【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、業務委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の透光性基板の一表面側に陽極、発光層および陰極が形成された複数個の有機EL素子が並設された有機EL素子モジュール部と、前記有機EL素子モジュール部の光取り出し側に配置された第2の透光性基板と、前記第2の透光性基板と合わせて前記有機EL素子モジュール部を囲む保護部と、前記有機EL素子モジュール部への給電用の高電位側の外部接続電極と低電位側の外部接続電極とを備え、前記有機EL素子は、第1の透光性基板の厚み方向において前記第1の透光性基板と前記陽極と前記発光層と前記陰極とが重なる発光部と、前記陽極のうち前記発光部の外側に形成された第1部位と前記第1の透光性基板とを貫通した第1貫通孔の内側に形成され前記陽極に電気的に接続された第1貫通孔配線と、前記陰極のうち前記第1の透光性基板の前記一表面上に延設された第2部位と前記第1の透光性基板とを貫通した第2貫通孔の内側に形成され前記陰極に電気的に接続され前記低電位側の外部接続電極に接続される第2貫通孔配線とを有し、前記第1貫通孔配線には、前記高電位側の外部接続電極に接続される第1貫通孔配線と、隣り合う有機EL素子同士のそれぞれの第1部位のうち互いに隣接する部分に重なるように配置される補助電極に接続される第1貫通孔配線とがあり、前記第2の透光性基板の一表面側において、前記高電位側の外部接続電極と前記低電位側の外部接続電極とが、前記発光部の投影領域を避けて配置されることを特徴とする面状発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態1)
以下、本実施形態の面状発光装置について、
図1〜
図6に基づいて説明する。
【0024】
面状発光装置は、第1の透光性基板11の一表面側に陽極12、発光層134および陰極14が形成された複数個(図示例では、2個)の有機EL素子10が並設された有機EL素子モジュール部1を備えている。また、面状発光装置は、有機EL素子モジュール部1の光取り出し側に配置された第2の透光性基板21と、第2の透光性基板21と合わせて有機EL素子モジュール部1を囲む保護部30とを備えている。
【0025】
有機EL素子10は、陽極12と陰極14との間に介在する有機EL層13が、陽極12側から順に、ホール輸送層133、上述の発光層134、電子輸送層135、電子注入層136を備えている。ここにおいて、有機EL素子10は、陽極12を第1の透光性基板11の上記一表面側に積層してあり、陽極12における第1の透光性基板11側とは反対側で、陰極14が陽極12に対向している。
【0026】
有機EL素子10は、第1の透光性基板11の厚み方向において第1の透光性基板11と陽極12と上述の発光層134と陰極14とが重なる領域が、発光部10aを構成しており、発光部10a以外の領域が、非発光部となる。なお、有機EL素子10の厚み方向は、第1の透光性基板11の厚み方向と同じである。
【0027】
有機EL素子10は、第1の透光性基板11の上記一表面側に発光層134を含む有機EL層13が形成されており、当該有機EL素子10の厚み方向の一面側から光を取り出すことができるものである。これに対して、第2の透光性基板21は、有機EL素子10における上記一面側に配置されている。ここにおいて、第2の透光性基板21は、第1の透光性基板11よりも屈折率が低い性質を有している。また、第2の透光性基板21は、第1の透光性基板11よりも防水性および耐候性が高い性質を有している。また、保護部30は、有機EL素子10の厚み方向の他面側を覆うものであり、第2の透光性基板21とともに有機EL素子10への水分の到達を阻止する機能を有する。
【0028】
また、有機EL素子10は、陽極12のうち発光部10aの外側に形成された第1部位(以下、陽極引出部と称する)12bを有している。そして、有機EL素子10は、陽極引出部12bに電気的に接続された第1貫通孔配線92を有している。ここにおいて、第1貫通孔配線92は、陽極引出部12bと第1の透光性基板11とを厚み方向に貫通した第1貫通孔82の内側に形成され、陽極12の陽極引出部12bと電気的に接続されている。また、有機EL素子10は、陰極14のうち第1の透光性基板11の上記一表面上に延設された第2部位(以下、陰極引出部と称する)14bを有している。そして、有機El素子10は、陰極引出部14bと第1の透光性基板11とを厚み方向に貫通した第2貫通孔84の内側に形成され、陰極14の陰極引出部14bと電気的に接続されている。
【0029】
また、面状発光装置は、第2の透光性基板21の一表面側において、有機EL素子モジュール1への給電用の高電位側の外部接続電極22と低電位側の外部接続電極24とが、発光部10aの投影領域を避けて配置されている。なお、以下では、各外部接続電極22,24が形成された第2の透光性基板21をベース基板20と称する。
【0030】
また、面状発光装置は、第2の透光性基板21の上記一表面側に、陽極引出部12bに重なるように配置されて陽極引出部12bに電気的に接続された補助電極23を備えている。すなわち、ベース基板20は、第2の透光性基板21の上記一表面側に補助電極23が形成されている。ここで、補助電極23は、陽極12よりも比抵抗の小さい材料により形成されている。
【0031】
また、面状発光装置は、有機EL素子10の上記一面と第2の透光性基板21との間に設けられ発光層134から放射された光の上記一面での反射を抑制する光取出し構造部50を備えている。
【0032】
以下、面状発光装置の各構成要素について詳細に説明する。
【0033】
有機EL素子10は、陽極12を透明電極により構成するとともに、陰極14を発光層134からの光を反射する電極により構成してあり、第1の透光性基板11の他表面を上記一面としている。
【0034】
上述の有機EL層13の積層構造は、上述の例に限らず、例えば、発光層134の単層構造や、ホール輸送層133と発光層134と電子輸送層135との積層構造や、ホール輸送層133と発光層134との積層構造や、発光層134と電子輸送層135との積層構造などでもよい。また、陽極12とホール輸送層133との間にホール注入層を介在させてもよい。また、発光層134は、単層構造でも多層構造でもよい。例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。また、陽極12と陰極14とで挟んで電圧を印加すれば発光する機能を有する有機EL層13を1つの発光ユニットとして、複数の発光ユニットを光透過性および導電性を有する中間層を介して積層して電気的に直列接続したマルチユニット構造(つまり、1つの陽極12と1つの陰極14との間に、厚み方向に重なる複数の発光ユニットを備えた構造)を採用してもよい。
【0035】
また、有機EL素子10の厚み方向の他面側から光を出射させる場合には、第1の透光性基板11の上記他表面にAl膜などからなる反射膜を設け、陰極14を例えば透明電極により構成すればよい。また、この場合には、陰極14の表面側に光取出し構造部50を設けることが好ましい。
【0036】
また、第1の透光性基板11の平面視形状は、矩形状としてある。ここで、第1の透光性基板11は、矩形状であれば、長方形状でも正方形状でもよい。
【0037】
陽極12は、発光層中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。陽極12の電極材料としては、例えば、ITO、酸化錫、酸化亜鉛、IZO、ヨウ化銅など、PEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子および任意のアクセプタなどでドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、陽極12は、第1の透光性基板11の上記一表面側に、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法などによって薄膜として形成すればよい。
【0038】
なお、陽極12のシート抵抗は数百Ω/□(オームパースクエア)以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□(オームパースクエア)以下がよい。ここで、陽極12の膜厚は、陽極12の光透過率、シート抵抗などにより異なるが、500nm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲で設定するのがよい。
【0039】
また、陰極14は、発光層中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。陰極14の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウムなど、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属の導電材料、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。また、陰極14側から光を取り出す場合には、例えば、ITO、IZOなどを採用すればよい。
【0040】
発光層134の材料としては、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体および各種蛍光色素など、上述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、上記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる発光層134は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0041】
上述のホール注入層に用いられる材料は、ホール注入性の有機材料、金属酸化物、いわゆるアクセプタ系の有機材料あるいは無機材料、p−ドープ層などを用いて形成することができる。ホール注入性の有機材料とは、ホール輸送性を有し、また仕事関数が5.0〜6.0eV程度であり、陽極12との強固な密着性を示す材料などがその例であり、例えば、CuPc、スターバーストアミンなどがその例である。また、ホール注入性の金属酸化物とは、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物である。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、上記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であっても良い。また、これらの材料からなるホール注入層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0042】
また、ホール輸送層133に用いる材料は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
【0043】
また、電子輸送層135に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq
3等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0044】
また、電子注入層136の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、シリコンなどの各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、窒化ホウ素などの絶縁物となるものや、SiO
2やSiOなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などから任意に選択して用いることができる。これらの材料は、真空蒸着法やスパッタ法などにより形成することで薄膜状に形成することができる。
【0045】
第1の透光性基板11としては、無アルカリガラス基板やソーダライムガラス基板などの安価なガラス基板に比べて安価であり、且つ、当該ガラス基板よりも屈折率が大きなプラスチック基板の一種であるポリエチレンテレフタラート(PET)基板を用いている。プラスチック基板のプラスチック材料としては、PETに限らず、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)などを採用してもよく、所望の用途や、屈折率、耐熱温度などに応じて適宜選択すればよい。なお、PETは、非常に安価で安全性の高いプラスチック材料である。また、PENは、PETと比べて、屈折率が高く耐熱性も良好であるが、高価である。
【0046】
ところで、第1の透光性基板11としてガラス基板を用いる場合には、第1の透光性基板11の上記一表面の凹凸が有機EL素子10のリーク電流などの発生原因となることがある(有機EL素子10の劣化原因となることがある)。このため、第1の透光性基板11としてガラス基板を用いる場合には、上記一表面の表面粗さが小さくなるように高精度に研磨された素子形成用のガラス基板を用意する必要があり、コストが高くなってしまう。なお、第1の透光性基板11の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaを、数nm以下にすることが好ましい。
【0047】
これに対して、本実施形態では、第1の透光性基板11としてプラスチック基板を用いているので、特に高精度な研磨を行わなくても、上記一表面の算術平均粗さRaが数nm以下のものを低コストで得ることができる。
【0048】
第2の透光性基板21としては、高屈折率ガラス基板に比べて安価なガラス基板である無アルカリガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、ソーダライムガラス基板を用いてもよい。また、第2の透光性基板21で用いるガラス基板については、有機EL素子10を形成するためのものではないので、算術平均粗さRaが数100nm以上のガラス基板を用いることができ、素子形成用のガラス基板を用いて有機EL素子を形成した面状発光装置に比べて低コスト化を図ることが可能となる。
【0049】
なお、有機EL素子10は、第1の透光性基板11の上記他表面のうち、陽極12、有機EL層13、陰極14の3つが重複して投影される領域が発光面となる。
【0050】
保護部30は、ガラス基板(例えば、ソーダライムガラス基板、無アルカリガラス基板などの安価なガラス基板)を用いて形成してある。保護部30は、ベース基板20との対向面に、有機EL素子10を収納する収納凹所30aが形成されており、上記対向面における収納凹所30aの周部を全周に亘ってベース基板20と接合してある。しかして、有機EL素子10は、ベース基板20と保護部30とで囲まれた気密空間内に収納されることとなる。ここで、ベース基板20は、上述のように第2の透光性基板21の一表面側に、各外部接続電極22,24および補助電極23が設けられており、保護部30の上記周部の一部は各外部接続電極22,24および補助電極23に接合されている。保護部30は、第2の透光性基板21に対向する矩形板状の部位が、リヤプレート部31を構成し、このリヤプレート部31と第2の透光性基板21との間に介在する矩形枠状の部位が、フレーム部32を構成している。
【0051】
保護部30と第2の透光性基板21とを接合する接合部は、例えば、低融点ガラス、接着用フィルム、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、接着剤(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂など)などにより構成すればよい。外部接続電極22,24は、例えば、Au膜、Al膜やITO膜などにより構成すればよいが、材料や層構造は特に限定するものではなくて、下地との密着性や電気的に接続する部位の接触抵抗などを考慮して適宜設定すればよく、単層構造に限らず、多層構造でもよい。
【0052】
また、保護部30は、収納凹所30aの内底面に、水分を吸着する吸水材(図示せず)を貼り付けてある。この吸水材としては、例えば、酸化カルシウム系の乾燥剤(酸化カルシウムを練り込んだゲッタ)などを用いればよい。なお、保護部30は、有機EL素子10を封止するエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などにより構成してもよい。
【0053】
また、本実施形態の面状発光装置は、上述の光取出し構造部50が、有機EL素子10の上記一面側に設けられた凹凸構造部51により構成され、当該凹凸構造部51と第2の透光性基板21との間に空間70が存在している。しかして、本実施形態の面状発光装置では、発光層134から放射され第2の透光性基板21まで到達した光の反射ロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0054】
ところで、有機EL素子10の発光層134および第1の透光性基板11それぞれの屈折率は、光が取り出される外部雰囲気である空気の屈折率に比べて大きい。したがって、上述の光取出し構造部50が設けられずに第1の透光性基板11と第2の透光性基板21との間の空間が空気雰囲気となっている場合には、第1の透光性基板11からなる第1の媒質と空気からなる第2の媒質との界面で全反射が生じ、全反射角以上の角度で当該界面に入射する光は反射される。そして、第1の媒質と第2の媒質との界面で反射された光が有機EL層13または第1の透光性基板11内部において多重反射し、外部に取り出されずに減衰するので、光取出し効率が低下する。また、第1の媒質と第2の媒質との界面に全反射角未満の角度で入射した光についても、フレネル反射が発生するため、さらに光取り出し効率が低下する。
【0055】
これに対して、本実施形態では、有機EL素子10の上記一面側に上述の光取出し構造部50を設けてあるので、有機EL素子10の外部への光取り出し効率を向上させることができる。
【0056】
光取出し構造部50を構成する凹凸構造部51は、2次元周期構造を有している。ここで、当該2次元周期構造の周期は、発光層134で発光する光の波長が300〜800nmの範囲内にある場合、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)とすれば、波長λの1/4〜10倍の範囲で適宜設定することが望ましい。
【0057】
周期を例えば5λ〜10λの範囲で設定した場合には、幾何光学的な効果、つまり、入射角が全反射角未満となる表面の広面積化により、光取り出し効率が向上する。また、周期を例えばλ〜5λの範囲で設定した場合には、回折光による全反射角以上の光を取り出す作用により、光の取り出し効率が向上する。また、周期をλ/4〜λの範囲で設定した場合には、凹凸構造部51付近の有効屈折率が第1の透光性基板11の上記一表面からの距離が大きくなるにつれて徐々に低下することとなり、第1の透光性基板11と空間70との間に、凹凸構造部51の媒質の屈折率と空間70の媒質の屈折率との中間の屈折率を有する薄膜層を介在させるのと同等となり、フレネル反射を低減させることが可能となる。要するに、周期をλ/4〜10λの範囲で設定すれば、反射(全反射あるいはフレネル反射)を抑制することができ、有機EL素子10の光取り出し効率が向上する。ただし、幾何光学的な効果による光取り出し効率の向上を図る際の周期の上限としては、1000λまで適用可能である。また、凹凸構造部51は、必ずしも2次元周期構造などの周期構造を有している必要はなく、凹凸のサイズがランダムな凹凸構造や周期性のない凹凸構造でも光取り出し効率の向上を図れる。なお、異なるサイズの凹凸構造が混在する場合(例えば、周期が1λの凹凸構造と5λ以上の凹凸構造とが混在する場合)には、その中で最も凹凸構造部51における占有率の大きい凹凸構造の光取り出し効果が支配的になる。
【0058】
光取出し構造部50の凹凸構造部51は、プリズムシート(例えば、株式会社きもと製のライトアップ(登録商標)GM3のような光拡散フィルムなど)により構成することができるが、これに限るものではない。例えば、第1の透光性基板11の上記他表面に凹凸構造部51をインプリント法(ナノインプリント法)により形成してもよいし、第1の透光性基板11を射出成形により形成するようにし、適宜の金型を用いて第1の透光性基板11に凹凸構造部51を直接形成してもよい。上述のプリズムシートに用いられている素材は、通常、屈折率が1.4〜1.6程度の樹脂である(つまり、屈折率がガラス基板の屈折率に近い一般的な樹脂である)場合が多く、屈折率が一般的な樹脂に比べて高い高屈折率の樹脂ではない。このため、本実施形態のように、第1の透光性基板11としてガラス基板に比べて屈折率の高いプラスチック基板を用いており、凹凸構造部51の屈折率が第1の透光性基板11の屈折率よりも低い場合、第1の透光性基板11と凹凸構造部51との界面(屈折率界面)で全反射が発生し、光取り出しロスが生じる。そこで、本実施形態の面状発光装置では、第1の透光性基板11としてガラス基板に比べて屈折率の高いプラスチック基板を用いながらも、凹凸構造部51の屈折率を第1の透光性基板11の屈折率以上とする(凹凸構造部51の屈折率が、第1の透光性基板11の屈折率を下回らないようにする)ことにより、第1の透光性基板11と凹凸構造部51との界面での全反射を防止することが可能となり、光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。なお、凹凸構造部51は、例えば、高さが5μm、底角が45°の四角錐が10μmピッチで2次元アレイ状に配列された2次元周期構造を採用することができるが、これらの形状や数値は一例であり、限定するものではない。
【0059】
本実施形態の面状発光装置では、凹凸構造部51の屈折率を第1の透光性基板11の屈折率以上とすることにより、第1の透光性基板11と凹凸構造部51との界面での全反射ロスを低減することが可能となり、光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。また、本実施形態の面状発光装置では、第2の透光性基板21と凹凸構造部51とが面状に接触する領域を設けることにより、全反射ロスを低減することが可能となり、光取り出し効率の向上を図れる。ここにおいて、例えば、凹凸構造部51が多数の凸部を有した形状の例の場合には、例えば、凸部の形状を柱状(例えば、円柱状、六角柱状など)や錐台状(円錐台状、角錐台状など)の形状とすればよい。また、凹凸構造部51が多数の凹部を有した形状の場合には、例えば、凹部の形状を、四角錐状、半球状、円柱状などの形状とすればよい。
【0060】
第1の透光性基板11の屈折率が例えば1.75の場合、第1の透光性基板11よりも屈折率の高い凹凸構造部51を得る方法としては、上述のインプリント法が挙げられる。インプリント法としては、熱インプリント法(熱ナノインプリント法)や、光インプリント法(光ナノインプリント法)などを採用することができる。
【0061】
光取出し構造部50は、凹凸構造部51の表面と第2の透光性基板21との間に空間70が存在することが重要である。仮に、凹凸構造部51の表面全体が、当該凹凸構造部51と第2の透光性基板21との界面であり、空間70が存在しない場合には、第2の透光性基板21と外部の空気との屈折率界面が存在するため、当該屈折率界面で再び全反射が生じる。これに対して、本実施形態の面状発光装置では、有機EL素子10の光を一旦、空間70へ取り出すことができるので、空間70の空気と第2の透光性基板21との界面、第2の透光性基板21と外部の空気との界面で全反射ロスが生じなくなる。
【0062】
上述のように、光取出し構造部50を構成する凹凸構造部51の表面と第2の透光性基板21との間には、空間70が存在することが望ましい。しかしながら、面状発光装置の機械的強度や製造プロセスの簡易性を考慮して空間70を透光性材料により充実させた方が好ましい場合がある。この場合には、当該凹凸構造部51と第2の透光性基板21との間に、第2の透光性基板21の屈折率以下の屈折率の透光性材料からなる透光部を有するようにすれば、全反射ロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。ここにおいて、透光部の透光性材料としては、例えば、シリカエアロゲル(n=1.05)のような屈折率が極めて1に近いもの、つまり、屈折率が空気の屈折率と同等とみなせる程度に小さい低屈折率材料が特に好ましい。
【0063】
本実施形態の面状発光装置は、有機EL素子10の第1の透光性基板11とは別途に第2の透光性基板21を備えているので、第1の透光性基板11として高屈折率ガラス基板やバリア層が設けられたプラスチック基板を用いることなく防水性および耐候性を高めることが可能となる。また、本実施形態の面状発光装置は、第1の透光性基板11としてソーダライムガラス基板や無アルカリガラス基板のような一般的なガラス基板に比べて屈折率が高いものを用いることができるので、発光層134−第1の透光性基板11間の全反射ロスを低減できる。また、本実施形態の面状発光装置は、有機EL素子10の上記一面と第2の透光性基板21との間に設けられ発光層134から放射された光の上記一面での全反射を抑制する光取出し構造部50を備えているので、光取り出し効率の向上を図れる。しかして、本実施形態の面状発光装置によれば、光取り出し効率を向上でき、且つ、耐候性および防水性を高めることが可能となる。
【0064】
また、本実施形態の面状発光装置では、第1の透光性基板11として、バリア層なしのプラスチック基板を用い、第2の透光性基板21として、ソーダライムガラス基板や無アルカリガラス基板のようなガラス基板を用いているので、低コスト化を図れるとともに、外部からの紫外線による有機EL素子10の長期信頼性の低下を防止することができる。
【0065】
ところで、本実施形態の面状発光装置では、第2の透光性基板21を透過する際のフレネルロスを低減することが望ましい。フレネルロスを抑制する手段としては、例えば、第2の透光性基板21の厚み方向の少なくとも一面に、単層もしくは多層の誘電体膜からなるアンチリフレクションコート(anti-reflection coat:以下、AR膜と略称する)を設けることが考えられる。ここにおいて、AR膜を例えば屈折率nが1.38のフッ化マグネシウム膜(MgF
2膜)により構成する場合には、設計波長λ
0を550nmとすれば、AR膜の厚さをλ
0/4n=550/(4×1.38)=99.6nmとすればよい。同様に、AR膜を例えば屈折率nが1.58の酸化アルミニウム膜(Al
2O
3膜)により構成する場合には、設計波長λ
0を550nmとすれば、AR膜の厚さをλ
0/4n=550/(4×1.58)=87.0nmとすればよい。また、AR膜は、厚さが99.6nmのフッ化マグネシウム膜と厚さが87.0nmの酸化アルミニウム膜との積層膜(2層AR膜)としてもよい。なお、誘電体膜の材料は、フッ化マグネシウムや酸化アルミニウム以外の材料を採用してもよい。
【0066】
本実施形態の面状発光装置では、AR膜を第2の透光性基板21の厚み方向の少なくとも一面、好ましくは両面に設けることにより、フレネルロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0067】
また、フレネルロスを抑制する他の手段としては、第2の透光性基板21の厚み方向の少なくとも一面側にモスアイ(蛾の目)構造を設けることが考えられる。モスアイ構造は、先細り状の微細突起が2次元アレイ状に配列されて2次元周期構造を有しており、多数の微細突起と隣り合う微細突起間に入り込んだ媒質(例えば、空気)とで反射防止部が構成されることとなる。ここにおいて、第2の透光性基板21をナノインプリント法により加工してモスアイ構造を形成した場合には、微細突起の屈折率が第2の透光性基板21の屈折率と同じとなる。この場合、反射防止部の有効屈折率は、当該反射防止部の厚さ方向において第2の透光性基板21の屈折率(=1.51)と媒質の屈折率(=1)との間で連続的に変化し、フレネルロスの原因となる屈折率界面がなくなった状態が擬似的に得られる。したがって、モスアイ構造では、AR膜に比べて、波長や入射角に対する依存性を小さくでき、かつ、反射率も小さくすることができる。なお、モスアイ構造における微細突起の高さおよび微細突起の周期は、それぞれ200nm、100nmに設定することができるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。上述のモスアイ構造は、例えば、ナノインプリント法により形成することができるが、ナノプリント法以外の方法(例えば、レーザ加工技術)で形成してもよい。また、モスアイ構造は、例えば、三菱レイヨン株式会社製のモスアイ型無反射フィルムにより構成してもよい。
【0068】
ところで、本実施形態の面状発光装置は、第2の透光性基板21と保護部30とで囲まれる空間内に、2個の有機EL素子10を備え、これら2個の有機EL素子10が第2の透光性基板21の上記一表面に平行な一平面内で並んで配置されている。ここにおいて、有機EL素子モジュール部1は、2個の有機EL素子10の平面視形状が長方形状であって、これら2個の有機EL素子10の外形サイズが同じであり、有機EL素子10の短手方向において2個の有機EL素子10が並ぶように配置されている。なお、2個の有機EL素子10は、外形サイズだけでなく、構造も同じである。要するに、2個の有機EL素子10は、同じ仕様のものである。
【0069】
有機EL素子10は、第1の透光性基板11の平面形状を
図5(a)に示すように長方形状としてあり、陽極12の平面形状を
図5(b)に示すように第1の透光性基板11の長手方向の一端部のみを露出させる長方形状としてある。したがって、陽極12は、短手方向の寸法が、第1の透光性基板11の短手方向の寸法と同じであり、長手方向の寸法が、第1の透光性基板11の長手方向の寸法よりも短くなっている。また、有機EL素子10は、有機EL層13の平面視形状を
図5(c)に示すように、第1の透光性基板11よりも長手方向および短手方向それぞれの寸法が短い長方形状としてある。また、有機EL素子10は、陰極14の平面視形状を
図5(d)に示すように、短手方向の寸法が有機EL層13の短手方向の寸法よりも短く、長手方向の寸法が第1の透光性基板11の長手方向の寸法よりも短い長方形状としてある。ここにおいて、陰極14は、長手方向の一端部が第1の透光性基板11の上記一端部上に形成されるように配置されている。また、陰極14の長手方向の寸法は、陰極14の長手方向の一端部側で当該陰極14が有機EL層13の長手方向の一端部に重なり、陽極12のうち第1の透光性基板11の長手方向の他端部上に形成された部分、有機EL層13の長手方向の他端部を露出させるように設定してある。これにより、陽極12は、第1の透光性基板11の長手方向の上記他端部上に形成されている部分と、第1の透光性基板11の短手方向の両端部に形成されている部分とが、露出し、これらの露出した部分が、上述の陽極引出部12bを構成している。また、陰極14は、第1の透光性基板11の長手方向の上記一端部上に形成されている部分が露出し、この露出した部分が、上述の陰極引出部14bを構成している。また、有機EL素子10は、平面視において、長手方向に沿った中心線に対して線対称の形状となっている。つまり、有機EL素子10は、短手方向を左右方向とすれば、左右対称の形状となっている。
【0070】
また、第2の透光性基板21の上記一表面上には、上述のように、高電位側の外部接続電極22、低電位側の外部接続電極24、補助電極23が形成されている。ベース基板20は、
図6に示すように、第2の透光性基板21の平面視形状が矩形状であり、第2の透光性基板21の4辺のうちの所定の2辺の一方の辺に沿って高電位側の外部接続電極22が形成され、他方の辺に沿って低電位側の外部接続電極24が形成されている。ここで、各外部接続電極22,24の平面視形状は短冊状である。なお、
図6に示した例では、第2の透光性基板21の上記一表面において、短手方向の一端部に高電位側の外部接続電極22が形成され、当該短手方向の他端部に低電位側の外部接続電極24が形成されている。
【0071】
また、ベース基板20は、3個の補助電極23が、高電位側の外部接続電極22に電気的に接続されている。ここで、各補助電極23は、外部接続電極22と連続して一体に形成されている。また、各補助電極23は、第2の透光性基板21の上記一表面に平行な面内において両外部接続電極22,24を結ぶ方向を長手方向とする細長の形状に形成されており、同面内において当該長手方向に直交する方向に並設されている。ここにおいて、3個の補助電極23のうち、
図6の左右方向における真ん中の補助電極23は、
図3における2個の有機EL素子10それぞれの陽極引出部12bのうち互いに隣接する部分に重なるように配置されている。また、
図6の左右方向における左側の補助電極23は、
図3における左側の有機EL素子10の陽極引出部12bのうち発光部10aの左側で当該有機EL素子10の長手方向に沿って形成されている部分に重なるように配置されている。また、
図6の左右方向における右側の補助電極23は、
図3における右側の有機EL素子10の陽極引出部12bのうち発光部10aの右側で当該有機EL素子10の長手方向に沿って形成されている部分に重なるように配置されている。ここで、補助電極23の幅寸法は、陽極引出部12bの幅寸法よりも長く設定されている。ただし、各補助電極23は、有機EL素子モジュール部1における各発光部10aの第2の透光性基板21への投影領域を避けて配置されている。
【0072】
各外部接続電極22,24は、例えば、めっき法や、スパッタ法や、印刷法などにより形成すればよい。ここで、各外部接続電極22,24をめっき法により形成する場合、外部接続電極22,24の材料としては、例えば、PdNiAuなどを採用することが好ましい。また、各外部接続電極22,24をスパッタ法により形成する場合、外部接続電極22,24の材料としては、例えば、MoAl、CrAg、AgPdCu(APC)などを採用すればよい。また、印刷法により形成する場合、外部接続電極22,24の材料としては、例えば、銀を採用すればよい。なお、外部接続電極22,24の材料が銀であり、印刷法により形成する場合には、銀ペースト(例えば、Henkel社製のQMI516Eなど)を利用することができる。
【0073】
各外部接続電極22,24は、それぞれの一部が保護部30に接合されているが、それぞれの残りの部分が、ベース基板20と保護部30とで構成されるパッケージの外側に露出している。したがって、本実施形態の面状発光装置は、外部から外部接続電極22,24を介して有機EL素子モジュール部1へ電力を供給することが可能な構造となっている。
【0074】
補助電極23の材料としては、各外部接続電極22,24と同じ材料を採用している。これにより、面状発光装置は、陽極12の材料がITOなどの透明導電材料である場合に比べて、補助電極23の材料の比抵抗を小さくでき、補助電極23のシート抵抗を陽極12のシート抵抗よりも小さくすることが可能となる。
【0075】
有機EL素子10は、上述の第1貫通孔配線92を10個、第2貫通孔配線94を2個、備えている。ここで、有機EL素子10は、10個の第1貫通孔配線92のうち、ベース基板20における高電位側の外部接続電極22に重なる2個の第1貫通孔配線92が、当該高電位側の外部接続電極22に、接続部62を介して接合され電気的に接続されている。また、有機EL素子10は、10個の第1貫通孔配線92のうち、2個の補助電極23に重なる4個ずつの第1貫通孔配線92が、補助電極23に、接続部63を介して接合され電気的に接続されている。第1貫通孔配線92、接続部62および接続部63は、導電性ペースト(例えば、銀ペーストなど)により形成されている。また、有機EL素子10は、ベース基板20における低電位側の外部接続電極24に重なる2個の第2貫通孔配線94が、当該外部接続電極24に、接続部64を介して電気的に接続されている。第2貫通孔配線94および接続部64は、導電性ペースト(例えば、銀ペーストなど)により形成されている。なお、第1貫通孔配線92の個数および第2貫通孔配線94の個数は、それぞれ一例であり、特に限定するものではない。
【0076】
上述の説明から分かるように、本実施形態の面状発光装置は、2個の有機EL素子10が並列接続されている。したがって、面状発光装置は、高電位側の外部接続電極22と低電位側の外部接続電極24との間に直流電源などから適宜の電圧を印加することにより、各有機EL素子10を発光させることができる。
【0077】
以下、面状発光装置の製造方法について
図7および
図8を参照しながら説明する。
【0078】
まず、第1の透光性基板11の上記他表面側に光取出し構造部50を形成した後、第1の透光性基板11の上記一表面側に、陽極12、有機EL層13、陰極14を順次形成することで有機EL素子10の基本構造を形成することによって、
図7(a)および
図8(a)に示す構造を得る。ここにおいて、陽極12の形成にあたっては、例えば、陽極12の基礎となる導電膜(例えば、ITO膜など)をスパッタ法などにより成膜した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して導電膜をパターニングすればよい。ただし、陽極12の材料によっては、スパッタ法に限らず、真空蒸着法などにより成膜するようにしてもよい。また、有機EL層13および陰極14は、例えば、真空蒸着法などにより連続的に成膜すればよい。
【0079】
上述の陰極14を形成した後、上述の有機EL素子10の基本構造に第1貫通孔82および第2貫通孔84を形成することによって、
図7(b)および
図8(b)に示す構造を得る。ここにおいて、第1貫通孔82および第2貫通孔84の形成方法としては、例えば、打ち抜き加工や、熱加工などを採用することができる。ここで、打ち抜き加工を行う加工機としては、例えば、フィルムパンチャーを用いることができる。また、熱加工を行う加工機としては、例えば、パーフォレータ−などを用いることができる。なお、第1貫通孔82および第2貫通孔84の形成が終了するまでは、第1の透光性基板11の多数個取りが可能なプラスチック基板を用いてもよく、第1貫通孔82および第2貫通孔84の形成後に、個々の有機EL素子10に分離するようにしてもよい。なお、上述の光取出し構造部50は、第1貫通孔82および第2貫通孔84の形成後に形成してもよい。
【0080】
上述の
図7(b)および
図8(b)に示す構造を得た後、ベース基板20に各有機EL素子10を実装することによって、
図7(c)および
図8(c)に示す構造を得る。有機EL素子10を実装する際には、各第1貫通孔82内へ導電性ペーストを塗布(充填)して各第1貫通孔配線92を形成するとともに、導電性ペーストを塗布して各接続部62,63を形成することにより、陽極12と高電位側の外部接続電極22との電気的接続を行う。また、各第1貫通孔84内へ導電性ペーストを塗布(充填)して各第2貫通孔配線94を形成するとともに、導電性ペーストを塗布して各接続部64を形成することにより、陰極14と低電位側の外部接続電極24との電気的接続を行う。ここにおいて、導電性ペーストを塗布する手段としてディスペンサを用いることにより、塗布量の精度を向上させることができ、しかも、第1貫通孔82内や第2貫通孔84内へ塗布することにより、塗布量を少なくすることが可能となる。これにより、有機EL素子10の陽極引出部12bの幅(陽極12において露出させる部分の幅)、陰極引出部14bの幅(陰極14においてベース基板20上で露出させる部分の幅)を狭くすることが可能となる。ここで、第1貫通孔配線92、第2貫通孔配線94を備えていない比較例(
図9参照)の構成では、陽極引出部12bと外部接続電極22とを電気的に接続する接続部62を、陽極引出部12bの表面と第1の透光性基板11の側面と外部接続電極22の表面とに跨るように形成し、陰極引出部14bと外部接続電極24とを電気的に接続する接続部64を、陰極引出部14bの表面と第1の透光性基板11の側面と外部接続電極24の表面とに跨るように形成する必要がある。このため、接続部62,64を形成する際の導電性ペーストの塗布量が多く、例えば、
図9に示すように、接続部62によって陽極引出部12bと陰極14とが短絡する不具合が発生してしまう可能性が高くなる。また、この比較例では、陽極引出部12bと補助電極(図示せず)とを電気的に接続する接続部(図示せず)を、陽極引出部12bの表面と第1の透光性基板11の側面と補助電極の表面とに跨るように形成する必要があるので、接続部を介して陽極引出部12bと陰極14とが短絡する不具合が発生してしまう可能性が高くなる。また、比較例では、接続部62,64のカバレッジに起因して段切れが起こってオープン不良が発生したり、接続部62,64の抵抗値が増加して駆動電圧が増加してしまう可能性がある。また、第1の透光性基板11と第2の透光性基板21と接続部62,64との線膨張率が異なるので、
図9に示した比較例では、使用時の温度昇降による熱応力に起因して接続部62,64にクラックが発生してしまう可能性がある。これに対して、本実施形態では、導電性ペーストの塗布量を少なくできて、上述のような短絡やオープン不良が発生する可能性を低減でき、製造歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0081】
上述の
図7(c)および
図8(c)に示す構造を得た後、保護部30をベース基板20に接合することによって、
図7(d)および
図8(d)に示す構造の面状発光装置を得る。なお、保護部30をベース基板20に接合するにあたっては、フレーム部32におけるベース基板20との対向面を全周に亘ってベース基板20と接合する。したがって、保護部30をベース基板20に接合することによって、有機EL素子モジュール部1が封止される。
【0082】
本実施形態の面状発光装置は、上述の有機EL素子モジュール部1、第2の透光性基板21、保護部30を備え、有機EL素子モジュール部1の有機EL素子10が、上述の発光部10a、第1貫通孔配線92および第2貫通孔配線94を有し、第2の透光性基板21の一表面側において、各外部接続電極22,24が、発光部10aの投影領域を避けて配置されている。しかして、本実施形態の面状発光装置では、隣り合う有機EL素子10の発光部10a同士間の距離、および当該距離によって決まる非発光部の面積を低減でき、発光面積の大面積化および長寿命化を図りながらも、輝度むらを低減することが可能で且つ意匠性(駆動して発光部10aが発光している状態での意匠性)の向上を図れる。なお、本実施形態の面状発光装置では、隣り合う有機EL素子の陽極引出部12b同士をそれぞれの第1貫通孔配線92と両方の有機EL素子10の上記一面側に形成した接続部63とで電気的に接続することにより、隣り合う有機EL素子10間に隙間を設けることなく有機EL素子10を並設することも可能である。
【0083】
ところで、陽極12をITO膜などの透明導電膜により構成した有機EL素子10では、陽極12のシート抵抗が金属膜を用いた陰極14のシート抵抗に比べて大きい。このため、補助電極23がない場合、発光部10aの面積を大きくすると、陽極12での電位勾配が大きくなって、陽極12と陰極14との間の有機EL層13にかかる電圧が大きくなり、輝度むらが大きくなるとともに、効率の低下、短寿命化の原因となる。ここで、
図10に示すように、有機EL層13において上述の高電位側の外部接続電極22付近の第1の位置(小領域)で流れる電流をI2、有機EL層13において外部接続電極22から遠い第2の位置(小領域)で流れる電流をI1とし、陽極12において第1の位置から第2の位置までの抵抗をR、第1の位置および第2の位置それぞれでの有機EL層13の抵抗をRdとすると、
I1/I2≒Rd/(Rd+R)
となる。要するに、陽極12での電圧降下に起因して有機EL素子10に流れる電流の電流密度の面内ばらつきが生じるので、より大面積化を図る場合に輝度むらが大きくなる。なお、理想的には、精度R=0でI1=I2となり、均整度が100%となる。
【0084】
これに対して、本実施形態の面状発光装置では、上述の補助電極23を設けてあるので、輝度むらを低減することが可能となる。また、本実施形態の面状発光装置では、補助電極23を設けることによって、駆動時における有機EL素子10の電流集中を抑制することが可能となるから、より一層の長寿命化を図れる。ここにおいて、本実施形態の面状発光装置では、発光部10aの第2の透光性基板21の上記一表面への投影領域を避けて補助電極23が配置されているので、補助電極23によって意匠性が低下するのを防止することが可能である。
【0085】
なお、面状発光装置における有機EL素子10の個数は特に限定するものではない。また、補助電極23の個数は、有機EL素子10の個数に応じて適宜変更すればよい。
【0086】
(実施例1)
本実施例の面状発光装置における有機EL素子10は、
図1に示した実施形態1の構成において、陽極12と陰極14との間の有機EL層13が、ホール輸送層133と発光層134と電子輸送層135と電子注入層136との積層構造を有している。
【0087】
本実施例の面状発光装置の有機EL素子10の製造にあたっては、まず、PET基板からなる第1の透光性基板11の上記他表面側に光取出し構造部50をインプリント法により形成し、その後、第1の透光性基板11の上記一表面側に膜厚が100nmのITO膜をスパッタ法により成膜した。次に、第1の透光性基板11の上記一表面側の全面にポジ型のレジスト(東京応化工業株式会社製のOFPR800LB)をスピンコート法により塗布してからベーキングを行った。続いて、別途用意したガラスマスクを利用して紫外線露光を行い、レジストの露光部を現像液(東京応化製のNMD−W)で除去することにより、レジストのパターニングを行った。その後、レジストをマスクとして、ITO膜のうちレジストにより覆われていない部分をエッチング液(関東化学株式会社製のITO−06N)によりエッチングすることでパターニングされたITO膜からなる陽極12を形成した。続いて、レジスト剥離液(東京応化工業株式会社製の剥離液106)でレジストを剥離した。なお、スパッタ法によるITO膜の成膜条件としては、ターゲットとしてITOターゲットを用い、成膜温度を100℃とした。
【0088】
上述の陽極12が形成された第1の透光性基板11を、中性洗剤、純水で各10分間ずつ超音波洗浄し、その後、真空中において所定の乾燥温度(80℃)で所定の乾燥時間(2時間)の乾燥を行い、次に、紫外線(UV)とオゾン(O
3)とによる所定時間(10分)の表面清浄化処理を施した。
【0089】
その後、第1の透光性基板11を真空蒸着装置のチャンバ内に配置し、α−NPDを40nmの膜厚でホール輸送層133として成膜した。続いて、このホール輸送層上に、アルミニウム−トリス[8−ヒドロキシキノリン](以下、Alq
3と略称する)に5%のルブレンをドーピングした40nmの膜厚の発光層134を成膜した。続いて、この発光層上に、Alq
3を40nmの膜厚で電子輸送層135として成膜した。その後、電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で電子注入層136として成膜し、次に、アルミニウムを80nmの膜厚で陰極14として成膜した。
【0090】
上述の有機EL素子10を製造した後、第1貫通孔82および第2貫通孔84を形成し、続いて、有機EL素子10の耐熱温度よりも低い温度で硬化させることが可能な無溶剤型の導電性ペースト(ここでは、スリーボンド社のTB3380)をディスペンサにより塗布して2個の有機EL素子10とベース基板20とを接合することで各接続部62,63,64を形成する。このとき、第1貫通孔82内および第2貫通孔84内にも、同じ無溶剤型の導電性ペーストを塗布して第1貫通孔配線92および第2貫通孔配線94を形成する。導電性ペーストの硬化は、100℃で行った。
【0091】
その後、ガラス基板からなる保護部30を用意し、保護部30と第2の透光性基板21とを紫外線硬化樹脂からなる接合部を介して接合した。これにより、有機EL素子モジュール部1の2個の有機EL素子10は、ガラス基板からなる第2の透光性基板21の上記一表面に外部接続電極22,24が形成されたベース基板20とガラス基板からなる保護部30とで封止されているので、別途に防水バリア層を形成する必要はない。
【0092】
以上説明したように、面状発光装置は、有機EL素子モジュール部1と、第2の透光性基板21と、保護部30とを有する。有機EL素子モジュール部1は、複数個の有機EL素子10を有する。有機EL素子10は、第1の透光性基板11と、陽極12と、発光層134と、陰極14とを有する。陽極12と発光層134と陰極14とは、第1の透光性基板11の一表面側に設けられている。第2の透光性基板21は、有機EL素子モジュール部1の光取り出し側に配置されている。保護部30は、第2の透光性基板21と合わせて、有機EL素子モジュール部1を囲む。第1の透光性基板11は、厚みを有しており、これにより、第1の透光性基板11は、厚み方向を有する。
【0093】
有機EL素子10は、発光部10aと、第1貫通孔配線92と、第2貫通孔配線94とを有する。発光部10aは、第1の透光性基板11の厚み方向において前記第1の透光性基板11と前記陽極12と前記発光層134と前記陰極14とが重なる。第1貫通孔配線92は、陽極12の第1部位と、第1の透光性基板11とを貫通した第1貫通孔82の内側に形成されている。第1部位は、陽極12のうち、発光部10aの外側に形成された部分である。第1貫通孔配線92は、陽極12に電気的に接続されている。第2貫通孔配線94は、陰極14の第2部位と第1の透光性基板11とを貫通した第2貫通孔84の内側に形成されている。第2部位は、陰極14のうち、第1の透光性基板11の一表面上に延設された部分である。第2貫通孔配線94は、陰極14に電気的に接続されている。
【0094】
面状発光装置は、外部接続電極22を有する。外部接続電極22は、有機EL素子モジュール部1への給電用の高電位側の外部接続電極22と、前記有機EL素子モジュール部1への給電用の低電位側の外部接続電極22とを有する。
【0095】
外部接続電極22は、第2の透光性基板21の一表面側において、発光部10aの投影領域を避けて配置されている。
【0096】
なお、第2の透光性基板21の投影領域は、発光部10aと、第1の透光性基板11の厚み方向において重複する部分として定義される。
【0097】
すなわち、外部接続電極22は、発光部10aと、第1の透光性基板11の厚み方向に交差する方向にずれている。よって、外部接続電極22は、発光部10aと、第1の透光性基板11の厚み方向において重複していない。
【0098】
また、第2の透光性基板21の一表面側に、前記第1部位に重なるように配置されて第1部位に電気的に接続され且つ前記陽極12よりも比抵抗の小さい材料からなる補助電極23を備えている。
【0099】
(実施形態2)
以下、本実施形態の面状発光装置について
図11および
図12に基づいて説明する。
【0100】
本実施形態の面状発光装置の基本構成は実施形態1と略同じであり、有機EL素子モジュール部1の構造などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0101】
本実施形態における有機EL素子モジュール部1は、隣り合う有機EL素子10の一部同士が重ねて配置されている。具体的には、隣り合う有機EL素子10の陽極引出部12bが厚み方向において重なるように隣り合う有機EL素子10の一部(有機EL素子10の短手方向の端部であって発光部10aの外側の部分)同士を重ねてある。これにより、本実施形態の面状発光装置では、隣り合う有機EL素子10の重なりあった部分においてベース基板20から遠い陽極引出部12bは、厚み方向に連なる2つの第1貫通孔配線92を介して補助電極23と電気的に接続される。
【0102】
しかして、本実施形態の面状発光装置では、隣り合う有機EL素子10の一部同士が重ねて配置されているので、実施形態1に比べて、隣り合う有機EL素子10間に形成される非発光部の面積を小さくすることが可能となる。
【0103】
(実施形態3)
以下、本実施形態の面状発光装置について
図13に基づいて説明する。
【0104】
本実施形態の面状発光装置の基本構成は実施形態1と略同じであり、ベース基板20と保護部30におけるリヤプレート部31との間に介在する複数の柱状のスペーサ40を備えている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0105】
ところで、本実施形態の面状発光装置は、実施形態1と同様、第2の透光性基板21および保護部30それぞれにガラス基板を用いている。しかしながら、ガラス基板は、一般的に平面サイズが大きくなると撓み(反り)が生じやすくなる。このため、面状発光装置の大面積化を図った場合に、ベース基板20とリヤプレート部31との間に有機EL素子10を収納するスペースを確保できなくなったり、信頼性が低下するなどの問題が発生する可能性がある。
【0106】
これに対して、本実施形態の面状発光装置では、上述の複数の柱状のスペーサ40を備えていることにより、大面積化を図ることが可能となる。
【0107】
また、スペーサ40は、第1貫通孔82に挿通されている。しかして、本実施形態の面状発光装置では、スペーサ40に起因して発光部10aの面積が小さくなることはなく、スペーサ40に起因して非発光部の面積が大きくなることを防止することができる。スペーサ40の数は、第1貫通孔82の数と同じでもよいし、第1貫通孔82の数よりも少なくてもよい。要するに、スペーサ40の数や第1貫通孔82の数は、面状発光装置の平面サイズに応じて適宜設定すればよい。また、第2貫通孔84にもスペーサ40を挿通させるようにしてもよい。
【0108】
スペーサ40は、導電性材料により形成されたリジットなものを用いることが好ましい。この種の導電性材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀などを採用すればよい。スペーサ40は、第1貫通孔82もしくは第2貫通孔84に導電性ペーストを塗布する前に第1貫通孔82もしくは第2貫通孔84に挿通させてもよいし、第1貫通孔82もしくは第2貫通孔84に導電性ペーストを塗布してから、挿通させるようにしてもよい。
【0109】
ところで、実施形態2の面状発光装置において、本実施形態で説明したスペーサ40を設けてもよい。
【0110】
(実施形態4)
以下、本実施形態の面状発光装置について
図14〜
図16に基づいて説明する。
【0111】
本実施形態の面状発光装置の基本構成は実施形態3と略同じであり、スペーサ40の配置などが相違する。なお、実施形態3と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0112】
本実施形態における各スペーサ40は、第1貫通孔82、第2貫通孔84および発光部10aを避けた位置で第1の透光性基板11を貫通しベース基板20とリヤプレート部31との間に介在している。
【0113】
各スペーサ40は、ニードルピンにより構成してあり、リヤプレート部31側の先端部が尖頭状となっている。ここで、各スペーサ40は、
図17に示すように、ベース基板20に有機EL素子10を実装する前に、ベース基板20に設けてあり、有機EL素子10をベース基板20に実装する際に、有機EL素子10に貫通させるようにすればよい。これにより、各スペーサ40は、有機EL素子10をベース基板20に実装する際に、導電性ペーストが硬化するまで、有機EL素子10を仮保持する機能を有することとなる。
【0114】
なお、ベース基板20へのスペーサ40の固定方法としては、例えば、接着剤や絶縁性の両面テープなどを用いればよい。
【0115】
ところで、実施形態2の面状発光装置において、本実施形態で説明したスペーサ40を設けてもよい。
【0116】
(実施形態5)
以下、本実施形態の面状発光装置について
図18に基づいて説明する。
【0117】
本実施形態の面状発光装置の基本構成は実施形態1と略同じであり、複数個(図示例では、2個)の有機EL素子10が直列接続されている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0118】
ここにおいて、隣り合う有機EL素子10同士は、一方の有機EL素子10第1貫通孔配線92と他方の有機EL素子10の第2貫通孔配線94とが各有機EL素子10の上記一面側で導電性ペースト(例えば、銀ペーストなど)からなる接続部65により電気的に接続されている。接続部65は、他の接続部62,64と同じ材料により形成することが好ましい。
【0119】
また、接続部65は、ベース基板20において第2の透光性基板21の上記一表面上に形成された導体パターン25とも電気的に接続されている。これにより、有機EL素子10同士を電気的に接続している部分の抵抗を低減することが可能となる。
【0120】
導体パターン25は、各外部接続電極22,24と同じ材料により形成されている。また、導体パターン25は、厚さを、各外部接続電極22,24と同じ厚さに設定してあり、各外部接続電極22,24と同時に形成されている。
【0121】
ところで、実施形態1のように2個の有機EL素子10が並列接続されている場合、各有機EL素子10の陽極12の抵抗をそれぞれR1,R2とし、各有機EL素子10の有機EL層13の抵抗をそれぞれRd1,Rd2とすると、外部接続電極22,24間に直流電源Eを接続した場合の等価回路は、
図20に示すようになる。したがって、2個の有機EL素子10が並列接続されている場合は、各有機EL素子10にかかる電圧が等しくなるように各有機EL素子10に電流が流れるので、抵抗R1と抵抗R2とが異なっていたり、抵抗Rd1と抵抗Rd2とが異なっていると、一方の有機EL素子10に流れる電流I2と他方の有機EL素子10に流れる電流I3とに差が生じ、輝度むらの発生要因となる。なお、有機EL素子10の輝度は、流れる電流値に略比例する。
【0122】
これに対して、本実施形態のように2個の有機EL素子10が直列接続されている場合、外部接続電極22,24間に直流電源Eを接続した場合の等価回路は、
図19に示すようになる。ここで、抵抗Rは、直列接続されている2個の有機EL素子10の陽極12の合成抵抗である。したがって、2個の有機EL素子10が直列接続されている場合は、各有機EL素子10に流れる電流値が等しくなるので、輝度むらを低減することが可能となる。
【0123】
なお、本実施形態の面状発光装置においても、実施形態1で説明した補助電極23を適宜、設けてもよい。また、直列接続する有機EL素子10の個数は、2個に限定するものではない。また、実施形態3あるいは実施形態4で説明したスペーサ40を設けてもよい。
【0124】
(実施形態6)
以下、本実施形態の面状発光装置について
図21(a)に基づいて説明する。
【0125】
本実施形態の面状発光装置の基本構成は実施形態5と略同じであり、隣り合う有機EL素子10の一部同士が重ねて配置されている点などが相違する。なお、実施形態5と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0126】
本実施形態における有機EL素子モジュール部1は、隣り合う有機EL素子10のうちの一方の有機EL素子10の陽極引出部12bと、他方の有機EL素子10の陰極引出部14bとが厚み方向において重なるように、隣り合う有機EL素子10の一部(有機EL素子10の短手方向の端部であって発光部10aの外側の部分)同士を重ねてある。これにより、本実施形態の面状発光装置では、隣り合う有機EL素子10の重なりあった部分においてベース基板20から遠い陽極引出部12bは、厚み方向に連なる第1貫通孔配線92と第2貫通孔配線94とが電気的に接続され、第2貫通孔配線94が、接続部65を介して導体パターン25と電気的に接続されている。
【0127】
しかして、本実施形態の面状発光装置では、隣り合う有機EL素子10の一部同士が重ねて配置されているので、実施形態5に比べて、隣り合う有機EL素子10間に形成される非発光部の面積を小さくすることが可能となる。
【0128】
また、
図21(b)に示すような構成を採用してもよい。
図21(b)において、有機ELモジュールの複数個の有機EL素子10は、左側の有機EL素子10と、右側の有機EL素子10として区別される。左側の有機EL素子10は、第1の有機EL素子10として定義される。右側の有機EL素子10は、第2の有機EL素子10として定義される。
【0129】
すなわち、有機ELモジュールの複数個の有機EL素子10は、第1の有機EL素子と、第2の有機EL素子とを有している。第1の有機EL素子と前記第2の有機EL素子とは、隣り合って配置されている。第1の有機EL素子の一部は、前記第2の有機EL素子の一部と、前記第1の透光性基板11の厚み方向において重複している。
【0130】
また、第1の有機EL素子は、前記第2の有機EL素子と、前記第1の透光性基板11の厚み方向においてずれて配置されており、これにより、前記第1の有機EL素子の一部は、前記第2の有機EL素子の一部と、前記第1の透光性基板11の厚み方向において重複している。
【0131】
また、第1の有機EL素子の前記第1の透光性基板11は、第二面側を有しており、前記第二面側は、前記第一面側と反対側に位置している。第1の有機EL素子は、その前記第二面側の一端に、第1の切欠が設けられている。第2の有機EL素子は、その前記第一面側の一端に、第2の切欠が設けられている。前記第1の有機EL素子と前記第2の有機EL素子とは、前記第1の切欠が前記第2の切欠と重複するように、配置されている。
【0132】
そして、第1の有機EL素子の前記第1貫通孔82と前記第2の有機ELの前記第2貫通孔84と、前記第1の透光性基板11の厚み方向において位置あわせされている。
【0133】
このような構成でも、非発光部の面積を小さくすることが可能となる。
【0134】
なお、本実施形態の面状発光装置においても、実施形態1で説明した補助電極23を適宜、設けてもよい。また、直列接続する有機EL素子10の個数は、2個に限定するものではない。また、実施形態3あるいは実施形態4で説明したスペーサ40を設けてもよい。
【0135】
(実施形態7)
以下、本実施形態の面状発光装置について
図22(a)に基づいて説明する。
【0136】
本実施形態の面状発光装置の基本構成は実施形態1と略同じであり、第1貫通孔配線92および第2貫通孔配線94が、電解めっきにより形成された金属部により構成されている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0137】
第1貫通孔配線92を上述の金属部により構成する場合には、第1の透光性基板11の第1貫通孔82を、
図22(b)に示すように開口面積が徐々に変化するテーパ状の形状とすることが好ましい。
【0138】
本実施形態の面状発光装置では、第1貫通孔配線92において陽極引出部12bの表面からはみ出す量、第2貫通孔配線94において陰極引出部14bの表面からはみ出す量を低減することが可能となり、不要な短絡が起こるのを、より確実に抑制することが可能となる。また、これにより、本実施形態の面状発光装置では、隣り合う有機EL素子10の発光部10a間の距離を更に短くすることが可能となる。
【0139】
また、本実施形態の面状発光装置では、接続部62,64,65を、導電性ペーストではなく、異方性導電性フィルム(ACF)により構成してあるが、これに限らず、異方性導電性ペースト(ACP)により構成してもよい。異方性導電性フィルムや異方性導電性ペーストは、加圧方向のみに導通させることができる接着材料である。したがって、有機EL素子10をベース基板20に搭載して圧着させることにより、ベース基板20の厚み方向に沿った方向に導通させることが可能であり、横方向への導通が起こらないので、短絡不良の発生を抑制することが可能となる。
【0140】
(実施形態8)
以下、本実施形態の面状発光装置について
図23に基づいて説明する。
【0141】
本実施形態の面状発光装置の基本構成は実施形態5と略同じであり、保護部30を平板状のガラス基板により構成し、保護部30とベース基板20とを接合する接合部39をフリットガラスにより形成してある点などが相違する。なお、実施形態5と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0142】
また、本実施形態の面状発光装置は、有機EL素子10の上記他面側と保護部30との間に、有機EL素子10と保護部30とを接着する接着層35を介在させてある。しかして、有機EL素子10を安定して固定することが可能となる。ここで、接着層35は、有機EL素子10で発生した熱を保護部30側へ伝熱させる伝熱部としての機能も有している。なお、接着層35の材料としては、例えば、シリコーン樹脂やフッ素系樹脂、熱伝導グリースなどを採用することができる。
【0143】
本実施形態の面状発光装置では、有機EL素子10と保護部30との間に接着層35を設けてあるので、有機EL素子10で発生した熱を保護部30側へ効率良く放熱させることが可能となり、有機EL素子10の長寿命化を図れるとともに、高輝度化を図れる。
【0144】
また、本実施形態の面状発光装置では、保護部30とベース基板20とを接合する接合部39をフリットガラスにより形成してあるので、接合部39からのアウトガスを防止することができるとともに耐湿性を高めることができ、長期的な信頼性を高めることが可能となる。また、接合部39を熱硬化性樹脂などの樹脂材料により形成する場合には、気密性を確保するために3mm以上の封止代を設けることが好ましいが、本実施形態では、接合部39をフリットガラスにより形成してあるので、封止代を1mm程度にしながらも気密性を確保することができる。したがって、本実施形態の面状発光装置の正面視における非発光部の面積を低減することができる。
【0145】
なお、本実施形態の面状発光装置では、3個の有機EL素子10が直列接続されているが、直列接続する有機EL素子10の個数は特に限定するものではない。
【0146】
ところで、上記各実施形態それぞれの面状発光装置の製造時において、有機EL素子10をベース基板20に実装するにあたって、導電性ペーストなどによる電気的な接続を兼ねる接合を行う前に、アウトガスが少なくてアウトガスが有機EL素子10に与える影響が少ない接着剤や両面テープにより、有機EL素子10とベース基板20とを接合しておいてもよい。この場合、面状発光装置の意匠性を損なわないように、透明な接着剤や透明な両面テープを用いることが好ましい。また、有機EL素子10の発光部10aに重ならないような位置で接合することが好ましく、例えば、有機EL素子10の四隅とベース基板20とを接合したり、有機EL素子10の周部とベース基板20とを接合したりすればよい。
【0147】
上述の接合部39は、第2の透光性基板21と保護部30との間のスペーサとして機能するものであり、接合部39は、フリットガラスのみを用いて形成する場合に限らず、例えば、合金からなる枠部材と、当該枠部材における第2の透光性基板21および保護部30それぞれとの対向面に形成されたフリットガラスとを用いて形成してもよい。ここにおいて、枠部材の材料である合金としては、熱膨張係数が第2の透光性基板21および保護部30の熱膨張係数に近いコバール(Kovar)を用いることが好ましいが、コバールに限
らず、例えば、42合金などを用いてもよい。コバールは、鉄にニッケル、コバルトを配合した合金であり、常温付近での熱膨張係数が、金属の中で低いものの一つで、無アルカリガラス、青ソーダガラス、硼珪酸ガラスなどの熱膨張係数に近い値を有している。コバールの成分比の一例は、重量%で、ニッケル:29重量%、コバルト:17重量%、シリコン:0.2重量%、マンガン:0.3重量%、鉄:53.5重量%である。コバールの成分比は、特に限定するものではなく、コバールの熱膨張係数が、第2の透光性基板21および保護部30の熱膨張係数に揃うように適宜成分比のものを採用すればよい。また、この場合のフリットガラスとしては、熱膨張係数を合金の熱膨張係数に揃えることができる材料を採用することが好ましい。ここで、合金がコバールの場合には、フリットガラスの材料として、コバールガラスを用いることが好ましい。また、このような接合部39の形成にあたっては、例えば、コバールなどの合金からなる板材の厚み方向の両面に、フリットガラスを所定パターン(本実施形態では、矩形枠状のパターン)となるように塗布し、乾燥、焼成後、プレス抜き加工を行うことにより、接合部39を形成することができる。
【0148】
なお、実施形態1〜6,8で説明した導電性ペーストの代わりに、粒径が数μm〜数十μmの導電性ビーズを熱硬化性樹脂などのバインダーに分散させたものを用いれば、実施形態1〜6,8に比べて、第1貫通孔配線92および第2貫通孔配線94の低抵抗化を図ることが可能となるとともに、材料の使用効率の向上による低コスト化を図ることが可能となる。また、粒径が数μm〜数十μmの導電性ビーズを熱硬化性樹脂などのバインダーに分散させたものを用いた場合には、実施形態7のように第1貫通孔配線92および第2貫通孔配線94を電解めっきにより形成された金属部により構成する場合と比べても、材料の使用効率の向上による低コスト化を図ることが可能となる。
【0149】
なお、上記の各実施形態において、第1の透光性基板11は、フィルムでもよい。また、第1の透光性基板11は、第2の透光性基板21上に塗布された樹脂でもよい。
【0150】
また、上記の各実施形態において、有機EL素子10は、有機EL層13を有する。そして、有機EL層13は、陽極12、ホール輸送層133、発光層134、電子輸送層135、電子注入層136、陰極14を備えている。そして、陽極12,ホール輸送層133、発光層134、電子輸送層135、電子注入層136,陰極14が順に並べられている。しかしながら、有機EL素子10の構造は、上記実施形態の構造に限定されない。