(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706746
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】投写光学ユニット及びそれを用いた投写型映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20150402BHJP
G03B 21/10 20060101ALI20150402BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20150402BHJP
G02B 13/16 20060101ALI20150402BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
G03B21/14 D
G03B21/10 Z
G02B17/08 A
G02B13/16
G02B13/18
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-86922(P2011-86922)
(22)【出願日】2011年4月11日
(62)【分割の表示】特願2005-111516(P2005-111516)の分割
【原出願日】2005年4月8日
(65)【公開番号】特開2011-175277(P2011-175277A)
(43)【公開日】2011年9月8日
【審査請求日】2011年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 博樹
(72)【発明者】
【氏名】久田 隆紀
(72)【発明者】
【氏名】大石 哲
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】小倉 直之
【審査官】
橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−287813(JP,A)
【文献】
特開平11−142731(JP,A)
【文献】
特開2004−326079(JP,A)
【文献】
特開2001−215412(JP,A)
【文献】
特開2004−258218(JP,A)
【文献】
特開平05−158151(JP,A)
【文献】
特開2003−177464(JP,A)
【文献】
特開2002−350774(JP,A)
【文献】
特開昭62−137236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00−21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンに斜め投写する投写型映像表示装置において、
光源からスクリーンに向かって、順に、
映像表示素子と、
前記映像表示素子に表示された映像を拡大投写する投写光学系と、
前記投写光学系からの光束を前記スクリーンに対して反射する反射ミラーと、を備え、
前記投写光学系は、
回転対称な形状を有する複数のレンズからなる共軸光学系の前群と、
回転非対称な自由曲面形状を有し、非対称な収差の補正をする自由曲面レンズを少なくとも1枚含む後群と、を備え、
前記反射ミラーは、回転非対称な自由曲面形状の反射面を有し、台形歪を補正し、
前記映像表示素子、前記投写光学系、及び、前記反射ミラーは、各々共通の光学系ベースに固定され、
前記自由曲面レンズは、光出射方向に凹を向けた面を有し、
前記反射ミラーは、光反射方向に凸を向けた面を有しており、
前記自由曲面レンズにおける、前記スクリーンの下方に向かう光が通過する部分の曲率が、前記スクリーンの上方に向かう光が通過する部分の曲率よりも大きく、
前記反射ミラーにおける、前記スクリーンの下方に向かう光を反射する部分の曲率が、前記スクリーンの上方に向かう光を反射する部分の曲率よりも大きいことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項2】
スクリーンに斜め投写する投写型映像表示装置において、
光源からスクリーンに向かって、順に、
映像表示素子と、
前記映像表示素子に表示された映像を拡大投写する投写光学系と、
前記投写光学系からの光束を前記スクリーンに対して反射する反射ミラーと、を備え、
前記投写光学系は、
回転対称な形状を有する複数のレンズからなる共軸光学系の前群と、
回転非対称な自由曲面形状を有し、非対称な収差の補正をする自由曲面レンズを少なくとも1枚含む後群と、を備え、
前記反射ミラーは、回転非対称な自由曲面形状の反射面を有し、台形歪を補正し、
前記映像表示素子、前記投写光学系、及び、前記反射ミラーは、各々共通の光学系ベースに固定され、
前記自由曲面レンズは、光出射方向に凹を向けた面を有し、
前記自由曲面レンズにおける、前記スクリーンの下方に向かう光が通過する部分の曲率が、前記スクリーンの上方に向かう光が通過する部分の曲率よりも大きく、
前記反射ミラーは、前記スクリーンの下方に向かう光を反射する部分が光の反射方向に凸の形状を為し、前記スクリーンの上方に向かう光を反射する部分が光の反射方向に凹の形状を為していることを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項3】
前記映像表示素子を構成する複数の液晶パネルの各々を移動する機構と、
前記映像表示素子の光軸と前記前群の光軸との角度の調整と、前記映像表示素子と前記前群との光学的距離の調整との少なくとも何れか一方を行う機構と、
前記反射ミラーの角度を調整する機構と、を更に備え、
前記投写光学系は、前記光学系ベースにリジッドに固定される、請求項1又は2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
前記映像表示素子の光軸と前記前群の光軸との角度の調整と、前記映像表示素子と前記前群との光学的距離の調整との少なくとも何れか一方を行う機構を更に備える、請求項1又は2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項5】
前記反射ミラーを、当該反射ミラーの略中心を中心軸として回転可能にするための機構
を更に備える、請求項4記載の投写型映像表示装置。
【請求項6】
前記前群の中で最も正のパワーの大きいレンズ群を、前記前群の光軸方向に移動可能にするための機構を更に備える、請求項1又は2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項7】
前記反射ミラーの反射面の座標原点と前記前群のうち最も前記スクリーン側に近いレンズ面との光軸方向の距離が、前記前群の焦点距離の5倍以上である、請求項1又は2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項8】
前記前群における複数のレンズの間、前記前群と前記後群の間、又は、前記後群と前記反射ミラーの間の何れかに、光路を折り曲げる折り曲げミラーを更に備える、請求項1記載の投写型映像表示装置。
【請求項9】
前記前群の光軸上に前記映像表示素子の中心位置を配置する、請求項1又は2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項10】
前記反射ミラーが反射した光を反射して前記スクリーンへ導くための平面ミラーを更に備える、請求項1又は2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項11】
スクリーンに斜め投写する投写型映像表示装置に用いられる光学ユニットにおいて、
光源からスクリーンに向かって、順に、
映像表示素子と、
前記映像表示素子に表示された映像を拡大投写する投写光学系と、
前記投写光学系からの光束を前記スクリーンに対して反射する反射ミラーと、を備え、前記投写光学系は、
回転対称な形状を有する複数のレンズからなる共軸光学系の前群と、
回転非対称な自由曲面形状を有し、非対称な収差の補正をする自由曲面レンズを少なくとも1枚含む後群と、を備え、
前記反射ミラーは、回転非対称な自由曲面形状の反射面を有し、台形歪を補正し、
前記映像表示素子、前記投写光学系、及び、前記反射ミラーは、各々共通の光学系ベースに固定され、
前記自由曲面レンズは、光出射方向に凹を向けた面を有し、
前記反射ミラーは、光反射方向に凸を向けた面を有し、
前記自由曲面レンズにおける、前記スクリーンの下方に向かう光が通過する部分の曲率が、前記スクリーンの上方に向かう光が通過する部分の曲率よりも大きく、
前記反射ミラーにおける、前記スクリーンの下方に向かう光を反射する部分の曲率が、前記スクリーンの上方に向かう光を反射する部分の曲率よりも大きいことを特徴とする光学ユニット。
【請求項12】
スクリーンに斜め投写する投写型映像表示装置に用いられる光学ユニットにおいて、
光源からスクリーンに向かって、順に、
映像表示素子と、
前記映像表示素子に表示された映像を拡大投写する投写光学系と、
前記投写光学系からの光束を前記スクリーンに対して反射する反射ミラーと、を備え、前記投写光学系は、
回転対称な形状を有する複数のレンズからなる共軸光学系の前群と、
回転非対称な自由曲面形状を有し、非対称な収差の補正をする自由曲面レンズを少なくとも1枚含む後群と、を備え、
前記反射ミラーは、回転非対称な自由曲面形状の反射面を有し、台形歪を補正し、
前記映像表示素子、前記投写光学系、及び、前記反射ミラーは、各々共通の光学系ベースに固定され、
前記自由曲面レンズは、光出射方向に凹を向けた面を有し、
前記自由曲面レンズにおける、前記スクリーンの下方に向かう光が通過する部分の曲率が、前記スクリーンの上方に向かう光が通過する部分の曲率よりも大きく、
前記反射ミラーは、前記スクリーンの下方に向かう光を反射する部分が光の反射方向に凸の形状を為し、前記スクリーンの上方に向かう光を反射する部分が光の反射方向に凹の形状を為していることを特徴とする光学ユニット。
【請求項13】
前記映像表示素子を構成する複数の液晶パネルの各々を移動する機構と、
前記映像表示素子の光軸と前記前群の光軸との角度の調整と、前記映像表示素子と前記前群との光学的距離の調整との少なくとも何れか一方を行う機構と、
前記反射ミラーの角度を調整する機構と、を更に備え、
前記投写光学系は、前記光学系ベースにリジッドに固定される、請求項11又は12に記載の光学ユニット。
【請求項14】
前記映像表示素子の光軸と前記前群の光軸との角度の調整と、前記映像表示素子と前記前群との光学的距離の調整との少なくとも何れか一方を行う機構を更に備える、請求項11又は12に記載の光学ユニット。
【請求項15】
前記反射ミラーを、当該反射ミラーの略中心を中心軸として回転可能にするための機構を更に備える、請求項14に記載の光学ユニット。
【請求項16】
前記前群の中で最も正のパワーの大きいレンズ群を、前記前群の光軸方向に移動可能にするための機構を更に備える、請求項11又は12に記載の光学ユニット。
【請求項17】
前記反射ミラーの反射面の座標原点と前記前群のうち最も前記スクリーン側に近いレンズ面との光軸方向の距離が、前記前群の焦点距離の5倍以上である、請求項11又は12に記載の光学ユニット。
【請求項18】
前記前群における複数のレンズの間、前記前群と前記後群の間、又は、前記後群と前記反射ミラーの間の何れかに、光路を折り曲げる折り曲げミラーを更に備える、請求項11又は12に記載の光学ユニット。
【請求項19】
前記前群の光軸上に前記映像表示素子の中心位置を配置する、請求項11又は12に記載の光学ユニット。
【請求項20】
前記反射ミラーが反射した光を反射して前記スクリーンへ導くための平面ミラーを更に備える、請求項11又は12に記載の光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、カラーの拡大映像をスクリーン上に投写して映像表示を行なう投写型映像表示装置に関し、特に、映像をスクリーンに対して斜めに投写して拡大映像をスクリーン上に形成する投写型映像表示装置、及びこれに用いられる投写光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
反射型、透過型液晶パネルや微小ミラーを用いた表示素子をスクリーン上に拡大表示する投写型映像表示装置においては、そのスクリーン上で充分な大きさの拡大映像を得ることは勿論のこと、同時に、装置の奥行寸法を短縮することが要求される。かかる要求を実現するために、下記の特許文献1に記載されているような、スクリーンに対して斜め方向から拡大・投写する(以下、これを「斜め投写」と称する)ための投写光学ユニットが知られている。また、かかる斜め投写に曲面ミラーを用いた場合における光学的な調整に関しては、例えば下記特許文献2に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−264627号公報
【特許文献2】特開2002−350774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
斜め投写、すなわちスクリーン主平面の法線に対し、所定の角度を以って(例えばスクリーン下方から)映像を投写すると、スクリーン上に投写された映像に、台形歪み、及びスクリーン上下の投写距離の差から生じる収差が生じる。これを解消するため、上記特許文献1では、投写光学系とスクリーンとの間に配置された負のパワーをもつ自由曲面ミラーにより台形歪を補正している。一方、収差については、映像表示素子を共軸投写光学系に対し平行移動、または映像表示素子を非軸対称の投写光学系に対し傾けるとともに平行移動させることにより補正している。
【0005】
しかしながら、このような収差補正では、スクリーン上の映像が縦方向にずれる可能性があり、そのための補正機構が必要になる。また共軸投写光学系を使用するものにおいては、非常に広い画角が要求されるため、レンズ枚数が多くなり、口径も大きくなる。
【0006】
上記特許文献2には、自由曲面ミラーの移動による調整方法が開示されているが、上記の収差補正については考慮されていない。
【0007】
このように、従来技術では、台形歪と収差をそれぞれ別の手段で補正しているため、必要なレンズ径も大きく、またレンズの枚数も多くする必要がある。すなわち上記従来技術は、斜め投写において、台形歪及び収差を良好に低減しつつ映像表示装置の奥行き、及び/またはスクリーン下部の高さを小さくすること(以下、これを「セットのコンパクト化」と称する)は困難であった。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、台形歪及び収差が低減された映像を表示しつつセットをコンパクト化するのに好適な技術を提供することにある。
【0009】
また、本発明は、背面投写型の映像標示装置において、上記のような表示特性をもつコンパクト化されたセットの製造、または組立調整を容易にすることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、斜め投写を行うものにおいて、光出射方向に凹を向けた面を有するとともに光軸に対して回転非対称の形状を持つ少なくとも一つの非対称レンズを含む投写レンズを備えた第1の光学系と、反射面の少なくとも一部が反射方向に凸を向けた少なくとも一つの凸面ミラーを含む第2の光学系を備える。そして本発明は、上記第1の光学系及び第2の光学系が、共通の光学系支持ユニットに搭置され固定されていることを特徴とするものである。
【0011】
上記非対称レンズは、そのスクリーン下端に向かう光線が通過する部分の曲率が、前記スクリーン上端に向かう光線が通過する部分の曲率よりも大きい自由曲面レンズである。また、上記凸面ミラーは、そのスクリーンの下方に向かう光を反射する部分の曲率が、前記スクリーンの上方に向かう光を反射する部分の曲率よりも大きい、もしくはスクリーンの下方に向かう光を反射する部分が該光の反射方向に凸の形状を為し、スクリーンの上方に向かう光を反射する部分が光の反射方向に凹の形状を為す自由曲面ミラーである。
【0012】
また本発明は、映像表示素子を含む映像発生源からの光の出射方向と前記投写レンズ光軸との角度の調整と、前記映像発生源と前記投射レンズとの光学的距離の調整との少なくともいずれか一方を可能にするための機構、上記自由曲面ミラーを該自由曲面ミラーの略中心を中心軸として回転可能にするための機構、または上記投写レンズの中で最も正のパワーの大きいレンズ群を前記投写レンズの光軸方向に移動可能にするための機構の、少なくともいずれか一つを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、映像の斜め投写により生じる台形歪及び/または収差を低減して良好な映像を得つつ、セットをコンパクト化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る映像表示装置の一実施形態を示す断面図。
【
図2】本発明に係る投写光学ユニットの基本構成を示す断面図。
【
図3】本発明に係る一実施例の構成と光路を示すYZ断面図。
【
図4】本発明に係る一実施例の構成と光路を示すXZ断面図。
【
図5】本発明に係る一実施例の歪性能を表す図である。
【
図6】本発明に係る一実施例のスポット性能を表す図である。
【
図7】本発明に係る投写光学ユニットの一例を示す図。
【
図8】本発明に係る投写光学ユニットの調整機構の一例を示す図。
【
図9】本発明に係る投写光学ユニットの調整機構の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は本発明による映像表示装置の一部断面斜視図である。映像発生源1は、小型の映像を表示する。映像発生源1は、反射型や透過型の液晶パネル、または微小なミラーを複数備えた表示素子等の光変調素子を含む。また、映像発生源1は投写型ブラウン管を含むものであってもよい。第1の光学系の構成要素である投写レンズ2は、映像発生源1の映像をスクリーン3に投写する。投写レンズ2からスクリーン3に至る光路中には、映像表示装置の奥行を低減するために平面反射ミラー4が設けられている。第2光学系の構成要素である自由曲面ミラー5は、前記投写レンズ2と平面反射ミラー4との間に設置されている。投写レンズからの光は、自由曲面ミラー5で反射されて平面反射ミラー4に導かれ、さらに平面反射ミラー4で反射されてスクリーン3に導かれる。これらの要素は、筐体6の内部に収納され、所定の位置に固定される。また、前記映像発生源1、投写レンズ2、自由曲面ミラー5は、光学系ベース7に固定され一体化されている。以下、本発明による投写光学ユニットの構成部品の特徴について、
図2を使用して説明する。
【0017】
図2は本実施形態に係る投写光学ユニットを用いた背面投写型映像表示装置の基本的な光学構成を示す断面図である。
図2は、光学系の構成をXYZ直交座標系におけるYZ断面で示している。ここで、XYZ直交座標系の原点は、映像発生源1を構成する映像表示素子11の表示画面の中央とし、Z軸はスクリーン3の法線と平行であるものとする。Y軸はスクリーンの画面の短辺と平行であり、スクリーンの水平方向と等しいものとする。X軸は、スクリーンの画面の長辺と平行であり、スクリーンの垂直方向と等しいものとする。
【0018】
図2に示すように、映像表示素子11から射出した光は、透過型のレンズ群で構成される投写レンズ2のうち、まず回転対称な面形状を有する複数の屈折レンズから構成される前群12を通過する。その後、少なくとも一方の面が回転非対称の自由曲面の形状を有するレンズ(以下、「自由曲面レンズ」と称する)を含む投写レンズの後群13を通過する。その後、回転非対称の自由曲面形状の反射面を有する少なくとも1枚の反射鏡(以下、自由曲面ミラーと言う)5で反射される
。そして、平面反射ミラー4で反射された後、スクリーン3に入射する。
【0019】
ここで上記映像表示素子11が上記光変調素子の場合は、この光変調素子を照射するランプ等の照明系が必要であるが、それらの図示は省略している。また、映像表示素子11は、所謂3板式のように複数の画を合成する方式でもよい。その場合に必要になる合成用プリズム等の合成光学系についても、その図示は省略している。
【0020】
図2において、投写レンズ2の長さが長いことから、前記映像表示素子11の位置がスクリーンの法線の方向に対して遠くなり奥行きが大きくなるように見受けられるかもしれない。しかしながら、本実施形態では、前記自由曲面ミラー5と前記投写レンズ2の後群13との間、前記投写レンズ2の前群12と後群13の間、または前群12の途中において、ミラー(図示せず)を配置している。これにより、投写レンズ2の光軸を
図2に示す断面に対してほぼ垂直な方向に折り曲げ、奥行きの増大を防止できる。
【0021】
本実施形態では、
図2に示すように、上記映像表示素子11は、その表示画面の中央が上記投写レンズ2の光軸上に配置されている。従って、上記映像表示素子11の表示画面の中央から出て上記投写レンズ2の入射瞳の中央を通ってスクリーン3上の画面中央に向かう光線21は、ほぼ上記投写レンズの光軸に沿って進む(以下、これを画面中央光線という)。この画面中央光線は、自由曲面ミラー5の反射面上の点P2で反射された後、平面反射ミラー4上の点P5で反射されて、スクリーン3上の画面中央の点P8にスクリーンの法線8に対して所定の角度を以って(すなわち斜めに)入射される。この角度を以下、「斜め入射角度」と称し、θsで表わすこととする。
【0022】
このことはすなわち、前記投写レンズ2の光軸に沿って通過した光線がスクリーンに対して斜めに入射していることであり、実質的に投写レンズ2の光軸がスクリーンに対して斜めに設けられていることになる。このような方法でスクリーンに斜め入射させると、投写した長方形の形状が台形になる所謂台形歪の他にも光軸に対して回転対称でない種々の収差が生じる。本実施形態では、これ等を前記投写レンズ2の後群13と前記第2の光学系の反射面とで補正している。
【0023】
図2に示す断面内において、上記映像表示素子11の画面下端から該画面下端と上記投写レンズ2の入射瞳の中央を通って射出され、これに対応するスクリーン上の画面上端の点P9に入射する光線を光線22とする。また、上記映像表示素子11の画面上端から該画面上端と上記投写レンズ2の入射瞳の中央を通って射出され、これに対応するスクリーン上の画面下端の点P7に入射する光線を光線23とする。
図2を見ると、点P3から点P6を経由して点P9に到る光路長は、点P1から点P4を経由して点P7に到る光路長よりも長くなっている。これは、投写レンズ2から見て、スクリーン上の像点P9が像点P7よりも遠くにあることを意味している。そこで、スクリーン上の像点P9に対応する物点(表示画面上の点)がより投写レンズ2に近い点に、また、像点P7に対応する物点がより投写レンズ2から遠い点にあれば、像面の傾きを補正できる。そのためには、前記映像表示素子1の表示画面の中央における法線ベクトルを、前記投写レンズ2に光軸に対し傾けるようにする。具体的には、上記法線ベクトルを、YZ平面内において、スクリーンの位置する方へ向けるように傾ければよい。光軸に対して傾いた像平面を得るのに物平面を傾ける方法は知られている。しかしながら、実用的な大きさの画角では、物平面の傾きによる像面は光軸に対して非対称な変形を生じ、回転対称な投写レンズでは補正が困難である。本実施形態では、回転対称でない、すなわち回転非対称の自由曲面を用いていることから、非対称な像面の変形に対応できる。このため、物平面を傾けることで低次の像面の歪を大きく低減でき、自由曲面による収差補正を補助する上で効果的である。
【0024】
次に、各光学要素の作用について説明する。第1
光学系である投写レンズ2は、その前群12が前記映像表示素子11の表示画面をスクリーン3に投写するための主レンズであり、回転対称な光学系における基本的な収差を補正する。投写レンズ2の後群13は、回転非対称の自由曲面レンズを含んでいる。ここで本実施形態においては、自由曲面レンズは、その光出射方向に対して凹を向くように湾曲されている。そして、自由曲面レンズの、スクリーン3の下端に向かう光線が通過する部分の曲率を、前記スクリーン上端に向かう光線が通過する部分の曲率よりも大きくしている。そして第2の光学系は、回転非対称の自由曲面形状を有する自由曲面ミラーを有している。ここで本実施形態においては、この自由曲面ミラーは、その一部が光の反射方向に対して凸を向くように湾曲された、回転非対称の凸面ミラーとしている。具体的には、自由曲面ミラーの、スクリーン3の下方に向かう光を反射する部分の曲率を、前記スクリーンの上方に向かう光を反射する部分の曲率よりも大きくしている。また、自由曲面ミラーの、スクリーンの下方に向かう光を反射する部分が該光の反射方向に凸の形状を為し、スクリーンの上方に向かう光を反射する部分が光の反射方向に凹の形状を為すようにしてもよい。上記自由曲面レンズと自由曲面ミラーの作用により、主として、斜め入射によって生じる収差の補正が行われる。すなわち、本実施形態では、第2の光学系が主として台形歪を補正し、第1の光学系である投写レンズ2の後群13が、主として像面の歪みなどの非対称な収差の補正を行なう。
【0025】
このように、本実施形態は、第1の光学系が回転非対称の自由曲面レンズを少なくとも一つ含み、第2の光学系が回転非対称の自由曲面ミラーを少なくとも一つ含んでいる。これによって、斜め投写によって生じる台形歪と収差の両方を補正可能としている。
【0026】
前記第2光学系の反射面の座標原点(ここでは、画面中央光線を反射する位置の座標とする)と、投写レンズ2の前群12のうち最もスクリーン側に近いレンズ面との光軸方向の距離が、投写レンズ2
の前群
12の焦点距離の5倍以上に設定することが望ましい。これによって、前記第2光学系の反射面により台形歪、収差をより効果的に補正し、良好な性能を得ることができる。
【0027】
一方、自由曲面ミラーは、その寸法が大きくなるほど製造が非常に困難になることから、所定の大きさ以下にすることが重要である。例えば
図2に示す平面反射ミラー4の大きさはスクリーン画面の約70%以上にもなるため、50型以上のような大画面のリアプロジェクタでは500mmを越えるサイズとなり、これを自由曲面形状にすると製造が非常に困難となる。従って、リアプロジェクタでこの平面反射ミラーを自由曲面にすることは適当でない。そこで、本実施形態では、自由曲面ミラー5の寸法を平面反射ミラー3の寸法よりも小さくし、その自由反射ミラー5を平面反射ミラー3の下方に配置している。そして、投写レンズ2からの映像光を自由曲面ミラー5、平面反射ミラーの順で反射させて、スクリーン3に投写している。
【0028】
以上の説明は、
図2に示す実施形態に基づいて行った。しかしながら、ミラーによる光路の折り曲げの方向が、
図2とは逆に画面長辺を含む平面内にある場合でも、上記説明した本実施形態と同様な考えを適用できる。
【0029】
これによって、屈折面を有する投写レンズ2において、レンズの偏心やレンズ径の増大を招くことなく、またレンズ枚数を増加させることなく、斜め入射による台形歪の補正を実現できる。更に、奥行を小さく、かつ製造が容易な投写光学ユニットを実現できる。更にまた、本実施形態によれば、奥行とスクリーン下部の高さを低減させたコンパクトなセットが提供でき、小さな自由曲面ミラーで製造が容易な光学系を提供できる。
【0030】
以下、本発明に係る光学系の実施例について、具体的な数値を例示しつつ説明する。
図3から
図6と表1から表4を用いて本発明の数値実施例の1つについて説明する。
【0031】
図3と
図4は、第1の数値例に基づく本発明に係る光学系の光線図を示している。前述したXYZ直交座標系において、
図3はYZ断面、
図4はXZ断面での構造を示している。
図1では、投写レンズ2の前群12の途中に折り曲げミラーを設置して光路をX軸方向に一度折り曲げている例を示している。
図3では、この折り曲げミラーを省略しており、光学系をZ軸方向に展開して示している。
図4は、折り曲げミラーを含め光路を折り曲げた状態の光学系を示している。折り曲げミラーは、設置の位置や角度に若干の任意性があり、また各光学要素の機能に影響を及ぼさない。従って、以下の説明では、折り曲げミラーを省略して説明することにする。
【0032】
本例において、
図3の下側に表示した映像表示素子11から射出した光は、複数のレンズを含む投写レンズ2のうち、まず回転対称形状の面のみを有するレンズのみで構成される前群12を通過する。そして、回転非対称の自由曲面レンズを含む後群13を通り、第2の光学系である自由曲面ミラー5の反射面で反射される。その反射光は、平面反射ミラー4で反射された後、スクリーン3に入射される。
【0033】
ここで、投写レンズ2の前群12は、全て回転対称な形状の屈折面を持つ複数のレンズで構成されており、各屈折面のうち4つは回転対称な非球面であり、他は球面である。ここに用いられた回転対称な非球面は、各面ごとのローカルな円筒座標系を用いて、次の式で表される。
【0034】
【数1】
ここで、rは光軸からの距離であり、Zはサグ量を表している。また、cは頂点での曲率、kは円錐定数、AからJはrのべき乗の項の係数である。
【0035】
前記投写レンズ2の後群13にある自由曲面レンズは、各面の面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x、y、z)を用い、X、Yの多項式を含む次の式で表わされる。
【0036】
【数2】
ここで、ZはX、Y軸に垂直な方向で自由曲面の形状のサグ量を表わしており、cは頂点での曲率、rはX、Y軸の平面内での原点からの距離、kは円錐定数、C(m、n)は多項式の係数である。
【0037】
表1は、本実施例に係る光学系の数値データを示している。表1において、S0〜S23は、
図10に示された符号S0〜S23にそれぞれ対応している。ここで、S0は映像表示素子11の表示面、すなわち物面を示しており、S23は自由曲面ミラー5の反射面を示している。またS24は、
図10では示されていないが、スクリーン3の入射面、すなわち像面を示している。なお、
図10において、上図は本実施例に係る第1及び第2の光学系の垂直方向断面図、下の図は、その光学系の水平方向断面図を表している。
【0038】
表1においてRdは各面の曲率半径であり、
図3の中で面の左側に曲率の中心がある場合は正の値で、逆の場合は負の値で表わしている。また表1においてTHは面間距離であり、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点までの距離を示す。あるレンズ面に対して、次のレンズ面が
図3の中で左側に位置するときには面間距離は正の値、右側に位置する場合は負の値で表している。更に、表1においてS5、S6、S17、S18は回転対称な非球面であり、表1では面の番号の横に*を付けて分かり易く示している。これら4つ面の非球面の係数を表2に示している。
【0039】
本実施例では、映像表示素子11の表示画面である物面を、投写レンズ2の光軸に対して−1.163度傾けている。傾けの方向は、
図3の断面内で物面の法線が反時計回りに回転する方向を正の値で表わすことにする。従って、本実施例では物面を
図3の断面内で、投写レンズ2の光軸に垂直な位置から時計回り方向に1.163度傾けていることになる。
【0040】
S23の自由曲面ミラー5は、そのローカル座標の原点を前記投写レンズ2の光軸上に置いている。そして、自由曲面ミラー5のローカル座標の原点での法線、すなわちZ軸を、投写レンズ2の光軸と平行な位置から29度傾けて配置している。傾けの方向は前記物面と同様に
図3の断面内で反時計回りに回転する方向を正とし、従って反時計回りに傾けていることになる。これによって、映像表示素子11の画面中央から出てほぼ投写レンズ2の光軸に沿って進んできた画面中央光線は、S23で反射後、投写レンズ2の光軸に対して前記傾き角度の2倍の58度だけ傾いた方向に進む。ここで、S23の座標原点を通り、投写レンズ2の光軸
に対するS23の傾き角度の2倍傾いた方向を、反射後の新たな光軸とし、以後の面はこの光軸上に配置されるものとする。表1のS23に示した面間隔の値−400は、次のS24が、S23の右側にあり前記反射後の光軸に沿って400mmの距離の点にローカル座標の原点を配置されていることを示している。以下の面も同じ規則により配置されている。
【0041】
本実施例における、各面のローカル座標系の傾け又は偏心の様子を表4に示す。表4において、面番号の右側に傾き角度、偏心の値を示しており、ADEは
図3の断面と平行な面内での傾きの大きさであり、その表示規則は上に示した通りである。また、YDEは偏心の大きさであり、偏心は
図3の断面と平行な面内でかつ光軸に垂直な方向で設定され、
図3の断面において下側への偏心を正とする。尚、本実施例においては、YDEを0(すなわち偏心なし)としている。
【0042】
本発明では、全ての光学要素の傾きや偏心は、図示した断面に平行な断面内での方向で設定される。
【0043】
表1、表3から、本実施例では、曲率cとコーニック係数kが0となっていることがわかる。斜め入射による台形歪は、斜め入射の方向に極端に大きく発生し、これと垂直な方向に歪量は小さい。従って、斜め入射の方向とこれに垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能する上記曲率cやコーニック係数kを利用しないことにより、非対称な収差を良好に補正することができる。
【0047】
【表4】
上記表1〜4の数値は、物面上16×9の範囲の映像を像面上1452.8×817.
2の大きさに投写する場合の一例である。そのときの図形歪を
図5に示す。
図5の縦方向は
図3の上下方向であり、Y軸の方向である。
図5の横方向はスクリーン上でY軸と直交する方向であり、図の長方形の中央が画面の中央である。図は画面の縦方向を4分割、横方向を8分割した直線の曲がりの状態を表示して図形歪の様子を示している。
【0048】
本数値実施例のスポットダイアグラムを
図6に示す。
図6では、映像表示素子11の表示画面上、X,Y座標の値で、(8,4.5)、(0,4.5)、(4.8,2.7)、(8,0)、(0,0)、(4.8、−2.7)、(8、−4.5)、(0、−4.5)の8点から射出した光束のスポットダイアグラムを上から順に示す。単位はmmである。各スポットダイアグラムの横方向はスクリーン上でのX方向、縦方向はスクリーン上でのY方向である。このように、両者ともに、良好な性能を維持している。
【0049】
以上、本発明に係る実施形態の光学ユニットについて説明した。本実施形態が従来技術で説明した特許文献1と異なる点は、投写レンズ2の後群13が回転対称でない自由曲面形状を有するレンズで構成され、第2の光学系が回転対称でない自由曲面形状を有する反射面で構成されることにある。更に、これらの役割が別々で、第2の光学系が主として台形歪を補正し、第1の光学系である投写レンズ2の後群13が、主として像面の歪みなどの非対称な収差の補正を行なう。
【0050】
従って、本実施形態においては、組立調整時の焦点合せを、従来技術のように結像光学系のレンズ群をその軸方向に沿って移動させる事によって行なうことはできない。
【0051】
図7は本実施形態に係る投写光学ユニットを構成する投写レンズ2のレンズ群を示す図であり、該レンズ群を保持するレンズ保持部材は図示から省略されている。投写レンズ2の前群12は、映像表示素子11の表示画面をスクリーン(図示せず)に投写するための主レンズであり、回転対称な面形状を有する複数の屈折レンズから構成され、回転対称な光学系における基本的な収差を補正する。投写レンズ2の後群13は、回転非対称の自由曲面レンズを含んでおり、主として、斜め入射によって生じる収差の補正を行なう。
【0052】
図7から明らかなように、本実施形態において、自由曲面レンズの少なくとも1枚は、その光出射方向に対して凹を向くように湾曲されている。そして、自由曲面レンズの、スクリーン3の下端に向かう光線が通過する部分の曲率(ここでは、自由曲面レンズの下側)を、スクリーン3上端に向かう光線が通過する部分(ここでは、自由曲面レンズの上側)の曲率よりも大きくしている。また、本実施形態においては、自由曲面レンズを2枚組み合わせて投写レンズ2の後群13を構成している。
【0053】
本実施例では、折り曲げミラー14は、前群12の途中に設けられている。従来技術では、結像光学系のレンズ群を軸方向に沿って移動させるには、レンズ保持部材(鏡筒)に斜めに溝を入れ内部のレンズ群をその溝に沿って回転させることにより行なっていた。本実施形態では、回転非対称の自由曲面レンズを用いているため、この回転非対称の自由曲面レンズを有する後群13を回転させることができない。よって、本実施形態では、上述したように従来技術による方法でレンズ群を光軸方向に沿って移動させることができない。一方、本実施形態に係る投写レンズ2の前群12は、回転対称なレンズ群で構成されているため、この前群12を回転させても光学像が変形しない。よって、前群12のレンズ群を軸方向に沿って移動させて焦点合せをすることは可能である。ところが、このような焦点合せでは、収差補正を行なう後群13の入射面に入射する光線位置が変化する。このような光線位置の変化が生じると、後群13で良好に収差補正をすることができなくなる場合がある。従って本実施形態では、投写レンズ2の前群12及び後群13の位置を固定し、その投写レンズ2の前に設置される映像表示素子11の位置、及び/または傾きを変えて組立調整時の焦点合せを行なうようにしている。
【0054】
図8に、このような調整
機構を持つ光学ユニットの一例を示す。
図8において、映像発生源1は一例として3板式の透過型の液晶パネルを使用した場合を示しているが、反射式の液晶パネルを使用したものでもよい。また、微小なミラーを複数備えた表示素子を使用したものでもよい。投写レンズ2は、
図7で示した折り曲げミラー14が、前群12の途中に設けられているものである。自由曲面ミラー5は、映像発生源1及び前記投写レンズ2とともに、光学系支持体である光学系ベース7に固定され一体化されている。光学系ベース7に固定されるもののうち、投写レンズ2はリジッドに固定、一体化される。一方、映像発生源1は、調整機構15で少なくとも上下方向(前記X軸に平行な軸を回転中心とする)の傾きと、前後方向(前記Z軸方向)、すなわち映像発生源1の出射側と投写レンズ2の前群12との距離を調整できるように光学系ベース7に固定される。また、自由曲面ミラー5は光学系ベース7に設けられた支持具16で、該自由曲面ミラー5の略中心を中心軸として回転可能なように固定される。
図8において、回転中心用のピン17は、自由曲面ミラー5の中心をその両端から可能に挟持し、これを軸として自由曲面ミラー5が回転可能にされる。自由曲面ミラー5の下端は、回転用ガイド溝18を介して固定用蝶ナット19と結合される。そして、固定用蝶ナット19を用いて、回転用ガイド溝18に沿って自由曲面ミラー5の下端をスライドさせることにより、ピン17を中心軸として自由曲面ミラー5を回転させることが可能となる。これにより、自由曲面ミラー5の反射面中心における法線と投写レンズ2の光軸との為す角度、すなわち自由曲面ミラー5の傾き角が調整される。
【0055】
この例では、映像発生源1として、赤、緑、青色に対応する3つの透過型液晶パネル31を使用している。これらの液晶パネルからの映像は、クロスダイクロイック・プリズム32で合成される。
【0056】
赤、緑、青色に対応する映像の焦点合せを、各液晶パネル31をそれぞれ単独に移動させて行なうことも可能である。しかしながら、この場合、投写表示位置合せ、画素の位置合せ、像面収差補正等、補正すべき物理量が多くなる。よって、各液晶パネル31の移動だけで全ての調整を行なうことは困難である。そこで本実施形態では、各液晶パネル31の移動を画素の位置合せ用とし、映像発生源1を保持する調整機構15を投写表示のための位置合せ、及び像面収差補正用として、各液晶パネル31の調整と分離した。また、歪曲収差の補正は自由曲面ミラー5の回転で行なえるようにした。本実施形態では、このように補正すべき物理量に合せて補正機構を分離することで、容易に映像の焦点合せを行なうことができるようにした。
【0057】
以上説明したように補正機構を分離できたのは、次の理由による。すなわち、本実施形態では、(1)投写レンズ2の前群12を、液晶パネル31の表示画面をスクリーン3に投写するための主レンズとするとともに、前群12を回転対称な光学系における基本的な収差を補正するよう構成した;(2)投写レンズ2の後群13を、回転非対称の自由曲面レンズとし、主として、像面収差の補正するよう構成した;(3)自由曲面ミラー5を、主として、歪曲収差を補正するよう構成した;ことによって、上記のような補正機構を可能にしたものである。
【0058】
本発明に係る投写光学ユニットのその他の実施例を
図9に示す。
図8との違いは、投写レンズ2の前群の中で、最も正のパワーの大きいレンズ群(図示せず。以下、これをパワーレンズと称する)を軸方向に移動可能としたことにある。パワーレンズを軸方向に沿って移動させるには、レンズ保持部材(鏡筒)に斜めにレンズ移動用ガイド溝36を入れ内部のレンズ群をその溝に沿って回転させることにより行なう。
図9において、レンズ固定用蝶ナット37は、パワーレンズもしくはそれを保持する要素と結合されており、これを上記ガイド溝36に沿ってスライドさせることにより、パワーレンズをその光軸に沿って移動させる。すなわち、本例では、ガイド溝36とレンズ固定用蝶ナット37で焦点合せのための調整機構を構成している。投写レンズ2にこの機能を追加することにより、映像発生源1を調整可能なように光学系ベース7に固定される調整機構35を省くことができる。また、
図8の例にパワーレンズの調整機構を用いると、少なくとも上記前後方向(Z軸方向)の距離の調整を省くことが可能となる。
【0059】
以上述べたように、本実施形態によれば、セットの奥行サイズを低減しつつ、且つ組立調整が容易な背面投写型カラー映像表示装置を実現できる。また、上記光学系で、平面反射ミラーを取り除き映像表示素子から自由曲面ミラーまでを1つの装置に収納すれば、前面投写型の表示装置となる。従って、装置からスクリーンまでの距離が非常に短いコンパクトな前面投写装置を実現できる。
【符号の説明】
【0060】
1…映像発生源、2…投写レンズ、3…スクリーン、4…平面反射ミラー、5…自由曲面ミラー、6…筐体、11…映像表示素子、12…投写レンズ前群、13…投写レンズ後群、14…折り曲げミラー、15、35…調整機構16…支持具、17…回転中心用のピン、18…自由曲面ミラー回転用ガイド溝、36…レンズ移動用ガイド溝。