【実施例1】
【0017】
図1は本発明による液化ガス充填システムの一実施例を示すシステム系統図である。
図1に示されるように、液化ガス充填システム10は、液化ガス貯蔵容器20と、圧送器30と、液化ガス充填経路40と、気相部連通経路50とを有する。液化ガス貯蔵容器20は、被充填タンク(燃料タンク)60に比べて多量の液化ガスを貯蔵する容量の大きい大型タンクである。
【0018】
圧送器30は、液化ガスを加圧して液化ガス充填経路40に圧送するものであり、例えば液化ガスを加圧して圧送するポンプ方式、あるいは液化ガス貯蔵容器20の気相部に圧縮された窒素ガスを充填して窒素ガス圧により液化ガスを圧送する加圧方式、あるいは気相部に滞留するベーパを加熱してベーパの体積膨張により気相部圧力を上昇させる加熱方式などがある。
【0019】
液化ガス充填経路40は、上流側端部が液化ガス貯蔵容器20の液相部に接続される。また、液化ガス充填経路40の下流側端部は、複数のディスペンサ90A〜90Cに分岐しており、複数のディスペンサ90A〜90Cにより複数の被充填タンク60への充填が可能である。
【0020】
すなわち、液化ガス充填経路40の下流側端部は、複数のディスペンサ90A〜90Cに配設された複数の液化ガス充填経路を形成する配管40A〜40Cと、各ディスペンサ90A〜90Cの下流に配された各ホース70とを有する。
【0021】
各ホース70の基端には、所定以上の張力が作用した場合に分離する安全カップリング72が設けられ、ホース70の先端には充填開始時に開弁操作される手動開閉弁74、被充填タンク60の接続口62に接続される充填ノズル(接続カップリング)76が設けられている。充填ノズル76は、ディスペンサ90Aのノズル収納部78に収納されており、ノズル収納部78のノズルスイッチ(充填開始指示器)79をオン又はオフに切り替える。
【0022】
被充填タンク60は、液化ガスを燃料とするエンジンが搭載された車両80に設けられている。また、被充填タンク60と接続口62とを連通する配管64には、手動開閉弁66が設けられている。尚、接続口62が充填ノズル76と非接続時に内部通路(開口部)を閉とする弁構造を有する場合は、手動開閉弁66を設けなくても良い。
【0023】
自動車などの車両用燃料として使用される液化ガスとしては、例えば、ブタン・プロパンなどを主成分とするLPG(Liquefied petroleum gas)、酸素含有率が高く黒煙が出ないディーゼル燃料として使用されるDME(ジメチルエーテル)がある。この種の液化ガスは、気体燃料を圧縮することにより液化できるため、上記液化ガス貯蔵容器20及び被充填タンク60内においては、液相部と気相部とが併存しており、容器内の圧力は、温度に応じて変化する。
【0024】
ディスペンサ90A〜90Cは、それぞれ同一構成であるので、以下ではディスペンサ90Aの構成について説明し、他のディスペンサ90B,90Cの説明を省略する。液化ガス充填経路40のうちディスペンサ90Aの筐体内部に配された液ラインの配管40Aには、セパレータ100と、逆止弁110と、一次圧力検出器120と、流量計130と、背圧弁140と、圧力計150と、開閉弁160と、二次圧力検出器170とが設けられている。
【0025】
セパレータ100は、液化ガス充填経路40により充填される液化ガスから気泡を分離する気液分離装置である。また、セパレータ100の下端に連通された配管102は、ブローラインの配管104に連通され、セパレータ100の上端に連通された配管106は、ガスラインのマニホールド180に連通されている。
【0026】
尚、セパレータ100においては、各配管104,106に設けられた手動開閉弁103,105,107を定期的に開弁してセパレータ100内で分離された気泡を含む液化ガスを外部に排出することにより、繰り返し気液分離処理が行える。
【0027】
一次圧力検出器120は、流量計130及び開閉弁160より上流側に設けられ、圧送器30より圧送された液化ガスの一次圧力(供給圧力)P1を検出し、当該検出信号を制御部200に出力する。即ち、一次圧力検出器120は、開閉弁160より上流側の圧力を一次圧力として検出し、その検出した圧力値の検出信号を出力する。
【0028】
流量計130は、液化ガス充填経路40により充填される液化ガスの流量(充填流量)を計測し、計測した容積流量に応じた流量パルスを出力する。また、流量計130は、所謂ピストン式流量計とも呼ばれる容積式流量計であり、例えば、特開平8−94408号公報にみられるように4つのピストンが90°の位相差で往復動し、各ピストンの往復動に伴う回転力が回転軸に伝達され、回転軸の回転角に応じた容積分(ピストンの移動により押し出された液化ガスの体積)に比例する流量パルスを生成する流量パルス生成部を有する。なお、本実施例においては、流量計130により液化ガスの流量を計測しているが、これに限られるものではなく、例えば、渦流量計やタービン式流量計など流量計測方式の異なる他の流量計を用いてもよい。
【0029】
背圧弁140は、気相部均圧経路50から分岐された背圧管142を介して気相領域の均圧化された圧力が背圧として導入されており、導入された圧力より一次圧力P1が大きくなったときに開弁するように構成されている。
【0030】
すなわち、背圧弁140は、液化ガス充填経路40により充填される液化ガスが流量計130において気化しないように、圧送器30により加圧された液化ガスの圧力が当該液化ガスの飽和蒸気圧力よりも上回る設定値以上になったとき開弁するように設定されている。
【0031】
圧力計150は、配管152,153の弁154,155を開弁して液化ガスの液化ガスの圧力を計測する。
【0032】
開閉弁160は、電磁弁からなり、制御部200からの開弁信号により開弁して被充填タンク60への充填を開始し、閉弁信号により閉弁して充填停止させる。
【0033】
二次圧力検出器170は、液化ガス充填経路40の開閉弁160より下流側の二次圧力(被充填タンク60内の圧力)PT2を検出し、当該検出信号を制御部200に出力する。即ち、二次圧力検出器170は、開閉弁160より下流側の圧力を二次圧力として検出し、その検出した圧力値を出力する。
【0034】
マニホールド180には、上記配管106以外にも流量計130の安全弁132からの配管134と、背圧弁140の背圧管142と、圧力計150が配された配管152,153と、気相部連通経路50に連通された排出管182とが接続されている。従って、各配管よりマニホールド180に回収された液化ガスのベーパは、排出管182及び気相部連通経路50を通して貯蔵容器20の気相部に戻される。
【0035】
さらに、ディスペンサ90Aには、上記各機器の他に、制御部200と、表示器202と、充填開始指示スイッチ204と、充填停止指示スイッチ206と、ブザー208とが設けられている。また、各ディスペンサ90A〜90Cの制御部200は、総合制御盤210と通信可能に接続されている。総合制御盤210は、例えば各ディスペンサ90A〜90Cの制御部200のうち一の制御部200から充填停要求信号が入力されると、当該一の制御部200を除く他の制御部200に充填中断信号を送信する。そして、充填中断信号を受信した制御部200では、開閉弁160を閉弁して液化ガスの充填を中断する。これにより、複数のディスペンサ90A〜90Cのうち、これから充填開始するディスペンサを除いた他のディスペンサを充填停止状態とすることで、充填開始時の供給圧力と被充填タンク60内の圧力との圧力差を確保する。
【0036】
すなわち、同一の貯蔵容器20から複数の液化ガス充填経路40に供給される液化ガスの供給が一の液化ガス充填経路40に集中されるため、充填開始時の供給圧力をより高い圧力に引き上げることが可能になる。よって、一のディスペンサ90の液化ガス充填経路40における、被充填タンク60への供給圧力が上昇するため、充填開始時の一次圧力PT1(供給圧力)が二次圧力PT2(被充填タンク60内の圧力)より大きくなる。
【0037】
〔各ディスペンサの制御部200の制御処理〕
ここで、
図2を参照して上記のように構成された液化ガス充填システム10における液化ガス充填のための制御処理について説明する。
図2はディスペンサ90の制御部200が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
【0038】
先ず、車両80がディスペンサ90Aの前に到着すると、作業者はホース70を伸ばして充填ノズル76を車両80の被充填タンク(燃料タンク)60の接続口62に接続する。続いて、作業者は、ホース70先端に設けられた手動開閉弁74、及び、車両80に手動開閉弁66が設けられている場合には手動開閉弁66を開弁させてホース70と被充填タンク60とを連通させる。この後、作業者は、ディスペンサ90Aの充填開始指示スイッチ(充填開始指示器)204をオンに操作して充填開始信号を制御部200に入力する。
【0039】
図2に示されるように、制御部200は、充填ノズル76を検知するノズルスイッチ79がオフ(ノズル外れ)となり(S20)、更に充填開始指示スイッチ204がオンに操作されたか否かをチェックしており(S21)、S20でノズルスイッチ79がオフ(ノズル外れ)となり、更にS21において、充填開始指示スイッチ204がオンになった場合(YESの場合)、S22に進む。
【0040】
S22では、一次圧力検出器120により検出された一次圧力PT1(供給圧力)と、二次圧力検出器170により検出された二次圧力PT2(被充填タンク60内の圧力)とを比較する。S22において、PT1≦PT2の場合(YESの場合)、即ち、被充填タンク60への液化ガスの供給ができない場合はS23に進む。また、S22において、PT1>PT2の場合(NOの場合)、一次圧力PT1が二次圧力より大きく被充填タンク60への液化ガスの供給が可能であるので、S23〜S26の処理を省略する。
【0041】
S23では、一次圧力PT1(供給圧力)を高めるために一の液化ガス充填経路40A以外の他の液化ガス充填経路40B,40Cより他の被充填タンク60へのガスの供給を停止させるべく、総合制御盤210に対して充填停止要求信号を送信する。続いて、S24に進み、総合制御盤210からの充填開始指示信号を受信したか否かをチェックする。S24において、総合制御盤210から送信された充填開始指示信号を受信していない場合(NOの場合)は、S25に進む。S25では、総合制御盤210からの充填不能報知信号が受信されたか否かをチェックする。S25において、総合制御盤210からの充填不能報知信号が受信されていない場合(NOの場合)は、S24の処理に戻る。従って、S24、S25では、総合制御盤210から充填開始指示信号又は充填不能報知信号の何れかが入力されるまで待機状態となる。
【0042】
また、S24において、総合制御盤210から送信された充填開始指示信号を受信した場合(YESの場合)は、S26に進み、一次圧力検出器120により検出された一次圧力PT1(供給圧力)と、二次圧力検出器170により検出された二次圧力PT2(被充填タンク60内の圧力)とを比較する。S26において、PT1>PT2の場合(YESの場合)、一次圧力PT1が二次圧力より大きいので、充填開始可能と判断してS27に進み、開閉弁160に対して開弁信号を出力する。これにより、開閉弁160は開弁して被充填タンク60への液化ガスの充填を開始する。
【0043】
また、S26において、PT1<PT2の場合(NOの場合)、一次圧力PT1が二次圧力より小さいので、被充填タンク60への充填ができないものと判断して後述するS38〜S41の充填停止処理を行う。
【0044】
次のS28では、充填開始直後に流量計130により計測された瞬時流量fが予め設定された微小流量としての所定流量F1以上か否かをチェックする。S28において、瞬時流量fが予め設定された所定流量F1未満の場合(NOの場合)は、S29に進み、一次圧力検出器120により検出された一次圧力PT1(供給圧力)と、二次圧力検出器170により検出された二次圧力PT2(被充填タンク60内の圧力)とを比較する。
【0045】
S29において、PT1>PT2の場合(YESの場合)、一次圧力PT1が二次圧力PT2より大きいので、被充填タンク60への液化ガスの充填は進行している(実際に被充填タンク60内に液化ガスが行われている)ものと判断してS28に戻る。従って、上記S28、S29の処理を繰り返すことにより、充填開始直後の液化ガスの流量及び圧力を監視しており、瞬時流量fが所定流量F1以下であったとしても一次圧力PT1(供給圧力)が二次圧力PT2よりも大きい実際に被充填タンク60内に液化ガスが行われているものと判断し、被充填タンク60への液化ガスの充填を続行する。
【0046】
また、S28において、瞬時流量fが予め設定された所定流量F1以上の場合(YESの場合)は、被充填タンク60への液化ガスの充填が通常通りの流量で行われているものと判断し、S30に進み、総合制御盤210に対して充填中信号を送信する。
【0047】
高温の液化ガスが貯留されている被充填タンク60へ貯蔵容器20内の低い温度の液化ガスの充填が行われると、被充填タンク60内の液化ガスの温度は低下し、これに伴い被充填タンク60内の圧力(二次圧力)も低下する。即ち、充填開始直後においては極めて少ない流量でしか被充填タンク60への液化ガスの充填が行えなかった場合であっても、被充填タンク60への液化ガスの充填が進むに連れて生じるタンク内温度の低下に伴って被充填タンク60内の圧力としての二次圧力PT2が低下して一次圧力PT1(供給圧力)との圧力差が増大するため、被充填タンク60への液化ガスの充填が進行するのに伴い、当該充填がスムーズに行われるようになる。
【0048】
続いて、S31では、被充填タンク60への充填が終了したか否かをチェックする。S31においては、例えば(条件1)ノズルスイッチ79がオン(ノズル戻し)に切り替わった場合、又は(条件2)充填停止指示スイッチ206がオン(ノズル戻し)に操作された場合、又は(条件3)液化ガスの瞬時流量fが予め設定された所定流量F2(F2≦F1)以下に低下した場合に充填終了と判断する。
【0049】
S31において、上記条件1〜3の何れかにより被充填タンク60への充填が終了したと判断した場合(YESの場合)、S32に進み、開閉弁160に閉弁信号を出力する。これにより、開閉弁160は、閉弁動作して液化ガスの充填を停止させる。
【0050】
続いて、S33では、総合制御盤210に対して充填完了信号を送信する。これで、当該被充填タンク60に対する液化ガスの充填処理が正常に終了する。
【0051】
また、上記S31において、上記全条件1〜3の何れも満たされず被充填タンク60への充填が終了しないと判断した場合(NOの場合)、S34に進み、総合制御盤210から送信された充填中断信号を受信したか否かをチェックする。S34において、充填中断信号が受信されない場合(NOの場合)は、上記S31に戻り、被充填タンク60への充填が終了したか否かをチェックする。従って、被充填タンク60への液化ガスの充填中は、上記S31、S34を繰り返しており、充填終了か、充填中断信号の受信かを監視している。
【0052】
S34において、総合制御盤210から送信された充填中断信号を受信した場合(YESの場合)、S35に進み、開閉弁160に閉弁信号を出力する。これにより、開閉弁160は閉弁動作して被充填タンク60に対する液化ガスの充填を後述のS36において総合制御盤210から充填再開信号が入力されるまで一時的に停止させる。そのため、充填中のディスペンサ90Aでは、一時的に被充填タンク60への充填を中断することで、これから充填開始しようとする他のディスペンサ90B又は90Cの供給圧力が圧送器30による加圧された圧力に近づくため、他のディスペンサ90B又は90Cより被充填タンク60への充填開始に際しての供給圧力と被充填タンク60内の圧力との圧力差を大きくすることができる。
【0053】
次のS36では、総合制御盤210より充填再開信号を受信したか否かをチェックする。S36において、総合制御盤210より充填再開信号を受信した場合(YESの場合)は、S37に進み、開閉弁160に開弁信号を出力する。これにより、開閉弁160は開弁動作して被充填タンク60に対する液化ガスの充填を再開する。この後は、上記S31の処理に戻り、上記S31〜S37の処理を繰り返す。
【0054】
また、上記S29において、PT1<PT2の場合(NOの場合)、一次圧力PT1が二次圧力PT2より小さいので、被充填タンク60に対する充填が行えないと判断してS38に進む。S38では、総合制御盤210に対して充填不能報知信号を送信する。
【0055】
次のS39では、開閉弁160に閉弁信号を出力する。これにより、開閉弁160は閉弁動作して被充填タンク60に対する液化ガスの充填を停止する。続いて、S40に進み、充填不能時処理が終了したか否かをチェックする。S40においては、例えばノズルスイッチ79がオンに切り替わった場合、又は充填停止指示スイッチ206がオンに操作された場合、充填不能時処理が終了したと判断する。
【0056】
そして、S40において、充填不能時処理が終了したと判断した場合(YESの場合)、S41に進み、総合制御盤210に対する充填不能報知信号の送信を停止する。この場合、一次圧力PT1と二次圧力PT2との圧力差が十分にないことから被充填タンク60への充填が行えないと判断したため、今回の充填処理を終了する。
【0057】
また、上記S25において、総合制御盤210からの充填不可信号が受信された場合(YESの場合)も圧送器30により加圧された液化ガスの供給圧力PT1が被充填タンク60の二次圧力PT2との圧力差が小さいので、上記S38〜S41による充填停止処理を行う。
【0058】
〔総合制御盤210の制御処理〕
図3は総合制御盤210が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
図3に示されるように、総合制御盤210は、S51でディスペンサ90A〜90Cより充填中データを受信したか否かをチェックする(前述したS30の送信処理に対応する受信処理)。S51において、ディスペンサ90A〜90Cの何れかより充填中データを受信した場合(YESの場合)、S52に進み、当該充填中データを記憶部に記憶する。また、S51において、ディスペンサ90A〜90Cの何れかより充填中データを受信しない場合(NOの場合)、上記S52の処理を省略してS53に進む。
【0059】
次のS53では、ディスペンサ90A〜90Cより充填完了信号を受信したか、又は充填不能報知信号を受信したか否かをチェックする(前述したS33、S38の送信処理に対応する受信処理)。S53において、ディスペンサ90A〜90Cの何れかより充填完了信号を受信したか、又は充填不能報知信号を受信した場合(YESの場合)、S54に進み、充填中データを記憶部から抹消する。
【0060】
また、S53において、ディスペンサ90A〜90Cより充填完了信号及び、充填不能報知信号を受信しなかった場合(NOの場合)は、上記S54の処理を省略し、S55に進む。
【0061】
S55では、ディスペンサ90A〜90Cより充填停止要求信号を受信したか否かをチェックする(前述したS23の送信処理に対応する受信処理)。S55において、ディスペンサ90A〜90Cより充填停止要求信号を受信しない場合(NOの場合)は、今回の処理を終了する。
【0062】
また、上記S55において、ディスペンサ90A〜90Cの何れかより充填停止要求信号を受信した場合(YESの場合)は、S56に進み、ディスペンサ90A〜90Cの何れかが充填中か否かをチェックする。
【0063】
S56において、ディスペンサ90A〜90Cの何れかが充填中の場合(YESの場合)、S57に進み、充填中の当該ディスペンサに充填中断信号を送信する。続いて、S58では、充填停止要求信号を送信した当該ディスペンサに対して充填開始指示信号を送信する(前述したS24の受信処理に対応する送信処理)。
【0064】
次のS59では、充填停止要求信号を送信した当該ディスペンサから充填中信号、或いは充填不能報知信号を受信したか否かをチェックする。S59において、充填停止要求信号を送信した当該ディスペンサから充填中信号、或いは充填不能報知信号を受信した場合(YESの場合)、S60に進み、充填停止要求信号、或いは充填不能報知信号を送信した当該ディスペンサに対して充填再開信号を送信する(前述したS36の受信処理に対応する送信処理)。
【0065】
このように、一のディスペンサで充填開始する際に他のディスペンサが充填中である場合、当該充填開始する一のディスペンサから充填停止要求信号が送信され、充填中の他のディスペンサに対して充填中断信号を送信することで、当該充填中の他のディスペンサが充填を一時的に停止するため、一のディスペンサにおける供給圧力が圧送器30により圧送された最大圧力まで上昇し、被充填タンク60への充填開始が可能になる。
【0066】
また、S56において、ディスペンサ90A〜90Cの何れも充填中でない場合(NOの場合)、S61に進み、各ディスペンサ90A〜90Cへ充填不可信号を送信する(前述したS25の受信処理に対応する送信処理)。
【0067】
〔変形例の制御処理〕
変形例の液化ガス充填システムでは、上記総合制御盤210がなく、各ディスペンサ90A〜90Cの制御部200のそれぞれが通信可能に接続されている。そのため、各制御部200は、他の制御部200と直接各信号を送受信しながら充填制御処理を行う。
【0068】
図4は変形例の制御部が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
図4に示されるように、制御部200は、S70で充填ノズル76を検知するノズルスイッチ79がオフ(ノズル外れ)し、更にS71で充填開始指示スイッチ204がオンに操作されたか否かをチェックしており、S70において、ノズルスイッチ79がオフ(ノズル外れ)され、更にS71で充填開始指示スイッチ204がオンになった場合(YESの場合)、S72に進む。
【0069】
S72では、一次圧力検出器120により検出された一次圧力PT1(供給圧力)と、二次圧力検出器170により検出された二次圧力PT2(被充填タンク60内の圧力)とを比較する。S72において、PT1≦PT2の場合(YESの場合)、S73に進む。尚、S72において、PT1>PT2の場合(NOの場合)、一次圧力PT1が二次圧力より大きいので、S73〜S76の処理を省略する。
【0070】
S73では、他のディスペンサ90に対して充填停止要求信号を送信する。続いて、S74に進み、他のディスペンサ90からの充填開始指示信号を受信したか否かをチェックする。S74において、他のディスペンサ90から送信された充填開始指示信号を受信していない場合(NOの場合)は、S75に進む。S75では、他のディスペンサ90から充填不能報知信号が受信されたか否かをチェックする。S75において、他のディスペンサ90から充填不能報知信号が受信されていない場合(NOの場合)は、S74の処理に戻る。従って、S74、S75では、他のディスペンサ90から充填開始指示信号又は充填不能報知信号の何れかが入力されるまで待機状態となる。
【0071】
また、S74において、他のディスペンサ90から送信された充填開始指示信号を受信した場合(YESの場合)は、S76に進み、一次圧力検出器120により検出された一次圧力PT1(供給圧力)と、二次圧力検出器170により検出された二次圧力PT2(被充填タンク60の圧力)とを比較する。S76において、PT1>PT2の場合(YESの場合)、一次圧力PT1が二次圧力より大きいので、充填開始可能と判断してS77に進み、開閉弁160に対して開弁信号を出力する。これにより、開閉弁160は開弁して被充填タンク60への液化ガスの充填が開始される。
【0072】
また、S76において、PT1<PT2の場合(NOの場合)、一次圧力PT1が二次圧力より小さいので、被充填タンク60への充填ができないものと判断して後述するS88〜S91の充填停止処理を行う。
【0073】
次のS78では、充填開始直後に流量計130により計測された瞬時流量fが予め設定された所定流量F1以上か否かをチェックする。S78において、瞬時流量fが予め設定された所定流量F1未満の場合(NOの場合)は、S79に進み、一次圧力検出器120により検出された一次圧力PT1(供給圧力)と、二次圧力検出器170により検出された二次圧力PT2(被充填タンク60の圧力)とを比較する。
【0074】
S79において、PT1>PT2の場合(YESの場合)、一次圧力PT1が二次圧力PT2より大きいので、充填が正常に行われていると判断してS78に戻る。従って、上記S78、S79の処理を繰り返すことにより、充填開始直後の液化ガスの流量及び圧力を監視しており、液化ガスの流量及び圧力が正常値である場合は、液化ガスの充填を行う。
【0075】
すなわち、S78において、瞬時流量fが予め設定された所定流量F1以上の場合(YESの場合)は、被充填タンク60に充填される液化ガスの瞬時流量fが正常値であるので、S80に進み、他のディスペンサ90に対して充填中信号を送信する。
【0076】
被充填タンク60への液化ガスの充填が開始されると、被充填タンク60よりも低温の液化ガスが充填されることになり、被充填タンク60自体の温度が徐々に低下すると共に、タンク圧力も低下する。これにより、充填開始後における、二次圧力PT2(充填タンク60内の圧力)が低下して一次圧力PT1(供給圧力)との圧力差が増大するため、充填開始後は充填がスムーズに行える。
【0077】
続いて、S81では、被充填タンク60への充填が終了したか否かをチェックする。S31においては、例えば(条件1)ノズルスイッチ79がオン(ノズル戻し)に切り替わった場合、又は(条件2)充填停止指示スイッチ206がオンに操作された場合、又は(条件3)液化ガスの瞬時流量fが予め設定された所定流量F2(F2<F1)以下に低下した場合に充填終了と判断する。
【0078】
S81において、上記条件1〜3の何れかにより被充填タンク60への充填が終了したと判断した場合(YESの場合)、S82に進み、開閉弁160に閉弁信号を出力する。これにより、開閉弁160は、閉弁動作して液化ガスの充填を停止させる。
【0079】
続いて、S83では、他のディスペンサ90に対して充填完了信号を送信する。これで、当該被充填タンク60に対する液化ガスの充填処理が終了する。
【0080】
また、上記S81において、被充填タンク60への充填が終了していないと判断した場合(NOの場合)、S84に進み、他のディスペンサ90から送信された充填停止要求信号を受信したか否かをチェックする。S84において、充填停止要求信号が受信されない場合(NOの場合)は、上記S81に戻り、上記何れかの条件1〜3により被充填タンク60への充填が終了したか否かをチェックする。従って、被充填タンク60への液化ガスの充填中は、上記S81、S84を繰り返しており、充填終了か、充填中断信号の受信かを監視している。
【0081】
S84において、他のディスペンサ90から送信された充填停止要求信号を受信した場合(YESの場合)、S85に進み、開閉弁160に閉弁信号を出力する。これにより、開閉弁160は閉弁動作して後述のS86aにおいて充填中信号が入力されたと判断するまで被充填タンク60に対する液化ガスの充填を一時的に停止する。そのため、充填中のディスペンサ90では、一時的に被充填タンク60への充填を中断することになり、これから充填開始しようとする他のディスペンサ90の供給圧力が圧送器30による加圧された圧力に近づくため、被充填タンク60の温度上昇に伴う供給圧力と被充填タンク60内の圧力との圧力差を大きくすることができる。
【0082】
次のS86では、他のディスペンサ90へ充填開始指示信号を送信する。続いて、S86aでは、充填停止要求信号を送信した当該他のディスペンサ90からの充填中信号を受信したか否かをチェックする。S86aにおいて、充填停止要求信号を送信した当該他のディスペンサ90からの充填中信号を受信した場合(YESの場合)、他のディスペンサ90による充填開始が行われたものと判断してS87に進み、開閉弁160に対して開弁信号を出力する。これにより、開閉弁160は開弁動作して被充填タンク60に対する液化ガスの充填を再開する。この後は、上記S81の処理に戻り、上記S81〜S87の処理を繰り返す。
【0083】
また、上記S79において、PT1<PT2の場合(NOの場合)、一次圧力PT1が二次圧力PT2より小さいので、被充填タンク60に対する充填が行えないと判断してS88に進む。S88では、他のディスペンサ90へ充填不能報知信号を送信する。
【0084】
次のS89では、開閉弁160に閉弁信号を出力する。これにより、開閉弁160は閉弁動作して被充填タンク60に対する液化ガスの充填を停止する。続いて、S90に進み、充填不能時処理が終了したか否かをチェックする。S90においては、例えばノズルスイッチ79がオン(ノズル戻し)に切り替わった場合、又は充填停止指示スイッチ206がオンに操作された場合、充填不能時処理が終了したと判断する。
【0085】
そして、S90において、充填不能時処理が終了したと判断した場合(YESの場合)、S91に進み、他のディスペンサ90に対する充填不能報知信号の送信を停止する。この場合、一次圧力PT1と二次圧力PT2との圧力差が十分にないことから被充填タンク60への充填が行えないと判断したため、今回の充填処理を終了する。
【0086】
また、上記S75において、他のディスペンサ90からの充填不能報知信号を受信した場合(YESの場合)も圧送器30により加圧された液化ガスの供給圧力PT1が被充填タンク60の二次圧力PT2との圧力差が小さいので、上記S88〜S91による充填停止処理を行う。
【0087】
このように、複数のディスペンサ90A〜90Cが相互に各種信号を送受信して他のディスペンサの状況を確認しながら各ディスペンサが他のディスペンサの充填開始時に充填を中断して充填開始時の供給圧力を圧送器30から供給される最大圧力まで上昇させることにより、充填開始時の被充填タンク60との圧力差を確保して充填開始時の圧力不足を解消することができる。