(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706677
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】鋼製束
(51)【国際特許分類】
E04F 15/00 20060101AFI20150402BHJP
【FI】
E04F15/00 101G
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-270826(P2010-270826)
(22)【出願日】2010年12月3日
(65)【公開番号】特開2012-117350(P2012-117350A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000121729
【氏名又は名称】奥地建産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】奥地 誠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 渉
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−125816(JP,A)
【文献】
特開2002−332740(JP,A)
【文献】
実開平03−089829(JP,U)
【文献】
特開2001−115629(JP,A)
【文献】
特開2003−138729(JP,A)
【文献】
特開2000−303605(JP,A)
【文献】
特開2002−121883(JP,A)
【文献】
特開2011−106116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00
E04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端の基礎部と、鋼製大引等を支持する上端の大引支持部と、これら基礎部と大引支持部との間でターンバックルパイプを用いて高さ調整可能に大引支持部を支持する束支柱部とからなる鋼製束において、
大引支持部を1枚の鋼製板材から形成し、その上面に少なくとも2つの突起部を形成し、これら2つの突起部が支持される大引の2つの対向する側面部と適合し、
上記突起部の外表面が湾曲球面状に形成されていることを特徴とする鋼製束。
【請求項2】
上記大引支持部の少なくとも突起部が設けられた部分とその内側部分の全体又は一部分に摩擦抵抗の少ない滑り層を設け、大引支持部と鋼製大引との接合面の摩擦抵抗を低減して摩擦音を低減化したことを特徴とする請求項1に記載の鋼製束。
【請求項3】
上記大引支持部の少なくとも突起部が設けられた部分とその内側部分の全体又は一部分に接着及び剥離可能な弱接着力の接着層を設け、大引支持部を鋼製大引の側面に仮止めできるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の鋼製束。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の1階床部の床下地構造の大引等を支持する鋼製束の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より住宅の1階床部を支持する床束としては木材製のものが一般的に使用されて来たが、近年その施工の簡略化、木材の供給不足、並びに強度等が考慮され、スチール製の鋼製束の使用が普及して来た。
また大引に関しても、木材製のものから鋼鉄製のものが使用され始めて来ている。
【0003】
鋼製束というのは、既に良く知られているように、布基礎等の上に設置される最下端の基礎部と、大引等を支持する最上端の支持部と、これら基礎部と支持部の間で高さ調整自在のターンバックルパイプを利用した束支柱部とから成るものである。
束支柱部は、ターンバックルパイプの上部と下部の両端にそれぞれ逆ネジが刻設された上部螺子棒と下部螺子棒とが組み合わされたものからなり、この上部螺子棒の上端に支持部が、下部螺子棒の下端に基礎部が連結されて構成されたものである。
【0004】
この鋼製束は、例えば、鋼製大引にその支持部を下向きにして接合し、螺子等により固定し、適宜数の鋼製束を固定した後、上下を反転させて基礎部を布基礎等に配置し、この基礎部を布基礎等に固定するのである。
【0005】
下記特許文献1に記載の発明は、床材を載せる大引を支持する鋼製束の伸張方法と伸長装置に関するものであり、これを
図4に図示しているが、ここに開示されている鋼製束(A)が従来のタイプのものである。
この鋼製束(A)は、布基礎等に設置されて固定されるベース部(B)と、このベース部から立脚した支柱部(D)と、この支柱部(D)に支えられた大引支持部(E)とから構成されている。
ベース部(B)には第1ねじ部(C)が突出してこれに外周が角柱状の支柱部(D)の下方のねじ穴に螺合固着する。
【0006】
他方、大引支持部(E)は、大引を嵌め込み固定する断面コの字型を有しており、その下底から突出した第2ねじ部(F)が支柱部(D)の上方のねじ穴に螺合固着する。
そして、第1ねじ部(C)と第2ねじ部(F)はねじ山方向が逆となるように形成されているので、支柱部(D)を例えば右に回転させると鋼製束(A)が収縮してその高さが低くなり、左に回転させると伸長してその高さが高くなる構成である。
【0007】
そして、この鋼製束(A)は、この特許文献1の
図8にある通り、その長さ(高さ)が所定長さに統一されると、大引の上から大引支持部を逆様にして所定間隔で嵌め込み固定し、その後大引と鋼製束を反転させて、布基礎等に配置し、固定するのである。
このように、大引支持部は、従来のものにあっては上方が開放された断面略コ字形状を有するものであり、この理由は、上述したように、大引の上から逆様の状態で嵌め込み、その後螺子等による螺着に際して、鋼製束自体が回転又は回動してしまわないように対処したものなのである。
勿論のこととして、この種の鋼製束において、上端の大引支持部が全くフラットなものも存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−194694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した通り、従来の鋼製束においては、大引との螺着に際して、鋼製束が回動してしまわないように、その上端部に位置する大引支持部を断面略コ字形状としているが、このような形状に成形するために、プレス機械により曲げ加工を施す必要があり、その分の材料取りもより大きなものとなり、曲げ加工の手間も掛かる。
本発明においては、より材料取りを少ないものとし、省資源化を図り、しかも製作容易性を考慮して、より簡易な構成により鋼製束の上端部の大引支持部を、大引との螺着に際して回動しないものを提供することをその第一の課題としている。
【0010】
また、従来においては、鋼製大引を支持する際には、どちらもスチール製のため金属同士の摩擦音が生じるという問題があった。
そこで、従来の鋼製束においては、その断面略コ字形状の大引支持部の底面部に合成ゴム等の薄板を配設したものが存在していた。
しかし、この合成ゴムの薄板を使用したものにあっても、略コ字形状の起立した部分と鋼製大引とが接合し、やはり金属摩擦音を防止することが出来なかった。
【0011】
そこで、本発明においては、この金属摩擦音を出来る限り低減化することもその課題としている。
更に、本発明においては、大引との螺着、固定に際して、施工上より便利となるように、大引と大引支持部との仮止めが良好にできないかを鋭意研究し、その課題を解決することもその目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、下端の基礎部と、鋼製大引等を支持する上端の大引支持部と、これら基礎部と大引支持部との間でターンバックルパイプを用いて高さ調整可能に大引支持部を支持する束支柱部とからなる鋼製束において、大引支持部を1枚の鋼製板材から形成し、その上面に少なくとも2つの突起部を形成し、これら2つの突起部が支持される大引の2つの対向する側面部と適合することを特徴とする鋼製束である。
【0013】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、上記突起部の外表面が湾曲球面状に形成されていることを特徴とする鋼製束である。
【0014】
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、上記大引支持部の少なくとも突起部が設けられた部分とその内側部分の全体又は一部分に摩擦抵抗の少ない滑り層を設け、大引支持部と鋼製大引との接合面の摩擦抵抗を低減して摩擦音を低減化したことを特徴とする鋼製束である。
【0015】
本発明の第4のものは、上記第1又は第2の発明において、上記大引支持部の少なくとも突起部が設けられた部分とその内側部分の全体又は一部分に接着及び剥離可能な弱接着力の接着層を設け、大引支持部を鋼製大引の側面に仮止めできるようにしたことを特徴とする鋼製束である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1のものにおいては、鋼製大引等を支持する上端の大引支持部上面に少なくとも2つの突起部を形成したために、本発明の鋼製束を逆様にして大引に接合し、螺子等により固定する際に、この大引支持部が回動したり或いは回転してしまうことが防止される。
即ち、大引支持部の上面に最低2つの突起部が設けられているために、これらの突起部によって大引の一側面部を両側から挟むように接合されるために、螺着に際しての回転力によっても大引支持部が大引の一側面部と堅固に接合して回転しないこととなるのである。
【0017】
本発明の第2のものにおいては、大引支持部に設けた突起部の外表面が、湾曲球面状に形成されているために、その突起部は、鋼製大引とその球面の一つの点で点接触を行い、接合面積を最小限にすることができる。
これにより、金属同士の摩擦音も最小限に抑えることができることとなる。
【0018】
本発明の第3のものにおいては、大引支持部の少なくとも突起部が設けられた部分とその内側部分の全体又は一部分に摩擦抵抗の少ない滑り層を設けることによって、鋼製大引と大引支持部を接合させた際に両者の摩擦抵抗を小さくすることができ、金属摩擦音を更に低減化させることができるのである。
【0019】
本発明の第4のものにおいては、大引支持部の少なくとも突起部が設けられた部分とその内側の全体に又はその一部分に接着及び剥離可能な弱接着力の接着層を設けたことにより、鋼製大引等に大引支持部を接合した際の仮止め機能を発揮することとなる。
従来のような断面略コ字形状の場合には、この断面形状を有する大引支持部が大引の一側面部分に嵌合するかたちとなるが、仮止め機能としては不十分であった。
そこで、本発明の場合には、2列の最低2個の突起部を利用しているものの、これらの突起部によっては仮止め機能は生じず、それ故、上記接着層を用いて仮止め機能を付加したものである。
また、この接着層は、突起部をも被覆しているために、金属摩擦音の低減化にも寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の鋼製束に係る一実施形態の要部斜視図である。
【
図2】
図1に記載の実施形態に係る鋼製束により鋼製大引支持した状態の要部斜視図である。
【
図3】
図2と同様に上記実施形態に係る鋼製束の使用状態の全体斜視図である。。
【
図4】上記特許文献1に記載の従来の鋼製束の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の鋼製束に係る一実施形態の要部斜視図である。
本発明は、その全ての部分がスチール製の鋼製束であり、その全体の構成は、従来のものと同じである。
即ち、この
図1には現れていないが、各種基礎に設置、固定される最下端に位置する基礎部と、鋼製大引等を支持する平面視略矩形形状を有する大引支持部10と、これら基礎部と大引支持部10の間に位置する支柱部11と、支柱部11の下端部に螺合されている下方螺子棒と、支柱部11の上端部に螺合されている上方螺子棒とから構成されている。
これらの上方及び下方螺子棒は、中空のパイプから形成することもできる。
【0022】
支柱部11、上方螺子棒及び下方螺子棒によって束支柱部が構成される。
支柱部11は、ターンバックルパイプから成り、上方螺子棒と下方螺子棒とが逆ねじに形成されているために、支柱部11を回転させると、束支柱部の高さが高低自在に調整可能となる。支柱部11の形状は、角柱状でも円柱状でも設計自由である。
以上の構成に関しては、従来のものと同様である。
基礎部に螺子孔や、接着剤用の溝部を形成するのも自由である。
【0023】
本発明においては、
図1に図示した通り、その大引支持部10の構成が特徴となっている。
即ち、この大引支持部10は、平面視略矩形形状を有し、対向する2つの側縁部10s、10sのそれぞれに2つの突起部12、12を設けている。従って、突起部12は、全てで4個設けられている。
尚、これら列設されている2個ずつの突起部は、それぞれの側縁部に1個ずつであってもよく、全部で最低2個あれば、これら2個の突起部が鋼製大引の対抗する側面部に適合して、螺着時に大引支持部が回転してしまうことを防止できる。
【0024】
更に、それぞれの突起部12の突出形状が特徴的であって、即ち、その形状が湾曲球面状に形成されており、対向するそれぞれの側縁に設けられた突起部12に対面するように形成されている。
これにより、大引支持部10に載置される鋼製大引の側面角部にこれら4つの突起部12が一点で当接し、挟持するごとき状態となるのである。
【0025】
この突起部12は、それぞれの側縁に最低1個設けておけばよく、2個以上でもよい。
また、この突起部12を成形する方法は全く自由であって、どのような成形方法を採用しても良い。この実施形態では、半抜き加工を用いて一工程で成形している。
図中4つのコーナー部に設けた貫通穴は、螺子孔20であり、大引支持部10を鋼製大引と螺着・固定するためのものである。
また、上方螺子棒の頭部14は、大引支持部10と遊嵌されており、相互に回動自在に形成されている。
【0026】
更に、本発明においては、この大引支持部10の対向する2側縁の突起部12が設けられている部分に接着層17(図中斜線部)を設けている。
この接着層17、17に塗布される接着剤は、水性接着剤を使用し、その接着力も、接着と剥離を繰り返し行う事ができる程度の弱い接着力を有するものを使用している。
本実施形態においては、高耐熱・速乾型水性接着剤を使用しており、例えば、水性アクリルエマルジョン型接着剤を使用している。
この接着剤は、水を溶媒としているため、有毒ガス等の発生がなく、その接着力も、接合後約数10秒程度で相互に適切に接着できるものであり、必要に応じて、容易に剥離することができる程度の弱い接着力を有するものである。
【0027】
この接着剤は、大引支持部10の対向する2つの側縁部の全体に渡り所定幅をもって直接塗布して設けることができる。
或いは、両面接着テープを用いて実施することもできる。
その際は、一方の面にのみ弱い接着力を有する上記水性接着剤を設けておけばよく、他方の面には、通常の強力な接着剤を設け、大引支持部10の対向する両側縁部10sに接着すればよい。
【0028】
また、この接着層17は、側縁部10sの端から端までの全体に設けるのではなく、その一部分に断続的に設けることも自由である。しかし、突起部12の部分には、接着層17を設けることが好ましい。金属同士の摩擦を防止するためである。
勿論の事として、この接着層を突起部の部分とその突起部同士の中間部分(2列の突起部の中間部分)の全ての部分に設けるのも自由である。
更に、接着層の表面に剥離紙を予め設けておくことも自由である。
【0029】
他方、上記接着層の代わりに、上記接着層と同じ部分、同じ領域に滑り層を設けて実施することもできる。
この滑り層を設けた鋼製束にあっては、仮止め機能は有さないものの、大引支持部と鋼製大引との摩擦抵抗が少なくなり、両者の接合又は接触による金属摩擦音を低減化することができるのである。
この滑り層の素材は、現存する各種の滑り部材から自由に選択することができ、合成樹脂の薄膜や薄板から成る滑り層であってもよく、各種の滑り部材が塗布された接着テープを利用してもよい。
このように滑り層を形成する素材としては自由に選択することができる。
更に、この滑り層としては、各種の潤滑剤を塗装したものであってもよい。潤滑剤としては、現在入手できるどのような種類のものでもよいが、油脂系潤滑剤や鉱物系潤滑材等を塗布したり、貼着したりして滑り層を構成することができる。
【0030】
図2は、
図1に記載の実施形態に係る鋼製束により鋼製大引を支持した状態の要部斜視図である。
図3は、
図2と同様に上記実施形態に係る鋼製束の使用状態の全体斜視図である。
図2は、鋼製束1の上端の大引支持部10に鋼製大引21を載置して固定された状態が見て取れる。そして、大引支持部10に設けた突起部12、12が鋼製大引の角部22と適合している状態も見て取ることができるものである。
【0031】
実際の施工に際しては、鋼製大引に対して鋼製束を逆様にして、その大引支持部10を鋼製大引21の側面に接合して仮止めし、その後螺子等によって螺着固定し、これを所定間隔で複数の鋼製束1を、
図3においては2本であるが、設置し、固定し、その後反転させて、
図3の状態となるのである。
図3においては、本発明に係る鋼製束1の基礎部13及びその他の下方螺子棒等、束支柱部を見て取ることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、以下の通りその形態を種々変更することができる。
本発明における基礎部の構成、束支柱部の構成は全く自由に設計変更することができる。
その上端部の大引支持部の平面視形状も、上記実施形態のように略矩形形状でなく、極端な場合には、平面視円形形状又は楕円形形状であってもよく、その際に、突起部は少なくとも2個、大引の側面の横幅と略同一の間隔に設けて、これら2つの突起部が大引の両側面部或いは角部に適合できればよいものである。
しかし、材料の省資源化を考慮に入れるならば、上記のように略矩形形状のものが最も経済的である。
【0033】
接着層も、突起部を含んで、その内側に所定幅で、大引の横架される方向に設けられていればよく、その横架される方向の全体又はその一部分であってもよいものである。
勿論、この接着層を支持部の表面全体に設けることも可能であるが、省資源化を考慮に入れるならば、可能な限り、つまり仮止め機能を発揮できる限りで、その設ける面積は小さい方が経済的である。
【0034】
滑り層に関しても、その設ける位置或いは領域は、上記接着層と全く同様であるが、その機能は大引支持部と鋼製大引との摩擦抵抗を低減化することであって、その素材は摩擦抵抗を小さく出来る材料であれば、全く自由に選択することができる。
以上、本発明は、簡易な構成ではあるが、大引への固定に際して回動することなく、仮止め機能を有し、金属摩擦音の少ない、しかも極めて省資源に寄与し、コストの低減化をも実現した極めて便利な鋼製束を提供することができたものである。
【符号の説明】
【0035】
1 鋼製束
10 大引支持部
11 支柱部
12 突起部
13 基礎部
17 接着層