【実施例1】
【0016】
まず、実施例1におけるMRI装置の構成について説明する。
図1は、実施例1におけるMRI装置の構成を説明するための図である。
図1に示すように、実施例1におけるMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイル6、送信部7、受信コイル8、受信部9、シーケンス制御部10および計算機システム20を有する。
【0017】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石1としては、例えば、永久磁石、超伝導磁石などが使用される。
【0018】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0019】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する装置である。
【0020】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場およびリードアウト用傾斜磁場にそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場は、任意に撮像断面(スライス面)を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0021】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、後述する制御部26による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向および上下方向へ移動する。
【0022】
送信コイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。
【0023】
送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信コイル6に送信する。具体的には、送信部7は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部などを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。
【0024】
受信コイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、上記の高周波磁場の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。そして、受信コイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0025】
受信部9は、受信コイル8から出力される磁気共鳴信号を入力して磁気共鳴信号のデータを生成する。具体的には、受信部9は、選択器、前段増幅器、位相検波器およびアナログデジタル変換器を有する。選択器は、受信コイル8から出力される磁気共鳴信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力される磁気共鳴信号を増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力される磁気共鳴信号の位相を検波する。アナログデジタル変換器は、位相検波器から出力される信号をデジタル変換することで磁気共鳴信号のデータを生成する。
【0026】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるパルスシーケンスの情報(シーケンス情報)に基づいて、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動することで、被検体Pのスキャンを行う。そして、シーケンス制御部10は、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動して被検体Pをスキャンした結果、受信部9から磁気共鳴信号データが送信されると、その磁気共鳴信号データを計算機システム20へ転送する。
【0027】
なお、「シーケンス情報」とは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信コイル6に送信する高周波信号の強さや高周波信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、スキャンを行うための手順を時系列に沿って定義した情報である。
【0028】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行ない、インタフェース部21、画像再構成部22、記憶部23、入力部24、表示部25および制御部26を有する。
【0029】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、インタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部10から磁気共鳴信号データを受信する。磁気共鳴信号データを受信すると、インタフェース部21は、受信した磁気共鳴信号データを記憶部23に格納する。
【0030】
画像再構成部22は、記憶部23に記憶された磁気共鳴信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、画像データ(磁気共鳴画像)を再構成する処理部である。
【0031】
記憶部23は、インタフェース部21により受信された磁気共鳴信号データや、画像再構成部22により再構成された画像データ、操作者から設定された各種情報などを記憶する。
【0032】
入力部24は、操作者から各種操作や情報入力を受け付け、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスやキーボードなどを有し、表示部25と協働することによって、各種操作を受け付けるためのユーザインタフェースをMRI装置100の操作者に対して提供する。
【0033】
表示部25は、後述する制御部26による制御のもと、画像データ等の各種の情報を表示する。表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスが利用可能である。
【0034】
制御部26は、図示していないCPUやメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、制御部26は、入力部24を介して操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部10に送信することでスキャンを制御したり、スキャンの結果としてシーケンス制御部10から送られる磁気共鳴信号データに基づく画像の再構成を制御したりする。
【0035】
このように、本実施例1におけるMRI装置100は、被検体P内から発せられる磁気共鳴信号を収集して磁気共鳴画像を再構成する装置である。そして、本実施例1におけるMRI装置100は、位置決め画像上において、複数の撮像領域が設定された場合に、以下に説明する制御部26の制御により、複数の撮像領域における位相エンコード方向の設定を容易にすることが可能となるように構成された装置である。
【0036】
以下、本実施例1における制御部26の処理について、
図2、
図3A、
図3B、
図4A、
図4Bおよび
図4Cを用いて説明する。なお、
図2は、実施例1における制御部の構成を説明するための図であり、
図3A、
図3B、
図4A、
図4Bおよび
図4Cは、実施例1における方向設定部を説明するための図である。
【0037】
図2に示すように、本実施例1における制御部26は、表示制御部26aおよび方向設定部26bを有する。そして、本実施例1における入力部24には、一括設定用ボタン24aが設置される。
【0038】
表示制御部26aは、表示部25のモニタに画像データおよび設定情報などを表示するように制御する。具体的には、表示制御部26aは、撮像領域の位置決めを行なうための位置決め画像を表示するように制御する。例えば、実施例1では、椎間板ヘルニアなどの脊椎診断を行なう場合に、被検体Pの脊椎をサジタル面にて撮像したMRI画像(サジタル画像)が位置決め画像として画像再構成部22にて再構成される。これにより、表示制御部26aは、記憶部23に格納された位置決め画像を読み出して、表示部25のモニタに表示させる。
【0039】
入力部24は、位置決め画像上にて複数の撮像領域の設定を操作者から受け付ける。すなわち、入力部24のマウスを操作することで、操作者は、位置決め画像を参照して、脊椎に沿った複数の平行なスライス面において複数のMRI画像を撮像するために、複数の撮像領域を順次設定する。具体的には、操作者は、予め設定されたスライス条件(スライス枚数、スライス厚およびスライス長)により、複数の平行なスライス面からなるスラブを、角度を変えながら順次設定することで、複数の撮像領域を設定する。例えば、操作者は、マウスを操作してサジタル画像上に2つの点(第1点および第2点)を順次指定することで、3つの平行なスライス面からなるスラブを3つ設定する。
【0040】
かかるマウス操作により設定された各撮像領域の位相エンコード方向は、マウスの移動方向に沿った方向に設定される。そして、表示制御部26aは、位置決め画像上において設定された複数の撮像領域とともに、位相エンコード方向も表示させる。
【0041】
そして、
図2に示す方向設定部26bは、入力部24を用いた操作者による設定操作に関わらず、複数の撮像領域における各位相エンコード方向を同一方向に設定する。具体的には、方向設定部26bは、入力部24を介して操作者から位相エンコード方向の設定要求を受付けた場合に、複数の撮像領域における各位相エンコード方向を同一方向に設定する。より具体的には、方向設定部26bは、一括設定用ボタン24aが操作者により押下された場合に、複数の撮像領域における各位相エンコード方向を一括して同一方向に設定する。
【0042】
例えば、
図3Aの左図に示すように、3つのスラブ中、真ん中のスラブの位相エンコード方向が他のスラブの位相エンコード方向と異なっている場合、操作者は、一括設定用ボタン24aを押下する。これにより、方向設定部26bは、
図3Aの右図に示すように、すべてのスラブの位相エンコード方向が同一方向(図中では背腹方向)となるように再設定する。
【0043】
そして、表示制御部26aは、
図3Aの右図に示すように、すべてのスラブの位相エンコード方向が背腹方向として設定された画像を表示部25に表示させる。
【0044】
また、
図3Aの右図に示す画像を参照した操作者が、再度、一括設定用ボタン24aを押下すると、方向設定部26bは、
図3Bに示すように、すべてのスラブの位相エンコード方向を背腹方向とは逆の腹背方向に再設定する。
【0045】
なお、上記では、複数のスラブからなる複数の撮像領域が一括して設定された際に、各スラブの位相エンコード方向を同一方向に再設定する場合について説明したが、スラブが追加して設定された際に、各スラブの位相エンコード方向を同一方向に設定する場合でもよい。例えば、
図4Aに示すように、操作者がスラブaを設定し、その後、操作者が2つのスラブbおよびcを追加して設定したとする。ここで、スラブが追加して設定された際のマウスの移動方向により、例えば、
図4Bに示すように、スラブcの位相エンコード方向のみが他のスラブの位相エンコード方向と異なってしまう場合がある。
【0046】
そこで、
図4Bに示す画像を参照した操作者が、一括設定用ボタン24aを押下すると、方向設定部26bは、
図4Cに示すように、すべてのスラブの位相エンコード方向を、例えば、腹背方向に設定する。
【0047】
方向設定部26bの処理が実行されたのち、制御部26は、設定された位相エンコード方向に基づくシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報を、インタフェース部21を介してシーケンス制御部10に送信する。これにより、MRI装置100は、複数の撮像領域におけるMRI画像の撮像を実行する。
【0048】
なお、方向設定部26bが設定する位相エンコード方向の方向は、
図3Aおよび
図4Cに例示したように、同一の位相エンコード方向が多い方向に多数決にて設定される場合であってもよいし、予め登録された方向にて設定される場合であってもよい。例えば、方向設定部26bが設定する位相エンコード方向の方向は、位置決め画像の右側から左側に向かう方向に一括して設定される場合であってもよい。
【0049】
また、上記では、スラブにより複数の撮像領域が設定された際に、すべてのスラブに含まれる各撮像領域の位相エンコード方向を同一方向に設定する場合を実施例として説明したが、本実施例1はこれに限定されるものではない。すなわち、本実施例1は、1つのスライス面からなる撮像領域が順次設定されることで複数の撮像領域が設定された場合に、すべての撮像領域の位相エンコード方向を同一方向に設定する場合であってもよい。
【0050】
また、上記では、一つの位置決め画像(サジタル画像)において設定された複数の撮像領域の位相エンコード方向を当該位置決め画像にて同一方向に設定する場合を実施例として説明したが、本実施例1はこれに限定されるものではない。すなわち、本実施例1は、複数の位置決め画像(サジタル画像、コロナル画像、アキシャル画像およびオブリーク断面画像など)が用いられる場合でもよい。例えば、複数の位置決め画像を参照した操作者が複数の撮像領域を設定し、撮像領域および位相エンコード方向が描画された各位置決め画像を参照した操作者が位相エンコード方向を設定するための位置決め画像を選択したとする。かかる場合、方向設定部26bは、操作者が選択した位置決め画像にて、複数の撮像領域の位相エンコード方向を同一方向に設定する。
【0051】
次に、
図5を用いて、実施例1におけるMRI装置100の処理について説明する。
図5は、実施例1におけるMRI装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0052】
図5に示すように、実施例1に係るMRI装置100は、入力部24が、位置決め画像上にて複数の撮像領域の設定を操作者から受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、複数の撮像領域の設定を受け付けない場合(ステップS101否定)、MRI装置100は、待機状態となる。一方、複数の撮像領域の設定を受け付けた場合(ステップS101肯定)、MRI装置100は、操作者により一括設定用ボタン24aが押下されたか否かを判定する(ステップS102)。
【0053】
ここで、操作者により一括設定用ボタン24aが押下されなかった場合(ステップS102否定)、MRI装置100は、待機状態となる。
【0054】
一方、操作者により一括設定用ボタン24aが押下された場合(ステップS102肯定)、方向設定部26bは、複数の撮像領域における各位相エンコード方向を同一方向に設定し(ステップS103)、処理を終了する。
【0055】
上述したように、実施例1では、入力部24は、位置決め画像上にて複数の撮像領域の設定を操作者から受け付ける。方向設定部26bは、入力部24を用いた操作者による設定操作に関わらず、複数の撮像領域における各位相エンコード方向を同一方向に設定する。具体的には、方向設定部26bは、一括設定用ボタン24aが操作者により押下された場合に、複数の撮像領域における各位相エンコード方向を同一方向に設定する。
【0056】
したがって、実施例1では、撮像領域ごとに位相エンコード方向が異なる場合であっても、一括設定用ボタン24aを押下するだけで位相エンコード方向を一括して揃えることができるので、複数の撮像領域における位相エンコード方向の設定を容易にすることが可能となる。また、実施例1では、操作者の判断で一括設定用ボタン24aを押下することで、複数の撮像領域における位相エンコード方向すべてを一括して変更することができるので、位相エンコード方向の設定に起因するMRI画像のアーチファクトを軽減することが可能となる。
【0057】
また、実施例1では、表示制御部26aは、方向設定部26bにより設定された複数の撮像領域における各位相エンコード方向を、表示部25のモニタに表示させる。したがって、操作者は設定された位相エンコード方向を修正するか否かを容易に判定することができるので、複数の撮像領域における位相エンコード方向の設定をより容易にすることが可能となる。
【0058】
なお、本実施例1では、一括設定用ボタン24aが押下された場合に方向設定部26bの処理が実行される場合について説明したが、本実施例1はこれに限定されるものではない。すなわち、本実施例1は、操作者から位相エンコード方向の設定要求を受付けることなく、複数の撮像領域における各位相エンコード方向を同一方向に設定する場合であっても良い。具体的には、方向設定部26bは、入力部24を用いた操作者による設定操作により複数の撮像領域にて設定された位相エンコード方向それぞれの方向を判定し、異なる位相エンコード方向が設定された撮像領域が存在するならば、自動的にすべての位相エンコード方向を一括して同一方向に設定する場合であってもよい。
【0059】
以下、上記の実施例1の変形例の処理の流れについて、
図6を用いて説明する。
図6は、実施例1の変形例におけるMRI装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0060】
図6に示すように、実施例1の変形例に係るMRI装置100は、入力部24が、位置決め画像上にて複数の撮像領域の設定を操作者から受け付けたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、複数の撮像領域の設定を受け付けない場合(ステップS201否定)、MRI装置100は、待機状態となる。一方、複数の撮像領域の設定を受け付けた場合(ステップS201肯定)、方向設定部26bは、複数の撮像領域における各位相エンコード方向を同一方向に設定し(ステップS202)、処理を終了する。
【0061】
上記の処理によっても、位相エンコード方向の設定に起因するMRI画像のアーチファクトを軽減することが可能となる。
【0062】
図5および
図6を用いて説明した処理により、位相エンコード方向の設定に起因する折り返しアーチファクトや、フローアーチファクトが軽減される。また、
図5および
図6を用いて説明した処理により、ケミカルシフトアーチファクトを考慮した複数の撮像領域の設定に要する操作者の負荷を軽減することが出来る。
図7A、
図7Bおよび
図7Cは、実施例1の効果を説明するための図である。
【0063】
ケミカルシフトアーチファクトは、脂肪の共鳴周波数と水の共鳴周波数との違いによる影響がMRI画像にアーチファクトとして出現するものである。脂肪の共鳴周波数と水の共鳴周波数とには、「3.5ppm」程度の差(ケミカルシフト)があり、MRI画像には、このケミカルシフトの影響がリードアウト方向(RO方向)に出現する。具体的には、MRI画像には、RO方向の前後に、水と脂肪とが共存する領域がずれて描出される。より具体的には、RO方向の前方にずれた領域は、暗くなり、RO方向の後方にずれた領域は、明るくなる。
【0064】
例えば、
図7Aの左図に示すように、右から左に向かってRO方向が設定され、下から上に向かって位相エンコード(PE:Phase Encode)方向が設定されたとする。かかる場合、
図7Aの右図に示すように、撮像対象が左側にずれた領域は、暗く描出され、撮像対象が右側にずれた領域は、明るく描出される。
【0065】
また、
図7Bの左図に示すように、下から上に向かってRO方向が設定され、左から右に向かってPE方向が設定されたとする。かかる場合、
図7Bの右図に示すように、撮像対象が上側にずれた領域は、暗く描出され、撮像対象が下側にずれた領域は、明るく描出される。
【0066】
また、
図7Cの左図に示すように、上から下に向かってRO方向が設定され、右から左に向かってPE方向が設定されたとする。かかる場合、
図7Cの右図に示すように、撮像対象が下側にずれた領域は、暗く描出され、撮像対象が上側にずれた領域は、明るく描出される。
【0067】
例えば、MRI画像に描出された患部の径方向の大きさを計測する場合、操作者は、上記のケミカルシフトアーチファクトを考慮してRO方向およびPE方向の設定を行なう。すなわち、患部の上下の径方向を計測する場合、操作者は、上下方向にケミカルシフトアーチファクトが発生しないように、撮像領域のPE方向を上下方向に設定する。例えば、操作者は、
図7Aの左図に示すように、PE方向を設定する。ただし、PE方向の向きにより、RO方向の向きは、決定される。したがって、撮像領域が複数設定される場合、PE方向の向きがそれぞれ異なると、RO方向の向きも異なることなる。かかる場合、MRI画像には、患部の右側が明るくなっている撮像領域と、患部の左側が明るくなっている撮像領域とが混在することになる。例えば、操作者が患部の計測とともに、患部右側の観察を詳細に行ないたい場合、各撮像領域のケミカルシフトアーチファクトの出現パターンが異なることは、望ましくない。
【0068】
また、患部の左右の径方向を計測する場合、操作者は、左右方向にケミカルシフトアーチファクトが発生しないように、撮像領域のPE方向を左右方向に設定する。例えば、操作者は、
図7Bの左図に示すように、PE方向を左から右に向かって設定する。しかし、撮像領域を複数設定する場合、操作者の設定操作により、PE方向は、
図7Cの左図に示すように、右から左に向かって設定される場合もある。上述したように、PE方向の向きにより、RO方向の向きは、決定される。したがって、MRI画像には、患部の下側が明るくなっている撮像領域(
図7Bの右図を参照)と、患部の上側が明るくなっている撮像領域(
図7Cの右図を参照)とが混在する場合がある。例えば、操作者が患部の計測とともに、患部下側の観察を詳細に行ないたい場合、各撮像領域のケミカルシフトアーチファクトの出現パターンが異なることは、望ましくない。
【0069】
そこで、上述した方向設定部26bによりPE方向の一括設定処理が行なわれることで、ケミカルシフトアーチファクトを考慮したPE方向の設定処理に要する操作者の負担を軽減することが出来る。
【実施例2】
【0070】
実施例2では、一括設定される位相エンコード方向がMRI画像の撮像条件に応じて予め設定されている場合について、
図8、
図9A、
図9B、
図10および
図11を用いて説明する。
図8は、実施例2における制御部および記憶部の構成を説明するための図であり、
図9Aおよび
図9Bは、設定情報データを説明するための図であり、
図10および
図11は、実施例2における方向設定部を説明するための図である。
【0071】
図8に示すように、実施例2におけるMRI装置100は、記憶部23に設定情報データ23aが記憶されており、実施例2における方向設定部26bの処理が設定情報データ23aに基づいて実行される点が実施例1と異なる。以下、これらを中心に説明する。
【0072】
図8に示す入力部24は、位置決め画像上にて撮像領域と、当該撮像領域にて撮像されるMRI画像の撮像条件との「撮像に関する情報」の設定を操作者から受け付ける。そして、実施例2における方向設定部26bは、入力部24が受け付けた「撮像に関する情報」に基づいて、撮像領域の位相エンコード方向を設定する。具体的には、実施例2における方向設定部26bは、「撮像に関する情報」に該当する位相エンコード方向を設定情報データ23aから取得する。これにより、実施例2における方向設定部26bは、撮像領域の位相エンコード方向を設定する。設定情報データ23aは、予めMRI装置100の操作者により記憶部23に格納されたデータである。一例を挙げると、設定情報データ23aは、撮像部位や撮像断面方向、被検体Pの体位の情報と、位相エンコード方向とを対応付けた設定情報である。
【0073】
例えば、設定情報データ23aは、
図9Aに示すように、「撮像部位:脊椎」、「撮像断面:アキシャル」および「位相エンコード方向:腹背方向」といったデータを記憶する。また、設定情報データ23aは、
図9Aに示すように、「撮像部位:脊椎」、「撮像断面:サジタル」および「位相エンコード方向:頭足方向」といったデータを記憶する。ただし、「腹背方向」や「頭足方向」は、MRI装置100に設定された座標系に対して一つの方向として設定することが出来ない。例えば、被検体Pが仰臥位であるか、腹臥位であるかによって、MRI装置100に設定された座標系における「腹背方向」は、異なる。このため、
図9Aに示す一例では、「撮像部位:脊椎」、「撮像断面:アキシャル」および「体位:仰臥位」に対して、「位相エンコード方向:腹背方向」が「方向11」であると対応付けられている。同様に、
図9Aに示す一例では、「体位:腹臥位」に対して、「位相エンコード方向:腹背方向」が「方向12」であると対応付けられている。また、
図9Aに示す一例では、「体位:側臥位(右腕)」に対して、「位相エンコード方向:腹背方向」が「方向13」であると対応付けられている。また、
図9Aに示す一例では、「体位:側臥位(左腕)」に対して、「位相エンコード方向:腹背方向」が「方向14」であると対応付けられている。
【0074】
また、
図9Aに示す一例では、「撮像部位:脊椎」、「撮像断面:サジタル」および「体位:仰臥位」に対して、「位相エンコード方向:頭足方向」が「方向21」であると対応付けられている。同様に、
図9Aに示す一例では、「体位:腹臥位」に対して、「位相エンコード方向:頭足方向」が「方向22」であると対応付けられている。また、
図9Aに示す一例では、「体位:側臥位(右腕)」に対して、「位相エンコード方向:頭足方向」が「方向23」であると対応付けられている。また、
図9Aに示す一例では、「体位:側臥位(左腕)」に対して、「位相エンコード方向:頭足方向」が「方向24」であると対応付けられている。
【0075】
ここで、位置決め画像の撮影前には、予め操作者によりMRI画像の撮像プランが入力される。撮像プランは、「撮像に関する情報」を含んでいる。すなわち、撮像プランには、本撮像時の撮像条件として、MRI画像における撮像部位や撮像断面、体位の情報が含まれている。実施例2における方向設定部26bは、設定情報データ23aに基づいて、撮像領域における位相エンコード方向を設定する。具体的には、方向設定部26bは、操作者が位置決め画像上にて一つ、または、複数の撮像領域を設定したうえで、一括設定用ボタン24aを押下した場合に、撮像プランから本撮像時のMRI画像における撮像部位と撮像断面と体位との情報を取得する。例えば、方向設定部26bは、「撮像部位:脊椎」、「撮像断面:アキシャル」および「体位:仰臥位」を取得する。なお、方向設定部26bは、撮像部位の情報を、撮像に用いられているRFコイル(受信コイル8)の種別に関する情報(例えば、脊椎用RFコイルなど)により取得してもよい。
【0076】
そして、方向設定部26bは、取得した「撮像部位:脊椎」、「撮像断面:アキシャル」および「体位:仰臥位」の情報に対応付けられている「位相エンコード方向:腹背方向(方向11)」を設定情報データ23aから取得する。
【0077】
そして、方向設定部26bは、例えば、
図10に示すように、各撮像領域の位相エンコード方向を、腹背方向(方向11)に設定する。
【0078】
このように、方向設定部26bは、入力部24が撮像条件として受け付けた撮像部位と、撮像断面方向と、被検体Pの体位とに基づいて、撮像領域における位相エンコード方向を設定する。
【0079】
また、設定情報データ23aとしては、
図9Bに示す一例もある。例えば、設定情報データ23aは、「撮像部位形状:長方形」と「位相エンコード方向:短辺」といったデータを記憶する。
【0080】
そして、方向設定部26bは、操作者が位置決め画像上にて一つ、または、複数の撮像領域を設定したうえで、一括設定用ボタン24aを押下した場合に、「撮像に関する情報」である撮像領域の形状を取得する。そして、方向設定部26bは、操作者が設定した撮像領域の形状が長方形であるならば、当該撮像領域の短辺を位相エンコード方向として設定する。例えば、方向設定部26bは、
図11に示すように、本撮像のMRI画像をアキシャル断面にて行なうために、長方形の撮像領域を設定した場合、設定情報データ23aに基づいて、位相エンコード方向を長方形の短辺に設定する。これにより、複数のアキシャル断面を長方形の撮像領域にてMRI画像を撮像する場合、位相エンコード方向は、一括して短辺に設定される。
【0081】
このように、方向設定部26bは、入力部24が受け付けた撮像領域の形状が長方形である場合、当該撮像領域の短辺を位相エンコード方向として設定する。
【0082】
なお、方向設定部26bは、
図11に示すように、撮像部位が「脊椎」であり、撮像断面が「アキシャル断面」であることから、短辺の腹背方向を位相エンコード方向として設定する。
【0083】
なお、実施例2における方向設定部26bは、
図10および
図11を用いて説明した位相エンコード方向の設定処理以外に、
図12〜14を用いて以下説明するように、様々な設定情報データを用いて位相エンコード方向の設定処理を行なってもよい。
図12〜14は、
図10および
図11に例示した位相エンコード方向の設定処理以外に、実施例2における方向設定部が設定情報データを用いて実行する位相エンコード方向の設定処理に関する他の具体例を説明するための図である。
【0084】
例えば、設定情報データ23aは、設定情報データ23aは、撮像部位、撮像断面方向、撮像に用いられるパルスシーケンスの種類、撮像方向および被検体Pの体位に対して、位相エンコード方向が対応付けられたデータを記憶する。
図12に示す一例では、設定情報データ23aは、「撮像部位:頭」、「撮像断面:アキシャル」、「シーケンス:EPI」、「撮像方法:Diffusion」および「体位:仰臥位」に対して、「位相エンコード方向:PA方向(方向3)」が対応付けられたデータを記憶する。
図12に示す設定情報データ23aは、撮像部位が「頭」と設定され、撮像断面方向が「アキシャル断面方向」と設定され、パルスシーケンスの種類としてEPI(Echo Planar Imaging)が設定され、撮像方法として拡散強調画像(Diffusion weighted image)の撮像方法が設定された場合、位相エンコード方向は、後ろ(Posterior)から前(Anterior)に向かったPA方向であると対応付けられている。さらに、
図12に示す設定情報データ23aは、「体位:仰臥位」である場合、「位相エンコード方向:PA方向」が「方向3」であると対応付けられている。
【0085】
ここで、操作者が、左脳および右脳の信号差を観察するために、頭部を撮像したサジタル画像上に、アキシャル断面方向に複数の撮像領域を設定したとする。かかる場合、操作者は、撮像条件として、「撮像部位:頭」、「撮像断面:アキシャル」を設定する。そして、操作者が、パルスシーケンスの種類としてEPIを設定し、撮像方法として拡散強調画像の撮像方法を設定し、さらに、被検体Pの体位が仰臥位であると設定したとする。
【0086】
かかる場合、方向設定部26bは、設定情報データ23aを参照して、
図12に示すように、複数の撮像領域の位相エンコード方向を、PA方向(方向3)に一括して設定する。すなわち、方向設定部26bは、入力部24が撮像条件として受け付けた撮像部位と、撮像断面方向と、被検体の体位と、撮像に用いられるパルスシーケンスの種類と、撮像方法とに基づいて、撮像領域における位相エンコード方向を設定する。
【0087】
或いは、設定情報データ23aは、撮像に用いられるパルスシーケンスの種類に対して、位相エンコード方向が対応付けられたデータを記憶する。近年、造影剤を用いることなく、血流が明瞭に描出されたMRI画像を撮像する方法が開発されている。かかる撮像に用いられるパルスシーケンスとしては、FBI(Fresh Blood Imaging)シーケンスと、Flow−Spoiled FBIシーケンスが知られている。FBIは、所定のスライスエンコードにおけるエコー信号群の収集動作を、心電同期、又は、脈波同期を用いて、複数心拍毎に繰り返す撮像法である。FBIにおけるTR(Repetition Time)およびTE(Echo Time)は、T2強調画像が取得できる範囲に設定される。位相エンコード方向と血管の走行方向とを一致させると、ブラー(blur)効果で広がった信号が数ピクセルにわたって重なり合うことで、流体を強調することができ、また、位相エンコード方向のフローボイド(flow void)効果を低減できる。そこで、FBIでは、位相エンコード方向を血管の走行方向に平行に設定することで、血液や脳脊髄液などの流体を強調した画像を得ることができる。また、拡張期には動静脈ともに流速が遅いため、動静脈ともに信号強度が高く、動静脈ともに強調された画像が得られる。これに対し、収縮期には静脈内の血流の流速の変化が少ないが、動脈内の血流の流速が速くなるため動脈の信号強度が落ち、静脈のみが強調された画像が得られる。そこで、FBIでは、拡張期と収縮期でそれぞれ撮像を行ない、拡張期の画像から収縮期の画像を差分することで、動脈のみが強調された画像を得ることができる。ただし、FBIでは、大血管の動脈と大血管の静脈とを分離することができるが、末梢血管などの流れの遅い血管においては、収縮期における動脈の信号抑制が不十分となり、結果として差分画像で動脈が強調されないことがある。ここで、RO方向を血管走行方向に設定することで、読み出し(RO)傾斜磁場によるflow-dephasing効果が得られ、動脈信号が抑制される。そこで、Flow−Spoiled FBIでは、信号収集時に、RO方向において、あえて空間位置に応じて磁場強度の差をつけるスポイラー(spoiler)傾斜磁場パルスを付加し、動脈信号の位相を分散させ抑制する。すなわち、Flow−Spoiled FBIでは、位相エンコード方向が血管の走行方向に垂直に設定される。FBIを実行するためのパルスシーケンスであるFBIシーケンスや、Flow−Spoiled FBIを実行するためのパルスシーケンスであるFlow−Spoiled FBIシーケンスを用いて撮像が行なわれる場合、双方とも、血管を含み、血流方向に沿って、血管が広範囲で含まれるように撮像領域が設定される。ただし、上述したように、FBIシーケンスでは、
図13の左図に示すように、位相エンコード方向が血管の走行方向に平行に設定される必要がある。また、上述したように、Flow−Spoiled FBIシーケンスでは、
図13の右図に示すように、位相エンコード方向が血管の走行方向に垂直に設定される必要がある。
【0088】
そこで、設定情報データ23aは、撮像条件として、FBIシーケンスが設定された場合の位相エンコード方向を「血管の走行方向に対して平行」とするデータを記憶する。また、設定情報データ23aは、撮像条件として、Flow−Spoiled FBIシーケンスが設定された場合の位相エンコード方向を「血管の走行方向に対して垂直」とするデータを記憶する。これにより、方向設定部26bは、設定情報データ23aを参照して、撮像領域の位相エンコード方向を、
図13の左図、または、
図13の右図に示すように、設定する。すなわち、方向設定部26bは、入力部24が撮像条件として受け付けた撮像部位と、撮像に用いられるパルスシーケンスの種類とに基づいて、撮像領域における位相エンコード方向を設定する。
【0089】
或いは、設定情報データ23aは、撮像に用いられる受信コイル8の種別に対して、位相エンコード方向が対応付けられたデータを記憶する。胸部撮像の場合、一般的には、位相エンコード方向は、腹背方向であることが望ましい。しかし、アキシャル断面の撮像領域が設定された乳房撮像を行なう場合は、位相エンコード方向は、折り返しアーチファクトの発生を回避するために、撮像領域の左右方向とされることが望ましい。そこで、設定情報データ23aは、
図14に示すように、撮像条件として「コイル:Breast」が設定され、「撮像断面:アキシャル」が設定された場合の位相エンコード方向を「左右」であるとするデータを記憶する。なお、乳房のMRI画像を撮像するために、乳房専用の受信コイル8である「Breastコイル」が設定された場合、通常、被検体Pの体位は、腹臥位となる。
【0090】
これにより、方向設定部26bは、設定情報データ23aを参照して、撮像領域の位相エンコード方向を、
図14に示すように、左右方向に設定する。すなわち、方向設定部26bは、入力部24が撮像条件として受け付けた撮像部位と、撮像断面方向と、撮像に用いられる受信コイルの種別とに基づいて、撮像領域における位相エンコード方向を設定する。
【0091】
このように、方向設定部26bは、入力部24が撮像条件として受け付けた撮像部位と、撮像断面方向と、被検体の体位と、撮像に用いられるパルスシーケンスの種類と、撮像方法と、撮像に用いられる受信コイルの種別との少なくとも二つの組み合わせに基づいて、撮像領域における位相エンコード方向を設定する。なお、方向設定部26bは、入力部24が撮像条件として受け付けた撮像部位と、撮像断面方向と、被検体の体位と、撮像に用いられるパルスシーケンスの種類と、撮像方法と、撮像に用いられる受信コイルの種別との少なくとも一つに基づいて、撮像領域における位相エンコード方向を設定する場合であっても良い。例えば、方向設定部26bは、入力部24が撮像条件として受け付けた撮像に用いられるパルスシーケンスの種類に基づいて、撮像領域における位相エンコード方向を設定する場合であっても良い。
【0092】
なお、
図8に示す表示制御部26aは、実施例1と同様に、方向設定部26bにより設定された撮像領域における位相エンコード方向を、表示部25に表示するように制御する。
【0093】
次に、
図15を用いて、実施例2におけるMRI装置100の処理について説明する。
図15は、実施例2におけるMRI装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0094】
図15に示すように、実施例2に係るMRI装置100は、入力部24が、位置決め画像上にて撮像に関する情報を受け付けたか否かを判定する(ステップS301)。ここで、撮像に関する情報を受け付けない場合(ステップS301否定)、MRI装置100は、待機状態となる。一方、撮像に関する情報を受け付けた場合(ステップS301肯定)、MRI装置100は、操作者により一括設定用ボタン24aが押下されたか否かを判定する(ステップS302)。
【0095】
ここで、操作者により一括設定用ボタン24aが押下されなかった場合(ステップS302否定)、MRI装置100は、待機状態となる。
【0096】
一方、操作者により一括設定用ボタン24aが押下された場合(ステップS302肯定)、方向設定部26bは、設定情報データ23aを参照して、撮像領域における位相エンコード方向を設定し(ステップS303)、処理を終了する。
【0097】
上述したように、実施例2では、入力部24は、位置決め画像上にて撮像領域と、当該撮像領域にて撮像される磁気共鳴画像の撮像条件との撮像に関する情報の設定を操作者から受け付ける。方向設定部26bは、入力部24が受け付けた撮像に関する情報に基づいて、撮像領域の位相エンコード方向を設定する。例えば、方向設定部26bは、入力部24が撮像条件として受け付けた撮像部位と、撮像断面方向と、被検体Pの体位とに基づいて、撮像領域における位相エンコード方向を設定する。または、方向設定部26bは、入力部24が撮像条件として受け付けた撮像部位と、撮像断面方向と、被検体の体位と、撮像に用いられるパルスシーケンスの種類と、撮像方法と、撮像に用いられる受信コイルの種別との少なくとも一つに基づいて、撮像領域における位相エンコード方向を設定する。
【0098】
したがって、実施例2では、撮像領域における位相エンコード方向を、撮像条件に応じて操作者が設定したい位相エンコード方向に一括して設定することができるので、撮像領域における位相エンコード方向の設定を容易にすることが可能となる。
【0099】
また、実施例2では、方向設定部26bは、入力部24が受け付けた撮像領域の形状が長方形である場合、当該撮像領域の短辺を位相エンコード方向として設定するので、長辺を位相エンコード方向とすることでMRI画像の位相誤差が大きくなることを回避でき、MRI画像の画質を向上させることが可能となる。
【0100】
なお、本実施例2では、一括設定用ボタン24aが押下された場合に方向設定部26bの処理が設定情報データ23aに基づいて実行される場合について説明したが、本実施例2はこれに限定されるものではない。すなわち、本実施例2は、操作者から位相エンコード方向の設定要求を受付けることなく、方向設定部26bが設定情報データ23aに基づいて、自動的に位相エンコード方向を一括して設定する場合であってもよい。
【0101】
以下、上記の実施例2の変形例の処理の流れについて、
図16を用いて説明する。
図16は、実施例2の変形例におけるMRI装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0102】
図16に示すように、実施例2の変形例に係るMRI装置100は、入力部24が、位置決め画像上にて撮像に関する情報を受け付けたか否かを判定する(ステップS401)。ここで、撮像に関する情報を受け付けない場合(ステップS401否定)、MRI装置100は、待機状態となる。
【0103】
一方、撮像に関する情報を受け付けた場合(ステップS401肯定)、方向設定部26bは、設定情報データ23aを参照して、撮像領域における位相エンコード方向を設定し(ステップS402)、処理を終了する。
【0104】
上記の処理によっても、撮像領域における位相エンコード方向の設定を容易にすることが可能となる。
【0105】
以上、説明したとおり、実施例1および実施例2によれば、複数の撮像領域における位相エンコード方向の設定を容易にすることが可能となる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。