【実施例】
【0042】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0043】
(1)試薬及び測定機器
合成及び測定に用いた試薬:トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリス(2−エチルへキシル)アミン、1.2−ドデカンジオール、1,2−オクタンジオール、1−ドデカノール、及び酒石酸ジエチルはナカライテスク株式会社より、オクタン酸銅は三津和化学薬品株式会社より、3−オクタデシルオキシ−1,2−プロパンジオールは東京化成工業株式会社よりそれぞれ購入した。
酒石酸ジドデシルは、酒石酸ジエチルと1−ドデカノールのエステル交換反応により合成した。
TG/DTA:セイコー電子工業製「SSC/5200」熱分析装置を用いて窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で測定した。
粉末X線回折装置(XRD):Rigaku製「RINT2500」を用いて行った。
透過型電子顕微鏡(TEM):日本電子製「JEM2100」を使用した。なお、観察試料は、銅ナノ粒子にトルエンを加えて超音波照射によって分散させた液をカーボン支持膜付き銅グリッド上に滴下し、乾燥して調製した。
【0044】
(2)化合物の表記
本実施例では、略号として、下記の表記を用いた。
オクタン酸銅:(C
7COO)
2Cu、
トリブチルアミン:(C
4)
3N、
トリオクチルアミン:(C
8)
3N、
トリイソブチルアミン:(iBu)
3N、
N,N−ジイソプロピルエチルアミン:(iPr)
2NEt、
トリス(2−エチルへキシル)アミン:(2-EtC
6)
3N、
1,2−オクタンジオール:1,2-ODO、
1,2−ドデカンジオール:1,2-DDO、
1−ドデカノール:1-C
12OH
3−オクタデシルオキシ−1,2−プロパンジオール: 3-ODO-1,2-PDO
酒石酸ジドデシル: DDT
また、(C
7COO)
2Cuと(C
8)
3Nと1,2-DDOから合成した銅系ナノ粒子をCuNP/(C
8)
3N 1,2-DDOのように表記する。
【0045】
(3)物性の測定方法
平均粒子径:前記の透過型電子顕微鏡により測定し、任意に選んだ粒子300個の直径の算術平均値を求め、その値をもって平均粒子径とした。
金属成分の含有量:前記の熱分析装置を用い、TG/DTA測定による熱重量(TG)変化から求めた。
耐酸化性試験:粉末X線回折測定用ガラス板の縦1.7cm×横2cm×深さ0.3mmの掘り込み部分に、スライドガラスで銅系ナノ粒子粉末を押しつけながら敷き詰めた。この試料をまず、X線回折装置で測定したのち、そのまま大気中にて温度25℃及び湿度60%で1ヶ月放置し、再度、同試料をX線回折装置で測定し、X線回折パターンにおけるCu及びCu
2Oの強度変化を求めた。
【0046】
<実施例1>
CuNP/(C
8)
3N 1,2-DDOの合成
1,2-DDO (2.02 g, 10 mmol)と (C
8)
3N (3.57 g, 10 mmol) に (C
7COO)
2Cu (1.75 g, 5.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下160℃で16時間保持した後、室温まで冷却した。アセトン(20
ml)で洗浄し、桐山ロートで濾過後、減圧下で乾燥し、黒茶色粉末(収量0.38 g、収率95%、金属含有率80%、平均粒子径4.5±0.93nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を
図1に示し、TEM像を
図2に示し、粒子径分布を
図3に示し、X線回折分析(XRD)の結果を
図4に示す。
【0047】
<
参考例2>
CuNP/1,2-DDOの合成
1,2-DDO(2.02 g,10 mmol)に(C
7COO)
2Cu(1.75 g, 5.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下で160℃で16時間保持した後、室温まで冷却した。アセトン(20ml)で洗浄し、桐山ロートで濾過後、減圧下で乾燥し、黒茶色粉末(収量0.24 g、収率76%、金属含有率99.8%、平均粒子径24.2±13.9 nm)を得た。得られた粉末のTEM像を
図5に示し、粒子径分布を
図6に示し、X線回折分析(XRD)の結果を
図7に示す。
【0048】
<実施例3>
CuNP/(iPr)
2NEt 1,2-DDOの合成
実施例1において用いたアミン(C
8)
3Nを(iPr)
2NEtに代えたほかは、実施例1と同様に反応させることにより粉末(収量0.31 g、収率79%、金属含有率81%、平均粒子径5.1±0.90 nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を
図8に示し、TEM像を
図9に示し、粒子径分布を
図10に示し、X線回折分析(XRD)の結果を
図11に示す。
【0049】
<実施例4>
CuNP/(2-EtC
6)
3N 1,2-DDOの合成
実施例1において用いたアミン(C
8)
3Nを(2-EtC
6)
3Nに代えたほかは、実施例1と同様に反応させることにより粉末(収量0.30 g、収率87%、金属含有率90%、平均粒子径7.2±1.9 nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を
図12に示し、TEM像を
図13に示し、粒子径分布を
図14に示し、X線回折分析(XRD)の結果を
図15に示す。
【0050】
<実施例5>
CuNP/(2-EtC
6)
3N 1,2-DDO高温短時間での合成
実施例4における反応条件を160℃、16時間から180℃、4時間に変えたほかは、実施例4と同様に反応させることにより粉末(収量0.31 g、収率89%、金属含有率93%、平均粒子径9.7±2.1 nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を
図16に示し、TEM像を
図17に示し、粒子径分布を
図18に示し、X線回折分析(XRD)の結果を
図19に示す。
【0051】
<実施例6>
CuNP/(C
4)
3N 3-ODO-1,2-PDOの合成
実施例1において用いたアミン(C
8)
3Nを(C
4)
3Nに、1,2-DDOを3-ODO-1,2-PDOにそれぞれ代えたほかは、実施例1と同様に反応させることにより粉末(収量0.34 g、収率100%、金属含有率98%、粒子径50〜100 nm)を得た。得られた粉末のTEM像を
図20に示し、X線回折分析(XRD)の結果を
図21に示す。
【0052】
<実施例7>
CuNP/(C
8)
3N 3-ODO-1,2-PDOの合成
実施例1において用いた1,2-DDOを3-ODO-1,2-PDOに代えたほかは、実施例1と同様に反応させることにより粉末(収量0.36 g、収率100%、金属含有率93%、粒子径10〜50 nm)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を
図22に示し、TEM像を
図23に示し、X線回折分析(XRD)の結果を
図24に示す。
【0053】
<
参考例8>
CuNP/(2-EtC
6)
3N DDTの合成
実施例4において用いた1,2-DDOをDDTに代えたほかは、実施例4と同様に反応させることにより粉末(収量0.29g、収率91%、金属含有率100%、粒子径100〜500 nm)を得た。得られた粉末のTEM像を
図25に示し、X線回折分析(XRD)の結果を
図26に示す。
【0054】
<比較例1>
CuNP/(2-EtC
6)
3N 1-C
12OHの合成
実施例4において用いたジオール1,2-DDOを1-C
12OH に代えたほかは、実施例4と同様に反応させることにより粉末(収量0.24 g、収率74%、金属含有率100%、粗大化)を得た。得られた粉末のTG/DTA測定による熱重量(TG)変化の結果を
図27に示す。粗大化した銅粒子は窒素雰囲気中の微量酸素により酸化され、重量増が見られた。また、TEM像を
図28に示し、X線回折分析(XRD)の結果を
図29に示す。
【0055】
<試験例1>
実施例で得られた銅系ナノ粒子の耐酸化性について調べた。一般に、銅は酸化されやすい金属であり、ナノ粒子になることによってさらに酸化されやすくなることが知られている。そこで、合成した銅ナノ粒子のうち100 nm以下で融着が起こっていない粒子について、合成直後と1ヵ月後の粉末X線回折(XRD)を比較することにより耐酸化性を調べた。その結果を
図30及び
図31に示す。これらの結果からも明らかなように、平均粒子径(4.5±0.93 nm)が一番小さいCuNP/(C
8)
3N 1,2-DDOの際、合成直後と1ヵ月後の粉末X線回折(XRD)の亜酸化銅に帰属する回折パターンにわずかな増加がみられ、酸化の進行が確認された。また、平均粒子径がCuNP/(C
8)
3N 1,2-DDOより大きくなる、CuNP/(iPr)
2NEt 1,2-DDO(平均粒子径(5.1±0.90 nm))について同様に耐酸化性を検討したところ、
図32に示すように酸化が進行していなかった。さらに粒子径の大きい、CuNP/(2-EtC
6)
3N 1,2-DDO(平均粒子径(7.2±1.9 nm))
図33、CuNP/(2-EtC
6)
3N
1,2-DDO・短時間合成(平均粒子径(9.65±2.07 nm))
図34、CuNP/1,2-DDO(平均粒子径(24.15±13.94 nm))
図35についても同様に耐酸化性を検討した。その結果、合成直後と1ヵ月後の粉末X線回折(XRD)の回折パターンはほぼ同じであり、Cu及びCu
2OのXRDパターンの強度比に1%以上の変化は確認されなかった。また、合成直後の粉末X線回折(XRD)を比較すると、平均粒子径が大きくなるにつれて亜酸化銅に帰属する回折パターンが小さくなっていることが確認された(
図36、
図37)。
【0056】
<試験例2>
Cuナノ粒子ペーストによる焼成膜の特性
実施例1で合成したCuナノ粒子 CuNP/(C
8)
3N 1,2-DDOに、ポリエステル系分散剤と溶剤にターピネオールを加え、分散性を促進させるためにトルエン数滴を滴下した。トルエンが揮発逸散し、残存しなくなるまで混ぜ、金属含有率60wt%のペーストに調合した。
このペーストを用いてスクリーン印刷法により電極パターンを印刷し、大気中にて350℃×30分間焼成した後、窒素に3体積%の水素を含む還元雰囲気下で350℃×30分間焼成した。得られた焼成膜の電気特性を表1に示す。この焼成膜の比抵抗値は20μΩcm以下というバルクに匹敵する比抵抗値を示した。また、
図38には、ポリイミドフィルム上に形成した配線パターンを示す。このように、本発明によるCuナノ粒子を用いたペーストは、配線形成用として好適に用いることができる。
【0057】
【表1】
【0058】
<試験例3>
Cuナノ粒子ペーストによる接合実験
実施例1で合成したCuナノ粒子 CuNP/(C
8)
3N 1,2-DDOに、ポリエステル系分散剤と溶剤にターピネオールを加え、分散性を促進させるためにトルエン数滴を滴下した。トルエンが揮発逸散し、残存しなくなるまで混ぜ、金属含有率60wt%のペーストに調合した。
このペーストを用いて無酸素銅の接合実験を行った。直径2mmと直径5mmのリング状無酸素銅を被接合材として、ペーストを直径5mmの無酸素銅リング表面の中央部に塗布し、直径2mmの無酸素銅リングではさんだ。まず、150℃に加熱し、300秒保持し、ペーストを乾燥させた。次に20MPaの加圧をかけ、所定の温度(300〜400℃)まで加熱し、その温度で300秒保持した。その後、圧力を加えることなく、自然放冷した。接合した継ぎ手のせん断試験の結果を
図39に示す。これから明らかなように、このように本発明による銅ナノ粒子ペーストは10MPa以上の強度を有し、接合用途にも好適な材料である。