特許第5706952号(P5706952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5706952
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】橋梁構造及び既存橋梁の補強方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/02 20060101AFI20150402BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   E01D19/02
   E01D22/00 B
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-233050(P2013-233050)
(22)【出願日】2013年11月11日
【審査請求日】2014年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】金治 英貞
(72)【発明者】
【氏名】篠原 聖二
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−231503(JP,A)
【文献】 特開2002−227127(JP,A)
【文献】 特開2004−270168(JP,A)
【文献】 特開2008−303530(JP,A)
【文献】 特開平2−304106(JP,A)
【文献】 特開2008−267043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/02
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造と、当該上部構造を支持する複数の橋脚とを備えた橋梁構造であって、
前記複数の橋脚が、前記上部構造から少なくとも鉛直荷重を支持する主橋脚と、前記上部構造から作用する水平荷重のみを支持する水平支持橋脚とを含んで構成されていることを特徴とする橋梁構造。
【請求項2】
請求項1に記載の橋梁構造において、
前記主橋脚は、鉛直荷重及び水平荷重の両方を支持することを特徴とする橋梁構造。
【請求項3】
請求項1に記載の橋梁構造において、
前記主橋脚は、鉛直荷重のみを支持することを特徴とする橋梁構造。
【請求項4】
請求項1に記載の橋梁構造において、
前記主橋脚は、鉛直荷重及び水平荷重の両方を支持する第1主橋脚と、鉛直荷重のみを支持する第2主橋脚とを含むことを特徴とする橋梁構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の橋梁構造において、
前記水平支持橋脚は、降伏水平耐力が前記主橋脚の降伏水平耐力よりも小さく形成されていることを特徴とする橋梁構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の橋梁構造において、
前記水平支持橋脚が水平荷重のみを受けて使用限界状態に達するときに、前記主橋脚は少なくとも鉛直荷重を支持可能に形成されていることを特徴とする橋梁構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の橋梁構造において、
前記水平支持橋脚と上部構造との間に、鉛直荷重を伝達しない一方、水平荷重を伝達する水平荷重伝達機構を備えることを特徴とする橋梁構造。
【請求項8】
請求項7に記載の橋梁構造において、
前記水平荷重伝達機構は、前記水平支持橋脚及び前記上部構造のうちの一方に設置されて概ね鉛直方向に延在する鉛直部材と、当該鉛直部材の周囲を取り囲むように前記水平支持橋脚及び前記上部構造のうちの他方に配置された接触部材とを有し、前記鉛直部材と前記接触部材との間に水平方向の相対変位が生じたときに、前記鉛直部材と前記接触部材とが接触可能に形成されていることを特徴とする橋梁構造。
【請求項9】
請求項7に記載の橋梁構造において、
前記水平荷重伝達機構は、前記水平支持橋脚及び上部構造のうちの一方に設置され、概ね鉛直方向に没入した凹部を有する凹部材と、前記水平支持橋脚及び上部構造のうちの他方に設置され、前記凹部材の凹部内に収容される凸部を有する凸部材とを有し、前記凸部材と凹部材との間に水平方向の相対変位が生じたときに、前記凸部材の凸部と前記凹部材の凹部とが係合可能に形成されていることを特徴とする橋梁構造。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の橋梁構造において、
前記水平支持橋脚は、複数の柱部材と、隣り合う前記柱部材の間に架け渡された横つなぎ材と、当該横つなぎ材に設けられた減衰機構とを有することを特徴とする橋梁構造。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の橋梁構造において、
前記水平支持橋脚は、前記上部構造の下方に位置する梁を有し、前記上部構造が鉛直方向に変位したときに前記梁で前記上部構造を支持して、前記上部構造の落下を防止するように形成されていることを特徴とする橋梁構造。
【請求項12】
上部構造と、当該上部構造を支持して少なくとも鉛直荷重を支持する複数の既存橋脚とを有する既存橋梁を補強する方法であって、
前記複数の既存橋脚の間に、前記上部構造からの水平荷重のみを支持する水平支持橋脚を設置することを特徴とする既存橋梁の補強方法。
【請求項13】
請求項12に記載の既存橋梁の補強方法において、
前記上部構造と前記水平支持橋脚の間に、互いの間に鉛直荷重を伝達しない一方、水平荷重を伝達する水平荷重伝達機構を設置することを特徴とする既存橋梁の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高架橋等に適用される橋梁構造及び既存橋梁の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市高速道路等に設置される高架橋では、交通量の増加に伴う車線の追加又は拡幅、交通量の増大、又は、関連法規の改正等により、既存の橋梁に作用する活荷重や地震荷重や自重の増大が見込まれる場合がある。このような荷重の増大に対応するために、橋梁の補強が行われる。
【0003】
従来、橋梁の荷重の増大に対応する補強方法としては、例えばRC橋脚の場合、橋脚の外周に鋼板を巻き立てる方法や、増杭を行う方法や、既存の橋脚と同等の橋脚を追加する方法等がある。いずれの補強方法においても、全ての橋脚に支承を設置し、支承を介して上部構造からの鉛直荷重と水平荷重を受け持つように形成される。
【0004】
ところで、地震による橋梁の被害を低減するために、鉛プラグを内蔵した積層ゴムや高減衰積層ゴム等を用いた免震支承が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。このような免震支承は、鉛プラグの降伏や高減衰積層ゴムの変形により、上部構造から下部構造に伝達する水平力を低減するように形成されている。免震支承は、前述のような既存の橋梁の補強を行う場合のほか、新築の橋梁の耐震性能を高めるために採用される。また、前記免震支承のほか、滑り支承が採用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−335052号公報
【特許文献2】特開平7−97827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記橋脚の外周に鋼板を巻き立てる補強方法及び増杭を行う補強方法は、橋脚と基礎の耐力を増大させて荷重の増大に対応するものであり、既存の橋脚と同等の橋脚を追加する補強方法は、増大する荷重を複数の橋脚に分散させて受け持たせ、橋脚1基あたりに作用する荷重を減少させるものである。しかしながら、いずれの補強方法も、全ての橋脚は、上部構造からの鉛直荷重と水平荷重が作用するので、互いに同等の構造に形成する必要がある。また、橋脚の補強に伴い、当該橋脚の基礎の補強も必要となることがある。したがって、橋梁の補強工事に関する手間とコストが増大する問題がある。
【0007】
また、前記免震支承は、メンテナンスの手間と費用がかかり、特に、高減衰積層ゴムを用いた免震支承は、ゴムの経年劣化が生じるので一定期間毎に積層ゴム部品の交換が必要となる問題がある。また、前記免震支承は、鉛直荷重と水平荷重の両方を支持するので、地震に伴って損傷しやすく、地震に伴う交換頻度が高い問題がある。また、前記免震支承を既存の橋梁に適用する場合、既存の支承を免震支承に交換するために上部構造の受け替えが必要となるので、工事の手間と費用がかかる問題がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、比較的低いコストで耐震性を確保でき、また、メンテナンスの手間と費用の少ない橋梁構造と、適用の手間とコストが比較的少ない既存橋梁の補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の橋梁構造は、上部構造と、当該上部構造を支持する複数の橋脚とを備えた橋梁構造であって、
前記複数の橋脚が、前記上部構造から少なくとも鉛直荷重を支持する主橋脚と、前記上部構造から作用する水平荷重のみを支持する水平支持橋脚とを含んで構成されていることを特徴としている。
【0010】
前記構成の橋梁構造によれば、上部構造を支持する複数の橋脚のうち、前記上部構造から作用する荷重のうち、主橋脚が少なくとも鉛直荷重を支持する一方、水平支持橋脚が水平荷重のみを支持する。したがって、主橋脚が支持する水平荷重を効果的に軽減できる。地震時では、水平支持橋脚が上部構造から水平荷重を受けて変形することによって地震動のエネルギーを散逸させ、上部構造から主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できる。したがって、主橋脚は、上部構造から作用する鉛直荷重を安定して保持することができ、その結果、上部構造の落下を防止することができる。ここで、主橋脚は、地震時に上部構造から作用する水平荷重が軽減されるので、水平支持橋脚を有しない橋梁の橋脚と比較して、保有すべき耐力が少なくてよいから、構造を簡易にできる。また、水平支持橋脚は、水平荷重のみを支持すればよいので、比較的簡易な構造にできる。その結果、主橋脚及び水平支持橋脚を有する橋梁の建設費用を効果的に抑えることができる。また、本発明の橋梁構造は、水平支持橋脚で水平荷重を減衰させることにより、主橋脚に作用する水平荷重を低減するので、高減衰積層ゴムを用いた免震支承のような経年劣化が少ない。また、水平支持橋脚は水平荷重のみを支持するので、鉛プラグや高減衰積層ゴムを用いた免震支承よりも損傷し難く、地震に伴う交換頻度が低い。したがって、免震支承を用いた橋梁よりも、メンテナンスの手間と費用を低廉にできる。
【0011】
前記構成の橋梁構造は、新設の橋梁に適用してもよく、また、既存の橋梁に適用してもよいが、既存の橋梁に適用する場合は、次のような効果が得られる。すなわち、上部構造の拡幅や関連法規の改正等に伴って橋梁の補強を行う場合、既存の橋梁の橋脚を本発明の主橋脚とし、既存の橋脚の間に水平支持橋脚を設置することにより、主橋脚が支持すべき水平荷重を、既存の橋脚が支持していた水平荷重と同等又はそれ以下にできる。したがって、既存の橋脚に対する補強を軽減でき、或いは、不要にできるので、橋梁の補強工事の容易化と低コスト化を図ることができる。
【0012】
一実施形態の橋梁構造は、前記主橋脚は、鉛直荷重及び水平荷重の両方を支持する。
【0013】
前記実施形態によれば、上部構造から橋脚に作用する水平荷重のうち、主橋脚が支持する水平荷重が、水平支持橋脚によって軽減される。したがって、地震時において、上部構造から主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できるので、主橋脚が備えるべき強度を従来の橋脚よりも軽減できる。
【0014】
一実施形態の橋梁構造は、前記主橋脚は、鉛直荷重のみを支持する。
【0015】
前記実施形態によれば、上部構造から橋脚に作用する水平荷重が水平支持橋脚に支持されるので、特に地震時において、上部構造から主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できる。したがって、主橋脚が備えるべき強度を従来の橋脚よりも効果的に軽減できる。
【0016】
一実施形態の橋梁構造は、前記主橋脚は、鉛直荷重及び水平荷重の両方を支持する第1主橋脚と、鉛直荷重のみを支持する第2主橋脚とを含む。
【0017】
前記実施形態によれば、上部構造から橋脚に作用する水平荷重のうち、第1主橋脚が支持する水平荷重が、水平支持橋脚によって軽減される。したがって、地震時において、上部構造から第1主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できるので、第1主橋脚が備えるべき強度を従来の橋脚よりも効果的に軽減できる。また、第2主橋脚は水平荷重を支持しないので、第2主橋脚が備えるべき強度を従来の橋脚よりも大幅に軽減できる。
【0018】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平支持橋脚は、降伏水平耐力が前記主橋脚の降伏水平耐力よりも小さく形成されている。
【0019】
前記実施形態によれば、水平支持橋脚は、降伏水平耐力が主橋脚の降伏水平耐力よりも小さいので、地震時に上部構造から受ける水平荷重により、主橋脚よりも先に降伏する。したがって、降伏の後に水平荷重を受けることに伴う履歴減衰作用により、上部構造から主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できる。
【0020】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平支持橋脚が水平荷重のみを受けて使用限界状態に達するときに、前記主橋脚は少なくとも鉛直荷重を支持可能に形成されている。
【0021】
前記実施形態によれば、地震時において、水平支持橋脚が水平荷重を受けて使用限界状態に達したときにおいても、主橋脚は、少なくとも鉛直荷重を支持可能に形成されている。これにより、地震力を受けても、主橋脚は使用可能な状態に留まるので、上部構造の落下を防止でき、例えば緊急車両等の通行に供することができる。ここで、使用限界状態とは、ISO2394「構造物の信頼性に関する一般原則」で定められる限界状態をいう。
【0022】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平支持橋脚と上部構造との間に、鉛直荷重を伝達しない一方、水平荷重を伝達する水平荷重伝達機構を備える。
【0023】
前記実施形態によれば、水平荷重伝達機構により、上部構造から水平支持橋脚へ効果的に水平荷重のみを伝達できる。
【0024】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平荷重伝達機構は、前記水平支持橋脚及び前記上部構造のうちの一方に設置されて概ね鉛直方向に延在する鉛直部材と、当該鉛直部材の周囲を取り囲むように前記水平支持橋脚及び前記上部構造のうちの他方に配置された接触部材とを有し、前記鉛直部材と前記接触部材との間に水平方向の相対変位が生じたときに、前記鉛直部材と前記接触部材とが接触可能に形成されている。
【0025】
前記実施形態によれば、水平支持橋脚及び上部構造のうちの一方に設けた鉛直部材と、水平支持橋脚及び上部構造のうちの他方に設けた接触部材とを接触可能に形成するという簡易な構成により、上部構造から水平支持橋脚へ効果的に水平荷重のみを伝達する水平荷重伝達機構を形成できる。
【0026】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平荷重伝達機構は、前記水平支持橋脚及び上部構造のうちの一方に設置され、概ね鉛直方向に没入した凹部を有する凹部材と、前記水平支持橋脚及び上部構造のうちの他方に設置され、前記凹部材の凹部内に収容される凸部を有する凸部材とを有し、前記凸部材と凹部材との間に水平方向の相対変位が生じたときに、前記凸部材の凸部と前記凹部材の凹部とが係合可能に形成されている。
【0027】
前記実施形態によれば、水平支持橋脚及び上部構造のうちの一方に設けた凹部と、前記水平支持橋脚及び上部構造のうちの他方に設けた凸部とを係合可能に形成するという簡易な構成により、上部構造から水平支持橋脚へ効果的に水平荷重のみを伝達する水平荷重伝達機構を形成できる。
【0028】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平支持橋脚は、複数の柱部材と、隣り合う前記柱部材の間に架け渡された横つなぎ材と、当該横つなぎ材に設けられた減衰機構とを有する。
【0029】
前記実施形態によれば、地震時において上部構造から水平支持橋脚に水平荷重が作用すると、複数の柱部材及び横つなぎ材が変形する。このとき、横つなぎ材の減衰機構によって地震動のエネルギーが散逸するので、上部構造から主橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できる。
【0030】
一実施形態の橋梁構造は、前記水平支持橋脚は、前記上部構造の下方に位置する梁を有し、前記上部構造が鉛直方向に変位したときに前記梁で前記上部構造を支持して、前記上部構造の落下を防止するように形成されている。
【0031】
前記実施形態によれば、水平支持橋脚は、上部構造の下方に位置する梁を有し、この梁により、上部構造が鉛直方向に変位したときに、この上部構造を支持するように形成されている。すなわち、橋梁構造に、想定を超えた地震動が作用し、上部構造と水平支持橋脚との間に想定を超える鉛直方向の相対変位が生じ、水平支持橋脚が上部構造から水平荷重を受けて変形することによる地震動のエネルギー散逸機能が実質的に停止した場合、上記梁によって上部構造が緊急的に支持され、上部構造の落下が防止される。したがって、本実施形態によれば、地震動が想定を超える場合においても、上部構造の落下に対するフェールセーフを実現することができる。
【0032】
本発明の既存橋梁の補強方法は、上部構造と、当該上部構造を支持して少なくとも鉛直荷重を支持する複数の既存橋脚とを有する既存橋梁を補強する方法であって、
前記複数の既存橋脚の間に、前記上部構造からの水平荷重のみを支持する水平支持橋脚を設置することを特徴としている。
【0033】
前記構成の既存橋梁の補強方法によれば、既存橋梁の複数の既存橋脚の間に、上部構造からの水平荷重のみを支持する水平支持橋脚を設置する。この水平支持橋脚は、上部構造からの水平荷重のみを支持すればよいので、既存橋脚よりも簡易な構造を採用できる。したがって、比較的低廉なコストで既存橋梁を補強することができる。こうして補強された既存橋梁は、上部構造から作用する荷重のうち、既存橋脚が少なくとも鉛直荷重を支持する一方、水平支持橋脚が水平荷重のみを支持する。したがって、既存橋脚が支持する水平荷重を効果的に軽減できる。地震時では、水平支持橋脚が上部構造から水平荷重を受けて変形することにより、上部構造から既存橋脚に作用する水平荷重を効果的に低減できる。したがって、既存橋脚は、上部構造からの鉛直荷重を安定して保持することができ、その結果、上部構造の落下を効果的に防止できる。
【0034】
一実施形態の既存橋梁の補強方法は、前記上部構造と前記水平支持橋脚の間に、互いの間に鉛直荷重を伝達しない一方、水平荷重を伝達する水平荷重伝達機構を設置する。
【0035】
前記実施形態によれば、水平荷重伝達機構により、上部構造から水平支持橋脚へ効果的に水平荷重のみを伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態の橋梁構造を示す縦断面図である。
図2】実施形態の橋梁構造の既存橋脚における横断面図である。
図3】実施形態の橋梁構造の水平支持橋脚における横断面図である。
図4A】水平荷重伝達機構を示す横断面図である。
図4B】水平荷重伝達機構を示す平断面図である。
図5】他の水平荷重伝達機構を有する水平支持橋脚における橋梁構造の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の実施形態の橋梁構造を示す縦断面図である。実施形態の橋梁構造は、都市高速道路の高架橋1に適用され、床版45上の車線を増やすための改築が行われたものである。この高架橋1は、上部構造4と、上部構造4から作用する鉛直荷重及び水平荷重を支持する主橋脚としての既存橋脚2と、上部構造4から作用する水平荷重のみを支持する水平支持橋脚3を含んで構成されている。
【0039】
この高架橋1は鋼I桁橋であり、図2の既存橋脚における横断面図に示すように、上部構造4が、I型鋼で形成された4つの既存主桁41と、新設の2つの主桁43と、既存主桁41の相互間を接続する3つの横桁42と、既存及び新設の主桁41,43の相互間を接続する5つの補強横桁44と、主桁41,43に支持された床版45を含んで構成されている。床版45は、既存主桁41に支持された既存部分45aと、新設の主桁43に支持された新設部分45bとで形成されている。この橋梁構造の上部構造4は、車線を追加するために、床版45の既存部分45aの一方の側に新設部分45bが追加されて拡幅され、この床版45の新設部分45bを支持するために、既存主桁41と平行をなす新たな主桁43が追加されたものである。このような上部構造4の改築に対応して、新設の主桁43を支持するために既存橋脚2の梁22bが延長されると共に、高架橋1に作用する水平荷重を支持するため、隣り合う橋脚2,2の間に新たな水平支持橋脚3が追加されたものである。
【0040】
主橋脚としての既存橋脚2は鋼製橋脚であり、図2に示すように、矩形断面の鋼製の柱21と、柱21の上端に連なり、幅方向の外側に向かって梁せいが縮小する鋼製の梁22と、柱21の下端に連なるコンクリート製のフーチング23と、フーチング23を支持する複数の基礎杭24を有する。梁22は、上部構造4の既存主桁41を支持する既存部分22aと、上部構造4の新設の主桁43を支持する新設部分22bとで形成されている。基礎杭24とフーチング23と柱21の下部は、地表面10の下方に埋設されている。
【0041】
既存橋脚2と上部構造4との間には、上部構造4からの鉛直荷重と水平荷重を橋脚2に伝達する弾性支承5が設けられている。弾性支承5は、橋脚2の梁22の上端面に固定されたベースプレートと、上部構造4の主桁41,43の下側フランジに固定されたソールプレートと、前記ベースプレートとソールプレートの間に配置され、複数のゴムシートが積層されてなる積層ゴムとを有する。この弾性支承5は、常時及び地震時において、上部構造4からの鉛直荷重を橋脚2に伝達すると共に、上部構造4からの水平荷重を橋脚2に伝達する。なお、既存橋脚2と上部構造4との間に設置される支承は、固定支承又は免震支承でもよく、少なくとも鉛直荷重を支持するのであれば、支承の構造は特に限定されない。
【0042】
図3は、水平支持橋脚3における高架橋1の横断面図である。新たに設置された水平支持橋脚3は、橋軸方向において、隣接する既存橋脚2,2の間の略中央に配置されている。水平支持橋脚3は、円形断面の鋼管で形成され、平面視において正方形の頂点の位置に配置された4つの柱部材31と、隣り合う柱部材31の間に架け渡された横つなぎ材32と、4つの柱部材31の上端に連結され、幅方向の外側に向かって梁せいが縮小する鋼製の梁33と、4つの柱部材31の各々の下端に連結され、円形断面の鋼管で形成された4つの基礎杭34を有する。図3には、4つの柱部材31のうち、橋軸直角方向に並んだ2つの柱部材31と、2つの柱部材31の各々の下端に連結された2つの基礎杭34が示されている。横つなぎ材32は、隣り合う2つの柱部材31の間に、上部と下部との合計2段が設置されている。横つなぎ材32は、普通鋼で形成されて隣り合う2つの柱部材31の各々に固定された2つの固定部材32a,32aと、当該2つの固定部材32a,32aの間に接続され、板状の低降伏点鋼で形成されて減衰機構として機能するせん断パネル32bを有する。
【0043】
水平支持橋脚3の柱部材31と基礎杭34との連結部は、柱部材31の下端部が基礎杭34の上端部の内側に嵌合されて形成されている。この連結部には、基礎杭34の上端部の内側に中詰コンクリートが配置され、柱部材31の下端部の内側に充填コンクリートが配置され、更に、基礎杭34の上端部と柱部材31の下端部とを覆うように根巻コンクリート36が配置されている。柱部材31の下端部には、柱部材31が基礎杭34内に嵌合する位置の近傍に、隣接する柱部材31を繋ぐ鋼製の地中梁35が設けられている。この地中梁35は、根巻コンクリート36によって覆われている。なお、柱部材31は、水平荷重に対する剛性が高い部材(例えば既成鋼管SKK材)を使用することが望ましい。ただし、後述するように、既存橋脚2が水平荷重の一部を支持する場合、水平支持橋脚3の剛性は、既存橋脚2と弾性支承5とを併せた剛性よりも高く設定されているのが好ましい。
【0044】
水平支持橋脚3と上部構造4との間には、上部構造4から水平荷重のみを水平支持橋脚3に伝達する水平荷重伝達機構6が設けられている。図4Aは、水平荷重伝達機構6を示す橋軸直角方向の横断面図であり、図4Bは水平荷重伝達機構6を示す平断面図である。なお、図4Aには、紙面の奥側の接触部材61は図示していない。この水平荷重伝達機構6は、主桁43の下側フランジに固定された鉛直部材60と、水平支持橋脚3の梁33に固定された4つの接触部材61とを有する。鉛直部材60は、矩形断面の鋼管で形成され、主桁43のフランジの法線方向であって鉛直下方に延びる柱状の鉛直柱62と、この鉛直柱62が取り付けられた固定プレート63と、この固定プレート63を主桁43の下側フランジに固定するボルトナット64を有する。接触部材61は、緩衝作用を有する弾性体としてのゴムで形成され、鉛直部材60の鉛直柱62の側面に接触する接触緩衝材65と、接触緩衝材65を支持する支持プレート66と、支持プレート66の接触緩衝材65と反対側に配置された補強プレート67とを有する。接触部材61は、鉛直部材60の鉛直柱62を接触緩衝材65で取り囲むように4つ配置されている。鉛直部材60の鉛直柱62と接触部材61の接触緩衝材65との間には、常時に数ミリメートルの隙間が形成されるように設定されている。4つのうちの3つの接触部材61は、第1固定プレート68に固定され、この第1固定プレート68は梁33にボルトナット69で固定されている。4つのうちの1つの接触部材61は、第1固定プレート68とは別体の第2固定プレート70に取り付けられ、この第2固定プレート70は梁33にボルトナット71で固定されている。水平荷重伝達機構6を水平支持橋脚3と上部構造4の間に設置する際、3つの接触部材61を有する第1固定プレート68と、1つの接触部材61を有する第2固定プレート70とを分けて梁33に固定することにより、鉛直部材60を4つの接触部材61で取り囲むように配置することができる。例えば、鉛直部材60が予め固定された主桁43が水平支持橋脚3の梁33の上方に設置された後、前記鉛直部材60の鉛直柱62の3つの側面に3つの接触部材61の接触緩衝材65が対向するように、第1固定プレート68を梁33に固定する。この後、前記鉛直部材60の鉛直柱62の1つの側面に接触部材61の接触緩衝材65が対向するように、第2固定プレート70を梁33に固定する。こうして、主桁43に固定された鉛直部材60の鉛直柱62を取り囲み、かつ、均一の隙間を有するように、4つの接触部材61を梁33に固定することができる。
【0045】
この水平荷重伝達機構6は、水平支持橋脚3と上部構造4との間に水平方向の相対変位が生じたときに、鉛直部材60の鉛直柱62の側面と、接触部材61の接触緩衝材65の表面とが接触する。互いに接触した鉛直部材60の鉛直柱62と接触部材61の接触緩衝材65を通して、水平力が水平支持橋脚3と上部構造4との間で伝達されるように形成されている。これにより、上部構造4から作用する水平荷重を水平支持橋脚3で支持する構造となっている。また、水平荷重伝達機構6は、鉛直部材60の鉛直柱62が、接触部材61、第1固定プレート68及び第2固定プレート70とのいずれとも鉛直方向に接触しないことにより、鉛直荷重が水平支持橋脚3と上部構造4との間で伝達されないように形成されている。これにより、上部構造4から作用する鉛直荷重を水平支持橋脚3で支持しない構造となっている。
【0046】
前記水平荷重伝達機構6は、水平支持橋脚3と上部構造4との間に水平方向の相対変位が形成され始めて、上部構造4からの水平荷重を水平支持橋脚3で支持されるまでの間は、既存橋脚2の弾性支承5が弾性変形をするように設定されている。すなわち、鉛直部材60の鉛直柱62と接触部材61の接触緩衝材65との間の隙間の距離は、弾性支承5の積層ゴムが水平方向において弾性変形に留まる最大の変形量よりも小さくなるように設定されている。これにより、水平荷重伝達機構6は、地震力を受けて水平支持橋脚3と上部構造4が接触をするまでの間に、弾性支承5が安定して所定の水平荷重を支持するように形成されている。すなわち、水平支持橋脚3と上部構造4との間に水平方向の相対変位が生じ始めて水平荷重伝達機構6で上部構造4と水平支持橋脚3の間に荷重が伝達されるまでの間に、上部構造4から既存橋脚2へ作用する水平荷重が急激に変化して上部構造4から水平支持橋脚3へ水平荷重が急激に作用することがないように形成されている。
【0047】
本実施形態の橋梁構造が適用された高架橋1は、地震の発生していない常時において、上部構造4から作用する鉛直荷重が、既存橋脚2によって支持される。一方、地震時において、地震力によって水平支持橋脚3と上部構造4の間に相対変位が生じ、これに伴い、水平荷重伝達機構6を介して水平荷重が上部構造4から水平支持橋脚3に伝達される。一方、鉛直荷重は、既存橋脚2のみに伝達される。
【0048】
水平支持橋脚3は、上部構造4から水平荷重伝達機構6を介して梁33に水平荷重のみが伝達されると、梁33に結合された柱部材31が曲げ変形すると共に横つなぎ材32がせん断変形する。横つなぎ材32では、せん断パネル32bに荷重が集中して塑性変形し、地震動に伴って変形を繰り返す過程で、履歴減衰作用によって、上部構造4から作用する水平荷重が減衰される。また、地震動に伴って柱部材31が弾性変形を繰り返すことにより、柱部材31の内部減衰作用によって、上部構造4から作用する水平荷重が減衰される。地震動が大きい場合、横つなぎ材32のせん断パネル32bによる履歴減衰作用に加え、柱部材31が塑性変形する。これにより発揮される柱部材31の塑性域での履歴減衰作用により、上部構造4から作用する水平荷重が柱部材31によって減衰される。このように、水平支持橋脚3は、地震力を受けると既存橋脚2よりも先に降伏し、弾性変形領域における減衰効果よりも大きな減衰効果を有する履歴減衰作用を発揮することができる。このようにして、上部構造4から作用する水平荷重の多くを水平支持橋脚3で減衰するので、上部構造4から既存橋脚2に伝達される水平荷重が効果的に低減される。したがって、既存橋脚2は、地震動による損傷が低減されるので、鉛直荷重を安定して支持できる。その結果、上部構造4の落下を効果的に防止できて、高架橋1の全体の耐震性を高めることができる。このように、水平支持橋脚3は、地震力を受けると既存橋脚2よりも先に降伏し、履歴減衰作用を発揮するように形成されているので、水平支持橋脚3が地震動に伴う水平荷重のみを受けて終局限界状態に達したときであっても、既存橋脚2は、上部構造4を支持可能な状態を保持することができる。よって、地震発生後においても、上部構造4を緊急車両等の通行に供することができ、災害時のライフライン機能を確保することができる。
【0049】
本実施形態の橋梁構造は、水平支持橋脚3が、平面視において正方形の頂点の位置に配置された4つの柱部材31と、隣り合う柱部材31の間に架け渡されて減衰機構としてのせん断パネル32bを有する横つなぎ材32を有し、水平荷重伝達機構6は、鉛直部材60を取り囲む4つの接触部材61を有する。したがって、水平支持橋脚3は、上部構造4から水平支持橋脚3に、水平面上のいずれの方向に対しても水平荷重を伝達できるので、上部構造4から作用する水平荷重を効果的に低減することができる。
【0050】
また、本実施形態の水平支持橋脚3は、汎用性を有する既製の鋼管で形成された4つの柱部材31を用いて構成されるので、矩形断面の既存橋脚2よりも安価に作製できる。したがって、地震に対する耐久性の高い橋梁構造を安価に作製できる。また、本実施形態の水平支持橋脚3は、上部構造4からの水平荷重のみを支持すればよいので、基礎を構成する基礎杭34、地中梁35及び根巻コンクリート36を、既存橋脚2の基礎を構成するフーチング23及び基礎杭24よりも簡易な構造にできる。したがって、水平支持橋脚3は、既存橋脚2よりも安価に基礎を作製できる。
【0051】
また、本実施形態の橋梁構造1は、水平支持橋脚3で水平荷重を減衰させることにより、既存橋脚2に作用する水平荷重を低減するので、高減衰積層ゴムを用いた免震支承のような経年劣化が少ない。また、水平支持橋脚3は水平荷重のみを支持するので、鉛プラグや高減衰積層ゴムを用いた免震支承よりも損傷し難く、地震に伴う交換頻度が低い。したがって、本実施形態の橋梁構造1は、免震支承を用いた橋梁よりも、メンテナンスの手間と費用を低廉にできる。また、本実施形態の既存橋梁の補強方法によれば、補強後に既存橋脚2が支持する水平荷重を、補強前に既存橋脚2が支持していた水平荷重と同等又はそれ以下にできる。したがって、既存橋脚2は、本体や基礎に対する補強が不要であるので、橋梁の補強工事の容易化と低コスト化を図ることができる。
【0052】
前記実施形態において、水平支持橋脚3の横つなぎ材32に、減衰機構としてのせん断パネル32bを設けたが、せん断パネル32b以外に、例えば粘性ダンパーや摩擦ダンパー等のように、減衰効果を有するものであれば、減衰機構は特に限定されない。
【0053】
また、前記実施形態において、上部構造4から水平支持橋脚3へ水平荷重のみを伝達する水平荷重伝達機構6は、互いに水平変位を生じたときに接触する鉛直部材60と接触部材61を有したが、他の構造の水平荷重伝達機構を用いてもよい。
【0054】
前記実施形態において、4つの柱部材31の上端に連結されて水平荷重伝達機構6が設けられた梁33は、上部構造4から水平荷重伝達機構6に伝達された水平荷重を柱部材31に伝達する機能を有したが、想定を超えた地震動を受けた場合に、フェールセーフの観点から、上部構造4を緊急的に支持してもよい。すなわち、想定を超えた地震が発生した場合には、上部構造4と水平支持橋脚3との間に、想定を超える鉛直方向の相対変位が生じ、水平支持橋脚3が上部構造4から水平荷重を受けて変形することによるエネルギー散逸機能を発揮できなくなる。このような場合に、上部構造4を梁33が緊急的に支持することにより、上部構造4の落下を防ぐことができる。
【0055】
図5は、他の水平荷重伝達機構を有する水平支持橋脚3における高架橋1の横断面図である。図5において、図3の横断面図に示した部分と同一の部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。この水平荷重伝達機構16は、既存の主桁41と新設の主桁43の相互間に設けられた補強横梁46に連なり、鉛直下方に延在する凸部47と、水平支持橋脚3の梁37の上側面に形成され、前記補強横梁46の凸部47を収容する凹部38で構成されている。なお、上部構造4から作用する鉛直荷重は既存橋脚2で支持するので、水平支持橋脚3に設置される前記水平荷重伝達機構16は、凸部47の下端と凹部38の底面部を接触しないように形成され、凸部47と凹部38が鉛直荷重を伝達しないように形成されている。この水平支持橋脚3の梁37は、柱部材31の連結部と凹部38との間に延在するように、上部構造4の幅よりも小さく形成されている。この水平荷重伝達機構16は、地震時に、地震力を受けた上部構造4が水平方向に変位し、これにより凸部47の側面が凹部38の内側面に係合することにより、上部構造4からの水平荷重を水平支持橋脚3へ伝達する。この水平荷重伝達機構16によれば、上部構造4の凸部47と、この凸部47に係合可能な水平支持橋脚3の凹部38との簡易な構成により、上部構造4から水平支持橋脚3へ効果的に水平荷重のみを伝達することができる。この水平荷重伝達機構16は、構成が簡易であるので作製費用が低廉であり、したがって、水平支持橋脚3により上部構造4から作用する水平力を低減可能な橋梁構造を、安価に提供することができる。
【0056】
前記実施形態において、高架橋1は、上部構造4の床版45aを拡幅すると共に新たな主桁43を追加し、既存橋脚2,2の間に水平支持橋脚3を追加して改築を行ったものであるが、上部構造4と、少なくとも鉛直荷重を支持する既存橋脚2と同様の主橋脚と、水平荷重のみを支持する水平支持橋脚3とを有する高架橋1を新築してもよい。
【0057】
また、前記実施形態において、高架橋1は、上部構造4にI型鋼の主桁を用いた鋼I桁橋であったが、鋼製やコンクリート製の箱桁を用いた箱桁橋や、トラス橋等の他の形式の橋梁でもよい。また、前記実施形態において、橋脚は、鋼製橋脚以外にRC(Reinforced-Concrete)橋脚等の他の橋脚でもよい。また、高架橋1は、都市高速道路用であったが、鉄道用や人道用等の他の用途の橋梁にも本発明を適用することができる。
【0058】
また、前記実施形態において、水平支持橋脚3は円形断面の鋼管で形成されたが、角形鋼管であってもよく、また、その材質は荷重や寸法等の条件に応じて種々に設定できる。また、前記実施形態において、水平支持橋脚3を形成する柱部材31の本数は3本であっても6本であってもよく、柱部材31の本数は、複数本であれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0059】
1 高架橋
2 既存橋脚
3 水平支持橋脚
4 上部構造
6 水平荷重伝達機構
31 柱部材
32 横つなぎ材
32b せん断パネル
60 鉛直部材
61 接触部材
47 凸部
38 凹部
【要約】
【課題】比較的低いコストで地震動を十分に低減できる橋梁構造及び既存橋梁の補強方法を提供すること。
【解決手段】
上部構造4を支持する既存橋脚2の間に、水平荷重のみを支持する水平支持橋脚3を設置する。既存橋脚2は、矩形断面の鋼製の柱21と梁22を有し、梁22に設置された弾性支承5により、上部構造4からの鉛直荷重と水平荷重を支持する。水平支持橋脚3は、鋼管で形成された4つの柱部材31と、隣り合う柱部材31を接続する横つなぎ材32と、梁33を有し、梁33に設置された水平荷重伝達機構6により、上部構造4からの水平荷重のみを支持する。地震時において、水平支持橋脚3は、上部構造4からの水平荷重で降伏し、履歴減衰作用によって、上部構造4から作用する水平荷重を減衰する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5