特許第5707133号(P5707133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 地方独立行政法人 大阪市立工業研究所の特許一覧 ▶ 大研化学工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707133
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】複合ナノ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/30 20060101AFI20150402BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20150402BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20150402BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20150402BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20150402BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20150402BHJP
   C22C 5/06 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   B22F9/30 Z
   B22F1/00 K
   B22F1/00 L
   C22C9/00
   H01B13/00 501Z
   H01B5/00 F
   H01B1/22 A
   C22C5/06 Z
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2010-524715(P2010-524715)
(86)(22)【出願日】2009年8月6日
(86)【国際出願番号】JP2009063961
(87)【国際公開番号】WO2010018781
(87)【国際公開日】20100218
【審査請求日】2012年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2008-207523(P2008-207523)
(32)【優先日】2008年8月11日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508114454
【氏名又は名称】地方独立行政法人 大阪市立工業研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】591040292
【氏名又は名称】大研化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】中許 昌美
(72)【発明者】
【氏名】山本 真理
(72)【発明者】
【氏名】柏木 行康
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】垣内 宏之
(72)【発明者】
【氏名】松村 慎亮
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−183207(JP,A)
【文献】 特開2004−273205(JP,A)
【文献】 特開平06−128609(JP,A)
【文献】 特開平11−273454(JP,A)
【文献】 特開2006−052456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式RN(但し、R〜Rは、互いに同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示し、R〜Rは環状につながっていても良い。R〜Rの炭素数は、互いに同一又は異なって1〜18である。)で示される3級アミン化合物及び炭素数8〜30の1,2−アルカンジオール及び/又はその誘導体の存在下、非酸化性雰囲気下で有機銀化合物及び有機銅化合物を含む混合物を150℃以上で熱処理することによって、1つの粒子中に少なくとも銀と銅を含み、かつ、X線回折分析において銀のピークと銅のピークを有する複合ナノ粒子を得ることを特徴とする複合ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
有機銀化合物及び有機銅化合物の合計に対する有機銀化合物の仕込みモル比Aに対して、複合ナノ粒子における銀成分及び銅成分の合計に対する銀成分のモル比A’が0.8A≦A’≦1.2Aである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
熱処理温度が250℃以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
仕込みモル比Aを1%以上99%以下とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
有機銀化合物が脂肪酸銀であり、有機銅化合物が脂肪酸銅である、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ナノ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子は、粒子径が1〜100nmの超微粒子であり、表面に存在する原子が非常に不安定であるために自発的に粒子間で融着を起こし、粗大化することが知られている。そのため、通常、金属ナノ粒子は有機保護基を用いて表面を覆うことにより安定化されている。金属ナノ粒子は、バルク金属と異なり、低融点化・低温焼結性といった特異な物性を示し、工学的応用として配線形成用の導電ペーストに利用されている。
【0003】
金属ナノ粒子は、合成法によって分類されることが多い。金属ナノ粒子の合成法は、バルク金属を粉砕して粒子を得る物理的方法と、金属塩や金属錯体等の前駆体からゼロ価の金属原子を生成し、それらを凝集させてナノ粒子を得る化学的方法との2つに大きく分類される。物理的方法のひとつである粉砕法は、ボールミル等の装置を用いて金属をすりつぶすことで微細化し、金属ナノ粒子を得る方法である。しかし、この手法で得られる粒子は粒子径分布が広く、数百nm以下のサイズの粒子を得ることは難しい。一方、化学的方法としては、1)レーザー合成法というCOレーザーで反応ガスを加熱して金属ナノ粒子を合成する方法、2)噴霧熱分解法という金属塩溶液を高温雰囲気中に噴霧して瞬間的な溶液の蒸発と熱分解を起こすことによって金属ナノ粒子を得る方法、3)還元法という金属塩溶液から還元反応により金属ナノ粒子を得る方法等があるが、いずれも大量合成が困難という欠点がある。
【0004】
これに対し、本発明者らは、このような既存の金属ナノ粒子合成法の問題を解決するため、金属源となる金属錯体を無溶媒で加熱するだけで金属ナノ粒子を合成できる熱分解制御法を先に開発している(特許文献1、特許文献2等)。この熱分解制御法の最大の特徴は、無溶媒で加熱するだけという簡便さであり、そのため大量合成も可能である。さらに、穏やかな還元性を有する有機化合物等を反応系に加えることによって反応条件が穏やかになり、また粒子径や形状、表面保護層の設計等が可能になることを見出している。
【0005】
金属ナノ粒子の工業的応用は、様々な分野において活発に検討されているが、その一つに金属ナノ粒子を用いた微細配線技術が挙げられる。金属ナノ粒子は表面が有機保護層で覆われているため、溶剤分散性が高く、またナノ粒子特有の低温融着現象の利用によってこれまでにない低温での配線が可能になると期待されている。現在、主に銀ナノ粒子を用いた配線材料への応用が行われているが、銀は貴金属であるためコストが高く、また高湿度下での使用において、銀がイオン化して回路外で再析出することによって電極間を短路するマイグレーションという現象が非常に起こりやすいことが問題視されている。このため、低コストが期待でき、マイグレーションがほとんど起こらないナノ粒子の開発が切望されている。
【0006】
これに対し、金属ナノ粒子の製造方法として、不活性ガス雰囲気中においてアミン化合物の存在下で金属塩を含む出発原料を熱処理する方法が提案されている(特許文献1)。また、金属塩を含む出発原料を、不活性雰囲気において熱処理する複合金属超微粒子の製造方法であって、出発原料が(1)2種以上の金属並びに(2)N及びOの少なくとも1種を含む製造方法も提案されている(特許文献2)。これらの製造方法によれば、分散安定性に優れた金属ナノ粒子を提供することが可能となる。
【0007】
しかしながら、これらの製造方法により得られる金属ナノ粒子は、耐マイグレーション性という点においてはさらなる改善の余地がある。
【特許文献1】特開2007−63579号
【特許文献2】特開2007−63580号
【特許文献3】WO2004/012884
【特許文献4】特開2005−298921号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の主な目的は、耐マイグレーション性がよりいっそう優れた金属ナノ粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の出発原料を用いて一定条件下で製造されたナノ粒子が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の複合ナノ粒子の製造方法に係る。
1. 一般式RN(但し、R〜Rは、互いに同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示し、R〜Rは環状につながっていても良い。R〜Rの炭素数は、互いに同一又は異なって1〜18である。)で示される3級アミン化合物及び炭素数8〜30の1,2−アルカンジオール及び/又はその誘導体の存在下、非酸化性雰囲気下で有機銀化合物及び有機銅化合物を含む混合物を150℃以上で熱処理することによって、1つの粒子中に少なくとも銀と銅を含み、かつ、X線回折分析において銀のピークと銅のピークを有する複合ナノ粒子を得ることを特徴とする複合ナノ粒子の製造方法。
2. 有機銀化合物及び有機銅化合物の合計に対する有機銀化合物の仕込みモル比Aに対して、複合ナノ粒子における銀成分及び銅成分の合計に対する銀成分のモル比A’が0.8A≦A’≦1.2Aである、前記項1に記載の製造方法。
3. 熱処理温度が250℃以下である、前記項1に記載の製造方法。
4. 仕込みモル比Aを1%以上99%以下とする、前記項1に記載の製造方法。
5. 有機銀化合物が脂肪酸銀であり、有機銅化合物が脂肪酸銅である、前記項1に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、1つの粒子中に銀と銅を含む複合ナノ粒子を好適に製造することができる。従来技術では、1つの粒子中に両者を含むナノ粒子を製造することは困難ないしは不可能であり、従来技術で得られるナノ粒子は銀粒子と銅粒子の混合物である。これに対し、本発明の製造方法では、一方の成分からなる粒子が単独で析出することなく、効率的に複合ナノ粒子を製造することが可能となる。
【0012】
また、本発明の製造方法のもう一つの特徴として、原料の銀/銅仕込み比率と同じ又はそれに近い比率の複合ナノ粒子を得ることもできる。特に、出発原料中に1,2−アルカンジオールを存在させる場合は、仕込み比率に近い組成をもつ複合ナノ粒子をより確実に得ることができる。
【0013】
本発明の複合ナノ粒子は、1つの粒子中に少なくとも銀と銅を含み、銀が銅よりも多く含まれる組成の粒子と銅が銀よりも多く含まれる組成の粒子とが混在することという特異な構成を有することから、従来の金属ナノ粒子(複合ナノ粒子)よりも優れた耐マイグレーション性を発揮することができる。従来技術では、例えば金と銀とを含む複合ナノ粒子、銀とパラジウムを含む複合ナノ粒子等は知られているが、耐マイグレーション性等の点で改善する必要があり、この耐マイグレーション性の改善が本発明の複合ナノ粒子により実現可能となる。
【0014】
このような特徴をもつ本発明の複合ナノ粒子は、さまざまな特性(触媒活性、導電性、紫外線遮蔽性、熱線遮蔽性、抗菌性、防汚性、防錆性、防食性等)を発揮することができる。このため、例えば電子材料(プリント配線、導電性材料、光学素子等)、触媒材料(高速反応触媒、センサー等)、構造材料(遠赤外材料、複合皮膜形成材等)、セラミックス・金属材料(焼結助剤、コーティング材料等)、医療材料等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。特に、本発明複合ナノ粒子は、耐マイグレーション性が要求される配線形成用又は高温はんだ代替の接合用として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図2】実施例1で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図3】実施例1で得られた粉末のTEM像及び粒子径分布を示す。
図4】実施例4で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図5】実施例4で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図6】実施例4で得られた粉末のTEM像及び粒子径分布を示す。
図7】実施例5で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図8】実施例5で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図9】実施例5で得られた粉末のTEM像及び粒子径分布を示す。
図10】実施例6で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図11】実施例6で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図12】実施例6で得られた粉末のTEM像及び粒子径分布を示す。
図13】実施例7で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図14】実施例7で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図15】実施例7で得られた粉末のTEM像及び粒子径分布を示す。
図16】実施例8で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図17】実施例8で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図18】実施例8で得られた粉末のTEM像及び粒子径分布を示す。
図19】実施例9で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図20】実施例9で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図21】実施例9で得られた粉末のTEM像及び粒子径分布を示す。
図22】実施例10で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図23】実施例10で得られた粉末のTEM像及び粒子径分布を示す。
図24】実施例11で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図25】実施例11で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図26】実施例11で得られた粉末のTEM像及び粒子径分布を示す。
図27】実施例12で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図28】実施例12で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図29】実施例12で得られた粉末のTEM像を示す。
図30】実施例13で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図31】実施例13で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図32】実施例13で得られた粉末のTEM像を示す。
図33】実施例14で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図34】実施例14で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図35】実施例14で得られた粉末のTEM像を示す。
図36】実施例15で得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を示す。
図37】実施例15で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図38】実施例15で得られた粉末のTEM像を示す。
図39】実施例16で得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を示す。
図40】実施例16で得られた粉末のTEM像を示す。
図41】試験例1において、大気中350℃×30分間の焼成で得られた皮膜の表面のSEM写真を示す。
図42】試験例1において、大気中350℃×30分間の焼成で得られた皮膜の断面のSEM写真を示す。
図43】試験例1において、大気中350℃×30分間の焼成後、さらに還元雰囲気下350℃×30分間の焼成で得られた皮膜の表面のSEM写真を示す。
図44】試験例1において、大気中350℃×30分間の焼成後、さらに還元雰囲気下350℃×30分間の焼成で得られた皮膜の断面のSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.複合ナノ粒子の製造方法
本発明の複合ナノ粒子の製造方法は、一般式RN(但し、R〜Rは、互いに同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示し、R〜Rは環状につながっていても良い。R〜Rの炭素数は、互いに同一又は異なって1〜18である。)で示される3級アミン化合物の存在下、非酸化性雰囲気下で有機銀化合物及び有機銅化合物を含む混合物を150℃以上で熱処理することによって、1つの粒子中に少なくとも銀と銅を含む複合ナノ粒子を得ることを特徴とする。
【0017】
本発明における有機銀化合物とは、有機酸の銀塩のほか、炭酸銀、銀のアルコキシド、銀のアセチルアセトネート等を包含する。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
また、本発明では、有機銀化合物として、有機酸の銀塩を好適に用いることができる。このような銀塩としては、例えばステアリン酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、オクタン酸塩、安息香酸塩、n−デカン酸塩、パラトルイル酸塩、酪酸塩、カプロン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、ミリスチン酸塩、ラウリン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、リシノレン酸塩等のモノカルボン酸塩のほか、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、イソフタル酸塩、テレフタル酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ピルビン酸塩等のジカルボン酸塩を挙げることができる。これらの中でも炭素数5以上(特に6以上、さらには8〜14)の有機酸の銀塩を用いることがより好ましい。
【0019】
本発明における有機銅化合物とは、有機酸の銅塩のほか、銅のアルコキシド、銅のアセチルアセトネート等を包含する。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
本発明では、有機銅化合物として、有機酸の銅塩を好適に用いることができる。このような銅塩としては、例えばステアリン酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、オクタン酸塩、安息香酸塩、n−デカン酸塩、パラトルイル酸塩、酪酸塩、カプロン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、ミリスチン酸塩、ラウリン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、リシノレン酸塩等のモノカルボン酸塩のほか、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、イソフタル酸塩、テレフタル酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ピルビン酸塩等のジカルボン酸塩を挙げることができる。これらの中でも炭素数5以上(特に炭素数6以上、さらには炭素数8〜14)の有機酸の銅塩を用いることがより好ましい。
【0021】
3級アミン化合物としては、一般式RN(但し、R〜Rは、互いに同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示し、R〜Rは環状につながっていても良い。R〜Rの炭素数は、互いに同一又は異なって1〜18である。)で示されるものを用いる。置換基としては、例えばアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、ニトロソ基、メルカプト基、スルホ基、スルフィノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、シアノ基、カルボキシル基、カルボニル基、フェニル基、フェノキシ基、ベンゾイル基、アセチル基等が挙げられる。前記のアルキル基又はアリール基の炭素数(但し、置換基を有する場合は置換基の炭素数を含む。)は、アルキル基の場合通常1〜18程度、特に4〜12、アリール基の場合通常6〜18程度、特に6〜12とすることが好ましい。好ましい3級アミン化合物の具体例としては、トリオクチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリス(2−エチルへキシル)アミン等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0022】
3級アミン化合物の使用量は、用いる3級アミン化合物の種類等に応じて適宜設定できるが、通常は有機銅化合物及び有機銀化合物の合計100モルに対して、100〜300モル、特に150〜250モルとすることが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法では、本発明の効果に影響を与えない限り、3級アミン以外のアミン(1級アミン及び2級アミン)が存在していても良いが、好ましくは1級アミン及び2級アミンが存在しない条件下で熱処理を行う。これにより、所望の耐マイグレーション性を有する複合ナノ粒子をより確実に得ることが可能となる。
【0024】
本発明の製造方法では、炭素数5以上の1,2−アルカンジオール及び/又はその誘導体(以下「本発明ジオール」ともいう。)をさらに存在させることが望ましい。本発明ジオールを存在させることにより、仕込み比により近い銀/銅組成を有する複合ナノ粒子を得ることが可能となる。前記炭素数としては、好ましくは6以上、より好ましくは10以上、最も好ましくは12〜30とする。このような1,2−アルカンジオールとしては、例えば1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ウンデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−トリデカンジオール等を挙げることができる。1,2−アルカンジオールは、直鎖アルカンジオールが好ましい。また、前記誘導体としては、エチレングリコールの炭素上の水素原子を他の置換基で置換したものが挙げられる。この場合の置換基としては、例えばアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、ニトロソ基、メルカプト基、スルホ基、スルフィノ基、メトキシ基、エトキシ基、シアノ基、カルボキシル基、カルボニル基、フェニル基、フェノキシ基、ベンゾイル基、アセチル基等が挙げられる。なお、前記誘導体の場合の炭素数は、置換基の炭素数も含めた炭素数である。
【0025】
本発明ジオールの使用量は、限定的ではないが、通常は有機銅化合物及び有機銀化合物の合計100モルに対して100〜300モル、特に150〜250モルとすることが好ましい。
【0026】
本発明では、熱処理は、非酸化性雰囲気下で150℃以上の温度で実施する。これにより、所定の複合ナノ粒子を得ることができる。
【0027】
熱処理雰囲気は、非酸化性雰囲気であれば限定されず、例えば不活性ガス中、還元性雰囲気中等のいずれであっても良い。本発明では、特に不活性ガス中により好適に熱処理を実施することができる。不活性ガスとしては、例えば窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等を用いることができる。
【0028】
熱処理温度としては、通常は150℃以上とし、好ましくは160℃以上とすれば良い。なお、上限は、用いる有機銅化合物又は有機銀化合物の完全分解温度未満の温度とすれば良いが、通常は250℃以下とすれば良い。完全分解温度とはその有機銅化合物又は有機銀化合物の有機成分が完全に分解してしまう温度をいう。本発明では、この温度範囲内において、有機銅化合物及び有機銀化合物の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、分解開始温度が約100℃であり、完全分解温度が約400℃である有機銅化合物又は有機銀化合物の場合、100〜400℃の温度範囲内に熱処理温度を保持すれば良い。また例えば、後記の実施例に記載のように、熱処理温度100〜250℃(特に100〜200℃)の温度範囲内で好適に熱処理することもできる。
【0029】
熱処理温度の保持時間は、熱処理温度、用いる有機銅化合物又は有機銀化合物の種類等に応じて適宜変更することができる。
【0030】
熱処理が終了した後、室温まで冷却し、必要に応じて精製を行う。精製方法は、公知の精製法も適用でき、例えば遠心分離、膜精製、溶媒抽出等により行えば良い。
【0031】
本発明の製造方法では、好ましくは、有機銀化合物及び有機銅化合物の合計に対する有機銀化合物の仕込みモル比Aに対して、複合ナノ粒子(粒子群として)における銀成分及び銅成分の合計に対する銀成分のモル比A’が0.8A≦A’≦1.2A(特に0.9A≦A’≦1.1A)である複合ナノ粒子を得ることができる。すなわち、本発明の製造方法では、仕込み比(銀成分/銅成分)と同じ又はそれに近い組成を有する複合ナノ粒子(粒子群)を得ることができる。これは、特に1)熱処理温度、2)銀/銅仕込み比率及び3)本発明ジオール添加の少なくともいずれかによってより確実に制御することができる。
【0032】
2.銀−銅複合ナノ粒子
本発明の複合ナノ粒子は、有機成分を含む複合ナノ粒子であって、1つの粒子中に少なくとも銀と銅を含み、銀が銅よりも多く含まれる組成の粒子と銅が銀よりも多く含まれる組成の粒子とが混在することを特徴とする。
【0033】
本発明の複合ナノ粒子は、有機成分、銀及び銅を含有する。本発明の複合ナノ粒子は、前記の本発明の製造方法により得られるものであることが好ましい。すなわち、一般式RN(但し、R〜Rは、互いに同一又は異なって、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を示し、R〜Rは環状につながっていても良い。R〜Rの炭素数は、互いに同一又は異なって1〜18である。)で示される3級アミン化合物の存在下、非酸化性雰囲気下で有機銀化合物及び有機銅化合物を含む混合物を150℃以上で熱処理することによって、1つの粒子中に少なくとも銀と銅を含む複合ナノ粒子を得ることを特徴とする複合ナノ粒子の製造方法により得られる複合ナノ粒子であることが望ましい。
【0034】
有機成分は特に限定されないが、本発明の複合ナノ粒子は本発明の製造方法により得られるものが好ましいことから、有機成分としては、出発原料として用いた3級アミン化合物、有機銀化合物及び有機銅化合物ならびにこれらの由来成分の少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合の由来成分は、出発原料として用いた3級アミン化合物、有機銀化合物及び有機銅化合物を前記熱処理に供することにより生成する有機成分であることが好ましい。
【0035】
また、1,2−アルカンジオール及び/又はその誘導体を用いる場合は、前記3級アミン化合物、有機銀化合物、有機銅化合物及び1,2−アルカンジオール及び/又はその誘導体ならびにこれらの由来成分の少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合の由来成分は、出発原料として用いた3級アミン化合物、有機銀化合物、有機銅化合物及び1,2−アルカンジオール及び/又はその誘導体を前記熱処理に供することにより生成する有機成分であることが好ましい。
【0036】
有機成分の含有量は特に限定的ではないが、通常55重量%以下、特に30重量%以下であることが好ましい。有機成分の含有量の下限値は限定されないが、通常は0.5重量%程度とすれば良い。
【0037】
また、複合ナノ粒子(粒子群)における銀と銅の比率は、1つの粒子中に両者が含まれる限りは特に限定されない。通常は、粒子群中における銀成分及び銅成分の合計に対する銀成分のモル比が1%以上99%以下であり、好ましくは5%以上85%以下である。
【0038】
本発明の複合ナノ粒子は、銀が銅よりも多く含まれる組成の粒子(以下「銀リッチ粒子」ともいう。)と銅が銀よりも多く含まれる組成の粒子(以下「銅リッチ粒子」ともいう。)とが混在する。すなわち、銀リッチ粒子と銅リッチ粒子とが混在している。このような構成は、通常のTEM/EDX測定を行うことにより確認することができる。TEM/EDX測定のための装置は市販の装置を使用すれば良い。このような特徴をもつ複合ナノ粒子は、優れた耐マイグレーション性を発揮することができる。
【0039】
本発明の複合ナノ粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、通常は3〜300nm程度、好ましくは3〜50nmである。
【0040】
本発明の複合ナノ粒子は、分散安定性に優れることから、例えば溶剤に分散させると可溶化状態となる。このため、例えば溶剤及び粘度調整用樹脂の少なくとも1種ならびに複合ナノ粒子を含むペーストとして好適に用いることができる。溶剤としては特に限定されず、例えばテルペン系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、セロソルブ系溶剤、カルビトール系溶剤等が挙げられる。より具体的には、ターピネオール、メチルエチルケトン、アセトン、イソプロパノール、ブチルカービトール、デカン、ウンデカン、テトラデカン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ケロシン等の有機溶剤を例示することができる。また、粘度調整用樹脂としては限定的ではなく、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の硬化剤硬化性樹脂等を用いることができる。ペーストとして用いる場合、複合ナノ粒子の含有量は20〜90重量%の範囲で適宜設定することができる。
【0041】
本発明は、1)本発明の複合ナノ粒子又はそれを含むペーストにより電気的接合領域又はパターンを形成する工程及び2)前記の電気的接合領域又はパターンを還元性雰囲気中400℃以下で焼成することにより電気的接合又は電気回路を得る工程を含む、電気的接合又は電気回路を形成する方法も包含する。
【0042】
電気的接合領域の形成は、例えば2つの回路を接合するためのハンダ付け等と同様の手法を採用することができる。パターンを形成する工程は、公知の回路形成、電極形成等で採用されている方法を使用すれば良い。例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷方法により所定の回路パターン、電極パターン等を形成することができる。
【0043】
次いで、これらの電気的接合領域又はパターンを還元性雰囲気中で焼成する。これにより焼成体から形成された電気的接合又は電気回路を得ることができる。焼成温度は、用いる複合ナノ粒子の種類、ペースト組成等に応じて適宜設定することができるが、通常は400℃以下とし、好ましくは150〜400℃とし、より好ましくは180〜380℃とし、最も好ましくは280〜380℃とする。還元性雰囲気としては、還元性ガスを含む雰囲気とすれば良い。例えば、水素ガス1〜10体積%を含み、残部が不活性ガスである混合ガス雰囲気を好適に採用することができる。前記不活性ガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス等のほか、窒素ガスも用いることができる。焼成時間は、焼成温度等に応じて適宜設定することができるが、通常は1〜10時間程度とすれば良い。
【0044】
なお、必要に応じて、前記の還元性雰囲気下での焼成に先立って、大気中又は酸化性雰囲気中で焼成しても良い。この場合の焼成温度は、通常は150〜400℃とし、好ましくは280〜380℃とすれば良い。この焼成によりポアの発生を抑制し、焼成膜をより緻密化させて電気特性を向上させることができる。
【0045】
このように、本発明では、本発明の複合ナノ粒子又はそれを含むペーストを用い、これを還元性雰囲気下で焼成(熱処理)することにより、耐マイグレーション性に優れるとともに、複合ナノ粒子が互いに融着した構造を有する皮膜が形成できるがゆえに高い導電性を有する電気的接合領域又はパターン(電極パターン、回路パターン又は配線パターン)を提供することができる。電気的接合領域又はパターンは、通常は膜状であり、その膜厚は通常1〜50μm、好ましくは1〜10μmである。
【実施例】
【0046】
以下に実施例及び試験例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0047】
(1)試薬及び測定機器
・合成及び測定に用いた試薬:1,2−ドデカンジオール、トリオクチルアミン、オクタン酸、炭酸銀はナカライテスク株式会社より、オクタン酸銅は三津和化学薬品株式会社より購入したものを精製することなく使用した。
・TG/DTA測定:セイコー電子工業製「SSC/5200」熱分析装置を用いて窒素雰囲気下で行った。
・粉末X線回折装置(XRD):Rigaku製「RINT2500」を用いて行った。
・透過型電子顕微鏡(TEM)観察:日本電子製「JEM2100IM」を使用した。なお、観察試料は、複合ナノ粒子にトルエンを加えて超音波照射によって分散させた液をカーボン支持膜付き銅グリッド上に滴下し、乾燥して調製した。
・エネルギー分散X線分析(EDX):日本電子製「JEM2100IM」を用いて行った。
・蛍光X線分析(XRF):セイコーインスツルメンツ株式会社製「マイクロエレメントモニターSEA5120」を用いて行った。
【0048】
(2)化合物の表記
本実施例では、略号として、下記の表記を用いた。
・鎖長の異なる脂肪酸銀CmH2m+1COOAg:CmCOOAg(m = 7, 13, 17)
・オクタン酸銅 (C7H15COO)2Cu:(C7COO)2Cu
・トリオクチルアミン (C8H17)3N:(C8)3N
・1,2−ドデカンジオールC10H21CH(OH)CH2(OH):1,2-DDO
・オクタン酸C7H15COOH:C7COOH
・CmCOOAgと(C8)3Nから合成した銀ナノ粒子:CmAg /(C8)3N(m = 7, 13, 17)
・CmCOOAgと(C7COO)2Cuと(C8)3Nから合成したAg/Cu複合ナノ粒子:CmAg /(C7)2Cu /(C8)3N(m = 7, 13, 17)(仕込み比、反応温度×反応時間)
・C13COOAgと(C7COO)2Cuと(C8)3Nと1,2-DDOから合成したAg/Cu複合ナノ粒子:C13Ag /(C7)2Cu
/(C8)3N/1,2-DDO(仕込み比、反応温度×反応時間)
・Ag2CO3と(C7COO)2Cuと(C8)3NとC7COOHから合成したAg/Cu複合ナノ粒子:Ag2CO3 /(C7)2Cu
/(C8)3N/ C7COOH(仕込み比、反応温度×反応時間)と表記
【0049】
(3)物性の測定方法
平均粒子径:前記の透過型電子顕微鏡により測定し、任意に選んだ粒子300個の直径の算術平均値を求め、その値をもって平均粒子径とした。
金属成分の含有量:前記の熱分析装置を用い、TG/DTA測定することにより求めた。
【0050】
<実施例1>
C13Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=5:5、160℃×24時間)の合成
(C)N(2.7g,7.5mmol)と(CCOO)Cu(0.88g,2.5mmol)とC13COOAg(0.84g,2.5mmol)を160℃で24時間保持した後、室温まで冷却した。冷却後、アセトン(10ml)とメタノール(10ml)の混合液で洗浄し、桐山ロートで濾過後、減圧下で乾燥し青紫色粉末(収量0.45g,金属含有率86%,組成比 銀54mol%:銅46mol%,平均粒子径4.1±0.87nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図1に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図2に示し、TEM像及び粒子径分布を図3にそれぞれ示す。
【0051】
<実施例2>
C13Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=5:5、160℃×4時間)の合成
実施例1における反応時間を24時間から4時間に変えたほかは、実施例1と同様に反応させることにより、青紫色粉末(収量0.43g,金属含有率80%、組成比 銀71 mol%:銅29 mol%)を得た。
【0052】
<実施例3>
C13Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=5:5、160℃×16時間)の合成
実施例1における反応時間を24時間から16時間に変えたほかは、実施例1と同様に反応させることにより、青紫色粉末(収量0.47g,金属含有率82%,組成比 銀65 mol%:銅35 mol%)を得た。
【0053】
<実施例4>
C13Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=5:5、180℃×4時間)の合成
実施例2における反応温度を160℃から180℃に変えたほかは、実施例2と同様に反応させることにより、青紫色粉末(収量0.49g,金属含有率84%,組成比 銀50 mol%,:銅50 mol%,平均粒子径4.0±0.71nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図4に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図5に示し、TEM像及び粒子径分布を図6にそれぞれ示す。
【0054】
<実施例5>
CAg /(C)Cu /(C)N(銀:銅=5:5、160℃×24時間)の合成
実施例1において用いた脂肪酸銀C13AgをCAgに変えたほかは、実施例1と同様に反応させることにより青紫色粉末(収量;0.40g、金属含有率;91%、組成比;銀58 mol%,銅42 mol%、平均粒子径5.7±0.79 nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図7に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図8に示し、TEM像及び粒子径分布を図9にそれぞれ示す。
【0055】
<実施例6>
C17Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=5:5、160℃×24時間)の合成
実施例1において用いた脂肪酸銀C13AgをC17Agに変えたほかは、実施例1と同様に反応させることにより青紫色粉末(収量;0.52g,金属含有率83%、組成比 銀58 mol%:銅42 mol%、平均粒子径4.1±2.3nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図10に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図11に示し、TEM像及び粒子径分布を図12にそれぞれ示す。
【0056】
<実施例7>
C13Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=8:2、160℃×24時間)の合成
実施例1において、加えた試薬の量を(C)N(2.1 g, 6.0 mmol)と(CCOO)Cu(0.35g,1.0 mmol)とC13COOAg(1.3 g, 4.0 mmol)に変えたほかは、実施例1と同様に反応させることにより、青紫色粉末(収量0.44g,金属含有率80%,組成比 銀89 mol%:銅11 mol%、平均粒子径4.2±0.49nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図13に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図14に示し、TEM像及び粒子径分布を図15にそれぞれ示す。
【0057】
<実施例8>
CAg /(C)Cu /(C)N(銀:銅=8:2、160℃×24時間)の合成
実施例5において、加えた試薬の量を(C)N(2.1g,6.0mmol)と(CCOO)Cu(0.35g,1.0mmol)とCCOOAg(1.0g,4.0mmol)に変えたほかは、実施例5と同様に反応させることにより、青紫色粉末(収量0.50g,金属含有率92%、組成比 銀95 mol%:銅5 mol%、平均粒子径8.4±1.4nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図16に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図17に示し、TEM像及び粒子径分布を図18にそれぞれ示す。
【0058】
<実施例9>
C17Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=8:2、160℃×24時間)の合成
実施例6において、加えた試薬の量を(C)N(2.1g,6.0mmol)と(CCOO)Cu(0.35g,1.0mmol)とC17COOAg(1.6g,4.0mmol)に変えたほかは、実施例6と同様に反応させることにより、青紫色粉末(収量0.95g,金属含有率50%,組成比 銀96mol%:銅4 mol%、平均粒子径5.5±1.9nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図19に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図20に示し、TEM像及び粒子径分布を図21にそれぞれ示す。
【0059】
<実施例10>
C17Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=2:8、160℃×24時間)の合成
実施例6において、加えた試薬の量を(C)N(3.2g,9.0mmol)と(CCOO)Cu(1.4g,4.0mmol)とC17COOAg(0.40g,1.0mmol)に変えたほかは、実施例6と同様に反応させることにより、青紫色粉末(収量0.22g,金属含有率99%,組成比 銀41 mol%:銅59 mol%、平均粒子径21±8.9nm)を得た。得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を図22に示し、TEM像及び粒子径分布を図23にそれぞれ示す。
【0060】
<実施例11>
C13Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=5:5、180℃×4時間)の合成
実施例4のスケールを5倍にしたほかは、実施例4と同様に反応させることにより、青紫色粉末(収量2.5g,金属含有率85%、組成比 銀59mol%:銅41mol%、平均粒子径3.9±0.71nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図24に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図25に示し、TEM像及び粒子径分布を図26にそれぞれ示す。
【0061】
<実施例12>
C13Ag /(C7)2Cu
/(C8)3N/1,2-DDO(銀:銅=5:5、160℃×16時間)の合成
1,2-DDO1.52g(7.5mmol)を添加したほかは、実施例3と同様の条件で熱処理を実施し、青紫色粉末を得た(収量0.585g、金属含有量73%、組成比 銀57mol%:銅43mol%、平均粒子径3.59±0.52nm)。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図27に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図28に示し、TEM像を図29にそれぞれ示す。
【0062】
<実施例13>
C13Ag /(C7)2Cu
/(C8)3N/1,2-DDO(銀:銅=8:2、160℃×16時間)の合成
実施例12において、加えた試薬の量を1,2-DDO1.21g(6mmol)と(C)N(2.12g、6mmol)と(CCOO)Cu(0.35g、1mmol)とC13COOAg(1.34g、4mmol)に変えたほかは、実施例12と同様にして熱処理を実施し、青紫色粉末を得た(収量0.66g、金属含有量72%、組成比 銀85mol%:銅15mol%、平均粒子径4.23±0.36nm)。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図30に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図31に示し、TEM像を図32に示す。
【0063】
<実施例14>
C13Ag /(C7)2Cu
/(C8)3N/1,2-DDO(銀:銅=2:8、160℃×16時間)の合成
実施例12において、加えた試薬の量を1,2-DDO1.82g(9mmol)と(C)N(3.18g、9mmol)と(CCOO)Cu(1.40g、4mmol)とC13COOAg(0.335g、1mmol)に変えたほかは、実施例12と同様にして熱処理を実施し、青紫色粉末を得た(収量0.483g、金属含有量78%、組成比 銀26mol%:銅74mol%、平均粒子径5.50±2.73nm)。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図33に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図34に示し、TEM像を図35に示す。
【0064】
<実施例15>
C13Ag /(C7)2Cu
/(C8)3N/1,2-DDO(銀:銅=5:95、160℃×16時間)の合成
実施例12において、加えた試薬の量を1,2-DDO1.97g(9.75mmol)と(C)N(3.45g、9.75mmol)と(CCOO)Cu(1.66g、4.75mmol)とC13COOAg(0.084g、0.25mmol)に変えたほかは、実施例12と同様にして熱処理を実施し、茶色粉末を得た(収量373mg、金属含有量88%、組成比 銀7mol%:銅93mol%、平均粒子径10.42±5.23nm)。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を図36に示し、X線回折分析(XRD)の結果を図37に示し、TEM像を図38にそれぞれ示す。
【0065】
<実施例16>
Ag2CO3 /(C7)2Cu
/(C8)3N/ CCOOH(銀:銅=2:8、160℃×24時間)の合成
実施例10において、C17COOAgをAg2CO3(0.138g、0.5mmol)に変え、CCOOH(0.144g、1mmol)を加えたほかは、実施例10と同様にして熱処理を実施し、青紫色粉末を得た(収量0.366g、金属含有量99%、組成比 銀25mol%:銅75mol%、平均粒子径31.4±36.7nm(平均粒子径17.6±3.4nmと120.6±26.5nmが混合))。得られた粉末のX線回折分析(XRD)の結果を図39に示し、TEM像を図40に示す。
また、実施例16において得られたAg/Cu二元金属ナノ粒子のTEM/EDX分析(図40)を行った。粒径の大きな粒子Aと粒径の小さな粒子BにおけるAg/Cu組成比をそれぞれ調べた。その結果を表1に示す。表1の結果からも明らかなように、1つの粒子の中に銀及び銅の両者が含まれていることがわかる。また、銅リッチの粒子(図40、測定点A)と銀リッチの粒子(図40、測定点B)とが混在していることもわかる。さらに、実施例16で得られた粒子(粉末)においては、銀リッチの粒子Aの粒子径が銅リッチBの粒子の粒子径よりも小さくなっており、粒子径によって組成比が異なることがわかる。これは、分解温度が比較的低いAg2CO3が分解した後に、(CCOO)Cuが分解し、銀と銅の複合化が始まり、銀と銅とが十分に複合する前の小さな粒子径で安定した銀リッチの粒子と、銀と銅とが十分に複合して大きな粒子径で安定した銅リッチの粒子とが形成されると考えられる。
【0066】
【表1】
【0067】
<試験例1>
Ag/Cu複合ナノ粒子の焼成膜の特性
実施例11で合成したAg/Cu複合ナノ粒子 C13Ag /(C)Cu /(C)N(Ag:Cu=5:5、180℃×4時間)に対し、ポリエチレン系分散剤(0.08g)と溶剤にターピネオール(0.25g)を加え、分散性を促進させるためにトルエン数滴を滴下した。トルエンが揮発逸散し、残存しなくなるまで混ぜ、金属含有率65wt%のペーストに調合した。このペーストを用いてスクリーン印刷法により電極パターンを印刷し、大気中350℃×30分間焼成した。その焼成膜Aの表面及び断面のSEM写真を図41及び図42にそれぞれ示す。
別途、同様に印刷して作成した電極パターンを大気中350℃×30分間焼成した後、窒素に3体積%の水素を含む還元性雰囲気下350℃×30分間焼成した。得られた薄膜Bの表面及び断面のSEM写真を図43及び図44にそれぞれ示す。
図41及び図42に示すように、大気中での焼成では、粒子の形状を維持しながら焼結膜を形成していることがわかる。一方、図43及び図44に示すように、大気中での焼成後、さらに窒素に3体積%の水素を含む還元性雰囲気下で焼成すると、ナノ粒子が融着した薄膜が形成されることがわかる。すなわち、比較的低い焼成温度であっても、ナノ粒子の原形をとどめることなく、互いにナノ粒子どうしが融着した内部構造を有する皮膜が得られる。
また、この薄膜Bの電気特性を表2に示す。焼成膜Aのような場合の比抵抗が通常100μΩcm程度であるのに対し、表2からも明らかなように薄膜Bは10μΩcm以下(特に8μΩcm以下)というバルクに匹敵する比抵抗値を示した。このようにAg/Cu複合ナノ粒子を用いたペーストは、配線形成はもとより、高温はんだ代替の接合用としても好適に用いることができる。
【0068】
【表2】
【0069】
<試験例2>
Ag/Cu複合ナノ粒子の耐マイグレーション性の検討
イオンマイグレーションとは、高湿高温下で電子回路に電気を流すことで、陽極の金属がイオン化して溶出し、電極間を短絡させる現象である。イオンマイグレーションに対する安定性の検討に用いた電極は、実施例11で合成したC13Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=5:5、180℃×4時間)と、同様の条件で合成を行った銀ナノ粒子を用いてそれぞれ形成した。電極の形成は、めのう鉢に分散剤(0.08g)と溶剤にターピネオール(0.25g)を加え、分散性を促進させるためにトルエン数滴を滴下した。さらに前記ナノ粒子を加え、トルエンが揮発逸散し、残存しなくなるまで混ぜ、ペースト化を行った。このペーストを用いてスクリーン印刷法により電極パターンを印刷し、350℃×30分間、窒素に3%の水素を含む還元雰囲気下という焼成条件により電極形成を行った。形成した電極(電極間距離1mm)を使用し、イオンマイグレーションテストを行った。イオンマイグレーションテストはウォータードロップ法により行い、電極間に水を滴下し、電気を流してから電極間を短絡するまでの時間を計測した。その結果を表3に示す。
【0070】
表3の結果からも明らかなように、銀ナノ粒子を用いて形成した電極の場合は、短絡までに要した時間は15秒であった。一方、C13Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=5:5)を用いて形成した電極の場合は、短絡までに要した時間は530秒であり、銀ナノ粒子を用いて形成した電極の場合に比べて、短絡までに約35倍の時間を要していた。以上のことから、C13Ag /(C)Cu /(C)N(銀:銅=5:5、180℃×4時間)は、銀ナノ粒子に比べて非常に高い耐マイグレーション性を有していることがわかる。
【0071】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44