(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御機構は、前記スプールが少なくとも前記シートベルトを全量巻き取ったときに前記ヴィークルセンサの機能および前記ウェビングセンサの機能がキャンセルされるように前記ヴィークルセンサおよび前記ウェビングセンサを制御することを特徴とする請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車等の車両シートに付設されているシートベルト装置は、緊急時に、ウェビングで構成されるシートベルトで乗員を拘束する。一般に、このようなシートベルト装置はシートベルトリトラクタを備えている。従来のシートベルトリトラクタは、緊急時に作動してシートベルトの引出しを阻止するヴィークルセンサと、前述のシートベルトの急激な引出し(以下、急激なシートベルト引出しという)により揺動してシートベルトの引出しを阻止するウェビングセンサとを備えていることが多い。
【0003】
ところで、例えば乗員が着座しない車両シートに付設されかつシートベルトが装着されていないシートベルト装置等においても、車両走行中に振動等によってヴィークルセンサが作動する場合がある。しかしながら、乗員のシートベルト装着状態以外においては、ヴィークルセンサは作動しないようにして、緊急時に作動してシートベルトの引出しを阻止するというヴィークルセンサの本来の機能をキャンセル(無能化)することが望まれる場合がある。そこで、乗員のシートベルト装着状態では前述のヴィークルセンサの本来の機能を発揮するとともに、乗員のシートベルト装着状態以外の予め定められた所定の条件においては、ヴィークルセンサの本来の機能をキャンセル(無能化)するシートベルトリトラクタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のシートベルトリトラクタはスプールと一体回転するリングギアおよび制御レバーを有する。シートベルトがシートベルトリトラクタから所定量引き出された状態において、リングギアが制御レバーを作動させないので、制御レバーがヴィークルセンサの作動を許容してヴィークルセンサの本来の機能を発揮可能にする。また、シートベルト巻取り方向のスプールの回転に伴って回転するリングギアが制御レバーを作動することで、スプールがシートベルトを少なくとも全量巻き取った状態で、制御レバーがヴィークルセンサの作動を阻止してヴィークルセンサの本来の機能をキャンセルする。
【0005】
一方、ウェビングセンサは急激なシートベルト引出し以外においても作動して、シートベルトリトラクタからシートベルトが引き出されるのを阻止する場合がある。例えば、引き出されたシートベルトの全量巻き取り時にウェビングセンサが不意に作動することでシートベルトの通常の引出しが困難になるという、いわゆるエンドロックが発生する場合がある。
【0006】
そこで、このような
ウェビングセンサによるエンドロックを防止するために、シートベルトの全量巻き取り時にウェビングセンサが作動してシートベルトの引出しを阻止するウェビングセンサの本来の機能をキャンセル(無能化)するシートベルトリトラクタが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
特許文献2に記載のシートベルトリトラクタは、急激なシートベルト引出し時に揺動する慣性板と、回転可能に設けられるとともに内歯および外歯を有するウェビングセンサ用ギアと、慣性板の揺動で作動してウェビングセンサ用ギアの内歯に係合するウェビングセンサ用パウルと、ウェビングセンサ用ギアの外歯に係合してウェビングセンサ用ギアの回転を阻止するギア回転制御パウルとを有する。
【0008】
この特許文献2に記載のシートベルトリトラクタでは、シートベルトがシートベルトリトラクタから所定量引き出された状態において、ギア回転制御パウルがウェビングセンサ用ギアの外歯に係合してウェビングセンサ用ギアを回転不能にする。これにより、ウェビングセンサ用パウルが慣性板の揺動で作動してウェビングセンサ用ギアの内歯に係合したときは、ウェビングセンサ用ギアが回転しないので、ウェビングセンサの本来の機能が発揮されてシートベルトの引出しが阻止される。また、スプールがシートベルトをほぼ全量巻き取った状態においては、ギア回転制御パウルがウェビングセンサ用ギアの外歯から離間してウェビングセンサ用ギアを回転可能にする。これにより、ウェビングセンサ用パウルが慣性板の揺動で作動してウェビングセンサ用ギアの内歯に係合しても、ウェビングセンサ用ギアが回転してスプールがシートベルト引出し方向に回転可能となるので、ウェビングセンサの本来の機能がキャンセルされる。したがって、シートベルトの引出しが可能となり、エンドロックが防止される。なお、特許文献2に記載のシートベルトリトラクタでは、ヴィークルセンサも設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載のシートベルトリトラクタでは、ウェビングセンサが設けられなく、ウェビングセンサの機能を発揮することはできないばかりでなく、ウェビングセンサの機能を所定の条件においてキャンセルさせることもできない。一方、特許文献2に記載のシートベルトリトラクタでは、ウェビングセンサに加えてヴィークルセンサも設けられているものの、ヴィークルセンサの機能を所定の条件においてキャンセルさせることはできない。したがって、特許文献1に記載のヴィークルセンサのキャンセル機能と特許文献2に記載のウェビングセンサのキャンセル機能とを組み合わせて、ヴィークルセンサの機能とウェビングセンサの機能とを、ともにそれらの機能を所定の条件においてキャンセルさせることが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のヴィークルセンサのキャンセル機能と特許文献2に記載のウェビングセンサのキャンセル機能とを単に組み合わせたのでは、各センサの構造および各センサの機能のキャンセル構造が複雑となるとともに、部品点数が多くなってしまう。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡単な構造でかつより少ない部品点数で、ヴィークルセンサの機能とウェビングセンサの機能とをともに所定の条件においてキャンセルさせることができるシートベルトリトラクタおよびこれを用いたシートベルト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するために、本発明に係るシートベルトリトラクタは、乗員を拘束するシートベルトを巻き取るスプールを少なくとも備えているシートベルトリトラクタにおいて、車両に通常時に加えられる減速度より大きな減速度が加えられた緊急時に作動して、前記スプールのシートベルト引出し方向の回転を阻止する機能を有するヴィークルセンサと、記シートベルトを通常時の引出し速度より速い速度で急激に引出したときに作動して、前記スプールのシートベルト引出し方向の回転を阻止する機能を有するウェビングセンサと、前記ヴィークルセンサの機能および前記ウェビングセンサの機能のキャンセルを制御するヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御機構とを有
し、前記ヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御機構が、前記ヴィークルセンサの機能およびウェビングセンサの機能のキャンセルを制御するヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御部材と、前記スプールの回転とともに回転することでヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御部材の作動を制御する制御カム部材とを有し、前記ヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御部材が、前記制御カム部材で作動制御される制御レバーであり、前記制御レバーが、前記ヴィークルセンサの機能をキャンセルする第1レバーと、前記第1レバーに相対移動可能に連結されるとともに前記ウェビングセンサの機能をキャンセルする第2レバーとを含む
ことを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係るシートベルトリトラクタは、前記ヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御機構が、前記スプールが少なくとも前記シートベルトを全量巻き取ったときに前記ヴィークルセンサの機能および前記ウェビングセンサの機能がキャンセルされるように前記ヴィークルセンサおよび前記ウェビングセンサを制御することを特徴としている。
【0014】
更に、本発明に係るシートベルトリトラクタは、
前記ヴィークルセンサの機能および前記ウェビングセンサの機能がキャンセルされるされたとき、前記第1レバーのアクチュエータ押圧部が前記ヴィークルセンサのアクチュエータに当接して前記アクチュエータを非作動位置に押圧することを特徴としている。
【0017】
更に、本発明に係るシートベルト装置は、乗員を拘束するシートベルトと、前記シートベルトを引き出し可能に巻き取るとともに、前記緊急時に作動して前記シートベルトの引出しを阻止するシートベルトリトラクタと、前記シートベルトリトラクタから引き出された前記シートベルトに摺動可能に支持されたタングと、車体または車両シートに設けられ、前記タングが離脱可能に係止されるバックルとを少なくとも備えるシートベルト装置において、前記シートベルトリトラクタに、前述の本発明のシートベルトリトラクタのいずれか1つのシートベルトリトラクタが用いられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
このように構成された本発明に係るシートベルトリトラクタによれば、ヴィークルセンサの機能とウェビングセンサの機能とがともに発揮可能となる。また、ヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御機構により、ヴィークルセンサの機能およびウェビングセンサの機能の各キャンセルがともに制御される。したがって、1つのヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御機構を用いた簡単な構成で、ヴィークルセンサの機能およびウェビングセンサの機能の各キャンセルをともに容易に制御することが可能となる。
【0019】
特に、スプールが少なくともシートベルトを全量巻き取ったときにヴィークルセンサの機能およびウェビングセンサの機能がそれぞれキャンセルされる。そして、このようにヴィークルセンサの機能がキャンセルされることにより、ヴィークルセンサを作動不能にすることが可能となる。これにより、車両走行中に使用されないシートベルトリトラクタの
ヴィークルセンサから異音が発生することを防止することができる。また、前述のようにウェビングセンサの機能がキャンセルされることにより、ウェビングセンサを作動不能にすることができる。これにより、シートベルトがスプールに少なくとも全量巻き取られてスプールが停止したときに、ウェビングセンサが不意に作動することで発生するエンドロックを防止することができる。
【0020】
また、ヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御機構に、従来のシートベルトリトラクタに用いられている構成部材を使用することが可能であるので、大幅な設計変更を必要とすることなくヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能
キャンセル制御機構を形成することができるとともに、部品点数の増大を抑制することが可能となる。その結果、ヴィークルセンサの機能およびウェビングセンサの機能の各キャンセルを制御可能にしても、シートベルトリトラクタをコンパクトに形成することができる。
【0021】
このようにして、本発明に係るシートベルトリトラクタによれば、簡単な構造でかつ少ない部品点数で、ヴィークルセンサの機能とウェビングセンサの機能を発揮させるとともに、それらの機能を所定の条件においてキャンセルさせることが可能となる。
【0022】
一方、本発明に係るシートベルト装置によれば、シートベルトリトラクタにおける異音の発生およびエンドロックの発生をより効果的に防止することができることから、シートベルトの操作性が向上し、乗員によるシートベルトの装着動作をスムーズにかつ安定して行うことができるとともに、車両走行中の快適性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかるシートベルトリトラクタの実施の形態の一例を備えるシートベルト装置を模式的に示す図である。
【0025】
図1に示すように、この例のシートベルト装置1は、基本的には従来公知の三点式シートベルト装置と同じである。図中、1はシートベルト装置、2は車両シート、3は車両シート2の近傍に配設されたシートベルトリトラクタ、4はシートベルトリトラクタ3に引
き出し可能に巻き取られかつ先端のベルトアンカー4aが車体の床あるいは車両シート2に固定されるシートベルト、5はシートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員のショルダーの方へガイドするガイドアンカー、6はこのガイドアンカー5からガイドされてきたシートベルト4に摺動自在に支持されたタング、7は車体の床あるいは車両シートに固定されかつタング6が係脱可能に挿入係合されるバックルである。このシートベルト装置1におけるシートベルト4の装着操作および装着解除操作も、従来公知のシートベルト装置と同じである。
【0026】
図2は、この例のシートベルトリトラクタの分解斜視図、
図3はこの例のシートベルトリトラクタの縦断面図である。
図2および
図3に示すように、この例におけるシートベルトリトラクタ3は、従来公知の一般的なシートベルトリトラクタと同様に、背板8aおよび左右の側壁8b,8cから
なるコ字状のフレーム8、フレーム8の両側側壁8b,8cの各円形状の開口を貫通して
回転可能に配設されてシートベルト4を巻き取るスプール9、スプール9を常時シートベルト巻取り方向に付勢するスプリング機構10、スプール9の回転軸9aに同心状に嵌合支持され、回転が阻止されないときは回転軸9aと一体回転し、また回転が阻止されたときは回転軸9aが相対回転しかつ外周に所定数のラチェット歯11aを有するロックギア11、ロックギア11に揺動可能に支持された慣性部材であるフライホイール12aを有するとともに係止爪12bを有するウェビングセンサ12、通常時作動しなくかつ緊急時に作動する慣性ボール13aと慣性ボール13aの作動によって作動するアクチュエータ13bとアクチュエータ13bの作動によって作動してロックギア11のラチェット歯11aに係合してロックギア11のシートベルト引出し方向の回転を阻止する係止爪13cとを有するヴィークルセンサ13(減速度検知機構)、および、スプール9に回動可能に設けられるとともに、ロックギア11に対してスプール9がシートベルト引出し方向に相対回転するとき、回動して側壁8cの内歯8dに係合することでスプール9のシートベルト引出し方向の回転を阻止するパウル14を有している。その場合、側壁8cの内歯8dとパウル14とにより、シートベルト引出し方向のスプール9の回転をロックするロック機構が構成されるとともに、ロックギヤ11によりこのロック機構を作動制御するロック作動制御機構が構成される。シートベルトリトラクタ3の以上の構成および作動は、例えば特開2009−61810号公報に記載されているシートベルトリトラクタと同じでありかつこの公開公報を参照すれば容易に理解できるので、それらの詳細な説明は省略する。
【0027】
更に、この例のシートベルトリトラクタ3は、リテーナ15、ベアリングキャップ16、リングギア17、偏心ディスク18、偏心ギア19、カムプレート20、カバー21、第1レバー22、第2レバー23、第1レバー付勢スプリング24、および第2レバー付勢スプリング25を有している。
【0028】
リテーナ15はフレーム8の右側壁8cに着脱可能に取り付けられる。このリテーナ15は円筒状の支持突起15aを有するとともに所定数の円環状の内歯15bを有する。ベアリングキャップ16は、スプール9の回転軸9aの端部に一体回転可能に嵌合されるとともにリテーナ15に回転可能に支持される。つまり、スプール9の回転軸9aはリテーナ15に回転可能に支持される。リングギア17は、リテーナ15の支持突起15aに回転可能に支持される。このリングギア17は、円環状の内歯17aを有するとともに外周面に外歯である円環状のラチェット歯17bを有する。円環状の内歯17aには、フライ
ホイール12
aの係止爪12bが係合可能とされている。そして、係止爪12bが、回転が阻止されたリングギア17の内歯17aに係合することでロックギア11の回転が阻止される。
【0029】
偏心ディスク18はベアリングキャップ16の端部に一体回転可能に嵌合されるとともに、リテーナ15に着脱可能に取り付けられたカバー21の支持突起21aに回転可能に支持される。したがって、偏心ディスク18は、スプール9と一体回転可能となっている。偏心ギア19は円板状に形成されて偏心ディスク18の外周面18aに相対回転可能に嵌合支持される。この偏心ギア19は、偏心ディスク18(つまり、スプール9)が回転するときその中心が偏心
ディスク18の回転中心(つまり、スプール9の回転中心)から径方向に移動しながら回転する(偏心回転する)とともに、その外周面に円環状に設けられた外歯19aを有する。その場合、偏心ギア19の外歯19aの一部がリテーナ15の内歯15bの一部に噛合するとともに、偏心ギア19の外歯19aの残部がリテーナ15の内歯15bの残部から離間する。そして、スプール9が回転して偏心ギア19が偏心回転するとき、互いに噛合する偏心ギア19の外歯19aとリテーナ15の内歯15bとが順次換わって行くことで、偏心ギア19はスプール9の回転方向と逆方向に減速されて回転する。また、偏心ギア19はその平面と直交または略直交する方向(つまり、スプール9の軸方向と直交または略直交する方向)に立設された一体回転ピン19bを有する。
【0030】
カムプレート20は、カバー21の円筒状支持突起21bの内周面に回転可能に嵌合支持される。このカムプレート20はカムプロファイルが形成された外周面を有する。このカムプロファイルは外周面に形成された大径円弧の第1カム部20aと小径円弧の第2カム部20bとを有する。これらの第1および第2カム部20a,20bは同心円の円弧で
形成される。また、カムプレート20は、径方向に延びる矩形状の一体回転孔20cを有する。一体回転孔20cは、円周方向で第2カム部20bに対応する領域に設けられている。そして、偏心ギア19の一体回転ピン19bがこの一体回転孔20cに、カムプレート20の一体回転孔20cの長手方向(つまり、カムプレート20の径方向)に沿って摺動可能にかつ円周方向に係合して相対移動不能に嵌合される。これにより、偏心ギア19の回転時に、偏心ギア19とカムプレート20とが一体回転するとともに、偏心ギア19がカムプレート20に対して径方向に相対的に偏心移動する。
【0031】
図2および
図4(a)に示すように、第1レバー22は円筒状の回動軸22aを有するとともに、この回動軸22aがカバー21に立設された支持軸21c(
図3に図示)に嵌合されることでこの支持軸21cに回動可能に支持される。この第1レバー22は、カムフォロワ22bと、回動軸22aに関してカムフォロワ22bと反対側に配設されたアクチュエータ押さえ部22cと、回動規制部22dとを有する。カムフォロワ22bは第1および第2カム部20a,20bに当接されて第1および第2カム部20a,20bの各カム面に倣って移動する。
【0032】
第2レバー23は一端部に設けられた回動軸孔23aおよび他端部に設けられた係止爪23bを有する。そして、
図4(b)に示すように第2レバー23の回動軸孔23aが第1レバー22の回動軸22aに回動可能に外嵌される、このとき、
図4(c)に示すように、第2レバー23の係止爪23bがアクチュエータ押さえ部22cと回動規制部22dとの間に位置する。これにより、
図4(b)ないし(e)に示すように、第2レバー23は、係止爪23bが回動規制部22dに当接する実線で示す位置と係止爪23bがアクチュエータ押さえ部22cに当接する二点鎖線で示す位置との間で、回動軸孔23a(つまり、回動軸22a)を中心に第1レバー22に対して相対回動可能とされる。
【0033】
第1レバー付勢スプリング24は第1レバー22とカバー21との間に配設されて、第1レバー22をカムフォロワ22bが第1および第2カム部20a,20bに当接する方
向に常時付勢する。また、第2レバー付勢スプリング25は第1レバー22と第2レバー23との間に配設されて、第2レバー23を第1レバー22に対して係止爪23bが回動規制部22dに当接する方向(つまり、第1レバー22と第2レバー23が互いに開く方向)に常時付勢する。したがって、第2レバー23に外力が加えられない通常時は、第2レバー23の係止爪23bは回動規制部22dに当接している。第2レバー付勢スプリン
グ25の付勢力は第1レバー付勢スプリング24の付勢力より小さく設定される。
【0034】
次に、このように構成されたこの例のシートベルトリトラクタ3の作動について説明する。
図5はシートベルトの全量巻取り時のカムプレートと第1レバーの状態を示す図、
図6はシートベルトの全量巻取り時のリングギアと第2レバーの状態を示す図である。
【0035】
図5に示すように、シートベルト4の非装着時でシートベルト4の全量がスプール9に巻き取られた状態(具体的には、スプリング機構10の付勢力でスプール9が何らの障害を受けることなくシートベルト4の巻取可能な量を巻き取った状態)では、カムプレート20の第2カム部20bが下方に向いてカムフォロワ22bがこの第2カム部20bに対向する位置となっている。したがって、第1レバー付勢スプリング24の付勢力により、カムフォロワ22bが第2カム部20bに当接している。これにより、アクチュエータ押さえ部22cがヴィークルセンサ13のアクチュエータ13bに当接してこのアクチュエータ13bを非作動位置に押さえ付ける。その結果、車両走行時に乗員がいなく使用されないシートベルト装置1のシートベルトリトラクタ3の慣性ボール13aは揺動しなく、異音が発生しない。また、ヴィークルセンサ13の係止爪13cがロックギア11のラチェット歯11aに係合しない非作動位置に保持されている。したがって、ヴィークルセンサ13の機能はキャンセルされている。
【0036】
また、このとき、偏心ギア19はカムプレート20に対して
図5において略斜め右上方に移動し、カムプレート20の中心(つまり、スプール9の中心)から偏心している。したがって、斜め右上方に位置する偏心ギア19の外歯19aの一部がリテーナ15の内歯15bに噛合し(不図示)、また、
図5に部分的に示すように、斜め左下方に位置する外歯19aを含む偏心ギア19の所定数の外歯19aはリテーナ15の内歯15bに噛合していない。
【0037】
更に、
図6に示すように、第2レバー23の係止爪23bはリングギア17のラチェット歯17bから離間しており、リングギア17はシートベルト引出し方向およびシートベルト巻取り方向のいずれの方向にも回転可能となっている。したがって、ウェビングセンサ12の機能はキャンセル状態にされている。なお、
図6にはウェビングセンサ12の係止爪12bがリングギア17の内歯17aに係合した状態に示されているが、係止爪12bが内歯17aから離間した状態になっていてもよい。
【0038】
図5および
図6に示すシートベルトリトラクタ3の状態から、例えば乗員がシートベルト4を装着するために通常の引出し速度で引き出すと、スプール9はスプリング機構10の付勢力に抗して
図5において反時計回りに(
図6では、時計回りに)回転する(
図5では、スプール9と一体的に回転するベアリングキャップ16が反時計回りに回転し、また、
図6では、スプール9の回転軸9aが時計回りに回転する。)。すると、偏心ディスク18がスプール9と一体的に同方向に回転するので、偏心ギア19が偏心しながら外歯19aと内歯15bとの噛合により減速されてスプール9の回転方向と逆方向の時計回りに回転する。偏心ギア19の一体回転ピン19bとカムプレート20の一体回転孔20cとが周方向に係合しているので、カムプレート20が偏心ギア19の回転方向と同方向に回転する。
【0039】
カムプレート20が所定量回転すると、
図7に示すようにカムフォロワ22bが第2カム部20bから脱出して第1カム部20aに当接する。これにより、第1レバー22が第1レバー付勢スプリング24の付勢力に抗して
図5において反時計回りに回動する。このとき、第2レバー23の係止爪23bが第2レバー付勢スプリング25の付勢力により第1レバー22の回動規制部22dに当接した状態に保持されているので、第2レバー23も第1レバー22と一体的に同方向に回動する。
【0040】
この第1レバー22の回動により、アクチュエータ押さえ部22cがヴィークルセンサ13のアクチュエータ13bから離間する。これにより、ヴィークルセンサ13のアクチュエータ13bが作動可能となってヴィークルセンサ13の機能のキャンセルが解除(オフ)され、ヴィークルセンサ13の機能が発揮可能な状態となる。したがって、この状態では、例えばシートベルト4が乗員に装着されて車両が走行しているとき、ヴィークルセンサ13は従来の公知のヴィークルセンサと同様に緊急時に慣性ボール13aが慣性移動し、係止爪13cがロックギア11のラチェット歯11aに係合する。すると、シートベルト4の引出しが阻止され、シートベルト4は乗員を拘束可能となる。また、乗員がいない車両シート2に設けられるシートベルト装置1では、シートベルト4は引き出されないので、シートベルトリトラクタ3は
図5および
図6に示す非作動状態となっている。したがって、ヴィークルセンサ13の機能がキャンセル状態となっており、慣性ボール13aおよびアクチュエータ13bがともに揺動不能とされている。これにより、車両の走行中に慣性ボール13aおよびアクチュエータ13bが揺動することで発生する異音が防止される。
【0041】
また、第2レバー23の回動により、
図8に示すように係止爪23bがリングギア17の
ラチェット歯17bに係合する。これにより、リングギア17のシートベルト引出し方向の回転が阻止されてウェビングセンサ12の機能のキャンセルが解除(オフ)され、ウェビングセンサ12の機能が発揮可能な状態となる。したがって、この状態では、ウェビングセンサ12は従来の公知のウェビングセン
サと同様にシートベルト4が通常のシートベルト引出し速度より速い急激なシートベルト引出し速度で引き出されたとき、フライホイール12が揺動して係止爪12bがリングギア17の内歯17
aに係合する。そして、シートベルト4の引出しでリングギア17がシートベルト引出し方向に回転するように付勢されるが、リングギア17のシートベルト引出し方向の回転が阻止されるので、シートベルト4の急激な引出しが阻止される。
【0042】
ところで、第2レバー23の回動により係止爪23bがリングギア17の
ラチェット歯17bに接近したとき、
図9(a)に示すように係止爪23bがリングギア17の
ラチェ
ット歯17bの歯先部に当接して係止爪23bに衝撃が加えられる場合が考えられる。この場合、係止爪23bが
ラチェット歯17bの歯先部に当接したとき第2レバー23は第1レバー22に対して第2レバー付勢スプリング25を収縮させながら
図9(a)において反時計回りに相対回動する。これにより、係止爪23bが
ラチェット歯17bの歯先部に当接したときの衝撃が吸収緩和される。そして、リングギア17が回動することで係止爪23bと
ラチェット歯17bの歯先部との当接が解除すると、
図9(b)に示すように第2レバー23は第1レバー22に対して第2レバー付勢スプリング25の付勢力で
図9(b)において時計回りに相対回動する。これにより、係止爪23bが
ラチェット歯17bに正常に係合してリングギア17のシートベルト引出し方向の回転が阻止される。
【0043】
シートベルト4の装着解除等のためにより、
図7および
図8に示すシートベルト4が所定量引き出された状態からシートベルト4を放すと、スプリング機構10の付勢力でスプール9が
図7において時計回りに(
図8において反時計回りに)に回転する(
図7では、スプール9と一体的に回転するベアリングキャップ16が時計回りに回転し、また、
図8では、スプール9の回転軸9aが
反時計回りに回転する。)。これにより、シートベルト4がスプール9に巻き取られる。このスプール9の回転で、前述と同様にしてカムプレート20がスプール9の回転方向と逆方向の
図7において反時計回りに減速されて回転する。このとき、第1レバー22のカムフォロワ22bはカムプレート20の第1カム部2
0aに当接していて、第1および第2レバー22,23は
図7および
図8に示す位置の保持
される。
【0044】
シートベルト4が全量巻き取られる直前になると、カムプレート20の第2カム部2
0bが第1レバー22のカムフォロワ22bに対向する。すると、第1レバー付勢スプリング24の付勢力で第1レバー22が
図7において時計回りに回動し、
図5に示すように第1レバー22のカムフォロワ22bがカムプレート20の第2カム部2
0bに当接する。これにより、
図5および
図6に示すように第1レバー22のアクチュエータ押さえ部22cがヴィークルセンサ13のアクチュエータ13bに当接してこのアクチュエータ13bを非作動位置に押さえ付ける。したがって、ヴィークルセンサ13の機能がキャンセルされる。
【0045】
また、第1レバー22が回動することで、第2レバー23も第1レバー22と一体的に同方向に回動する。これにより、
図6に示すように第2レバー23の係止爪23bがリングギア17のラチェット歯17bから離間し、リングギア17がシートベルト引出し方向およびシートベルト巻き取り方向のいずれの方向にも回動可能となる。したがって、ウェビングセンサ12の機能がキャンセルされる。
【0046】
シートベルト4がスプール9に全量巻き取られると、スプール9の回転が停止してスプール9によるシートベルト4の巻取りが終了し、シートベルトリトラクタ3は
図5および
図6に示す非作動状態となる。このとき、ウェビングセンサ12の機能がキャンセルされるので、シートベルト4の全量巻取り時に発生するエンドロックが防止される。
【0047】
このようにして、この例のシートベルトリトラクタ3では、第1および第2レバー22,23により、1つのヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御部材
26が構成される。また、リテーナ15、リングギア17、偏心ギア19、カムプレート20、およびヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御部材26により、ヴィークルセンサ13の機能およびウェビングセンサ12の機能の各キャンセルを制御するヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能
キャンセル制御機構が構成される。
【0048】
この例のシートベルトリトラクタ3によれば、ヴィークルセンサ13の機能とウェビングセンサ12の機能とがともに発揮可能となる。また、リテーナ15、リングギア17、偏心ギア19、カムプレート20、およびヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御部材26により、ヴィークルセンサ13の機能およびウェビングセンサ12の機能の各キャンセルが制御される。したがって、1つのヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御部材26を用いた簡単な構成で、ヴィークルセンサ13の機能およびウェビングセンサ12の機能の各キャンセルを容易に制御することが可能となる。
【0049】
特に、スプール9が少なくともシートベルト4を全量巻き取ったときにヴィークルセンサ13の機能およびウェビングセンサ12の機能がそれぞれキャンセルされる。そして、このようにヴィークルセンサ13の機能がキャンセルされることにより、ヴィークルセンサ13が作動不能にされる。これにより、車両走行中に使用されないシートベルトリトラクタ3(つまり、乗員がいない車両シート2に付設されたシートベルト装置1のシートベルトリトラクタ3)のヴィークルセンサ13から異音が発生することを防止することができる。また、前述のようにウェビングセンサ12の機能がキャンセルされることにより、ウェビングセンサ12が実質的に作動不能にされる。これにより、シートベルト4がスプール9に少なくとも全量巻き取られてスプール9が停止したときに、ウェビングセンサ12が不意に作動することで発生するエンドロックを防止することができる。
【0050】
また、リテーナ15、リングギア17、偏心ギア19、およびカムプレート20は、従来シートベルトリトラクタ3に用いられているものを使用することが可能であるので、大幅な設計変更を必要とすることなくヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能
キャンセル制御機構を形成することができるとともに、部品点数の増大を抑制することが可能となる。その結果、ヴィークルセンサ13の機能およびウェビングセンサ12の機能の各キャンセルを制御可能にしても、シートベルトリトラクタ3をコンパクトに形成することができる。
【0051】
このようにして、この例のシートベルトリトラクタ3によれば、簡単な構造でかつ少ない部品点数で、ヴィークルセンサ13の機能とウェビングセンサ12の機能が発揮可能になるとともに、それらの機能を所定の条件においてキャンセルさせることが可能となる。
【0052】
一方、この例のシートベルト装置1によれば、シートベルトリトラクタ3における異音の発生およびエンドロックの発生をより効果的に防止することができることから、シートベルト4の操作性が向上し、乗員によるシートベルト4の装着動作をスムーズにかつ安定して行うことができるとともに、車両走行中の快適性を向上することができる。
【0053】
なお、本発明は前述の例に限定されることはなく、種々の設計変更が可能である。例えば、前述の例では、ヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御部材26が互いに相対回動可能に連結された2つの第1および第2レバー22,23で構成する
ものとしているが、ヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御部材26は1つの第1レバー22のみで構成することもできる。この場合には、第2レバー23の係止爪23bは、対応する係止爪として第1レバー22に一体に設けるようにする。そして、第1レバー22に設けた係止爪がリングギア17のラチェット歯17bの歯先部に当接した場合には、第1レバー付勢スプリング24が収縮することで衝撃が吸収緩和される。しかし、第1レバー付勢スプリング24の付勢力は、カムフォロワ22bが第1および第2カム部20a,20bに追従する必要があるため、第2レバー付勢スプリング25
の付勢力より大きく設定する必要がある。したがって、前述の衝撃がより効果的に吸収緩和されるためには、前述の例のようにヴィークルセンサ機能・ウェビングセンサ機能キャンセル制御部材26は2つの第1および第2レバー22,23で構成することが好ましい
。
【0054】
また、前述の例では第1および第2レバー22,23を回動制御するカムプレート20
を共通に1つ設けるものとしているが、カムプレートは第1および第2レバー22,23
にそれぞれ個別に対応して2つ設けることもできる。要は、本発明は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々変形可能である。