(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。各図では見やすさのため、繰り返しとなる符号は省略していることがある。
【0016】
図1は、第一実施形態にかかる技工物スタンド10の平面図である。
図2は
図1にII−IIで示した線に沿った断面図である。
図1、
図2を参照しつつ技工物スタンド10について説明する。
【0017】
図1、
図2からわかるように、技工物スタンド10は全体として円柱状の部材である本体11を具備している。そして、本体11の上面からは、円柱の軸に平行に延びる保持手段としての複数の穴12が開けられている。本実施形態では穴12は円柱の軸方向他方の端部には至っておらず、貫通していないが、特に限定されることなく貫通していてもよい。
すなわち、本実施形態では穴12が後述する歯科模型に具備されるピン54、64、65(
図3参照)を保持する保持手段として機能する。実際にピン54、64、65保持するのは穴12が設けられた本体11の壁面であるが、ここでは当該本体11の壁面を含めて穴12を保持手段として説明する。
【0018】
本実施形態では、円柱の軸に直交する断面において、穴12は六角形の断面を有している。これにより、後述するように穴12にピン54、64、65(
図3参照)を差し込んだときにピン54、64、65と本体11(穴12の壁面)との接触面積を適切なものとすることができる。従って、歯科模型を十分に保持しつつもピン54、64、65の抜き差しを容易とすることが可能となる。ただし、これに限定されることはなく、必要に応じて、円形、楕円形、その他の多角形、一方に長い溝状であってもよい。
また、本実施形態では円柱の軸方向において下端部以外では穴12は同じ太さとされているが、これに限定されることなく、深さ方向に細くなるように形成されていてもよい。これによれば先細であるピンが用いられた場合にも接触面積を大きくとることができ、保持力を高く維持できる。また、技工物スタンド10の製造の際に、型からの離型性を向上させることも可能となる。
【0019】
ここで、各穴12は、その長手方向に直交する断面(
図1に表れる形状)において、その周囲長が10mm以上であることが好ましい。また、各穴12の長手方向に直交する断面の断面積を当該周囲長で除した値で定義される相当径が10mm以下であることが好ましい。これにより小さめの歯科模型を配置したときであっても、該歯科模型の全部が穴12内へ落ちてしまうことを防止することができる。
【0020】
また保持手段としての穴12を形成する本体11は、軟らかい材料により形成されており、弾性に富むものとなっている。これにより、穴12の形状を変形させることができる。これによれば、ピン54、64、65の位置と穴12の位置とがずれていた場合に、その位置ずれに対して穴12が変形して対応することができ、ピン54、64、65と穴12との位置ずれを吸収することが可能となる。
すなわち、複数の歯科模型を技工物スタンドに配置するに際して、ピンが差し込めるように穴(本体)の弾性変形範囲内で穴の形状を変形させることができる。これにより、従来の技工物スタンドでは、配置することができなかった場合でも、技工物スタンド10によれば配置することが可能となる。
従って、歯科模型を技工物スタンドに配置する際の自由度や容易性を向上させることができる。また、配置の自由度が高いので、複数の歯科模型を1つの技工物スタンドに配置することや、複数のピンを具備する歯科模型を配置するに際してもその利便性が向上する。
【0021】
このように、本体11の穴12はピン54、64、65の位置に合わせるようにその弾性の範囲内で変形できればよい。具体的には、本体11はヤング率が5GPa以下の樹脂又はゴムであることが好ましい。そしてそのための材質としては例えばシリコーン、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、弾性・耐熱性・耐衝撃性等を向上させるために樹脂にガラス繊維などを含有させた材料や、2種類以上の樹脂を混合した材料であってもよい。
【0022】
ここで、このような穴12の変形をさらに容易とするために、隣接する穴12間に存する本体11の厚さを、保持力を確保できる範囲で薄くすることが好ましい。
【0023】
また、
図1からわかるように、穴12は等しいピッチで最密となるように配列されていてもよい。これによれば、穴12を多く配置することができるので、歯科模型の配置の自由度をさらに高めることができる。従来の技工物スタンドの中には、歯科模型の配置の自由度を高めるために敢えて穴をランダムに配列するものもあるが、本発明によれば穴12を適切に変形させることができるので、穴12を等間隔で配置しても歯科模型の配置の自由度を十分に確保することができる。また、このように等間隔に穴12を設けることによりその製造もしやすくなる。
【0024】
さらに、保持手段としての穴12を構成する本体11は透光性を有する材料により形成されていることが好ましい。これによれば、本体11を透過して斜め下方からも技工物スタンドに配置された歯科模型上の重合材料に光を照射することができ、従来の技工物スタンドでは光が届かなかった部位にも光を照射することができる。従来では、光が届かなかった部位があったときには、歯科模型の姿勢を変更して改めて光を照射し直す必要があった。これに対して技工物スタンド10では光の照射のし直しを少なくすることが可能となる。特に、複数の歯科模型を配置した場合には、光が届かない部位が多くなる傾向にあるが、技工物スタンド10では本体11を透過した光により、光が届く面積を従来に比べて拡大することが可能である。
従って、効率のよい重合ができる。
【0025】
具体的な透過率は特に限定されることはないが、本体11と同じ材質で、本体11と同じ高さの成形体を作った時(穴12は形成しない。)、その高さ方向の透過率が5%以上であることが好ましい。特に光重合の場合には重合材料が470nm付近の波長の光で硬化するものが多いことから、少なくと470nmにおける透過率が当該高さ方向で5%以上であることがよい。
【0026】
一方、技工物スタンド10に用いられる材料はその耐熱温度が80℃以上であることが好ましい。熱硬化型の重合材料は通常80℃以上とすることにより硬化するため、耐熱温度を80℃以上とすることにより、熱硬化型の重合をする際にも技工物スタンド10を用いることができる。
【0027】
次に、技工物スタンド10を用いて歯科補綴物を製造する一つの例を説明する。
図3に説明図を示した。
歯科医院等で石膏等により歯列弓の形状を有する歯科模型51、61が製作される。次に当該歯科模型51、61のうち、歯科補綴物を製造する歯型部位を他の部位との位置関係を崩すことなく個別に取り外すことができるように加工する。また、このとき歯科模型51、61のうち、歯型が形成された側とは反対側にピン54、64、65を差し込んで立設させる。
一方、石膏模型51、61のうち歯科補綴物を製造する歯型部位の歯型表面には金属等による技工物52、62を配置する。そしてさらにその上に重合材料53、64が塗布される等して配置される。
【0028】
このように形成した分割可撤式模型50、60を技工物スタンド10に固定する。具体的にはピン54、64、65を技工物スタンド10の異なる穴12、12、12のそれぞれに差し込むことによりおこなう。
技工物スタンド10によれば、本体11が弾性に優れているので、ピン54、64、65を差し込むに際して該ピン54、64、65と穴12、12、12との位置合わせが容易である。従来の技工物スタンドでは配置することに困難であったものでも技工物スタンド10によれば容易に配置することができることもある。また、分割可撤式模型60のように、2本のピン64、65を具備するものは、従来では技工物スタンドに配置する際に穴の位置の観点から大きく制限を受けていた。これに対して技工物スタンド10によればこのような制限を大きく緩和することができる。
【0029】
技工物スタンド10に分割可撤式模型50、60を固定した後は、これらを重合器内に設置し、光を照射又は加熱することにより重合材料が硬化され、歯科補綴物が製造される。特に、重合材料が光重合型材料であり、これを光重合器で硬化させる場合、技工物スタンド10の本体11が透光性を有するものであれば、本体11を透過した光も光重合型材料を硬化するための光となり、重合の効率を向上させることができる。複数の分割可撤式模型50、60を配置した時には、光が当たり難くなる部位が出てくることもあるので、本体11が透光性を有することによりこれを抑制することができる。
【0030】
図4は第二実施形態にかかる技工物スタンド20を表す図で、
図4(a)が平面図、
図4(b)が
図4(a)にIVb-IVbで示した線に沿った切断面を表す図(端面図)である。
【0031】
図4(a)、
図4(b)からわかるように、技工物スタンド20は有底円筒状の本体21と、該本体21の底から円筒内側を通り、開口へ向けて延びるように立設された保持手段としての保持突起22と、を備えている。
すなわち、本実施形態では保持突起22が上記した分割可撤式模型50、60のピン54、64、65(
図3参照)を保持する保持手段として機能する。具体的には、ピン54、64、65が、複数の保持突起22間に挟まれて保持される。
【0032】
本実施形態では、本体21の円筒の軸に直交する断面において、保持突起22は円形の断面を有している。すなわち保持突起22は円柱状である。これにより複数の保持突起22間にピン54、64、65(
図3参照)を差し込んだときに該ピン54、64、65と保持突起22との接触面積を適切なものとすることができる。従って、重合材料を配置した歯科模型を十分に保持しつつもピン54、64、65の抜き差しを容易とすることが可能となる。ただし、これに限定されることはなく、保持突起の断面形状は必要に応じて、楕円形、三角形、矩形、その他の多角形であってもよい。
【0033】
また、本実施形態では柱状の保持突起を示したが、その先端部が細くなるように断面形状が長手方向で変化する形状であってもよい。これによれば、歯科模型の抜き差しがさらに容易になる。
【0034】
複数の保持突起は全て同じ断面形状である必要はなく、例えば平面視右半分が円柱状、左半分が三角柱状のように場所により断面形状を変えてもよい。
【0035】
ここで、複数の保持突起22の間隔は特に限定されることはないが、少なくともピン54、64、65を保持することができる間隙が形成されることが必要である。
【0036】
また保持突起22は、軟らかい材料により形成されており、弾性に富むものとなっている。これにより、保持突起22の形状を変形させることができる。これによれば、ピン54、64、65の位置と、保持突起22間の間隙の位置がずれていた場合に、その位置ずれに対して保持突起22が変形して対応することができ、ピン54、64、65と保持突起22の間隙との位置ずれを吸収することが可能となる。
すなわち、技工物スタンド20でも、上記した技工物スタンド10と同様の効果を奏するものとなる。
【0037】
また、保持突起22の好ましい材料や好ましいヤング率、及び本体21、保持突起22の透光性、耐熱性については、技工物スタンド10と同様である。
【0038】
図5は第三実施形態にかかる技工物スタンド25の斜視図で、保持手段として保持突起を有する技工物スタンドの他の例を表している。技工物スタンド25では、基板26の一方の面から複数の板状の保持突起27が立設されている。複数の保持突起27は、その板面を対向するように所定の間隔を有して並列されている。そして、当該保持突起27が軟らかい材料により形成されており、保持突起27間にピン54、64、65を挟むようにして歯科模型を保持することが可能である。
従って技工物スタンド25によっても技工物スタンド20と同様の効果を奏するものとなる。
【0039】
図6は第四実施形態にかかる技工物スタンド30を表す図で、
図6(a)が平面図、
図6(b)が
図6(a)にVIb-VIbで示した線に沿った切断面を表す図(端面図)である。
【0040】
図6(a)、
図6(b)からわかるように、技工物スタンド30は、第一実施形態の技工物スタンド10に備えられた穴12と、第二実施形態の技工物スタンド20に備えられた保持突起22を両方備えて構成された技工物スタンドである。より詳しくは次の通りである。
【0041】
技工物スタンド30は、有底円筒状の本体31を有し、当該本体31の底から立設し、円筒の軸から円筒内面に延びるように配置され、円筒の内側を区切るように設けられた板状の3つの立設壁32を有している。当該3つの立設壁32により、立設壁32と円筒の内面とで囲まれた3つの空間35、36、37が形成されている。
【0042】
立設壁32の端面からは、本体31の円筒の軸方向に平行に立設壁32の内部を掘り下げるように保持手段を形成する複数の穴32aが設けられている。当該穴32aは、上記した第一実施形態の技工物スタンド10の穴12と同様に設けることができる。
【0043】
また、空間35、36、37の底からは、本体31の円筒の開口へ向けて延びるように立設された保持手段としての複数の保持突起35a、36a、37aを備えている。当該保持突起35a、36a、37aは、上記した第二実施形態の技工物スタンド20の保持突起22と同様に設けることができる。
【0044】
すなわち、本実施形態では、穴32a(立設壁32の穴32aの壁面)及び保持突起35a、36a、37aが上記した分割可撤式模型50、60のピン54、64、65(
図3参照)を保持する保持手段として機能する。具体的には、ピン54、64、65は、穴32aに差し込まれたり、保持突起35a、36a、37aに挟まれたりして、保持される。
【0045】
このように、種類の異なる保持手段を備えることにより、色々な種類の歯科模型に対応することができる。
【0046】
図7は第五実施形態にかかる技工物スタンド40を表した図で、
図7(a)は平面図、
図7(b)は
図7(a)にVIIb-VIIbで示した線に沿った断面図である。ただし、
図7(b)はわかりやすさのため、部材を分離して表している。
【0047】
図7(a)、
図7(b)からわかるように、技工物スタンド40は、歯科模型保持部材41と、保持部材受け44と、を備えている。
【0048】
歯科模型保持部材41は、その基本的な構成はこれまで説明した技工物スタンド10、20、25、30を適用することができる。本実施形態では、その中でも技工物スタンド10に近い形態ものを例に説明する。
【0049】
歯科模型保持部材41は軸方向が直径よりも短い全体として円柱状の部材である本体42を具備している。そして、本体42には、円柱状の軸に平行に延びる保持手段としての複数の穴43が設けられている。本実施形態では穴43は円柱の軸方向他方の端部に貫通している。
すなわち、本実施形態では穴43が歯科模型に具備されるピン54、64、65(
図3参照)を保持する保持手段として機能する。実際にピン54、64、65保持するのは穴43が設けられた本体42の壁面であるが、ここでは当該本体42の壁面を含めて穴43を保持手段として説明した。
【0050】
その他、歯科模型保持部材41の穴43の形態や、歯科模型保持部材41の材質等は上記した技工物スタンド10と同様である。
【0051】
保持部材受け44は、円環状の板部材である基材45と、該基材45の一方の面に所定の間隔で配置された4つの脚46と、を備えている。
【0052】
基材45は円環の内径が歯科模型保持部材41の外径と概ね同じとされ、該円環の穴に歯科模型保持部材41を挿入することができる。また、基材45の一方の面には、その面に沿って90度ずつ間隔をおいて垂下するように縦に配置された板状の脚46が4つ配置されている。脚46は、
図7(b)からわかるように、切り欠き46aを有しており、当該切り欠き46aに歯科模型保持部材41が引っ掛かるように配置される。
【0053】
従って、保持部材受け44は、
図7(b)に直線矢印で示したように、歯科模型保持部材41を基材45の内側に挿入するとともに、脚46の切り欠き46aで受けて保持することができる。
【0054】
このような技工物スタンド40によれば、上記した技工物スタンド10の効果に加え、歯科模型保持部材41を適宜取り換えることができる。すなわち、保持部材受け44はその強度を高く形成しておくことにより長い期間使用することができる。そして形状が複雑である歯科模型保持部材41は小さく、薄く抑えることができ、製造が容易となり、安価で技工物スタンドを提供することも可能となる。
【0055】
ここで保持部材受け44を構成する材料は特に限定されることはないが、透光性に優れ、及び/又は80℃以上の耐熱性に優れることが好ましい。