特許第5706937号(P5706937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706937
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】建材及びその施工構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20150402BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   E04F15/02 E
   E04F15/02 A
   E04F15/10 104F
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-177171(P2013-177171)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-45182(P2015-45182A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2014年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 正康
(72)【発明者】
【氏名】河野 慎一
【審査官】 南澤 弘明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−322792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
E04F 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質樹脂からなる基材同士が軟質樹脂からなる雇い実により接合された建材の施工構造であって、
前記基材と前記雇い実との間には、固体潤滑剤が塗布されていることを特徴とする建材の施工構造。
【請求項2】
前記基材は裏面側に第1クッション層が設けられた床材であって、該床材の端面には凹部が形成されており、
前記雇い実は、隣接する前記床材の前記凹部にそれぞれ嵌合されて前記隣接する床材を接合する嵌合部を有し、
前記嵌合部は、前記隣接する前記床材のうちの一方の前記床材に接着され、
前記嵌合部と前記隣接する床材のうちの他方の床材との間には、固体潤滑剤が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の建材の施工構造。
【請求項3】
前記隣接する床材同士のそれぞれの裏面側の間には間隙が設けられており、
前記雇い実は、前記床材の凹部から前記間隙を通って前記床材の裏面側にまで跨がるように配置され、
前記雇い実の裏面側には、第2クッション層が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の建材の施工構造。
【請求項4】
前記固体潤滑剤は、グラファイトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建材の施工構造。
【請求項5】
軟質樹脂からなる雇い実により互いに接合される硬質樹脂からなる建材であって、
前記雇い実に嵌合されるための凹部を備え、
前記凹部の壁面には固体潤滑剤が塗布されていることを特徴とする建材。
【請求項6】
他の建材に形成された前記凹部に嵌合されるための前記雇い実が接着されていることを特徴とする請求項5に記載の建材。
【請求項7】
前記建材には、その裏面側に第1クッション層が設けられており、
前記雇い実は、前記建材の側面から裏面側にまで跨がるように配置され、
前記雇い実の裏面側には、第2クッション層が設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の建材。
【請求項8】
前記固体潤滑剤は、グラファイトであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材及びその施工構造に関し、特に、建材同士を接合するために雇い実を用いた建材及びその施工構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建築物における床面は、床下地の上に複数の床材を配設して施工されている。このとき、隣り合う床材同士は、例えば一方の床材の端面(側面)に形成された凸状の雄実を、他方の床材の端面に形成された凹状の雌実に嵌合させることにより接合されている。この他に、隣り合う床材同士の端面に凹状の雌実が形成され、それらの互いに対向する雌実に嵌合する雇い実を用いることにより、床材同士を接合させる方法等が知られている。
【0003】
近年では床材として、木質系の床材だけでなく、例えば熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の硬質合成樹脂板の表面に木質化粧層を設けたものがよく用いられている。さらに、その床材の裏面側には防音性等を向上し且つ良好な歩行感を得るためのクッション層が設けられている場合がある。このため、人の体重等により床材に鉛直方向の荷重が掛かると床材がわずかに沈むため、隣接する床材同士の接合部分に荷重が掛かることで、凸状の雄実や雇い実が折れたり、割れたり、傷付いたりする場合がある。そうすると、その接合部分に荷重が掛かる度に、上記折れや割れ等に起因して音が鳴るといった問題が生じる。
【0004】
この問題を解決するために、硬質樹脂材からなる床材同士を接合する雇い実を柔らかく弾性変形可能な軟質樹脂により構成することが考えられる。このような弾性変形可能な軟質樹脂からなる雇い実は、例えば特許文献1に提示されている。特許文献1に開示された雇い実を用いることにより、床材に荷重が掛かると共に雇い実に荷重が掛かったとしても、雇い実は弾性変形可能であるため、折れたり、割れたりすることはなく、音が鳴るといった問題は生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−248074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硬質樹脂からなる床材等の基材同士を、引用文献1に開示された弾性変形可能な軟質樹脂からなる雇い実を用いて互いに接合しようとする場合、例えば一方の基材に雇い実を接着剤等により接着して取り付けた後に、その雇い実の凸部をもう一方の基材の凹状の雌実に挿入しようとすると、切削等により形成された凹部の壁面の低い滑り性によって、その壁面に軟質樹脂からなる雇い実が引っかかり挿入できないおそれがある。また、雇い実を凹部に無理に押し込もうとすると、軟質樹脂からなる雇い実が弾性変形してしまうため、容易に凹部に挿入できない。
【0007】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軟質樹脂からなる雇い実を用いて、硬質樹脂からなる建材同士を容易に接合できるようにして、建材の施工性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、硬質樹脂材と軟質樹脂材との間に固体潤滑剤を塗布するようにした。
【0009】
具体的に、本発明に係る建材の施工構造は、硬質樹脂からなる基材同士が軟質樹脂からなる雇い実により接合された建材の施工構造であって、基材と雇い実との間には、固体潤滑剤が塗布されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る建材の施工構造によると、硬質樹脂からなる基材と軟質樹脂からなる雇い実との間に固体潤滑剤が塗布されているため、基材と雇い実との間の滑り性が向上し、基材同士を接合する際の施工性を向上できる。また、液体でなく固体潤滑剤を用いているため、基材同士の間から漏れ出して、基材表面に露出するおそれもなく、意匠性の劣化を防止できる。特に、本発明では、固体潤滑剤としてはグラファイトが好適に用いられる。
【0011】
本発明に係る建材の施工構造において、基材は裏面側に第1クッション層が設けられた床材であって、その床材の端面には凹部が形成されており、雇い実は、隣接する床材の凹部にそれぞれ嵌合する嵌合部を有し、嵌合部は、隣接する床材のうちの一方の床材に接着され、嵌合部と、隣接する床材のうちの他方の床材との間には、固体潤滑剤が塗布されていることが好ましい。
【0012】
このようにすると、雇い実の嵌合部と、隣接する床材のうち雇い実が接着されていない方の床材との間には、固体潤滑剤が塗布されているため、基材と雇い実との間の滑り性が向上するので、雇い実を上記床材の凹部に容易に挿入可能となり、基材同士を接合する際の施工性を向上できる。また、硬質樹脂からなる床材に鉛直方向の荷重が掛かり、隣接する床材同士の接合部分に荷重が掛かったとしても、床材同士を接合する雇い実が軟質樹脂からなるため、雇い実が割れたり、折れたりすることもなく、荷重が掛かる度にその折れや割れに起因した音が鳴ることはない。
【0013】
本発明に係る建材の施工構造において、隣接する床材同士のそれぞれの裏面側の間には間隙が設けられており、雇い実は、床材の凹部からその間隙を通って床材の裏面側にまで跨がるように配置され、雇い実の裏面側には、第2クッション層が設けられていることが好ましい。
【0014】
このようにすると、雇い実が床材の凹部だけでなく裏面に係合しているため、床材同士の接合をより強固にすることができ、さらに、雇い実の裏面側にもクッション層が設けられているため、雇い実が設けられた隣接する床材同士の接合部分のクッション性が悪化することを防止できる。
【0015】
また、本発明に係る建材は、軟質樹脂からなる雇い実により互いに接合される硬質樹脂からなる建材であって、雇い実に嵌合されるための凹部を備え、凹部の壁面には固体潤滑剤が塗布されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る建材によると、雇い実に嵌合されるための凹部の壁面には固体潤滑剤が塗布されているため、上記の通り、建材と雇い実との間の滑り性が向上し、建材同士を接合する際の施工性を向上できる。特に、本発明では、固体潤滑剤としてはグラファイトが好適に用いられる。
【0017】
また、本発明に係る建材において、他の建材に形成された凹部に嵌合されるための雇い実が接着されていてもよい。
【0018】
本発明に係る建材において、建材には、その裏面側に第1クッション層が設けられており、雇い実は、建材の側面から裏面側にまで跨がるように配置され、雇い実の裏面側には、第2クッション層が設けられていることが好ましい。
【0019】
このようにすると、雇い実が建材の側面だけでなく裏面にも跨がって係合しているため、建材同士を接合する際、その接合をより強固にすることができる。さらに、建材の裏面のみならず、雇い実の裏面側にもクッション層が設けられているため、雇い実が設けられた隣接する建材同士の接合部分のクッション性が悪化することを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る建材及びその施工構造によると、固体潤滑剤によって硬質樹脂からなる基材と軟質樹脂からなる雇い実との間の滑り性が向上し、基材同士を接合する際の施工性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る建材の施工構造を有する床材を施工した床面を示す平面図である。
図2】施工前の床材を示す断面図である。
図3】雇い実が接着された施工前の床材を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る建材の施工構造を有する、隣接する床材同士を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る建材の施工構造を有していない、隣接する床材同士を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る建材の施工構造を用いて床材が施工された床面1を示している。床面1は複数の床材10,20同士が互いに接合されることで構成されている。本実施形態に係る建材の施工構造は、特に、床材10,20同士を接合する構造である。なお、本実施形態では、建材として床材10,20を例として説明するが、他の建材にも適用することができる。
【0024】
本実施形態に係る施工構造が用いられた床材について図2を参照しながら説明する。図2は、上記床面を構成する一床材の断面図である。
【0025】
図2に示すように、硬質樹脂からなる床材10は、その表面に化粧層11が設けられている。本実施形態において、床材10の材料となる硬質樹脂としてABS樹脂が用いられている。但し、弾性変形し難い硬質樹脂であれば、これに限られず、例えばポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリアセタール樹脂及びポリカーボネート樹脂等を用いることもできる。また、本実施形態において、化粧層11として木質の化粧層を用いているが、これに限られず、例えば樹脂化粧紙、樹脂化粧シート等を用いることもできる。また、これら化粧層11の最表面には、化粧層を保護する目的で、透明塗膜層が設けられていてもよい。
【0026】
床材10の四つ全ての端面(側面)には、雌実となる凹部10aが形成されている。この凹部10aの壁面には固体潤滑剤としてグラファイト12が塗布されている。グラファイト12の塗布は、例えば鉛筆を用いて行うことができる。具体的に、鉛筆の芯の先を凹部に挿入し、凹部の壁面をなぞるようにして、グラファイト12を塗布することができる。グラファイト12を用いると、液体の潤滑剤よりも塗布が容易であり、凹部内から潤滑剤がはみ出て、床材10の表面に露出して意匠性を低減する恐れがない。なお、塗布の効率性の観点からHよりも柔らかい鉛筆を用いることが好ましく、特にB〜2Bの鉛筆を用いることが好ましい。このように、固体潤滑剤の塗布に鉛筆を用いる場合、床材10は、白色の硬質樹脂であることが好ましい。このようにすると、固体潤滑剤の塗布むらを容易に確認することができ、また、塗布忘れを防止することもできる。本実施形態では、固体潤滑剤としてグラファイト12を用いたが、これに限られず、カーボンブラック等も用いることができる。
【0027】
床材10の裏面側には、ポリウレタン発泡体からなる第1クッション層13が設けられている。具体的に、第1クッション層13は、接着剤により床材10の裏面側に接着されている。この第1クッション層13により、床材10のクッション性が向上し、歩行性及び防音性も良好となる。なお、第1クッション層13は、床材10の裏面全体に設けられてはおらず、後に説明する雇い実の鍔部が配置される裏面側周縁部を除く部分にのみ設けられている。本実施形態では、第1クッション層13として、ポリウレタン発泡体を用いたが、これに限られず、例えばポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体等の合成樹脂発泡体を用いることができる。さらに、これらのような合成樹脂発泡体の他に、ポリオレフィン系樹脂不織布、ポリエチレンテレフタレート系樹脂不織布、ポリエステル系樹脂不織布等の合成樹脂不織布を用いても構わない。
【0028】
また、本実施形態において、床材10の裏面側の端面は、表面側の端面と同等の位置になくわずかに内側(図2では左側)に位置する。これは、後に詳細に説明するが、施工後に隣接する床材同士の裏面側に雇い実の接続部が通るための間隙を設けるためである。
【0029】
次に、図2の床材に隣接する床材について図3を参照しながら説明する。図3は、図2の床材と隣接する床材を示し、特に図2の床材と対向する側を示す断面図である。
【0030】
図3に示すように、図2に示す床材10と隣接する床材20にも、表面側に化粧層21が設けられ、裏面側に第1クッション層23が設けられている。なお、第1クッション層23は、図2に示す床材10と同様に、床材20の裏面全体に設けられてはおらず、後に説明する雇い実の鍔部が配置される裏面側周縁部を除く部分にのみ設けられている。また、図2に示す床材10と同様に、床材20の裏面側の端面は、施工後に隣接する床材同士の裏面側に雇い実の接続部が通るための間隙を設けるために、表面側の端面と同等の位置になくわずかに内側(図3では右側)に位置する。
また、図2と同様に床材20の端面に凹部20aが形成されているが、その凹部20aに雇い実30が接着されていることが異なる。この雇い実30は、弾性変形が可能な軟質樹脂からなる。本実施形態では、軟質樹脂としてスチレンエラストマーを用いているが、弾性変形が可能な軟質樹脂であればこれに限られず、種々のエラストマー系樹脂を用いることができる。また、例えばブチルゴム、シリコーンゴム及びクロロプレンゴム等を用いることもできるが、長期の使用を想定した場合は、エラストマー系の樹脂が最も好適に用いられる。
【0031】
本実施形態における雇い実30は、その断面形状が略H状であり、床材20の凹部20aから裏面側にまで跨がるように設けられている。具体的に、雇い実30は、床材20の凹部20aにその一端側が嵌合された嵌合部30a、床材20の裏面に一端側が係合された鍔部30b、及び嵌合部30aと鍔部30bとをつなぐ接続部30cにより構成されている。
また、鍔部30bの裏面側には、ポリウレタン発泡体からなる第2クッション層31が接着剤により接着されている。第2クッション層31は、第1クッション層23と同様にその材料はポリウレタン発泡体に限られず、上記合成樹脂発泡体及び合成樹脂不織布等を用いることができる。また、第2クッション層31の厚さは、その裏面が第1クッション層23の裏面と略面一となるような厚さである。すなわち、鍔部30bの厚さと第2クッション層31の厚さとの合計厚さが第1クッション層23の厚さと同等となるように構成されている。このようにすることで、床材20の裏面側に凹凸が生じず、床面全体のクッション性を均一にすることができる。
【0032】
雇い実30は、上記の通り床材20に接着されており、具体的に、本実施形態では雇い実30の嵌合部30aの一端側と床材20の凹部20aの壁面とが接着剤(図示せず)により接着されている。用いる接着剤は、雇い実30の材料に従って適当な接着剤を決定すればよく、本実施形態ではシアノアクリレート系接着剤を用いている。この他にも、例えば、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、スチレン樹脂系接着剤、水性ビニルウレタン系接着剤、ウレタン系接着剤やエチレン樹脂系接着剤等を適宜選択して用いることができる。本実施形態では、床材20と雇い実30との接着は、まず雇い実30を設ける床材20の端面の凹部20a、例えば床材20の四辺のうち一つの長辺部分及び一つの短辺部分に係る端面に形成された凹部20aの壁面に接着剤を塗布する。その後、雇い実30の嵌合部30aの一端側を凹部20aに挿入して、その挿入された部分と凹部20aの接着剤が塗布された壁面とを貼り合わせることにより、雇い実30が床材20に接着される。なお、本実施形態では、雇い実30の嵌合部30aの一端側と床材20の凹部20aの壁面とが接着されているが、これに限られず、例えば雇い実30の鍔部30bの一端側と床材20の裏面とが接着されていてもよいし、それらの両方で接着されていてもよい。
【0033】
次に、図2及び図3で示したそれぞれ隣接する床材を接合した状態について、図4を参照しながら説明する。図4は本実施形態に係る建材の施工構造を有する、隣接する床材同士を示す断面図である。
【0034】
図4に示すように、施工後の隣接する床材10,20は、雇い実30により互いに接合されている。このとき、床材20の凹部20aに一端側が接着された嵌合部30aの他端側が床材10の凹部10aに嵌合しており、接続部30cが上述した床材10,20のそれぞれの裏面同士の間隙を通り、鍔部30bが床材10,20の裏面と係合している。鍔部30bは、床材10,20の裏面側に設けられた第1クッション層13,23同士の間隙を埋めるように配置される。また、上述の通り、鍔部30bの裏面側には第2クッション層31が設けられており、第2クッション層31の裏面と第1クッション層13,23の裏面が面一となっている。このため、全体として床面1の裏面側に凹凸が生じない構成となっており、床面1の全体のクッション性が均一となっている。
【0035】
本実施形態では、図2に示す床材10の端面と、図3に示す雇い実30が接着された床材20の端面とを対向させて配置し、雇い実30の嵌合部30aが床材10の凹部10aに挿入されるように床材20を床材10側に押し込むことにより、凹部10aに嵌合部30aが嵌合されて、隣接する床材10,20同士が互いに接合される。
図4に示すように、本実施形態では、硬質樹脂からなる床材10と軟質樹脂からなる雇い実30との間には、グラファイトが塗布されている。このため、施工時、すなわち嵌合部30aを凹部10aに挿入する際に、嵌合部30aが凹部10aの壁面に引っかかることなく容易に挿入することができる。
【0036】
ここで、本実施形態との比較のために、凹部10aの壁面にグラファイトが塗布されていない場合について図5を参照しながら説明する。この場合、凹部10aの壁面の滑り性が悪いため、図5に示すように、雇い実30の嵌合部30aを床材10の凹部10aに挿入するとき、嵌合部30aが凹部10aの壁面に引っかかり、無理に押し込もうとすると、嵌合部30aが弾性変形し、凹部10aに容易に挿入することができない。すなわち、グラファイトが塗布されない場合、塗布した場合と比較して、床材の施工性が悪いといえる。
【0037】
このように、本実施形態では、硬質樹脂からなる床材10と軟質樹脂からなる雇い実30との間に、グラファイトが塗布されているため、それらの間の滑り性を向上して、施工性が良好となる。なお、本実施形態では、床材10の凹部10aにグラファイト12を塗布したが、雇い実30の嵌合部30a側にグラファイト12を塗布しても構わない。
【0038】
また、本実施形態では、上記のように断面略H状の雇い実30を用いて、隣接する床材10,20を接合する形態について説明したが、これに限られず、例えば嵌合部30aのみを有する断面略四角形状の雇い実を用いても構わない。この場合、雇い実は床材10,20の裏面側には配置されないため、第2クッション層31は設けられず、第1クッション層13,23が床材10,20の裏面側の全面に設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る建材の施工構造は、基材と雇い実との間の滑り性を向上でき、基材同士を接合する際の施工性を向上でき、特に軟質樹脂からなる雇い実を用いた建材の施工構造に有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 床面
10,20 床材
10a,20a 凹部
11,21 化粧層
12 グラファイト(固体潤滑剤)
13,23 第1クッション層
30 雇い実
30a 嵌合部
30b 鍔部
30c 接続部
31 第2クッション層
図1
図2
図3
図4
図5