(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に、金融機関等に設置される自動預金支払機(ATM)や自動両替機等の自動取引装置においては、紙幣等の紙葉類を処理する紙葉類処理装置を備え、紙葉類を処理する際に紙葉類が正常であるか否かを判定している。以下では、紙葉類の処理のうち、紙幣の入金処理または出金処理の際の判定処理を例示して説明する。
【0003】
紙幣の入金処理時や出金処理時には、紙幣が正常紙幣であるかリジェクト紙幣であるか、損券であるかを判定し、判定結果に応じて適切な収納部に紙幣を収納する。ここで、損券とは、汚れ、破損、折れの程度が悪く、装置が障害となる要因となる紙幣や、顧客が不快に感じる可能性のある紙幣(汚れ紙幣、破れ紙幣、折れ紙幣)などを意味する。また、リジェクト紙幣とは、金種を確定することができない紙幣や、枚数が確定できない紙幣、または紙幣の傾きや編位量などが大きく搬送すると装置が障害となる可能性の高い異常紙幣を意味する。
【0004】
例えば、入金処理時には、自動取引装置に入金された紙幣を鑑別して、リジェクト紙幣は顧客に返却し、損券は入金紙幣として入金を確定して一時的に保留する。そして、一時的に保留された紙幣をさらに鑑別して、リジェクト紙幣はリジェクト紙幣を保有するためのリジェクト回収部に収納し、損券も該リジェクト回収部に収納する。一方、出金処理時には、正常な紙幣を収納する紙幣収納部から繰り出した出金紙幣を鑑別し、正常紙幣は顧客に放出し、リジェクト紙幣も損券もリジェクト回収部に収納する。
【0005】
このように、紙葉類処理装置において、紙幣の収納搬送時に出現するリジェクト紙幣や損券、また、紙幣の出金搬送時に出現するリジェクト紙幣や損券は、リジェクト回収部に収納される。リジェクト回収部がリジェクト紙幣や損券で満杯になってしまった場合には、入金処理や出金処理を続行することができなくなるため、自動取引装置の運用を停止して係員によってリジェクト紙幣を回収するなどの作業が必要となる。
【0006】
そこで、特許文献1には、精査処理の前にリジェクト回収部が満杯になってしまうことを防止する技術が開示されている。ここで精査処理とは、紙葉類処理装置の紙葉類毎に収納されている紙葉類が識別されて紙葉類毎に残量が計数する処理をいい、通常、精査処理時にリジェクト回収部や紙幣収納部の紙幣が係員によって空にされる。具体的に、特許文献1では、リジェクト回収部が満杯になることが予測された場合に、自動取引装置への損券の入金を制限する技術が開示されている。また、特許文献2では、リジェクト回収部が満杯になった場合でも、精査期間内の運用を停止しないようにする技術が開示されている。具体的に、特許文献2では、リジェクト回収部の満杯時に、不良と判断された紙幣や予め設定された紙幣(2千円など)を金種別収納庫のいずれかに収納することにより、取引処理の運用を停止しないようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る自動取引装置の前面の外観を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態にかかる自動取引装置の後面の外観を示す斜視図である。
【
図3】同実施形態にかかる自動取引装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】同実施形態にかかる損券の閾値及び損券データエリアの内容を示す概念図である。
【
図5】同実施形態にかかる紙幣処理装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図6】同実施形態にかかる損券の閾値を説明する概念図である。
【
図7】同実施形態にかかる損券の閾値を説明する概念図である。
【
図8】同実施形態にかかる紙幣の収納処理の概要を説明する概念図である。
【
図9】同実施形態にかかる紙幣の出金処理の概要を説明する概念図である。
【
図10】同実施形態にかかる紙幣の収納処理の概要を説明する概念図である。
【
図11】同実施形態にかかる紙幣の回収処理の概要を説明する概念図である。
【
図12】同実施形態にかかる紙幣の搬送処理の概要を説明する概念図である。
【
図13】同実施形態にかかる損券回収判定処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係る紙幣処理装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図15】同実施形態にかかる紙幣の収納処理の概要を説明する概念図である。
【
図16】同実施形態にかかる紙幣の出金処理の概要を説明する概念図である。
【
図17】本発明の第3の実施形態に係る出金処理の概要を説明する概念図である。
【
図18】同実施形態にかかる運用設定選択画面を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0015】
(1)第1の実施の形態
(1−1)自動取引装置の外観構成
本実施の形態では、本発明にかかる紙葉類処理装置を備えた自動取引装置を例示して説明する。まず、自動取引装置1の外観構成について説明する。自動取引装置1は、紙葉類及び硬貨を取り扱う装置であって、自動取引装置1は、主に、紙葉類を取り扱う紙葉類処理装置10及び硬貨を取り扱う硬貨処理装置12を含んで構成されている。紙葉類としては、紙幣や商品券などの金券を例示することができる。以下では、紙葉類として紙幣を例示して説明しているため、紙葉類処理装置の一例として紙幣処理装置を例示して説明する。
【0016】
図1は、自動取引装置1の前面の外観を示している。
図1に示すように、自動取引装置1は、主に、紙幣入出金口2、カード挿入口6、明細票取出口7及び顧客操作部8を備えて構成される。
【0017】
図2は、自動取引装置1の後面の外観を示している。
図2に示すように、自動取引装置1は、紙幣処理装置10、硬貨処理装置12及び係員操作部9を備えて構成される。紙幣処理装置10は、紙幣を取り込んだり、識別したり、搬送したり、繰り出したりする装置である。硬貨処理装置12は、硬貨を識別したり、搬送したり、放出したりする装置である。係員操作部9は、操作部と表示部を兼ね、例えば、係員操作部9上で係員により紙幣の装填処理や精査処理開始の指示操作が行われる。ここで、紙幣の装填とは、自動取引装置の運用を開始する前に、予め係員等により紙幣が手詰めされたカセットが紙幣処理装置に設置され、当該紙幣の識別及び計数が行われた後、紙幣毎に適切なカセットに収納されることをいう。また、紙幣の残量の精査とは、自動取引装置の運用を終了する場合に、紙幣処理装置の紙幣毎に収納されている紙幣が識別されて紙幣毎に残量が計数されることをいう。
【0018】
(1−2)紙幣処理装置の構成
(1−2−1)紙幣処理装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成
次に、紙幣処理装置10の構成について説明する。
図3に示すように、自動取引装置1は、内部に、紙幣処理装置10と上位制御ユニットを備える。また、紙幣処理装置10は、紙幣処理部制御ユニット30及び鑑別部ユニット40を備える。
【0019】
上位制御ユニット20は、係員操作部9を介した係員の入力に応じて、紙幣処理部制御ユニット30への動作指示をする。
【0020】
紙幣処理部制御ユニット30は、主に、CPU11(Central Processing Unit)、ROM12、RAM13、上位通信I/O14、搬送機構I/O15及び鑑別部通信I/O16を備える。CPU11は、ROM(Read Only Memory)12やRAM(Random Access
Memory)13などのメモリに格納されている各種プログラムに従って紙幣処理装置10の各種処理全般を制御する。ROM12には、各種制御プログラムが格納されている。RAM13は、各種制御プログラムを実行するためのメモリであって、制御プログラムにより利用される各種データが格納されている。上位通信I/O14は、紙幣処理装置10及び上位制御ユニット20から各種コマンドを受信する。搬送機構I/O15は、紙幣の搬送制御を実行するためのメインモータ151、搬送監視センサ152及び振り分けフラッパを備えている。鑑別部通信I/O16は、搬送中の紙幣の識別結果を受信する。
【0021】
鑑別部ユニット40は、紙幣を鑑別した結果を紙幣処理部制御ユニット30に通知する。
【0022】
ROM12内に格納されているプログラムについて説明する。ROM12のプログラムロジック120は、出金搬送部121、紙幣搬送部122、損券データエリア管理部123及びリジェクト回収管理部124から構成される。
【0023】
出金搬送部121は、紙幣を出金搬送する際に、出金紙幣を鑑別部ユニット40で判定された判定結果をもとにRAM12に格納されている損券の閾値131と比較して指定された搬送先に搬送する。紙幣搬送部122は、紙幣を収納搬送する際に、収納紙幣を鑑別部ユニット40で判定された判定結果をもとにRAM12に格納されている損券の閾値131と比較して指定された搬送先に搬送する。損券データエリア管理部123は、RAM12に格納されている損券データエリア134を更新したり参照したりする。リジェクト回収管理部124は、RAM12に格納されている運用情報133やリジェクト回収部枚数132を参照して、現在のリジェクト回収部の紙幣量と予め設定されたリジェクト回収部の基準量とを比較してリジェクト回収部の余裕の有無を判定する。
【0024】
RAM13には、損券の閾値131、リジェクト回収部枚数132、精査期間や現在日時などの情報を含む運用情報133及び損券データエリア134などのデータが格納されている。ここで、精査期間とは、精査処理と精査処理との間の期間を意味する。
【0025】
ここで、
図4を参照して、損券の閾値131及び損券データエリア134について説明する。損券の閾値131は、紙幣を損券とするか否かを判定するための損券レベルの閾値であって、
図4に示すように、例えば、外形閾値を「01」、汚れ閾値を「01」と設定した場合、外形の損券レベルが01以上かまたは汚れの損券レベルが01以上の場合に、紙幣を損券として識別する。また、損券データエリア134には、
図4に示すように、紙幣収納部単位で、紙幣収納部に収納されている各紙幣の損券レベルが格納される。例えば、「繰り出し機構から1枚目のデータ」に対応する紙幣について、外形レベルは「02」、汚れレベルは「00」が格納されている。この場合、繰り出し機構から1枚目の紙幣は、鑑別部ユニット40によって、外形レベルが02、汚れレベルが00と識別されたことを意味している。上記したように、出金搬送部121や紙幣搬送部122は、紙幣収納部の損券データエリア134に格納されている各紙幣の損券レベルと、損券の閾値131の損券レベルとを比較して、各紙幣が損券か否かを判断する。
【0026】
(1−2−2)紙幣処理装置の内部構成
次に、
図5を参照して、紙幣処理装置10の内部構成について説明する。
図5に示すように、紙幣処理装置10は、内部に、入出金口51、鑑別部52、一時保留部53、返却保留部54、リジェクト回収部55、紙幣収納部56A、56B、56C、56D、装填回収紙幣収納部58、装填回収リジェクト部59及び搬送路60を備えている。装填回収紙幣収納部58及び装填回収リジェクト部59は、紙幣処理装置10から着脱可能な装填回収ボックス57内に備えられている。なお、紙幣収納部56A、56B、56C及び56Dは同様の構成を有しているため、単に紙幣収納部56と称して説明する場合もある。鑑別部ユニット40において、紙幣の損券レベルとともに金種も識別されて、種別毎に紙幣収納部56A〜Dに収納される。例えば、紙幣収納部56Aに千円紙幣、紙幣収納部56Bに五千円紙幣、紙幣収納部56Cに万円紙幣が収納され、紙幣収納部56Dにいずれの紙幣も収納されるようにしてもよい。
【0027】
本実施の形態では、上記構成を有する紙幣処理装置10において、紙幣の収納搬送時や出金搬送時に発生する損券を、リジェクト回収部55ではなく、紙幣収納部56に収納することにより、リジェクト回収部55が満杯となるのを防止している。また、紙幣収納部56に収納した損券の割合が多くなった場合には、損券をリジェクト回収部55に戻すことにより、紙幣出金時の出金処理の効率を改善している。
【0028】
上記したように、紙幣の出金や収納の際の搬送時に鑑別部ユニット40による鑑別結果と、紙幣処理装置10に設定された損券の閾値とを比較することにより決定される。当該閾値は、一般的には固定値であるが、リジェクト回収部55の紙幣量に応じて変更するようにしてもよい。例えば、
図6では、リジェクト回収部55における紙幣量と損券の閾値とを対応させている。具体的に、リジェクト回収部55の紙幣量が空から3分の1の場合には、損券の閾値をLow(損券レベルは緩い)とする。また、リジェクト回収部55の紙幣量が3分の1から3分の2までの場合には、損券の閾値をMiddle(損券レベルは中間)とする。また、リジェクト回収部55の紙幣量が3分の2から満杯までの場合には、損券の閾値をHigh(損券レベルは厳しい)とする。
【0029】
上記したように、本実施の形態では、損券を紙幣収納部56に収納しているため、精査期間の終盤において、紙幣収納部56内の損券の割合が増加する。そこで、出金処理の際に、紙幣収納部56から正常紙幣が放出する割合が減少し、出金に時間がかかってしまう場合にリジェクト回収部55に損券を回収している。具体的に、
図7に示すように、リジェクト回収部55の空き容量に余裕がある場合に、紙幣収納部56に収納されている損券をリジェクト回収部55に回収して、出金処理の際の出金効率を改善している。このように、本実施の形態では、リジェクト回収部55を満杯にすることを防止して入金時の受付率を下げることなく、損券紙幣による出金効率の低下を防止している。
【0030】
(1−3)紙幣処理装置の動作
次に、
図8〜
図12を参照して、紙幣処理装置10における紙幣の各処理について説明する。
【0031】
(1−3−1)収納処理の概要
まず、
図8を参照して、紙幣の収納処理の概要について説明する。紙幣処理装置10は、上位制御ユニット21から紙幣の収納指示を受けると、入出金口51に投入され、一時保留部53に一時的に保留されている紙幣を1枚ずつ繰り出して、鑑別部52に搬送する。そして、紙幣処理装置10は、鑑別部52による鑑別結果と損券の閾値131とを比較して、当該紙幣が正常紙幣か、損券か、リジェクト紙幣のいずれであるかを判定する。判定の結果、正常紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、紙幣の金種ごとに割り当てられた紙幣収納部56に収納される。また、判定の結果、損券であると判定された場合には、当該紙幣は、正常紙幣と同様に、金種ごとに割り当てられた紙幣収納部56に収納される。また、判定の結果、リジェクト紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、リジェクト回収部55に収納される。このように、入金処理時に損券であると判定された紙幣は、正常紙幣と同様に、金種ごとに紙幣収納部56に収納される。
【0032】
(1−3−2)出金処理の概要
次に、
図9を参照して、紙幣の出金処理の概要について説明する。紙幣処理装置10は、上位制御ユニット21から紙幣の出金指示を受けると、指定された金種に該当する紙幣収納部56から指定された枚数の紙幣を1枚ずつ繰り出して、鑑別部52に搬送する。そして、紙幣処理装置10は、鑑別部52による鑑別結果と損券の閾値131とを比較して、当該紙幣が正常紙幣か、損券か、リジェクト紙幣のいずれであるかを判定する。判定の結果、正常紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、入出金口51に搬送される。また、判定の結果、損券であると判定された場合には、当該紙幣は、一時保留部53に収納される。また、判定の結果、リジェクト紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、リジェクト回収部55に収納される。このように、出金処理時には、紙幣収納部56内に収納された損券を一時的に退避して、入出金口51からは正常な紙幣のみを出金させることができる。
【0033】
(1−3−3)出金後の収納処理の概要
次に、
図10を参照して、紙幣が出金された後の収納処理の概要について説明する。上記したように、紙幣の出金処理時において損券であると判定された紙幣は、一時保留部53に一時的に保留される。紙幣処理装置10は、出金処理完了後、一時保留部53から紙幣を1枚ずつ繰り出して、鑑別部52に搬送する。そして、紙幣処理装置10は、鑑別部52による鑑別結果をもとに、損券がいずれの金種か識別して、当該損券を金種ごとに割り当てられた紙幣収納部56に収納する。また、一時保留部53から繰り出された紙幣がリジェクト紙幣であると判定された場合には、当該紙幣はリジェクト回収部55に収納される。このように、出金処理時に一時的に退避された損券を再度紙幣収納部56に収納して、リジェクト回収部55が満杯になることを防止することができる。
【0034】
(1−3−4)損券のリジェクト回収処理の概要
次に、
図11を参照して、紙幣収納部56に収納された損券をリジェクト回収部55に回収する処理について説明する。上記したように、本実施の形態では、精査期間の終盤において、紙幣収納部56内の損券の割合が増加し、リジェクト回収部55の空き容量に余裕がある場合に、紙幣収納部56に収納されている損券をリジェクト回収部55に回収する。紙幣収納部56に収納されている損券をリジェクト回収部55に回収するか否かの判定処理については、後で詳細に説明する。紙幣処理装置10は、紙幣収納部56の損券をリジェクト回収部55に回収すると判定した場合、判定時に指定した紙幣収納部から指定した枚数の紙幣を1枚ずつ繰り出して、鑑別部52に搬送する。そして、紙幣処理装置10は、鑑別部52による鑑別結果と損券の閾値131とを比較して、当該紙幣が正常紙幣か、損券か、リジェクト紙幣のいずれであるかを判定する。判定の結果、正常紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、一時保留部53に搬送される。また、判定の結果、損券であると判定された場合には、当該紙幣は、リジェクト回収部55に収納される。また、判定の結果、リジェクト紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、リジェクト回収部55に収納される。このように、紙幣収納部56に収納された紙幣のうち、正常な紙幣を退避しつつ、紙幣収納部56に収納されている損券をリジェクト回収部55に回収することができる。
【0035】
(1−3−5)損券のリジェクト回収後の正常紙幣の搬送処理の概要
次に、
図12を参照して、紙幣収納部56に収納された損券をリジェクト回収部55に回収した後の正常紙幣の搬送処理について説明する。紙幣処理装置10は、紙幣収納部56の損券をリジェクト回収部55に回収する際に一時保留部53に一時的に収納した正常な紙幣を1枚ずつ繰り出して、鑑別部52に搬送する。そして、紙幣処理装置10は、鑑別部52による鑑別結果と損券の閾値131とを比較して、当該紙幣が正常紙幣か、リジェクト紙幣のいずれであるかを判定する。判定の結果、正常紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、紙幣の金種ごとに割り当てられた紙幣収納部56に収納される。また、判定の結果、リジェクト紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、リジェクト回収部55に収納される。このように、紙幣収納部の損券をリジェクト回収した後に、正常な紙幣を元の紙幣収納部56に収納することができる。
【0036】
(1−3−6)損券回収判定処理の詳細
次に、紙幣収納部56に収納されている損券をリジェクト回収部55に回収するか否かを判定する損券回収判定処理の詳細について説明する。以下では、各種処理の処理主体をプログラムロジック120に含まれる各部であるとして説明するが、実際には、プログラムロジック120の各部に基づいて紙幣処理装置10のCPU11がその処理を実行することは言うまでもない。以下に示す損券回収判定処理は、プログラムロジック120のリジェクト回収管理部124によって実行される。
【0037】
図13に示すように、リジェクト回収管理部124は、RAM13に格納されている、各収納部の損券データエリア134の損券データと、損券の閾値131及び運用情報133を取得する(S101)。
【0038】
次に、リジェクト回収管理部124は、ステップS101において取得した損券データと損券の閾値の情報をもとに、紙幣収納部56内の一定枚数中に損券が多いかを判定する(S102)。ここで、
図7に示すように、紙幣収納部56からの1回の出金最大枚数をX枚とし、紙幣収納部56に収納されている一番上の紙幣から2X枚に占める損券枚数をY枚とする。また、リジェクト回収部55の紙幣収納可能容量をA枚とし、紙幣収納量をZ枚とする。また、精査期間をB時間とし、精査期間内における現在の稼働時間をC時間とする。
【0039】
ステップS102において、リジェクト回収管理部124は、入金処理や出金処理などの処理が完了した後に、損券データエリア134を参照して、出金最大枚数Xに相当する正常紙幣を出金するために紙幣収納部56から繰り出す必要がある正常紙幣及び損券の合計枚数を算出する。そして、紙幣収納部56から繰り出す正常紙幣及び損券の合計枚数に占める損券の割合をもとに、紙幣収納部56内に損券が多いか否かを判定する。例えば、リジェクト回収管理部124は、以下の式が成立する場合に、損券が多いと判定する。
【0040】
(数1)
Y≧X・・・(1)
すなわち、紙幣収納部56に収納されている一番上の紙幣から2X枚に占める損券枚数Y枚が出金最大枚数X枚以上である場合に、損券が多いと判定する。
【0041】
ステップS102において、損券が多いと判定された場合には、リジェクト回収管理部124は、リジェクト回収部55の紙幣容量に余裕があるかを判定する(S103)。一方、ステップS102において、損券が少ないと判定された場合には、リジェクト回収管理部124は、処理を終了する。
【0042】
ステップS103において、リジェクト回収管理部124は、具体的に、前回の精査処理から現在までの実稼働時間を算出し、当該実稼働時間をもとに基準となる想定紙幣量を算出する。そして、想定紙幣量に対する現在のリジェクト回収部55の紙幣量を比較して、リジェクト回収部55に余裕があるかを判定する。例えば、リジェクト回収管理部124は、以下の式が成立する場合に、リジェクト回収部55に余裕があると判定する。
【0043】
(数2)
(A×C/B)−Z≧X・・・(2)
数式(2)では、まず、(A×C/B)を算出することにより、精査期間に対する実稼働時間をもとに基準となる想定紙幣量が算出される。そして、想定紙幣量から、実際にリジェクト回収部55に収納されている紙幣の枚数Zを減算して、当該減算値をリジェクト回収部55の空き容量とする。そして、算出されたリジェクト回収部55の空き容量と出金最大枚数Xとを比較して、出金最大枚数Xよりリジェクト回収部55の空き容量が大きい場合にリジェクト回収部55に余裕があると判定する。
【0044】
ステップS103において、リジェクト回収部55に余裕があると判定された場合には、紙幣処理部制御ユニット30が上位制御ユニット21に通知して、上位制御ユニット21に、取引が一定時間発生しないタイミングや業務終了時刻まで待機させる(S104)。
【0045】
そして、ステップS104における待機の後、上位制御ユニット21からの動作指示をもとに、リジェクト回収管理部124は、紙幣収納部56の損券をリジェクト回収部55に回収する(S105)。ステップS105における損券のリジェクト回収部55への回収処理は、上記した
図11及び
図12に示した方法によって実現される。
【0046】
(1−4)本実施の形態の効果
以上のように、本実施の形態では、紙幣が損券(異常紙葉類)である場合には、正常紙幣(正常紙葉類)と同様に紙幣収納部(紙葉類収納部)56に収納し、紙幣収納部56に収納された紙葉類を出金する際に、損券を一時保留部53に一旦退避させて、正常紙幣を紙幣収納部から繰り出した後に損券を紙幣収納部56に戻す。これにより、リジェクト紙幣以外に、損券などの異常紙葉類をリジェクト回収部に収納してリジェクト回収部が満杯になることを防止しつつ、損券を収納している紙幣収納部56からの繰り出し処理も行うことができるため、紙幣の入金及び出金効率が悪くなることを防止することができる。
【0047】
(2)第2の実施の形態
(2−1)自動取引装置の外観構成及びハードウェア構成
本実施の形態にかかる自動取引装置1の外観構成は、第1の実施の形態とほぼ同様のため詳細な説明は省略する。また、自動取引装置1のうち、紙幣処理装置10Aのハードウェア構成については、第1の実施の形態とほぼ同様であるが、
図14に示すように、装填回収ボックス57のうち、装填回収紙幣収納部58を、損券を専用に収納する損券専用収納部61としている点で第1の実施の形態と異なる構成となっている。
【0048】
図15及び
図16を参照して、紙幣の収納処理時及び出金処理時の紙幣処理装置10の動作について説明する。
【0049】
(2−2)紙幣処理装置の動作
(2−2−1)収納処理の概要
まず、
図15を参照して、紙幣の収納処理の概要について説明する。紙幣処理装置10Aは、上位制御ユニット21から紙幣の収納指示を受けると、入出金口51に投入され、一時保留部53に一時的に保留されている紙幣を1枚ずつ繰り出して、鑑別部52に搬送する。そして、紙幣処理装置10Aは、鑑別部52による鑑別結果と損券の閾値131とを比較して、当該紙幣が正常紙幣か、損券か、リジェクト紙幣のいずれであるかを判定する。判定の結果、正常紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、紙幣の金種ごとに割り当てられた紙幣収納部56に収納される。また、判定の結果、損券であると判定された場合には、当該紙幣は、損券専用収納部61に収納される。また、判定の結果、リジェクト紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、リジェクト回収部55に収納される。このように、入金処理時に損券であると判定された紙幣を損券専用収納部61に収納することにより、リジェクト回収部55に損券を収納することなく、収納処理が完了する。
【0050】
(2−2−2)出金処理の概要
次に、
図16を参照して、紙幣の出金処理の概要について説明する。紙幣処理装置10Aは、上位制御ユニット21から紙幣の出金指示を受けると、指定された金種に該当する紙幣収納部56から指定された枚数の紙幣を1枚ずつ繰り出して、鑑別部52に搬送する。そして、紙幣処理装置10Aは、鑑別部52による鑑別結果と損券の閾値131とを比較して、当該紙幣が正常紙幣か、損券か、リジェクト紙幣のいずれであるかを判定する。判定の結果、正常紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、入出金口51に搬送される。また、判定の結果、損券であると判定された場合には、当該紙幣は、損券専用収納部61に収納される。また、判定の結果、リジェクト紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、リジェクト回収部55に収納される。このように、出金処理時に損券であると判定された紙幣を損券専用収納部61に収納することにより、リジェクト回収部55に損券を収納することなく、出金処理が完了する。
【0051】
(2−3)本実施の形態の効果
以上のように、本実施の形態では、入金処理時に損券であると判定された紙幣を損券専用収納部61に収納することにより、リジェクト回収部55が満杯となることを防止することができる。
【0052】
(3)第3の実施の形態
(3−1)自動取引装置の外観構成及びハードウェア構成
本実施の形態にかかる自動取引装置1の外観構成及びハードウェア構成は、第1の実施の形態とほぼ同様のため詳細な説明は省略する。以下では、第1の実施の形態と異なる構成について特に詳細に説明する。本実施の形態では、係員からの指示に応じて、出金処理時に正常紙幣と損券をあわせて出金することにより、リジェクト回収部55が満杯になることを防止している。例えば、流通紙幣の平均的な損傷度が高い地域においては、損券レベルを上げて運用したり、損券と正常紙幣とをあわせて出金したりすることが考えられる。
【0053】
(3−2)紙幣処理装置の動作
紙幣の収納処理時の動作は第1の実施の形態と同様であるため、以下では、第1の実施の形態とは異なる紙幣の出金処理時の動作について説明する。
【0054】
図17に示すように、紙幣処理装置10は、上位制御ユニット21から紙幣の出金指示を受けると、指定された金種に該当する紙幣収納部56から指定された枚数の紙幣を1枚ずつ繰り出して、鑑別部52に搬送する。そして、紙幣処理装置10は、鑑別部52による鑑別結果と損券の閾値131とを比較して、当該紙幣が正常紙幣か、損券か、リジェクト紙幣のいずれであるかを判定する。判定の結果、正常紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、入出金口51に搬送される。また、判定の結果、損券であると判定された場合には、当該紙幣は、正常紙幣と同様に入出金口51に搬送される。また、判定の結果、リジェクト紙幣であると判定された場合には、当該紙幣は、リジェクト回収部55に収納される。このように、出金処理時には、紙幣収納部56内に収納された損券を係員の操作に応じて正常紙幣とあわせて出金して、リジェクト回収部55が満杯になることを防止している。
【0055】
なお、本実施の形態では、予め、係員操作部9を介して、係員により正常紙幣と損券紙幣とをあわせて出金する「特殊運用」を実施することが設定されているものとする。
図18に示すように、係員操作部9には、正常紙幣のみ出金することを指定する「通常運用」ボタン91と、正常紙幣と損券とをあわせて出金することを指定する「特殊運用」ボタン92とを含む運用設定選択画面90が表示される。
【0056】
(3−3)本実施の形態の効果
以上のように、本実施の形態では、出金処理時に、紙幣収納部56内に収納された損券を係員の操作に応じて正常紙幣とあわせて出金して、リジェクト回収部55が満杯となることを防止することができる。