界に応じて電荷を集散する検出電極23と、検出電極23と基準電位部80との間に流れる電流の変化に基づいて、架線2の(対地)電圧を計測する計測回路部25とを備える。引込電極10は、チョッパー部(21、22)又は検出電極23と予め定められた距離に配置されている。
これにより、引込電極10と検出電極23との距離間隔が常に一定になる。そのため、直流用検電器1は、精度よく安定して架線2の電圧を計測することができる。
【0067】
また、直流用検電器1は、引込電極10と基準電位部80との間を導通状態にして、引込電極10の電位を基準電位部80と等しい電位にする除電スイッチ部52を備える。
これにより、引込電極10が基準電位部80と等しい電位に除電されるので、直流用検電器1は、正確に検電動作を行うことができる。
【0068】
また、直流用検電器1は、計測部20により予め定められた値以上の電圧が計測された場合に、警報を出力する警報回路部40(警報出力部)と、警報回路部40から警報を出力させるテストスイッチ部51とを備える。除電スイッチ部52は、テストスイッチ部51によって警報を出力させる際に、引込電極10と基準電位部80との間を導通状態にする。
これにより、直流用検電器1は、警報出力部40が正常に動作するか否かを確認するのと一緒に、引込電極10を除電することができる。そのため、直流用検電器1は、工事やメンテナンスなどの作業を行う作業者の安全を確保しつつ、正確に検電動作を行うことができる。
【0069】
また、仮想接地部30は、放電電極部70(71〜74)の周囲を覆う導体部75を備える。
これにより、直流用検電器1(又は1a)は、外乱による影響を低減することができる。また、導体部75は、プラス電極(73、74)及びマイナス電極(71、72)に風が当たることを防ぐため、直流用検電器1(又は1a)は、風の影響による基準電位部80の電位の変動を低減することができる。
【0070】
また、放電電極部70は、直流用検電器1(又は1a)が使用される場合に、大地に対向させて配置される。
これにより、プラスイオン又はマイナスイオンが、大地に到達し易くなるため、安定した仮想接地が得られる。また、放電電極部70にゴミや異物が付着することを低減することができる。
【0071】
また、仮想接地部30は、連続発振又は間欠発振する一次側交流電圧を、直流電源31から供給される電圧により生成する発振回路部34と、基準電位部80にそれぞれ接続されている一次側コイル及び二次側コイルを備えており、一次側コイルに供給された一次側交流電圧を昇圧して、二次側コイルに二次側交流電圧として出力するトランス部35と、二次側交流電圧を、プラス整流及び昇圧して、プラス電極(73、74)に印加するプラス昇圧整流回路部200と、二次側交流電圧を、マイナス整流及び昇圧して、マイナス電極(71、72)に印加するマイナス昇圧整流回路部100とを備える。
これにより、直流用検電器1(又は1a)は、効率よくプラス・マイナスイオンを放出することができる。
【0072】
また、直流用検電器1(又は1a)は、基準電位部80を接地する接地部を備える。
これにより、仮想接地が使用できない場合(例えば、雨天の場合など)においても、直流用検電器1(又は1a)は、架線2の電圧の有無又は停電状態の確認を行うことができる。
【0073】
また、計測部20aは、架線2(計測対象)と基準電位部80との間に直列に接続される抵抗26(第1の抵抗)及び抵抗27(第2の抵抗)と、抵抗26と抵抗27とによって抵抗分圧された電圧に基づいて、架線2の電圧を計測する電圧計測部28とを備える。
これにより、直流用検電器1aは、接地線によって接地する必要がなく、利便性を向上することができる。
【0074】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。上記の各実施形態において、プラス電極73(又は、74)とマイナス電極71(又は、72)との組を2組備える形態を説明したが、3組以上の組を備える形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、放電電極部70は、直流用検電器1(又は1a)が使用される場合に、大地に対向させて配置される形態を説明したが、他の向きに配置して使用してもよい。また、接触端子11は、フック形状でもよいし、他の形状でもよい。
【0075】
また、計測部20と計測部20aとをそれぞれ単独で備える形態を説明したが、計測部20と計測部20aとの両方を備え、いずれか一方を切り替えて使用する形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、基準電位部80は、仮想接地部30によって仮想接地される形態を説明したが、仮想接地部30と、基準電位部80を接地線によって接地する接地部とを備え、いずれか一方を切り替えて使用する形態でもよい。これにより、仮想接地が使用できない場合(例えば、雨天の場合など)においても、直流用検電器1(又は1a)は、架線2の電圧の有無又は停電状態の確認を行うことができる。
【0076】
また、上記の各実施形態において、発振回路部34は、間欠発振する形態を説明したが、連続発振する形態でもよい。この場合、間欠発振に比べて、仮想接地の効果が大きい。
また、上記の各実施形態において、仮想接地部30は、放電電極部70(71〜74)の周囲を覆う導体部75を備える形態を説明したが、導体の代わりに絶縁体を用いる形態でもよい。これにより、放電電極部70(71〜74)の周囲を覆う絶縁体部は、プラス電極(73、74)及びマイナス電極(71、72)に風が当たることを防ぐため、直流用検電器1(又は1a)は、風の影響による基準電位部80の電位の変動を低減することができる。
【0077】
また、上記の各実施形態において、計測回路部25又は電圧計測部28は、計測した架線2の電圧が予め定められた値以上である場合に、警報回路部40に警報を出力させる制御信号を出力する形態を説明したが、計測値を警報回路部40に出力する形態でもよい。この場合、警報回路部40は、計測回路部25又は電圧計測部28から供給された計測値が、予め定められた値以上である場合に、警報を出力する。
【0078】
また、上記の各実施形態において、計測対象として電車に電源を供給する架線2の電圧を計測する形態を説明したが、直流電圧を計測する形態であれば、他の計測対象に適用してもよい。