特許第5706687号(P5706687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706687
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】複合樹脂粒子群およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/12 20060101AFI20150402BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20150402BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 8/895 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20150402BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   C08F283/12
   C08F2/44 C
   A61K8/81
   A61Q1/00
   A61K8/895
   A61K8/02
   A61K8/29
   G02B5/02 A
【請求項の数】11
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2010-508213(P2010-508213)
(86)(22)【出願日】2009年4月14日
(86)【国際出願番号】JP2009057491
(87)【国際公開番号】WO2009128441
(87)【国際公開日】20091022
【審査請求日】2012年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2008-104754(P2008-104754)
(32)【優先日】2008年4月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】関谷 敏雄
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−091854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283
A61K8/81,8/895
A61Q1、C08F2/44、G02B5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.01〜50μmの範囲内にある、cv値が1〜10の真球状のシリコーン樹脂芯材粒子の存在下に、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを含むモノマー成分を重合させて得られる、シリコーン樹脂芯材粒子が包摂されている中実粒子からなる複合樹脂粒子群であって、
芯材となったシリコーン樹脂芯材粒子の中心点が複合樹脂粒子の中心と一致せず、シリコーン樹脂芯材粒子がいずれかに偏在して存在しており、
該複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子中に包摂されるシリコーン樹脂芯材粒子の略中心が露出するように切断された該複合樹脂粒子の断面において、
該シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も長い仮想直線(A)、および、該シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も短い仮想直線(B)を想定したときに、
上記シリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)が、該シリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から上記仮想直線(A)または(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までのうちの最も短い距離(Rmini)、および、該シリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から上記仮想直線(A)または(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までのうち最も長い距離(Rmax)に対して、次式(1)および式(2)で示す関係を有する位置にある複合樹脂粒子を50個数%以上含有することを特徴とする複合樹脂粒子群;
【数1】
(ただし、上記式(1)および(2)において、Dsiは、その断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の直径を表す。)。
【請求項2】
上記式(1)および式(2)が、次式(1−1)および式(2−2)で表わされることを特徴とする請求項第1項記載の複合樹脂粒子群;
【数2】
(ただし、上記式(1−1)、(2−2)において、Dsiは、その断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の直径を表す。)。
【請求項3】
上記複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)が、0.02〜100μmの範囲内にあり、シリコーン樹脂芯材粒子の平均粒子径(φsi)が、0.01〜50μmの範囲内にあり、複合樹脂粒子の中心点Qと、シリコーン樹脂芯材粒子の中心点Pとの平均距離xが0.005〜50μmの範囲内にあることを特徴とする請求項第1項記載の複合樹脂粒子群。
【請求項4】
上記複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子の中心点Qと、シリコーン樹脂芯材粒子の中心点Pとの平均距離xと、該複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)との比(x/φcp)が、0.01〜0.5の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項記載の複合樹脂粒子群。
【請求項5】
シリコーン樹脂芯材粒子にチタン・ジルコニウムのアルコキシドが配合されていることを特徴とする請求項第1項または第2項記載の複合樹脂粒子群。
【請求項6】
上記複合樹脂粒子群が、0.1〜0.95の範囲内にある真球度を有する上記複合樹脂粒子を50個数%以上の量で含有していることを特徴とする請求項第1項記載の複合樹脂粒子群。
【請求項7】
上記複合樹脂粒子の中心点(Q)から、外側方向に、放射状に仮想される仮想直線(C)の上に該シリコーン樹脂芯材の中心点(P)が存在するとともに、仮想直線(C)の該複合樹脂粒子の中心点(Q)を起点(0%)とし複合樹脂粒子の外周面との交点までの長さを100%としたときに、該シリコーン樹脂芯剤粒子の中心点(P)が仮想直線(C)の0%を超え99%以下の範囲内にある複合樹脂粒子が、該複合樹脂粒子群中に90個数%以上の量で含有されていることを特徴とする請求項第1項記載の複合樹脂粒子群。
【請求項8】
上記複合樹脂粒子群を形成する複合樹脂粒子の表面にシリコーン樹脂芯材粒子の10〜80体積%が露出している複合樹脂粒子を含むことを特徴とする請求項第1項記載の複合樹脂粒子群。
【請求項9】
上記複合樹脂粒子群0.1gを、幅30mm、長さ50mm、厚さ3mmのウレタン製シートに均一に塗布して、変角光度計を用いて、入射角−45°、試行回数n=100の条件で測定した反射強度の変動率(受光角0°での反射率/受光角−35°での反射率の平均値)が0.80〜1.00の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項記載の複合樹脂粒子群。
【請求項10】
上記請求項第1項乃至第9項のいずれかの項記載の複合樹脂粒子群を含有してなることを特徴とする化粧料。
【請求項11】
上記請求項第1項乃至第9項のいずれかの項記載の複合樹脂粒子群を含有してなることを特徴とする光拡散シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコーン樹脂芯材粒子を含有する複合樹脂粒子群およびその用途に関する。さらに詳しくは本発明は、シリコーン樹脂芯材粒子をシード粒子として形成される複合樹脂粒子群およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂を外殻に有するアクリル系樹脂粒子あるいはポリスチレンを外殻に有する樹脂粒子は、その特性を利用して種々の用途に使用されている。このような樹脂粒子は、外殻を形成する樹脂が透明であることから、特に光学部材、化粧料原料などとして広汎に使用されつつある。
【0003】
こうした樹脂粒子を製造する方法には種々の方法があるが、芯材粒子を製造し、この芯材粒子をシード粒子として、芯材粒子の周囲にアクリル系樹脂あるいはスチレン系樹脂からなる外殻を形成するシード重合により製造することができる。
【0004】
一般に、このようなシード重合により樹脂粒子を製造すると、シード粒子を中心にして外殻形成樹脂が均一に成長することから、シード粒子を中心にしてシード粒子の周辺に均一な外殻層(シェル層)が形成される。このようなシード重合に使用されるシード粒子として、シリコーン系樹脂粒子が使用されており、例えば特許文献1(特開平7-196815号公報)、特許文献2(特開2002-138119号公報)などには、シリコーン系樹脂粒子の周囲を被覆した樹脂粒子が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシリコーン系微粒子は、シリコーンゴム球体微粒子の周囲をポリオルガノシルセスキオキサン樹脂で被覆したものであり、このシリコーン系微粒子は、ゴム弾性を有しており、粒子内に生ずる内部応力を吸収することができるが、外殻がポリオルガノシルセスキオキサン樹脂から形成されていることから、光学材料としては適していない。
【0006】
また、特許文献2には、特定の式で表わされるシリコーン化合物あるいはその部分加水分解縮合物が重合体中に包含された重合体粒子が特定の粒子径分布を有することが開示されている。この引用文献2には、得られた重合体粒子が、シリコーン化合物あるいはその加水分解物を包含することがどのような形態で包含されているかは示されていない。
【0007】
特許文献3(特開2004-177426号公報)には、球状コア粒子とその外殻にある厚さ100±50nmのシェル層とからなり、コア粒子の屈折率が、コア層の屈折率よりも高い低反射透明球状粒子が開示されている。この粒子は、たとえばソープフリー乳化重合による二段重合により表層にフッ素系ポリマー層などを低屈折率層を形成するものであり、この低反射透明球状粒子を形成するコア層の位置に関しては何ら記載されておらず、たとえば特許文献3の実施例で示されるようなソープフリー乳化重合で粒子を製造した場合、コア層が粒子内で偏在するといった現象は発生しない。
【0008】
特許文献4(特開2007-091515号公報)には中空構造を有する球状又は略球状の外殻と、該外殻と接しかつ中心に向かって凸部を形成する内殻とを有するシリカ粒子の発明が開示されている。この特許文献4は、コロイダルシリカの分散液にアクリルモノマーを加えて重合させて重合体を調製し、次いでここにポリアルコキシシロキサンオリゴマーを加えてポリアルコキシシロキサンオリゴマーの縮合反応を行って、重合体の表面にポリアルコキシシロキサンオリゴマーに由来するシリカ成分が局在的に付着して複合重合体粒子を調製し、これを500℃程度の温度で焼成することにより、重合体成分を除去したものである。
【0009】
従って、この特許文献4に開示されているシリカ粒子は、焼成により重合体成分が除去された無機物であるシリカの粒子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7-196815号公報
【特許文献2】特開2002-138119号公報
【特許文献3】特開2004-177426号公報
【特許文献4】特開2007-091515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、新規な複合樹脂粒子群を提供することを目的としている。さらに本発明は、芯材粒子の周囲に樹脂層を有する複合樹脂粒子の集合体であって、この複合樹脂粒子群を構成する各複合樹脂粒子中に存在する芯材粒子が、その複合樹脂粒子の中で偏在している粒子を多数含有する複合樹脂粒子群を提供することを目的としている。
【0012】
さらに、本発明は、上記のように芯材粒子が偏在した複合樹脂粒子からなる複合樹脂粒子群の用途、特に、光拡散シート、化粧料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の複合樹脂粒子群は、平均粒子径が0.01〜50μmの範囲内にある、cv値が1〜10の真球状のシリコーン樹脂芯材粒子の存在下に、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを含むモノマー成分を重合させて得られる、シリコーン樹脂芯材粒子が包摂されている中実粒子からなる複合樹脂粒子群であって、
芯材となったシリコーン樹脂芯材粒子の中心点が複合樹脂粒子の中心と一致せず、シリコーン樹脂芯材粒子がいずれかに偏在して存在しており、
該複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子中に包摂されるシリコーン樹脂芯材粒子の略中心が露出するように切断された該複合樹脂粒子の断面において、
該シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も長い仮想直線(A)、および、該シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も短い仮想直線(B)を想定したときに、
上記シリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)が、該シリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から上記仮想直線(A)または(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までのうちの最も短い距離(Rmini)、および、該シリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から上記仮想直線(A)または(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までのうち最も長い距離(Rmax)に対して、次式(1)および式(2)で示す関係を有する位置にある複合樹脂粒子を50個数%以上含有することを特徴としている。
【0014】
【数1】
【0015】
ただし、上記式(1)および(2)において、Dsiは、その断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の直径を表し、通常は0.01〜50μmの範囲内、好ましくは0.5〜10μmの範囲内にある。また、シリコーン樹脂芯材粒子は、シリコーン化合物の縮合物であるが、このシリコーン樹脂芯材粒子中にチタン・ジルコニウムのアルコキシドが配合されていてもよい。
【0016】
本発明の化粧料は、上記のような複合樹脂粒子群を用いて形成されてなることを特徴としている。
また、本発明の光拡散シートは、上記の複合樹脂粒子群を反射材料として用いて形成されてなることを特徴としている。
【0017】
本発明の複合樹脂粒子群を形成する複合樹脂粒子は、シリコーン粒子芯材にアクリル系樹脂あるいはスチレン系樹脂をシード重合して得られるシェル層を有し、コア層を形成するシリコーン樹脂芯材が、この複合樹脂粒子の中心にあることはなく、いずれか一方に偏在している。
【0018】
この複合樹脂粒子を塗布すると、個々の複合樹脂粒子では、光の反射ピーク角度が一定の角度を示さずバラバラであるが、多数の粒子が存在することにより、反射ピールが打ち消し合うため、視認する角度による反射光のばらつきは小さくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の複合樹脂粒子群は、この粒子群を構成する各粒子中に含有されるシリコーン樹脂芯材粒子が、その複合樹脂粒子の中心にはなく、偏在して存在している。このため個々の粒子を見ると、光の反射ピークは一致していないので、視認する角度によって反射ピークはバラバラである。ところが、このような複合樹脂粒子群を塗布して層を形成すると、各粒子でバラバラであった反射ピークが打ち消し合って、視認する角度による反射ピークのばらつきが消失する。
【0020】
従って、本発明の複合樹脂粒子を塗布した層における角度による光の反射ピークのバラツキはほとんど生じないとの効果を奏する。
本発明の化粧料は、上記のような複合樹脂粒子群を用いることにより、くすみがなく、クッキリとした仕上がりの化粧料となる。
【0021】
さらに、本発明の光拡散シートは、反射の均一性の高い上述の複合樹脂粒子を用いることにより、非常に均一性の高い光拡散シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、図1は、本発明の複合樹脂粒子群を形成する複合樹脂粒子の一例を示す切欠き部を有する斜視図である。
図2図2は、図1におけるX−X断面図である。
図3図3は、図1におけるY−Y断面図である。
図4図4は、本発明の複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子における、シリコーン樹脂芯材粒子の中心の位置を示す断面図である。
図5図5は、比較的真球度の高い複合樹脂粒子の例を示す断面図である。
図6図6は、比較的真球度の高い複合樹脂粒子の他の例を示す断面図である。
図7図7は、断面略楕円形の比較的真球度の低い本発明の複合樹脂の例を示す断面図である。
図8図8は、真球度の低い本発明の複合樹脂粒子の例を示す断面図である。
図9図9は、断面不定形の複合樹脂粒子の例を示す断面図である。
図10図10は、実施例1の複合樹脂粒子群のSEM写真である。
図11図11は、実施例1で得られた図10に示す複合樹脂粒子の断面を示すSEM写真である。
図12図12は、実施例2で得られた複合樹脂粒子群のSEM写真である。
図13図13は、実施例2で得られた図12に示す複合樹脂粒子の断面を示すSEM写真である。
図14図14は、実施例3で得られた複合樹脂粒子群のSEM写真である。
図15図15は、実施例3で得られた図14に示す複合樹脂粒子の断面を示すSEM写真である。
図16図16は、実施例4で得られた複合樹脂粒子群のSEM写真である。
図17図17は、実施例4で得られた図16に示す複合樹脂粒子の断面を示すSEM写真である。
図18図18は、実施例5で得られた複合樹脂粒子群のSEM写真である。
図19図19は、実施例5で得られた図18に示す複合樹脂粒子の断面を示すSEM写真である。
図20図20は、実施例6で得られた複合樹脂粒子群のSEM写真である。
図21図21は、実施例6で得られた図20に示す複合樹脂粒子の断面を示すSEM写真である。
図22図22は、実施例7で得られた複合樹脂粒子群のSEM写真である。
図23図23は、実施例7で得られた図22に示す複合樹脂粒子の断面を示すSEM写真である。
図24図24は、実施例6で得られた粒子群の反射光の変化率を示す図である。
図25図25は、比較例3で得られた粒子群の反射光の変化率を示す図である。
図26図26は、実施例8で使用した製造例3で得られたシリコーン樹脂芯材粒子のSEM写真である。
図27図27は、実施例8で製造した複合樹脂粒子群のSEM写真である。
図28図28は、実施例8で得られた粒子群の反射光の変化率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の複合樹脂粒子群について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の複合樹脂粒子群を形成する複合樹脂粒子の一例を示す切欠き部を有する斜視図であり、図2は、図1におけるX−X断面図であり、図3はY−Y断面図である。
【0024】
本発明の複合樹脂粒子群を構成する個々の複合樹脂粒子10は、シリコーン樹脂芯材粒子30と、このシリコーン樹脂芯材粒子30の外周に形成されたアクリル系樹脂層(シェル層)20とから形成されている。そして、本発明においては、この複合樹脂粒子10の芯材であるシリコーン樹脂芯材粒子30の中心Pと、この複合樹脂粒子10の中心Qとが一致しておらず、シリコーン樹脂芯材粒子30がいずれか一方にずれている。図1においては、シリコーン樹脂芯材粒子30は右方向にずれている。この状態は、図1のY−Y断面を示す図3において明確に表わされており、複合樹脂粒子10の中心点Qとシリコーン樹脂芯材粒子の中心点Pとは一致しておらず、シリコーン樹脂芯材粒子30の中心Pが複合樹脂粒子10のQとは一致していない。しかしながら、この例では、シリコーン樹脂芯材粒子30は縦方向にはずれておらず、図1におけるX−X断面を示す図2では、シリコーン樹脂芯材粒子30の中心点Pと複合樹脂粒子10の中心点Qとは一致している。
【0025】
複合樹脂粒子10内におけるこのようなシリコーン樹脂芯材粒子30のずれは、次のようにして表わすことができる。
シリコーン樹脂芯材粒子30の少なくとも一部を含むように切断されたこの複合樹脂粒子10の断面において、この断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の中心を通るとともに、この断面における複合樹脂粒子10の外周面との交点間の距離が最も長い仮想直線(A)、および、このシリコーン樹脂芯材粒子30の断面の中心を通るとともに、この複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も短い仮想直線(B)を仮想する。
【0026】
そして、上記シリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)が、該シリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から上記仮想直線(A)または(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までのうちの最も短い距離をRminiとし、このシリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から上記仮想直線(A)または(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までのうち最も長い距離をRmaxとしたときに、RminiとRmaxとが次式(1)および式(2)で示す関係を有する位置にある。
【0027】
【数2】
【0028】
ただし、上記式((1)、(1−1)、(2)、(2−1)〜(2−3))において、Dsiは、その断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の直径を表す。
図2においてRminiとRmaxとは、シリコーン樹脂芯材粒子30の複合樹脂粒子10の縦方向のずれはないのでRminiとRmaxとは等しいが、図3に示すように、シリコーン樹脂芯材粒子30は、複合樹脂粒子10の横方向にずれているので、RminiとRmaxとは異なる値を示す。
【0029】
本発明の複合樹脂粒子群においては、上記のようにシリコーン樹脂芯材粒子30が複合樹脂粒子10の中で遍在して存在する偏在粒子は、少なくとも50個数/%、好ましくは60個数/%〜100個数/%の範囲内の割合で含有されている。このようにシリコーン樹脂芯材粒子30が複合樹脂粒子10中で偏在すると、個々の粒子に入射した光はシリコーン樹脂芯材粒子30の偏在の状態によって様々な方向に反射する。一見すると様々な方向に反射光が出ることにより、光の反射光強度が不安定になるようにも思えるが、意外にも反射ピークが相殺しあって、本発明の複合樹脂粒子群を塗布した層から出射する光は、視認する角度による変動が少なく、極めて安定している。
【0030】
さらに、本発明の複合樹脂粒子群においては、この複合樹脂粒子群を構成する任意の複合樹脂粒子の中心点をQとしてこの中心点Qから外側方向に向かって放射状に仮想直線(C)を仮装した際に、この複合樹脂粒子に含有されるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点Pは、仮想直線(C)上に存在する。そして、図4に示すように、上記仮想直線(C)の基点である複合樹脂粒子の中心点Qを0%とし、この仮想直線(C)と複合樹脂粒子の外周面との長さを100%としたときに、この複合樹脂粒子中に含まれるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点Pが、0%を超え99%以下の位置にあることが好ましく、さらに10〜95%の範囲内にあることが特に好ましい。
【0031】
そして、本発明の複合樹脂粒子群においては、上記のようにシリコーン樹脂芯材粒子が偏在している複合樹脂粒子が、複合樹脂粒子群全体の50個数/%以上であり、さらに60〜100個数/%の範囲内にあることが好ましい。
【0032】
また、本発明の複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子は、平均粒子径(φcp)が、0.02〜100μmの範囲内、好ましくは1〜20μmの範囲内にある。また、この複合樹脂粒子に包摂されているシリコーン樹脂芯材粒子の平均粒子径(φsi)は、0.01〜50μmの範囲内、好ましくは0.5〜10μmの範囲内にある。このときのシリコーン樹脂芯材粒子の平均粒子径としては、通常はシード重合に用いたシリコーン樹脂芯材粒子の平均粒子径を適用することができるが、シリコーン樹脂芯材粒子の略中心点Pを通るとともに、複合樹脂粒子の略中心点Qを通る断面のSEM写真から、複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)およびシリコーン樹脂芯材粒子の平均粒子径(φsi)を求めることが好ましい。
【0033】
なお、複合樹脂粒子が略真球状でない場合、すなわち、断面形状が略真円状でない場合には、SEM写真で視認できる複合樹脂粒子の円弧に基づき描画できる仮想の円の直径を、複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)とすることができる。
【0034】
この場合、図6に示すように、前述の仮想直線Aおよび仮想直線Bが共に複合樹脂粒子の中心点Qおよびシリコーン樹脂芯材粒子の中心点Pを通る場合には、この仮想直線上における複合樹脂粒子の直径およびシリコーン樹脂粒子の直径を求めることができるが、図5に示すように仮想線上に中心点Q、中心点Pのいずれか一方が存在しない場合には、中心点Qと中心点Pとの距離を直接測定して求めることができる。
【0035】
そして、本発明の複合樹脂粒子群においては、シリコーン樹脂芯材粒子の中心点Pが、複合樹脂粒子の中心点Qと一致せず、偏在しているのであるから、複合樹脂粒子の中心点Qと、シリコーン樹脂芯材粒子の中心点Pとの間に一定の間隔が生ずる。図4では、この距離がxで示されている。本発明において、この複合樹脂粒子の中心点Qと、シリコーン樹脂芯材粒子の中心点Pとの平均距離xが、通常は0.005〜50μmの範囲内、好ましくは0.1〜20μmの範囲内にある。
【0036】
そして、本発明では、この複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子の中心点Qと、シリコーン樹脂芯材粒子の中心点Pとの平均距離xと、この該複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)との比(x/φcp)が、通常は0.01〜0.5の範囲内、好ましくは0.1〜0.4の範囲内にある。この(x/φcp)で表わされる比は、その複合樹脂粒子群においてシリコーン樹脂芯材粒子がどの程度偏在して存在するかの程度を表しており、この値が0に近づくにつれてシリコーン樹脂芯材粒子の偏在が小さくなることを意味する。
【0037】
そして、本発明の複合樹脂粒子群を光学部材あるいは化粧料原料のような均一は反射光得るために使用する場合には、この(x/φcp)で表わされる比を、0.1〜0.35の範囲内にすることにより、極めて均一な反射光を取り出すことができる。
【0038】
このようにシリコーン樹脂芯材粒子が偏在した複合樹脂粒子を多数有する本発明の複合樹脂粒子群は、反射光が好適に相殺されるので、こうした複合樹脂粒子群を塗布した層を視認したときに角度による反射光のばらつきが発生しない。
【0039】
なお、上記の説明は、本発明の複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子が球体であるとの前提で説明したが、本発明の複合樹脂粒子群を構成する粒子は、必ずしも球体であるとは限らず、例えば図7に示すような断面略楕円形である場合、図8図9のように断面不定形である場合などがあるが、これらの場合には、これらの粒子の凸部が最も多く接する球体を想定して、この仮想球体の中心点を上記の複合樹脂球体の中心点Qとして、上記規定を適用するものとする。
【0040】
このような複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子中のシリコーン樹脂芯材粒子は、通常は、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂によって覆われているが、複合樹脂粒子群を形成する複合樹脂粒子の表面にシリコーン樹脂芯材粒子の例えば10〜80体積%が露出している複合樹脂粒子を含有していてもよい。
【0041】
そして、本発明の複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子は、上述のように完全球体であることを特に必要とするものではなく、本発明の複合樹脂粒子群は、通常は0.1〜1.00の範囲内にある真球度を有する複合樹脂粒子を50個数%以上の量で含有していることが望ましい。
【0042】
図5,6には、比較的真球度の高い複合樹脂粒子の例が示されており、図7(断面略楕円形),図8図9には真球度の低い本発明の複合樹脂粒子の例が示されているが、本発明の複合樹脂粒子群を形成する複合樹脂粒子の形状はこれらによって限定されるものではない。
【0043】
本発明の複合樹脂粒子群の特異的な特性は、本発明の複合樹脂粒子群0.1gを採り、この複合樹脂粒子群を、幅30mm、長さ50mm、厚さ3mmのウレタン製シートに均一に塗布して複合樹脂粒子群からなる層を形成し、この層について変角光度計を用いて反射強度を測定することにより、明確になる。即ち、上記のようにして形成された層に入射角−45°、試行回数n=100の条件で測定した反射強度の平均の変動率を求めると、通常は0.81〜1.00の範囲内の値を示す。ここで、反射強度の変動率とは、受光角0°での反射率/受光角−35°での反射率の平均値で表わされる数値であり、この値が1,0に近いほど、反射むらが小さく、さらにその幅が小さいほど、反射むらが小さいことを意味している。
【0044】
このように本発明の複合樹脂粒子群において、この粒子群を形成する個々の粒子は、芯材となるシリコーン樹脂芯材粒子の位置が異なることから反射ピークの角度によりばらつくが、これらの複合樹脂粒子の集合である本発明の複合樹脂粒子群においては、個々の粒子に見られるような反射ピークの角度によるバラツキは相互に打ち消し合って、角度に拘りなく非常に均一な反射ピークを有する層を形成することができる。
【0045】
本発明の複合樹脂粒子群は、例えば、シリコーン樹脂芯材粒子をシード粒子として、このシード粒子が偏在するように、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとを含むモノマー成分をシェル層として共重合させることにより製造することができる。
【0046】
本発明で使用するシリコーン樹脂芯材粒子は、シラン化合物およびシランカップリング剤などのケイ素含有化合物を用い、公知の方法により得ることができる。
シラン化合物としては、たとえば特許文献2(特開2002−138119号公報)の一般式(1)
(R1O)4-aSiR2a (1)
(式中、R1は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のアシル基、R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物であって、具体例としては、テトラメチルシリケート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0047】
また、シランカップリング剤としては、たとえば一般式(2)
3-n(CH3nSi(R3nY (2)
(式中、R3は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、脂環状のアルキル基であり、Xはアルコキシ基またはハロゲン原子であり、Yはアミノ基、ビニル基、(メタ)アクリル基、イソシアネート基、エポキシ基、メルカプト基、サルファー基、ウレイド基のいずれかであり、nは0または1の整数)
で表される化合物であり、具体例としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0048】
その他のケイ素含有化合物としては、チッソ社製の反応性シリコーン(商品名:サイラプレーン)などが挙げられる。
上記のケイ素含有化合物は、1種または2種以上の化合物を組み合わせて使用することができるが、好ましくは、シラン化合物とシランカップリング剤とを組み合わせて使用することである。
【0049】
なお、本発明において、シリコーン樹脂芯材粒子が、チタンアルコキシド、あるいは、ジルコニウムアルコキシドなどのアルコキシド類を含有していてもよい。これらの含有量は、シリコーン樹脂芯材粒子100重量部に対して通常は1〜30重量部である。
【0050】
本発明において、シリコーン樹脂芯材粒子は、加水分解反応により反応したシリコーン化合物の加水分解物からなる粒子であり、原料となるシリコーン化合物中に反応性二重結合が存在する場合には、この反応性二重結合の少なくとも一部は活性を失わない状態でシリコーン樹脂芯材粒子中に存在している。こうしたシリコーン樹脂芯材粒子中に反応性二重結合が残存することにより、本発明におけるシリコーン樹脂芯材粒子は、シェル層を形成するアクリル系モノマーあるいはスチレン系モノマーと非常に高い親和性を有している。
【0051】
こうして得られたスラリーを例えば200メッシュの金網を通過させて、塊状物を除去した後、減圧濾過などにより、反応液を分離してシリコーン樹脂芯材粒子のケイキを得る。このケイキを加熱乾燥して水分を除去して解砕することにより、シリコーン樹脂芯材粒子を得ることができる。
【0052】
こうして得られたシリコーン樹脂芯材粒子をSEMで観察してその平均粒子径を求めると、その平均粒子径は、0.01〜50μmの範囲内、好ましくは0.5〜20μmの範囲内にあり、CV値は通常は1〜100、好ましくは1〜10の範囲内にある。
【0053】
上記にようにして得られたシリコーン樹脂芯材粒子をシード粒子として、シード重合を行い、シリコーン樹脂芯材粒子の外周にアクリル系樹脂および/またはスチレン樹脂を含む透明樹脂層(シェル層)を形成する。この透明樹脂層を形成する際には、一段重合で透明樹脂層を形成してもよいし、二段重合等の多段重合で、透明樹脂層を形成することもできる。
【0054】
このようにシリコーン樹脂芯材粒子の外周に形成される透明樹脂層は、アクリル系樹脂、スチレン樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂を含む透明樹脂によって形成されている。
ここで使用するアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリルのような分岐あるいは不飽和結合を有していてもよい炭素数が1〜20の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;
ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド類;
グリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ基含有(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸のようなアクリル酸類;
(メタ)アクリル酸-2-クロロエチルのようなハロゲン化アルキル基を有する(メタ)アアクリル酸エステル;
(メタ)アクリロニトリル;
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルのようなアクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体を挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0055】
本発明で使用するスチレン樹脂としては、たとえば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、iso-プロピルスチレン、iso-プロピルスチレン、iso-プロピルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、3,4-ジクロルスチレンなどのような分岐を有していてもよく、さらにハロゲン原子で置換されたアルキル基を有するスチレン誘導体などを挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0056】
さらに上述のアクリル系樹脂とスチレン誘導体とを、それぞれ単独で使用することも可能であるし、また両者を混合して使用することもできる。
本発明の複合樹脂粒子群を製造するに際しては、上記のようなモノマー成分に加えて、他の重合性モノマーを配合することができる。
【0057】
このような他のモノマーの例としては、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,n−酪酸ビニル,イソ酪酸ビニ ル,ピバリン酸ビニル,カプロン酸ビニル,パーサティック酸ビニル,ラウリル酸ビニル,ステアリン酸ビニル,安息香酸ビニル,p−t−ブチル安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等のビニルエステル類;
塩化ビニリデン、クロロヘキサンカルボン酸ビニル等:
テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸;
無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビ シクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等を挙げることがでいる。これらは本発明の複合樹脂粒子群の特定を損なわない範囲内で適宜使用することができる。さらにこれらのモノマーは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0058】
また、シェル層に架橋構造を形成するために、多官能モノマーを使用することができる。このような多官能モノマーの例としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチルグリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコースのジ(メタ)アクリル酸エステルのようなアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。さらにシェル層を多段で形成する場合、いずれの段階で多官能モノマーを用いてもよいが、シリコーン樹脂芯材粒子の偏在をより大きくするためには、最初の段階で多官能モノマーを使用するよりも、後の段階、好適には最終段で多官能モノマーを使用することが望ましい。
【0059】
本発明の複合樹脂粒子群は、上述のシリコーン系樹脂芯材粒子を水性媒体に分散させ、この分散液に上記のモノマーを添加してシリコーン系樹脂芯材粒子をシード粒子としてシード重合を行うことにより製造することができる。そして、このときシリコーン系樹脂芯材粒子が分散している水性媒体に添加されるモノマーは、シリコーン系樹脂粒子内に取り込まれて重合し、シリコーン樹脂芯材粒子の直径が元の粒子径の1.1〜10倍になる。このようにモノマーを重合させることにより、シリコーン樹脂芯材粒子の偏在が生ずるものと思われ、本発明でシェル層を形成するモノマーは、シリコーン樹脂芯材粒子との親和性の良いモノマーを使用することが好ましい。このように芯材粒子がシリコーン系の樹脂により形成されていることから、シリコーン樹脂芯材粒子中にモノマーが均一に取り込まれることは極めて稀で、シリコーン樹脂芯材粒子中におけるモノマーの濃度が均一にはなり難く、こうしたモノマーの偏在が本発明の複合樹脂粒子群において、シリコーン系樹脂芯材粒子が、本発明の複合樹脂粒子中において、中心に位置せず、シリコーン樹脂芯材粒子の中心が、得られる複合樹脂粒子群を構成する粒子の中心と一致せず、芯材粒子が偏在する要因になると考えられる。
【0060】
本発明において、上記のようにシード粒子であるシリコーン樹脂芯材粒子の中心と複合樹脂粒子群を構成する個々の粒子の中心とを一致させず、シリコーン樹脂芯材粒子を個々の粒子において偏在させるために、シード粒子であるシリコーン樹脂芯材粒子を水性媒体、好ましくは水に均一に分散させた後、撹拌しながら上記モノマー成分、必要に応じて分散剤および界面活性剤を配合して、水性媒体中にモノマー成分を分散させる。水性媒体中にシード粒子であるシリコーン樹脂芯材粒子とモノマー成分を均一に分散させた後、重合開始剤を添加し、加熱することにより、シリコーン樹脂芯材粒子に吸着されたモノマー成分が重合して、本発明の複合樹脂粒子群が得られる。
【0061】
また、この得られた複合樹脂粒子をシード粒子として、上記と同様にモノマー成分を吸着させ、モノマー成分を重合させることにより、複合樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。
【0062】
上記反応において、モノマー成分はシード粒子(シリコーン樹脂芯材粒子または複合樹脂粒子)100重量部に対して20〜5000重量部、好ましくは200〜3000重量部、水性媒体はシード粒子(シリコーン樹脂芯材粒子または複合樹脂粒子)とモノマー成分との総量を100重量部としたときに100〜900重量部、好ましくは150〜300重量部、分散剤および界面活性剤はモノマー成分100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜3重量部の範囲内の量で配合する。
【0063】
ここで使用する重合開始剤は、10時間半減期温度が通常は40〜95℃、好ましくは60〜85℃の重合開始剤を使用することが望ましく、このような重合開始剤の例としては、クメンハイドロパーオキサイド(CHP)、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウリルパーオキサイド(LPO)、ターシャリーブチル(2-エチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジメチルビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ビス(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル-ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)バレラート、ジベンゾイルパーオキシベンゾアートを挙げることができ、アゾ系開始剤の例としては、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス-2-メチルブチロニトリル2,2-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2-アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル等を挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0064】
このときの反応温度は、使用する重合開始剤の種類によって異なるが、通常は50〜80℃、好ましくは60〜75℃であり、このような条件で通常は2〜10時間、好ましくは3〜6時間反応させることにより、本発明の複合樹脂粒子群が得られる。この反応は、一段で行うこともできるし、多段に分けて行うこともできる。
【0065】
このような反応において、シード粒子であるシリコーン樹脂芯材粒子にモノマー成分が不均一に侵入して重合反応が進行するために、シリコーン樹脂芯材粒子の中心が複合樹脂粒子の中心には存在しにくくなり、複合樹脂粒子群を構成する個々の複合樹脂の50個数%以上、好ましくは60〜100個数%の粒子において、シード粒子であるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点と個々の複合樹脂粒子の中心点とは一致しない。
【0066】
このようにシリコーン樹脂芯材粒子の中心点と個々の複合樹脂粒子の中心点とは一致しない粒子は、個々の粒子における屈折性に関しては統一性はなく個々バラバラであるが、これを集合体としてみた場合、個々の粒子の屈折性が相互に相殺しあって複合樹脂粒子群全体としてみると非常に均一性の高い反射光が得られる。
【0067】
たとえば、上記複合樹脂粒子群0.1gを、幅30mm、長さ50mm、厚さ3mmのウレタン製シートに均一に塗布して、変角光度計を用いて、入射角−45°、試行回数n=100の条件で測定した反射強度の変動率(受光角0°での反射率/受光角−35°での反射率の平均値)を測定すると、通常は0.8〜1.00の範囲内、好ましくは0.9〜1.00の範囲内になり、非常に均一性の高い反射光が得られる。図24にシリコーン樹脂芯材粒子に、スチレン及びメチルメタクリレートをシード重合して得られた、芯材粒子が偏在している平均粒子径が5μmの本発明の複合粒子を塗布基材(商品名:バイオスキン#30、(株)ビューラックス製)の表面に塗布して投光角45°、測定範囲−85°〜+85°、測定間隔1°で測定した反射光強度を示す。本発明の複合樹脂粒子群を用いることにより上述のように反射強度が均一化するという現象は、この複合樹脂粒子群を構成する個々の粒子についての反射強度からは予測不可能であり、複合樹脂粒子群となって初めて奏される効果である。
【0068】
上記のような本発明の複合樹脂粒子群は、上記のように層状にしたときに非常に均一な反射光を反射させることができるとの特性を有している。
上記のような本発明の複合樹脂粒子群を、化粧料原料として用いることができる。即ち、本発明の化粧料は、上述の複合樹脂粒子群を用いた、ファンデーション、あるいは、本発明の複合樹脂粒子群を液体に分散させたリキッドファンデーション、頬紅、マスカラなどの化粧料である。本発明の複合樹脂粒子群を化粧料原料として使用する場合、化粧料を製造する際に通常使用される成分を用いることができる。
【0069】
このようにして得られた化粧料は、光の反射の均一性が高いので、くすみがなく、クッキリとした仕上がりの化粧料となる。このような化粧料に本発明の複合樹脂粒子群を使用する場合には、化粧料を製造する際に通常使用している他の原料成分とともに、本発明の複合樹脂粒子群を使用することができる。
【0070】
この特性を利用することにより非常に均一性の高い光拡散シートを製造することができる。
すなわち、上記の複合樹脂粒子群を基板上に配置した複合樹脂粒子群層を形成することにより、この複合樹脂粒子群層における光の反射が均一化し、光を均一に拡散することができる。このような本発明の光拡散シートは、上記詳述した本発明の複合樹脂粒子群を使用して光拡散層を形成すればよい。
【実施例】
【0071】
次に本発明の複合樹脂粒子について、実施例を示して説明するが本発明はこれらによって限定されるものではない。
<シリコーン樹脂芯材粒子の調製>
〔製造例1〕
温度計と窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水200重量部およびイソプロピルアルコール5重量部を投入した。この水溶液を25℃で撹拌しながら、メチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−13)25重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503)5重量部を添加したところ、加水分解反応が進行し、15分後に液温が34℃に上昇した。
【0072】
さらに撹拌を2時間継続して、液温を25℃にまで冷却させ、攪拌しながら0.5%アンモニア水5重量部を添加し、1分間攪拌した後、攪拌を停止し4時間静置して、シリコーン樹脂芯材粒子のスラリーを調製した。
【0073】
このスラリーを200メッシュの金網を通過させてから、ブフナーロートで濾紙を用いて減圧濾過して、シリコーン樹脂芯材粒子のケーキを得た。
得られたシリコーン樹脂芯材粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、粒子形状は真球状であり、平均粒子径(φsi)は、2.70μmの単分散粒子であった。
【0074】
〔製造例2〕
製造例1において、メチルトリメトキシシラン(KBM−13)を28重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)を2重量部に代えた以外は、製造例1と同様の条件でシリコーン樹脂芯材粒子のケーキを得た。
【0075】
得られたシリコーン樹脂芯材粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、粒子形状は真球状であり、平均粒子径(φsi)は、2.6μmの単分散粒子であった。
〔製造例3〕
容量二リットルのガラスフラスコに、イオン交換水200重量部を投入し、25℃で攪拌しながらメチルトリメトキシシラン(KBM-13)35重量部を添加して、一時間攪拌した。
【0076】
その後、0.4%アンモニア水3.5重量部を添加して、一分間攪拌した後、攪拌を停止し、三時間静置してポリオルガノシロキサン粒子を得た。得られたスラリーを200メッシュの金網で濾過した後、ブフナーロートで濾紙を用いて、減圧濾過してポリオルガノシロキサンのケイキを得た。このケイキは、平均粒子径(φsi)が、2.5μmの単分散分子であった。
【0077】
〔実施例1〕
メチルメタクリレート75重量部、エチレングリコールジメタクリレート5重量部、過酸化ベンゾイル0.67重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、亜硝酸ナトリウム0.1重量部、およびイオン交換水200重量部をホモミキサー(特殊機化工業(株)製、型式:TKホモミキサーIII、以下同様)を用いて、10000rpmで3分間撹拌した。
【0078】
次いで、この混合物を、温度計と窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移し、製造例1で調製したシリコーン樹脂芯材粒子20重量部、およびイオン交換水40重量部を添加し、75℃で1時間反応させ、続いて90℃で2時間反応させた。
【0079】
次いで、得られた水性分散液をブフナーロートで濾紙を用いて減圧濾過して樹脂粒子のケーキとし、得られたケイキを105℃に設定された熱風乾燥機を用いて乾燥させて複合樹脂粒子群(I)を得た。
【0080】
得られた複合樹脂粒子群(I)について、上記と同様の方法で複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)、複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子の中心とシリコーン樹脂芯材粒子の中心との距離(x)、比率(x/φcp)、変動率および真球度を測定し、その結果を表1に示す。
【0081】
また、得られた複合樹脂粒子群(I)のSEM写真を図10に示す。
こうして得られた複合樹脂粒子群(I)を構成する複合樹脂粒子について、エポキシ樹脂に含浸してその複合樹脂粒子の芯材となっているシリコーン樹脂芯材粒子の断面が露出するようにミクロトームで断面を切り出した。この断面図を図11に示す。
【0082】
図11に示すように、このシリコーン樹脂粒子の直径(Dsi)は、2.54μmであり、このシリコーン樹脂粒子の中心点(P)を通ってこの複合樹脂粒子の表面と接する点までが最も短い仮想直線(B)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂粒子の中心点(P)から、この仮想直線(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も短い(Rmini)は、1.69μmであった。
【0083】
また、シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も長い仮想直線(A)を描画したところ、仮想直線(A)は仮想直線(B)と一致した。この仮想直線(B)において、この断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から、この仮想直線(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も長い距離(Rmax)は、2.81μmであった。
【0084】
これらの値から、この複合樹脂粒子が次式(1)、(2)を満足するものである。
【0085】
【数3】
【0086】
同様にしてこの複合樹脂粒子群(I)を構成する複合樹脂粒子について、断面を切り出して上記のようにしてシリコーン樹脂芯材粒子の位置を測定したところ、この複合樹脂粒子群(I)の少なくとも95個数%の粒子において、上記のシリコーン樹脂芯材粒子の偏在が認められた。
【0087】
〔実施例2〕
実施例1において、メチルメタクリレート88.33重量部、製造例1で調製したシリコーン樹脂芯材粒子6.67重量部にした以外は、実施例1と同様の条件で調製し、複合樹脂粒子群(II)を得た。
【0088】
得られた複合樹脂粒子群(II)について、上記と同様の方法で複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)、複合樹脂粒子群(II)を構成する複合樹脂粒子の中心とシリコーン樹脂芯材粒子の中心との距離(x)、比率(x/φcp)、変動率および真球度を測定し、その結果を表1に示す。
【0089】
また、得られた複合樹脂粒子群(II)のSEM写真を図12に示す。
こうして得られた複合樹脂粒子群(II)を構成する複合樹脂粒子について、その複合樹脂粒子の芯材となっているシリコーン樹脂芯材粒子の断面が露出するように断面を切り出した。この断面図を図13に示す。図13に示すように、このシリコーン樹脂粒子の直径(Dsi)は、2.83μmであり、このシリコーン樹脂粒子の中心点(P)を通ってこの複合樹脂粒子の表面と接する点までが最も短い仮想直線(B)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂粒子の中心点(P)から、この仮想直線(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も短い(Rmini)は、1.46μmであった。
【0090】
また、シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も長い仮想直線(A)を描画したところ、仮想直線(A)は仮想直線(B)と一致した。この仮想直線(B)において、この断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から、この仮想直線(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も長い距離(Rmax)は、4.86μmであった。
【0091】
これらの値から、この複合樹脂粒子が次式(1)、(2)を満足するものである。
【0092】
【数4】
【0093】
同様にしてこの複合樹脂粒子群(II)を構成する複合樹脂粒子について、断面を切り出して上記のようにしてシリコーン樹脂芯材粒子の位置を測定したところ、この複合樹脂粒子群(I)の少なくとも98個数%の粒子において、上記のシリコーン樹脂芯材粒子の偏在が認められた。
【0094】
〔実施例3〕
<1段目の重合>
実施例1で使用した装置を用いて、メチルメタクリレート66.6重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.014重量部、過酸化ベンゾイル0.5重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、硝酸ナトリウム0.1重量部およびイオン交換水200重量部を、ホモミキサーを用い10000rpmで3分間撹拌した。
【0095】
ついで、この混合物を温度計および窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移して、製造例2で調製したシリコーン樹脂粒子33.3重量部およびイオン交換水40重量部を添加し、50℃で30分間穏やかに撹拌した。
【0096】
その後、PVA5%水溶液40重量部を添加して、75℃で1時間反応させた後、90℃で1時間反応させて、複合樹脂粒子群の分散液(III−1)を得た。
この複合樹脂粒子群の分散液(III−1)中に含有される複合樹脂粒子をSEMにより観察したところ、この複合樹脂粒子は、平均粒子径が4.13μmの真球状の単分散粒子であった。
【0097】
<2段目の重合>
さらに、同様の装置を用いて、メチルメタクリレート90重量部、エチレングリコールジメタクリレート5重量部、過酸化ベンゾイル1.0重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、亜硝酸ナトリウム0.1重量部およびイオン交換水200重量部を、ホモミキサーを用い10000rpmで3分間撹拌した。
【0098】
ついで、この混合物を、温度計と窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移し、前記の複合樹脂粒子群の分散液(III−1)を19.2重量部添加し、75℃で1時間反応させ、続いて90℃で2時間反応させ、複合樹脂粒子群(III−2)の分散液を得た。
【0099】
こうして得られた水性分散液をブフナーロートで濾紙を用いて減圧濾過して樹脂粒子のケーキとし、得られたケーキを105℃に設定された熱風乾燥機を用いて乾燥させて複合樹脂粒子群(III−2)を得た。
【0100】
得られた複合樹脂粒子群(III−2)について、上記と同様の方法で複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)、複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子の中心とシリコーン樹脂芯材粒子の中心との距離(x)、比率(x/φcp)、変動率および真球度を測定し、その結果を表1に示す。
【0101】
また、得られた複合樹脂粒子群(III−2)のSEM写真を図14に示す。
こうして得られた複合樹脂粒子群(III−2)を構成する複合樹脂粒子について、その複合樹脂粒子の芯材となっているシリコーン樹脂芯材粒子の断面が露出するように断面を切り出した。この断面図を図15に示す。図15に示すように、このシリコーン樹脂粒子の直径(Dsi)は、2.76μmであり、このシリコーン樹脂粒子の中心点(P)を通ってこの複合樹脂粒子の表面と接する点までが最も短い仮想直線(B)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂粒子の中心点(P)から、この仮想直線(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も短い(Rmini)は、1.50μmであった。
【0102】
また、シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も長い仮想直線(A)を描画したところ、仮想直線(A)は仮想直線(B)と一致した。この仮想直線(B)において、この断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から、この仮想直線(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も長い距離(Rmax)は、7.24μmであった。
【0103】
これらの値から、この複合樹脂粒子が次式(1)、(2)を満足するものである。
【0104】
【数5】
【0105】
同様にしてこの複合樹脂粒子群(III−2)を構成する複合樹脂粒子について、断面を切り出して上記のようにしてシリコーン樹脂芯材粒子の位置を測定したところ、この複合樹脂粒子群(III−2)の少なくとも95個数%の粒子において、上記のシリコーン樹脂芯材粒子の偏在が認められた。
【0106】
〔実施例4〕
<1段目の重合>
実施例1で使用した装置を用いて、メチルメタクリレート93.35重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.0185重量部、過酸化ベンゾイル1.0重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、硝酸ナトリウム0.1重量部およびイオン交換水200重量部を、ホモミキサーを用い10000rpmで3分間撹拌した。
【0107】
ついで、この混合物を温度計および窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移して、製造例1で調製したシリコーン樹脂粒子6.65重量部およびイオン交換水40重量部を添加し、50℃で30分間穏やかに撹拌した。
【0108】
その後、PVA5%水溶液40重量部を添加して、75℃で1時間反応させた後、90℃で1時間反応させて、複合樹脂粒子群の分散液(IV−1)を得た。
この複合樹脂粒子群の分散液(IV−1)中に含有される複合樹脂粒子をSEMにより観察したところ、この複合樹脂粒子は、平均粒子径が6.67μmの真球状の単分散粒子であった。
【0109】
<2段目の重合>
さらに、同様の装置を用いて、スチレン75重量部、ジビニルベンゼン(新日鐵化学(株)製、品番:DVB−960、以下同様)5重量部、過酸化ベンゾイル2.0重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、亜硝酸ナトリウム0.1重量部およびイオン交換水200重量部を、ホモミキサーを用い10000rpmで3分間撹拌した。
【0110】
ついで、この混合物を、温度計と窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移し、前記の複合樹脂粒子群の分散液(IV−1)を76.2重量部添加し、75℃で3時間反応させ、続いて90℃で3時間反応させ、複合樹脂粒子群(IV−2)の分散液を得た。
【0111】
こうして得られた水性分散液をブフナーロートで濾紙を用いて減圧濾過して樹脂粒子のケーキとし、得られたケーキを105℃に設定された熱風乾燥機を用いて乾燥させて複合樹脂粒子群(IV−2)を得た。
【0112】
得られた複合樹脂粒子群(IV−2)について、上記と同様の方法で複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)、複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子の中心とシリコーン樹脂芯材粒子の中心との距離(x)、比率(x/φcp)、変動率および真球度を測定し、その結果を表1に示す。
【0113】
また、得られた複合樹脂粒子群(IV−2)のSEM写真を図16に示す。
こうして得られた複合樹脂粒子群(IV−2)を構成する複合樹脂粒子について、その複合樹脂粒子の芯材となっているシリコーン樹脂芯材粒子の断面が露出するように断面を切り出した。この断面図を図17に示す。図17に示すように、このシリコーン樹脂粒子の直径(Dsi)は、2.25μmであり、このシリコーン樹脂粒子の中心点(P)を通ってこの複合樹脂粒子の表面と接する点までが最も短い仮想直線(B)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂粒子の中心点(P)から、この仮想直線(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も短い(Rmini)は、1.51μmであった。
【0114】
また、シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も長い仮想直線(A)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から、この仮想直線(A)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も長い距離(Rmax)は、9.81μmであった。
【0115】
これらの値から、この複合樹脂粒子が次式(1)、(2)を満足するものである。
【0116】
【数6】
【0117】
同様にしてこの複合樹脂粒子群(IV−2)を構成する複合樹脂粒子について、断面を切り出して上記のようにしてシリコーン樹脂芯材粒子の位置を測定したところ、この複合樹脂粒子群(IV−2)の少なくとも95個数%の粒子において、上記のシリコーン樹脂芯材粒子の偏在が認められた。
【0118】
〔実施例5〕
<1段目の重合>
実施例1で使用した装置を用いて、メチルメタクリレート66.7重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.0078重量部、過酸化ベンゾイル1.0重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、硝酸ナトリウム0.1重量部およびイオン交換水200重量部を、ホモミキサーを用い10000rpmで3分間撹拌した。
【0119】
ついで、この混合物を温度計および窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移して、製造例1で調製したシリコーン樹脂粒子33.3重量部およびイオン交換水40重量部を添加し、50℃で30分間穏やかに撹拌した。
【0120】
その後、PVA5%水溶液40重量部を添加して、75℃で1時間反応させた後、90℃で1時間反応させて、複合樹脂粒子群の分散液(V−1)を得た。
この複合樹脂粒子群の分散液(V−1)中に含有される複合樹脂粒子をSEMにより観察したところ、この複合樹脂粒子は、平均粒子径が3.89μmの真球状の単分散粒子であった。
【0121】
<2段目の重合>
さらに、同様の装置を用いて、スチレン70重量部、ジビニルベンゼン10重量部、過酸化ベンゾイル2.0重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、亜硝酸ナトリウム0.1重量部およびイオン交換水200重量部を、ホモミキサーを用い10000rpmで3分間撹拌した。
【0122】
ついで、この混合物を、温度計と窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移し、前記の複合樹脂粒子群の分散液(V−1)を76.2重量部添加し、75℃で3時間反応させ、続いて90℃で3時間反応させ、複合樹脂粒子群(V−2)の分散液を得た。
【0123】
こうして得られた水性分散液をブフナーロートで濾紙を用いて減圧濾過して樹脂粒子のケーキとし、得られたケーキを105℃に設定された熱風乾燥機を用いて乾燥させて複合樹脂粒子群(V−2)を得た。
【0124】
得られた複合樹脂粒子群(V−2)について、上記と同様の方法で複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)、複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子の中心とシリコーン樹脂芯材粒子の中心との距離(x)、比率(x/φcp)、変動率および真球度を測定し、その結果を表1に示す。
【0125】
また、得られた複合樹脂粒子群(V−2)のSEM写真を図18に示す。
こうして得られた複合樹脂粒子群(V−2)を構成する複合樹脂粒子について、その複合樹脂粒子の芯材となっているシリコーン樹脂芯材粒子の断面が露出するように断面を切り出した。この断面図を図19に示す。図19に示すように、このシリコーン樹脂粒子の直径(Dsi)は、2.45μmであり、このシリコーン樹脂粒子の中心点(P)を通ってこの複合樹脂粒子の表面と接する点までが最も短い仮想直線(B)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂粒子の中心点(P)から、この仮想直線(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も短い(Rmini)は、1.23μmであった。
【0126】
また、シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も長い仮想直線(A)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から、この仮想直線(A)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も長い距離(Rmax)は、3.92μmであった。
【0127】
これらの値から、この複合樹脂粒子が次式(1)、(2)を満足するものである。
【0128】
【数7】
【0129】
同様にしてこの複合樹脂粒子群(V−2)を構成する複合樹脂粒子について、断面を切り出して上記のようにしてシリコーン樹脂芯材粒子の位置を測定したところ、この複合樹脂粒子群(V−2)の少なくとも95個数%の粒子において、上記のシリコーン樹脂芯材粒子の偏在が認められた。
【0130】
〔実施例6〕
<1段目の重合>
実施例1で使用した装置を用いて、メチルメタクリレート93.3重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.02重量部、過酸化ベンゾイル1.0重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、硝酸ナトリウム0.1重量部およびイオン交換水200重量部を、ホモミキサーを用い10000rpmで3分間撹拌した。
【0131】
次いで、この混合物を温度計および窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移して、製造例1で調製したシリコーン樹脂粒子6.7重量部およびイオン交換水40重量部を添加し、50℃で30分間穏やかに撹拌した。
【0132】
その後、PVA5%水溶液40重量部を添加して、75℃で1時間反応させた後、90℃で1時間反応させて、複合樹脂粒子群の分散液(VI−1)を得た。
この複合樹脂粒子群の分散液(VI−1)中に含有される複合樹脂粒子をSEMにより観察したところ、この複合樹脂粒子は、平均粒子径が6.50μmの真球状の単分散粒子であった。
【0133】
<2段目の重合>
さらに、同様の装置を用いて、スチレン85重量部、ジビニルベンゼン5重量部、過酸化ベンゾイル2.0重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、亜硝酸ナトリウム0.1重量部およびイオン交換水200重量部を、ホモミキサーを用い10000rpmで3分間撹拌した。
【0134】
ついで、この混合物を、温度計と窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移し、前記の複合樹脂粒子群の分散液(VI−1)を37.7重量部添加し、75℃で3時間反応させ、続いて90℃で3時間反応させ、複合樹脂粒子群(VI−2)の分散液を得た。
【0135】
こうして得られた水性分散液をブフナーロートで濾紙を用いて減圧濾過して樹脂粒子のケーキとし、得られたケーキを105℃に設定された熱風乾燥機を用いて乾燥させて複合樹脂粒子群(VI−2)を得た。
【0136】
得られた複合樹脂粒子群(VI−2)について、上記と同様の方法で複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)、複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子の中心とシリコーン樹脂芯材粒子の中心との距離(x)、比率(x/φcp)、変動率および真球度を測定し、その結果を表1に示す。
【0137】
また、得られた複合樹脂粒子群(VI−2)のSEM写真を図20に示す。
こうして得られた複合樹脂粒子群(VI−2)を構成する複合樹脂粒子について、その複合樹脂粒子の芯材となっているシリコーン樹脂芯材粒子の断面が露出するように断面を切り出した。この断面図を図21に示す。
【0138】
図21に示すように、このシリコーン樹脂粒子の直径(Dsi)は、2.50μmであり、このシリコーン樹脂粒子の中心点(P)を通ってこの複合樹脂粒子の表面と接する点までが最も短い仮想直線(B)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂粒子の中心点(P)から、この仮想直線(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も短い(Rmini)は、2.69μmであった。
【0139】
また、シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も長い仮想直線(A)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から、この仮想直線(A)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も長い距離(Rmax)は、9.04μmであった。
【0140】
これらの値から、この複合樹脂粒子が次式(1)、(2)を満足するものである。
【0141】
【数8】
【0142】
同様にしてこの複合樹脂粒子群(IV−2)を構成する複合樹脂粒子について、断面を切り出して上記のようにしてシリコーン樹脂芯材粒子の位置を測定したところ、この複合樹脂粒子群(IV−2)の少なくとも95個数%の粒子において、上記のシリコーン樹脂芯材粒子の偏在が認められた。
【0143】
ここで得られた粒子群の反射強度の変化率を図24に示す。
〔実施例7〕
<1段目の重合>
実施例1で使用した装置を用いて、メチルメタクリレート66.7重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.013重量部、過酸化ベンゾイル1.0重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05重量部、硝酸ナトリウム0.01重量部およびイオン交換水200重量部を、ホモミキサーを用い10000rpm3分間攪拌した。
【0144】
ついで、この混合物を温度計および窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移して、製造例1で調製したシリコーン樹脂粒子33.6重量部およびイオン交換水40重量部を添加し、50℃で30分間穏やかに攪拌した。
【0145】
その後、PVA5%水溶液40重量部を添加して、75℃で1時間反応させた後、90℃で1時間反応させて、複合樹脂粒子群の分散液(VII−1)を得た。
この複合樹脂粒子群の分散液(VII−1)中に含有される複合樹脂粒子をSEMにより観察したところ、この複合樹脂粒子は、平均粒子径が4.63μmの真球状の単分散粒子であった。
【0146】
<2段目の重合>
さらに、同様の装置を用いて、スチレン75重量部、ジビニルベンゼン5重量部、過酸化ベンゾイル2.0重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、亜硝酸ナトリウム0.1重量部およびイオン交換水200重量部を、ホモミキサーを用い10000rpm3分間撹拌した。
【0147】
ついで、この混合物を、温度計と窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移し、前記の複合樹脂粒子群の分散液(V−1)を76.9重量部添加し、75℃で3時間反応させ、続いて90℃で3時間反応させ、複合樹脂粒子群(V−2)の分散液を得た。
【0148】
こうして得られた水性分散液をブフナーロートで濾紙を用いて減圧濾過して樹脂粒子のケーキとし、得られたケーキを105℃に設定された熱風乾燥機を用いて乾燥させて複合樹脂粒子群(V−2)を得た。
【0149】
得られた複合樹脂粒子群(V−2)について、上記と同様の方法で複合樹脂粒子の平均粒子径(φcp)、複合樹脂粒子群を構成する複合樹脂粒子の中心とシリコーン樹脂芯材粒子の中心との距離(x)、比率(x/φcp)、変動率および真球度を測定し、その結果を表1に示す。
【0150】
また、得られた複合樹脂粒子群(V−2)のSEM写真を図22に示す。
こうして得られた複合樹脂粒子群(V−2)を構成する複合樹脂粒子について、その複合樹脂粒子の芯材となっているシリコーン樹脂芯材粒子の断面が露出するように断面を切り出した。この断面図を図23に示す。図23に示すように、このシリコーン樹脂粒子の直径(Dsi)は、2.63μmであり、このシリコーン樹脂粒子の中心点(P)を通ってこの複合樹脂粒子の表面と接する点までが最も短い仮想直線(B)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂粒子の中心点(P)から、この仮想直線(B)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も短い(Rmini)は、1.38μmであった。
【0151】
また、シリコーン樹脂芯材粒子の断面の中心を通るとともに、該複合樹脂粒子の外周面との交点間の距離が最も長い仮想直線(A)を描画し、この断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から、この仮想直線(A)が複合樹脂粒子の表面と接する点までの最も長い距離(Rmax)は、4.06μmであった。
【0152】
これらの値から、この複合樹脂粒子が次式(1)、(2)を満足するものである。
【0153】
【数9】
【0154】
同様にしてこの複合樹脂粒子群(V−2)を構成する複合樹脂粒子について、断面を切り出して上記のようにしてシリコーン樹脂芯材粒子の位置を測定したところ、この複合樹脂粒子群(V−2)の少なくとも95個数%の粒子において、上記のシリコーン樹脂芯材粒子の偏在が認められた。
【0155】
真球度の測定方法
真球度は、以下の方法によって求めた。
複合樹脂粒子群を電子顕微鏡を用いて撮影を行い、得られた画像を画像解析用ソフトウェアを用いて(三谷商事(株)、WinROOF)、円形度を測定する。約50個の測定値を平均し、これを真球度とする。なお、円形度は下記の式で計算される。
円形度=4π×面積/(周囲長×周囲長)
〔実施例8〕
MMA40重量部、EGDMA10重量部、過酸化ベンゾイル1重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.3重量部、イオン交換水300重量部、亜硝酸ナトリウム0.1重量部を、ホモミキサーを用いて10000回転で3分間攪拌した。
【0156】
次いで、この混合物を温度計と窒素ガス導入管を装着した容量1リットルの四つ口フラスコに移し、製造例3で調製したポリオルガノシロキサン粒子50重量部を添加し、40℃で30分間攪拌した。
【0157】
その後、ポリビニルアルコール2重量部を加えて69℃で1時間30分反応させ、次いで90℃で1時間反応させた。
得られた水性分酸液をブフナーロートで濾紙を用いて減圧濾過してコアシェル粒子のケーキを得た。
【0158】
得られたケーキを105℃に設定された熱風乾燥機を用いて乾燥させてコアシェル粒子を得た。得られた複合粒子について、シリコーン樹脂粒子の中心点Pを通ってこの複合粒子の表面と接する点までがもっとも短い仮想直線Bが複合粒子と接する点までの最も短い距離(Rmini)は1.25μmであり、またシリコーン芯材粒子の外面との交点間の距離が最も長い仮想直線Aを描画し、この断面におけるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点(P)から、この仮想直線(A)が複合樹脂粒子の表面で接する点までの最も長い距離(Rmax)は2.68μmであった。
【0159】
得られた複合粒子群の特性を表1に示す。
この実施例8で使用したシリコーン樹脂芯材粒子のSEM写真を、図26に、複合樹脂粒子群のSEM粒子群を図27に、図28に実施例8で得られた粒子群の反射光の変化率を示す。
〔比較例1〜比較例3〕
比較例として、市販のシリコーン粒子(比較例1、モメンディブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、商品名:トスパール145A,平均粒子径(φsi)4.5μm)、架橋ポリメチルメタクリレート粒子(比較例2、綜研化学(株)製、商品名:MX-500、平均粒子径5.0μm)、スチレン系粒子(比較例3、綜研化学(株)製、商品名:SX-500H、平均粒子径5.0μm)を用意して、これらの粒子の反射強度の変化率を表1に示す。
【0160】
比較例3により得られた粒子群の反射強度の変化率を図25に示す。
〔比較例4〕
比較例1の粒子6.7重量部、比較例2の粒子13.3重量部、比較例3の粒子80重量部の比率で混合して混合粒子を調整し、この混合粒子の反射強度の変化率を表1に示す。
【0161】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の複合樹脂粒子群は、芯材粒子がシリコーン樹脂粒子からなり、しかも本発明の複合樹脂粒子を構成する複合樹脂粒子においては、芯材粒子であるシリコーン樹脂粒子が、複合樹脂粒子の中心から偏在して存在する。すなわち、樹脂芯材粒子を用いてシード重合しているにも拘わらず、シード粒子であるシリコーン樹脂芯材粒子の中心点と、シード重合の結果得られた複合樹脂粒子の中心点とが一致せず、シリコーン樹脂芯材粒子が複合樹脂粒子の中でいずれかの方向に偏って存在して複合樹脂粒子が、全体の半分以上、好ましくは大多数を占める。
【0163】
このようにシリコーン樹脂芯材粒子が偏在している個々の複合樹脂粒子について光の反射方向をみると、統一的な反射方向は示さないが、これらの複合樹脂粒子を多数含有する本発明の複合樹脂粒子群について、光の反射方向をみると、反射光が協調し合って非常に均一性の高い反射光を得ることができる。
【0164】
従来から使用されている異なる反射特性を有する複数の粒子を混合した場合、それぞれの粒子の反射特性が顕在化して、それぞれの粒子が有していない反射特性が低下するためにこのような反射光の均一性は発現しないが、本発明の複合樹脂粒子群では、反射光が弱め合うことがなく、全波長にわたって均一な反射光が得られる。
【符号の説明】
【0165】
10・・・複合樹脂粒子
20・・・アクリル系樹脂層
30・・・シリコーン樹脂芯材粒子
Dsi・・・シリコーン樹脂粒子の直径
Rmini・・・シリコーン樹脂粒子の中心から複合樹脂粒子の外殻までの最短長さ
Rmax・・・シリコーン樹脂粒子の中心から複合樹脂粒子の外殻までの最長長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28