【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の橋梁構造は、上部構造と、当該上部構造を支持する複数の橋脚とを備えた橋梁構造であって、
前記複数の橋脚が、前記上部構造から少なくとも鉛直荷重を支持する主橋脚と、前記上部構造から作用する水平荷重のみを支持する水平支持橋脚とを含んで構成されていることを特徴としている。
【0010】
前記構成の橋梁構造によれば、上部構造を支持する複数の橋脚のうち、前記上部構造から作用する荷重のうち、主橋脚が少なくとも鉛直荷重を支持する一方、水平支持橋脚が水平荷重のみを支持する。したがって、主橋脚が支持する水平荷重を効果的に軽減できる。地震時では、水平支持橋脚が上部構造から水平荷重を受けて変形することによって地震動のエネルギーを散逸させ、上部構造から主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できる。したがって、主橋脚は、上部構造から作用する鉛直荷重を安定して保持することができ、その結果、上部構造の落下を防止することができる。ここで、主橋脚は、地震時に上部構造から作用する水平荷重が軽減されるので、水平支持橋脚を有しない橋梁の橋脚と比較して、保有すべき耐力が少なくてよいから、構造を簡易にできる。また、水平支持橋脚は、水平荷重のみを支持すればよいので、比較的簡易な構造にできる。その結果、主橋脚及び水平支持橋脚を有する橋梁の建設費用を効果的に抑えることができる。また、本発明の橋梁構造は、水平支持橋脚で水平荷重を減衰させることにより、主橋脚に作用する水平荷重を低減するので、高減衰積層ゴムを用いた免震支承のような経年劣化が少ない。また、水平支持橋脚は水平荷重のみを支持するので、鉛プラグや高減衰積層ゴムを用いた免震支承よりも損傷し難く、地震に伴う交換頻度が低い。したがって、免震支承を用いた橋梁よりも、メンテナンスの手間と費用を低廉にできる。
【0011】
前記構成の橋梁構造は、新設の橋梁に適用してもよく、また、既存の橋梁に適用してもよいが、既存の橋梁に適用する場合は、次のような効果が得られる。すなわち、上部構造の拡幅や関連法規の改正等に伴って橋梁の補強を行う場合、既存の橋梁の橋脚を本発明の主橋脚とし、既存の橋脚の間に水平支持橋脚を設置することにより、主橋脚が支持すべき水平荷重を、既存の橋脚が支持していた水平荷重と同等又はそれ以下にできる。したがって、既存の橋脚に対する補強を軽減でき、或いは、不要にできるので、橋梁の補強工事の容易化と低コスト化を図ることができる。
【0012】
一実施形態の橋梁構造は、前記主橋脚は、鉛直荷重及び水平荷重の両方を支持する。
【0013】
前記実施形態によれば、上部構造から橋脚に作用する水平荷重のうち、主橋脚が支持する水平荷重が、水平支持橋脚によって軽減される。したがって、地震時において、上部構造から主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できるので、主橋脚が備えるべき強度を従来の橋脚よりも軽減できる。
【0014】
一実施形態の橋梁構造は、前記主橋脚は、鉛直荷重のみを支持する。
【0015】
前記実施形態によれば、上部構造から橋脚に作用する水平荷重が水平支持橋脚に支持されるので、特に地震時において、上部構造から主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できる。したがって、主橋脚が備えるべき強度を従来の橋脚よりも効果的に軽減できる。
【0016】
一実施形態の橋梁構造は、前記主橋脚は、鉛直荷重及び水平荷重の両方を支持する第1主橋脚と、鉛直荷重のみを支持する第2主橋脚とを含む。
【0017】
前記実施形態によれば、上部構造から橋脚に作用する水平荷重のうち、第1主橋脚が支持する水平荷重が、水平支持橋脚によって軽減される。したがって、地震時において、上部構造から第1主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できるので、第1主橋脚が備えるべき強度を従来の橋脚よりも効果的に軽減できる。また、第2主橋脚は水平荷重を支持しないので、第2主橋脚が備えるべき強度を従来の橋脚よりも大幅に軽減できる。
【0018】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平支持橋脚は、降伏水平耐力が前記主橋脚の降伏水平耐力よりも小さく形成されている。
【0019】
前記実施形態によれば、水平支持橋脚は、降伏水平耐力が主橋脚の降伏水平耐力よりも小さいので、地震時に上部構造から受ける水平荷重により、主橋脚よりも先に降伏する。したがって、降伏の後に水平荷重を受けることに伴う履歴減衰作用により、上部構造から主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できる。
【0020】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平支持橋脚が水平荷重のみを受けて使用限界状態に達するときに、前記主橋脚は少なくとも鉛直荷重を支持可能に形成されている。
【0021】
前記実施形態によれば、地震時において、水平支持橋脚が水平荷重を受けて使用限界状態に達したときにおいても、主橋脚は、少なくとも鉛直荷重を支持可能に形成されている。これにより、地震力を受けても、主橋脚は使用可能な状態に留まるので、上部構造の落下を防止でき、例えば緊急車両等の通行に供することができる。ここで、使用限界状態とは、ISO2394「構造物の信頼性に関する一般原則」で定められる限界状態をいう。
【0022】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平支持橋脚と上部構造との間に、鉛直荷重を伝達しない一方、水平荷重を伝達する水平荷重伝達機構を備える。
【0023】
前記実施形態によれば、水平荷重伝達機構により、上部構造から水平支持橋脚へ効果的に水平荷重のみを伝達できる。
【0024】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平荷重伝達機構は、前記水平支持橋脚及び前記上部構造のうちの一方に設置されて概ね鉛直方向に延在する鉛直部材と、当該鉛直部材の周囲を取り囲むように前記水平支持橋脚及び前記上部構造のうちの他方に配置された接触部材とを有し、前記鉛直部材と前記接触部材との間に水平方向の相対変位が生じたときに、前記鉛直部材と前記接触部材とが接触可能に形成されている。
【0025】
前記実施形態によれば、水平支持橋脚及び上部構造のうちの一方に設けた鉛直部材と、水平支持橋脚及び上部構造のうちの他方に設けた接触部材とを接触可能に形成するという簡易な構成により、上部構造から水平支持橋脚へ効果的に水平荷重のみを伝達する水平荷重伝達機構を形成できる。
【0026】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平荷重伝達機構は、前記水平支持橋脚及び上部構造のうちの一方に設置され、概ね鉛直方向に没入した凹部を有する凹部材と、前記水平支持橋脚及び上部構造のうちの他方に設置され、前記凹部材の凹部内に収容される凸部を有する凸部材とを有し、前記凸部材と凹部材との間に水平方向の相対変位が生じたときに、前記凸部材の凸部と前記凹部材の凹部とが係合可能に形成されている。
【0027】
前記実施形態によれば、水平支持橋脚及び上部構造のうちの一方に設けた凹部と、前記水平支持橋脚及び上部構造のうちの他方に設けた凸部とを係合可能に形成するという簡易な構成により、上部構造から水平支持橋脚へ効果的に水平荷重のみを伝達する水平荷重伝達機構を形成できる。
【0028】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平支持橋脚は、複数の柱部材と、隣り合う前記柱部材の間に架け渡された横つなぎ材と、当該横つなぎ材に設けられた減衰機構とを有する。
【0029】
前記実施形態によれば、地震時において上部構造から水平支持橋脚に水平荷重が作用すると、複数の柱部材及び横つなぎ材が変形する。このとき、横つなぎ材の減衰機構によって地震動のエネルギーが散逸するので、上部構造から主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できる。
【0030】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平支持橋脚は、前記上部構造の下方に位置する梁を有し、前記上部構造が鉛直方向に変位したときに前記梁で前記上部構造を支持して、前記上部構造の落下を防止するように形成されている。
【0031】
前記実施形態によれば、水平支持橋脚は、上部構造の下方に位置する梁を有し、この梁により、上部構造が鉛直方向に変位したときに、この上部構造を支持するように形成されている。すなわち、橋梁構造に、想定を超えた地震動が作用し、上部構造と水平支持橋脚との間に想定を超える鉛直方向の相対変位が生じ、水平支持橋脚が上部構造から水平荷重を受けて変形することによる地震動のエネルギー散逸機能が実質的に停止した場合、上記梁によって上部構造が緊急的に支持され、上部構造の落下が防止される。したがって、本実施形態によれば、地震動が想定を超える場合においても、上部構造の落下に対するフェールセーフを実現することができる。
【0032】
本発明の既存橋梁の補強方法は、上部構造と、当該上部構造を支持して少なくとも鉛直荷重を支持する複数の既存橋脚とを有する既存橋梁を補強する方法であって、
前記複数の既存橋脚の間に、前記上部構造からの水平荷重のみを支持する水平支持橋脚を設置することを特徴としている。
【0033】
前記構成の既存橋梁の補強方法によれば、既存橋梁の複数の既存橋脚の間に、上部構造からの水平荷重のみを支持する水平支持橋脚を設置する。この水平支持橋脚は、上部構造からの水平荷重のみを支持すればよいので、既存橋脚よりも簡易な構造を採用できる。したがって、比較的低廉なコストで既存橋梁を補強することができる。こうして補強された既存橋梁は、上部構造から作用する荷重のうち、既存橋脚が少なくとも鉛直荷重を支持する一方、水平支持橋脚が水平荷重のみを支持する。したがって、既存橋脚が支持する水平荷重を効果的に軽減できる。地震時では、水平支持橋脚が上部構造から水平荷重を受けて変形することにより、上部構造から既存橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できる。したがって、既存橋脚は、上部構造からの鉛直荷重を安定して保持することができ、その結果、上部構造の落下を効果的に防止できる。
【0034】
一実施形態の既存橋梁の補強方法は、前記上部構造と前記水平支持橋脚の間に、互いの間に鉛直荷重を伝達しない一方、水平荷重を伝達する水平荷重伝達機構を設置する。
【0035】
前記実施形態によれば、水平荷重伝達機構により、上部構造から水平支持橋脚へ効果的に水平荷重のみを伝達できる。