特許第5707173号(P5707173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5707173
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20150402BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20150402BHJP
   F21Y 101/00 20060101ALN20150402BHJP
【FI】
   F21S8/10 181
   F21W101:10
   F21Y101:00
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-43498(P2011-43498)
(22)【出願日】2011年3月1日
(65)【公開番号】特開2012-181979(P2012-181979A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2014年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守屋 広明
(72)【発明者】
【氏名】三間 泰行
【審査官】 川内野 真介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−368702(JP,A)
【文献】 特開2002−231016(JP,A)
【文献】 特開2001−110209(JP,A)
【文献】 特開2005−085653(JP,A)
【文献】 特開2011−165552(JP,A)
【文献】 実開平05−097008(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口したハウジングと、
前記ハウジングの前面開口を覆うように当該ハウジングに固定されたレンズと、
前記ハウジング及び前記レンズで形成される灯室内に配置された光源と、
前記灯室内に配置され、前記光源から出射された光を前方へ反射させるリフレクタと、
前記ハウジングの前面開口の周縁に沿って前記灯室内の前記リフレクタの前方に配置された環状のエクステンションと、
を備える車両用前照灯において、
前記ハウジングは、当該ハウジングの開口端から所定長さに亘って前後方向に沿った溝部を内周面に有し、
前記リフレクタは、左右方向に突設されたボス部を外周面に有し、
前記エクステンションは、後方に延出された延出部を有し、
前記ボス部は、前記リフレクタの外周面の左右両側部に互いの中心軸を一致させて形成され、
前記延出部の後端面と前記溝部の後端面とで前記ボス部を前後方向に挟持した状態で、前記エクステンションと前記ハウジングとが係合固定されており、
前記リフレクタの後面には、前記ボス部と中心軸を一致させた円弧状のウォームホイールが形成され、
前記ハウジングの内部には、前記ウォームホイールと噛合して前記ボス部の中心軸回りに前記リフレクタを回転させるエイミングスクリュが設けられ、
前記エクステンションの内周面は、前記光源から出射されて前記リフレクタによって反射された光を当該エクステンションの周方向に拡散させつつ前方へ反射させるように、当該内周面の後端から前端に向かって外方へ広がるように湾曲して傾斜しつつ放射断面での形状が湾曲凸面状に形成されているとともに、当該内周面の全周に亘って形成された複数のローレットを有し
前記複数のローレットが、前記エクステンションの周方向への円弧を左右方向と直交する方向に沿って延在させて連なっていることを特徴とする車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ヘッドライトなどの車両用前照灯として、前面が開口したハウジングと、ハウジングの前面開口を覆うレンズとで形成される灯室内に、装飾部材であるエクステンションを備えるものが知られている。この種の車両用前照灯では、光源と、光源からの光を前方へ反射させるリフレクタとが灯室内の後部に設けられ、エクステンションは、これら光源やリフレクタの前方でハウジングの開口周縁に沿うように配置されている。
【0003】
上記車両用前照灯では、光源から出射された光の一部が、リフレクタで反射されるなどして直接又は間接的にエクステンションの表面に入射し、当該エクステンション表面で反射されて、対向車等へのグレア(眩惑)光となる領域に照射されてしまう。この照射光は、エクステンションの表面が平面状に形成されているために、グレア光となる領域に集光されやすく、その光量がグレア光としての法規上の規制値を超えてしまうことがある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載の車両用前照灯では、エクステンションの後端に遮光リブを立設して当該エクステンションの表面への入射光を遮光することによって、上述のようなグレア光の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−225557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両用前照灯では、エクステンションの表面への入射光を単純に遮光しているため、この遮光された光が有効に利用されることなく無駄なものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、エクステンションの表面に入射する光によるグレアを抑制しつつ、当該光を有効利用することができる車両用前照灯の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
前面が開口したハウジングと、
前記ハウジングの前面開口を覆うように当該ハウジングに固定されたレンズと、
前記ハウジング及び前記レンズで形成される灯室内に配置された光源と、
前記灯室内に配置され、前記光源から出射された光を前方へ反射させるリフレクタと、
前記ハウジングの前面開口の周縁に沿って前記灯室内の前記リフレクタの前方に配置された環状のエクステンションと、
を備える車両用前照灯において、
前記ハウジングは、当該ハウジングの開口端から所定長さに亘って前後方向に沿った溝部を内周面に有し、
前記リフレクタは、左右方向に突設されたボス部を外周面に有し、
前記エクステンションは、後方に延出された延出部を有し、
前記ボス部は、前記リフレクタの外周面の左右両側部に互いの中心軸を一致させて形成され、
前記延出部の後端面と前記溝部の後端面とで前記ボス部を前後方向に挟持した状態で、前記エクステンションと前記ハウジングとが係合固定されており、
前記リフレクタの後面には、前記ボス部と中心軸を一致させた円弧状のウォームホイールが形成され、
前記ハウジングの内部には、前記ウォームホイールと噛合して前記ボス部の中心軸回りに前記リフレクタを回転させるエイミングスクリュが設けられ、
前記エクステンションの内周面は、前記光源から出射されて前記リフレクタによって反射された光を当該エクステンションの周方向に拡散させつつ前方へ反射させるように、当該内周面の後端から前端に向かって外方へ広がるように湾曲して傾斜しつつ放射断面での形状が湾曲凸面状に形成されているとともに、当該内周面の全周に亘って形成された複数のローレットを有し
前記複数のローレットが、前記エクステンションの周方向への円弧を左右方向と直交する方向に沿って延在させて連なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハウジングとレンズとで形成される灯室内に、ハウジングの前面開口の周縁に沿って配置された環状のエクステンションを備えており、当該エクステンションの内周面(表面)は、光源から出射された光を前方へ反射させるように、放射断面での形状が湾曲凸面状に形成されているので、光源から出射されてエクステンションの内周面に入射した光は、当該内周面で拡散されつつ前方へ反射される。これにより、エクステンションの内周面での反射光のうちグレア光となる領域に照射されるものを、法規上の規制値未満のグレア光量となるように拡散させつつ、エクステンションの内周面がリング状に発光する副配光を形成することができる。したがって、エクステンションの内周面に入射する光によるグレアを抑制しつつ、当該光を副配光用の光として有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における車両用前照灯の分解斜視図である。
図2】実施形態における車両用前照灯の平面視での断面図である。
図3図2のA−A線での断面図である。
図4】実施形態におけるエクステンションの内周面での反射光について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における車両用前照灯1の分解斜視図であり、図2は、車両用前照灯1の平面視での断面図であり、図3は、図2のA−A線での断面図である。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、「上」「下」「前」「後」「左」「右」との記載を、車両用前照灯1から見た方向を指すものとして、図面の記載と対応させて用いることとする。
【0014】
図1及び図2に示すように、車両用前照灯1は、前面が開口した略円筒状のハウジング2を備えている。ハウジング2の内周面の左右両側部には、当該ハウジング2の開口端から前後方向の中央付近までに亘り、前後方向に沿った溝部21,21が形成されている。各溝部21は、前方に開口した略半円状の後端面21aと、開口端近傍の底面に形成された係止凹部21bとを有している。
【0015】
ハウジング2には、当該ハウジング2の前面開口を覆うように素通しのレンズ3が固定されている。このレンズ3とハウジング2とで形成される灯室内には、バルブ4と、リフレクタ5と、エクステンション6とが収容されている。
このうち、バルブ4は、フィラメント41を有しており、ハウジング2の前面開口へ向かって立設するように当該ハウジング2の後面(底面)中央に固定されている。
【0016】
リフレクタ5は、バルブ4から出射された光を前方へ反射させるものであり、前方に開口した正面視円形状の凹板状に形成されて、その底面が回転放物面を基調とする反射面51を構成している。リフレクタ5の底部中央には、バルブ4を挿通させるバルブ挿通孔52が形成されている。リフレクタ5の外周面の左右両側部には、互いの中心軸を一致させて左右方向へ突設された円筒状のボス部53,53が形成されている。ボス部53,53は、ハウジング2に形成された溝部21,21の略半円状の後端面21aの半径と略同一の外径を有している。リフレクタ5は、ボス部53,53と溝部21,21の後端面21aとを摺動可能に当接させた状態で保持されており、つまり、ボス部53,53によってハウジング2に軸支されている。リフレクタ5は、この保持状態において、反射面51の焦点がフィラメント41の近傍に位置するとともに、フィラメント41がボス部53,53の中心軸上に位置するように位置決めされている。
【0017】
また、リフレクタ5の後面(背面)には、ボス部53,53と中心軸を一致させた円弧状のウォームホイール54が形成されており、このウォームホイール54は、ハウジング2の下端から当該ハウジング2内に挿入されたエイミングスクリュ7と噛合している。そのため、エイミングスクリュ7を回転させることによって、ボス部53,53の中心軸回りにリフレクタ5が回転し、エイミング調整が可能となっている。
【0018】
エクステンション6は、円環状に形成され、ハウジング2の前面開口の周縁に沿うようにリフレクタ5の前方に配置されている。エクステンション6の後端の左右両側部には、後方へ延出する延出部61,61が形成されている。延出部61,61は、ハウジング2の溝部21,21に嵌合された状態で、後端面(先端面)がリフレクタ5のボス部53,53と当接している。つまり、延出部61,61の後端面と溝部21,21の後端面21aとでボス部53,53を前後方向に挟持している。また、各延出部61の外側面の基端部には、左右方向へ突設された係止突起61aが形成されている。この係止突起61aは、延出部61の後端面がボス部53と当接した状態で、ハウジング2の係止凹部21bと係合するようになっている。そして、この係合により、エクステンション6がハウジング2に固定されている。
【0019】
また、エクステンション6の内周面62は、後端から前端に向かって外方へ広がるように傾斜しているとともに、放射断面(エクステンション6の接線方向に直交する断面;図2に示す断面)での形状が、所定の曲率で湾曲した湾曲凸面状に形成されている。更に、この内周面62には、アルミニウム被膜が蒸着されているとともに、図3に示すように、当該内周面62の全面に亘って複数のローレット62a,…が形成されている。このローレット62a,…は、エクステンション6の周方向への円弧を左右方向に直交する方向に沿って延在させた蒲鉾状にそれぞれ形成され、エクステンション6の周方向に沿って等間隔で互いに連なっている。
【0020】
このエクステンション6の内周面62には、図4に示すように、バルブ4から出射された光が、リフレクタ5の反射面51で反射されるなどして直接又は間接的に入射する。すると、この光は、所定の曲率で湾曲した湾曲凸面状の内周面62によって、拡散されつつ前方へ反射され、レンズ3を透過して車両用前照灯1から前方へ出射される。そのため、こうして出射された光のうち、グレア光となる領域に照射されたものは、法規上の規制値未満のグレア光量となるように十分に拡散される。また、車両前方から車両用前照灯1を見ると、エクステンション6の内周面62が全周に亘ってリング状に発光しているように視認される。
このとき、エクステンション6の内周面62に入射した光は、当該内周面62のローレット62a,…によってエクステンション6の周方向に拡散されつつ反射されるため、より確実に法規上の規制値未満のグレア光量となるように当該光を更に拡散することができるとともに、より広い範囲(車両前方での範囲)に亘って、エクステンション6の内周面62をリング状に発光しているように視認させることができる。
【0021】
以上のように、車両用前照灯1によれば、バルブ4から出射されてエクステンション6の内周面62に入射した光が、当該内周面62で拡散されつつ前方へ反射されるので、エクステンション6の内周面62での反射光のうちグレア光となる領域に照射されるものを法規上の規制値未満のグレア光量となるように拡散させつつ、エクステンション6の内周面62がリング状に発光する副配光を形成することができる。したがって、エクステンション6の内周面62に入射する光によるグレアを抑制しつつ、当該光を副配光用の光として有効利用することができる。
【0022】
また、エクステンション6の内周面62には、バルブ4から出射された光を当該エクステンション6の周方向に拡散させつつ反射させるローレット62a,…が全周に亘って形成されているので、エクステンション6の内周面62での反射光がより確実に法規上の規制値未満のグレア光量となるように当該光を更に拡散することができるとともに、より広い範囲(車両前方での範囲)に亘って、エクステンション6の内周面62をリング状に発光しているように視認させることができる。
【0023】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 車両用前照灯
2 ハウジング
21 溝部
21a 後端面
21b 係止凹部
3 レンズ
4 バルブ(光源)
5 リフレクタ
53 ボス部
6 エクステンション
61 延出部
61a 係止突起
62 内周面
62a ローレット
図1
図2
図3
図4