【実施例】
【0012】
以下、本発明を適用したオイルレベルゲージの実施例について説明する。
実施例のオイルレベルゲージは、例えば乗用車等の自動車に搭載される水平対向エンジン等のエンジンにおいて、潤滑用のエンジンオイルの油面高さを計測するものである。
図1は、実施例のオイルレベルゲージを有するエンジンの模式的断面図である。
エンジン1は、クランクケース10、オイルパン20、チェーンカバー30、ガイドパイプ40、オイルレベルゲージ100等を備えて構成されている。
【0013】
クランクケース10は、エンジンの出力軸である図示しないクランクシャフト等を収容するエンジン1の本体部である。
クランクケース10は、例えばアルミニウム系合金を鋳造後、所定の機械加工を施すことによって形成され、内部は空洞となっている。
クランクケース10の下部には、オイルパン20が取り付けられる開口11が形成されている。
【0014】
オイルパン20は、例えば板金をプレス加工して上方が開口した容器状に形成され、エンジンオイルOが貯留されるものである。
オイルパン20は、クランクケース10の下部に取り付けられ、クランクケース10の内部と開口11を介して連通している。
【0015】
チェーンカバー30は、クランクケース10の前面部に設けられ、吸排気バルブを駆動するタイミングチェーンを収容する部分である。
【0016】
ガイドパイプ40は、オイルレベルゲージ100が挿入される筒状の部材であって、オイルレベルゲージ100のゲージ部130を、油面近傍まで案内するものである。
ガイドパイプ40は、金属製の丸パイプを曲げ加工して一体に形成された上部41、下部42、屈曲部43を有して構成されている。
【0017】
上部41は、エンジン1の前方側に設けられ、オイルレベルゲージ100が挿入される入口側の部分である。上部41は、上端部が下端部に対して前方側となるように、鉛直方向に対して傾斜して配置されている。上部41の下端部は、チェーンカバー30の前方側に配置されている。
下部42は、上部41の下端部に設けられた屈曲部43を介して、エンジン1の内部へ延びて形成されている。
下部42は、上端部が下端部に対して前方側となるように傾斜して配置され、この傾斜は上部41の傾斜に対して大きくなっている。
下部42は、チェーンカバー30を貫通し、エンジン1側(油面側)の開口端部は、クランクケース10の前方側の内壁とほぼ同一面上に設けられている。
【0018】
オイルレベルゲージ100は、ガイドパイプ40に挿入した後、再び引き抜いて、先端に設けられたゲージ部130へのオイルの付着状態からエンジンオイルOの油面高さを計測するものである。
オイルレベルゲージ100は、取手部110、サーベル部120、ゲージ部130、ヒンジ140等を有して形成されている。
【0019】
取手部110は、ユーザが手指で保持してオイルレベルゲージ100の挿入及び引き抜き操作を行う部分であって、例えば樹脂材料をインジェクション成型することによって形成されている。
また、取手部110は、サーベル部120のガイドパイプ40への挿入深さを規制するストッパ、及び、エンジン1の運転時にガイドパイプ40の端部を閉塞する栓としても機能する。
【0020】
サーベル部120は、取手部110とゲージ部130との間に設けられ、オイルレベルゲージ100の挿入時に、ガイドパイプ40の内部に配置される部分である。
サーベル部120は、帯状の金属板を曲げ加工して一体に形成された上部121、下部122、屈曲部123を有して構成されている。
上部121、下部122、屈曲部123は、オイルレベルゲージ100の挿入時に、ガイドパイプ40の上部41、下部42、屈曲部43の内部にそれぞれ配置される部分である。
上部121及び下部122は、オイルレベルゲージ40の上部41及び下部42と、それぞれ実質的に平行に配置される。下部122の下端部は、挿入時においてガイドパイプ40から出てクランクケース10の内部に配置される。
また、サーベル部120は、挿入及び引き抜き時に、ガイドパイプ40の屈曲部43を通過可能なよう、屈伸が可能な可撓性を有している。
【0021】
ゲージ部130は、サーベル部120の下部122の下端部に、ヒンジ140を介して接続されている。
図2は、
図1のII−II部拡大断面図であって、ゲージ部130を計測時の油面と平行な平面で切って見た横断面形状を示す図である。
ゲージ部130は、矩形の平板状に形成された平板部131、及び、平板部131の一方の面部から突き出して形成されたリブ部132とを有して構成されている。
平板部131は、計測時に長手方向が鉛直方向にほぼ沿うように下垂し、下部がエンジンオイルO内に沈められる。
リブ部132は、オイルレベルゲージ100の長手方向に沿って延在し、平板部131の幅方向(矩形の短辺方向)における中央部に配置されている。
平板部131におけるリブ部132を挟んだ領域に配置された面部131aには、エンジンオイル油面の上限位置及び下限位置等が刻印等によって表示されている。なお、このような表示は、平板部131のリブ部132とは反対側の面部にも設けてもよい。
リブ部132は、オイルレベルゲージ100の挿入、引き抜き時に、ガイドパイプ40内を通過する際に、平板部131の下側となる面部に設けられている。
【0022】
ヒンジ140は、サーベル部120の下部122の突端部と、ゲージ部130の上方側の端部との間に設けられた、ゲージ部130をサーベル部120に対して回動可能に連結する回動許容部である。
ヒンジ140は、ゲージ部130の平板部131の上方の短辺と平行に配置された回転軸回りの回動を許容する1自由度のものである。
ヒンジ140の回転軸は、計測時におけるサーベル部120の下部122の長手方向及び鉛直方向と平行な平面に対して実質的に垂直に配置されている。このような配置によって、1自由度であってもゲージ部130をほぼ鉛直に下垂させることが可能となる。
【0023】
ゲージ部130は、ヒンジ140が回動することによって、ガイドパイプ40内を通過する際には、通過の支障とならないようガイドパイプ40の長手方向に沿って配置される。
オイルレベルゲージ100を計測位置(取手部110がガイドパイプ40の上部41の開口端と係合する位置)まで挿入すると、ヒンジ140はガイドパイプ40から出てクランクケース10の内部に配置される。
このとき、ゲージ部130は、自重によって下垂し、平板部131の長手方向が鉛直方向にほぼ沿う状態で、下部がエンジンオイルO内に浸けられる。
ゲージ部130は、このような動作を確実に行なうため、エンジンオイルOに対して十分に比重の大きい材質によって、ヒンジ140のフリクションやエンジンオイルOの粘性に抗して下垂が可能なよう、十分な重量をもたせて形成することが望ましい。
【0024】
以下、上述した実施例の効果を、以下説明する本発明の比較例と対比して説明する。
比較例において、上述した実施例と実質的に共通する箇所については、同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図3は、比較例のオイルレベルゲージを有するエンジンの模式的断面図である。
比較例のオイルレベルゲージ100Aは、実施例のオイルレベルゲージ100のゲージ部130及びヒンジ140に代えて、サーベル部120の下部122を油面高さ以下までストレートに延伸し、その先端部にゲージ部124を設けたものである。
【0025】
比較例においては、ゲージ部124がガイドパイプ40の下部42と同程度に傾斜した状態で油面に差し込まれることから、ゲージ部124の傾斜の微妙な変化が油面高さの計測に与える影響が大きい。
また、ゲージ部124の裏側、表側で油が付着する上限位置が異なり、油面高さの読取に困難を生じる場合がある。
【0026】
これに対し、実施例においては、ヒンジ140回りにゲージ部130が回動し、自重によって平板部131の長手方向が実質的に鉛直となるよう下垂した状態で、エンジンオイルOに入るため、ガイドパイプ40の傾斜に関わらず、正確に油面高さを読み取ることができる。
また、ゲージ部130の平板部131からリブ部132を突き出させたことによって、オイルレベルゲージ100の引き抜き時に、計測面である面部131aに付着したエンジンオイルがガイドパイプ40の内面との接触によって削ぎ落とされ、油面高さの読取に支障が生じることを防止できる。
【0027】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)オイルレベルゲージを構成する各構成要素の形状、構造、材質、配置等は、上述した実施例に限らず適宜変更することが可能である。
例えば、実施例においては、回動許容部は1自由度のヒンジであったが、異なった方向の回転中心軸を有する2つのヒンジを組み合わせて、2自由度としてもよい。
また、ヒンジに代えて、ボールジョイント等を回動許容部として用いてもよい。
また、実施例では、ゲージ部は幅方向における中央部にリブを形成したT字状の断面形状を有するが、例えばL字状やコの字状など他の断面形状により油の削ぎ落としを防止してもよい。
(2)本発明のオイルレベルゲージは、エンジンオイルの油面高さを計測するものに限らず、トランスミッションオイル、ATフルード、ディファレンシャルギヤオイル等の油面高さ計測にも用いることができる。
(3)ガイドパイプの形状や傾斜等は実施例のものに限らず、適宜変更することができる。例えば、ガイドパイプの一部又は全部を実質的にほぼ水平に配置したり、油面側の端部が入口側の端部よりも高くなるように(上に向けて挿入するように)、実施例とは逆方向に傾斜させて配置してもよい。