(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の定電流回路について説明する。
図9は、従来のK値(駆動能力)の差を用いた定電流回路を示す回路図である。K値は、K=W/L・(μCox/2)で求められる。ここで、Wはゲート幅、Lはゲート長、μはキャリアの移動度、Coxは単位面積あたりのゲート端子酸化膜容量を示す。
【0003】
従来の定電流回路は、K値の異なるエンハンスメント型NMOSトランジスタのトランジスタ91及び92と、エンハンスメント型PMOSトランジスタのトランジスタ93及び94と、抵抗95とからなる。
【0004】
エンハンスメント型NMOSトランジスタ91は、ソース端子が最低電位の接地端子100に接続され、ドレイン端子とゲート端子がともにエンハンスメント型NMOSトランジスタ92のゲート端子とエンハンスメント型PMOSトランジスタ93のドレイン端子に接続されている。エンハンスメント型NMOSトランジスタ92は、ソース端子が抵抗95を介して接地端子100と接続され、ドレイン端子はエンハンスメント型PMOSトランジスタ94のゲート端子及びドレイン端子とエンハンスメント型PMOSトランジスタ93のゲート端子に接続されている。エンハンスメント型PMOSトランジスタ93及び94のソース端子は、ともに最高電位の電源端子101と接続されている。
【0005】
次に従来の定電流回路の動作について説明する。エンハンスメント型NMOSトランジスタ91のK値は、エンハンスメント型NMOSトランジスタ92のK値よりも小さい。エンハンスメント型NMOSトランジスタ91とエンハンスメント型NMOSトランジスタ92とのゲート端子ソース端子間電圧差が抵抗95に発生し、抵抗95に流れる電流をエンハンスメント型PMOSトランジスタ93及び94でカレントミラーし、バイアス電流を生成する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の定電流回路を示すブロック図である。
本発明の定電流回路は、定電流生成ブロック回路112と、差動増幅回路111と、デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14で構成される。
【0014】
差動増幅回路111は、出力端子をデプレッション型NMOSトランジスタ13及び14のゲート端子に接続され、反転入力端子をデプレッション型NMOSトランジスタ13のソース端子と定電流生成ブロック回路112に接続され、非反転入力端子をデプレッション型NMOSトランジスタ14のソース端子と定電流生成ブロック回路112に接続される。定電流生成ブロック回路112は、デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14のソース端子と接地端子100の間に接続される。デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14は、ドレイン端子
が電源端子101に接続される。デプレッション型NMOSトランジスタ14のソース端子が定電流回路の定電流出力端子102に接続される。
【0015】
定電流生成ブロック回路112は、エンハンスメント型NMOSトランジスタと抵抗で構成される定電流回路である。例えば、
図2や
図3のような回路で構成される。
【0016】
図2の定電流源ブロック回路112は、ゲート端子同士を接続したエンハンスメント型NMOSトランジスタ11及び12と、抵抗15を備えている。エンハンスメント型NMOSトランジスタ11は、ドレイン端子が第一のデプレッション型NMOSトランジスタ13のソース端子に接続され、ソース端子が抵抗15を介して接地端子100に接続される。エンハンスメント型NMOSトランジスタ12は、ゲート端子とドレイン端子が第二のデプレッション型NMOSトランジスタ14のソース端子に接続され、ソース端子が接地端子100に接続される。
【0017】
エンハンスメント型NMOSトランジスタ11に流れる電流は、デプレッション型NMOSトランジスタ13に流れる電流と等しい。エンハンスメント型NMOSトランジスタ12に流れる電流は、デプレッション型NMOSトランジスタ14に流れる電流と等しい。また、エンハンスメント型NMOSトランジスタ11のK値とエンハンスメント型NMOSトランジスタ12のK値の比は、デプレッション型NMOSトランジスタ13のK値とデプレッション型NMOSトランジスタ14のK値との比と異なる。従って、エンハンスメント型NMOSトランジスタ11のゲート端子ソース端子間電圧とエンハンスメント型NMOSトランジスタ12のゲート端子ソース端子間電圧の差電圧を抵抗に印加することでバイアス電流を生成する。
【0018】
図3の定電流源ブロック回路112は、エンハンスメント型NMOSトランジスタ11及び12と、抵抗18を備えている。エンハンスメント型NMOSトランジスタ11は、ゲート端子がエンハンスメント型NMOSトランジスタ12のドレイン端子に接続され、ドレイン端子が第一のデプレッション型NMOSトランジスタ13のソース端子に接続され、ソース端子が接地端子100に接続される。エンハンスメント型NMOSトランジスタ12は、ゲート端子が第二のデプレッション型NMOSトランジスタ14のソース端子に接続され、ドレイン端子が抵抗18を介して第二のデプレッション型NMOSトランジスタ14のソース端子に接続され、ソース端子が接地端子100に接続される。
【0019】
図2の定電流源ブロック回路112との違いは、エンハンスメント型NMOSトランジスタ11とエンハンスメント型NMOSトランジスタ12のゲート・ドレイン間電圧差が抵抗18に発生し、バイアス電流を生成する回路構成になった点である。
【0020】
ここで、エンハンスメント型NMOSトランジスタ11及び12は、複数のトランジスタを並列に接続して構成されてもよい。
【0021】
次に、本実施形態の定電流回路の動作について説明する。
デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14は、カレントミラー回路を構成する。デプレッショントランジスタ13とデプレッショントランジスタ14は、ゲート端子ソース端子間に閾値電圧以上の電圧が掛かると、定電流生成ブロック回路112にドレイン電流を流す。カレントミラー回路に、デプレッション型NMOSトランジスタを用いることで、チャネルが形成されている状態で起動するため、バイアス電流が0になる動作点で安定することがなくなる。
【0022】
また、差動増幅回路111は、バイアス電流を流すデプレッション型NMOSトランジスタ13及び14のソース電圧が等しくなるようにデプレッション型NMOSトランジスタ13のゲート端子に負帰還をかけている。従って、電源端子の電圧変化に伴い、デプレッション型NMOSトランジスタ13のソース電圧が上昇しバイアス電流が増加すると、差動増幅回路111によって負帰還が掛かり、デプレッション型NMOSトランジスタ13のゲート電圧を下げ、バイアス電流が減少する。つまり、差動増幅回路を用いたことにより、入力安定度を高く保つことができる。
【0023】
上述したように、本発明の定電流回路は、カレントミラー回路にデプレッション型NMOSトランジスタを用いたことで、バイアス電流が0になる動作点で安定することなく、確実に起動することが可能になる。従って、スタートアップ回路を必要としない。また、差動増幅回路111を用いたことにより、接続点211と接続点212の電位は同電位となるので、入力安定度を高く保つことができる。
【0024】
図4は、差動増幅回路111の具体的な構成例を示した定電流回路の回路図である。
図4の定電流回路は、定電流源ブロック回路112を構成するエンハンスメント型NMOSトランジスタ11、12及び抵抗15と、デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14と、差動増幅回路111を構成するエンハンスメント型NMOSトランジスタ20及び21と、エンハンスメント型PMOSトランジスタ22及び23と、を備えている。
【0025】
定電流源ブロック回路112は、
図2と同じ構成である。差動増幅回路111は、以下のように構成される。
【0026】
エンハンスメント型PMOSトランジスタ22は、ゲート端子がエンハンスメント型PMOSトランジスタ23のゲート端子に接続され、ドレイン端子がエンハンスメント型NMOSトランジスタ20のドレイン端子に接続される。エンハンスメント型PMOSトランジスタ23は、ドレイン端子とゲート端子がエンハンスメント型NMOSトランジスタ21のドレイン端子に接続される。エンハンスメント型NMOSトランジスタ20は、ゲート端子が接続点242に接続される。エンハンスメント型NMOSトランジスタ21は、ゲート端子が接続点243に接続される。エンハンスメント型NMOSトランジスタ20及び21は、ソース端子と基板が接地端子100に接続される。エンハンスメント型PMOSトランジスタ22及び23は、ソース端子と基板が電源端子101に接続される。
【0027】
接続点241は、差動増幅回路111の出力端子に対応している。接続点242は、差動増幅回路111の反転入力端子に対応している。接続点243は、差動増幅回路111の非反転入力端子212に対応している。エンハンスメント型NMOSトランジスタ20は非反転入力端子段トランジスタ、エンハンスメント型NMOSトランジスタ21は反転入力段トランジスタ、エンハンスメント型PMOSトランジスタ22及び23はカレントミラー回路である。
【0028】
次に、
図4の定電流回路の動作について説明する。
電源端子101の電位変動により、反転入力端子の接続点242の電位が上昇すると、エンハンスメント型NMOSトランジスタ20は、ゲート端子ソース端子間電圧が上昇し、ドレイン電流が増加する。これにより、エンハンスメント型NMOSトランジスタ20のドレイン端子と差動増幅回路の出力端子にあたる接続点241の電位が下がり、デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14のゲート電圧を下げる。つまり、デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14に負帰還がかかり、接続点243と接続点242の電位を同電位に保つことができる。
【0029】
以上により、
図4に示した差動増幅回路を備えたことにより、接続点242と接続点243の電位は同電位となり、入力安定度を高く保つことができる。また、デプレッション型NMOSトランジスタをカレントミラー回路として用いたため、スタートアップ回路が無くとも、確実に起動することが可能となる。
【0030】
図5は、差動増幅回路111の他の構成例を示した定電流回路の回路図である。
図5の定電流回路は、定電流源ブロック回路112を構成するエンハンスメント型NMOSトランジスタ11、12及び抵抗15と、デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14と、差動増幅回路111を構成するエンハンスメント型NMOSトランジスタ20、21及び31と、エンハンスメント型PMOSトランジスタ22、23及び32と、を備えている。
【0031】
定電流源ブロック回路112は、
図2と同じ構成である。差動増幅回路111は、
図4の差動増幅回路111にエンハンスメント型NMOSトランジスタ31とエンハンスメント型PMOSトランジスタ32のカスコード回路が追加されている。
【0032】
エンハンスメント型PMOSトランジスタ32は、エンハンスメント型PMOSトランジスタ22のドレイン端子とエンハンスメント型NMOSトランジスタ20のドレイン端子の間に設けられ、ゲート端子はPchカスコード端子103に接続されている。エンハンスメント型NMOSトランジスタ31は、エンハンスメント型PMOSトランジスタ23のドレイン端子とエンハンスメント型NMOSトランジスタ21ドレイン端子の間に設けられ、ゲート端子はNチャネルカスコード端子104に接続されている。Pchカスコード端子103には電源電位基準で一定電圧を印加され、Nチャネルカスコード端子104には接地電位基準で一定電圧を印加される。
【0033】
次に、
図5の定電流回路の動作について説明する。
電源端子101の電位変動により、反転入力端子の接続点242の電位が上昇すると
図4の定電流回路と同様の動作をするが、エンハンスメント型PMOSトランジスタ32のカスコード回路によりエンハンスメント型PMOSトランジスタ22のチャネル変調効果が抑えられ、エンハンスメント型NMOSトランジスタ31のカスコード回路によりエンハンスメント型NMOSトランジスタ21のチャネル変調効果が抑えられる。従って、差動増幅回路111のゲイン特性が向上され、
図4の定電流回路よりも、入力安定度が改善される。
【0034】
図6は、差動増幅回路111の他の構成例を示した定電流回路の回路図である。
図6の定電流回路は、定電流源ブロック回路112を構成するエンハンスメント型NMOSトランジスタ11、12及び抵抗15と、デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14と、差動増幅回路111を構成するエンハンスメント型NMOSトランジスタ20及び21と、エンハンスメント型PMOSトランジスタ22及び23と、定電流源113を備えている。
【0035】
図4の定電流回路との違いは、差動増幅回路111の入力段のエンハンスメント型NMOSトランジスタ20及び21のソース端子が定電流源113に接続された点である。定電流源113を用いたことにより、差動増幅回路111の消費電流値を制御させることが可能となる。
【0036】
図7は、差動増幅回路111の他の構成例を示した定電流回路の回路図である。
図7の定電流回路は、デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14のドレイン端子が電源端子101と接続され、エンハンスメント型PMOSトランジスタ22及び23のソース端子が第二電源端子105に接続されている。
【0037】
差動増幅回路111の電源とバイアス電流を生成する回路は、デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14のゲート端子ソース端子間電圧にデプレッション型NMOSトランジスタ13及び14の閾値電圧未満の電位が掛からない限り、電源を分けることも可能である。
【0038】
図7のように構成した定電流回路は、電源端子101に対して、第二電源端子105の電位を定電圧化することにより、入力安定度を向上することが可能となる。
【0039】
図8は、本発明の定電流回路を用いた基準電圧回路の一例を示す回路図である。
図8の基準電圧回路は、
図4の定電流回路を用いた回路を例に示している。なお、定電圧回路は他の例に示した回路であってもよい。
【0040】
図8の基準電圧回路は、定電流源ブロック回路112を構成するエンハンスメント型NMOSトランジスタ11、12及び抵抗15と、デプレッション型NMOSトランジスタ13及び14と、差動増幅回路111を構成するエンハンスメント型NMOSトランジスタ20及び21と、エンハンスメント型PMOSトランジスタ22及び23と、エンハンスメント型PMOSトランジスタ24と、抵抗16とダイオード40を備えている。エンハンスメント型PMOSトランジスタ24と、抵抗16及びダイオード40は、電圧発生回路を構成している。
【0041】
定電流源ブロック回路112は、
図2と同じ構成である。差動増幅回路111は、
図4と同じ構成である。
【0042】
エンハンスメント型PMOSトランジスタ23は、ゲート端子を接続点244に接続され、ドレイン端子は基準電圧出力端子106に接続され、ソース端子と基板は電源端子101に接続される。抵抗16は、一方の端子を基準電圧出力端子106に接続され、他方の端子をダイオード40のアノードに接続される。ダイオード40は、カソードは接地端子100に接続される。
【0043】
次に、
図8の基準電圧回路の動作について説明する。
定電流回路の動作は、
図4の説明と同様である。従って、差動増幅回路111により、接続点242と接続点243の電位は同電位となり、入力変動に対する安定性を高く保つことができる。また、カレントミラー回路にデプレッション型NMOSトランジスタ13及び14を用いたため、スタートアップ回路が無くとも、確実に起動することが可能となる。
【0044】
定電流回路のバイアス電流は、エンハンスメント型PMOSトランジスタ24を介して、抵抗16とダイオード40に流れる。ここで、抵抗15を抵抗16と同種の抵抗で構成すると、抵抗の温度係数はキャンセルされる。従って、抵抗16の両端には、nkT/qに比例した正の温度係数を有する電圧が発生する。qは電子の電荷量、kはボルツマン定数、Tは温度、nはプロセスによって定まる定数である。
【0045】
一方で、ダイオード40の両端の電圧は概ね−2mV程度の負の温度係数を有する。ここで、抵抗16の両端の電圧の温度係数とダイオード40の両端の電圧の温度係数が相殺されるように、抵抗15及び抵抗16の抵抗比を設定することで、基準電圧出力端子106と接地端子100の両端からは、温度に依存しない基準電圧を得ることが可能である。